説明

電源切替回路および電子機器

【課題】より長い時間、補助電源によって負荷部をバックアップできる。
【解決手段】実施形態の電源切替回路は、主電源ラインと、補助電源ラインと、ダイオードと、トランジスタと、を備える。前記主電源ラインは、主電源から負荷部に電源を供給する。前記補助電源ラインは、前記主電源から前記負荷部への電源の供給が低下した場合に、補助電源から前記負荷部に電源を供給する。前記ダイオードは、前記補助電源ラインにおいて、アノード端子が前記補助電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されている。前記トランジスタは、前記補助電源ラインにおいて、ソース端子が前記ダイオードのアノード端子に接続され、ドレイン端子が前記ダイオードのカソード端子に接続され、ベース端子が前記主電源ラインに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源切替回路および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
AC電源(100Vまたは200V)からDC電源を生成し、生成したDC電源を各種装置に供給することにより当該装置を動作させ、停電時には、装置内の重要なデータを保持するためのバックアップ用電源として搭載している2次電池から装置に電源を供給する機器がある。バックアップ用電源を備えた機器においては、停電時のみ2次電池から装置に電源を供給するために、電源の供給元を切り替える切替回路が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、バックアップ用電源として用いられる2次電池は電池容量が減ってくると出力電圧が下がる傾向にあるため、データのバックアップ時間を長くするためには、電源の供給元を切り替える切替回路での電圧ドロップを減らすことで、1回の充電でバックアップ用電源を長時間使用することが可能となる。しかしながら、従来は、ダイオードを利用して、電源の供給元を2次電池に切り替えて、2次電池からシステムに電源を供給しているため、ダイオードの順方向電圧降下により電圧が低下してしまい、システムへの電源の供給にロスが発生する、という課題がある。また、電源の供給元を切り替えるための切替専用のICも存在するが、ダイオードに比べて高価である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態の電源切替回路は、主電源ラインと、補助電源ラインと、ダイオードと、トランジスタと、を備える。前記主電源ラインは、主電源から負荷部に電源を供給する。前記補助電源ラインは、前記主電源から前記負荷部への電源の供給が低下した場合に、補助電源から前記負荷部に電源を供給する。前記ダイオードは、前記補助電源ラインにおいて、アノード端子が前記補助電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されている。前記トランジスタは、前記補助電源ラインにおいて、ソース端子が前記ダイオードのアノード端子に接続され、ドレイン端子が前記ダイオードのカソード端子に接続され、ベース端子が前記主電源ラインに接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、本実施形態にかかるプリンタ装置とPOS端末との概観を示す図である。
【図2】図2は、POS端末の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、電源部の電気的構成を示す図である。
【図4】図4は、24V電源ラインまたは2次電池ラインから負荷部に電源を供給する動作を説明するための図である。
【図5】図5は、24V電源ラインまたは2次電池ラインから負荷部に電源を供給する動作を説明するための図である。
【図6】図6は、24V電源ラインまたは2次電池ラインから負荷部に電源を供給する動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、本実施形態にかかるプリンタ装置とPOS端末との概観を示す図である。POS(Point Of Sales)端末1は、プリンタ装置7に電源を供給する電子機器であり、現金等を収容するためのドロワ2の上に載置されており、このドロワ2の引出し2aの開閉を制御する。
【0007】
POS端末1には、正面側にオペレータが預かり金額などを入力するためのキーボード3とモードスイッチ4とが設けられていると共に、オペレータ用のメインディスプレイ5が接続され、背面側には客用のサブディスプレイ6が接続される。モードスイッチ4は、「登録」、「点検」、「精算」、「設定」などの各種業務モードを選択するためのスイッチで、例えば鍵などで操作される。
【0008】
また、POS端末1には、POS端末1が電源ケーブルC1により電源を供給して駆動するプリンタ装置7が接続されている。なお、電源ケーブルC1には、POS端末1からプリンタ装置7に電源を供給するための配線(詳細は後述する)の他、データの送受信を行う信号線も含まれている。なお、電源とともにデータの伝送を行う電源ケーブルC1としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)などであってよい。
【0009】
プリンタ装置7は、熱によって専用紙に印字を行なうサーマルヘッド(印字部)を有するサーマルプリンタであり、POS端末1により供給される電源およびデータに基づいて、レシートおよびジャーナルの印刷を行う。プリンタ装置7によって印字されたレシートはレシート発行口8から発行される。なお、本実施形態ではサーマル方式で印字を行う印字部を有する構成を例示するが、印字部の印字方式は、他の方式であってよく、例えばインクジェット方式であってもよい。
【0010】
また、POS端末1には、商品の販売登録の際に商品ラベルに印刷されたバーコードを読み取るためのバーコードスキャナ9が接続されている。メインディスプレイ5およびサブディスプレイ6は、バックライトを備えた液晶カラーディスプレイ等で構成され、販売登録された商品の品名および価格や、1取引の合計金額や釣銭額などを表示する。
【0011】
図2は、POS端末の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、POS端末1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、記憶部13、通信I/F14、スピーカ15、LED(Light Emitting Diode)16、冷却ファン17、メインディスプレイ5、サブディスプレイ6、表示制御部23、キーボード3、モードスイッチ4、キーボード制御部32、プリンタ制御部42、シリアルポート52、バーコードスキャナ9、電源部60を備えている。
【0012】
CPU10は、ROM11や記憶部13に記憶されたプログラムをRAM12の作業領域に展開し、順次実行することでPOS端末1全体の処理を中央制御する。ROM11、記憶部13は、POS端末1のプログラムや各種設定データを記憶する。なお、記憶部13は、半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの読み書き可能な記憶媒体であってよい。
【0013】
通信I/F14は、CPU10の制御の下、外部機器との間でデータの送受信を行う通信インタフェースである。スピーカ15は、CPU10の制御の下、エラー発生時における警告音やユーザへの各種報知音等を出力する。LED16は、CPU10の制御の下、光を点滅させることなどによりユーザへの報知を行う。冷却ファン17は、POS端末1の内部を冷却するためのファンである。
【0014】
表示制御部23は、メインディスプレイ5、サブディスプレイ6に対する情報の表示を制御する。キーボード制御部32は、キーボード3、モードスイッチ4を制御する。プリンタ制御部42は、プリンタ装置7を制御する。シリアルポート52は、バーコードスキャナ9等の機器を接続するRS−232C、USBなどのシリアル通信方式のインタフェースである。
【0015】
電源部60は、POS端末1の各部、POS端末1と接続するプリンタ装置7、バーコードスキャナ9などに電源を供給する。なお、以下の説明では、電源部60からの電源の供給を受ける各部(POS端末1の各部、プリンタ装置7、バーコードスキャナ9など)を総称して負荷部とする。
【0016】
ここで、図3を用いて、電源部60の詳細について説明する。図3は、電源部の電気的構成を示す図である。電源部60は、図3に示すように、AC−DC変換部61、リチウムイオン電池62、電源切替回路63などを備える。
【0017】
AC−DC変換部61は、商用電源の交流電圧を直流電圧(24V)に変換する。そして、AC−DC変換部61は、電源切替回路63を介して、変換した直流電圧を負荷部に印加して電源を供給する主電源である。
【0018】
リチウムイオン電池62は、停電等によりAC−DC変換部61からの電源供給が停止または低下した場合に、電源切替回路63を介して、出力電圧を負荷部に印加して負荷部に電源を供給するバックアップ電源(補助電源)である。本実施形態では、リチウムイオン電池62には、満充電での出力電圧が8.0Vで、放電を停止する出力電圧が6.0Vの2直セルの2次電池(電池)を用いる。
【0019】
電源切替回路63は、商用電源から交流電圧が印加されている通常時においては、AC−DC変換部61において変換された直流電圧を負荷部に印加する。一方、電源切替回路63は、商用電源からの交流電圧の印加が停止されている停電時においては、リチウムイオン電池62からの出力電圧を負荷部に印加する。
【0020】
より具体的には、電源切替回路63は、24V電源ライン64、2次電池ライン65、第1ダイオード66、第2ダイオード67、およびトランジスタ68などを備えている。
【0021】
24V電源ライン64は、AC−DC変換部61により直流電圧が印加されて、AC−DC変換部61から負荷部に電源を供給する主電源ラインである。
【0022】
2次電池ライン65は、リチウムイオン電池62により出力電圧(24V電源ライン64に印加された直流電圧よりも低い電圧)が印加されて、停電等が発生してAC−DC変換部61から負荷部への電源の供給が低下した場合に、リチウムイオン電池62から負荷部に電源を供給する補助電源ラインである。
【0023】
第1ダイオード66は、24V電源ライン64において、アノード端子66aがAC−DC変換部61側に接続され、カソード端子66bが負荷部側に接続されて、AC−DC変換部61側から負荷部側に向かってのみ電流を流す整流作用を有する電子素子である。
【0024】
第2ダイオード67は、2次電池ライン65において、アノード端子67aがリチウムイオン電池62側に接続され、カソード端子67bが負荷部側に接続されて、リチウムイオン電池62側から負荷部側に向かってのみ電流を流す整流作用を有する電子素子である。
【0025】
トランジスタ68は、2次電池ライン65において、ソース端子68aが第2ダイオード67のアノード端子67aに接続され、ドレイン端子68bが第2ダイオード67のカソード端子67bに接続され、ベース端子68cが24V電源ライン64に接続されたp型のFET(Field Effect Transistor)トランジスタである。つまり、トランジスタ68は、リチウムイオン電池62から負荷部へ電源を供給する2次電池ライン65に接続された第2ダイオード67のバイパスとして機能する。
【0026】
次に、図4〜6を用いて、24V電源ライン64または2次電池ライン65から負荷部に電源を供給する動作について詳細に説明する。図4〜6は、24V電源ラインまたは2次電池ラインから負荷部に電源を供給する動作を説明するための図である。
【0027】
商用電源からの電源の供給があり、AC−DC変換部61により24V電源ライン64に直流電圧が印加されている場合、24V電源ライン64に印加される直流電圧が2次電池ライン65に印加される出力電圧よりも高くなるので、図4に示すように、24V電源ライン64が、第1ダイオード66を介して負荷部に電源を供給する。
【0028】
なお、AC−DC変換部61により24V電源ライン64に直流電圧が印加されている場合、24V電源ライン64に印加される直流電圧が2次電源ライン65に印加される出力電圧よりも高くなるため、24V電源ライン64から2次電池ライン65に向かって電流が流れ込もうとするが、2次電池ライン65には、第2ダイオード67が設けられているため、24V電源ライン64から2次電池ライン65への電流の流れ込みを防止することができる。
【0029】
商用電源からの電源の供給が遮断されて停電が発生し、AC−DC変換部61により24V電源ライン64に印加される直流電圧が2次電池ライン65に印加された出力電圧より低くなった場合、図5に示すように、2次電池ライン65が、第2ダイオード67を介して負荷部に電源を供給する。商用電源からの電源の供給が遮断されて停電が発生した直後においては、24V電源ライン64の直流電圧が十分に低下しておらず、24V電源ライン64の直流電圧に所定の電圧Vgsを加算した電圧が、2次電池ライン65の出力電圧よりも高くなる。そのため、トランジスタ68はオンされず、2次電池ライン65は、第2ダイオード67を介して負荷部に電源を供給する。ここで、所定の電圧Vgsとは、トランジスタ68をオンするために必要な電位差である。
【0030】
なお、リチウムイオン電池62から電源が供給されている間、24V電源ライン64に印加される直流電圧が2次電源ライン65に印加される出力電圧よりも低くなるため、2次電池ライン65から24V電源ライン64に向かって電流が流れ込もうとするが、24V電源ライン64には、第1ダイオード66が設けられているため、2次電池ライン65から24V電源ライン64への電流の流れ込みを防止することができる。
【0031】
商用電源からの電源の供給が遮断されて停電が発生した後、24V電源ライン64の直流電圧に所定の電圧Vgsを加算した電圧が、2次電池ライン65の出力電圧よりも低くなると、トランジスタ68がオンされて、図6に示すように、2次電池ライン65は、トランジスタ68を介して負荷部に電源を供給する。トランジスタ68を介して負荷部に電源を供給する際の電圧降下(数10mV)は、第2ダイオード67を介して負荷部に電源を供給する場合の電圧降下(0.2V)よりも小さいため、2次電池ライン65による負荷部への電源供給のロスを少なくすることができ、より長い時間、リチウムイオン電池62によって負荷部をバックアップすることができる。
【0032】
このように本実施形態にかかるPOS端末1によれば、AC−DC変換部61から負荷部に電源を供給する24V電源ライン64と、AC−DC変換部61から負荷部への電源の供給が低下した場合に、リチウムイオン電池62から負荷部に電源を供給する2次電池ライン65と、2次電池ライン65において、アノード端子67aがリチウムイオン電池62側に接続され、カソード端子67bが負荷部側に接続された第2ダイオード67と、2次電池ライン65において、ソース端子68aが第2ダイオード67のアノード端子67aに接続され、ドレイン端子68bが第2ダイオード67のカソード端子67bに接続され、ベース端子68cが24V電源ライン64に接続されたトランジスタ68と、を備えることにより、AC−DC変換部61から負荷部への電源の供給が停止して停電が発生した場合に、トランジスタ68を第2ダイオード67のバイパスとして機能させることができるので、2次電池ライン65による負荷部への電源供給のロスを少なくすることができ、より長い時間、リチウムイオン電池62によって負荷部をバックアップすることができる。
【0033】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 POS端末
7 プリンタ装置
9 バーコードスキャナ
60 電源部
61 AC−DC変換部
62 リチウムイオン電池
63 電源切替回路
64 24V電源ライン
65 2次電池ライン
66 第1ダイオード
67 第2ダイオード
68 トランジスタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2001−142584号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源から負荷部に電源を供給する主電源ラインと、
前記主電源から前記負荷部への電源の供給が低下した場合に、補助電源から前記負荷部に電源を供給する補助電源ラインと、
前記補助電源ラインにおいて、アノード端子が前記補助電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されたダイオードと、
前記補助電源ラインにおいて、ソース端子が前記ダイオードのアノード端子に接続され、ドレイン端子が前記ダイオードのカソード端子に接続され、ベース端子が前記主電源ラインに接続されたトランジスタと、
を備えた電源切替回路。
【請求項2】
前記補助電源ラインは、前記補助電源である2次電池から前記負荷部に電源を供給する請求項1に記載の電源切替回路。
【請求項3】
前記主電源ラインにおいて、アノード端子が前記主電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されたダイオードを備えた請求項1または2に記載の電源切替回路。
【請求項4】
負荷部と、
主電源から前記負荷部に電源を供給する主電源ラインと、
前記主電源から前記負荷部への電源の供給が低下した場合に、補助電源から前記負荷部に電源を供給する補助電源ラインと、
前記補助電源ラインにおいて、アノード端子が前記補助電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されたダイオードと、
前記補助電源ラインにおいて、ソース端子が前記ダイオードのアノード端子に接続され、ドレイン端子が前記ダイオードのカソード端子に接続され、ベース端子が前記主電源ラインに接続されたトランジスタと、
を備えた電子機器。
【請求項5】
前記補助電源ラインは、前記補助電源である2次電池から前記負荷部に電源を供給する請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記主電源ラインにおいて、アノード端子が前記主電源側に接続され、カソード端子が前記負荷部側に接続されたダイオードを備えた請求項4または5に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46501(P2013−46501A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183011(P2011−183011)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】