説明

電熱変換器および温度調節装置

本発明は、少なくとも1つの低温側(114)と高温側(115)が設けられた電熱変換器(112)に関する。変換器のあらゆる構成部分がその作動時に生じる熱負荷を克服でき、及び/又は、特にその機械的安定性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の電熱変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような変換器は、しばしば、強大な熱負荷、例えば強大な温度ゆらぎ、膨張応力などに曝される。また、価格面での圧迫も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の課題は、強大な熱負荷に耐えられる低コストの電熱変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明により、独立請求項に記載された特徴を有する電熱変換器によって解決される。
【0005】
更なる有利な形態は、後続の請求項および以下の説明から推知できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、特に製造コスト、安全性及び寿命の点で特に有利である。
【0007】
本発明は、基本的に、あらゆる種類の温度調節装置及びエアコンディショナ、特にクッション入りのあらゆる対象物、特に車両シート、シートサポート、車室内のパネルエレメント、サドル、又は、例えばオフィス設備のための温度調節装置及びエアコンディショナに適する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エアコンディショナを備えた自動車の部分縦断面図である。
【図2】個々のコンポーネントが互いに点で結合された図1のエアコンディショナの電気変換器または温度調節装置の横断面図である。
【図3】波板状熱交換器を備えた第2実施形態の熱電変換器の縦断面図である。
【図4】セグメント分割型熱交換器を備えた第3実施形態の熱電変換器の斜視図である。
【図5】熱交換器としても役立つU字形ブリッジエレメントを備えた第4実施形態の熱電変換器の斜視図である。
【図6】ブリッジエレメントに多数の熱伝導リブを付けた第5実施形態の熱電変換器の斜視図である。
【図7】セラミック分配板と弾性分配板を備えた第6実施形態の熱電変換器の縦断面図である。
【図8】それぞれ異なる方向のリブが設けられた2つの波板状熱交換器を備えた第7実施形態の熱電変換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の詳細を説明する。ここで述べる実施形態は、本発明を理解し易くするものであるが、例示の性格を有するにすぎない。自明のことながら、本発明の枠内で述べた個々の特徴又は複数の特徴を省略、改変又は補足することもあり得る。また、様々な実施形態の特徴を互いに組み合わせることができることも自明である。本発明のコンセプトがほぼ実用化されていることが決定的である。ここで、“ほぼ”とは、所望の利益を認識可能な程度で実用化可能であることを意味する。これは特に、当該特徴が少なくとも50%、90%、95%又は99%満たされていることを意味することができる。
【0010】
図1は車両1000を示す。これは、例えば航空機、鉄道車両、船舶、又は自動車などであってよい。
【0011】
車両1000は、少なくとも1つの車内装置対象物1100を備える。車内装置対象物とは、おおよそ車室内の利用者が接触し得るあらゆる構造部分、例えば車両用操縦装置1120、インストルメントパネル1130、アームレスト1140、ドアトリムパネル1150、シートサポート1160、ヒートカバー1170、天井1180、クッション400、カバー500又はシート1110と解される。
【0012】
車内装置対象物1100は、少なくとも1つのクッション400及び/又は少なくとも1つのカバー500を備えると好ましい。
【0013】
車内装置対象物1100は、少なくとも1つのエアコンディショナ100を備えると好ましい。これは、例えば、車両の車室内の利用者が接触する面の温度調節/空気調節に役立つ。これは、少なくとも1つの温度調節装置110、少なくとも1つの空気案内装置120、及び/又は少なくとも1つの湿度調節装置130を備える。温度調節装置140とは、その周囲の温度を目標通り変化させるために利用できる装置、例えば、少なくとも1つの電気加熱抵抗器、ヒートポンプ、ペルチエ素子(Peltierelemente)及び/又は、例えばベンチレータのような空気移動装置、又は主にこれから作られた装置を含むあらゆる装置と解する。空気案内装置とは、例えば車載空調装置のような特定の面領域又は空間領域における空気組成又は空気流を空気交換のために目標通り変えるのに利用できる装置や、少なくとも部分的に通気性を持つ間隔媒質、間隔ニット及び/又は空調用インサートと解する。湿度調節装置130とは、特に上で挙げた温度調節装置110のような、その周囲の大気湿度の調節に役立つ装置や、活性炭繊維又は高分子超吸収体のような吸湿体と解する。
【0014】
温度調節装置110は、少なくとも1つの接続線119を介して電源150に接続されている。
【0015】
電熱変換器112は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する装置、及び/又は、電気エネルギーを使って2つの場所の間に温度落差を生じさせる装置である。その例としては、ペルチエ素子がある。
【0016】
図2は、少なくとも2つの電気半導体モジュール220a〜fを有する電熱変換器112を備えた温度調節装置110を示す。一方の半導体エレメントは少なくとも部分的にPドープされており、他方は少なくとも部分的にNドープされている。これらは、ブリッジエレメント200a〜gの間に交互にサンドイッチ状に配置されている。これにより、半導体モジュールの直列回路の中に電熱変換器112が形成される。この配置の中を電流が流れると、半導体モジュールの一方の側が冷たくなり、他方の側が熱くなる。
【0017】
従って、低温側114は、電熱変換器112の作動時に冷却される側である。これは、製造上の制約から常に同じ側のままであっても、電流の流量に応じて転極可能であってもよい。
【0018】
高温側115は、電熱変換器112の作動時に加熱される側である。
【0019】
半導体モジュール220とブリッジエレメント200a〜gの間の結合は、溶接、ろう付け、及び/又は、導電性接着剤での接着により形成されていてもよい。この結合は、全面的/大面積に、又は、部分的/点状に形成されてもよい。
【0020】
接着には特に熱伝導接着剤が適している。ここで言う熱伝導接着剤とは、電熱変換器112から熱交換器140、141への伝熱損失を最小化するために熱を良く伝導し、少なくとも2つの対象物を少なくとも極僅かしか互いに付着させない物質のことである。例を挙げると、金属混合物を含んだ合成グリースをベースにしたシリコンフリーの熱伝導ペースト、例えば酸化亜鉛粒子などである。更なる例は、例えばエポキシ系の二成分接着剤である。更には、PSA系接着剤が適している。接着剤は、液状接着剤として塗付してあってよい。しかしながら、これは例えば接着テープとして貼付してあってもよい。これは例えばカプトン(登録商標)からなる、導電性シートで強化された熱伝導性PSA接着テープであってよい。また、ワックスや樹脂も考慮の対象になり、それが金属又は金属酸化物と混合されている時は特に考慮の対象になる。温度調節装置110のコンポーネント同士を接着する場合には、接着後もなお優れた弾性及び/又はクリープ性を呈する接着剤を使用すると好ましい。これにより、半導体モジュールは、割れ又は破断なしに熱膨張運動を実行できるだけのゆとりを得る。
【0021】
また、スズ、銅、銀プリントペースト及び/又は導電性接着剤からなる導体板の形のブリッジエレメント200を配置することも可能である。
【0022】
電熱変換器112は、少なくとも低温側114又は高温側115に少なくとも1つの熱交換器140、141を備えると好ましい。これは、少なくとも応分に熱伝導性に優れた材料、例えばアルミニウム又は銅から作られていると好ましい。
【0023】
この熱交換器によって、電熱変換器112の全部の半導体モジュール220を覆うことができる(図2)。これは、しかしながら、特定の半導体モジュールにだけ割り当てられるものであってもよい(図4)。その場合、複数の熱交換器が互いに間隔をあけて並置されると好ましい。これらは相対的に移動でき、互いに力をかけないので、熱応力を低減することができる。理想的な場合には、ブリッジエレメント200a〜gと結合した半導体モジュール220の各対に、1つ(図5)又は複数(図6)の熱交換器140、141が割り当てられている。熱交換器は、図3に示した通りの波板状構造、及び/又は、図2に示した通りの冷却リブ、及び/又は、図5に示した通りのU字形アーチを備えていてよい。低温側の熱交換器140と高温側の熱交換器141は、同じ様式であっても異なる様式であってもよい。
【0024】
半導体モジュール220とブリッジエレメント200a〜gを熱交換器140、141から電気絶縁し、機械的荷重をより良く分配し、熱流量を均一化するために、少なくとも1つの熱交換器140、141と、少なくとも1つの半導体モジュール220または少なくとも1つのブリッジエレメント200a〜gの間に、少なくとも1つの分配板145、146が設けてあってよい。高温側と低温側のいずれにも、同種又は異種の分配板145、146が配置してあってもよい。
【0025】
少なくとも1つの分配板145、146は、セラミック材から作られていると好ましい。特に好ましいのはDBCセラミックであり、その理由は当該材料が従来のセラミック材より堅牢であるからである。
【0026】
また、少なくとも1つの分配板145、146が少なくとも応分にカプトンから作られていてもよい。この材料は熱伝導性に優れているが、電気絶縁性を有する。この性質により、電熱変換器112は、脆いセラミック材よりも大きく膨張することができる。
【0027】
少なくとも1つの分配板146が、少なくとも1つの更なる(例えば第1の)分配板145の材料より弾性に優れた材料からなることが好ましい。これには、例えば非導電性ポリマーが適している。
【0028】
本目的に合致するように、分配板145、146は一方の方向に曲がり、他方の方向には剛直である。これは、例えば、分配板を波板状に曲げたり反らせたりすることによって達成できる。この目的に合致するように、高温側の分配板と低温側の分配板は、互いに90°ずらしてある(図8)。これにより、分配板が互いにかける膨張負荷がせいぜい極僅かであることが保証されている。本目的に合致するように、分配板145、146を金属化し、それに補助リブを付けるか、又は、弾性と伝導性に優れた充填材を詰めてもよい。特に、このタイプの場合は、補助の熱交換器140、141を省くことができ、その機能を分配板145、146に持たせることができる。
【0029】
本目的に合致するように、半導体モジュール220は、分配板145、146のリブまたは凹凸構造に沿ってそれぞれ配置されている。これにより、熱の流れが改善され、応力が最小化される。
【0030】
また、高温側だけ、又は低温側だけに分配板145、146が設けられていてもよい。これにより、同様に、高温側と低温側で異なる熱膨張から生じる熱応力が減じられる。
【0031】
半導体モジュール220を周囲から確実に電気絶縁するため、これらの構造において、例えばポリマーフィルム及び/又は両面接着テープの形の絶縁層が、熱交換器140と半導体モジュール220の間に設けられていてよい。このような絶縁層は、同時にブリッジ装置を覆ってもよい。その場合、応力を予防するために、相異なるブリッジ装置の間の絶縁層が蛇行又は湾曲した形を呈することが推奨される。
【0032】
しかし、ブリッジ装置ごとに独自の絶縁層が設けられていてもよい。両方の目的のためには、例えば吹き付け、刷り込み、擦り込み、スパッタリングなどにより誘導体被覆を施すことが得策である。材料成分として特に適しているのは、ペイント、エナメル、セメント、ゴムなどである。
【0033】
少なくとも1つの電熱変換器112と、少なくとも1つの分配板145、146及び/又は熱交換器140、141の間には、少なくとも1つの結合ゾーン230が設けられていることが好ましい。ここで、電熱変換器112は、熱交換器140、141または分配板145、146と、又は、分配板145、146が他の両方のコンポーネントの少なくとも1つと結合している。
【0034】
ここで、ブリッジエレメント200a〜gの、熱交換器140、141及び/又は分配板145、146との結合は、ブリッジエレメント200と半導体モジュール220の間の結合と同じ様式であってよい。この結合は、少なくとも応分に、合成樹脂、エポキシ接着剤及び/又はインジウムろうから作られていると好ましい。これらの材料は少なくともある程度まで電熱変換器112または熱交換器140、141の膨張を許容する。従って、熱交換器140、141が銅製で、分配板145、146がセラミック製である場合であっても、分配板145、146と電熱変換器112または熱交換器140、141の間に結合ゾーン230を大面積又は全面的に設けることが問題となる。
【0035】
半導体モジュール220に熱膨張運動を追従させると同時に固定的な温度調節エレメントを得る機会を与えるために、以下、幾つかの異なる変形例について説明する。
【0036】
半導体モジュール220の高温側が、その中心を中高に盛り上げる可能性を有し、低温側がその縁部域を少なくとも極僅かながら直立させ得ることが決定的である。そのためには、温度調節装置110及び/又は電熱変換器112の少なくとも2つのコンポーネントを互いに部分的にしか結合させないことが目的に合う。
【0037】
変形例a)
半導体モジュール220の中心にある1点を、温度調節装置110の高温側のブリッジエレメントに接着固定する。その点が十分に小さければ、接着剤が硬く、弾力的でなくても、半導体モジュール220が高温側から遠ざかる方向に曲がることができる。接着ゾーン230は、中心に位置しても縁辺に位置してもよい。半導体モジュール220の基礎面積全体に占めるその面積の割合は、好ましくは70%未満、好ましくは55%未満、または30%未満である。
【0038】
高温側と向き合った低温側114では、半導体モジュール220を点状又は全面的にブリッジエレメントと接着する。しかし、この低温側領域では、半導体モジュールが全面的にセラミック板に固定されているのでなく、少なくとも部分的に、できればまったく固定されていないことが好ましい。それが個々の半導体モジュール220の間のゾーンでしかセラミック板と結合していないと最もよい。これにより、半導体モジュールエレメントの、低温側114の方を指すエッジは、互いに重なり合うように曲がる可能性を得、基礎面の内側領域は低温側114から浮き上がることができる。ブリッジエレメントは、例えばフォイル又はテキスタイル、例えばPUなどのポリマー及び/又は金属の成分で強化されていてもよい。
【0039】
変形例b)
半導体モジュール220を、高温側115でリング及び/又はフレームに接着する。その中心には扁平な窪みが存在するため、加熱/膨張時に半導体モジュール220がその中に盛り上がることができる。
【0040】
低温側114では、半導体モジュール220は盛り上がった面の中心に位置するので、その面は縁辺に沿って一周するギャップを有する。これによって、半導体モジュール220には、冷えて収縮した領域を低温側114の方へと曲げられるような遊びが与えられる。ここで、リング、フレーム及び/又は盛り上がった面が少なくとも部分的にジャンパ素材、ろう付け金属、溶接金属又は焼結金属から、及び/又は、伝導性及び/又は熱伝導性の接着材から作られていると有利である。
【0041】
変形例c)
半導体モジュールの高温側を、エッジのみによって高温のセラミック板に接着固定する。半導体モジュールの低温側も、エッジのみによって低温のセラミック板に接着固定する。このとき、両方のエッジが、半導体モジュール220の互いに向き合った端に当たるようにする。すると、セラミック板を横方向と上方向に幾らか動かした時、半導体モジュール220に遊びが生じる。
【0042】
温度調節装置110は、空気調節装置の中に設けられていることが好ましい。そこでは、第1の空気流が一方の側で温度調節装置110に沿って案内される。これにより、空気流は例えば熱を吸収する。加熱すると、この暖められた流れが利用者に送られる。第2の空気流は、互いに向き合った熱交換器140、141をかすめていく。そこで、この空気流は自らの熱エネルギーを熱交換器に向けて放出し、冷却される。冷却されると、この空気流は利用者に送られる。
【符号の説明】
【0043】
100 エアコンディショナ
110 温度調節装置
112 電熱変換器
114 低温側
115 高温側
119 接続線
120 空気案内装置
130 湿度調節装置
140 低温側の熱交換器
141 高温側の熱交換器
145、146 分配板
150 電源
200a〜g ブリッジエレメント
220a〜f 半導体モジュール
230a〜c 結合ゾーン
400 クッション
500 カバー
1000 車両
1100 車内装置対象物
1110 シート
1120 ステアリングホイール
1130 インストルメントパネル
1140 アームレスト
1150 ドアトリムパネル
1160 シートサポート
1170 ヒートカバー
1180 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの低温側(114)および高温側(115)を備える電熱変換器(112)であって、
前記変換器(112)のあらゆる構成部分が、前記変換器の作動時に生じる熱負荷を克服する、及び/又は、自らの機械的安定性を維持することを特徴とする電熱変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの電熱変換器(112)を備えることを特徴とする温度調節装置(110)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電熱変換器(112)及び/又は少なくとも1つの温度調節装置(110)を備えることを特徴とする、特に車両の内装品のための空気調節装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの温度調節装置(110)及び/又は空気調節装置を備えることを特徴とするクッション(400)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの温度調節装置(110)、空気調節装置及び/又はクッション(400)を備えることを特徴とするシート(1110)、操縦装置(1120)、ドアトリムパネル(1150)、シートサポート(1160)、インストルメントパネル(1130)及び/又はアームレスト(1140)。
【請求項6】
電気変換器(112)を備えた温度調節装置(110)を製造する方法であって、
前記変換器(112)が少なくとも1つの半導体モジュール(220)を備え、前記半導体モジュール(220)の基礎面が部分的にしか接着されないことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−537412(P2010−537412A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521300(P2010−521300)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001374
【国際公開番号】WO2009/026890
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(599067662)ヴィー・エー・テー・オートモーティヴ・システムス・アクチェンゲゼルシャフト (29)
【Fターム(参考)】