説明

電源出力電圧ループバック制御回路、電源装置及びそれらに用いるフェイルセーフ制御方法

【課題】 負荷側の集積デバイスを保護し、装置の信頼性及び安全性をはかることが可能な電源出力電圧ループバック制御回路を提供する。
【解決手段】 電源出力電圧ループバック制御回路(3)は、電源の出力電圧の常時監視及びモニタを行う出力監視&モニタ回路(31)と、出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する電圧調整回路(32)と、電圧調整回路から出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較して管理範囲内であることを常時監視する調整線電圧監視回路(35)と、調整線電圧監視回路の調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える場合及び出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える場合に電源(21,22)の出力を停止させるON/OFF制御回路(33)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源出力電圧ループバック制御回路、電源装置及びそれらに用いるフェイルセーフ制御方法に関し、特に電源出力電圧ループバック制御における調整電圧の監視と異常時の電源出力停止制御とに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は本発明に関連するオンボード電源の出力電圧ループバック制御の一例を示すブロック図である。一次電源1の出力電圧は複数のオンボード電源21,22及び電源制御用プログラマブル集積回路又は集積デバイスの構成回路(以下、電源制御用集積回路とする)6に電源を供給する。
【0003】
各オンボード電源21,22の出力電圧は、負荷となる集積回路群4に電源を供給すると共に、電源制御用集積回路6の出力電圧監視&モニタ回路31に接続され、出力電圧監視&モニタ回路31で出力電圧の監視とモニタとを行う。
【0004】
電圧調整抵抗網51,52は、オンボード電源21,22の出力電圧とTRIM(トリム)端子及び電圧調整回路32とに接続され、電圧調整回路32の調整電圧出力を基にしてオンボード電源21,22の出力電圧を所望値に調整する。
【0005】
ON/OFF制御回路33は、各オンボード電源21,22のリモートON/OFF信号に接続され、オンボード電源21,22の出力電圧の供給あるいは停止を制御する。
【0006】
集中制御回路61は、各オンボード電源21,22の出力電圧基準データ、出力電圧監視範囲データを保有し、出力電圧モニタ結果と出力電圧基準データとの差分調整演算を行い、その演算結果である電圧調整値を電圧調整回路32に出力する。また、集中制御回路61は、出力電圧監視で異常を検出した場合、ON/OFF制御回路33に電源の停止を出力すると共に、障害データの記録制御を行う。
【0007】
尚、電源制御用集積回路6は、集積デバイスの構成回路で実現する場合もある。いずれの構成においても、電源制御用集積回路6は、集中制御回路61、電圧調整回路32、ON/OFF制御回路33、出力電圧監視&モニタ回路31からなる。
【0008】
また、本発明に関連するオンボード電源の出力電圧ループバック制御については、以下の特許文献1〜3に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術では、電源装置における出力電圧の変動によるシステムの誤動作や突然のデータ破壊を防止し、システム全体の信頼性を高める技術が開示されている。
【0009】
特許文献2に記載の技術では、装置の動作確認時における監視電圧の変更と、元の監視電圧への復帰とを簡単な操作で行えるようにした技術が開示されている。特許文献3に記載の技術では、電子式装置における各機能部の電源電圧の異常発生時に該機能部におけるハードウェア上の損傷を最小限にとどめ、また電子式装置内の他の機能部に対してハードウェアの損傷をもたらさないようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−99170号公報
【特許文献2】特開2002−372569号公報
【特許文献3】特開2004−215352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した本発明に関連するオンボード電源の出力電圧ループバック制御では、出力電圧監視を行い、異常電圧発生検出時に出力電圧を停止にしているが、異常電圧が発生してから出力電圧が停止に至るまでに僅かな時間が要し、負荷側の集積デバイスが異常出力電圧にさらされて損傷に至る問題がある。この問題については、上記の特許文献1〜3に記載の技術では、解決することが困難である。
【0012】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、負荷側の集積デバイスを保護し、装置の信頼性及び安全性をはかることができる電源出力電圧ループバック制御回路、電源装置及びそれらに用いるフェイルセーフ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による電源出力電圧ループバック制御回路は、電源の電源出力電圧ループバック制御において、
前記電源の出力電圧の常時監視及びモニタを行う出力監視&モニタ回路と、
前記出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する電圧調整回路と、
前記電圧調整回路から出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較して管理範囲内であることを常時監視する調整線電圧監視回路と、
前記調整線電圧監視回路の調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える場合及び前記出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える場合に前記電源の出力を停止させるON/OFF制御回路とを備えている。
【0014】
本発明による電源装置は、上記の電源出力電圧ループバック制御回路を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によるフェイルセーフ制御方法は、電源の電源出力電圧ループバック制御における異常時のフェイルセーフ制御方法であって、
前記電源の出力電圧の常時監視及びモニタを行う出力監視&モニタ処理と、
前記出力監視&モニタ処理の出力電圧監視結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する電圧調整処理と、
前記電圧調整処理により出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較して管理範囲内であることを常時監視する調整線電圧監視処理と、
前記調整線電圧監視処理の調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える場合及び前記出力監視&モニタ処理の出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える場合に前記電源の出力を停止させるON/OFF制御処理とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、負荷側の集積デバイスを保護し、装置の信頼性及び安全性をはかることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による電源装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に関連する電源装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による電源出力電圧ループバック制御回路の概略について説明する。本発明による電源出力電圧ループバック制御回路は、オンボード電源の電源出力電圧ループバック制御における異常時のフェイルセーフ制御を行うために、出力監視&モニタ回路と、電圧調整回路と、調整線電圧監視回路と、ON/OFF制御回路と、集中制御回路とを備えている。
【0019】
出力監視&モニタ回路は、オンボード電源の出力電圧を常時監視してモニタする。電圧調整回路は、出力監視&モニタ回路の出力電圧モニタ結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する。
【0020】
調整線電圧監視回路は、電圧調整回路から出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較し、その比較結果が管理範囲内であることを常時監視する。ON/OFF制御回路は、調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える時及び出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える時にオンボード電源の出力を停止させる。
【0021】
集中制御回路は、出力電圧基準データ及び出力電圧監視範囲のデータ、電圧調整範囲のデータを保有する機能と、出力電圧モニタ結果と出力電圧基準データとの差分調整演算を行う機能と、異常に伴うオンボード電源の出力電圧の停止制御時に障害データを記録する機能と、複数のオンボード電源の出力電圧の供給及び停止を管理制御する機能とを持つ。
【0022】
本発明による電源出力電圧ループバック制御回路は、上記の各回路により、オンボード電源の出力電圧を監視及びモニタし、モニタ結果をフィードバックして所望の出力電圧に調整することをエンドレスに繰り返す出力電圧ループバック制御回路である。
【0023】
本発明による電源出力電圧ループバック制御回路は、何らかの影響で制御ラインのデバイスにハード故障が生じた場合、オンボード電源の出力電圧を調整する過程で異常を検出し、オンボード電源が異常出力に至る前に出力電圧を停止するフェイルセーフ制御回路を提供することで、上述した問題を解決している。つまり、本発明による電源出力電圧ループバック制御回路は、上記のフェイルセーフ制御回路を提供することで、負荷側の集積デバイスを保護し、装置の信頼性及び安全性をはかっている。
【0024】
図1は本発明の実施の形態による電源装置の構成例を示すブロック図である。図1において、本発明の実施の形態による電源装置は、一次電源1と、複数のオンボード電源21,22と、電源制御用プログラマブル集積回路又は集積デバイスの構成回路(以下、電源制御用集積回路とする)3と、集積回路群4と、電圧調整抵抗網51,52とを備えている。
【0025】
電源制御用集積回路3は、出力電圧監視&モニタ回路31と、電圧調整回路32と、ON/OFF制御回路33と、集中制御回路34と、調整線電圧検出回路35とを備えている。
【0026】
一次電源1の出力電圧は、複数のオンボード電源21,22及び電源制御用集積回路3に電源を供給する。各オンボード電源21,22の出力電圧は、負荷となる集積回路群4に電源を供給すると共に、電源制御用集積回路3の出力電圧監視&モニタ回路31に接続され、出力電圧監視&モニタ回路31で出力電圧の監視とモニタとを行い、そのモニタ結果を集中制御回路34に出力する。
【0027】
電圧調整抵抗網51,52は、オンボード電源21,22の出力電圧とTRIM(トリム)端子及び電圧調整回路32とに接続され、電圧調整回路32の調整電圧値を基にしてオンボード電源21,22の出力電圧を所望値に調整する。ここで、電圧調整回路32の出力電圧は、集中制御回路34から入力される。
【0028】
調整線電圧監視回路35は、電圧調整回路32から出力される調整電圧と集中制御回路34から出力される電圧調整監視範囲電圧値とを常時比較して監視し、監視結果が管理範囲を超える場合に集中制御回路34に障害内容を出力する。
【0029】
ON/OFF制御回路33は、オンボード電源21,22のリモートON/OFFに接続し、集中制御回路34から入力された情報を基にしてオンボード電源21,22の出力電圧の供給/停止を制御する。
【0030】
ON/OFF制御回路33は、オンボード電源出力電圧監視及び調整電圧出力監視において、異常発生時にリモートON/OFFをOFFにしてオンボード電源21,22の出力を停止する。
【0031】
集中制御回路34は、各オンボード電源21,22の出力電圧基準データ、出力電圧監視範囲データ、電圧調整監視範囲データを保有し、出力電圧モニタ結果が入力された時に出力電圧基準データとの差分調整演算により差分補正の調整電圧値を電圧調整回路32に出力する。
【0032】
また、集中制御回路34は、保有している出力電圧監視範囲データを基に比較用電圧値を出力電圧監視&モニタ回路31へ出力する。さらに、集中制御回路34は、電圧調整監視範囲データを基に比較用電圧値を調整線電圧検出回路35へ出力する。さらにまた、集中制御回路34は、出力電圧及び調整電圧の監視において異常を検出した場合、ON/OFF制御回路33に電源の停止を出力すると共に、障害データの記録制御をする。
【0033】
このように、本実施の形態では、オンボード電源21,22の出力電圧ループバック制御において、出力電圧の調整用電圧を常時監視することにより、出力電圧調整ループ制御過程で何らかの影響で制御ラインのデバイスにハード故障が生じた場合にただちに異常検出して、オンボード電源21,22が異常出力に至る前に出力電圧を停止し、負荷側の集積回路群4に損傷が生じないフェイルセーフ制御を実行することで、負荷側の集積回路群を保護し、装置の信頼性及び安全性をはかっている。
【符号の説明】
【0034】
1 一次電源
3 電源制御用プログラマブル集積回路
4 集積回路群
21,22 オンボード電源
31 出力電圧監視&モニタ回路
32 電圧調整回路
33 ON/OFF制御回路
34 集中制御回路
35 調整線電圧検出回路
51,52 電圧調整抵抗網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の電源出力電圧ループバック制御において、
前記電源の出力電圧の常時監視及びモニタを行う出力監視&モニタ回路と、
前記出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する電圧調整回路と、
前記電圧調整回路から出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較して管理範囲内であることを常時監視する調整線電圧監視回路と、
前記調整線電圧監視回路の調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える場合及び前記出力監視&モニタ回路の出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える場合に前記電源の出力を停止させるON/OFF制御回路とを有することを特徴とする電源出力電圧ループバック制御回路。
【請求項2】
出力電圧及び調整電圧の監視において異常を検出した場合に前記ON/OFF制御回路に前記電源の停止を指示すると共に、障害データの記録制御を行う集中制御回路を含むことを特徴とする請求項1記載の電源出力電圧ループバック制御回路。
【請求項3】
前記集中制御回路は、前記出力電圧基準データ及び前記出力電圧監視範囲のデータ、前記電圧調整範囲のデータを保有する機能と、前記出力電圧監視結果と前記出力電圧基準データとの差分調整演算を行う機能と、異常に伴う前記電源の出力電圧の停止制御時に前記障害データを記録する機能と、複数のオンボード電源の出力電圧の供給及び停止を管理制御する機能とを含むことを特徴とする請求項2記載の電源出力電圧ループバック制御回路。
【請求項4】
上記の請求項1から請求項3のいずれかに記載の電源出力電圧ループバック制御回路を含むことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
電源の電源出力電圧ループバック制御における異常時のフェイルセーフ制御方法であって、
前記電源の出力電圧の常時監視及びモニタを行う出力監視&モニタ処理と、
前記出力監視&モニタ処理の出力電圧監視結果と出力電圧基準データとの差分調整演算結果から調整電圧値を出力する電圧調整処理と、
前記電圧調整処理により出力される電圧と電圧調整監視範囲値とを比較して管理範囲内であることを常時監視する調整線電圧監視処理と、
前記調整線電圧監視処理の調整電圧監視結果が電圧調整監視範囲を超える場合及び前記出力監視&モニタ処理の出力電圧監視結果が出力電圧監視範囲を超える場合に前記電源の出力を停止させるON/OFF制御処理とを有することを特徴とするフェイルセーフ制御方法。
【請求項6】
出力電圧及び調整電圧の監視において異常を検出した場合に前記ON/OFF制御処理に前記電源の停止を指示すると共に、障害データの記録制御を行う集中制御処理を含むことを特徴とする請求項5記載のフェイルセーフ制御方法。
【請求項7】
前記集中制御処理は、前記出力電圧基準データ及び前記出力電圧監視範囲のデータ、前記電圧調整範囲のデータを保有する処理と、前記出力電圧監視結果と前記出力電圧基準データとの差分調整演算を行う処理と、異常に伴う前記電源の出力電圧の停止制御時に前記障害データを記録する処理と、複数のオンボード電源の出力電圧の供給及び停止を管理制御する処理とを含むことを特徴とする請求項6記載のフェイルセーフ制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−50136(P2011−50136A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194915(P2009−194915)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】