説明

電源装置

【課題】回路基板を絶縁樹脂で絶縁しながら定位置に保持する。また、電池から排出されるガス等の流体から保護する。
【解決手段】安全弁10を備える複数の電池1をケース2に収納する電源装置であって、複数の電池1を収納する電池室4と、この電池室4に収納される電池1の安全弁10の開口部11から排出されるガスを排気する排気室5とにケース2内を区画する区画壁3を備え、この区画壁3は、ガスを電池室4に流入させることなく排気室5に流入させて、排気室5からケース2外へ排出するように構成され、さらに、ケース2に内蔵される回路基板28を備え、この回路基板は、ポッティングにより、絶縁樹脂27に埋設されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに電池を内蔵する電源装置に関し、とくに電池の安全弁が開弁する状態における安全性を向上できる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池をケースに収納している車両用等に使用される電源装置は、電池が異常な状態で充放電されるときに、電池に設けた安全弁を開弁する。安全弁は、ガスや電解液を排出して、外装缶の破裂を防止する。電池から排出されるガスは、電池の種類により異なり、たとえばリチウムイオン二次電池は、開弁された安全弁から酸素を含むガスを排出する。また、ニッケル水素電池は、水素を含むガスを排出する。安全弁が開いて、ケース内にガスが噴射される状態は、電池が異常な状態で使用されることから、電池温度も異常に高温に過熱されることがある。ケース内に充満するガスと、電池の過熱は電源装置の安全性を低下させる。とくに、異常な状態では電池温度が数百度に上昇して、火災の原因となることもある。
【0003】
電池の過熱による危険な状態を解消するために、密閉されたケース内に不活性ガス等の不活性な物質を充填する電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
また、ケース内の異常発熱を防止するために、ケース内に不活性ガス発生物質や消火器を内蔵する電源装置が開発されている。(特許文献2及び3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−55822号公報
【特許文献2】特開2001−332237号公報
【特許文献3】特開平10−247527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の公報には、複数の電池をケースに収納すると共に、このケース内に窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素等の不活性ガス、あるいは不燃性の非水溶媒、あるいは、液状またはゲル状または固形状の高分子を満たして、かつ、ケースを密閉している電源装置が記載される。この構造の電源装置は、電池が異常な状態となってケース内にガスが噴射されても、電池の周囲を不活性な物質で囲んでいるので、電源装置が危険な状態となるのを緩和できる特長がある。
【0006】
さらに、特許文献2に記載される電源装置は、複数の電池をケースに収納すると共に、このケース内に熱分解で不活性ガスを発生させる物質を収納している。この電源装置は、ケースに収納している電池が異常発熱すると、不活性ガス発生物質が熱分解されてケース内に不活性ガスを発生させる。したがって、電池が過熱されるときに、電池の周囲に不活性ガスを満たして、電源装置が危険な状態となるのを緩和できる。
【0007】
しかしながら、これらの電源装置は、異常電池から排出されるガスがケース内に満たされるので、排出されたガスが異常発熱している電池の周囲に存在する環境となることに変わりはない。このように、電池から排出される酸素や水素を含むガスが、電池を収納しているケース内に充満される状態は、電池温度が数百度に上昇する極めて異常な状態を考えると、決して好ましい状態ではない。
【0008】
また、特許文献2の電源装置においては、不活性ガス発生物質の熱分解が始まる温度や反応速度等の設定が難しく、電池の異常発熱時に、最適なタイミングで不活性ガスを発生させるのが極めて難しい問題点もある。
【0009】
本発明は、このような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の第1の目的は、電池が異常な状態となってケース内にガスが噴射される場合においても、過熱された電池から受ける影響を極減して安全性を向上できる電源装置を提供することにある。
【0010】
さらにまた、特許文献3に記載される電源装置は、ケースに収納している電池が異常発熱し、ケース内の温度が許容値を超えた場合、消火器等の異常発熱低減手段の起動操作手段であるレバーを押し下げて、二酸化炭素のガス圧で炭酸水素ナトリウムを主成分とする粉末を筐体内に放出させる。炭酸水素ナトリウムは高温に加熱されると吸熱して、二酸化炭素と水蒸気を発生し、筐体内の温度を下げるとともに、不活性雰囲気に保ち、火災の発生を防止したり、燃焼反応を終了させる。
【0011】
この装置は、消火器等の異常発熱低減手段を手動で作動させ、あるいは、温度センサー、煙センサー、ガスセンサー、炎センサー等で作動させる。非水電解液電池は、異常発熱するとき、初期の段階では電池の表面温度の上昇、次の段階では安全弁の作動による非水電解液や発生ガスの電池からの放出が起こり、最終段階では発火現象が起こり、火災の発生まで至ることになる。
【0012】
消火器を手動で動作させる装置は、ユーザーが最適なタイミングで消火剤を噴射するのが難しい。とくに、車両に使用される電源装置のように、使用されるユーザー層の範囲が広い場合、全てのユーザーが最適なタイミングで消火器を動作できない。また、温度センサー、煙センサー、ガスセンサー、炎センサー等で消火器を動作させる装置も、簡単な検出では理想的なタイミングで消火剤を噴射できない。たとえば、温度センサーで消火器を動作させる場合、全ての電池温度を検出して、いずれかの電池温度が設定温度よりも高くなるときに、消火器を動作させる必要がある。この機構は、たとえば100個以上の電池をケースに収納する車両用の電源装置等においては、各々の電池温度を温度センサーで検出する必要があるので、電池温度の検出回路が極めて複雑になる。特定の電池温度を検出して消火器を動作させる場合、温度が検出されない電池の温度が異常状態となるときに、正確なタイミングで消火器を動作できない。また、煙センサーやガスセンサーで消火器を動作させる装置は、センサーの配置部分によって、常に正しく消火器を正確なタイミングで動作できない。それは、センサーを配置する部分に煙やガスが流れるときには正確に検出できても、センサーを配置しない部分の煙やガスを検出できないからである。また、炎センサーで消火器を動作させる装置は、火炎を検出した後に消火器を動作させるので、タイミングが遅れる欠点がある。
【0013】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の第2の目的は、簡単な構造で電池異常を正確に速やかに検出して消火器を動作でき、消火器からケース内に効果的に消火剤を噴射できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の電源装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
【0015】
安全弁を備える複数の電池をケースに収納する電源装置であって、前記複数の電池を収納する電池室と、この電池室に収納される電池の前記安全弁の開口部から排出されるガスを排気する排気室とに前記ケース内を区画する区画壁を備え、該区画壁は、前記ガスを前記電池室に流入させることなく前記排気室に流入させて、前記排気室からケース外へ排出するように構成され、さらに、前記ケースに内蔵される回路基板を備え、該回路基板は、ポッティングにより、絶縁樹脂に埋設される。
【0016】
前記区画壁は、前記安全弁から排出されるガスを排気室に流入させる貫通部を開口すると共に、該貫通部の周囲に電池端部を気密に連結させることができる。
【0017】
前記電池室は、前記ケースの下部に位置し、前記排気室は、前記ケースの上部に位置すると共に、前記回路基板は、前記排気室に収納されるように構成することができる。
【0018】
前記電池室は、前記ケースの上部に位置し、前記排気室は、前記ケースの下部に位置すると共に、前記回路基板は、前記電池室に収納されるように構成することができる。
【0019】
前記排気室を密閉構造とすると共に、該排気室に流入したガスを前記ケースの外部へ排出する排出口を設け、さらに、前記排出口に連結される排出弁を備えると共に、該排出弁は、排気室の内圧が設定圧力になると開弁して前記排気室内のガスを排気するように構成
することができる。
【0020】
前記電源装置は、消化剤または不活性流体を排気室に噴射する消火器を備えることができる。
【0021】
ただし、本明細書は、消火器を、火災を消火するものに限定しない。本明細書において、消火器とは、消火剤または不活性流体を噴射して、発火や引火を防止し、あるいは、異常な高温となるのを防止する広い意味で使用する。
【0022】
前記電源装置は、前記排気室を密閉構造とすると共に、前記排気室の内圧を検出する圧力センサーを備え、前記消火器を前記圧力センサーで制御して、排気室の内圧が設定圧力よりも高くなると、前記消火器が前記排気室内に消化剤または不活性流体を噴射するように構成することができる。
【0023】
前記電源装置は、前記電池が前記安全弁の開弁を検出する開弁センサーを備え、前記消火器を、前記電池に設けている前記開弁センサーで制御して、前記電池の前記安全弁が開弁すると、前記消火器が前記排気室に消化剤または不活性流体を噴射するように構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電源装置は、電池が異常な状態となってケース内にガスが噴射される場合においても、過熱された電池から受ける影響を極減して安全性を向上できる特長がある。それは、本発明の電源装置が、複数の電池を収納しているケースを、区画壁でもって、電池を収納している電池室と、電池から排出されるガスを排気する排気室とに区画すると共に、電池室に配設される電池の安全弁の開口部を排気室に連通させており、電池の安全弁から排出されるガスを、電池室に流入させることなく排気室に流入させて、排気室からケース外に排出するからである。この構造の電源装置は、異常電池から排出されるガスを電池室に流入させないので、排出されたガスが異常発熱している電池の周囲に充満されるのを確実に阻止でき、過熱された電池から受ける影響を極減して安全性を向上できる。さらに、回路基板をポッティング樹脂に埋設しているので、回路基板を電池から排出されるガス等の流体から保護できる。このため、電池の安全弁が開弁する異常な状態においても、回路基板に実装している制御回路を正常に動作させて、安全性を向上できる。
【0025】
また、本発明の請求項6の電源装置は、消火器からは密閉構造の排気室内に消火剤または不活性流体を噴射するので、消火剤や不活性流体を有効に作用させて、効果的に消火できる特徴も実現する。
【0026】
さらに、本発明の請求項7の電源装置は、簡単な構造で電池異常を正確に速やかに検出して消火器を動作でき、消火器からケース内に効果的に消火剤を噴射できる特長がある。それは、この電源装置が、排気室を密閉構造とすると共に、排気室の内圧を検出する圧力センサーで消火器を制御して、排気室の内圧が設定圧力よりも高くなると、消火器が排気室内に消火剤または不活性流体を噴射するようにしているからである。この電源装置は、排気室内の圧力で電池の異常を検出して消火器を動作させるので、従来の温度センサーや煙センサー、ガスセンサー、炎センサー等のセンサーで電池の異常を検出する装置のように、センサーの配置位置によって消火器の動作タイミングがずれることがなく、電池異常が発生して、電池の安全弁からガスが排出されると、このことを確実に検出できる特徴がある。
【0027】
さらに、本発明の請求項8の電源装置は、電池異常を極めて正確に、しかも速やかに検出して消火器を動作でき、消火器からケース内に効果的に消火剤を噴射できる特長がある。それは、この電源装置が、電池に安全弁の開弁を検出する開弁センサーを設けて、開弁センサーで消火器を制御するからである。この電源装置は、電池が異常な状態になって安全弁が開弁されると、開弁センサーが安全弁の開弁を検出して、消火器が消火剤を噴射する。この電源装置は、電池の安全弁の開弁を開弁センサーで検出して消火器を動作させるので、従来の温度センサーや煙センサー、ガスセンサー、炎センサー等のセンサーで電池の異常を検出する装置のように、消火器の動作タイミングがずれることがなく、電池異常が発生して安全弁が開弁すると、極めて正確なタイミングで消火剤を噴射できる。また、消火器からは密閉構造の排気室内に消火剤または不活性流体を噴射するので、消火剤や不活性流体を有効に作用させて、効果的に消火できる特徴も実現する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図4】本発明の他の実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる電源装置の概略断面図である。
【図7】排気室に設ける排出弁の一例を示す拡大断面図である。
【図8】排気室に設ける排出弁の他の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。
【0030】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0031】
図1ないし図6に示す電源装置は、安全弁10を備える複数の電池1をケース2に収納している。これらの電源装置は、ケース2内を区画壁3でもって、複数の電池1を収納している電池室4と、この電池室4に収納される電池1の安全弁10から排出されるガスを排気する排気室5とに区画している。
【0032】
電池1は、内圧が上昇するときに開弁する安全弁10を備える。安全弁10は、電池1の内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する。安全弁10が開弁されると、開口部11からガスや電解液が排出されて、内圧上昇が阻止される。この電池1は、安全弁10を開弁して外装缶12の破裂を防止する。電池1はリチウムイオン二次電池である。ただ、本発明の電源装置は、電池をリチウムイオン二次電池には特定しない。電池には、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の充電できる全ての電池を使用できる。
【0033】
複数の電池1は、軸方向に平行に並べて電池室4に収納している。電池室4に配設される複数の電池1は、安全弁10の開口部11を排気室5に連通するように配設している。電池1の安全弁10が開弁されて、安全弁10から排出されるガスを、電池室4に流入させることなく排気室5に流入させるためである。図の電源装置は、安全弁10を有する側の電池端部を区画壁3に密着させると共に、区画壁3に設けた貫通部6を介して安全弁10の開口部11を排気室5に連通させている。
【0034】
区画壁3は、非通気性の隔壁で、ケース2の内部を電池室4と排気室5とに区画している。さらに、区画壁3は、電池室4に配設される複数の電池1の電池端部に対向する位置に、安全弁10から排出されるガスを排気室5に流入させる貫通部6を開口している。区画壁3は、この貫通部6の周囲に電池端部を気密に連結して、安全弁10の開口部11から排出されるガスを、電池室4に流入させることなく排気室5に流入させるようにしている。
【0035】
図1ないし図4の電源装置は、ケース2内の上側に電池室4を設けて、下側に排気室5を設けている。これらの電源装置は、複数の電池1を、区画壁3の上に載せて電池室4に並べて収納している。これらの図に示す電池1は、電池1の下側の端部に安全弁10を設けている。図の電池1は、外装缶12の底に安全弁10を設けている。この安全弁10は、電池1の内圧が設定圧力よりも高くなると破壊して開弁するもので、たとえば、図の一部拡大断面図に示すように、外装缶12の金属板を部分的に薄くして、設定圧力で破壊されるようにしている。ただ、本発明は安全弁をこの構造には特定しない。安全弁には、内圧が設定圧力よりも高くなると開弁する全ての構造とすることができる。
【0036】
図1ないし図4に示す区画壁3の貫通部6は排気孔6Aで、この排気孔6Aを電池1の安全弁10の開口部11に対向して開口している。図に示す装置は、安全弁10の開口部11の周囲を区画壁3の排気孔6Aの周囲に気密に固定して、電池端部を区画壁3に密着状態で固定している。電池端部は、区画壁3との間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して、気密に連結している。この連結構造は、安全弁10の開口部11から排出されるガス等の流体を、電池室4内に流入させることなく排気孔6Aから排気室5に流入できる。
【0037】
図1の装置は、外装缶12の底面である電池端面を、区画壁3の上面であって、排気孔6Aの周囲に接着して密着状態に固定している。図2と図3に示す装置は、区画壁3の上面に、電池端部を挿入する凹部7を設けている。これらの装置は、凹部7に電池端部を挿入すると共に、凹部7の内面に電池端部を接着して固定している。図2に示す区画壁3は、電池端部を挿入できる凹部7を有する凹凸形状に成形して、この凹部7の中心に排気孔6Aを開口している。さらに、図3に示す区画壁3は、排気孔6Aの周囲にリブ8を設けて、電池端部を挿入する凹部7を成形している。
【0038】
さらに、図4に示す電池1は、安全弁10を有する側の電池端部にキャップ9を連結しており、このキャップ9を区画壁3に気密に固定している。キャップ9は、プラスチックまたはゴム等の絶縁材を成形して製作される。キャップ9は、電池端部を挿入できる周壁を備え、この周壁の内形を電池1の外形にほぼ等しくして、周壁と電池1の表面との隙間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して、周壁を電池1の表面に気密に連結している。さらに、キャップ9は、端面に安全弁10の開口部11を外部に表出させる中心孔9Aを開口している。キャップ9を連結している電池1は、キャップ9の端面を区画壁3に接着し、あるいは、キャップの端部を凹部に挿入して凹部とキャップの間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して、区画壁3に気密に連結している。電池1の安全弁10から排出されるガス等の流体は、キャップ9の中心孔9Aと貫通部6である排気孔6Aを通過して排気室5に流入される。このように、キャップを介して電池端部を区画壁3の貫通部6に気密に連結する構造は、安全弁10から排出されるガス等が電池室4に流入するのを有効に防止できる。
【0039】
図5と図6の電源装置は、ケース2内の上側に排気室5を設けて、下側に電池室4を設けている。この電源装置は、複数の電池1を、電池室5の底面の上に載せて電池室4に並べて収納している。これらの図に示す電池1は、電池1の上側の端部に安全弁10を設けている。図の電池1は、外装缶12の開口部を閉塞する封口板13に安全弁10を設けている。この安全弁10は、図の一部拡大断面図に示すように、弾性体14で弁体15を弁座16に押圧しており、電池1の内圧が設定圧力よりも高くなると、弁体15が弁座16から離れて開弁される。封口板13は、凸部電極17の両側に開口部11を開口しており、安全弁10が開弁すると、開口部11からガスや電解液を排出する。
【0040】
図5に示す区画壁3の貫通部6は排気孔6Aで、この排気孔6Aを電池1の安全弁10の開口部11に対向して開口している。図に示す装置は、安全弁10の開口部11の周囲を区画壁3の排気孔6Aの周囲に気密に固定して、電池端部を区画壁3に密着状態で固定している。図の電池1は、凸部電極側の端部にキャップ9を装着しており、このキャップ9の周壁と電池1の表面との隙間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して気密に連結すると共に、キャップ9の端面と区画壁3との間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して区画壁3に気密に連結している。このキャップ9には前述のキャップと同じものが使用できる。
【0041】
図6に示す区画壁3の貫通部6は挿通孔6Bで、この挿通孔6Bに安全弁10を備える電池端部を貫通して挿入し、安全弁10の開口部11を排気室5内に連通している。図に示す装置は、電池1の凸部電極側の端部にキャップ9を装着しており、このキャップ9の外周面を挿通孔6Bの内面に気密に固定して、電池端部を区画壁3に密着状態で固定している。挿通孔6Bの内形は、キャップ6の外形にほぼ等しくしており、キャップ9の周壁と区画壁3の挿通孔6Bの内面との隙間にシリコン等のシール剤や接着剤を塗布して気密に連結している。このキャップ9には前述のキャップと同じものが使用できる。図示しないが、キャップは、外周面に沿って凸条を設けて、この凸条を挿通孔の周縁部に密着させてより気密に固定することもできる。
【0042】
以上の構造で、電池1の安全弁10の開口部11を排気室5に連通させて配設する電源装置は、電池1が異常な温度となって安全弁10が開弁されると、排出されるガス等の流体が排気室5に流入される。安全弁10から排出されるガスは、電池室4に流入されることなく排気室5に流入されて、排気室5からケース2外に排出される。
【0043】
図に示す排気室5は、密閉構造としている。密閉構造の排気室5は、ここに連通されて表出する電池端部を、ゴミや水分、さらに塩分から保護できる。このため、電池端部にゴミが付着し、さらにこのゴミが結露して湿潤な状態となり、あるいは塩分を含む状態で湿潤となって、金属部分を腐食させるのを確実に防止できる。したがって、電池を高湿度な環境で使用し、あるいは塩分の多い環境で使用しながら、寿命を長くできる特徴がある。ただ、排気室は、密閉構造とすることなく開口部を設けて、外部に開放することもできる。この排気室は、電池から排出されるガスを、開口部からケース外に排出する。
【0044】
密閉構造の排気室5は、排出口18を設けており、電池1の安全弁10から排出されて排気室5に流入されるガスを、排出口18からケース2の外部に排出する。排出口18は排出弁19を有する。排出弁19は正常時には閉弁されて、排気室5を密閉状態に保持する。排出弁19は、排気室5の内圧が設定圧力になるときに開弁されて、排気室5内のガスを外部に排出する。この排出弁19は、排気室5内の圧力が設定圧力よりも高くなると破壊されて開弁される破壊弁とすることができる。ただ、排出弁は、安全弁が開弁されたことを検出して動作するアクチュエータで開弁させる開閉弁とすることもできる。
【0045】
図7と図8は、排出弁19の具体例を示す。図7の排出弁19は、ケース2の外壁の一部を薄くしたものである。この排出弁19は、排気室5内の内圧が設定圧力よりも高くなると、排気室5の薄い部分が破壊されて、排出弁19を開弁状態とする。この排出弁19は、構造を簡単にできる。図8の排出弁19は、ケース2の外壁の一部に貫通孔29を設けて、この貫通孔29を弁膜30で閉塞する。弁膜30は、溶接または接着等の方法でケース2の外壁に連結されて、貫通孔29を気密に閉塞する。この排出弁19は、排気室5内の内圧が設定圧力よりも高くなると弁膜30が外れ、あるいは破壊されて開弁する。
【0046】
さらに、図3ないし図5に示す電源装置は、電池1が異常な状態となって安全弁10からガス等の流体が排出されるとき、密閉構造の排気室5内に消火剤または不活性流体を噴射する消火器20を備えている。図の排気室5は、消火器20を連結するための連結口21を有し、この連結口21には、消火剤や不活性流体の導入弁22を設けている。導入弁22は、正常時には閉弁されて、排気室5を密閉状態に保持している。消火器20は、消火剤または不活性流体を噴射する噴射口23を連結口21に連結している。消火器20から消火剤や不活性流体が噴射されるとき、導入弁22が開弁されて、消火器20から噴射される消火剤や不活性流体をケース2内に供給する。図の導入弁22は、たとえば消火器20から噴射される消火剤や不活性流体で破壊される破壊弁である。ただし、導入弁は、消火器を動作状態とするアクチュエータで開弁される開閉弁とすることもできる。
【0047】
図3ないし図5の電源装置は、排気室5の排出口18と連結口21とを対向位置に配置している。この電源装置は、連結口21から供給される消火剤や不活性流体を排気室5全体に通過させて、排出口18から排出できる。この構造は、消火器20から噴射される消火剤や不活性流体によって、電池1から供給されるガス等の流体による火災を速やかに消火し、あるいは、電池1から供給されるガス等の流体が発火するのを有効に防止する。さらに、この状態で、排出口18の排出弁19が開弁されて、排気室5からガス等の流体が速やかにケース2外に排出される。
【0048】
図3と図5の消火器20は、密閉された排気室5の内圧を検出する圧力センサー24に制御されて、排気室5の内圧が設定圧力よりも高くなると、排気室5内に消火剤または不活性流体を噴射する。図の電源装置は、圧力センサー24で排気室5の圧力を検出する。圧力センサー24は、消火器20を動作させるアクチュエータ25に連結している。
【0049】
図4の消火器20は、安全弁10の開弁を検出する開弁センサー26に制御されて、電池1の安全弁10が開弁すると、排気室5内に消火剤または不活性流体を噴射する。図に示す電池1は、安全弁10の開弁を検出する開弁センサー26を備えている。この開弁センサーとして、たとえば、図示しないが、安全弁の弁部に配線を施し、弁作動によって配線が断線することで開弁を検知するセンサー等が使用できる。ただ、開弁センサーは、安全弁が開弁したことを検出できる他の全てのセンサーが使用できる。
【0050】
さらに、本発明の電源装置は、消火器の動作を制御するセンサーとして、圧力センサーや開弁センサー以外のセンサーを使用することもできる。たとえば、電源装置は、温度センサー、煙センサー、ガスセンサー、炎センサー等のセンサーで電池室に収納された電池の異常や排気室の異常を検出して消火器を作動させることもできる。
【0051】
アクチュエータ25は、圧力センサー24または開弁センサー26からの信号で、排気室5内の圧力が設定圧力以上に上昇すると、消火器20を操作して、消火剤または不活性流体を排気室5内に噴射させる。不活性流体は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス、あるいは、絶縁オイル等の不活性液体である。消火器20は、たとえば、圧縮ボンベに、炭酸ガス等の不活性ガスを充填している。この消火器20は、充填している炭酸ガス等の不活性なガス圧で、炭酸水素ナトリウムを主成分とする粉末等の消火剤を排気室5内に噴射する。ただ、本発明は、消火器が噴射する消火剤を、炭酸水素ナトリウムを主成分とする粉末には特定しない。消火剤には、排気室内に噴射して、電池から排出されるガス等の流体を消火し、あるいは電池から排出されるガス等の流体の発火を防止し、あるいはまた、電池から排出されるガス等の流体を安全に外部に排出できる他の全てのものを使用できるからである。
【0052】
さらに、密閉構造の排気室5は、その内部に、不活性流体を充填することができる。不活性流体は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス、あるいは、絶縁オイル等の不活性液体である。このように排気室5に不活性流体を充填する電源装置は、排気室5内に充填される不活性流体でもって安全性をより高くできる特長がある。とくに、排気室5内に付活性ガスを充填して、電池1から可燃性ガスが排出されるときに、消火器20から消火剤や不活性流体を噴射して、可燃性ガスをケース2外に排出する電源装置は、極めて安全性を高くできる。
【0053】
図1ないし図4、及び図6の電源装置は、電池1の端部をポッティングして樹脂27に埋設している。ポッティング樹脂27は、たとえばシリコン樹脂等の絶縁性のある樹脂である。端部をポッティング樹脂27に埋設する電池1は、ポッティングされない位置に安全弁10の開口部11を設ける。図1ないし図4の電池1は、外装缶12の底部に安全弁10の開口部11を設け、図6の電源装置は、封口板13に安全弁10の開口部11を設けている。
【0054】
さらに、図の電源装置は、ケース2内に回路基板28を収納している。図1ないし図4の電源装置は電池室4に、図5と図6の電源装置は排気室5に、それぞれ回路基板28を収納している。回路基板28は、各々の電池1の電圧や温度を検出して、電池1の充放電をコントロールする制御回路を実装している。回路基板28は、電池1の上方に水平な姿勢で配置されて、ポッティング樹脂27に埋設される。図1ないし図4の電源装置は、電池室4の上部にポッティング樹脂27を充填して、回路基板28をポッティング樹脂27に埋設し、さらに電池1の上部もポッティング樹脂27に埋設している。この電源装置は、回路基板28と電池1の両方をポッティング樹脂27で絶縁しながら定位置に保持できる。図5と図6の電源装置は、排気室の上部にポッティング樹脂27を充填して、回路基板28をポッティング樹脂27に埋設している。この電源装置は、回路基板28を、電池1から排出されるガス等の流体から保護できる。このため、電池1の安全弁10が開弁する異常な状態においても、回路基板28に実装している制御回路を正常に動作させて、安全性を向上できる。
【0055】
電池室は、密閉構造とすることができる。密閉構造の電池室は、回路基板や電池を外部から遮断できるので、電池室内に収納される回路基板や電池をゴミと水分と塩分から有効に保護できる。さらに、密閉構造の電池室は、不活性流体を充填することもできる。ただ、図示しないが、電池室は、冷却用のダクトを連結すると共に、このダクトを介して冷却媒体を循環させて電池を冷却することもできる。
【0056】
図1、図2及び図5の電源装置は、以下の動作をして、電池1から排出されるガス等の流体をケース2の外部に排出する。
(1) 電池1の内圧が高くなると安全弁10が開弁して、ガスや電解液等の流体を排出する。
(2) 排出されるガス等の流体は、電池室4に流入することなく排気室5に排出される。
(3) 排気室5に流入されるガス等の流体は、排気室5内の圧力を上昇させる。
(4) 排気室5内の圧力が設定圧力よりも高くなると、排出口18に設けている排出弁19が内圧で破壊されて開弁する。
(5) 排気室5内のガスが開弁された排出口19からケース外に排出される。
【0057】
図3及び図6の電源装置は、以下の動作をして、電池1から排出されるガス等の流体をケース2の外部に排出する。
(1) 電池1の内圧が高くなると安全弁10が開弁して、ガスや電解液等の流体を排出する。
(2) 排出されるガス等の流体は、電池室4に流入することなく排気室5に排出される。
(3) 排気室5に流入されるガス等の流体は、排気室5内の圧力を上昇させる。
(4) 排気室5内の圧力が設定圧力よりも高くなると、このことを圧力センサー24が検出して、アクチュエータ25が消火器20を動作させて、消火剤または不活性流体の噴射状態とする。
(5) 消火器20から消火剤または不活性流体が噴射されると、連結口21の導入弁22が破壊されて開弁し、消火剤または不活性流体が排気室5内に噴射される。
(6) 噴射される消火剤または不活性流体は、電池1から排出されたガス等の流体をケース2外に一気に排出する。このとき、排出口18に設けている排出弁19も内圧で破壊されて開弁される。
【0058】
図4の電源装置は、以下の動作をして、電池1から排出されるガス等の流体をケース2の外部に排出する。
(1) 電池1の内圧が高くなると安全弁10が開弁して、ガスや電解液等の流体を排出する。
(2) 排出されるガス等の流体は、電池室4に流入することなく排気室5に排出される。
(3) 電池1の安全弁10が開弁したことを開弁センサー26が検出して、アクチュエータ25が消火器20を動作させて、消火剤または不活性流体の噴射状態とする。
(4) 消火器20から消火剤または不活性流体が噴射されると、連結口21の導入弁22が破壊されて開弁し、消火剤または不活性流体が排気室5内に噴射される。
(5) 噴射される消火剤または不活性流体は、電池1から排出されたガス等の流体をケース2外に一気に排出する。このとき、排出口18に設けている排出弁19も内圧で破壊されて開弁される。
【符号の説明】
【0059】
1…電池
2…ケース
3…区画壁
4…電池室
5…排気室
6…貫通部 6A…排気孔
6B…挿通孔
7…凹部
8…リブ
9…キャップ 9A…中心孔
10…安全弁
11…開口部
12…外装缶
13…封口板
14…弾性体
15…弁体
16…弁座
17…凸部電極
18…排出口
19…排出弁
20…消火器
21…連結口
22…導入弁
23…噴射口
24…圧力センサー
25…アクチュエータ
26…開弁センサー
27…樹脂
28…回路基板
29…貫通孔
30…弁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全弁を備える複数の電池をケースに収納する電源装置であって、
前記複数の電池を収納する電池室と、この電池室に収納される電池の前記安全弁の開口部から排出されるガスを排気する排気室とに前記ケース内を区画する区画壁を備え、
該区画壁は、前記ガスを前記電池室に流入させることなく前記排気室に流入させて、前記排気室からケース外へ排出するように構成され、
さらに、前記ケースに内蔵される回路基板を備え、該回路基板は、ポッティングにより、絶縁樹脂に埋設されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、
前記区画壁は、前記安全弁から排出されるガスを排気室に流入させる貫通部を開口すると共に、該貫通部の周囲に電池端部を気密に連結させることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電源装置において、
前記電池室は、前記ケースの下部に位置し、前記排気室は、前記ケースの上部に位置すると共に、
前記回路基板は、前記排気室に収納されることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の電源装置において、
前記電池室は、前記ケースの上部に位置し、前記排気室は、前記ケースの下部に位置すると共に、
前記回路基板は、前記電池室に収納されることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の電源装置において、
前記排気室を密閉構造とすると共に、該排気室に流入したガスを前記ケースの外部へ排出する排出口を設け、
さらに、前記排出口に連結される排出弁を備えると共に、
該排出弁は、排気室の内圧が設定圧力になると開弁して前記排気室内のガスを排気するように構成されることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の電源装置において、
消化剤または不活性流体を排気室に噴射する消火器を備える電源装置。
【請求項7】
請求項6記載の電源装置において、
前記排気室を密閉構造とすると共に、前記排気室の内圧を検出する圧力センサーを備え、前記消火器を前記圧力センサーで制御して、排気室の内圧が設定圧力よりも高くなると、前記消火器が前記排気室内に消化剤または不活性流体を噴射するように構成されることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項6記載の電源装置において、
前記電池が前記安全弁の開弁を検出する開弁センサーを備え、
前記消火器を、前記電池に設けている前記開弁センサーで制御して、前記電池の前記安全弁が開弁すると、前記消火器が前記排気室に消化剤または不活性流体を噴射するように構成されることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−15121(P2012−15121A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193579(P2011−193579)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2005−210648(P2005−210648)の分割
【原出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】