説明

電源装置

【課題】ドライブ回路等を高コストなデジタル回路で構成しなくても、第1のPWMパルス又は第2のPWMパルスが極めて細くなったり欠損しない電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置は、DC電源部に並列的に接続される、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子の直列回路と、前記第2のスイッチング素子に並列的に接続され、インダクタと平滑コンデンサとの直列回路から構成される平滑フィルタ回路と、を備えている。電源装置は、また、前記第1、第2のスイッチング素子をオンオフ駆動する第1、第2のPWMパルスをそれぞれ形成し、それらのスイッチングパルス間にデッドタイムを形成するための制御部及びドライブ回路を備えている。前記制御部は、第1、第2のPWMパルスのいずれかのパルス幅に応じて前記スイッチングパルスの周波数を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、充放電装置等の電源装置に関する。特に、出力端子に二次電池が接続され、この二次電池に対して充放電を繰り返し行って電池特性(放電特性や容量)の検査を行うのに適した電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の二次電池を検査するには、通常、被検査物として出力端子に接続されている二次電池に対して充放電を繰り返し行って検査する。例えば、二次電池の電池電圧が低いときには充電モードにして二次電池に対して充電電流を流し、二次電池の電池電圧が十分高いときには放電モードにして二次電池からの放電電流を流すように制御する。
【0003】
このような電源装置では、DC電源部が入力側に接続され、充電モードのときにはDC電源部から二次電池に対して充電電流が流れ、放電モードのときには二次電池からDC電源部に対して放電電流が流れる。また、DC電源部には、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子の直列回路が並列的に接続され、前記第2のスイッチング素子には、インダクタと平滑コンデンサとの直列回路から構成される平滑フィルタ回路が並列的に接続される。
【0004】
また、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を交互にオンオフするための第1のPWMパルスと第2のPWMパルスをそれぞれ形成し、さらに、それらのPWMパルス間にデッドタイムを形成するドライブ回路が設けられる(特許文献1)。
【0005】
以上の構成の電源装置では次のように動作する。
【0006】
出力端子に未充電の二次電池が接続されると充電モードとなり、第1のPWMパルスのパルス幅が第2のPWMパルスのパルス幅よりも長くなり、第2のスイッチング素子の両端の平均電圧が二次電池の電池電圧よりも高くなる。この平均電圧と二次電池の電池電圧との差により二次電池に対して充電電流が流れる。
【0007】
この充電モードでは、充電電流(出力電流)は出力電流検出部により検出され、この電流が定電流となるように、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスのデューティ比が制御される。また、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子が同時にオンすることがないように、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスとの間に両パルスともオンしないデッドタイムが形成される。
【0008】
二次電池の電圧が十分に高くなると、放電モードに切り替えられる。この放電モードでは、第2のPWMパルスのパルス幅が第1のPWMパルスのパルス幅よりも長くなり、第2のスイッチング素子の両端の平均電圧が二次電池の電池電圧よりも低くなる。この平均電圧と二次電池の電池電圧との差により二次電池からDC電源部に向けて放電電流が流れる。
【0009】
この放電モードでは、放電電流は出力電流検出部により検出され、この電流が定電流となるように、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスのデューティ比が制御される。また、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子が同時にオンすることがないように、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスとの間に両パルスともオンしないデッドタイムが形成される。
【0010】
このようにして、二次電池に対する充電と放電が繰り返し行われて、二次電池の容量検査やその他の検査が行われる。
【特許文献1】特開2002−10502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の電源装置では、充電や放電が進むに従って、第1のPWMパルスや第2のPWMパルスのパルス幅(ON幅)又はそのパルスのOFF幅が徐々に狭くなってくる。例えば、放電モードにおいては、二次電池の放電が進んで電池電圧が低くなると、第2のスイッチング素子をオンするための第2のPWMパルスのOFF幅が短くなるように制御される。
【0012】
しかし、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスとの間のデッドタイムを、低コストで構成できるCR時定数回路を含む回路で形成すると、次のような問題が生じる。
【0013】
すなわち、CR時定数回路は、パルス波形を鈍らせて遅延を生成するものであるが、アナログ信号処理のために、第2のPWMパルスのOFF幅が相当に短くなる制御状態では、第2のPWMパルスの形成が不確実となり、その制御が不安定となってしまう。その他、アナログ的に波形処理をしてデッドタイムを形成する場合も、同じような問題が生じる。一方、これを解決するために、第1のPWMパルスを完全デジタル的に形成しようとすると、デッドタイムを形成するためのドライブ回路が高価なデジタル回路となったり、スイッチングパルスを形成するDSPやCPUに高性能な高コストのものを必要となり、電源装置全体のコストアップを招来する。
【0014】
上記の問題は、充電モードにおいても同様に生じる。また、この電源装置を、出力端子に接続した二次電池から見て負荷の大きさを可変することのできる電子負荷装置として機能させる場合も、上記と同じような問題が生じる。
【0015】
この発明の目的は、ドライブ回路等を高コストなデジタル回路で構成しなくても、第1のPWMパルス又は第2のPWMパルスのパルス幅が短くなるように制御されている状態で、制御が不安定になることを防止できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の電源装置は、DC電源部に並列的に接続される、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子の直列回路と、前記第2のスイッチング素子に並列的に接続され、インダクタと平滑コンデンサとの直列回路から構成される平滑フィルタ回路と、を備えている。また、前記平滑コンデンサの両端に接続される出力端子と、スイッチングパルスを出力し、そのパルスのパルス幅をPWM制御する(デューティ比を制御する)制御部と、前記スイッチングパルスに基づいて、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を交互にオンオフするための第1のPWMパルスと第2のPWMパルスをそれぞれ形成し、さらに、それらのPWMパルス間にデッドタイムを形成するドライブ回路と、を備えている。
【0017】
前記制御部は、前記第1のPWMパルスと前記第2のPWMパルスのいずれかのパルス幅に応じて前記スイッチングパルスの周波数を変える。なお、この発明でいうパルス幅とは、パルスのON幅又はOFF幅を意味する。以下、説明の都合上、単にパルス幅と言う場合は、パルスのON幅又はOFF幅を意味する。また、上記ON幅又はOFF幅は、ON区間又はOFF区間と称することがある。
【0018】
この発明の一例としての電源装置では、出力端子に、二次電池が接続され、この二次電池に対して充電と放電を繰り返し行うことにより、二次電池の検査を行う。すなわち、この発明の電源装置は、例えば、二次電池の検査装置として使用される。
【0019】
二次電池の検査装置として使用する電源装置では、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子を第1のPWMパルスと第2のPWMパルスによって交互にオンオフする。また、第2のスイッチング素子に並列的に接続される平滑フィルタ回路を介して二次電池に対して充電電流を流し、又は、二次電池から平滑フィルタ回路を介してDC電源部に対して放電電流を流す。
【0020】
第1のPWMパルスのパルス幅(ON幅)が第2のPWMパルスのパルス幅(ON幅)よりも長いと充電モードとなって、充電電流が二次電池に流れる。すなわち、第1のPWMパルスのパルス幅が第2のPWMパルスのパルス幅よりも長いと、第2のスイッチング素子の両端の平均電圧が二次電池の電池電圧よりも高くなるために、二次電池に対して充電電流が流れる。また、第1のPWMパルスのパルス幅が第2のPWMパルスのパルス幅よりも短いと放電モードとなって、放電電流が二次電池からDC電源部に流れる。すなわち、第1のPWMパルスのパルス幅が第2のPWMパルスのパルス幅よりも短いと、第2のスイッチング素子の両端の平均電圧が二次電池の電池電圧よりも低くなるために、二次電池からDC電源部に対して放電電流が流れる。このように、二次電池に対して充電と放電とを行うことができる。
【0021】
放電モードでは、二次電池の電池電圧が低下すると、それに応じて第2のPWMパルスのOFF幅も短くなる。そこで、この発明では、二次電池の電池電圧の低下に応じて(第2のPWMパルスのOFF幅が短くなるに応じて)、第1のPWMパルスと第2のPWMパルスを形成するスイッチングパルスの周波数を低くする。ドライブ回路に、スイッチン
グパルスを鈍らせて第2のPWMパルスを形成するCR時定数回路を用いている場合は、第2のPWMパルスのOFF幅が一定の幅以下になると、同パルスの形成が不確実となり第2のスイッチング素子の制御が不安定となるが、この発明では、このような状態のときにスイッチングパルスの周波数が低くなるために、第2のPWMパルスの形成が確実となる。
【0022】
また、同時に、第1のPWMパルスがいわゆる「ヒゲ」のような不安定なパルスとなったりパルス欠損となるのを防止することもできる。
【0023】
制御部は、第2のPWMパルスのOFF幅が一定のパルス幅以下になると前記スイッチングパルスの周波数を低くするように制御しても良いし、第2のPWMパルスのOFF幅が短くなるに応じてスイッチングパルスの周波数を連続的に低くするように制御しても良い。
【0024】
なお、充電モードにおいては、充電が進むと第1のPWMパルスのOFF幅が短くなるが、このモードにおいても、第1のPWMパルスのOFF幅が一定のパルス幅以下になったときに、又は、二次電池の電池電圧の増加に応じて(第1のPWMパルスのOFF幅が短くなるに応じて)スイッチングパルスの周波数を連続的に低くするように制御しても良い。充電モードにおいて上記制御を行うことにより、DC電源部の電源電圧が低くても、安定な充電制御が可能になる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、パルス波形を鈍らせるCR時定数回路やアナログ的な遅延回路を用いて第1のPWMパルス又は第2のパルスを形成する場合であっても、それらのパルスのパルス幅が短くなった状態で同パルスの形成が不確実となるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、この発明の実施形態である電源装置のブロック図である。
【0027】
この電源装置は、二次電池に対して充電と放電を繰り返すことにより二次電池の特性を検査する検査装置として使用される。
【0028】
入力端子1には、DC電源部2が接続されている。このDC電源部2は、出力電圧がDC電圧であれば、電池又はAC−DCコンバータ等で構成できる。
【0029】
入力端子1には、第1の平滑コンデンサ3と、第1のスイッチング素子4及び第2のスイッチング素子5の直列回路とが並列的に接続されている。並列的に接続されるとは、入力端子1に対して直接的又は間接的に電気的に並列な接続であることを意味し、任意の素子や回路を介さずに並列に接続されることと、任意の素子や回路を介して並列に接続されることを含む。
【0030】
第1のスイッチング素子4及び第2のスイッチング素子5は、それぞれMOS型FETのスイッチングトランジスタ、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されている。これらのスイッチング素子4、5は、バイポーラトランジスタ素子やサイリスタ素子などで構成することも可能である。
【0031】
第2のスイッチング素子5には、インダクタ(L)60と第2の平滑コンデンサ61の直列回路からなる平滑フィルタ回路6が並列的に接続されている。また、インダクタ60の出力側には、貫通コイルやホール素子等で構成され、出力電流を検出する出力電流検出部(SH)62が接続されている。
【0032】
平滑コンデンサ61には、開閉器(RY)7を介してコンデンサ8が並列に接続され、さらに、出力端子9が接続されている。出力端子9には、被検査対象である二次電池10が接続されている。二次電池10は、放電限界状態で電池電圧が急激に垂下する例えばリチウムイオン電池である。
【0033】
制御部11は、第1のスイッチング素子4及び第2のスイッチング素子5を交互にスイッチングするためのスイッチングパルスW1を生成する。この制御部11は、DSP(DigitalSignal Processor)で構成され、高速でスイッチングパルスW1を形成する。
【0034】
制御部11の入力側には、出力電流検出部62で検出した出力電流Ioと、平滑コンデンサ61の両端電圧である平滑出力電圧Vcと、出力端子9の電圧である出力電圧Voとが入力する。また、制御部11の入力側は、上位の制御装置12と通信するための通信端子(SPI)を備えている。この通信端子(SPI)には、上位の制御装置12から、運転指令信号、運転停止信号、電流指令値が入力し、また、この通信端子(SPI)からは、上位の制御装置12に対してこの電源装置の状態のアンサバック信号等を出力する。
【0035】
制御部11の出力側からは、出力端子(PWMO)からPWM制御されたスイッチングパルスW1が出力する。このスイッチングパルスW1は、上位の制御装置12から、運転指令信号を受けた後、出力電流検出部62で検出した出力電流Ioが電流指令値になるように、PWM制御、すなわちデューティ比制御(定電流制御)される。また、後述のように、制御部11は、放電モードにおいて、電池電圧が低下するに応じてスイッチングパルスW1の周波数fを下げる制御を行う。
【0036】
出力端子(PWMO)から出力されるスイッチングパルスW1は、第1のドライブ回路14に直接入力し、また、信号反転回路(インバータ)12を介して第2のドライブ回路13に入力する。
【0037】
第2のドライブ回路13は、アンドゲート13A、信号反転回路(インバータ)13B、13C、及び第2のCR時定数回路13Dを備えている。第2のCR時定数回路13Dは、抵抗RとコンデンサCからなる信号遅延回路で、アンドゲート13Aの出力信号をアナログ的に遅延する。なお、抵抗Rには並列に逆方向にダイオードDが接続されていて、コンデンサCの充電電荷を急速に放電するようにしている。第2のCR時定数回路13Dの出力は、信号反転回路13Bに入力し、さらに、その出力は信号反転回路13Cに入力する。第2のドライブ回路13の出力は、第2のPWMパルスとして第2のスイッチング素子5のゲート端子に出力される。
【0038】
なお、アンドゲート13A、信号反転回路12、13B、13Cは、ヒステリシス特性により信号の遅延を少し生じさせる。また、信号反転回路13Bは、第2のCR時定数回路13Dで鈍った信号をパルスに整形する整形回路として動作する。
【0039】
第1のドライブ回路14は、第2のドライブ回路13と同様な回路構成を備えているが、同回路14内に設けられる第1のCR時定数回路14Dの時定数は、第2のドライブ回路13に設けられる第2のCR時定数回路13Dの時定数と異なっている。第1のドライブ回路14の出力は、第1のPWMパルスとして第1のスイッチング素子4のゲート端子に出力される。
【0040】
このように、第1のドライブ回路14と第2のドライブ回路13内に設けられるCR時定数回路13Dと14Dの時定数を異ならせることにより、第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2との間にデッドタイムが形成される。
【0041】
なお、第1のスイッチング素子4と第2のスイッチング素子5には、並列にダイオード(フリーホィールダイオード)40、50が接続されているが、これらのダイオード40、50は、スイッチング素子4又は5のオフ時にインダクタ60に蓄積されているエネルギーを放出するためのものである。すなわち、充電モード時では、第1のスイッチング素子4のオフ時に、インダクタ60に蓄積されているエネルギーをダイオード50を介して放出する(実際は、デッドタイムを除く期間において第2のスイッチング素子5もオンされているためこのスイッチング素子5を経由して放出される)。また、放電モード時では、第2のスイッチング素子5のオフ時に、インダクタ60に蓄積されているエネルギーをダイオード40を介して放出する(実際は、デッドタイムを除く期間において第1のスイッチング素子4もオンされているためこのスイッチング素子4を経由して放出される)。
【0042】
二次電池10の検査は次のようにして行われる。
【0043】
まず、充電されていない二次電池10を出力端子9に接続して、電源装置を起動する。
【0044】
このとき、第2のスイッチング素子5の両端平均電圧は二次電池10の電池電圧よりも高いために充電モードとなる。充電モードでは、第1のPWMパルスP1のパルス幅(ON幅)が、第2のPWMパルスP2のパルス幅(ON幅)よりも大きくなる。
【0045】
図2は、充電モードのときの第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2を示している。パルス周期Tに対して、第1のPWMパルスP1の「H」の時間TP1(ON幅)が50%以上であり、反対に、第2のPWMパルスP2の「H」の時間TP2(ON幅)が50%以下である。第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2が重ならないように、デッドタイムTd1、Td2が設けられている。上記のように、このデッドタイムTd1、Td2は、ドライブ回路13内の第2のCR時定数回路13D、波形整形回路(ゲート回路等)と、ドライブ回路14内の第1のCR時定数回路14Dや波形整形回路(ゲート回路等)とを組み合わせることで形成される。
【0046】
図3は、放電モードのときの第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2を示している。パルス周期Tに対して、第1のPWMパルスP1の「H」の時間TP1(ON幅)が50%以下であり、反対に、第2のPWMパルスP2の「H」の時間TP2(ON幅)が50%以上である。この放電モードにおいても、第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2が重ならないように、デッドタイムTd1、Td2が設けられている。
【0047】
充電されていない二次電池10を出力端子9に接続して、電源装置を起動すると、まず、充電モードとなって、制御部11は、出力電流(充電電流)が所定の定電流となるようにデューティ比を設定しながらスイッチングパルスW1を形成する。第1のドライブ回路14と第2のドライブ回路13は、それぞれ、スイッチングパルスW1から第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2を生成する。充電モードでは、図2において、パルス幅(ON幅)TP1が大きく(広く)、パルス幅(ON幅)TP2が小さく(狭く)制御され定電流が維持される。充電が進行することにより電池電圧が上昇し、それに従ってパルス幅(ON幅)TP1も小さくなっていく。出力端子9の出力電圧が所定の電圧に達すると充電が完了したものとして充電モードでの動作を停止する。なお、充電モードでは、充電開始から充電終了までの時間を計測することにより二次電池10の容量を検査することができる。充電終了は、出力電圧Voが所定の電圧になったことを検出することで判定される。
【0048】
放電モードでの検査を行うときは、制御部11は、DC電源部2の方向への出力電流(放電電流)が所定の定電流となるようにデューティ比を設定しながらスイッチングパルスW1を形成する。第1のドライブ回路14と第2のドライブ回路13は、それぞれ、スイッチングパルスW1から第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2とを形成する。放電モードでは、図3において、パルス幅(ON幅)TP1が小さく(狭く)、パルス幅(ON幅)TP2が大きく(広く)制御され定電流(この場合は、電流の方向はDC電源部2に向かっている)が維持される。放電が進行することにより電池電圧が下降し、それに従ってパルス幅TP1も小さくなっていく。
【0049】
本実施形態の電源装置では、後述のように、放電モードにおいて、第1のPWMパルスP1のパルス幅TP1が短くなるに応じて、すなわち、電池電圧が低くなるに応じて、スイッチングパルスW1の周波数fを徐々に低くする。なお、電池電圧は、出力端子9に表れる出力電圧Voで検出しても良いが、出力端子9から平滑フィルタ回路6までのインピーダンスによる電圧降下を考慮することとして、平滑フィルタ回路6の出力電圧である平滑出力電圧Vcを電池電圧に代わる電圧として検出する。
【0050】
このように制御することで、放電モードにおいて、第1のPWMパルスP1のパルス幅TP1が小さくなったときのパルス形成が不安定になるのを防止する。
【0051】
以下、このことについて詳細に説明する。
【0052】
理解を容易にするために、まず、スイッチングパルスの周波数fを固定したときのドライブ回路13、14の動作について図4を参照して説明する。
【0053】
図4は、スイッチングパルスの周波数fを固定した状態で、放電モードにおいて電池電圧が低下していくときの波形図を示す。実線は電池電圧が高い状態を示し、点線は電池電圧が低い状態を示している。電池電圧が低下していくに従って、図4の矢印に示すように、スイッチングパルスW1を含む各パルスのパルス幅は実線の状態から破線の状態に遷移する。
【0054】
制御部11の端子PWMOから出力されるスイッチングパルスW1は、信号反転回路(インバータ)12で反転され、第2のドライブ回路13に入力する。第2のドライブ回路13では、信号反転回路(インバータ)12で反転されたパルスが、通常時には「H」に設定されている入力信号との論理積を行うアンドゲート13Aを通過して第2のCR時定数回路13Dに入力する。各回路はヒステリシス特性を持つために少しの信号遅れが生じるが極端に遅れることはない。これに対して、第2のCR時定数回路13Dでは、図4のパルスW4に示すように、スイッチングパルスがアナログ的に鈍らされてから、しきい値Vth+と、しきい値Vth−と比較されて波形整形されるため、この回路13Dでの信号の遅れが比較的大きい(W4、W5)。第2のCR時定数回路13Dの出力であるパルスW4は信号反転回路13B、13Cを通過して第2のPWMパルスP2として第2のスイッチング素子5のゲート端子に入力する。第2のPWMパルスP2は、第2のスイッチング素子5のゲート端子に入力して、このスイッチング素子5をオンオフ駆動する。
【0055】
一方、スイッチングパルスW1は、信号反転回路を介さずに第1のドライブ回路14にも入力し、この第1のドライブ回路14において、第1のCR時定数回路14Dと波形整形を行う信号反転回路等により第1のPWMパルスP1を形成する。第1のPWMパルスP1は、第1のスイッチング素子4のゲート端子に入力して、このスイッチング素子4をオンオフ駆動する。
【0056】
ドライブ回路13、14においては、以上の動作によりデッドタイムTd1、Td2が形成される。
【0057】
また、制御部11は、放電モードにおいて、定電流となるように、スイッチングパルスW1のデューテイ比(T1/T)を小さくする。スイッチングパルスW1のデューテイ比が小さくなると、信号反転回路12で信号レベルが反転したパルスW2、W3が形成され、さらに、パルスW3は第2のCR時定数回路13Dによって波形が鈍った信号W4に変換される。信号W4は波形整形を行う信号反転回路13Bで波形整形される。
【0058】
ところが、鈍った信号W4は、通常のICのしきい値により波形整形されるために、図4に示すように、スイッチングパルスW1のデューテイ比が小さくなるに従って、信号W4を波形整形したパルスW5のパルス幅(ON幅)が急激に小さく(狭く)なる。このため、パルスW5をさらに反転した第2のPWMパルスP2は、スイッチングパルスW1のデューテイ比が小さくなるに従って、パルス幅が急激に大きく(広く)なる。このとき、第1のPWMパルスP1が、スイッチングパルスW1のデューテイ比が小さくなるに従って、パルス幅(ON幅)が急激に小さく(狭く)なる。図4において、第1のPWMパルスP1(α)は、パルス幅が急激に小さく(狭く)なった結果、十分なピーク値を確保できない状態にあることを示している。このような第1のPWMパルスP1(α)は、正常なパルスとは言えず、第1のスイッチング素子4をオンすることができない。このため、放電電流は、ダイオード40を通過していくこととなる。
【0059】
一方、スイッチングパルスW1のデューティ比が小さくなって、鈍った信号W4がしきい値Vthを超えると、信号反転回路13B、13Cを駆動することができなくなり、第2のPWMパルスP2のOFF区間を形成できなくなる。すると、第2のスイッチング素子5がオンし続け、それにより、このスイッチング素子5を制御できなくなる周期が生じる可能性がある。
【0060】
上記パルス幅(ON幅)が急激に狭くなることは、ΔTx/ΔTyの変化が急激になることである。
【0061】
ただし、ΔTxは、第2のPWMパルスP2のデューティ比(T2/T)の変化を示し、ΔTyは、スイッチングパルスW1のデューテイ比(T1/T)の変化を示す。
【0062】
また、ΔTx/ΔTyの変化が急激になることを、出力電圧の変化とゲインの変化で示すと次のようになる。
【0063】
図5は、出力電圧Voを縦軸に、スイッチングパルスW1のパルス幅T1を横軸にして、出力電圧Voの変化とゲインGの変化を示したものである。
【0064】
ゲインGは、
(出力電圧変化ΔV)/(パルス幅変化ΔT)・・・・・(式1)
で表される。
【0065】
出力電圧変化ΔVは、
{パルスW1のパルス幅T1(t)のときの出力電圧Vo(t)}
−{パルスW1のパルス幅T1(t−1)のときの出力電圧Vo(t−1)}
であり、
パルス幅変化ΔTは、
{パルス幅T1(t)−パルス幅T1(t−1)}
である。
【0066】
図5に示すように、ゲインGは、出力電圧Voが低くなる(W1のパルス幅が小さくなる)と、急激に大きくなっていくことがわかる。つまり、出力電圧Voが低いときは(ゲインGが急激に変化しているときは)、制御部11による制御系のゲインGの変化が大きいために制御が不安定になることを示している。
【0067】
以上のように、スイッチングパルスW1の周波数fを固定して、放電モードにおいてスイッチングパルスW1のデューティ比を制御すると、出力電圧Voが低くなったときに(W1のパルス幅(ON幅)が小さくなったとき)、制御が不安定になり、第2のPWMパルスP2のOFF区間が形成されなくなる等の不都合が生じてくる。
【0068】
そこで、本実施形態の電源装置では、放電モードにおいて、第2のPWMパルスP2のOFF幅が短くなる(図3において、TP2が長くなる)に応じて、すなわち、出力電圧Vo(平滑出力電圧Vc)が低くなるに応じて、スイッチングパルスW1の周波数fを下げていく。スイッチングパルスW1の周波数fが下がると、制御部11による制御系のゲインGの変化が緩やかになり、制御の不安定性を解消できる。すなわち、(式1)において、周波数fを下げることにより、(出力電圧変化ΔV)を変えずに(パルス幅変化ΔT)を大きくすることができるためゲインGを下げることができる。ゲインGを下げることにより、その急激な変化を抑制できる。
【0069】
図6は、放電モード時において、制御部11によりスイッチングパルスW1の周波数fを下げていったときの第1のPWMパルスP1、第2のPWMパルスP2の変化を示している。図7は、比較のため、周波数fを固定にしたときの各パルスP1、P1の変化を示している。なお、図6、図7において、平滑出力電圧Vcが1V付近は、二次電池10(リチウムイオン電池)の電池電圧が急激に垂下する3V付近にあることと等価である。それらの電圧の電圧差2Vは、平滑フィルタ回路6から二次電池10までの配線による電圧降下に相当している。
【0070】
図7に示すように、周波数fを固定にした場合は、平滑出力電圧Vc=0.9Vまで低下すると、第2のPWMパルスP2のOFF区間が非常に細い幅となり、P2(β)のように第2のPWMパルスP2をOFFできなくなる。この場合は、OFF区間が消えることによるパルス欠損となったり、「ヒゲ」のようなOFF区間となって正常に動作しないことが生じる。同時に、第1のPWMパルスPについても、P1(β)のようにパルス欠損を生じる。また、充電モード時においても、同様に、パルス欠損などを生じる可能性がある。
【0071】
これに対して、図6に示すように、平滑出力電圧Vcが低下するに従って周波数fを下げていくと、平滑出力電圧Vc=0.9Vまで低下した場合でも、第2のPWMパルスP2をOFFすることができ、第2のPWMパルスP2によって正しく第2のスイッチング素子5を制御することができる。第1のPWMパルスP1についても、パルス欠損を生じることがなくなる。また、「ヒゲ」のような不安定なパルスになることもない。
【0072】
図8は、スイッチング周波数fの制御特性を示している。
【0073】
図に示すように、放電モードにおいてVc=2.5Vに降下するまでは周波数f=160kHzに設定され、それ以降は、Vc=0.5Vに降下するまで周波数fが徐々に低くなっていく。
【0074】
図9は、制御部11の放電モード時の動作を示すフローチャートである。
【0075】
制御部11は、ステップST1において、スイッチングパルスW1のデューティ比を放電電流が定電流となるように制御し、ステップST2において、予め記憶されている図8の特性を表す関数を参照して、平滑出力電圧Vcに応じた周波数fを設定する。ステップST2において、周波数fを変えても、定電流制御は行われる。制御部11をCPUで構成する場合は、図8の特性をテーブルで記憶しておいて、このテーブルを参照して平滑出力電圧Vcに応じた周波数fを設定することも可能である。
【0076】
以上のように、平滑出力電圧Vcが低下するに従ってスイッチングパルスW1の周波数fを下げていくことにより、第2のPWMパルスP2のOFF区間を生成することができるため、第2のPWMパルスP2のパルス形成が不安定になるのを防止できる。なお、スイッチングパルスW1の周波数fを下げていくことにより、第1のPWMパルスP1のパルス幅TP1も大きく(広く)なるから、このパルス形成も不安定になることはない。
【0077】
なお、放電モードのときだけではなく、充電モードにおいても、同様な制御を行うことにより第1のPWMパルスP1又は第2のPWMパルスP2のパルス形成が不安定になるのを防止できる。すなわち、充電モードでは、二次電池10への充電量が少ないときに第1のPWMパルスP1のOFF幅が短くなるが、このとき、DC電源部2の電圧が何らかの原因で低下すると、そのOFF幅はさらに短くなり第1のPWMパルスP1の形成が不安定になる。そこで、第1のPWMパルスP1のOFF幅が短くなるに応じて、すなわち、平滑出力電圧Vcが高いときほどスイッチングパルスW1の周波数fを下げる制御を行う。
【0078】
また、以上の実施形態では、図8のように、平滑フィルタ回路6の平滑出力電圧Vcの大きさに応じてスイッチングパルスの周波数fを連続的に変化させているが、平滑出力電圧Vcが一定の電圧に低下したときに(放電モードのとき)、周波数fを変化させるようにしても良い。つまり、第1のPWMパルスP1のパルス幅が急激に小さく(狭く)なる状態まで平滑出力電圧Vcが低下したときに(放電モードのとき)、周波数fを下げるようにしても良い。
【0079】
また、以上の実施形態では、定電流制御を行っているが、平滑出力電圧Vcを一定にする定電圧制御を行うことも可能である。
【0080】
また、この発明は、二次電池10の検査装置に適用出来る他、電子負荷装置にも適用できる。電子負荷装置に適用する場合、電流の入出力が可能な電源部を出力端子9に接続し、この電源部から定電流を流入させたり、この電源部に対して定電流を流す電子負荷として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】この発明の実施形態である電源装置のブロック図である。
【図2】充電モードのときの第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2を示している。
【図3】放電モードのときの第1のPWMパルスP1と第2のPWMパルスP2を示している。
【図4】放電モードにおいて電池電圧が低下していくときの波形図を示す。
【図5】出力電圧Voの変化とゲインGの変化を示したものである。
【図6】スイッチングパルスW1の周波数fを下げていったときの第1のPWMパルスP1、第2のPWMパルスP2の変化を示している。
【図7】周波数fを固定にしたときの各パルスP1、P1の変化を示している。
【図8】スイッチング周波数fの制御特性を示している。
【図9】制御部11の放電モード時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
2−DC電源部
4−第1のスイッチング素子
5−第2のスイッチング素子
6−平滑フィルタ回路
10−二次電池
11−制御部
13−第2のドライブ回路
14−第1のドライブ回路
13D−第2のCR時定数回路
14D−第1のドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電源部に並列的に接続される、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子の直列回路と、
前記第2のスイッチング素子に並列的に接続され、インダクタと平滑コンデンサとの直列回路から構成される平滑フィルタ回路と、
前記平滑コンデンサの両端に接続される出力端子と、
スイッチングパルスを出力し、そのパルスのデューテイ比を制御する制御部と、
前記スイッチングパルスに基づいて、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子を交互にオンオフするための第1のPWMパルスと第2のPWMパルスをそれぞれ形成し、さらに、それらのPWMパルス間にデッドタイムを形成するドライブ回路と、を備え、
前記制御部は、前記第1のPWMパルスと前記第2のPWMパルスのいずれかのパルス幅に応じて前記スイッチングパルスの周波数を変える電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のPWMパルスと前記第2のPWMパルスのいずれかのパルス幅が短くなるに応じて前記スイッチングパルスの周波数を低くする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のPWMパルスと前記第2のPWMパルスのいずれかのパルス幅が一定のパルス幅以下になると前記スイッチングパルスの周波数を低くする請求項1記載の電源装置。
【請求項4】
前記ドライブ回路は、前記スイッチングパルスを鈍らすCR時定数回路を備え、このCR時定数回路の出力を整形することにより前記デッドタイムを形成する、請求項1〜3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記ドライブ回路は、前記第1のPWMパルスを形成する第1のドライブ回路と、前記第2のPWMパルスを形成する第2のドライブ回路とで構成し、
前記第1のドライブ回路は、前記スイッチングパルスを鈍らす第1のCR時定数回路を含み、
前記第2のドライブ回路は、前記スイッチングパルスを鈍らす第2のCR時定数回路を含み、
前記第1のCR時定数回路と前記第2のCR時定数回路のそれぞれの時定数が異なっている請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
出力電流を検出する出力電流検出部を備え、
前記制御部は、前記出力電流検出部で検出された出力電流が一定となるように前記スイッチングパルスのデューティ比を制御する、請求項1〜5のいずれかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記出力端子に二次電池が接続され、
前記制御部は、前記二次電池に対して充電電流を流す充電モードと、前記二次電池から放電電流を流す放電モードとを設定することが出来、
前記充電モードのときは、前記第1のPWMパルスのパルス幅が前記第2のPWMパルスのパルス幅よりも大きくなるように前記スイッチングパルスのデューティ比を制御し、前記放電モードのときは、前記第2のPWMパルスのパルス幅が前記第1のPWMパルスのパルス幅よりも大きくなるように前記スイッチングパルスのデューティ比を制御する、請求項6記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記二次電池の電池電圧に応じて前記スイッチングパルスのデューティ比を制御する請求項7記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−225644(P2009−225644A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70591(P2008−70591)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】