説明

電流局在化追跡機

【課題】患者の身体内で物体の場所および向きを測定するための方法を提供すること。
【解決手段】この方法は、患者の身体にガルバニック接触で身体電極を配置することと、身体内の複数の領域に、マッピング電極を有するマッピングツールを配置することと、を含む。この方法は、場所測定システムを使用して、これらの領域の各々の異なった位置でマッピングツールを追跡することと、各領域に対して、その領域中の異なった位置で身体電極とマッピング電極との間に較正電流のそれぞれのセットを発生させることと、をさらに含んでいる。各領域に対して、較正電流のそれぞれのセットと異なった位置との間のそれぞれの関係が導出され、この関係は、異なったそれぞれの関係および調査ツール電流に応じて調査ツールの場所を決定するのに使用される。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2008年9月30日に出願され、参照して本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第61/101,308号の利益を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、全般的には、生体内に置かれた物体の位置を感知することに関し、そして具体的には、生体中のプローブの位置感知の間に経験する人為現象の検出および補償に関する。
【0003】
〔発明の背景〕
広範囲の医療処置は、センサ、チューブ、カテーテル、分配装置、および、インプラントといった、物体を、身体内に置くことを伴う。リアルタイム画像化方法が、これらの処置の間、物体およびその周囲を視覚化して医師を助けるためにしばしば使用される。しかしながら、ほとんどの状況で、リアルタイムの三次元画像化は、可能でないか、または望ましくない。代わりに、内部物体のリアルタイムの空間的な座標を得るためのシステムが、しばしば利用される。
【0004】
Govari他への、米国特許出願第2007/0016007号明細書は、その開示が参照して本明細書に組み入れられ、ハイブリッドの磁気ベースおよびインピーダンスベースの位置感知システムを記述している。このシステムは、対象の体腔中に導入するように適合されたプローブを含んでいる。
【0005】
Gilboaへの、米国特許第6,574,498号明細書は、その開示が参照して本明細書に組み入れられ、不透明な身体の空洞内でのワークピースの位置を決定するためのシステムを記述している。このシステムは、第1の場と相互作用するトランスデューサーと、第2の場と相互作用する数個のトランスデューサーとを使用すると主張している。
【0006】
Pfeiffer他への、米国特許第5,899,860号明細書は、その開示が参照して本明細書に組み入れられ、患者の身体の内側のカテーテルの位置を決定するためのシステムを記述している。修正関数が、受信された場所信号から導出された較正位置と既知の真の較正位置との差異から決定され、受信された位置信号から導出されたカテーテル位置は、以後の測定段階で修正関数に従って修正される。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の実施形態に従って、方法であって、
患者の身体にガルバニック接触で身体電極を配置することと、
前記患者の身体中の複数の領域に、マッピング電極を有するマッピングツールを配置することと、
場所測定システムを使用して、前記領域の各々内の異なった位置で前記マッピングツールを追跡することと、
各領域に対して、前記領域内の前記異なった位置で前記身体電極と前記マッピング電極との間に較正電流のそれぞれのセットを発生させることと、
各領域に対して、前記較正電流の前記それぞれのセットと前記異なった位置との間のそれぞれの関係を導出することであって、前記領域のうち異なるものは、異なったそれぞれの関係を有する、導出することと、
前記患者の身体中のある場所に調査電極を有する調査ツールを配置して、前記場所で前記身体電極と前記調査電極との間に調査ツール電流を発生させることと、
前記異なったそれぞれの関係と前記調査ツール電流とに応じて、前記場所を決定することと、
を含む、方法が提供される。
【0008】
典型的には、前記身体電極は、基準電磁(EM)センサを有する基準身体電極を含み、前記基準身体電極は、EM座標系と身体座標系とを規定し、前記方法は、前記EM座標系および前記身体座標系を関係づけるために、前記基準EMセンサからの基準信号と前記基準身体電極の較正電流を比較することを含む。
【0009】
この方法は、前記身体電極と前記身体との間の有効領域の変化を補償するために、前記身体電極間の相対インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0010】
この方法は、前記身体の呼吸および前記身体内の器官運動の少なくとも1つに応じて、前記較正電流をフィルタリングして、フィルタリングされた較正電流を発生させることを含むことができ、この場合、前記それぞれの関係を導出することは、前記フィルタリングされた較正電流に応じた前記関係を形成することを含む。
【0011】
一実施形態では、前記それぞれの関係を導出することは、前記異なった位置を含むボリュームを前記関係と関連付けることを含み、前記場所を決定することは、前記場所が前記ボリューム内にあることを確かめることを含む。典型的には、前記それぞれの関係は、一次行列(primary matrix)を含み、前記方法は、前記ボリュームをサブボリュームに分割すること、および、前記サブボリュームにそれぞれの二次行列(secondary matrices)を関連付けること、を含み、前記それぞれの二次行列の各々は、前記異なった位置のそれぞれのサブセットを前記較正電流のサブセットに関係づけるものであり、前記場所を決定することは、前記較正電流の所与のセットに応じて前記二次行列の1つを選択することを含む。大体において、前記場所は、前記一次行列と前記二次行列の少なくとも1つとから決定される前記調査ツールの場所の加重平均を含む。
【0012】
前記それぞれの関係を導出することは、前記それぞれの関係を導出する前に、前記異なった位置の数が、異なった位置の事前設定した数を超えていることを確かめることを含むことができる。
【0013】
代換的な実施形態では、前記較正電流のそれぞれのセットを発生させることは、前記較正電流のセットが、較正電流の二次的なセット(subsequent set)に対応しているかどうかを、前記セットおよび前記二次的なセットに関連している異なった位置の比較を形成することによって決定することを含む。前記方法はまた、前記比較が無効である場合には前記関係を形成する際に前記二次的なセットを使用し、前記比較が妥当である場合には前記二次的なセットを捨てることを含むこともできる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記調査ツールは、前記場所測定システムによって追跡されない。
【0015】
開示された実施形態では、前記方法は、
前記調査ツールと同時に、前記患者の身体中のある更なる場所に、更なる調査電極を有する更なる調査ツールを配置することと、
前記身体電極と前記更なる調査電極との間に更なる調査ツール電流を発生させることと、
前記異なったそれぞれの関係と前記更なる調査ツール電流とに応じて前記更なる場所を決定することと、
を含むこともできる。
【0016】
前記場所測定システムは、電磁(EM)追跡システム、X線透視検査追跡システム、磁気共鳴映像法(MRI)追跡システム、および超音波追跡システムの少なくとも1つを含むことができる。
【0017】
典型的には、前記身体電極を配置することは、前記患者の身体上に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含むことができる。あるいは代わりに、前記身体電極を配置することは、前記患者の身体内に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含んでもよい。
【0018】
典型的には、前記それぞれの関係は、前記較正電流のそれぞれのセットおよび前記異なった位置を関係づける行列を含む。
【0019】
更なる開示された実施形態では、前記方法は、
前記身体の運動器官(moving organ)に接触するよう更なるマッピングツールを配置することと、
更なるマッピングツール位置を作成するために、前記場所測定システムを使用して、前記更なるマッピングツールを追跡することと、
を含み、前記場所を決定することは、前記更なるマッピングツール位置に応じて前記場所を決定することを含む。
【0020】
本発明の別の実施形態に従って、位置追跡のための装置であって、
導電性電極を有する調査ツールであって、前記導電性電極は、この導電性電極に印加された駆動電圧に応じて患者の身体中に電流を発生させるように結合される、調査ツールと、
前記身体にガルバニック接触で配置され、アブレーション電流を前記身体に伝達するように構成された、アブレータ身体電極と、
前記導電性電極からのそれぞれの身体表面電流を受信する、前記身体にガルバニック接触で配置された、身体表面電極と、
前記アブレータ身体電極による前記それぞれの身体表面電流の逸れを補償しながら、前記それぞれの身体表面電流に応じて前記調査ツールの場所を決定するプロセッサと、
を備える、装置がさらに提供される。
【0021】
典型的には、前記逸れを補償することは、前記アブレーション電流の前記伝達の前に前記それぞれの身体表面電流を記録すること、および、記録された前記それぞれの身体表面電流を使用して前記場所を決定すること、を含む。
【0022】
あるいは代わりに、前記逸れを補償することは、アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加すること、および、前記アブレータ身体電極駆動電圧に応じて形成された前記身体表面電極中の較正電流を決定すること、を含む。前記装置はまた、前記アブレーション電流を発生させるように構成されたアブレータを備えることもでき、この場合、前記アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加することは、前記アブレータを通して前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む。
【0023】
前記装置はまた、アブレータカテーテルを備えることもでき、この場合、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータから前記アブレータカテーテルを分離する間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む。あるいは代わりに、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータカテーテルが前記アブレータと結合されている間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む。
【0024】
本発明の実施形態に従って、インピーダンスを推定するための方法であって、
患者の身体にガルバニック接触で身体電極を配置することと、
前記身体内の複数の領域に導電性電極を有する調査ツールを配置することと、
各領域に対して、前記身体電極の間にそれぞれの電極間電流を発生させることと、
各領域に対して、前記導電性電極と前記身体電極との間にそれぞれの調査ツール電流を発生させることと、
各領域に対して、前記それぞれの電極間電流および前記それぞれの調査ツール電流に応じて、前記身体電極の各々と前記身体との間のそれぞれのインピーダンスを決定することと、
を含む、方法が更に提供される。
【0025】
典型的には、前記それぞれの電極間電流を発生させることは、異なったそれぞれの周波数を有するそれぞれの交流電流であるように前記電極間電流を設定することを含む。
【0026】
本発明の実施形態に従って、装置であって、
患者の身体にガルバニック接触で配置された身体電極と、
マッピング電極を有し、前記患者の身体中の複数の領域に配置されるように構成された、マッピングツールと、
前記領域の各々の中の異なった位置で前記マッピングツールを追跡するように構成された、場所測定システムと、
調査電極を有し、前記患者の身体中のある場所に配置されて、前記場所で前記身体電極と前記調査電極との間に調査ツール電流を発生させるように構成された、調査ツールと、
各領域に対して、前記領域中の前記異なった位置で、前記身体電極と前記マッピング電極との間に較正電流のそれぞれのセットを発生させて、各領域に対して、前記較正電流の前記それぞれのセットと前記異なった位置との間のそれぞれの関係を導出するプロセッサであって、前記領域のうち異なるものは、異なったそれぞれの関係を有する、プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、前記異なったそれぞれの関係と前記調査ツール電流とに応じて、前記場所を決定するように構成される、装置が更に提供される。
【0027】
本発明の実施形態に従って、位置追跡のための方法であって、
導電性電極を有する調査ツールを、前記導電性電極に印加された駆動電圧に応じて患者の身体中に電流を発生させるように結合することと、
アブレーション電流を前記身体に伝達するために前記身体にガルバニック接触でアブレータ身体電極を配置することと、
前記導電性電極からのそれぞれの身体表面電流を受信するように、前記身体にガルバニック接触で身体表面電極を配置することと、
前記アブレータ身体電極による前記それぞれの身体表面電流の逸れを補償しながら、前記それぞれの身体表面電流に応じて前記調査ツールの場所を決定することと、
を含む、方法が更に提供される。
【0028】
本発明の実施形態に従って、インピーダンスを推定するための装置であって、
患者の身体にガルバニック接触で配置された身体電極と、
前記身体内の複数の領域中に配置されるように構成された、導電性電極を有する調査ツールと、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、各領域に対して、前記身体電極の間にそれぞれの電極間電流を発生させ、前記導電性電極と前記身体電極との間にそれぞれの調査ツール電流を発生させ、前記それぞれの電極間電流および前記それぞれの調査ツール電流に応じて、前記身体電極の各々と前記身体との間のそれぞれのインピーダンスを決定するように構成される、装置が更に提供される。
【0029】
本発明の開示は、図面と併せて、以下の本発明の実施形態の詳細な説明から、より十分に理解されるであろう。
【0030】
〔実施形態の詳細な説明〕
〔概観〕
本発明の実施形態では、2つのタイプの追跡サブシステムが、患者の身体内で、物体(本明細書中では例としてカテーテル先端が想定される)の場所および向き(orientation)を測定するために使用される。
【0031】
サブシステムの1つは、本明細書において先進的電流局在化(ACL)追跡機サブシステム(advanced current localization (ACL) tracker sub-system)と呼ばれ、カテーテル先端上の電極からの電流を発生させ、身体表面上に置かれた多くのパッチでの、および/または、身体内に配置された導電要素での、電流分布を測定する。電極の場所は、電流分布から計算される。
【0032】
第2のサブシステムは、ACLサブシステムとは異なった原理で作動する任意の追跡システムであってもよい。第2のサブシステムは、ACLサブシステムが単独で作動したときに提供されるよりも、より正確な結果を典型的に提供する。使用できる第2のサブシステムは、電磁(EM)システム、X線透視検査システム、磁気共鳴映像法(MRI)システム、および超音波システムなどの画像化システムを含むが、これらに限定されない。また、第2のサブシステムは、ACLサブシステムとは異なった原理で作動する追跡システムの組み合わせを含むこともできる。この2つのサブシステムの結果の相互間には関係が形成され、これらの関係は、その追跡精度を高めるためにACLサブシステムの測定された電流に適用される。一例として、本明細書中の説明では、この関係は、行列に基づくものと想定されている。
【0033】
以下に記述される開示された実施形態では、第2のサブシステムは、EM追跡機サブシステムを含む。EM追跡機は、カテーテル先端の場所を計算するために、身体の外部の場所パッド(LP)中に3つの3重コイル源(tri-coil sources)により発生する磁場、ならびに、カテーテル先端中に置かれたEMセンサによって作製された場測定値(field measurements)を使用する。EM追跡機は、それぞれ約1mmおよび1度の精度で、カテーテル先端の場所および向きを典型的に提供する。
【0034】
開示された実施形態の較正段階では、EMセンサと電極とを有するマッピングツールが、患者の身体内の複数の位置に向けて動かされる。マッピングツールは、本明細書においてハイブリッドカテーテルとも呼ばれる。EM測定値および電流測定値は、複数の位置について記録される。EM測定値は、電流測定値から、ACL追跡機単独で決定されるよりもより高程度の精度で場所を決定するようにACL追跡機を調整するために使用される。ACL追跡機は、調整後に、EMセンサを有していないカテーテルなどの調査ツールの場所を追跡するための追跡段階で使用できる。
【0035】
典型的には、多くのこのような調査ツールは、本明細書において非ハイブリッドカテーテル(non-hybrid catheters)とも呼ばれ、異なった非ハイブリッドカテーテルにそれぞれの異なった周波数を有する交流駆動電圧を印加することによって、同時に追跡できる。
【0036】
ACL座標が身体座標に関連して提供される一方で、EM追跡機場所測定値は、LP座標中に提供される。2つの測位システム(location systems)を関連させるように、2つの相関技術が使用される。すなわち、
(1)EM追跡機の場所は、身体座標系内の対応する場所に変換され、身体座標系は、患者の背中上にある3つのパッチで規定される。
(2)内部の基準カテーテルは、動的活動(dynamic movement)を検出するために使用でき、動的活動は典型的には、呼吸に主に関連する。
【0037】
本発明の代替的な実施形態では、アブレータは、患者の上で使用される。アブレータは、身体に接触して置かれたアブレータ身体電極を使用し、アブレータ身体電極は、アブレータから身体へとアブレーション電流を伝達する。アブレータ身体電極は、身体表面電極からの電流を逸らし、そして、この電流の逸れ(diversion)は、補償されない場合、プロセッサで決定された位置に誤りを引き起こすであろう。較正プロセスでは、プロセッサは、典型的には、アブレータ身体電極に駆動電圧を印加し、したがって身体表面電極における較正電流を発生させることによって、電流の逸れを補償する。プロセッサは、修正しなければ起こりうる計算されたカテーテル位置における誤りを修正するために、較正電流とアブレータを通して逸らされた電流の測定値とを使用する。
【0038】
EM−ACL追跡のいくつかの態様は、米国特許出願第2007/0016007号に記載されており、この出願は、本願の譲受人に譲渡されており、その開示内容が本明細書中に参照して組み込まれる。本発明の実施形態は、EM−ACL追跡システムの精度を改良する。
【0039】
〔システム説明〕
図1Aは、本発明の実施形態による、ハイブリッドカテーテル20を利用した、位置感知システム36の模式的な図解説明図であり、そして、図1Bは、本発明の実施形態による、そのハイブリッドカテーテルの遠位端を示す模式的な詳細図である。このハイブリッドカテーテルは、本明細書においてマッピングカテーテルと称されることもある。医療専門家56が、システム36を作動させるものと想定されている。
【0040】
一例として、下記の説明において別段述べられる場合を除いて、対象40の心臓38の房内での侵襲的手技でマッピングカテーテル20が使用されることが想定されている。あるいは代わりに、位置感知システム36は、他の体腔中においてカテーテル20と同様のプローブと共に使用できる。対象40は、例えば、磁場ジェネレータコイル42を含む場所パッド43を対象の下に配置することによって、発生された磁場中に置かれる。コイル42によって発生した磁場は、カテーテル20の遠位端に置かれた電磁(EM)センサ22のコイル24、26、および28中に電気的信号を発生させる。電気的信号は、制御ユニット44に伝えられ、この制御ユニット44は、カテーテル20の位置および向きの座標を決定するために信号を分析する。あるいは代わりに、磁場センサ22中のコイルは、磁場を発生させるように駆動されることができ、この磁場は、コイル42によって検出される。
【0041】
制御ユニット44は、プロセッサ46、典型的には、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含んでいる。このプロセッサは、メモリ47を使用し、このメモリ47は、典型的には揮発性および不揮発性データ記憶デバイスの両方を備え、このメモリ47には、システム36を作動させるためのデータが記憶される。このプロセッサは、コンソール52を駆動するために結合され、このコンソール52は、カテーテル20の場所の視覚ディスプレイ54を提供できる。
【0042】
制御ユニット44は、マッピングカテーテル20の遠位端に置かれた、マッピングカテーテル導電性電極30、32、および34に電流を供給するためにプロセッサ46が使用する交流ドライバー56Iを備える。プロセッサ46は、カテーテル20の各電極に供給される電流の交流周波数が異なるように設定する。これらカテーテル電極は、制御ユニット44中の電流および電圧測定回路構成に、カテーテルの挿入チューブを通してワイヤによって接続される。
【0043】
この制御ユニットは、ワイヤによって身体表面電極(本明細書においては身体電極とも称される)に接続され、これら電極は、ボタン電極、針電極、皮下プローブ、またはパッチ電極などといった、当技術分野で知られる任意のタイプの身体電極であってよい。身体電極は、典型的には、対象40の身体表面にガルバニック接触され、そこから身体表面電流を受信する。以下の説明がパッチ電極またはパッチについて言及しているところでは、本発明の実施形態は、上述した他のタイプの電極のうちのいずれかを使用してもよいことが理解されるであろう。
【0044】
いくつかの実施形態では、対象40の身体にガルバニック接触するように、その身体の内側に、身体電極の1つ以上を配置することができる。典型的には、制御ユニット44は、これらの内部的に置かれた身体電極の位置を追跡する。この追跡は、例えば、これらの身体電極がカテーテル20中のコイル24、26、および28と同様の追跡コイルを有するように構成されることにより行われる。別段述べられる場合を除き、以下の説明は、簡単さのために、身体電極が対象40の身体の上に置かれることを想定している。当業者は、対象40の身体の内側に配置される身体電極を網羅するように、必要な変更を加えて、この説明を適合させることができるであろう。
【0045】
一例として、身体表面電極は、接着性皮膚パッチ60、62、64、66、68、および70を備えていることが本明細書において想定されており、これら接着性皮膚パッチは、本明細書において総称的に有効電流場所(active current location)(ACL)パッチ60Pと称されるか、またはACLパッチインデックス「i」(ここで、iは1〜6の整数である)により言及される。ACLパッチ60Pは、プローブの近傍で対象40の身体表面上の任意の都合のよい場所に置かれることができる。ACLパッチ60Pは、典型的には、カテーテル20中のコイル24、26、および28と同様に、それぞれの関連付けられた追跡コイルを有する。本発明の代替的な実施形態では、身体表面電極は、数が異なってもよい。身体表面電極は、マッピングカテーテルの電極からの異なったマッピング電流を受信し、そして、異なった電流は、カテーテル20の場所または位置を決定するために分析される。そのため、カテーテル20は、その場所を測定するために2つのコンポーネントを含み、一方のコンポーネントがシステム36のEMサブシステムにおいて作動して、もう片方のコンポーネントがシステム36のACLサブシステムにおいて作動する。カテーテル20は、ハイブリッドカテーテルとも呼ばれる。
【0046】
また、制御ユニット44は、電圧源(voltage generators)56Vを含み、これらの電圧源56Vは、それらの接続線によってACLパッチ「i」に接続され、プロセッサ46は、ACLパッチのインピーダンスを測定するために電圧源56Vを使用する。
【0047】
ドライバーの56Iおよびジェネレータ56Vからの電流は、異なった周波数で電流および電圧を作動させるプロセッサ46によって区別される。したがって、ACLパッチに電圧を供給するジェネレータに対する、6つの特有の周波数、および電流をカテーテルに供給するドライバーに対する、さまざまな他の特有の周波数が存在している。
【0048】
システム36には、概ねカテーテル20が追跡されるときにシステムによって追跡される、カテーテル20と概ね同様である、他の1つ以上のハイブリッドカテーテルがあってもよい。明確化のため、図1Aでは、他のカテーテルは示されていない。さらに、システム36には、電極30、32、および34と同様の1つ以上の電極を含むが、センサ22などといったセンサは含んでいない他の非ハイブリッドカテーテルがあってもよい。また、非ハイブリッドカテーテルは、本明細書において調査カテーテルとも称され、また、調査カテーテルの電極は、調査カテーテル導電性電極とも称される。システム36は、これらの調査カテーテルを追跡できる。一例として、1つのそのような非ハイブリッドカテーテル21が、図1Aに示されている。
【0049】
一実施形態では、システム36において最大90個のカテーテル電極を同時に追跡できるように、電流ドライバー56Iのための約90種類の周波数がある。
【0050】
システム36では、カテーテル23は、ハイブリッドまたは非ハイブリッドカテーテルであってもよく、身体40中の領域をアブレーションするために使用されることが想定されている。また、カテーテル23は、本明細書においてアブレーションカテーテルとも称される。アブレーションカテーテル23によって使用されるアブレーション電流の戻りを完全なものとするために、本明細書においてアブレーションパッチ90とも呼ばれるアブレータ身体電極90は、身体40にガルバニック接触状態で(galvanically)取り付けられる。パッチ90およびアブレーションカテーテル23は、ワイヤによってコンソール40の無線周波数(RF)アブレータモジュール48に取り付けられる。このコンソールは、また、専門家56にモジュール48を作動させるスイッチ25を含んでいる。
【0051】
皮膚パッチ(本明細書においては、一例として、3つの接着性皮膚パッチ80、82、および84を含むものと想定されている)は、位置基準としての使用のために対象40の背中に典型的に置かれる。パッチ80、82、および84は、本明細書において総称的に基準パッチ80Rと称される。各基準パッチ80Rは、EMセンサを有し、このEMセンサは、センサ22と概ね同様であり、その対応するパッチの位置をプロセッサ46に提供する。基準パッチ80Rは、ワイヤで制御ユニット44に接続される。
【0052】
システム36は、本明細書においては心臓38であると想定されている身体40の運動器官に挿入されて、運動器官に対して実質的に固定された位置に維持された、内部に置かれるカテーテルといった、基準位置センサを含むこともできる。本明細書における基準センサは、冠状静脈洞基準カテーテル(CSRC)27を備えるものと想定され、本明細書において基準カテーテル27とも称される。カテーテル27は、典型的には、ハイブリッドカテーテルである。カテーテル20の位置を基準カテーテル27の位置と比較することによって、カテーテル20の座標は、心臓の動きとは関係なしに、心臓に対して正確に決定される。
【0053】
典型的には、システム36は、他の要素を含んでおり、これらの要素は、簡単さのために図面に示されておらず、以下の説明で必要であるときに言及される。例えば、システム36は、制御ユニット44にECG同期信号を提供するために、1つ以上の身体表面電極から信号を受信するために結合されたECGモニタを含むことができる。
【0054】
図1Aの構成は、例示的な構成であり、その構成は、概念的な明確さのために純粋に選択されている。また、代替的な実施形態では、いかなる他の好適な構成も使用できる。プロセッサ46は、典型的には汎用プロセッサを備え、汎用プロセッサは、本明細書に記載した機能を行うソフトウェア中にプログラムされている。このソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、電子的形態でプロセッサにダウンロードされてもよいし、または、代替的または追加的に、磁気的、光学的、または、電子的メモリなどといった、実体のある媒体に提供および/または記憶されてもよい。
【0055】
図2Aは、本発明の実施形態による、システム36を作動させるためのプロセスを図式的に示すフローチャート100であり、そして、図2Bは、本発明の実施形態による、システムの簡略化されたブロック線図である。システム36を作動させるために、専門家56、またはシステムの別のオペレータが、最初に、較正段階101でシステムを作動させ、その後、システムは、追跡段階103で作動される。2つの段階のステップの各々で実行される動作について、以下で詳細に説明する。以下でも説明されるように、動作のうちのいくつかは、どちらの段階でも実行できる。
【0056】
基準系相関ステップ102では、EM基準系と有効電流場所(ACL)の基準系とで測定された座標が、相関される。EM追跡機サブシステム115は、EM基準系で測定値を作成し、ACL追跡機サブシステム117は、本明細書中では身体座標系とも呼ばれる、ACL系(ACL frame)で測定値を作成する。EM追跡機サブシステムは、コイル24、26、および28によって発生する電磁場を使用して、場所を測定する。ACL追跡機は、ACLパッチ60Pを通る電流を使用して、場所を測定する。
【0057】
別段述べられている場合を除いて、フローチャートの以下のステップは、中間処理モジュール119で実行され、中間処理モジュール119は、身体座標系モジュール119A、アブレータパッチ補償モジュール119B、パッチ電流較正モジュール119C、電流射影モジュール119D、時間分割モジュール119E、およびパッチ有効領域補償モジュール119Fを備える。
【0058】
アブレータパッチ補償ステップ104では、プロセッサ46は、ACLパッチを介した測定された電流がアブレータパッチを介した電流の逸れに起因してどのように補償され得るかを決定するために測定を実行する。プロセッサ46は、アブレータパッチ、および/または、ACLパッチ中に電流を発生させることによって、測定を実行する。
【0059】
ACLパッチ較正ステップ106では、プロセッサ46は、ステップ104に使用される電流と同様の電流を使用して、個々のACLパッチインピーダンスにおける差異を決定する。インピーダンス中の差異は、プロセッサによって測定されるACLパッチ中の電流に影響する。
【0060】
パッチ補償ステップ108では、プロセッサ46は、ACLパッチ有効領域における変化を補償している。これらの変化は、通常は発汗および患者の皮膚からのパッチの部分的な剥離に起因する、パッチの伝導率の変化などの要因によって典型的に引き起こされる。プロセッサ46は、補償要因を決定するために、ステップ104および106で発生するものと同様の電流を使用する。
【0061】
電流射影ステップ110では、プロセッサは、追跡されるカテーテルに注入された電流によって発生するACLパッチ中の電流を測定して、ステップ104、106、および108で決定された調節を電流に適用する。
【0062】
時間的調節ステップ112では、プロセッサは、3つの時間的要因(ドリフト、呼吸、および鼓動)によって引き起こされた電流における変化を補償する。この補償は、ステップ110で測定された電流に異なったフィルタを適用することによって、実施される。
【0063】
最終的なACLステップ114は、初期の調整段階を含み、ここで、プロセッサは、上記のステップからの電流データおよび場所データを記憶し、電流および場所データを関係づける行列を作成する。ACLステップ114は、ACL追跡機モジュール121で実行される。いったん十分なデータを得ると、プロセッサ46は、カテーテル20上の電極について場所を計算するために、作成された行列をステップ112からの電流データに適用する。プロセッサは、現在の場所(current location)の精度を改良するために、心臓の、異なった「クラスタ」または領域に対してそれぞれ行列を作成する。
【0064】
以下の説明は、フローチャート100のステップの各々について詳細に説明するものである。
【0065】
〔身体座標系〕
図3は、本発明の実施形態による、基準パッチ80Rについてのベクトルつながりを示す概略線図である。パッチの初期位置は、パッチ80、82、および84として示されている。移動後の位置は、パッチ80’、82’、および84’として示されている。
【0066】
身体座標系モジュール119Aにおいて、プロセッサ46は、フローチャート100の基準系相関ステップ102を実行する際に、このつながりを適用する。上述したように、システム36は、2つの追跡サブシステム、すなわち、センサ22などの複数のセンサを用いるEM追跡機サブシステム115と、パッチ60Pを介した電流を用いるACL追跡機サブシステム117とを備える。各サブシステムは、それぞれの基準系で作動する。EM追跡機サブシステムは、パッド43に関して概ね固定されているEM基準系で作動する。ACL追跡機サブシステムは、ACL基準系である、パッチ80Rに関して概ね固定されていると想定される身体座標系(BCS)で作動する。パッチ80Rは、サブシステムの1つで作製された測定値が、他のサブシステムに転換されることを可能にする。較正段階の間、基準パッチ80Rは、対象40の背中に取り付けられ、これにより、パッド43に関する対象のどんな動きも、基準パッチのEMセンサ中の信号変化に反映される。
【0067】
較正段階では、プロセッサ46は、BCSに対する初期の基準系を決定するために、基準パッチ80R上のEMセンサからの信号を分析する。追跡段階の間、プロセッサは、BCS基準系の場所および向きにおける変化を決定するために、EMセンサからの信号を定期的に分析する。プロセッサは、システムパラメータが予想されたものを超えて変化したかどうか検出でき、この場合において、較正段階に戻ることができる。
【0068】
較正段階では、プロセッサは、時間patchInitTimeの間、典型的には約1秒間、LP座標、すなわち、場所パッド(LP)43に対して測定された座標で、パッチ80Rの場所を蓄積する。
【0069】
次に、プロセッサは、各パッチについて平均場所および標準偏差を計算する。
【数1】

ここで、
iは、サンプルインデックスであり、
Nは、時間patchInitTimeにおけるサンプルの数であり、
【数2】

は、サンプル値であり、
【数3】

は、各パッチlについての
【数4】

の平均値であり、
【数5】

は、
【数6】

の標準偏差である。
【0070】
各々の
【数7】

の値が事前設定された数字、典型的には約1mmに満たない場合には、この較正が受け入れられ、その場合、すべての平均値の平均
【数8】

は、基点としてBCSに設定される。
【数9】

【0071】
各パッチから基点までの動径ベクトルも計算され、更なる使用のためにセーブされる。
【数10】

【0072】
方程式(2)で規定された平均ベクトル、および方程式(3)で規定された3つのベクトルを、図3に示す。方程式(2)で規定されるような基点に加えて、方程式(3)の3つのベクトルが、平面中に三角形を規定して、パッチ80、82、および84の間の破線で図中に示される。初期のBCSのx、y、およびz軸は、この三角形を使用して規定される。
【0073】
システム36の追跡段階の間、パッチ80Rは、パッチ80’、82’、および84’で例示されるように、動くことができ、そして、プロセッサ46は、典型的には1秒のオーダーの期間で、定期的にパッチの新しい位置を測定する。本発明の実施形態は、較正段階で規定された軸が、略剛体として動くと仮定し、そして、プロセッサ46は、追跡段階の間、新しいパッチ80R位置からの軸の並進および回転を決定する。この決定の前に、新しいパッチ位置は、ノイズを低減するためにフィルタリングされ、このフィルタリングは、
=ayi−1+(1−a)x、 (4)
のタイプのローパスフィルタを典型的に含む。
ここで、
、yi−1は、現在および前の位置の推定値であり、
は、現在の位置の測定値であり、
aは、0〜1の間の係数である。
【0074】
典型的には、方程式(4)における「a」は、現在の位置の推定値
【数11】

を決定する際に、約0.5秒間の有効な時定数が存在するように選択される。その結果、身体の動きは通常遅いので、そのような時定数は、システム36の性能に有意には影響しない。
【0075】
フィルタリングされた位置
【数12】

は、方程式(3)に対して実質的に上述したように、座標の新しい基点ベクトル
【数13】

を決定するために使用されている。
【0076】
フィルタリングされた位置
【数14】

から、プロセッサ46は、軸の新しい向きを元の軸の向きに関係付ける、当業者には明らかであろう方法で、回転行列Tをも決定する。次に、プロセッサは、各カテーテル先端の場所の測定値を元のBCS軸に変換して戻すために、方程式(5)(下記)を適用する。
【数15】

ここで、
は、Tの転置であり、
【数16】

は、測定されたカテーテル先端の場所を表すベクトルであり、
【数17】

は、元のBCS軸に対するカテーテル先端のベクトルである。
【0077】
ベクトル
【数18】

は、以下で記述される、ACLステップ114で計算される。
【0078】
〔アブレータパッチ補償〕
図1Aに関して上述されているように、制御ユニット44は、アブレーションパッチ90およびアブレーションカテーテル23によって対象40の身体に接続されるアブレータ48を備える。アブレーションパッチおよびアブレーションカテーテルは、カテーテル20および/または27のACL電極、ならびに、ACLパッチ60Pに電流経路(current paths)を提供する。フローチャート100(図2)のステップ104では、アブレータパッチ補償モジュール119Bを使用して、以下で説明するように、プロセッサ46はこれらの経路に逸らされる電流を補償する。
【0079】
図4は、本発明の実施形態による、患者の身体40に接続されたアブレータ48を示す概略等価回路図である。電流ドライバー56Iは、周波数fで、アブレーションカテーテル先端23に電流を注入できるドライバー56IAを備える。ドライバー56Iは、ドライバー56IBをも備えており、ドライバー56IBによって、システム36は、追跡段階において、周波数fで、本明細書においては電極30であると想定されているACL電極の1つに電流を注入できる。典型的には、各ACL電極に対して、それぞれ別々の周波数を有する別々の電流ドライバーが存在しているが、簡単さのために、ただ1つのこのようなドライバーおよび電極が、図面に示されている。電流ドライバー56IAおよび56IBの両方が、プロセッサ46で独立して制御され得る。さらに詳細に以下で説明するように、ACL電極は、ドライバー56IBで発生させた電流に起因したACLパッチ60Pにおける異なった電流を分析することによって、追跡される。
【0080】
アブレータ48は、必要なアブレーションを実行するために、専門家56によってスイッチ25を通して作動される無線周波数(RF)ジェネレータ120を備える。アブレータ48は、アブレータパッチ90に接続され、また、バンドパスフィルタ122を介してアブレーションカテーテル23の先端の電極にも接続される。フィルタ122は、ジェネレータ120からのRFエネルギーに対する低いインピーダンスとして作用し、そして、他の周波数を減衰させるが、スイッチ25が開いていても存在するこれらの周波数に対する電流経路が存在する。図4から明らかなように、ACL電極とACLパッチ60Pとの間の経路以外の電流経路が存在しうる。システム36は、以下で説明するように、これらの経路に補償を提供する。
【0081】
較正段階では、プロセッサ46は、アブレーションカテーテル先端へスイッチ124を開け、これにより、アブレーションカテーテル先端23を介した電流経路が存在しないようにする。この状態では、ドライバー56IAからのすべての電流は、アブレータ48を通り、アブレーションパッチ90を経て、ACLパッチ60Pに流れる。
【0082】
プロセッサ46は、単一の周波数fで電流ドライバー56IAを作動し、典型的には、fはおよそ105kHzである。周波数fでは、プロセッサは、ドライバー56IAによって送達された全電流
【数19】

、および各ACLパッチ60Pを通る電流
【数20】

を測定し、ここで、iは、パッチに対するインデックスである。すべてのインデックスiに対して、プロセッサ46は、周波数fに対する比率のセットを計算する。
【数21】

【0083】
パッチの周波数依存性は、製造中における較正から分かる。プロセッサ46は、fを含む範囲におけるあらゆる作動周波数fに対する比率
【数22】

のセットを決定するために、この較正を使用する。典型的には、fが105kHzであれば、fの範囲は、約100kHzから約110kHzまでである。
【0084】
追跡段階の間、アブレータ120がスイッチ25の閉止により作動される時を除いては、プロセッサ46は、プロセッサ46がシステム36中で作動するカテーテルに対して使用する異なった一般的な周波数fの各々で、アブレータパッチ90を介した漏洩電流Iアブレータ,fを測定できる。異なった測定値は、パッチを介して高速フーリエ変換(FFT)を測定された電流に実行することによって、典型的に作製される。アブレータ120の作動中に漏洩電流が測定できない実施形態では、プロセッサ46は、アブレーション開始前の直近の測定された漏洩電流をアブレーション中の漏洩電流の推定値として使用できる。
【0085】
あるいは代わりに、当業者には明らかであろう、適切なフィルタ、および/または、他のハードウェアを使用することによって、プロセッサ46は、アブレータ120が作動されているときでさえ、漏洩電流Iアブレータ,fを測定できる。
【0086】
プロセッサ46は、追跡段階でも、ACLパッチ「i」の各々を介した電流Ii,fを測定する。プロセッサは、方程式(7)に従って、パッチ90を介した漏洩を補償するために、各周波数fで推定された電流
【数23】

を計算する。
【数24】

【0087】
推定された電流
【数25】

は、以下で説明する、パッチ較正段階106で使用される。
【0088】
〔パッチ電流較正〕
理想的には、グラウンドに対して(to ground)測定された各ACLパッチのインピーダンスはゼロであるが、実際の場合にはそうではないかもしれない。インピーダンスがゼロと異なる場合、パッチを介した測定された電流は、カテーテル20などのカテーテルの予測された場所に誤りをもたらすおそれがあり、このような誤りを低減するために、プロセッサ46は、パッチ電流較正モジュール119Cを使用して、パッチ較正ステップ106におけるACLパッチの較正を実行する(図2Aおよび図2B)。この較正は、ゼロでないインピーダンスを補償し、そして、これらのパッチの間のインピーダンスの差異をも補償する。この較正は、パッチインピーダンスがゼロであれば、パッチで流れるであろう電流をプロセッサ46が推定することを可能にする。
【0089】
ここで図5を参照すると、図5は、本発明の実施形態による、ACLパッチ回路に関する概略説明図である。
【0090】
すべてのACLパッチは、概ね同様の回路を有している。各ACLパッチiは、除細動保護回路152およびアブレーション保護回路154を備える。これらの2つの回路は、パッチとグラウンドとの間で直列に接続されている。図5において、および、以下での分析に対して、各パッチiについて、
jは、周波数インデックスであり、パッチによって送信された周波数fを表す。
ijは、除細動保護回路152の既知のインピーダンスである。既知のインピーダンスは、典型的にはパッチボックス製造者によって提供され得るか、または回路152の分析から決定され得る。
ijは、アブレーション保護回路154のインピーダンスである。アブレーション保護回路インピーダンスは、以下で説明される、パッチインピーダンス較正プロセスの間に推定される。
は、電圧源(voltage source)56Vからの電圧であり、電圧源56Vは、周波数fでパッチiを駆動する。
ijは、周波数fでのパッチiを介して測定された電流である。
ijは、周波数fでのパッチiにおいて測定された電圧である。
ijは、周波数fでのパッチiの実際の電圧である。
【0091】
システム36に対するパッチインピーダンス較正手順では、プロセッサ46は、対応する周波数fで各パッチi中に電流に注入するためのそれぞれの電圧源56Vを使用する。注入電流は、以下で説明する、パッチ有効領域補償手順においても使用される。
【0092】
プロセッサは、上述した較正段階において、上記で参照した2つの手順、すなわち、パッチインピーダンス較正手順、およびパッチ有効領域補償手順を適用する。また、プロセッサは、追跡段階においてもこれらの2つの手順を適用できる。例えば、プロセッサが、パッチのインピーダンスqijを推定できないことを見出した場合、パッチインピーダンス較正手順は、追跡段階で実行され得る。
【0093】
電流は、異なった周波数jで注入され、そして、コンソール52は、プロセッサ46がVijの値を連続してそしてIijの値を同時に測定するために多重送信するADCs(アナログ−ツー−デジタル回路(analog-to-digital circuits))を含む。
【0094】
パッチインピーダンス較正手順では、プロセッサは、VijおよびIijの値から、qijの値を推定し、典型的には、各周波数jで比率
【数26】

を見出すことによって、そして、測定された周波数にわたって、適合度、典型的には二次適合度(best quadratic fit)を見出すことによって、その推定を行う。従って、
【数27】

【0095】
追跡段階の間、プロセッサ46は、異なった作動周波数fにおけるIijおよび
【数28】

の値を測定する。以下の分析では、方程式(9)の式が想定される。
【数29】

ここで、
【数30】

は、周波数fでの全てのパッチにおいて測定された電圧の合計であり、そして、
【数31】

は、クロネッカーのデルタである。
【0096】
周波数jで駆動される特定のパッチiに対して、アブレーション保護回路154にオームの法則を適用すると、以下のようになる。
【数32】

これをさらに整理する(rearranged)と、以下のようになる。
【数33】

【0097】
オームの法則および方程式(10)を図5の完全な回路に適用すると、特定のパッチiに対して、以下のようになる。
【数34】

ここで、Xijは、周波数jでのパッチiの全体の電圧である。
【0098】
方程式(11)の値は、身体のコンダクタンス行列σを決定するために使用でき、ここで、σは、以下の行列方程式で規定される。
【数35】

ここで、Iは、パッチ電流の行列であり、そして、Xは、パッチ電圧の行列である。パッチ電流は、ベクトルsとも書くことができる。方程式(12)における負の符号は、正の電流が身体40に流れるという規則を想定しており、そして、身体の外に流れ出る正の電流もまた、測定される。あるいは代わりに、方程式(12)と同様の方程式を、インピーダンス行列Imを使用して、行列IおよびXを関係づけて書くことができる。
【0099】
当業者は、システムコンダクタンス行列σ’が、身体コンダクタンス行列σおよびパッチ抵抗行列Rの組み合わせであり、以下の方程式によって与えられることを理解するであろう。
【数36】

ここで、
Idは、恒等行列であり、
σは、方程式(12)で規定されたコンダクタンス行列であり、
は、周波数fを送信するカテーテルに対して、i番目の対角要素として(zik+qik)を用いた、パッチ抵抗の対角行列である。
【0100】
電圧Vがシステムに印加される場合、システムを流れる電流は、以下の方程式によって与えられる。
【数37】

ここで、
Vは、電圧ベクトルであり、
【数38】

は、周波数fでの測定された電流ベクトルである。
【0101】
方程式(13b)は、
【数39】

が、パッチ抵抗によって影響されることを示している。較正された電流は、パッチ抵抗に依存せず、またその結果、周波数fに依存せずに、以下のように規定できる。
【数40】

ここで、sは、較正された電流ベクトルである。
【0102】
プロセッサ46は、ベクトルsによって付与された各パッチにおける推定された電流値を、以下で説明する、パッチ有効領域補償プロセスに受け渡す。
【0103】
〔パッチ有効領域補償〕
このセクションでの説明は、パッチ補償ステップ108(図2A)について説明し、ここで、パッチ有効領域モジュール119Fにおいて、プロセッサ46は、ACLパッチiの有効領域における変化を補償するパッチ有効領域補償プロセスを実行する。このセクションでは、パッチ60Pは、パッチiおよびパッチjと称されることによって、区別される。ACLパッチの有効領域への変化のいくつかの原因は、患者の身体40からのパッチの部分的な剥離、ならびに、典型的には発汗に起因する皮膚の伝導率の変化である。パッチ有効領域補償モデルは、以下を仮定する。
【数41】

ここで、
ijは、パッチiとパッチjとの間のインピーダンスであり、
、Cは、パッチiおよびパッチjの有効領域であり、
ijは、パッチiとパッチjとの間の距離であり、
Gは、とりわけ媒体伝導率の、関数である比例定数である。
【0104】
この領域補償プロセスを実施する際に、プロセッサ46は、ソースパッチjから電流Iを発生させ、他のパッチで受信した電流Iijの各々を測定する。プロセッサ46は、各ACLパッチに対するプロセスを実行し、Nパッチに対して、このプロセッサは、合計N(N−1)の電流測定値を作製する。
【0105】
任意の2つのパッチi、jの間の推定されたインピーダンスmijは、以下によって与えられる。
【数42】

ここで、Vは、パッチjを駆動する電圧である。
【0106】
方程式(15)から、正規化され推定されたインピーダンス
【数43】

は、以下によって与えられる。
【数44】

【0107】
プロセッサ46は、領域補償プロセスの実行中に、方程式(16)を用いて、
【数45】

の値を計算および記憶する。
【0108】
パッチjで発生された電流Iは、パッチjと他のパッチとの間のインピーダンスに反比例するように他のパッチ間で分割する。したがって、ソースパッチjから受信パッチiへの電流Iijは、以下によって与えられる。
【数46】

【0109】
方程式(14)を方程式(17)に代入すると、以下のようになる。
【数47】

【0110】
ijに対する値を方程式(16)に代入し、簡約すると、以下のようになる。
【数48】

ここで、nは、1〜Nの整数であり、そして、Nは、ACLパッチの数である。
【0111】
方程式(19)は、
【数49】

のように書くことができる。
【0112】
上述したように、プロセッサ46は、相対インピーダンス
【数50】

の値を決定した。
【0113】
方程式(20)において、パッチ間距離dijは、これらのそれぞれの関連付けられた追跡コイルを使用して測定され得る(そして、i=jのとき、dij=0である)。
【0114】
方程式(20)は、Nが未知の、すなわち、値C、C、・・・、Cを有する、N(N−1)方程式の系である。方程式(20)の系は、Ciの相対値を見出すために使用され得る。これらの方程式の系は、
【数51】

のタイプのものであり、ここで、Aは、
【数52】

およびdijに依存するN(N−1)×N行列であり、そして、
【数53】

は、CのN値を表すベクトルである。Aの特異値分解(SVD)分析(Singular value decomposition (SVD) analysis)またはN×N行列AAの固有ベクトル解析は、当技術分野で知られているように、
【数54】

に対する解を提供する。
【0115】
プロセッサ46が行列AAの固有ベクトル解析を実行すると仮定すると、プロセッサは、最も小さい固有値を有する固有ベクトルを選択する。典型的には、行列AおよびAに対する
【数55】

およびdijの値は、方程式(4)と同様のフィルタで、フィルタリングされ、ここで、フィルタは、10秒のオーダーの時定数を有するように調節される。最も小さい固有ベクトルは、本明細書においてEaと呼ばれる、6つの領域Cの正規化された値に対応している。典型的には、プロセッサ46は、オペレータ56によって設定され得る期間で、定期的にEaの値を計算する。一実施形態では、この期間は1秒のオーダーである。
【0116】
方程式(13c)から導出される、推定された電流ベクトルsは、ACLパッチにおける、電流Iの6つのそれぞれの値を与える。パッチ有効領域、Ea、を補償するために、プロセッサ46は、電流の各々の正規化した値を形成する。
【数56】

ここで、(In6)は、6次元の電流ベクトルである。
【0117】
正規化は、組織と接触する電極、電極を囲む材料の不均質性、および/または、カテーテル電極に電流を注入するソースの不安定性によって引き起こされ得るような、カテーテル電極の領域における実効抵抗における変化によって引き起こされる影響を取り除く。
【0118】
〔電流射影〕
方程式(21)で与えられた6つの電流は、それらの合計が常に1であるので、5つの自由度しか有していない。電流のさらなる解析における特異性を防止するために、電流射影ステップ110では、6つの電流は、射影行列Jを使用して、電流射影モジュール119Dにおける5つの独立している量に転換される。射影行列Jは、結果として得られる行列の最後の5つの列のベクトルだけを取る、行列
【数57】

の直交化によって導出される。
【0119】
直交化の後に、直交化された行列の最後の5つの列は、
【数58】

を与える。
【0120】
方程式(21)からの電流は、このようにして、方程式(23)による5つの電流等価物(current-equivalents)に射影される。
【数59】

【0121】
また、方程式(23)の正規化を実行することに加え、電流射影ステップ110では、プロセッサ46は呼吸インジケータをも正規化する。呼吸インジケータは、患者の呼吸で引き起こされたACLパッチの間の抵抗の変化の尺度であり、そして、プロセッサは、ステップ112において、呼吸の周波数に対応する周波数帯を抽出するためにインジケータを使用する。呼吸インジケータは、特性がパッチ有効領域(C)と概ね同様であり、そして、インジケータに対する式が、方程式(20)を使用して導出される。方程式(20)から、
【数60】

【0122】
jにわたって方程式(24)を平均し、そして、近似として
【数61】

を仮定すると、我々は、パッチiに対する呼吸インジケータRI
【数62】

と規定する。
【0123】
RIをN次元のベクトル
【数63】

として書くものと仮定すると、
【数64】

は、対角線において0を有する、N×N行列Mとして書くことができ、そして、
【数65】

は、方程式(26)で与えられる、行列Dとして書くことができる。
【数66】

【0124】
この場合、プロセッサ46は、前の推定値RIi,t−1および新たな測定値
【数67】

から、2ステップのプロセス、すなわち、
【数68】

【数69】

に従って、新たなベクトルRIi,tを反復的に推定する。
ここで、tは、連続した次数のRIi,t−1およびRIi,tを示すパラメータである。
【0125】
ベクトルRIi,tは、6次元であるが、5つの自由度しか有していない(方程式(21)の電流におけるように)。以下の方程式(28)で示されるように、方程式(27)から導出されるRIの値は、5つのパッチ呼吸等価物を与えるために、行列Jを乗算することによって、方程式(21)の電流と同じ方法でさらに転換される。
【数70】

【0126】
〔時間分割〕
本発明の実施形態は、患者の身体の実質的に任意の領域において作動でき、そして、そのようなすべての領域は、少なくとも何らかの動きを示す。心臓環境は特に動的であり、そして、心臓の動きは、ACLパッチの電流測定値に影響する。測定値に影響する重要なメカニズムは、鼓動および呼吸のプロセスである。また、電流測定値にも影響し得るより遅いプロセスは、基準カテーテルのドリフト、典型的には、CSRC27(図1A)の移動である。
【0127】
ここで、図6を参照すると、図6は、本発明の実施形態による、CSRCの場所の異なった成分のグラフであり、図7を参照すると、図7は、本発明の実施形態による、フィルタの周波数応答のグラフである。図6のグラフは、CSRC場所における呼吸の影響を最大化にする方向に亘る時間分割を示す。このグラフは、動物の場合に対するものであるが、この分割は、人間の場合に起きるものと概ね同様である。ライン230は、(その平均を引いた)測定された場所を表し、3つの信号に分割される。第1の信号ライン232は、鼓動成分を主に表し、そして、第2の信号ライン234は、呼吸影響を表し、そして、第3の信号ライン236は、場所ドリフトを表す。
【0128】
時間的調節ステップ112(図2)では、ステップ110からのACL電流測定値、および、このような検出器を有するカテーテルのEM検出器からの場所測定値は、図6に示された、ドリフト、鼓動、および呼吸の成分を決定するためにフィルタリングされる。時間分割モジュール119Eでは、プロセッサ46は、電流および場所測定値からのこれらの成分をフィルタリングして、以下で説明する、ACL追跡機において処理するためにフィルタリングされた値を受け渡す。フィルタリングされていない値もまた、フィルタが抽出した値と同様に、ACL追跡機に有用なものである。
【0129】
ドリフト成分は、非常に低いローパスフィルタ、典型的には約10秒のオーダーの時定数を有するフィルタを適用することによって、計算される。ローパスフィルタは、方程式(4)の形態の方程式を使用して、実施できる。ドリフト成分は、本明細書において、Ydriと称される。
【0130】
呼吸成分は、有限インパルス応答(FIR)フィルタを電流および場所測定値に適用することによって、計算される。このFIRフィルタは、ローパスフィルタとして作用し、そして、適切なフィルタの周波数応答は、図7に示されている。以下の方程式(29)で与えられた形態のFIRフィルタは、周波数応答を作成するために使用できる。
【数71】

ここで、
kは、j値kを有するカーネルであり、
は、電流および場所測定値であり、そして、
FIR(x、k)は、フィルタリングされた値である。
【0131】
呼吸成分は、ドリフト成分を差し引いたFIR出力値であり、すなわち、FIR(x,k)−Ydriである。
【0132】
測定された場所から鼓動成分を除去するために、1秒のウィンドウを有するローパスフィルタを適用できる。これは、各場所測定値と対応する時間分割出力値との間に約1/2秒のプロセス遅延を引き起こす。これは、カテーテル20の任意の移動と視覚ディスプレイ54への対応するアップデート(図2)との間の1/2秒の遅延をもたらす。
【0133】
時間分割ステップにおいて作製されたすべての測定値は、フローチャート100のACLステップ114において、ACL追跡機モジュール121に受け渡される(図2Aおよび図2B)。
【0134】
〔ACL追跡機〕
ACLステップ114では、ACL追跡機モジュール121は、ステップ112で作成された時間的に分割された電流測定値を使用して、カテーテル20およびカテーテル21などといった、カテーテルの場所を計算する。ステップ112で作成された測定値は、電流対位置マッピング(current-to-position mapping)(CPM)ベクトル
【数72】

に結合される。
【0135】
図8は、本発明の実施形態による、ACL追跡機モジュールのコンポーネントを示す簡略化されたブロック線図であり、そして、図9は、本発明の実施形態による、調査される領域が分割されるサブボリュームを規定するのに使用されるパラメータを示す線図である。
【0136】
ACL追跡機モジュールは、2つのコンポーネント、すなわち、適応型のCPM推定プロセス300、および、CPMアプリケーションプロセス304を含む。CPMアプリケーションプロセス304は、クラスタ選択モジュール308、および、CPMアプリケーションモジュール306をさらに含み、以下でこれらの機能について説明する。
【0137】
適応型のCPM推定プロセスは、カテーテル20などのような、EMセンサとこれに関連する電極とを有する任意のハイブリッドカテーテルからの測定値を使用する。なお、この測定値は、CPM行列を計算するために、ベクトル
【数73】

に含まれている。本発明の実施形態では、それぞれの行列は、本明細書においてクラスタボリュームまたはクラスタとも呼ばれる、調査される領域の各サブボリューム400について計算される。調査される領域は、特定のクラスタレベルに対する解像度の設定に従ったクラスタの異なったサイズに分割される。したがって、低解像度レベルでは、その領域は、各クラスタが行列を有する16個のクラスタに分割され得る。より高い解像度では、その領域は、それぞれ行列を有する1024個のクラスタに分割され得る。
【0138】
CPM推定プロセスにおいて構成された行列は、構築するのに時間がかかり、そのため、プロセッサ46が分割ステップ112から初期データを受信する期間中にACLステップ114に対する初期化の期間が存在する。特定のクラスタに関しては、プロセッサがいったんそのクラスタに対する十分なデータを蓄積すると、このプロセッサは、クラスタに対する行列を作成することができる。作成された行列は、CPMデータ302としてメモリ47(図1A)に記憶される。
【0139】
CPMアプリケーションは、リアルタイムの各電極の場所を計算するために、カソード電極についての電流測定値と共に、作成された行列を使用する。この計算は、以下の方程式に従って、実行される。
【数74】

ここで、
【数75】

は、時間的に分割された電流測定値から構築されたCPMベクトルであり、
Aは、特定のクラスタに対する行列であり、また、
【数76】

は、上述した方程式(5)でも参照された、電極の位置ベクトルである。
【0140】
CPMベクトル
【数77】

は、典型的には、以下の4セットの要素を有する。まず、
(i)マッピングカテーテルに対して、方程式(23)から導出される値に対応する、5つの電流の要素、および、
(ii)方程式(28)から導出されたRI値に対応する、6つのパッチ呼吸インジケータ
【数78】

である。
【0141】
上記の要素に加えて、CSRC27などの基準カテーテルが使用される場合、ベクトル
【数79】

はまた、以下の要素を含むことができる。すなわち、
(iii)5つの基準カテーテルの電流の要素、および、
(iv)3つの基準カテーテルの場所の要素である。
【0142】
セット(ii)、(iii)、および(iv)における要素は、上述した時間分割後に導出された値であり、すなわち、セット(ii)に対するドリフト成分を引いて、ならびに、セット(iii)および(iv)における呼吸成分を引いたものである。
【0143】
プロセッサは、呼吸記述子を作成するために、呼吸インジケータ
【数80】

を使用し、この記述子は、測定値が呼吸サイクルに在る時間を示す値である。
【0144】
呼吸記述子は、典型的には、図1Aに示されているようにいったん患者が配置され、そして、パッチiが取り付けられた後に、はじめに作成される。呼吸調整の期間、典型的には30秒のオーダーで、プロセッサ46は、呼吸インジケータ
【数81】

の値を蓄積する。
【0145】
呼吸インジケータがいったん蓄積されると、プロセッサは、以下のように、最も大きい固有値を有する要素間の方向を見出すために、インジケータの主成分分析(PCA)を実行する。
【数82】

【0146】
方程式(31)で与えられた方向は、以下のように、呼吸記述子の値を計算するために使用される。
【数83】

ここで、RDは、i番目のパッチについての呼吸記述子である。
【0147】
RD値の平均および範囲は、以下のように計算される。
【数84】

【0148】
この平均および範囲は、0から最大値ClNoまでの範囲にあるRDの正規化された値RDnを、以下の方程式(34)にあるように計算するために使用される。ClNoは、以下で説明するアップデートホルダの解像度を規定する数であり、典型的には、約5である。
【数85】

【0149】
RDniの値は、メモリ47中に記憶される。
【0150】
図9は、クラスタボリューム400を規定するために使用されるパラメータを示す。使用されるパラメータは、EM追跡機基準系において測定されたベクトル(図3)である。各クラスタボリューム400は、その左後ろ側の一番下の隅402で参照され、本明細書においてクラスタ基点とも呼ばれ、この基点は、クラスタ中に含まれる任意の点に対するx、y、およびzの最も低い値を有するベクトルClpRLである。クラスタボリューム400は、その中心Clc、中心からの直線長さCls、および、クラスタ解像度レベルベクトルClrRLによって規定され、このClrRLは、解像度レベルRLでのクラスタの側面の長さを規定する。
【0151】
ミリメートルで測定され、ClcおよびClsおよびClrRLの典型的なデフォルト値は、
Clc=(0、0、280)、
Cls=(150、150、200)、および、
解像度レベルRL=1(最も粗い解像度)に対して、ClrRL=(50、20、5)
である。より高い解像度に対応する、より大きい値のRLに対しては、ClrRLの座標の値は、減少する。
【0152】
ClsおよびClrRLのデフォルト値は、300mm×300mm×400mmの寸法を有するボックスであるボリュームに対応している。このボリュームは、より小さい寸法を有する等しいサイズのクラスタに分割される。上記で与えられたデフォルト値に対して、ボックスの中には6×15×80のクラスタが存在している。
【0153】
所与の場所pに関して、関連するクラスタのクラスタインデックスは、以下の式を計算することによって、見出される。
【数86】

【0154】
式(35)において、
Cldimは、ベクトル(Cldim、Cldim、Cldim)であり、ここで、ベクトルの座標は、各寸法におけるクラスタの数に対応しており、
ベクトル分割(Vector division)は、ベクトル分母の対応する要素でベクトル分子の各要素を除算することによって求められ、したがって、例えば、
【数87】

となる。
【0155】
最後の式におけるベクトル乗算は、ドット、またはスカラ、積である。
【0156】
クラスタインデックスClxi,RLが与えられると、クラスタ基点は、以下の式を再帰的に適用することによって、見出される。
【数88】

ここで、Clinxは、初期値Clxi,RLを有する。
【0157】
上記で参照したアップデートホルダは、クラスタCPM行列をアップデートするために使用された場所にフラグを立てるインデックスである。このインデックスは、行列を計算するために使用される場所からの多重測定を防止する。アップデートホルダインデックス(Uhl)は、以下のように計算される。
【数89】

【0158】
図10は、本発明の実施形態による、CPM行列を作成するためにプロセッサ46によって採られたステップを示しているフローチャート500である。このフローチャートのステップは、各測定値がカテーテル20で作成されるときに、適応型のCPM推定プロセス300で実行される。
【0159】
初期ステップ502では、測定値は、任意のハイブリッドカテーテルから受信され、そして、プロセッサは、上述したように、測定値でCPMベクトル
【数90】

を形成する。
【0160】
第1のアップデートホルダステップ504では、方程式(37)を使用して、測定値に対するアップデートホルダインデックスが、計算される。
【0161】
第1の状態506で、プロセッサは、インデックスがメモリ47にセーブされたかどうか確認するようチェックすることによって、アップデートホルダインデックスが既に存在するかどうか確認するようチェックする。このインデックスが存在している場合、測定値は捨てられて、フローチャートは終了する。
【0162】
このインデックスが存在していない場合、次のセーブステップ508で、インデックスおよび測定値が、メモリ47のバッファ310(図8)中にセーブされる。この測定値は、ベクトル
【数91】

としてセーブされる。
【0163】
クラスタ関連ステップ510では、測定値は、対応するクラスタに関連付けられる。この関連付けは、方程式(35)に従って、測定値から対応するクラスタインデックスを計算することによって、実行される。この測定値は、このクラスタインデックスに関連付けられている。
【0164】
クラスタの基点
【数92】

は、次に、方程式(36)を使用して、計算される。このポイントから、合計で最大26個まで可能である、存在している最も近い隣のクラスタすべての基点が、方程式(38)を使用して見出される。
【数93】

【0165】
【数94】

の値から、すべての最も近い隣のクラスタのクラスタインデックスは、方程式(35)から計算される。
【0166】
このステップにおける計算は、RLのすべての値に対して適用される。
【0167】
第2のアップデートホルダステップ512では、隣接するクラスタに対するアップデートホルダインデックスは、ステップ502で受信された測定値、および方程式(37)を使用して計算される。アップデートインデックスが、既に占有されていない場合、測定値は、バッファ310中に置かれ、インデックスは、セーブされる。インデックスが既に占有されている場合、いずれの動作も行われない。
【0168】
第2の状態514では、各クラスタClxにおけるアップデートインデックスの数Mが、求められる。Mが事前設定数、典型的には40のオーダーよりも大きい場合、次のクラスタ行列ステップ516で、クラスタのCPM行列Aが、方程式(39)を使用して計算される。
【数95】

ここで、
【数96】

は、ハイブリッドカテーテルの測定された場所であり、そして、
【数97】

は、アップデートインデックスn、n=1、2、・・・Mに対する、方程式(30)を参照して説明した、CPMベクトルである。
【0169】
典型的には、2つのCPM行列Aは、各クラスタに対して計算され(1つは、CSRC27などといった基準カテーテルを用いた測定値を使用し、1つは、基準カテーテル測定値を用いない)、そして、フローチャート500は、終了する。
【0170】
状態514においてMが事前設定数よりも大きくない場合、フローチャート500は、終了する。
【0171】
典型的には、フローチャート500における計算は、計算された結果が自己矛盾の無いことを確かめるために、様々な段階でチェックされる。例えば、クラスタ関連ステップ510において、存在している隣接するクラスタの数が、事前設定数、例えば4よりも少ない場合、誤りを想定できて、ステップ502の測定値は、受け入れられない。フローチャートの運用に対する他の首尾一貫性チェックは、当業者には明らかであろう。
【0172】
図11は、本発明の実施形態による、フローチャート500で作成されたCPM行列を使用して、カテーテル位置を作成するためにプロセッサ46によって採られるステップを示しているフローチャート600である。このフローチャートは、CPM行列を作成するためにも使用される測定値を使用する。
【0173】
初期ステップ602は、初期ステップ502(図10)と概ね同様であり、ここで、測定値は、ハイブリッドカテーテルから受信され、そして、プロセッサは、この測定値でCPMベクトル
【数98】

を形成する。
【0174】
測定値
【数99】

がカテーテルからの第1の測定値であれば、次の位置計算ステップ604において、クラスタ選択モジュール308中で、最も低いクラスタ解像度(RL=1)が選択される。この位置の推定値
【数100】

は、方程式(40)に従って、作製される。
【数101】

ここで、
Clxは、CPM行列AClx,lに対するクラスタインデックスであり、これは、1からMまで変動するものと想定されており、
【数102】

は、方程式(35)に従って計算された、インデックスClxを有するクラスタの基点である。
【0175】
第1の状態603で、方程式(40)からの値は、以下の式を確かめることによって、この値が(クラスタインデックスClxを有する)クラスタボリューム内にあることを確実にするようチェックされる。
【数103】

【0176】
方程式(40)および(41)は、式(41)が成立し、第1の妥当な位置推定値
【数104】

を作成するまで、入って来る測定値に適用される。
【0177】
以後の測定値
【数105】

に対し、すなわち、以後の測定ステップ605で、決定された位置の妥当性が、直前の位置推定値との間の差異を求めて、この差異が事前設定値を超えていないことを確かめることによって、チェックされる。この差異が超えている場合、この測定値は、捨てられる。
【0178】
解像度レベルステップ606では、すべての解像度レベルRLに対するクラスタインデックスが、方程式(35)を使用して、計算される。加えて、隣接するクラスタインデックスnが、方程式(38)に関して上述したプロセスを使用して、特定される。
【0179】
多重場所ステップ608では、ステップ606で特定されたクラスタに対して、妥当であるCPM行列Aが、方程式(42)に従って、推定される位置
【数106】

を、測定値
【数107】

について決定するために、使用される。
【数108】

【0180】
最終的な場所推定ステップ610では、方程式(42)で決定された値が、ガウスの重み係数(Gaussian weighting factor)を使用して、重みづけされる。
【数109】

【0181】
プロセッサ46は、すべてのレベルでのすべてのクラスタの最終的な重みづけされた合計を形成するために重み係数を使用して、方程式(44)に従って、最終的な推定された場所を作成する。
【数110】

【0182】
前述の実施形態は、例示として引用したものであり、本発明は、本明細書中で詳細に前述し、示した内容に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、本明細書中で前述したさまざまな特徴の組合せおよび半組合せ(subcombination)の両方を含むだけでなく、前述した説明を読むことにより当業者が想到するであろう、先行技術において開示されていない、かかる特徴の変形および改変をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態による、ハイブリッドカテーテルを利用した、位置感知システムの模式的な図解説明図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態による、ハイブリッドカテーテルの遠位端を示す模式的な詳細図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態による、位置感知システムを作動させるためのプロセスを概略的に示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態による、システムの簡略化されたブロック線図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態による、位置感知システムで使用される基準パッチについてのベクトルつながりを示す概略線図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態による、患者の身体に接続されたアブレータを示す概略等価回路図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態による、有効電流場所(ACL)のパッチ回路の概略説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態による、冠状静脈洞基準カテーテルの場所の異なった成分のグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施形態による、フィルタの周波数応答のグラフである。
【図8】図8は、本発明の実施形態による、ACL追跡機モジュールのコンポーネントを示す簡略化されたブロック線図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による、調査される領域が分割されるサブボリュームを規定するのに使用したパラメータを示す線図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態による、電流対位置マッピング(CPM)行列を作成するため、位置感知システム中でプロセッサによって採られるステップを示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、図10のフローチャートで作成されたCPM行列を使用してカテーテル位置を作成するために、プロセッサによって採られるステップを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法において、
患者の身体にガルバニック接触で身体電極を配置することと、
前記患者の身体中の複数の領域に、マッピング電極を有するマッピングツールを配置することと、
場所測定システムを使用して、前記領域の各々内の異なった位置で前記マッピングツールを追跡することと、
各領域に対して、前記領域内の前記異なった位置で前記身体電極と前記マッピング電極との間に較正電流のそれぞれのセットを発生させることと、
各領域に対して、前記較正電流の前記それぞれのセットと前記異なった位置との間のそれぞれの関係を導出することであって、前記領域のうち異なるものは、異なったそれぞれの関係を有する、導出することと、
前記患者の身体中のある場所に調査電極を有する調査ツールを配置して、前記場所で前記身体電極と前記調査電極との間に調査ツール電流を発生させることと、
前記異なったそれぞれの関係と前記調査ツール電流とに応じて、前記場所を決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記身体電極は、基準電磁(EM)センサを有する基準身体電極を含み、前記基準身体電極は、EM座標系と身体座標系とを規定し、
前記方法は、前記EM座標系および前記身体座標系を関係づけるために、前記基準EMセンサからの基準信号と前記基準身体電極の較正電流を比較することを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記身体電極と前記身体との間の有効領域の変化を補償するために、前記身体電極間の相対インピーダンスを決定すること、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記身体の呼吸および前記身体内の器官運動の少なくとも1つに応じて、前記較正電流をフィルタリングして、フィルタリングされた較正電流を発生させること、
を含み、
前記それぞれの関係を導出することは、前記フィルタリングされた較正電流に応じた前記関係を形成することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記それぞれの関係を導出することは、前記異なった位置を含むボリュームを前記関係と関連付けることを含み、
前記場所を決定することは、前記場所が前記ボリューム内にあることを確かめることを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記それぞれの関係は、一次行列を含み、
前記方法は、前記ボリュームをサブボリュームに分割すること、および、前記サブボリュームにそれぞれの二次行列を関連付けること、を含み、
前記それぞれの二次行列の各々は、前記異なった位置のそれぞれのサブセットを前記較正電流のサブセットに関係づけるものであり、
前記場所を決定することは、前記較正電流の所与のセットに応じて前記二次行列の1つを選択することを含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記場所は、前記一次行列と前記二次行列の少なくとも1つとから決定される前記調査ツールの場所の加重平均を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記それぞれの関係を導出することは、前記それぞれの関係を導出する前に、前記異なった位置の数が、異なった位置の事前設定した数を超えていることを確かめることを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記較正電流のそれぞれのセットを発生させることは、前記較正電流のセットが、較正電流の二次的なセットに対応しているかどうかを、前記セットおよび前記二次的なセットに関連している異なった位置の比較を形成することによって決定することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記比較が無効である場合には前記関係を形成する際に前記二次的なセットを使用し、前記比較が妥当である場合には前記二次的なセットを捨てること、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記調査ツールは、前記場所測定システムによって追跡されない、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、
前記調査ツールと同時に、前記患者の身体中のある更なる場所に、更なる調査電極を有する更なる調査ツールを配置することと、
前記身体電極と前記更なる調査電極との間に更なる調査ツール電流を発生させることと、
前記異なったそれぞれの関係と前記更なる調査ツール電流とに応じて前記更なる場所を決定することと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、
前記場所測定システムは、電磁(EM)追跡システム、X線透視検査追跡システム、磁気共鳴映像法(MRI)追跡システム、および超音波追跡システムの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、
前記身体電極を配置することは、前記患者の身体上に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、
前記身体電極を配置することは、前記患者の身体内に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記それぞれの関係は、前記較正電流のそれぞれのセットおよび前記異なった位置を関係づける行列を含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、
前記身体の運動器官に接触するよう更なるマッピングツールを配置することと、
更なるマッピングツール位置を作成するために、前記場所測定システムを使用して、前記更なるマッピングツールを追跡することと、
を含み、
前記場所を決定することは、前記更なるマッピングツール位置に応じて前記場所を決定することを含む、方法。
【請求項18】
位置追跡のための装置において、
導電性電極を有する調査ツールであって、前記導電性電極は、この導電性電極に印加された駆動電圧に応じて患者の身体中に電流を発生させるように結合される、調査ツールと、
前記身体にガルバニック接触で配置され、アブレーション電流を前記身体に伝達するように構成された、アブレータ身体電極と、
前記導電性電極からのそれぞれの身体表面電流を受信する、前記身体にガルバニック接触で配置された、身体表面電極と、
前記アブレータ身体電極による前記それぞれの身体表面電流の逸れを補償しながら、前記それぞれの身体表面電流に応じて前記調査ツールの場所を決定するプロセッサと、
を備える、装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、
前記逸れを補償することは、前記アブレーション電流の前記伝達の前に前記それぞれの身体表面電流を記録すること、および、記録された前記それぞれの身体表面電流を使用して前記場所を決定すること、を含む、装置。
【請求項20】
請求項18に記載の装置において、
前記逸れを補償することは、アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加すること、および、前記アブレータ身体電極駆動電圧に応じて形成された前記身体表面電極中の較正電流を決定すること、を含む、装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、
前記アブレーション電流を発生させるように構成されたアブレータ、
を備え、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加することは、前記アブレータを通して前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、装置。
【請求項22】
請求項20に記載の装置において、
アブレータカテーテル、
を備え、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータから前記アブレータカテーテルを分離する間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、装置。
【請求項23】
請求項20に記載の装置において、
アブレータカテーテル、
を備え、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータカテーテルが前記アブレータと結合されている間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、装置。
【請求項24】
インピーダンスを推定するための方法において、
患者の身体にガルバニック接触で身体電極を配置することと、
前記身体内の複数の領域に導電性電極を有する調査ツールを配置することと、
各領域に対して、前記身体電極の間にそれぞれの電極間電流を発生させることと、
各領域に対して、前記導電性電極と前記身体電極との間にそれぞれの調査ツール電流を発生させることと、
各領域に対して、前記それぞれの電極間電流および前記それぞれの調査ツール電流に応じて、前記身体電極の各々と前記身体との間のそれぞれのインピーダンスを決定することと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記それぞれの電極間電流を発生させることは、異なったそれぞれの周波数を有するそれぞれの交流電流であるように前記電極間電流を設定することを含む、方法。
【請求項26】
装置において、
患者の身体にガルバニック接触で配置された身体電極と、
マッピング電極を有し、前記患者の身体中の複数の領域に配置されるように構成された、マッピングツールと、
前記領域の各々の中の異なった位置で前記マッピングツールを追跡するように構成された、場所測定システムと、
調査電極を有し、前記患者の身体中のある場所に配置されて、前記場所で前記身体電極と前記調査電極との間に調査ツール電流を発生させるように構成された、調査ツールと、
各領域に対して、前記領域中の前記異なった位置で、前記身体電極と前記マッピング電極との間に較正電流のそれぞれのセットを発生させて、各領域に対して、前記較正電流の前記それぞれのセットと前記異なった位置との間のそれぞれの関係を導出するプロセッサであって、前記領域のうち異なるものは、異なったそれぞれの関係を有する、プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記異なったそれぞれの関係と前記調査ツール電流とに応じて、前記場所を決定するように構成される、装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置において、
前記身体電極は、基準電磁(EM)センサを有する基準身体電極を備え、前記基準身体電極は、EM座標系および身体座標系を規定し、
前記プロセッサは、前記EM座標系および前記身体座標系を関係づけるために、前記基準EMセンサからの基準信号と前記基準身体電極の較正電流を比較するように構成される、装置。
【請求項28】
請求項26に記載の装置において、
前記プロセッサは、前記身体電極と前記身体との間の有効領域の変化を補償するために、前記身体電極間の相対インピーダンスを決定するように構成される、装置。
【請求項29】
請求項26に記載の装置において、
前記プロセッサは、前記身体の呼吸および前記身体内の器官運動の少なくとも1つに応じて前記較正電流をフィルタリングして、フィルタリングされた較正電流を発生させるように構成され、
前記それぞれの関係を導出することは、前記フィルタリングされた較正電流に応じて前記関係を形成することを含む、装置。
【請求項30】
請求項26に記載の装置において、
前記それぞれの関係を導出することは、前記異なった位置を含むボリュームを前記関係に関連付けることを含み、
前記場所を決定することは、前記場所が前記ボリューム内にあることを確かめることを含む、装置。
【請求項31】
請求項30に記載の装置において、
前記それぞれの関係は、一次行列を含み、
前記プロセッサは、前記ボリュームをサブボリュームに分割して、それぞれの二次行列を前記サブボリュームに関連付けるように構成され、前記それぞれの二次行列の各々は、前記異なった位置のそれぞれのサブセットを前記較正電流のサブセットに関係づけるものであり、
前記場所を決定することは、前記較正電流の所与のセットに応じて前記二次行列の1つを選択することを含む、装置。
【請求項32】
請求項31に記載の装置において、
前記場所は、前記一次行列と前記二次行列の少なくとも1つとから決定される前記調査ツールの場所の加重平均を含む、装置。
【請求項33】
請求項26に記載の装置において、
前記それぞれの関係を導出することは、前記それぞれの関係を導出する前に、前記異なった位置の数が、異なった位置の事前設定した数を超えていることを確かめることを含む、装置。
【請求項34】
請求項26に記載の装置において、
前記較正電流のそれぞれのセットを発生させることは、前記較正電流のセットが、較正電流の二次的なセットに対応しているかどうかを、前記セットおよび前記二次的なセットに関連している異なった位置の比較を形成することによって決定することを含む、装置。
【請求項35】
請求項34に記載の装置において、
前記プロセッサは、前記比較が無効である場合には前記関係を形成する際に前記二次的なセットを使用し、前記比較が妥当である場合には前記二次的なセットを捨てるように構成される、装置。
【請求項36】
請求項26に記載の装置において、
前記調査ツールは、前記場所測定システムによって追跡されない、装置。
【請求項37】
請求項26に記載の装置において、
更なる調査電極を有する更なる調査ツールであって、前記更なる調査電極は、前記患者の身体中のある更なる場所に、前記調査ツールと同時に配置される、更なる調査ツール、
を備え、
前記プロセッサは、
前記身体電極と前記更なる調査電極との間に更なる調査ツール電流を発生させ、
前記異なったそれぞれの関係と前記更なる調査ツール電流とに応じて、前記更なる場所を決定する
ように構成される、装置。
【請求項38】
請求項26に記載の装置において、
前記場所測定システムは、電磁(EM)追跡システム、X線透視検査追跡システム、磁気共鳴映像法(MRI)追跡システム、および超音波追跡システムの少なくとも1つを備える、装置。
【請求項39】
請求項26に記載の装置において、
前記身体電極を配置することは、前記患者の身体上に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含む、装置。
【請求項40】
請求項26に記載の装置において、
前記身体電極を配置することは、前記患者の身体内に前記身体電極の少なくとも1つを配置することを含む、装置。
【請求項41】
請求項26に記載の装置において、
前記それぞれの関係は、前記較正電流のそれぞれのセットおよび前記異なった位置を関係づける行列を含む、装置。
【請求項42】
請求項26に記載の装置において、
前記身体の運動器官に接触するよう配置された更なるマッピングツール、
を備え、
前記プロセッサは、更なるマッピングツール位置を作成するために、前記場所測定システムを使用して、前記更なるマッピングツールを追跡し、前記更なるマッピングツール位置に応じて前記場所を決定するように構成される、装置。
【請求項43】
位置追跡のための方法において、
導電性電極を有する調査ツールを、前記導電性電極に印加された駆動電圧に応じて患者の身体中に電流を発生させるように結合することと、
アブレーション電流を前記身体に伝達するために前記身体にガルバニック接触でアブレータ身体電極を配置することと、
前記導電性電極からのそれぞれの身体表面電流を受信するように、前記身体にガルバニック接触で身体表面電極を配置することと、
前記アブレータ身体電極による前記それぞれの身体表面電流の逸れを補償しながら、前記それぞれの身体表面電流に応じて前記調査ツールの場所を決定することと、
を含む、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、
前記逸れを補償することは、前記アブレーション電流の前記伝達の前に前記それぞれの身体表面電流を記録すること、および、記録された前記それぞれの身体表面電流を使用して前記場所を決定すること、を含む、方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法において、
前記逸れを補償することは、アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加すること、および、前記アブレータ身体電極駆動電圧に応じて形成された前記身体表面電極中の較正電流を決定すること、を含む、方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法において、
前記アブレーション電流を発生させるようにアブレータを構成すること、
を含み、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を前記アブレータ身体電極に印加することは、前記アブレータを通して前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法において、
アブレータカテーテルを提供すること、
を含み、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータから前記アブレータカテーテルを分離する間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、方法。
【請求項48】
請求項45に記載の方法において、
アブレータカテーテルを提供すること、
を含み、
前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することは、前記アブレータカテーテルが前記アブレータと結合されている間に、前記アブレータ身体電極駆動電圧を印加することを含む、方法。
【請求項49】
インピーダンスを推定するための装置において、
患者の身体にガルバニック接触で配置された身体電極と、
前記身体内の複数の領域中に配置されるように構成された、導電性電極を有する調査ツールと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、各領域に対して、
前記身体電極の間にそれぞれの電極間電流を発生させ、
前記導電性電極と前記身体電極との間にそれぞれの調査ツール電流を発生させ、
前記それぞれの電極間電流および前記それぞれの調査ツール電流に応じて、前記身体電極の各々と前記身体との間のそれぞれのインピーダンスを決定する
ように構成される、装置。
【請求項50】
請求項49に記載の装置において、
前記それぞれの電極間電流を発生させることは、異なったそれぞれの周波数を有するそれぞれの交流電流であるように前記電極間電流を設定することを含む、装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−82446(P2010−82446A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−224095(P2009−224095)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】