説明

電源中継制御装置および電源中継制御方法

【課題】主電源の電圧低下を検出し、一旦、電源供給を受ける装置を省電力モードに移行させ、主電源の電源遮断が起こるまでの時間を少しでも長くするように制御しつつ、補助電源を活用することで、動作中の情報処理機器の電源遮断を回避する装置と方法の提供を行うこと。
【解決手段】主電源の電圧低下が発生した場合に、電源供給を受ける装置を、一旦、省電力モードに移行させ、主電源の電源遮断が起こるまでの時間を少しでも長くするように制御しつつ、限られた容量の補助電源を用いて、主電源の電源遮断をバックアップする時間を少しでも長くとれるようにする電源制御機能を有する電源中継制御装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源の一時的電圧低下に伴って発生する情報処理装置の電源遮断を回避するための、電源と情報処理装置の制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の情報処理装置が、市場に登場して来ている。代表例は、カーナビゲーションシステムである。一方、車両に搭載されたバッテリは、イグニッションスイッチがスタータONに操作された場合には、車両エンジンを始動すべくスタータに電力を供給することで、電圧低下が起こり、情報処理装置等の他の機器への電力供給が十分に行われずに、情報処理装置が非作動状態に陥ってしまうという事態を引き起こす。パーソナルコンピュータ等の情報処理装置の場合、装置自体が予期しない状態で電源遮断が起こると、処理中のデータが消失してしまうなどの問題が発生する。
【0003】
この電源遮断問題への対応のための装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の技術は、カーナビゲーションシステムに搭載のディスク記憶装置のヘッドを電源電圧が規定値以下になる前に、所定位置に確実にアンロードできるようにする技術である。ヘッドアンロード制御を事前に開始することで、現在ライト中のセクタへのデータ破壊を防止しようというものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−202728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、電源遮断予測通知に応じ、ヘッドアンロード制御を開始することで、実際に装置電源が遮断される前に、動作が不安定な緊急アンロード状態とすることなく、速度制御による安定なヘッドアンロードを行って、ヘッドを確実に退避させることができる。その結果、ライト中のセクタのデータ破壊やヘッドの故障等を防止することが可能である。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、事前に電源遮断が起こることをシステムが把握し、問題状況を少しでも軽減するような予防処置を行うためのもので、その効果もディスク装置のヘッド制御に関わるものに限られる。従って、特許文献1の技術は、情報処理機器がアプリケーション実行中やOSの起動中に電源遮断が発生するような場合においての、データ消失などの各種の問題解決には適用できない。また、特許文献1の技術は電源供給を受ける特定機器以外の他の情報処理機器の電源遮断に伴う問題の軽減及び解決にも適用できない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、主電源の電圧低下を検出し、一旦、電源供給を受ける装置を省電力モードに移行させ、主電源の電源遮断が起こるまでの時間を少しでも長くするように制御しつつ、補助電源を活用することで、動作中の情報処理機器の電源遮断を回避する装置と方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の電源中継制御装置は、バッテリから電源供給を受けて、接続される情報処理装置に電源を供給する電源中継装置において、前記バッテリの電圧が所定の第1の電圧レベル以下になった時に、前記情報処理装置に対して、前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の電源中継制御装置は、本発明の第1の制御装置において、前記省電力モードに移行させるための信号を発した後に、前記バッテリの電圧が前記第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下になった時に、前記バッテリとは異なる補助電源からの電源供給を受け、前記情報処理機器に電源を供給することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の電源中継制御装置は、主電源バッテリの電圧レベルを監視する電圧監視手段と、補助電源を制御する補助電源制御手段と、前記主電源バッテリと前記補助電源からの電源を受けて前記電源を供給する情報処理装置を制御する情報処理装置制御手段とを有する電源中継装置において、前記電圧監視手段が、所定の第1の電圧レベル以下に前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知すると、前記情報処理装置制御手段は、前記主電源バッテリからの電源供給を受けている前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発し、さらに、前記電圧監視手段が、前記第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下に、前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知すると、前記補助電源制御手段は、前記補助電源からの電源供給を前記情報処理装置が受けるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の電源中継制御方法は、主電源バッテリと補助電源からの電源を受けて前記電源を供給する情報処理装置を制御する電源中継制御方法であって、前記主電源バッテリの電圧レベルを第1の電圧レベル以下に前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知するステップと、前記第1の電圧レベル以下に検知がされた後に、前記情報処理装置に対して前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発するステップと、前記第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下に、前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知するステップと、前記第2の電圧レベル以下に検知された後に、前記補助電源からの電源供給を前記情報処理装置が受けるように制御するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主電源の電圧低下を検出し、一旦、電源供給を受ける装置を省電力モードに移行させ、主電源の電源遮断が起こるまでの時間を少しでも長くするように制御しつつ、補助電源を活用することで、動作中の情報処理機器の電源遮断を回避する装置と方法の提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の電源中継制御装置と関連する装置との接続形態を示すブロック図である。電源中継制御装置3は、車載用収納部に収まった車載型コンピュータ装置1に電源を供給する電源ケーブルや各種データを送受信する通信線を接続するための接続アダプタの形態をとっても良い。例えば、車載用コンピュータ装置1は、パーソナルコンピュータアーキテクチャーで構成されたカーナビゲーションシステムで、各機能は、適宜、該当するソフトウェアを記憶装置から読み出して、処理ユニットにより実行される。一般のパーソナルコンピュータ同様、車載用コンピュータ装置1は、表示画面のバックライト装置の輝度を下げることや、表示画面の表示を停止するなどの一部機能を停止し、装置の消費電力を節約する省電力モードを有している。
【0014】
電源中継制御装置3は、補助電源2と車載機器およびエンジンスタータに電源を供給する主電源バッテリ7から電源供給を受けられるように接続されている。さらに車載用コンピュータ装置1は、電源中継制御装置3を介して、補助電源2と主電源バッテリ7からの電源供給を受けられるように、電源中継装置3と接続されている。電源中継制御装置3は、電源制御部4を有している。電源制御部4は、主電源バッテリ7の電圧レベルの監視やその電圧レベルに応じた補助電源2のON/OFFおよび車載用コンピュータ装置1に対して省電力モードへの移行あるいは通常モードへの復帰命令を発する機能を有している。
【0015】
ケーブル5は電源供給線である。電源制御部4により、主電源バッテリ7からの電源あるいは補助電源2からの電源に適宜切替えられた電源がこのケーブル5によって車載用コンピュータ装置1に供給される。切替えとは、主電源バッテリ7と補助電源2を排他的に切替えるように制御しても良いし、主電源バッテリ7からの電源電圧が低下した際に、それを補うように補助電源2からの電源供給を受けるように制御しても良い。
【0016】
通信ケーブル6は、車載用コンピュータ装置1とデータを送受する信号線である。GPSユニットや速度検出装置などからのデータを受け、車載用コンピュータ装置1は、適時処理を行う。本発明では、車載用コンピュータ装置1に対して発せられる省電力モードへの移行あるいは通常モードへの復帰命令の信号は、通信ケーブル6を介して、車載用コンピュータ装置1に伝送される。
【0017】
車載用コンピュータ装置1は、図1に示す1と指示されている番号の方からユーザが抜き出して、車外に持ち出しても利用可能で、持ち出しの際の電源供給をするリチウムイオンバッテリが装着可能な構造となっている。しかし、車載利用においては、車内高熱化によるリチウムイオン電池の安全上の懸念から、リチウムイオン電池は取り外し、車載の主電源バッテリ7から主に電源供給を受けて、車載用コンピュータ装置1が作動する設計となっている。
【0018】
また、車載用コンピュータ装置1は、車載用収納部に収まった状態で接続アダプタである電源中継制御装置3と確実に接続がされるような構造となっている。
【0019】
次に図2を参照して、電源中継制御装置3の制御フローの詳細を説明する。図2は、主電源バッテリ7の電圧レベル変化を示す図である。ここでは、車載用コンピュータ装置1の動作中の電源遮断により動作中の処理データの破壊を防止することを狙いとして、エンジン始動時のスタータ電源供給による車載電源の電圧の急低下から引き起こされる電源遮断を防ぐために、10秒程度の電源バックアップが必要との前提を置いている。これらの狙いや前提は、前述したものに捉われる必要は無く、突然の電源遮断に対して、その前兆の電圧低下を察知し、電源供給を受けている情報処理装置を電源遮断前に省電力モードに移行させることで、電源遮断までの時間的余裕を伸ばしたり、電源遮断を回避させたりする効果を奏功する種々のシステムであれば、前述の前提や目的から外れても、本発明の適用は可能である。
【0020】
電源制御部4は主電源バッテリ7の電圧レベルを監視していて、電圧レベルの低下を検知する(ステップS1)。すなわち、エンジン始動のために車のキーが回されたことなどを検知する。電源制御部4は主電源バッテリ電圧が10V以下になった時に、車載用コンピュータ装置1に対して、アラーム信号を通知する(ステップS2)。車載用コンピュータ装置1はアラーム信号の通知を受けると、強制的に省電力モードに動作モードを移行させる(ステップS3)。強制省電力モードとして、具体的には、表示液晶のバックライト輝度を低下させることなどが挙げられる。
【0021】
次に、電源制御部4は、主電源バッテリ電圧が8V以下になったのを検知すると、補助電源2をONにさせる(ステップS4)。例えば、補助電源2は、1Fの容量を有すスーパーキャパシタである。
【0022】
車載用コンピュータ装置1は、補助電源2からの電源供給を受けて、強制省電力モードで動作中となる(ステップS5)。詳細には、S5と指示された矩形部分が、補助電源2がONになっている時間とその時の主電源バッテリ7の電圧レベルを示している。ここではバックアップ時間は、最大10秒としている。
【0023】
通常モードで10Vかつ1.5Aの電力が必要であり、強制省電力モードは10Vかつ0.5Aのみの電力が必要であれば良いと仮定した例で説明すると、バックアップ時間が通常モードであると3.3秒のみしか、1Fの容量のスーパーキャパシタでは取れないが、省電力モードにすることで、おおよそ10秒程度のバックアップ時間が取れることになる。限られた容量の補助電源キャパシタで主電源の電圧低下中の期間をバックアップするには、装置の作動継続に必要な電力消費量を低く抑えられれば、それだけバックアップ時間を長く取れるからである。上記のバックアップ時間は、W×S=C×V×V/2の関係式から導き出される。Wは、電圧値Vと電流値Aの乗算により求められる値で、Sがバックアップ時間、Cはキャパシタ容量を示すFである。
【0024】
電源制御部4は、主電源バッテリ電圧が8V以上になったのを検知すると、補助電源2をOFFにする(ステップS6)。すなわち、補助電源2からの車載用コンピュータ装置1への電源供給を停止する。
【0025】
そして、電源制御部4は、主電源バッテリ電圧が10V以上になったのを検知すると、アラーム信号を解除する信号を通知し、通知を受けた車載用コンピュータ装置1は省電力モードから通常動作モードに移行する(ステップS7)。
以上のように電源制御部4を有する電源中継制御装置3により、一旦、電源供給を受ける装置を省電力モードに移行させ、主電源の電源遮断が起こるまでの時間を少しでも長くするように制御しつつ、限られた容量の補助電源2を用いて、主電源の電源遮断をバックアップする時間を少しでも長くとれるようにすることで、動作中の情報処理機器の電源遮断を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の電源中継制御装置と関連装置の接続を示すブロック図である。
【図2】本発明の制御を説明するための主電源バッテリの電圧レベル変化を示す図である
【符号の説明】
【0027】
1 車載用コンピュータ装置
2 補助電源
3 電源中継制御装置
4 電源制御部
5 電源ケーブル
6 通信ケーブル
7 主電源バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから電源供給を受けて、接続される情報処理装置に電源を供給する電源中継装置において、前記バッテリの電圧が所定の第1の電圧レベル以下になった時に、前記情報処理装置に対して、前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発することを特徴とする電源中継制御装置。
【請求項2】
前記電源中継装置は、前記省電力モードに移行させるための信号を発した後に、前記バッテリの電圧が第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下になった時に、前記バッテリとは異なる補助電源からの電源供給を受け、前記情報処理機器に電源を供給することを特徴とする請求項1に記載の電源中継制御装置。
【請求項3】
前記補助電源はスーパーキャパシタで構成され、前記情報処理装置が省電力モードで動作した後に、前記バッテリの電圧レベルが所定の第3の電圧レベル以上に復帰した時に、前記補助電源からの電源供給を停止することを特徴とする請求項2に記載の電源中継制御装置。
【請求項4】
主電源バッテリの電圧レベルを監視する電圧監視手段と、補助電源を制御する補助電源制御手段と、前記主電源バッテリと前記補助電源からの電源を受けて前記電源を供給する情報処理装置を制御する情報処理装置制御手段とを有する電源中継装置において、
前記電圧監視手段が、所定の第1の電圧レベル以下に前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知すると、前記情報処理装置制御手段は、前記主電源バッテリからの電源供給を受けている前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発し、
さらに、前記電圧監視手段が、前記第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下に、前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知すると、前記補助電源制御手段は、前記補助電源からの電源供給を前記情報処理装置が受けるように制御することを特徴とする電源中継制御装置。
【請求項5】
主電源バッテリと補助電源からの電源を受けて前記電源を供給する情報処理装置を制御する電源中継制御方法であって、
前記主電源バッテリの電圧レベルを第1の電圧レベル以下に前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知するステップと、
前記第1の電圧レベル以下に検知がされた後に、前記情報処理装置に対して前記情報処理装置を省電力モードに移行させるための信号を発するステップと、
前記第1の電圧レベルより低い所定の第2の電圧レベル以下に、前記主電源バッテリの電圧が下がったことを検知するステップと、
前記第2の電圧レベル以下に検知された後に、前記補助電源からの電源供給を前記情報処理装置が受けるように制御するステップと
を有することを特徴とする電源中継制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−247153(P2009−247153A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92137(P2008−92137)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】