説明

電源回路

【課題】過電流や発熱の発生を未然に回避するという電源回路の保護動作を、CPUを利用したソフトウェア制御によることなく行えるようにする。
【解決手段】電流検出部243は、負荷電流に対応する検出電流Idtが閾値Th以上となるのに応じて電力供給を停止させる。準異常状態判定部244は、電源電圧を定常的に供給すべき機能部に対応する定電圧回路から電源電圧の出力が停止している状態、または、バッテリ電圧の異常に応じてCPUにリセットを指示するリセット信号が出力されている状態が発生している場合に準異常状態が発生していると判定する。レベル設定部250は、上記判定に応じて、検出電流Idtに対する閾値Thのレベルが相対的に低くなるように設定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源保護機能を備える電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路には、過電流や過度の発熱から回路を保護するための保護回路が備えられる。このような回路保護の構成として以下の技術が知られている。例えば、電源部は保護回路として過電流を保護するためのPTC(Positive Temperature Coefficient)型サーミスタを備えるものがある。CPU(Central Processing Unit)による信号処理部は、PTC型サーミスタにより検出される電圧とメモリに記憶された基準電圧値とを比較することにより異常状態であるか否かを判定し、異常状態であることを判定した場合、電源部をオフ状態にする(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、予め定められている動作モードと、動作モードに応じて予め決められている過電流保護回路の作動電流値とを対応付けるテーブルを参照して、CPUが、設定されている動作モードに応じた作動電流値を読み出し、読み出された作動電流値を過電流検出器に設定するものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271077号公報
【特許文献2】特開平5−276646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1、2の構成では、いずれもCPUによるソフトウェア制御が介在する。このために、CPU自体に障害が発生して正常に動作していない場合、適切な保護動作が行われないという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献1、2の各構成は、過電流もしくは過度の発熱が検出されてから回路保護のための動作が開始されるものであり、過電流や発熱の発生を未然に防止するように回路保護を行うことはできない。
【0007】
そこで本発明は、過電流や発熱の発生を未然に回避するという電源回路の保護動作を、ソフトウェア制御によることなく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決すべくなされたもので、本発明の一態様による電源回路は、電力源から負荷に供給される負荷電流を検出し、検出した負荷電流の値が予め決められた閾値より高い場合、前記電力源から負荷への電力供給を制御する制御部に対して、前記電力源から負荷への電力供給を停止するよう制御する電流検出部と、前記負荷に供給される電源電力の電流あるいは電圧のレベルが予め決められている正常時の範囲内であるか否かを判定し、前記電源電力の電流あるいは電圧のレベルが前記正常時の範囲内でないと判定した場合に準異常状態であると判定する準異常状態判定部と、前記準異常状態判定部により準異常状態であると判定された場合、前記閾値として、前記準異常状態でないと判定された場合よりも低い閾値を設定するレベル設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過電流や発熱の発生を未然に回避するという電源回路の保護動作を、CPUを利用したソフトウェア制御によることなく行うことが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態としての電源回路を備える電子機器である携帯電話の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の携帯電話における電源回路の構成例を示す図である。
【図3】準異常状態判定部による判定結果に応じた検出電流Idtの切り替え例を示す図である。
【図4】他の実施形態としての電源回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明を実施するための形態(実施形態)における携帯電話100の構成例を示している。この図に示す携帯電話100は、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、送受信部130、音声入出力部140、撮像部150、表示部160、操作部170、電源回路200、およびバッテリ300を備える。
【0012】
CPU110は、メモリ120に記憶されるプログラムを実行することにより、各種の演算処理および同図に示す各機能部の制御を行う。
【0013】
メモリ120は、上記CPU110が実行するプログラムのほか、アプリケーションが使用するデータを記憶する。このメモリ120のハードウェアとしては、例えばフラッシュメモリなどを採用することができる。
【0014】
音声入出力部140は、音声入力機能を備える音声入力処理部141と音声出力機能を備える音声出力処理部142とを含む。具体的に、音声入出力部140は、音声入力処理部141として、マイクロフォンと音声信号処理部を備える。マイクロフォンは、通話音声などを集音して電気信号に変換する。音声信号処理部は、上記マイクロフォンにより得られる信号をデジタル音声信号に変換する。また、音声入出力部140は、音声出力処理部142として、音声信号再生処理部とスピーカを備える。音声信号再生処理部は、デジタル音声信号をアナログ信号に変換して増幅を行い、例えばスピーカから音声として放出させる。
【0015】
撮像部150は、撮像により画像信号を得る。例えば撮像部150は、CMOSセンサやCCDなどの撮像素子やレンズなどの光学系から成るカメラ部と、当該カメラ部により撮像された画像をデジタル画像信号に変換する画像信号処理部とを含む。撮像部150により得られたデジタル画像信号は、CPU110の制御に応じてメモリ120に格納される。
【0016】
表示部160は、CPU110の制御に応じて各種の画像を表示する。例えば、待ち受け状態において、表示部160は、待ち受け画面として決められている画像を表示する。送信時において、表示部160は、送信状況(呼出状況)を示す画像を表示する。また、表示部160は、メモリ120に記憶されている画像データを再生表示する。さらに、撮像モードにおいては、表示部160は、撮像部150によりデジタル画像信号に変換された画像をモニタ画像として表示する。
【0017】
操作部170は、携帯電話100が備える各種キーやボタンなどを含む。この操作部170は、ユーザによって指示された操作内容を受け付け、この操作内容を示す操作信号を出力する。CPU110は、入力した操作信号に基づきユーザからの指示に応じた制御処理を実行する。これにより、携帯電話100は、ユーザからの指示に応じた動作を実行する。
【0018】
電源回路200は、バッテリ300またはACアダプタ400から供給される電源電力を入力し、入力する電源電力を各機能部に供給する。具体的に説明すると、電源回路200は、CPU110、メモリ120、送受信部130、音声入出力部140、撮像部150、表示部160および操作部170のそれぞれに電源電力を供給する。なお、CPU110、メモリ120、送受信部130、音声入出力部140、撮像部150、表示部160および操作部170のそれぞれに動作するために供給される電源電量の電圧値は、電源電圧Vdd1〜Vdd7であると予め決められている。電源回路200は、この電源電圧Vdd1〜Vdd7を生成して、CPU110、メモリ120、送受信部130、音声入出力部140、撮像部150、表示部160および操作部170のそれぞれに出力する。上記機能部は、それぞれ、電源電圧Vdd1〜Vdd7の供給を受けて動作することができる。
【0019】
バッテリ300は、電源回路200に直流電力を供給する電力源である。このバッテリ300は、図示は省略するが、携帯電話100に設けられているバッテリ収納部に収納されることで電源回路200に電力供給が可能なように接続される。なお、このバッテリ300としては、例えばリチウムイオンバッテリなどの二次電池を用いることができる。
【0020】
ACアダプタ400は、商用交流電源500から入力する電源電力を、所定電圧値の直流電流に変換し、この直流電流に変換された電源電力を電源回路200に供給する。図示は省略するが、携帯電話100の筐体に備えられる所定のコネクタ受け部とACアダプタ400のコネクタとを接続することにより、ACアダプタ400と電源回路200とが接続される構成を有する。
【0021】
ACアダプタ400が接続された電源回路200は、ACアダプタ400から供給される直流の電源電力に基づき、電源電圧Vdd1〜Vdd7の電力を生成して、それぞれ、CPU110、メモリ120、送受信部130、音声入出力部140、撮像部150、表示部160および操作部170に出力する。また、電源回路200は、ACアダプタ400から供給される直流の電源電力を利用してバッテリ300に対して充電を行うことができる。
【0022】
図2は、電源回路200の構成例を示す図である。この電源回路200は、バッテリ300およびACアダプタ400と接続される。図示の通り、電源回路200は、定電圧回路211〜217、ヒューズ223〜226、リセット回路230、電源保護回路240および充電回路260を備える。
【0023】
定電圧回路211がCPU110と、定電圧回路212がメモリ120と、定電圧回路213が送受信部130と、定電圧回路214が音声入出力部140と、定電圧回路215が撮像部150と、定電圧回路216が表示部160と、定電圧回路217が操作部170と、それぞれ接続されている。この定電圧回路211〜217は、それぞれ、バッテリ300から供給される電源電力を電源保護回路240を経由して入力し、対応の機能部に適合する所定電圧値に安定化した直流電源Vdd1〜Vdd7を生成して出力する。つまり、定電圧回路211はCPU110に直流電源Vdd1を出力する。定電圧回路212はメモリ120に直流電源Vdd2を出力する。定電圧回路213は送受信部130に直流電源Vdd3を出力する。定電圧回路214は音声入出力部140に直流電源Vdd4を出力する。定電圧回路215は撮像部150に直流電源Vdd5を出力する。定電圧回路216は表示部160に直流電源Vdd6を出力する。定電圧回路217は操作部170に直流電源Vdd7を出力する。
【0024】
ヒューズ223〜226は、それぞれ、定電圧回路213〜226におけるバッテリ300からの電源電力の入力段に挿入されている。これらの定電圧回路213〜226は、過電流保護素子であり、一定以上の電流が流れるのに応じて自己が溶融することにより電力供給ラインを遮断する。
【0025】
なお、本実施形態において、ヒューズ223〜226は、7つの定電圧回路211〜217のうち4つの定電圧回路213〜226のみに対して設けられ、残る3つの定電圧回路211、212および217に対しては設けられていない。このように、定電圧回路211、212および217に対してはヒューズによる保護が不要となり、ヒューズ数を削減することができる。なお、定電圧回路211、212および217に対してヒューズが不要であることの理由については後述する。
【0026】
リセット回路230は、バッテリ300から供給される電源電力の電圧値が予め決められた閾値より低下した場合、リセット信号Rstを出力する。これにより、携帯電話100におけるシステム全体の処理をリセットさせる。このリセット回路230は、例えば、バッテリ300の残量の減少によりバッテリ300が蓄電する電源電力の電圧値が一定以下となった場合にリセット信号Rstを出力する。そして、CPU110は、リセット信号Rstの入力に応じて、携帯電話100におけるシステム全体の処理を、例えば電源起動直後と同じ初期状態にリセットするための処理を実行する。これにより、バッテリ300の残量がなくなって電力供給が行われなくなる以前のタイミングでシステムをリセットして正常終了させることができる。
【0027】
電源保護回路240は、回路の異常動作により生じる過電流や過度の発熱から回路を保護する回路であり、電力スイッチ241、温度検出部242、電流検出部243、準異常状態判定部244およびレベル設定部250を備える。
【0028】
電力スイッチ241は、バッテリ300から定電圧回路211〜217に対して電源電力が供給されるラインに設けられ、バッテリ300からの電源電力の供給と停止の切り替えを行う。つまり、電力スイッチ241は、正常動作時においてオン状態となることによりバッテリ300からの電源電力を定電圧回路211〜217に対して供給する。一方、電力スイッチ241が正常動作時においてオン状態からオフ状態に切り替えられることにより、バッテリ300から定電圧回路211〜217に対する電源電力の供給が停止する。
【0029】
温度検出部242は、例えばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタなどを備えて形成され、電源回路200における回路周辺の温度を検出する。この温度検出部242は、例えば回路の異常動作や過電流により生じる熱により、検出された電源回路200の周辺の温度が予め決められた閾値温度以上となった場合、上記電力スイッチ241をオフ状態に切り替えるように制御する。これにより、異常動作による発熱から電源回路200の回路を保護することができる。
【0030】
電流検出部243は、バッテリ300から定電圧回路211〜217に対して電力が供給されるラインに流れる負荷電流のレベルに応じて回路を保護する。具体的に説明すると、この電流検出部243は、バッテリ300から定電圧回路211〜217に対して電力を供給するラインに挿入されており、バッテリ300から負荷(定電圧回路211〜217)に供給される負荷電流に応じた検出電流Idtの電流レベルを検出する。電流検出部243は、この検出電流Idtの電流レベルが閾値以上である場合、電力スイッチ241をオフ状態とするように制御する。これにより、定電圧回路211〜217への電源電力の供給が停止する。この電流検出部243としての回路は、例えば閾値としての電流レベルに対応する基準電圧が設定されたコンパレータなどにより構成することができる。
【0031】
レベル設定部250は、準異常状態判定部244の判定結果に応じて、検出電流Idtに対して設定される閾値のレベルの切り替えに相当する動作を実行する。具体的に説明すると、レベル設定部250は、図示するように、抵抗R1、抵抗R2および並列スイッチ251を備える。抵抗R1は、電流検出部243に対して定常的に並列に接続される。さらに、抵抗R2と並列スイッチ251の直列接続が電流検出部243に対して並列に接続される。したがって、抵抗R2については、並列スイッチ251がオン状態のときにのみ電流検出部243に対して並列に接続される。並列スイッチ251は、準異常状態判定部244から出力される判定結果を示す検出信号に応じてオン状態/オフ状態が切り替えられる。
【0032】
上記構成によると、並列スイッチ251がオンの状態の場合、抵抗R1、抵抗R2および電流検出部243がそれぞれ並列に接続される。このとき、抵抗R1、抵抗R2および電流検出部243のそれぞれには、抵抗R1と、抵抗R2と、電流検出部243の内部抵抗の比率に応じた負荷電流が分岐して流れることになる。
【0033】
一方、並列スイッチ251がオフ状態の場合には、抵抗R1および電流検出部243のみからなる並列回路となる。このときには、抵抗R1と電流検出部243の各々に、抵抗R1と電流検出部243の内部抵抗の比率に応じた負荷電流が分岐して流れる。これにより、電流検出部243に流れる検出電流Idtのレベルは、並列スイッチ251がオン状態の場合よりも増加する。
【0034】
準異常状態判定部244は、携帯電話100において準異常状態が発生しているか否かについて判定する回路である。なお、ここでは、直ちに過電流や過度の発熱を発生させてしまう故障の状態を「異常状態」として定義する。そのうえで、「準異常状態」とは、上記の「異常状態」ではないが、携帯電話100の機能が正常に動作している際には発生し得ない状態をいうものとする。であって、異常状態となるおそれがある状態をいう。
【0035】
例えば、準異常状態は、リセット回路230からリセット信号Rstが出力された状態を含む。リセット信号Rstが出力された状態は、明らかに故障とはいえない。しかし、携帯電話100の機能が正常に動作している限り、リセット信号Rstが出力されることはない。
【0036】
また、準異常状態は、例えば、定常的に電源電圧が供給されるべき機能部に対してその電源電圧が供給されていない状態を含む。図1および図2との対応では、電源がオン状態において定常的に電源電圧が供給されるべき機能部は、CPU110、メモリ120および操作部170の3つとなる。これらのCPU110、メモリ120および操作部170のうちの少なくとも1つに対して電源電圧が供給されていない状態が準異常状態であることになる。
【0037】
この図に示す準異常状態判定部244はANDゲートにより構成され、リセット信号Rstと、CPU110、メモリ120および操作部170の各電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7を入力して、その論理積を出力するようにされている。言い換えると、準異常状態判定部244は、リセット信号Rst、各電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7の出力レベルを示すHレベルの信号あるいはLレベルの信号を入力し、その論理積を示すHレベルの信号あるいはLレベルの信号を出力する。
【0038】
リセット信号Rstは、ローアクティブの信号である。したがって、準異常状態判定部244は、平常時においてリセット回路230からHレベルの信号を入力する。一方、準異常状態において、リセット回路230はリセット信号Rstを出力する。この場合、準異常状態判定部244は、リセット回路230からLレベルの信号を入力する。また、電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7は、それぞれ、定電圧回路211、212および217から正常に出力されているときには、それぞれが安定化された所定電圧値を有している。このように、定電圧回路211、212および217から電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7が出力されている場合、準異常状態判定部244は、定電圧回路211、212および217からHレベルの信号を入力する。これに対して、定電圧回路211、212および217から電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7が出力されな場合、定電圧回路211、212および217からの出力は0Vの状態となる。この場合、準異常状態判定部244は、定電圧回路211、212および217からLレベルの信号を入力する。なお、電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7が正常に出力されない場合として、例えば、定電圧回路211、212および217の出力不良等や、電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7を入力する機能部(CPU110、メモリ120および操作部170)側の回路の不良が考えられる。
【0039】
上述の通り、準異常状態が発生していない場合、つまり、正常状態である場合、リセット回路230から出力される信号、および定電圧回路211、212および217から出力される信号は、いずれもHレベルである。このため、ANDゲートである準異常状態判定部244は、論理積の結果としてHレベルの信号を出力する。これに対して、リセット信号Rstが出力された場合、または電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7の少なくとも1つについて出力が停止された状態となった場合には、リセット回路230から出力される信号、および定電圧回路211、212および217から出力される信号のうち、少なくとも1つがLレベルとなる。この場合、準異常状態判定部244は、論理積の結果としてLレベルの信号を出力する。つまり、準異常状態判定部244は、準異常状態が発生していないと判定した場合の判定結果としてHレベルの信号を出力し、少なくとも1つの準異常状態が発生していると判定した場合の判定結果としてLレベルの信号を出力する。
【0040】
上記構成を踏まえて、上記準異常状態判定部244の出力に応じたレベル設定部250と電流検出部243の動作について図3を参照して説明する。図3(a)は、時間経過における準異常状態判定部244による判定結果に応じた検出電流Idtの切り替え例を模式的に示している。また、この図においては、電流検出部243が検出電流Idtと比較する閾値Thを示している。電流検出部243は、検出電流Idtのレベルが閾値Th未満である場合、電力スイッチ241をオン状態に制御してバッテリ300からの電源電力供給を受ける。これに対して、検出電流Idtのレベルが閾値Th以上である場合、電力スイッチ241をオフ状態に制御してバッテリ300からの電源電力の供給を遮断する。
【0041】
まず、図3(a)に示す時刻t0以降において、電源回路200をはじめ、携帯電話100における各機能部が正常に動作している。このとき、リセット回路230からはリセット信号Rstが出力されないため、リセット回路230から準異常状態判定部244に入力する信号はHレベルである。また、定電圧回路211、212および217から電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7が出力されているため、定電圧回路211、212および217から準異常状態判定部244に入力する信号は、いずれもHレベルである。よって準異常状態判定部244は、論理積として、Hレベルの信号を並列スイッチ251に出力する。
【0042】
並列スイッチ251は、準異常状態判定部244からHレベルの信号を入力する場合、オン状態に制御され、Lレベルの信号を入力する場合、オフ状態に制御される。したがって、準異常状態が発生していないときに並列スイッチ251はオン状態に制御され、電流検出部243、抵抗R1および抵抗R2がそれぞれ並列に接続される。このとき、検出電流Idtは、抵抗R1および抵抗R2に分流した負荷電流の残りの電流量によるものとなる。この電流量を図3(a)、(b)においてはレベルI1として示している。
【0043】
次に、時刻t0後の時刻t1において、準異常状態が発生したとする。つまり、リセット回路230からはリセット信号Rstが出力された状態、あるいは、定電圧回路211、212および217から電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7の出力が停止された状態のうち少なくともいずれか1つが発生する。
【0044】
上記のように準異常状態が発生した場合、準異常状態判定部244は、論理積として、Lレベルの信号を並列スイッチ251に出力する。これにより、並列スイッチ251はオフ状態となり、電流検出部243と抵抗R1のみからなる並列回路が形成される。これにより、バッテリ300からの電源電力の電流は、電流検出部243と抵抗R1とに分流することになる。これにより、図3(a)に示す通り、時刻t1以降においては、電流検出部243に流れる検出電流IdtはレベルI2に増加する。
【0045】
ここで、図3(a)に示される閾値ThはレベルI3で一定である。このレベルI3の閾値Thと検出電流Idtを比較すると、検出電流Idtは、上記のようにレベルシフトが行われることにより、時刻t1以前のレベルI1に対して、時刻t1以降のレベルI2のほうが閾値Thとのレベル差が小さくなっている。
【0046】
携帯電話100における負荷電流は、例えば待ち受け時などでは非常に少ないが、送信時などには大幅に増加するように変動する。そこで、正常時においては、図3(a)の時刻t1以前として示すように、検出電流Idtを小さく設定して閾値Thとのレベル差が大きくなるように設定しておくことが好ましい。具体的に説明すると、このときの検出電流Idtは、例えば、通常動作のもとで想定される最大負荷電流に応じたレベルによっては閾値Thを越えないようにしたうえで、上記最大負荷電流に対して一定以上高いレベルとなるのに応じて閾値Thを越えるように設定することが好ましい。
【0047】
これにより、電流検出部243は、送信などの動作に応じてほぼ最大の負荷電流となったときであっても、電力スイッチ241をオンに維持して電力供給を継続させることができる。そして、異常動作が発生して過電流の状態となったときには、検出電流Idtのレベルが閾値Thを越えることとなって電力スイッチ241をオフとする。つまり、過電流の発生に応じて適切に電力供給を停止させることができる。
【0048】
一方、準異常状態の発生時においては、時刻t1以降として示すように、検出電流Idtのレベルが高くなるようにシフトが行われる。これにより、検出電流Idtに対して閾値Thのレベルが近づくように設定される。
【0049】
この準異常状態時に対応する検出電流Idtのレベルシフト量については、例えば、次のように設定する。準異常状態では、例えばシステムがリセットされているなど、送信などの負荷電流の高い動作は行われないことが想定される。そこで、このことを前提として、検出電流Idtについては、待ち受け状態やシステムリセット後の初期状態などの動作条件において想定される最大負荷時に対応するレベルに対して一定以上高いレベルとなったときに閾値Thを越えるように設定する。
【0050】
上記のように検出電流Idtのレベルシフト量を設定することで、準異常状態の発生時における検出電流Idtは、過電流または過度の発熱に至る以前のタイミングで閾値Thを越えることとなる。これに応じて、電流検出部243は、電力スイッチ241をオフとしてバッテリ300からの電力供給を遮断する。つまり、電流検出部243は、過電流の状態に至る前のタイミングで保護動作を実行する。
【0051】
準異常状態は、電源回路200の異常状態の発生を引き起こす予備段階の状態であるとみることができる。そこで、準異常状態においては、上記のように検出電流Idtと閾値Thとのレベルを近づけるように保護条件を厳しくして、過電流に至る以前のタイミングで電力供給を停止させることとしている。このようにすれば、過電流や過度な発熱の発生を未然に回避することが可能になる。
【0052】
なお、上記図3(a)にて説明した検出電流Idtのレベルシフトは、相対的に、検出電流Idtに対する閾値Thのレベルをシフトさせているものとしてみることができる。つまり、図3(a)では、閾値Thを固定としたうえで、検出電流Idtをシフトすることにより、相対的に、閾値Thのレベルを検出電流Idtに対してシフトさせているとみることができる。
【0053】
これに対して、検出電流Idtを固定とした場合には、図3(b)のように閾値Thのほうのレベルをシフトさせることで、図3(a)と同等の検出電流Idtと閾値Thのレベル関係となる。つまり、図3(b)では、時刻t1以前の準異常状態が発生していないときには過電流に対応したレベルI11の閾値Thを設定し、時刻t1以降の準異常状態が発生しているときには、レベルI11より低いレベルI12を設定するようにしている。これにより、図3と同様に、準異常状態の発生時における検出電流Idtと閾値Thのレベル差を準異常状態が発生していないときよりも小さくすることができる。
【0054】
したがって、本実施形態としては、図3(a)に示すように、検出電流Idtのレベル切り替えに代えて、電流検出部243において設定される閾値Thを準異常状態判定部244の出力に応じて切り替えるように構成しても同様の動作が得られるものである。
【0055】
また、本実施形態における上記の電流に対する保護動作は、準異常状態判定部244レベル設定部250および電流検出部243の動作によって実現されている。つまり、電源回路200内の回路のみによって実現されており、CPUなどによるソフトウェア制御は介在していない。これにより、本実施形態では、なんらかの原因でCPU110がハングアップしたり暴走するなどの正常でない状態に陥ったとしても、適切に電源回路200を保護することができる。
【0056】
また、図2によると、準異常状態判定部244は、準異常状態か否かの判定のために、定電圧回路211〜217のうち、定電圧回路211、212および217の電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7を入力している。したがって、定電圧回路211、212および217のいずれかにおいてなんらかの障害が発生して場合には、電源電圧の出力が停止するのに応じて、過電流に至る以前の段階で電源供給が停止される。これにより、定電圧回路211、212および217についてはヒューズを接続しなくとも万全に回路を保護することができる。
【0057】
つまり、本実施形態は、複数系統の定電圧回路のうち、準異常状態判定のために電源電圧が入力される定電圧回路については、ヒューズを省略することができる。これにより、電源回路において備えるべきヒューズの数を削減することが可能になる。ヒューズは比較的大型で高価な部品であるために、ヒューズの数が削減されることにより、小型化の促進とコストダウンを図ることが可能になる。また、ヒューズは、対応の定電圧回路ごとの仕様に応じて調整を行う必要があるが、ヒューズの数が削減されることにより、調整のための手間も削減できることになる。
【0058】
次に、図4を参照して、他の実施形態について説明する。図4は、他の実施形態に対応する電源回路200の構成例を示している。なお、この図において図2と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図4に示す電源回路200においては、CPU110に対応する定電圧回路211に対して、CPU110から電圧制御信号Svが入力されている。この他の実施形態におけるCPU110は、例えば自己の動作モードの変更に応じて、定電圧回路211から供給される電源電圧Vdd1の電圧値を変更させる。電圧制御信号Svは、このようなCPU110の動作モードの変更に応じて、電源電圧Vdd1の電圧値の変更を指示するためにCPU110が出力する制御信号である。
【0060】
具体例として、CPU110は、動作モードとして、常に起動して各種の機能動作を実行可能な起動モードとスリープモード(または休止状態であってもよい)とを設定可能であるものとする。まず、起動モードにおけるCPU110は、Hレベルの電圧制御信号Svを出力する。このHレベルの電圧制御信号Svに応じて、定電圧回路211は、起動モードに応じた所定値の電源電圧Vdd1を生成して出力する。これに対して、スリープモードを設定する際、CPU110は、Lレベルの電圧制御信号Svを出力する。このLレベルの電圧制御信号Svに応じて、定電圧回路211は、起動モードよりも低い所定電圧値の電源電圧Vdd1を生成して出力する。
【0061】
そして、準異常状態判定部244は、リセット信号Rstと、電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7に加えて、上記電圧制御信号Svを入力してその論理積を出力する。これにより、準異常状態としては、システムのリセット状態や電源電圧Vdd1、Vdd2およびVdd7が停止した状態だけではなく、スリープモードの状態も含まれることになる。
【0062】
したがって、この他の実施形態における電流検出部243は、スリープモードにおいて以下の動作を実行可能となる。つまり、何らかの原因により、スリープモードにおいて想定される最大負荷電流量を越えるレベルの負荷電流が流れたとする。これに応じて、検出電流Idtは閾値Thを越えることとなり、電流検出部243は、電力スイッチ241をオフとして電力供給を停止させることになる。つまり、スリープモードにおいて異常が発生した場合にも、過電流や過度の発熱が発生する以前のタイミングで保護動作が実行するものである。
【0063】
スリープモードは、異常状態を引き起こす可能性のある動作状態ではなく、正常な動作の1つではある。しかし、起動モードのように各種の機能を実行できる環境ではなく、この点で、各種機能が動作する起動モードでは発生し得ない状態、つまり、準異常状態の1つであるとみることができる。
【0064】
このスリープモードにおける異常状態の発生を考慮した場合、平常の動作時において想定される過電流のレベルに対応した保護動作は好ましいとはいえない。これよりも、スリープモードにおいて想定される最大負荷時の電流量(起動モード時と比較して非常に小さい)に対応させて保護動作を実行させるようにしたほうが回路をより万全に保護することができる。そこで、当該他の実施形態においては、このスリープモードに代表されるように、起動モード時よりも低い電源電圧Vdd1により駆動される状態を準異常状態に含める構成としたものである。
【0065】
なお、上記実施の形態による説明では、電流検出部243は、準異常状態判定部244により準異常状態であると判定されるのに応じて、即座に、電力スイッチ241をオフとして電力供給を停止させることとしている。しかし、例えば瞬時的な状態変化をキャンセルできるように、例えばローパスフィルタなどを利用して平滑化した出力に基づいて準異常状態の判定を行うようにすることが考えられる。また、これまでの説明において本実施形態の電源保護のための構成を携帯電話100に適用しているが、携帯電話以外の電子機器に適用してもよい。
【0066】
なお、本実施の形態に係る携帯電話100は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0067】
また、各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、検出対象物の形状情報の推定値を算出する処理を行ってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0068】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
100 携帯電話
110 CPU
120 メモリ
130 送受信部
140 音声入出力部
141 音声入力処理部
142 音声出力処理部
150 撮像部
160 表示部
170 操作部
200 電源回路
211〜217 定電圧回路
230 リセット回路
240 電源保護回路
241 電力スイッチ
242 温度検出部
243 電流検出部
244 準異常状態判定部
250 レベル設定部
251 並列スイッチ
260 充電回路
300 バッテリ
400 ACアダプタ
R1、R2 抵抗
Rst リセット信号
Sv 電圧制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源から負荷に供給される負荷電流を検出し、検出した負荷電流の値が予め決められた閾値より高い場合、前記電力源から負荷への電力供給を制御する制御部に対して、前記電力源から負荷への電力供給を停止するよう制御する電流検出部と、
前記負荷に供給される電源電力の電流あるいは電圧のレベルが予め決められている正常時の範囲内であるか否かを判定し、前記電源電力の電流あるいは電圧のレベルが前記正常時の範囲内でないと判定した場合に準異常状態であると判定する準異常状態判定部と、
前記準異常状態判定部により準異常状態であると判定された場合、前記閾値として、前記準異常状態でないと判定された場合よりも低い閾値を設定するレベル設定部と、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記電力源からの電力を入力して電源電圧を生成して所定の機能部に対して出力する1以上の定電圧回路をさらに備え、
前記準異常状態判定部は、
前記定電圧回路のうち、定常的に電源電圧が供給されるべき機能部に対応する定常出力対応定電圧回路から電源電圧が出力されている場合に準異常状態が発生していないと判定し、前記定常出力対応定電圧回路から電源電圧が出力されていない場合に準異常状態が発生していると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記準異常状態判定部は、
電子機器を初期状態にリセットするためのリセット信号が出力されていない場合に前記準異常状態が発生していないと判定し、前記リセット信号が出力されている場合に前記準異常状態が発生していると判定する、
ことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記準異常状態判定部は、
電源電圧を中央演算処理装置に対して出力する定電圧回路に対して電源電圧値の変更を指示する制御信号に基づいて前記準異常状態が発生しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記準異常状態判定部は、前記所定の機能部から出力される信号または電源電圧を入力する論理積ゲート回路を備え、当該論理積ゲート回路の出力の値により、前記準異常状態が発生しているか否かについての判定結果が示される
ことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項6】
前記レベル設定部は、
前記準異常状態判定部の判定結果に応じて前記電流検出部に対して並列に接続される抵抗の数を切り替える
ことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−21762(P2013−21762A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151027(P2011−151027)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】