説明

電源回生式充放電試験装置

【課題】チョッパ回路の半導体スイッチング素子に逆並列接続したダイオードの逆方向回復損失とそれに伴う電磁ノイズを抑制する電気回生式充放電試験装置を提供する。
【解決手段】PWMコンバータ10と、平滑コンデンサ20A,20Bと、ダイオード23A〜23Hが逆並列接続された半導体スイッチング素子22A〜22Hをブリッジ接続した4象限チョッパ回路と、4象限チョッパ回路の第1のアームにクランプされたショットキーバリアダイオード1A,1Bと、4象限チョッパ回路の第2のアームにクランプされたショットキーバリアダイオード1C,1Dと、4象限チョッパ回路の出力部に設けられた直流リアクトル24および供試電池25と、を備え、第1および第2のアームの半導体スイッチング素子22A〜22Hのオンオフを切り替えて、ショットキーバリアダイオード1A〜1Dのいずれかに4象限チョッパ回路の電流を接続線27を用いて転流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池または電気二重層キャパシタ等の開発過程での充放電試験に用いる電源回生式充放電試験装置であって、例えばスイッチング損失の抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CO2の削減が21世紀の最重要課題のひとつとなる中、リチウムイオン電池あるいは電気二重層キャパシタなどのエネルギー蓄積デバイスが脚光を浴びている。電池は電気化学反応によりエネルギーを貯蔵・放出し、キャパシタは物理的にエネルギーを貯蔵・放出する違いはあるが、どちらにしても電解質や電極などの材料の革新が性能向上に寄与するところが大きい。
【0003】
もともと、これらのデバイスはモバイルIT機器の電源用として開発・実用化されて発展してきたが、最近はハイブリッドカーやEVなど高出力機器のデバイスとして注目度が上がっている。電池の高出力化の場合には、電池単セルを大面積化して電流容量を増大する方法と、セルの直列数を増やして高電圧化する方法とがあり、その両面で開発が進められている。
【0004】
また、エネルギーを蓄積することから安全性の評価も極めて重要である。このため、研究段階の小セル面積の単電池から実用化に近い大面積セルを直列化したモジュールの評価に至るまで、さまざまな充放電サイクル試験が行われる。このため、電池やキャパシタの充放電試験装置が複数の電源メーカーから販売されている。
【0005】
これら電池または電気二重層キャパシタ(以下、供試体または供試電池と称す。)の充放電特性または寿命評価に用いる試験装置の電力制御は大別して2種類に分けられる。1つはパワー半導体の線形領域で動作するB級増幅器タイプ、2つめは飽和領域すなわちスイッチング動作するD級増幅器タイプがある。
【0006】
前者は精密な電圧・電流制御が可能で指令値のステップ変化に対する応答性に優れるが、半導体スイッチング素子に電力損失を背負わせるために損失が極めて大きいのが欠点である。このため、前者は、単セルまたは研究段階での小電流の供試体に用いられることが多い。
【0007】
他方、後者はスイッチング動作故、制御精度が前者に比べて劣り、またスイッチングによる電流脈動を抑えるためにインダクタ(ハイパワー品では一般にリアクトルと呼ばれる)が併用されることから応答性も劣る。しかしながら、半導体スイッチング素子は極めて小さく高効率なため、開発がある程度進んだ段階での組み電池あるいは大電流の供試体の試験に適する。なお、スイッチング式でも放電動作時は供試体に蓄えられたエネルギーの処理が必要なため、交流電源側に回生することが一般的である。
【0008】
ここで、D級増幅器タイプの電力制御による、電源回生式の充放電試験装置の一般的な構成を図5を用いて説明する。この充放電試験装置は、2象限チョッパ回路を用いたものであり、三相交流電源13、PWMコンバータ10、平滑コンデンサ20、2象限チョッパ回路である双方向DC/DCコンバータ21、直流リアクトル(DCL)24および供試電池25を備えている。
【0009】
また、その接続状態は次の通りである。三相交流電源13とPWMコンバータ10の入力部の間にはリアクトル14A〜14Cおよびコンデンサ15A〜15Cから構成されるフィルタとリアクトル14D〜14Fとが介挿されている。さらに説明すると、三相交流電源13の各相には、直列に接続された2つのリアクトルである14A,14D、14B,14E、14C,14Fがそれぞれ接続されている。また、コンデンサ15Aの一端は、リアクトル14A,14Dの共通接続点に接続され、コンデンサ15Bの一端は、リアクトル14B,14Eの共通接続点に接続され、コンデンサ15Cの一端は、リアクトル14C,14Fの共通接続点に接続され、コンデンサ15A〜15Cの他端は互いに接続されている。
【0010】
また、PWMコンバータ10は、ダイオード12A〜12Fがそれぞれ逆並列に接続された半導体スイッチング素子(IGBT)11A〜11Fが三相ブリッジ接続されて構成されている。
【0011】
なお、リアクトル14D〜14FとPWMコンバータ10の入力部との接続は、リアクトル14Dの一端が半導体スイッチング素子11A,11Bの共通接続点に接続され、リアクトル14Eの一端が半導体スイッチング素子11C,11Dの共通接続点に接続され、リアクトル14Fの一端が半導体スイッチング素子11E,11Fの共通接続点に接続される。
【0012】
他方、PWMコンバータ10の出力部の正極と負極間には、平滑コンデンサ20が接続されている。また、平滑コンデンサ20には、ダイオード(FWD Free Wheeling Diode)23A,23Bがそれぞれ逆並列に接続された半導体スイッチング素子(MOSFET)22A(S1U),22B(S2D)がハーフブリッジ接続されて構成される双方向DC/DCコンバータ21が並列に接続されている。
【0013】
また、半導体スイッチング素子22A,22Bには、図示されないパルス幅変調回路により動作制御が行われる。
【0014】
なお、平滑コンデンサ20の一端が、PWMコンバータ10の出力部と半導体スイッチング素子22Aとの共通接続点に接続する箇所をP点とし、平滑コンデンサ20の他端が、PWMコンバータ10の出力部と半導体スイッチング素子22Bとの共通接続点に接続する箇所をN点とする。
【0015】
また、半導体スイッチング素子22A,22Bの共通接続点と前記N点の間には直流リアクトル24および供試電池25が直列接続されている。双方向DC/DCコンバータ21の出力電圧である、この共通接続間の電圧をVoutとする。
【0016】
なお、放電モード時は、供試電池25の負側に直列にバイアス電圧回路を挿入するのが一般的である。
【0017】
ここで、PWMコンバータ10および双方向DC/DCコンバータ21について補足する。
【0018】
PWMコンバータ10は、直流側の一定電圧制御により、充電動作時は相電圧と同位相の電流、放電動作時は逆位相の電流を流して双方向のパワーフローを実現する。
【0019】
また、双方向DC/DCコンバータ21は、双方向DC/DCコンバータの一例である。本来、充放電試験装置の供試体は電池あるいはキャパシタなので、電圧の極性は片方向、電流は充電/放電の双方向が必要なので回路としては図5のような2象限チョッパでよい。しかしながら、放電深度を深くした試験を行う場合が多く、供試体の内部抵抗に打ち勝って電流を流すため、2象限チョッパに前述したバイアス電圧回路を加えるか次に説明する4象限チョッパを使用する。
【0020】
図6は、4象限チョッパ回路による電源回生式充放電試験装置の基本回路である。図5と相違するのは4象限チョッパ回路である双方向DC/DCコンバータ26であり、その他の図5と同一のものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】
この双方向DC/DCコンバータ26は、ダイオード23A〜23Dがそれぞれ逆並列に接続された半導体スイッチング素子(MOSFET)22A,22B,22C(S3U),22D(S4D)がブリッジ接続されて構成されている。また、半導体スイッチング素子22A,22Bの共通接続点と前記N点の間には直列接続された直流リアクトル24および供試電池25が設けられている。
【0022】
このようなチョッパ回路に関連するものが、例えば下記特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2001−177921号公報。
【特許文献2】特開2007− 97386号公報。
【特許文献3】特開2009− 95075号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前述したように、スイッチング式のD級増幅器タイプは、脈動および応答性が線形増幅器式であるB級増幅器タイプに比べて劣るが、省電力性に優れることからニーズが増大している。脈動と応答性とは相反関係にあり、直流リアクトル24のインダクタンス値に依存する。
【0025】
すなわち、インダクタンス値を大きくすれば電流脈動は抑えられるが、応答性は遅くなる。したがって、両方の性能を同時に改善するためにはスイッチング周波数を高くする以外にない。しかし、スイッチング周波数を高くすると半導体スイッチング素子22A〜22Dとダイオード23A〜23Dとのスイッチング損失が増大して効率の低下を招くことになり、損失を分散させるために半導体スイッチング素子の並列個数を増やすと装置サイズが大きくなってコストの増加にもなる。
【0026】
ここで、図6の4象限チョッパ回路である双方向DC/DCコンバータ26を例にチョッパのスイッチング損失について考察する。双方向DC/DCコンバータ26は半導体スイッチング素子22A,22Dの組と半導体スイッチング素子22B,22Cの組とが相補的にON/OFF動作し、両者の導通比で出力を制御する。
【0027】
まず、供試電池25が充電モードの場合から考察する。充電モード時の半導体スイッチング素子22A,22DがONの場合をSTEP1Cとすると、電流は、P点→半導体スイッチング素子22A→直流リアクトル24→供試電池25→半導体スイッチング素子22D→N点→P点の経路で流れ、電流は増加する。
【0028】
また、充電モード時の半導体スイチング素子22B,22CがONの場合を、STEP2Cとすると電流は、P点→N点→ダイオード23B→直流リアクトル24→供試電池25→ダイオード23C→P点の経路で流れ、電流は減少する。
【0029】
供試電池25への充電電流は、これらのSTEP1C,STEP2Cを繰り返して脈動を伴いながら一定値に制御される。
【0030】
この繰り返しの際に、STEP1CからSTEP2Cに切り替わるときは、半導体スイッチング素子22A,22Dでターンオフ損失が発生する。また、STEP2CからSTEP1Cに切り替わるときは、半導体スイッチング素子22A,22Dでターンオン損失が、ダイオード23B,23Cで逆方向回復損失が、発生する。
【0031】
次に、供試電池25が放電モードの場合を考察する。放電モード時の半導体スイッチング素子22B,22CがONの場合をSTEP1Dとすると、電流は、P点→半導体スイッチング素子22C→供試電池25→直流リアクトル24→半導体スイッチング素子22B→N点→P点の経路で流れ、電流は増加する。
【0032】
また、放電モード時の半導体スイッチング素子22A,22DがONの場合をSTEP2Dとすると、電流は、P点→N点→ダイオード23D→供試電池25→直流リアクトル24→ダイオード23A→P点の経路で流れ、電流は減少する。
【0033】
供試電池25の放電電流は、これらのSTEP1D,STEP2Dを繰り返して脈動を伴いながら一定値に制御される。
【0034】
この繰り返しの際に、STEP1DからSTEP2Dに切り替わるときは、半導体スイッチング素子22B,22Cでターンオフ損失が発生する。また、STEP2DからSTEP1Dに切り替わるときは、半導体スイッチング素子22B,22Cでターンオン損失が、ダイオード23A,23Dで逆方向回復損失が、発生する。
【0035】
これらの損失で支配的なのは、充電モードにあってはSTEP2CからSTEP1Cに切り替わるとき、放電モードにあってはSTEP2DからSTEP1Dに切り替わるとき、である。どちらもダイオード23A,23Dまたは23B,23Cが逆方向回復するまで一種の直流短絡状態となり、当該ダイオード23A,23Dまたは23B,23Cが接続されていない半導体スイッチング素子22A〜22Dのターンオン時に過大な瞬時電流が流れてターンオン損失が大きくなると共にダイオード23A,23Dまたは23B,23Cの逆方向回復損失も過大となることが問題となる。
【0036】
さらに、ダイオード23A〜23Dの逆方向回復時に伴う急峻な電圧変化(dV/dt)が電磁ノイズの発生源になり、伝導あるいは放射によって供試電池25の状態を示すアナログ信号(セル電圧、総電圧、温度、圧力)に重畳されることにより、供試電池25の正確なモニタリングができなくなることも問題となる。また、供試電池25の充放電電流あるいは総電圧の信号は装置のフィードバック信号として共用されることが多いので、最悪の場合は正常な運転ができなくなることがあった。このため、対ノイズ対策に労力を費やすことがあった。
【0037】
上述したスイッチング損失および高周波ノイズを解決する手段としてソフトスイッチング回路がある。ソフトスイッチング回路は得意分野(例えば、IH調理器等)ではポピュラーな技術であるが、充放電試験装置ではパワーフローが双方向となるため、回路が複雑化する欠点があった。また、導通損失の増加、部品点数の増加および制御性の悪化といた短所があり、双方向パワーフローを必要とする充放電試験装置ではこれらの短所を助長してしまう嫌いがあった。
【0038】
なお、双方向の回路例として電気学会技術報告第1119号のP19にいくつかのバリエーションが載っている。また、特開2003−102168号公報では図1および図3にそれぞれ2象限および4象限チョッパへの適用例が提案されている。
【0039】
また、スイッチング損失および高周波ノイズを解決する他の手段として、SiCを基材とした前述のFWDを有するIGBTモジュールの適用がある。このFWDはショットキーバリアダイオードであるため、少数キャリア蓄積効果がなく逆方向回復がない。しかしながら、現時点ではSiCデバイスの製造は今なお開発段階であって価格が極めて高く、大電流用を手軽に利用できる状況にない。
【0040】
このようなSiCを基材としたFWDに対してSiを基材としたショットキーバリアダイオードは大電流用でもリーズナブルな価格で市販されているが、欠点は高電圧に対応したデバイスがないという点である。200Vが耐圧の限界で、この電圧階級のデバイスを使用する限り、充放電試験装置を構成しても出力電圧が高々100V程度までしか対応できず、装置の売れ筋である200Vまでの出力には対応できなかった。
【0041】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであり、チョッパ回路の半導体スイッチング素子に逆並列接続したダイオードの逆方向回復損失と、それに伴う電磁ノイズを抑制する電気回生式充放電試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、前記課題の解決を図るために、交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換手段と、前記交流/直流変換手段の直流側の正極と負極との間に直列接続された第1および第2の平滑コンデンサと、前記第1および第2の平滑コンデンサに並列に接続され、ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子を第1のアームの上下に各2個ずつ直列接続し第2のアームの上下に各2個ずつ直列接続してブリッジ接続した4象限チョッパ回路と、前記第1のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第1のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第1および第2のショットキーバリアダイオードと、前記第2のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第2のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第3および第4のショットキーバリアダイオードと、前記第1のアームの上側および下側の共通接続点と前記第2のアームの上側および下側の共通接続点との間に直列接続された直流リアクトルおよび供試電池と、を備え、前記第1および第2の平滑コンデンサの共通接続点、前記第1および第2のショットキーバリアダイオードの共通接続点ならびに前記第3および第4のショットキーバリアダイオードの共通接続点は、接続線により接続され、前記第1および第2のアームのいずれかの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替えて、前記第1〜第4のショットキーバリアダイオードのいずれかに前記4象限チョッパ回路の電流を前記接続線を用いて転流させることを特徴とする。
【0043】
また、交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換手段と、前記交流/直流変換手段の直流側の正極と負極との間に直列接続された第1および第2の平滑コンデンサと、前記第1および第2の平滑コンデンサに並列に接続され、ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子を第1のアームの上下に各2個ずつ直列接続してハーフブリッジ接続した2象限チョッパ回路と、前記第1のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第1のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第1および第2のショットキーバリアダイオードと、前記第1のアームの下側に並列接続され、直列接続された直流リアクトルおよび供試電池と、を備え、前記第1および第2の平滑コンデンサの共通接続点ならびに前記第1および第2のショットキーバリアダイオードの共通接続点は、接続線により接続され、前記第1のアームの半導体スイッチング素子のオンオフの切り替えにより、前記第1〜第2のショットキーバリアダイオードのいずれかに前記2象限チョッパ回路の電流を前記接続線を用いて転流させることを特徴とする。
【0044】
上記構成によれば、クランプダイオードとして、少数キャリアのないショットキーバリアダイオードを用いている。本発明では、ショットキーバリアダイオードが、クランプダイオードの機能に加え、前記チョッパ回路を流れる電流を転流させることにも用いられており、その転流の間に前記半導体スイッチング素子に逆並列接続されているダイオードの少数キャリアを自然消滅させることで、前記ダイオードの逆方向回復損失を抑制することができる。
【0045】
これにより、前記半導体スイッチング素子のスイッチング損失が大幅に減少できる分、スイッチング周波数をこれまでよりも引き上げることができる。このため、同じ出力電流脈動率なら、直流リアクトルのインダクタンス値を周波数の逆比で小さくでき、応答性を改善することができる。
【0046】
さらに、前述したように前記ダイオードの逆方向回復損失を抑制できるので、ダイオードの逆方向回復時に生ずる、回路の漂遊インダクタンスとダイオードの空乏層のキャパシタンス成分に起因する振動電圧が抑制されることから、発生する電磁ノイズもレベルが下がり供試電池の試験データの取得の信頼性を向上させることができる。
【0047】
また、上述したようにチョッパ回路を構成したことにより、アームの上下に印加される電圧が従来方式と比べて低くできるから、前記半導体スイッチング素子の耐電圧が従来方式より低いもので対応できる。一般的に、耐電圧の低い半導体スイッチング素子の方が導通損失特性、スイッチング特性が優るから、前記ダイオードの逆方向回復損失の抑制によるスイッチング周波数の引き上げの効果と相俟って、許容スイッチング周波数をさらに引き上げることができる。
【0048】
また、前記ショットキーバリアダイオードは、Siを基材としたショットキーバリアダイオードであることを特徴とする。
【0049】
上記構成によれば、Siを基材としたショットキーバリアダイオードを用いている。Si製のショットキーバリアダイオードの耐電圧の最大は、200Vであり、耐電圧の60%を適用限界とすると、前記第1および第2の平滑コンデンサに印加される最大電圧は200V×0.6×2=240Vになり、前記チョッパ回路のDC/DC変換の制御率を0.9までとすると電源回生式充放電試験装置の最大出力電圧は240V×0.9≒220Vとなって、市販されている充放電試験装置の大部分に対応することができる。
【0050】
また、前記4象限チョッパ回路の動作時に前記ダイオードのいずれかに電流が流れている状態から、前記第1および第2のアームの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替える場合、前記ダイオードのうち電流が流れていないダイオードが接続されている前記半導体スイッチング素子のいずれかをオンにして、前記第1または第2および前記第3または第4のショットキーバリアダイオードに前記4象限チョッパ回路に流れる電流を転流させた後に前記オンオフの切り替えを行うことを特徴とする。
【0051】
また、前記2象限チョッパ回路の動作時に前記ダイオードのいずれかに電流が流れている状態から、前記第1のアームの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替える場合、前記ダイオードのうち電流が流れていないダイオードが接続されている前記半導体スイッチング素子のいずれかをオンにして、前記第1または第2のショットキーバリアダイオードに前記2象限チョッパ回路に流れる電流を転流させた後に前記オンオフの切り替えを行うことを特徴とする。
【0052】
上記構成によれば、前記ダイオードのうち電流が流れていないダイオードに接続されている前記半導体スイッチング素子のいずれかをオンにして、前記ショットキーバリアダイオードに電流を転流させることで、その転流の間に電流が流れていた前記ダイオードの少数キャリアを自然消滅で再結合させることができ、前記ダイオードの逆方向回復損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0053】
請求項1、3、4および6の発明によれば、クランプダイオードとして、少数キャリアのない前記ショットキーバリアダイオードが、クランプダイオードの機能に加え、前記チョッパ回路を流れる電流を転流させることにも用いられており、その転流の間に前記半導体スイッチング素子に逆並列接続されているダイオードの少数キャリアを自然消滅させることで、前記ダイオードの逆方向回復損失を抑制することができる。
【0054】
これにより、前記半導体スイッチング素子のスイッチング損失が大幅に減少できる分、スイッチング周波数をこれまでよりも引き上げることができる。このため、同じ出力電流脈動率なら、直流リアクトルのインダクタンス値を周波数の逆比で小さくでき、応答性を改善することができる。
【0055】
さらに、前述したように前記ダイオードの逆方向回復損失を抑制できるので、ダイオードの逆方向回復時に生ずる、回路の漂遊インダクタンスとダイオードの空乏層のキャパシタンス成分に起因する振動電圧が抑制されることから、発生する電磁ノイズもレベルが下がり供試電池の試験データの取得の信頼性を向上させることができる。
【0056】
また、上述したようにチョッパ回路を構成したことにより、アームの上下に印加される電圧が従来方式と比べて低くできるから、前記半導体スイッチング素子の耐電圧が従来方式より低いもので対応できる。一般的に、耐電圧の低い半導体スイッチング素子の方が導通損失特性、スイッチング特性が優るから、前記ダイオードの逆方向回復損失の抑制によるスイッチング周波数の引き上げの効果と相俟って、許容スイッチング周波数をさらに引き上げることができる。
【0057】
請求項2および5の発明によれば、Siを基材としたショットキーバリアダイオードを用いている。Si製のショットキーバリアダイオードの耐電圧の最大は、200Vであり、耐電圧の60%を適用限界とすると、前記第1および第2の平滑コンデンサに印加される最大電圧は200V×0.6×2=240Vになり、前記チョッパ回路のDC/DC変換の制御率を0.9までとすると電源回生式充放電試験装置の最大出力電圧は240V×0.9≒220Vとなって、市販されている充放電試験装置の大部分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1における電源回生式充放電試験装置の構成図。
【図2】実施例1における電源回生式充放電試験装置の動作説明図。
【図3】実施例2における電源回生式充放電試験装置の構成図。
【図4】実施例2における電源回生式充放電試験装置の動作説明図。
【図5】従来における電源回生式充放電試験装置の構成図。
【図6】従来における電源回生式充放電試験装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態における電源回生式充放電試験装置を図面等に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0060】
図1は、本実施例における、中性点クランプ形4象限チョッパ回路による電源回生式充放電試験装置の基本回路である。基本的には中性点クランプ形単相ブリッジ回路の4象限チョッパであり、クランプダイオードにSiを基材にしたショットキーバリアダイオードを用いている。
【0061】
図5の電源回生式充放電試験装置の基本回路と異なるのは、平滑コンデンサ20A,20Bおよび4象限チョッパ回路である。その他の図5と同一のものには同一の符号を付して説明を省略する。PWMコンバータ10の出力部の正極と負極間には、平滑コンデンサ20A,20Bが直列に接続されており、さらに、以下に説明する4象限チョッパ回路が設けられている。
【0062】
4象限チョッパ回路は、ダイオード23A〜23Hが半導体スイッチング素子22A(S1U),22B(S1D),22C(S2U),22D(S2D),22E(S3U),22F(S3D),22G(S4U),22H(S4D)にそれぞれ逆並列接続され、直列接続された半導体スイッチング素子22A〜22D(第1アーム)および直列接続された半導体スイッチング素子22E〜22H(第2アーム)がブリッジ接続して構成される。
【0063】
なお、半導体スイッチング素子22A,22Bを第1アームの上側、半導体スイッチング素子22C,22Dを第1アームの下側、半導体スイッチング素子22E,22Fを第2アームの上側、半導体スイッチング素子22G,22Hを第2アームの下側とする。
【0064】
また、第1アームの上側と下側との共通接続点と第2アームの上側と下側との共通接続点間には直流リアクトル24および供試電池25が直列に接続される。
【0065】
ここで、平滑コンデンサ20Bと接続する側とは反対側の平滑コンデンサ20Aの一端が、PWMコンバータ10の出力部および半導体スイッチング素子22Aの共通接続点に接続する箇所をP点とし、平滑コンデンサ20Aと接続する側とは反対側の平滑コンデンサ20Bの一端が、PWMコンバータ10の出力部および半導体スイッチング素子22Dの共通接続点に接続する箇所をN点とする。
【0066】
さらに、第1アームにおいて、直列接続されたショットキーバリアダイオード1A(D1),1B(D2)の、ショットキーバリアダイオード1Aのカソード側が半導体スイッチング素子22A,22Bの共通接続点に接続され、ショットキーバリアダイオード1Bのアノード側が半導体スイッチング素子22C,22Dの共通接続点に接続される。
【0067】
第2アームにおいても第1アームと同様に、直列接続されたショットキーバリアダイオード1C(D3),1D(D4)の、ショットキーバリアダイオード1Cのカソード側が半導体スイッチング素子22E,22Fの共通接続点に接続され、ショットキーバリアダイオード1Dのアノード側が半導体スイッチング素子22G,22Hの共通接続点に接続される。なお、前述したように、ショットキーバリアダイオード1A〜1Dは、Siを基材にしたものである。
【0068】
また、平滑コンデンサ20A,20Bの共通接続点、ショットキーバリアダイオード1A,1Bの共通接続点およびショットキーバリアダイオード1C,1Dの共通接続点は接続線27で接続されている。この接続線27が平滑コンデンサ20A,20Bの共通接続点と接続する箇所をC点とする。
【0069】
なお、半導体スイッチング素子22A〜22Hは、図1ではMOSFETと図示されているが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)BJT(バイポーラ接合トランジスタ)等の自己消弧型半導体スイッチング素子を用いてもよい。また、PWMコンバータ10が交流/直流変換手段に相当する。
【0070】
次に、動作について図2を用いて説明する。
【0071】
図2は、充電モードおよび放電モードでの各運転ステップにおける半導体スイッチング素子22A〜22Hのスイッチングパターンとその場合の電流経路を示した説明図である。
【0072】
なお、図2および後述する図4においては、半導体スイッチング素子22A〜22Hは、S1U,S1D,S2U,S2D,S3U,S3D,S4U,S4Dと表している。また、図2および図4においては、半導体スイッチング素子22A〜22Hに接続されているダイオード23A〜23Hは(FWD)と表す。例えば、S1Uに接続されているダイオードであれば、S1U(FWD)と表す。
【0073】
まず、充電モードの動作から説明する。充電モードでは運転ステップはSTEP1C〜STEP3Cを繰り返して行われる。
【0074】
STEP1Cの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22HがONとなり、半導体スイッチング素子22C,22D,22E,22FがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0075】
すなわち、P点→半導体スイッチング素子22A→半導体スイッチング素子22B→直流リアクトル24→供試電池25→半導体スイッチング素子23G→半導体スイッチング素子23H→N点→P点の経路を電流は流れる。
【0076】
続いて、STEP2Cの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22C,22D,22E,22FがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22HがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0077】
すなわち、P点→N点→ダイオード23D→ダイオード23C→直流リアクトル24→供試電池25→ダイオード23F→ダイオード23E→P点の経路を電流は流れる。
【0078】
従来であればSTEP2Cの後にSTEP1Cに切り替えていたため、前述したように、ダイオード23C〜23Fに電流が流れている状態から、ダイオード23C〜23Fとは反対側(上側であれば下側、下側であれば上側)の半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22HがONになるとダイオード23C〜23Fが逆方向回復するまでの短時間、直流短絡に近い状態になって、半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22Hのターンオン損失とダイオード23C〜23Fの逆方向回復損失とが増加していた。
【0079】
この欠点を改善するため本発明では、STEP3Cを設けてダイオード23C〜23Fから接続線27を用いてショットキーバリアダイオード1A,1Dに電流を転流させ、ダイオード23C〜23Fに蓄積された少数キャリアを再結合で自然消滅させている。
【0080】
具体的には次のようになる。STEP3Cの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22B,22GがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22C,22D,22E,22F,22HがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0081】
すなわち、直流リアクトル24→供試電池25→半導体スイッチング素子22G→ショットキーバリアダイオード1D→ショットキーバリアダイオード1A→半導体スイッチング素子22B→直流リアクトル24の経路を電流は流れる。
【0082】
このように、STEP3Cを設けて、STEP2Cにて電流が流れていたダイオード23C,23D,23E,23Fの少数キャリアを自然消滅で再結合させるため、STEP2Cにおいて電流が流れていなかったダイオード23A,23B,23G,23Hのうちダイオード23B,23Gに接続されている半導体スイッチング素子22B,22Gをオンにして、ショットキーバリアダイオード1A,1Dに電流を転流させている。
【0083】
ここで、クランプダイオードであるショットキーバリアダイオード1A〜1DがPN接合ダイオードD1〜D4であるとする。この場合、PN接合ダイオードD1〜D4の少数キャリアのため、STEP1Cに切り替わった瞬間にP点→半導体スイッチング素子22A→PN接合ダイオードD1→C点およびC点→PN接合ダイオードD4→半導体スイッチング素子22H→N点にそれぞれダイオードの逆方向電流が流れ、スイッチング損失が増加すると共に、逆方向回復時の急峻なdV/dtでノイズ量も増加する。
【0084】
次に、放電モードの動作を説明する。放電モードでは運転ステップはSTEP1D〜STEP3Dを繰り返して行われる。
【0085】
STEP1Dの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22C,22D,22E,22FがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22HがOFFとなる。この場合の電流経路は図2のようになる。
【0086】
すなわち、P点→半導体スイッチング素子22E→半導体スイッチング素子22F→供試電池25→直流リアクトル24→半導体スイッチング素子22C→半導体スイッチング素子22D→N点→P点の経路を電流は流れる。
【0087】
続いて、STEP2Dの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22A,22B,22G,22HがONとなり、半導体スイッチング素子22C,22D,22E,22FがOFFとなる。この場合の電流経路は図2のようになる。
【0088】
すなわち、P点→N点→ダイオード23H→ダイオード23G→供試電池25→直流リアクトル24→ダイオード23B→ダイオード23A→P点の経路を電流は流れる。
【0089】
放電モードの場合においても受電モードのSTEP3Cを設けたことと同様の理由から、STEP3Dを設けている。
【0090】
具体的には次のようになる。STEP3Dの場合は、図2に示すように、半導体スイッチング素子22C,22FがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22B,22D,22E,22G,22HがOFFとなる。この場合の電流経路は図2のようになる。
【0091】
すなわち、供試電池25→直流リアクトル24→半導体スイッチング素子22C→ショットキーバリアダイオード1B→ショットキーバリアダイオード1C→半導体スイッチング素子22F→供試電池25の経路を電流は流れる。
【0092】
以上のことから本実施例の電源回生式充放電試験装置は次の効果を奏する。
【0093】
すなわち、前述したように、第1アームにはショットキーバリアダイオード1A,1Bが中性点にクランプされ、第2アームにはショットキーバリアダイオード1C,1Dが中性点にクランプされている。
【0094】
一般的に、Si製のショットキーバリアダイオードの耐電圧の最大は、200Vであり、耐電圧の60%を適用限界とすると、P点―N点間の最大電圧は200V×0.6×2=240Vになり、4象限チョッパ回路のDC/DC変換の制御率を0.9までとすると電源回生式充放電試験装置の最大出力電圧は240V×0.9≒220Vとなって、市販されている充放電試験装置の大部分に対応することができる。
【0095】
また、本実施例では充電モードにおいてはSTEP3C、放電モードにおいてはSTEP3Dの運転モードを行っている。この運転モードにより、充電モードであればショットキーバリアダイオード1A,1Dに、放電モードであればショットキーバリアダイオード1C,1Dに、4象限チョッパ回路の電流は転流されるため、その転流の間にダイオード23A〜23Dに蓄積された少数キャリアは、再結合により自動消滅する。これにより、ダイオード23A〜23Dの逆方向回復損失をほとんどなくすことができ、スイッチング損失が大幅に減少できる分、スイッチング周波数をこれまでの数倍程度に引き上げることができる。このため、同じ出力電流脈動率なら、直流リアクトル24のインダクタンス値を周波数の逆比で小さくでき、応答性を数分の1以下に改善することができる。
【0096】
クランプダイオードは従来から用いられているが、そこに少数キャリアのないショットキーバリアダイオードを適用し、4象限チョッパ回路の電流を転流させている。すなわち、クランプダイオードでありながら転流時の電路としても用いることで新たな回路を設けることなく上記の効果を奏する。
【0097】
また、上述したように回路を構成したことにより、アームの上下に印加される電圧が、図5,6の従来方式と比べて1/2になるから、適用する半導体スイッチング素子の耐電圧が半分でよい。一般的に、耐電圧の低い半導体スイッチング素子の方が導通損失特性、スイッチング特性が優るから、上述したダイオードの逆方向回復損失の抑制によるスイッチング周波数の引き上げの効果と相俟って、許容スイッチング周波数をさらに引き上げることができる。
【0098】
さらに、前述したようにダイオード23A〜23Dの逆方向回復損失をほとんどなくせるので、ダイオード23A〜23Dの逆方向回復時に回路の漂遊インダクタンスとダイオードの空乏層のキャパシタンス成分に起因する振動電圧が抑制されることから、発生する電磁ノイズもレベルが下がり供試電池25の試験データの取得の信頼性が向上する。
【0099】
また、ソフトスイッチング回路では、ソフトスイッチングさせるための補助リアクトル(直流リアクトル24とは別)が必要であるが、本実施例のものでは不要である。ソフトスイッチングではキャパシタ成分も必要で、MOSFETの寄生容量を利用している場合、回路部品としてのキャパシタンスを簡略化できる反面、定数のばらつきに対してゼロ電圧スイッチングを最適なタイミングで実行するのが難しい。このため制御回路の微調整が必要になる。
【実施例2】
【0100】
図3は、本実施例における、中性点クランプ形2象限チョッパ回路による電源回生式充放電試験装置の基本回路である。実施例1と異なるのは、単相ブリッジではなく、中性点クランプ形ハーフブリッジ回路の2象限チョッパであることである。本実施例においてもクランプダイオードにSiを基材にしたショットキーバリアダイオードを用いている。
【0101】
図1と図3とを比べると、ハーフブリッジ回路であるため、半導体スイッチング素子22E〜22Hおよびダイオード23E〜23Hは除かれている。
【0102】
また、半導体スイッチング素子22B,22Cの共通接続点と前記N点の間には直流リアクトル24および供試電池25が直列接続されている。
【0103】
また、この場合は、平滑コンデンサ20A、20Bの共通接続点とショットキーバリアダイオード1A,1Bの共通接続点間に接続線28が設けられる。
【0104】
本実施例における、動作について図4を用いて説明する。
【0105】
まず、充電モードの動作から説明する。充電モードでは運転ステップはSTEP1C〜STEP3Cを繰り返して行われる。
【0106】
STEP1Cの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22A,22BがONとなり、半導体スイッチング素子22C,22DがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0107】
すなわち、P点→半導体スイッチング素子22A→半導体スイッチング素子22B→直流リアクトル24→供試電池25→半導体スイッチング素子23→N点→P点の経路を電流は流れる。
【0108】
続いて、STEP2Cの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22A〜22Dは全てOFFとなる。この場合の電流経路は図4のようになる。
【0109】
すなわち、直流リアクトル24→供試電池25→ダイオード23D→ダイオード23C→直流リアクトル24の経路を電流は流れる。
【0110】
本実施例においてもダイオード23C,23Dに蓄積された少数キャリアを再結合で自然消滅させるためにSTEP3Cを設けている。
【0111】
具体的には次のようになる。STEP3Cの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22BがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22C,22DがOFFとなる。この場合の電流経路は図4のようになる。
【0112】
すなわち、直流リアクトル24→供試電池25→N点→C点→ショットキーバリアダイオード1A→半導体スイッチング素子22B→直流リアクトル24の経路を電流は流れる。
【0113】
次に、放電モードの動作を説明する。放電モードでは運転ステップはSTEP1D〜STEP3Dを繰り返して行われる。
【0114】
STEP1Dの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22C,22DがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22BがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0115】
すなわち、供試電池25→直流リアクトル24→半導体スイッチング素子22C→半導体スイッチング素子22D→供試電池25の経路を電流は流れる。
【0116】
続いて、STEP2Dの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22A〜22Dは全てOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0117】
すなわち、供試電池25→直流リアクトル24→ダイオード23B→ダイオード23A→P点→N点→供試電池25の経路を電流は流れる。
【0118】
放電モードの場合においても充電モードのSTEP3Cを設けたことと同様の理由から、STEP3Dを設けている。
【0119】
具体的には次のようになる。STEP3Dの場合は、図4に示すように、半導体スイッチング素子22CがONとなり、半導体スイッチング素子22A,22B,22DがOFFとなる。また、この場合の電流経路は次の通りである。
【0120】
すなわち、供試電池25→直流リアクトル24→半導体スイッチング素子22C→ショットキーバリアダイオード1B→C点→N点→供試電池25の経路を電流は流れる。
【0121】
充電モードではSTEP3C、放電モードではSTEP3Dを設けることで本実施例においても、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0122】
ただし、実施例1では、STEP3Cおよび3Dにおける電流経路は、電源(P点―N点間)を通過しない循環電流になるのに対して、実施例2ではP点―C点またはC点―N点間に電流が流入および流出する。これは本来P点―N点電圧の1/2が印加されるべきP点―C点およびC点―N点間電圧のバランスが崩れる原因となる。このため、実施例2では電圧のバランス回路が別途必要になる。
【0123】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0124】
1A〜1D…ショットキーバリアダイオード
10…PWMコンバータ
11A〜11F,22A〜22H…半導体スイッチング素子
12A〜12F,23A〜23H…ダイオード
13…三相交流電源
14A〜14F…リアクトル
15A〜15C…コンデンサ
20,20A,20B…平滑コンデンサ
21,26…双方向DC/DCコンバータ
24…直流リアクトル
25…供試電池
27,28…接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換手段と、
前記交流/直流変換手段の直流側の正極と負極との間に直列接続された第1および第2の平滑コンデンサと、
前記第1および第2の平滑コンデンサに並列に接続され、ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子を第1のアームの上下に各2個ずつ直列接続し第2のアームの上下に各2個ずつ直列接続してブリッジ接続した4象限チョッパ回路と、
前記第1のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第1のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第1および第2のショットキーバリアダイオードと、
前記第2のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第2のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第3および第4のショットキーバリアダイオードと、
前記第1のアームの上側および下側の共通接続点と前記第2のアームの上側および下側の共通接続点との間に直列接続された直流リアクトルおよび供試電池と、を備え、
前記第1および第2の平滑コンデンサの共通接続点、前記第1および第2のショットキーバリアダイオードの共通接続点ならびに前記第3および第4のショットキーバリアダイオードの共通接続点は、接続線により接続され、
前記第1および第2のアームのいずれかの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替えて、前記第1〜第4のショットキーバリアダイオードのいずれかに前記4象限チョッパ回路の電流を前記接続線を用いて転流させることを特徴とする電源回生式充放電試験装置。
【請求項2】
前記第1〜第4のショットキーバリアダイオードは、Siを基材としたショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の電源回生式充放電試験装置。
【請求項3】
前記4象限チョッパ回路の動作時に前記ダイオードのいずれかに電流が流れている状態から、前記第1および第2のアームの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替える場合、前記ダイオードのうち電流が流れていないダイオードが接続されている前記半導体スイッチング素子のいずれかをオンにして、前記第1または第2および前記第3または第4のショットキーバリアダイオードに前記4象限チョッパ回路に流れる電流を転流させた後に前記オンオフの切り替えを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源回生式充放電試験装置。
【請求項4】
交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換手段と、
前記交流/直流変換手段の直流側の正極と負極との間に直列接続された第1および第2の平滑コンデンサと、
前記第1および第2の平滑コンデンサに並列に接続され、ダイオードが逆並列接続された半導体スイッチング素子を第1のアームの上下に各2個ずつ直列接続してハーフブリッジ接続した2象限チョッパ回路と、
前記第1のアームの上側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点と前記第1のアームの下側の前記2個の直列接続された半導体スイッチング素子の共通接続点との間に直列接続された第1および第2のショットキーバリアダイオードと、
前記第1のアームの下側に並列接続され、直列接続された直流リアクトルおよび供試電池と、を備え、
前記第1および第2の平滑コンデンサの共通接続点ならびに前記第1および第2のショットキーバリアダイオードの共通接続点は、接続線により接続され、
前記第1のアームの半導体スイッチング素子のオンオフの切り替えにより、前記第1〜第2のショットキーバリアダイオードのいずれかに前記2象限チョッパ回路の電流を前記接続線を用いて転流させることを特徴とする電源回生式充放電試験装置。
【請求項5】
前記第1〜第2のショットキーバリアダイオードは、Siを基材としたショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項4に記載の電源回生式充放電試験装置。
【請求項6】
前記2象限チョッパ回路の動作時に前記ダイオードのいずれかに電流が流れている状態から、前記第1のアームの半導体スイッチング素子のオンオフを切り替える場合、前記ダイオードのうち電流が流れていないダイオードが接続されている前記半導体スイッチング素子のいずれかをオンにして、前記第1または第2のショットキーバリアダイオードに前記2象限チョッパ回路に流れる電流を転流させた後に前記オンオフの切り替えを行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電源回生式充放電試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−193614(P2011−193614A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56852(P2010−56852)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(591031212)北斗電工株式会社 (20)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】