説明

電源コネクタ

【課題】走行用バッテリの高圧側充電器に取り付ける高圧側コネクタの端子の摩耗発生を防止する。
【解決手段】電気自動車またはハイブリット車からなる車両に搭載される走行用バッテリに、家庭用低圧外部電源から電源取り入れに用いる電源コネクタであって、前記車両側に設けられた走行用バッテリに取り付けられた高圧側コネクタに常時嵌合して接続される第1コネクタ部と、前記家庭用低圧外部電源側に設けられたコネクタと充電時に嵌合すると共に充電後は離脱する第2コネクタ部を備え、前記第1コネクタ部と第2コネクタ部とは1つのハウジング内に設けた仕切壁を介して両側に背中合わせに設け、前記仕切壁を貫通させた端子金具の一側部を第1コネクタ部に突出する第1端子部、他側部を第2コネクタ部の第2端子部としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車またはハイブリッド車に搭載する電源コネクタに関し、詳しくは、走行用バッテリの高圧側蓄電器に設ける高圧コネクタの耐久性を高めて交換を不要または交換回数を低減するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車に搭載した走行用の高圧側蓄電器(鉛バッテリ、リチウムバッテリ、ニッケルバッテリ等)には、外部電源から充電が行われている。この外部電源からの充電は、図5に示すように、電気自動車またはハイブリッド車からなる自動車Aに搭載された高圧側蓄電器100に、高圧側電源コネクタ(商用電源用受電コネクタ)101を接続しておき、充電時に、給電スタンド側の電源ケーブル102の先端に接続した高圧専用のコネクタ103を前記高圧側電源コネクタ101にプラグイン接続して充電している。(特開2003−125531号公報等参照)
【0003】
前記走行用バッテリの充電用に用いる高圧側電源コネクタ101は、外部電源からの充電毎に相手方コネクタと嵌合して端子同士を接触させ、その後、相手方コネクタとの嵌合を解き、挿抜が繰り返し成される。この挿抜により、コネクタの端子同士の接圧力が劣化しないように、高価で特殊な材料を用いて端子を形成する必要があり、高圧側電源コネクタ自体も高価となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車やハイブリッド車の充電はほぼ毎日行われ、電源コネクタの挿抜回数は多くなっている。その結果、コネクタ接続時に互いに嵌合、離脱されるコネクタ内の雌雄端子が摩耗して、端子の接触圧が低下し、高価な高圧電源用の電源コネクタの交換頻度が高くなる問題がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、電気自動車またはハイブリッド車に搭載した高圧側蓄電器に接続される高圧の電源コネクタの交換頻度を出来るだけ低減し、好ましくは、10年間程度の車両使用期間に高圧専用の電源コネクタの交換を行う必要がないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、電気自動車またはハイブリット車からなる車両に搭載される走行用バッテリに、家庭用低圧外部電源から電源取り入れに用いる電源コネクタであって、
前記車両側に設けられた前記走行用バッテリに取り付けられた高圧側コネクタに常時嵌合して接続される第1コネクタ部と、前記家庭用低圧外部電源側に設けられたコネクタと充電時に嵌合すると共に充電後は離脱する第2コネクタ部を備え、
前記第1コネクタ部と第2コネクタ部とは1つのハウジング内に設けた仕切壁を介して両側に背中合わせに設け、前記仕切壁を貫通させた端子金具の一側部を第1コネクタ部に突出する第1端子部、他側部を第2コネクタ部の第2端子部としていることを特徴とする電源コネクタを提供している。
【0008】
前記のように、本発明の電源コネクタは、車載の走行用バッテリ(高圧側蓄電器)に取り付けられている高圧側コネクタに常時接続されるサブコネクタとなるものである。このサブコネクタとして機能する本発明の電源コネクタは、その第1コネクタ部を前記高圧側コネクタと常時接続しておき、充電時にサブコネクタを高圧側コネクタにプラグイン接続しないようにし、外部電源側のコネクタとのみ第2コネクタ部をプラグイン接続するようにしている。よって、充電毎に頻繁に挿脱されるのは電源コネクタの第2コネクタ部だけであり、第1コネクタ部は常時接続しているため挿脱されない。このように、高価な材料からなる端子材を用いている高圧側コネクタは電源コネクタと充電時に挿脱されず、充電時の挿脱による端子の摩耗、それに伴う接触不良の発生を無くしている。
電源コネクタの第2コネクタ部は充電時毎に外部電源側コネクタと挿脱されるために、端子は摩耗しやすく、端子が摩耗して接続不良になると電源コネクタを交換する必要が生じる。この電源コネクタの交換時のみ、該電源コネクタの第1コネクタ部の端子と車載の高圧側コネクタとの端子とに離脱・嵌合による接触摩擦が生じる。
【0009】
具体的には、仮に、本発明のサブコネクタとなる電源コネクタの第2コネクタ部と外部電源側コネクタとが100回の抜き差しで端子が摩耗して接触不良が発生すると仮定すると、100回目の充電毎に電源コネクタを交換するだけでよい。
前記のように、100回目毎充電時に電源コネクタを交換した場合、この交換した電源コネクタと高圧側コネクタとの挿脱回数は100回に1度となり、高圧側コネクタと電源コネクタの第1コネクタ部とが摩擦により交換すべき回数は充電時に換算すると、100×100=10000回に1回となる。即ち、毎日充電がなされた場合、10000÷365=27.39となり、27年に一度、即ち、当該車両が27年間使用されても、車両の高圧側蓄電器に取り付けた高圧側コネクタを交換する必要はない。
【0010】
前記電源コネクタの仕切壁で中間部が支持されて前記第1端子部が前記第1コネクタ部に突出すると共に前記第2端子部が前記第2コネクタ部に突出する前記端子金具は、2本〜5本としている。
即ち、家庭用電源の2回路と接続する場合は端子金具は2本となり、前記2回路にアース回路を含めると端子金具は3本となる。なお、充電マネージメントのシステムを導入し、バッテリの残量検出モニターを設け過充電を防ぐシステムの追加等を見越して、プラグイン回路数が4回路、5回路と変わっても、サブコネクタとして機能する本発明の電源コネクタを用いると、例えば3回路でよい場合には、3回路のみ取り入れることも可能となる。
【0011】
前記ハウジングは両端開口の円筒形状とし、長さ方向の中心部に前記仕切壁を設け、両側の第1、第2コネクタ部は円筒形の外壁で囲み、かつ、
前記端子金具の第1端子部及び第2端子部はタブ形状としたオス端子としていることが好ましい。
前記形状とすると、前記仕切壁に端子金具を貫通させて取り付けることが可能となる。
【0012】
前記電源コネクタの第2コネクタ部は、充電時以外はコネクタカバーを被せて、防塵、防水対策を施すことが好ましい。これにより、電源コネクタの交換頻度も低減できる。
【0013】
さらに、第2の発明として、電気自動車またはハイブリット車からなる車両に搭載される走行用バッテリに、家庭用低圧外部電源から電源取り入れに用いる電源用ハーネスであって、
前記車両側に設けられた前記走行用バッテリに取り付けられた高圧側コネクタに常時嵌合して接続される第1コネクタと、前記家庭用低圧外部電源側に設けられたコネクタと充電時に嵌合すると共に充電後は離脱する第2コネクタと、前記第1コネクタと第2コネクタとを接続するハーネスを備えていることを特徴とする電源用ハーネスを提供している。
【0014】
即ち、第1の発明では、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを1つのコネクタハウンジングに設けて電源コネクタとしていたものを、第2の発明では、第1コネクタと第2コネクタとに分けてハーネスで接続している。該構成とすると、この電源用ハーネスを車両から家庭用外部電源のコネクタの設置位置まで引き出して接続することができる。
【発明の効果】
【0015】
前記のように、本発明の電源コネクタまたは電源用ハーネスは、毎日のように頻繁に充電を行う電気自動車またはハイブリッド車からなる車両において、走行用の高圧側蓄電器の充電器に取り付けた高圧側コネクタに第1コネクタ部または第1コネクタを常時接続しておく一方、充電時のみ、家庭用電源からなる低圧側外部電源のコネクタに第2コネクタ部または第2コネクタを挿脱するようにしている。このように、高価な高圧側コネクタと前記第1コネクタ部または第1コネクタとの頻繁な抜き差しを無くしているため、高圧側コネクタの端子の摩耗は無くなり、その交換を略不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(A)は全体の構成を示す概略図、(B)は車載の高圧側コネクタと家庭用の外部電源側の低圧側コネクタとの接続形態を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の電源コネクタを示し、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は要部拡大断面図である。
【図3】低圧側コネクタを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態の電源用ハーネスの概略図である。
【図5】従来例を示す図面である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に第1実施形態を示す。
第1実施形態は、電気自動車またはハイブリッド車Aに搭載する走行用バッテリとなる高圧側蓄電池1に付設した充電器2に取り付けられている高圧側コネクタ3に本発明の電源コネクタ5を常時接続している。
【0018】
電源コネクタ5は両端開口の円筒形のコネクタハウンジング10の長さ方向の中央部を仕切壁11で区切り、一方を第1コネクタ部12、他方を第2コネクタ部13としている。前記第1コネクタ部12へ突出するタブ状とした第1端子部15aと、第2コネクタ部13に突出するタブ状の第2端子部15bと、第1端子部15aと第2端子部15bとを連続する中間支持部15cを備えた3本の端子材15を設けている。
前記中間支持部15cの外周からフランジ部15dを突設する一方、前記仕切壁11には3つの貫通穴14を設け、図2(C)に示すように、これら貫通穴14は前記フランジ部15dを内嵌保持する大径穴14aと前記タブ状の第1端子部15aを通す小径穴14bを連続させた段状としている。
【0019】
前記両側タブ状の雄端子とした3本の端子材15の中間支持部15cを、仕切壁11に設けた各貫通穴14の大径穴14aに第1端子部15aから挿入する。第1端子部15aは小径穴14bに挿通させるが、中間支持部15cのフランジ部15dは小径穴14bと連続する段差部14cで停止させる。これにより、第1端子部15aを第1コネクタ部12に、第2端子部15bを第2コネクタ部13に突出させている。
【0020】
前記端子材15は、端子材として汎用されている黄銅系金属材を打ち抜き加工して設けており、よって、前記高圧側コネクタ3に装着されている高圧専用の端子材3aと比較して安価である。該高圧側コネクタ3の内部に装着している端子材3aは前記タブ状の第1端子部15aと雌雄嵌合接続する雌端子としている。
【0021】
図2(B)に示すように、第2コネクタ部13の先端開口13aに開閉自在に被せるカバー18をコネクタハウンジング10に取り付けている。該カバー18はコネクタハウンジング10に外嵌する環状取付部18aに蓋18bを開閉自在にヒンジ部18cで連結した形状としている。なお、該カバー18は必ずしも取り付ける必要はない。
【0022】
家庭用の低圧側外部電源に接続されているコンセント30には、充電用ハーネス31の一端に接続したプラグ32を接続し、該充電用ハーネス31の他端に低圧側コネクタ33を接続している。該低圧側コネクタ33内には低圧用端子材からなる雌端子33aが装着されている。該低圧側コネクタ33は電源コネクタ5の第2コネクタ部13に内嵌し、先端面に設けた端子穴33bから電源コネクタ5の第2端子部15bが挿入して、前記雌端子33aと雌雄嵌合接続するものとしている。
【0023】
本発明の電源コネクタ5は第1コネクタ部12を高圧側コネクタ3と常時嵌合し、第1コネクタ部12内の第1端子部15aを高圧側コネクタ3の端子材3aと常時雌雄嵌合接続している。
一方、第2コネクタ部13は充電時以外はカバー18の蓋18bを被せて先端開口を閉鎖している。
【0024】
充電時には、前記カバー18の蓋18bを開いて第2コネクタ部13を露出させる。
一方、家庭用の低圧側外部電源のコンセント30に充電用ハーネス31の一端のプラグ32を接続し、他端の低圧側コネクタ33を電源コネクタ5の第2コネクタ部13に挿入する。これにより、低圧側コネクタ33の雌端子33aと第2コネクタ部13のタブ状の第2端子部15bとが雌雄嵌合接続し、充電が行われる。充電終了後に、第2コネクタ部13から低圧側コネクタ33を引き出して嵌合を離脱し、端子同士の接続を解く。
【0025】
このように、充電後に電源コネクタ5の第2コネクタ部13と低圧側コネクタ33との離脱がなされるが、電源コネクタ5の第1コネクタ部12と高圧側コネクタ3とは嵌合接続された状態のままであり、離脱はなされない。
よって、コネクタの着脱により該コネクタ内の端子に摩耗が発生するのは第2コネクタ部13と低圧側コネクタ33であり、高圧側コネクタ3と第1コネクタ部12との間でコネクタ内の端子に摩耗は生じない。
【0026】
コネクタ同士の抜き差しでコネクタ内の端子に摩耗が生じ、接触不良が発生するのは、前記のように、通常、100回目程度であり、100回目の充電時に電源コネクタ5を交換すればよい。この電源コネクタ5の交換により高圧側コネクタ3との抜き差しは充電の100回目に1回となる。この電源コネクタ5の交換により、電源コネクタ5と高圧側コネクタ3との抜き差しにより、電源コネクタ5と高圧側コネクタ3の端子が摩耗して交換する必要がある時期は、略100回目の抜き差しに達した時点である。
即ち、高圧側コネクタ3が電源コネクタ5との抜き差しによって端子に摩耗が発生するのは、充電回数の100×100=10000回目となる。この10000回に達するまでは、高圧側コネクタ3と電源コネクタ5の第1コネクタ部12とを正常な接続状態に保持できる。
【0027】
よって、充電を毎日行うとした場合、27年目に高圧側コネクタ3の端子材3aが摩耗することとなる。車両の所有年数からみて、当該車両を所有する間は高圧側コネクタ3の端子材3aを正常に保持でき、端子同士の接触不良の発生を防止できる。
かつ、高圧側コネクタ3の交換も27年間行う必要はなく、車両の所有年数からみて、該高圧側コネクタの交換は不要となる。
【0028】
図4に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、第1実施形態の電源コネクタ5に代えて電源ハーネス50を設けている。該電源ハーネス50は第1実施形態の第1、第2コネクタ部をそれぞれ独立した第1コネクタ51、第2コネクタ52とし、ハーネス53で接続した構成としている。
第1、第2コネクタ51、52ともハーネス53を構成する電線の両端に接続したタブ状の雄端子材を挿入係止している。
【0029】
該電源ハーネス50は第1コネクタ51を車載の高圧側コネクタ3と常時接続しておき、充電時にハーネス53を車両から引き出し、第2コネクタ52を家庭用の低圧外部電源側のコンセント30と接続している。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0030】
1 走行用バッテリ(高圧側蓄電池)
2 充電器
3 高圧側コネクタ
3a 端子材
5 電源コネクタ
10 コネクタハウジング
11 仕切壁
12 第1コネクタ部
13 第2コネクタ部
15 端子材
15a 第1端子部
15b 第2端子部
15c 中間支持部
33 低圧側コネクタ
50 電源ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車またはハイブリット車からなる車両に搭載される走行用バッテリに、家庭用低圧外部電源から電源取り入れに用いる電源コネクタであって、
前記車両側に設けられた前記走行用バッテリに取り付けられた高圧側コネクタに常時嵌合して接続される第1コネクタ部と、前記家庭用低圧外部電源側に設けられたコネクタと充電時に嵌合すると共に充電後は離脱する第2コネクタ部を備え、
前記第1コネクタ部と第2コネクタ部とは1つのハウジング内に設けた仕切壁を介して両側に背中合わせに設け、前記仕切壁を貫通させた端子金具の一側部を第1コネクタ部に突出する第1端子部、他側部を第2コネクタ部の第2端子部としていることを特徴とする電源コネクタ。
【請求項2】
前記仕切壁で中間部が支持されて前記第1端子部が前記第1コネクタ部に突出すると共に前記第2端子部が前記第2コネクタ部に突出する前記端子金具が2本〜5本設けられている請求項1に記載の電源コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは両端開口の円筒形状とし、長さ方向の中心部に前記仕切壁を設け、両側の第1、第2コネクタ部は円筒形の外壁で囲み、
前記端子金具の第1端子部及び第2端子部はタブ形状としたオス端子としている請求項1または請求項2に記載の電源コネクタ。
【請求項4】
電気自動車またはハイブリット車からなる車両に搭載される走行用バッテリに、家庭用低圧外部電源から電源取り入れに用いる電源用ハーネスであって、
前記車両側に設けられた前記走行用バッテリに取り付けられた高圧側コネクタに常時嵌合して接続される第1コネクタと、前記家庭用低圧外部電源側に設けられたコネクタと充電時に嵌合すると共に充電後は離脱する第2コネクタと、前記第1コネクタと第2コネクタとを接続するハーネスを備えていることを特徴とする電源用ハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−105513(P2012−105513A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254315(P2010−254315)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】