説明

電界結合器、通信装置、通信システム及び電界結合器の製造方法。

【課題】電気的特性を低下させることなく小型化することができ、かつ、容易に製造できる電界結合器、通信装置、通信システム及び電界結合器の製造方法を提供すること。
【解決手段】電界結合器10は、電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸AX1,AX2が上記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し、上記コイル軸AX1,AX2が上記面に沿って中心部Oを取囲む形状を有する帯状コイル100を備え、上記帯状コイル100は、上記中心部Oで上記結合方向に振動する縦波の電界により結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界結合器、通信装置、通信システム及び電界結合器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型IC(Integrated Circuit)カードやRFID(Radio Frquency IDentification)などの非接触通信を行う通信装置が普及している。このような非接触通信を行う通信装置には、磁界結合を行うものと、電界結合を行うものがある。
【0003】
磁界結合を行う場合、通信装置は、例えばアンテナコイルを有し、このアンテナコイルでの交流磁界を利用した磁界結合により非接触通信を行う。一方、電界結合を行う場合、通信装置は、例えば平板状の電界結合電極(カプラ)を有し、この電界結合電極による静電界や誘導電界を利用した電界結合により非接触通信を行う。これらのような通信装置は、例えば近接型などの近距離における非接触通信に適している。また、上記非接触型ICカード等に使用されうる通信装置は、例えば、カードや携帯機器などに搭載されるため薄型かつ小型に形成される。
【0004】
【特許文献1】特開2008−99236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記磁界結合を行う通信装置では、アンテナコイルの背面に金属板などがあると通信が行えない、またアンテナコイルを配置する平面上に大きな面積が必要となる。一方、上記電界結合を行う通信装置では、通信相手の電極と電界結合電極が近距離で対向することにより電界結合する。電界結合電極からみて結合方向と逆の方向に金属からなるグランドを設けることで、背面方向への不要な電界信号の放射を防ぐことができるが、電極とグランドの距離を小さくすると、電極の正面にできる電界強度が低下するため低背化することが難しい。また、これらのような非接触通信を行う通信装置は、例えば、非接触型ICカード、携帯電話等の携帯機器などに搭載されることが多いので、小型化、特に低背化が望まれる。
【0006】
一方、通信装置は、小型化するだけでなく、製造が容易であることが重要である。例えば、アンテナとして、線状導体を螺旋状に回転させたコイルなどを使用する場合には、通信装置の厚みがコイル断面の分増加する。さらに、この場合、コイルを小型化しようと思うと、コイル円の径を一定にし、その円の間隔(ピッチ)を一定にすることは難しく、製造は容易ではない。また、このようなコイルの不均一が発生する場合、コイルにおける共振周波数にもばらつきが生じてしまい、アンテナとしての電気的特性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電気的特性を低下させることなく小型化することができ、かつ、容易に製造することが可能な、新規かつ改良された電界結合器、通信装置、通信システム及び電界結合器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が上記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し、上記コイル軸が上記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを備え、上記帯状コイルは、上記中心部で上記結合方向に振動する縦波の電界により結合する、電界結合器が提供される。
【0009】
この構成によれば、帯状コイルが、高周波信号と共振し、コイル軸に沿った交番磁界を発生させる。この際、コイル軸は、中心部を取囲むため、その中心部には、電界が発生する。従って、この電界を使用して電界結合することができる。一方、帯状コイルの背面(結合方向と反対の方向の面)への電界の放射を防ぐために、その背面にグランドを設ける場合、上記構成によれば、そのグランドに平行でコイル軸に沿った交番磁界はグランドとの距離が近くても影響を受けない。よって電界結合器を低背かつ小型に形成することができる。また、帯状コイルは、結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が結合方向と垂直になるにように曲折することにより簡単に形成される。従って、帯状コイルのピッチなどを、蛇行する帯状導体に予め作り込むことができ、帯状コイルの曲折位置などを、正確に決定して製造することができる。
【0010】
また、上記帯状コイルは、上記中心部を挟んでコイル軸が互いに平行になるように配置され一端が連結された2つの帯状コイルで構成され、各上記帯状コイルの巻き方向は、上記2つの帯状コイルの連結位置を挟んで反転していてもよい。
【0011】
また、給電端から供給される上記所定の周波数の高周波信号と共振し、当該共振による電圧の定在波の腹に相当する位置で上記帯状コイルの一端に接続された共振部と、上記結合方向と反対の上記帯状コイルの一側に設けられるグランドと、を更に備え、上記帯状コイルの他端は、接地されてもよい。
【0012】
また、上記帯状コイルの一部には、製造時にマウンタで吸着可能なように帯幅が拡大した吸着ポイントが形成されてもよい。
【0013】
また、上記吸着ポイントは、上記結合方向と垂直な面内における上記帯状コイルの重心位置に形成されてもよい。
【0014】
また、上記帯状コイルは、コイル側面で上記結合方向と垂直な方向に張り出した張出部を有してもよい。
【0015】
また、上記蛇行する帯状導体は、一枚の板金を蛇行する帯状に打ち抜いて形成されてもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が上記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数の波長に対して2分の1の実効長を有し、上記コイル軸が上記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを備え、上記帯状コイルは、上記中心部で上記結合方向に振動する縦波の電界により結合して非接触通信を行う、通信装置が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電界結合を行い非接触通信を行う2つの通信装置を備え、上記2つの通信装置の少なくとも一方は、上記電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が上記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し、上記コイル軸が上記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを有し、上記帯状コイルは、上記中心部で上記結合方向に振動する縦波の電界により結合して非接触通信を行う、通信システムが提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、所定の周波数で電界結合を行う結合方向と垂直な一枚の板金を、蛇行する帯状に打ち抜いて、蛇行する帯状導体を形成する打抜ステップと、上記蛇行する帯状導体を、コイル軸が上記結合方向と垂直になるように曲折して、上記所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し上記コイル軸が上記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを形成する成形ステップと、を有する、電界結合器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、電気的特性を低下させることなく小型化することができ、かつ、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
なお、以下では、本発明の各実施形態に係る電界結合器、通信装置、通信システム及び電界結合器の製造方法を理解しやすいように、まず、この通信装置及び通信システムが備える第1実施形態に係る電界結合器の構成について説明する。次に、その電界結合器が有する電界結合用電極について説明する。そして、電界結合器の製造方法について説明し、更に、電界結合器による動作と効果の例について説明する。その後、電界結合器の変更例として、電界結合用電極が異なる第2〜4実施形態について、第1実施形態に対する相違点を中心に説明する。つまり、以下では、次のような流れで説明する。
【0022】
<1. 第1実施形態>
[1.1 電界結合器の構成]
[1.2 帯状コイル(電界結合用電極)について]
[1.3 電界結合器の製造方法]
[1.4 電界結合器による動作と効果の例]
<2. 第2実施形態>
<3. 第3実施形態>
<4. 第4実施形態>
【0023】
なお、以下では、本発明の各実施形態に係る電界結合器について説明するが、本発明の各実施形態に係る通信装置は、以下で説明する電界結合器を有する。そして、本発明の各実施形態に係る通信システムの場合、2つの通信装置を備え、その通信装置のうち少なくともいずれか一方が、電界結合器を有し、電界結合により非接触通信を行うことになる。このように、本発明の各実施形態に係る通信装置等は、その電界結合器に主たる特徴があるため、以下では、主にこの電界結合器について説明する。また、電界結合器が使用される通信機器及び通信システムは、特に限定されるものではないが、例示するならば、非接触型ICカード、RFID、携帯電話などの携帯機器及びそれらを使用する通信システムなどが挙げられる。
【0024】
<1. 第1実施形態>
[1.1 電界結合器の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電界結合器の構成を説明する説明図である。図1に示すように、本実施形態に係る電界結合器10は、大きく分けて、帯状コイル100と、スタブ200と、入出力線300とを有する。
【0025】
帯状コイル100は、電界結合を行う電界を発生させるための電界結合用電極である。帯状コイル100は、一本の帯状導体によりコイル状に形成され、一方の端子Aから高周波信号を受け、他方の端子Bは短絡される。その結果、帯状コイル100は、その中心部Oにおいて、紙面と直行する前方方向(x軸正の方向)に電界結合を行うよう、この方向に縦波の電界を発生させる。なお、この電界結合を行う方向(x軸正の方向)を、ここでは「結合方向」ともいう。この帯状コイル100は、通常の線状導体を螺旋状に巻いて形成されるコイルとは異なり、1つの板金から形成される。従って、このような帯状コイル100を電解結合用電極として備えることにより、電界結合器10は、容易に製造でき、小型化することができ、かつ、電気的な特性を維持又は向上させることが可能となる。この帯状コイル100については、詳しく後述する。
【0026】
スタブ200は、共振部の一例であって、長手方向に所定の長さを有する平板状の導電体により形成される。また、スタブ200は、背面にグランドが形成された基板(図示せず)上に形成されるので、帯状コイル100もグランドの上に配置される。その結果、グランド(図示せず)は、結合方向と反対(x軸負の方向)の帯状コイル100の一側に設けられることになる。そして、スタブ200の一方の端子Cは、入出力線300に接続され、他方の端子Dは、グランドに短絡される。よって、電界結合器10が非接触通信により信号を送信する場合、端子Cに接続された入出力線300から、高周波信号が伝達される。この際、スタブ200は、高周波信号の周波数に対して共振する長さを有し、高周波信号と共振する。なお、ここでは、スタブ200が、高周波信号の波長の2分の1倍の電気長L(=1/2×λ)を有する場合を例示している。つまり、スタブ200の端子Dは、電流に対しては開放端となり、電圧に対しては固定端となる。従って、高周波信号により共振したときのスタブ200の電圧を見ると、その電圧は、端子Dにおいて節となり、端子Cと端子Dとの間の中間の接続点Eにおいて腹となる定在波を形成する。スタブ200は、この定在波の腹に相当する位置、つまり、中間の接続点Eにおいて上記帯状コイル100の一端である端子Aに接続される。換言すれば、上記帯状コイル100には、スタブ200で共振した高周波信号が供給され、その電圧により電流が流れることになる。一方、スタブ200は、図1に示すように、2分の1の波長に相当する長さだけでなく、高周波信号により共振する長さであればよく、例えば、4分の1や、4分の1の整数倍の波長に相当する長さであってもよい。この場合も、スタブ200は、共振した電圧の定在波の腹に相当する位置に帯状コイル100の端子Aが接続されることになる。なお、電界結合器10が非接触通信により信号を受信する場合も、その受信信号は、スタブ200において、同様に共振することになる。
【0027】
本実施形態に係る電界結合器10が使用する高周波信号は、例えば、UWB(Ultra Wide Band)などのような高周波で、500MHz以上の広帯域を使用することが望ましく、この使用周波数にあわせて共振するように、スタブ200の長手方向の長さは設定される。ただし、本実施形態に係る電界結合器10は、使用周波数を限定するものではなく、使用したい周波数帯に応じて適宜、スタブ200などの長さを調整することが可能である。しかしながら、上記のような高周波・広帯域を使用することにより、高速で大容量データ通信を実現することが可能である。
【0028】
入出力線300は、上述の通り、スタブ200の端子Cに接続され、高周波信号を伝達する。従って、入出力線300のスタブ200とは反対の端部には、送受信回路(図示せず)が接続され、高周波信号は、この送受信回路から出力されるか、又は、送受信回路へと入力される。
【0029】
このような帯状コイル100・スタブ200・入出力線300を有する電界結合器10は、例えば、上述のように、背面(裏面)にグランドが形成された基板(図示せず)上に実装されてもよい。つまり、例えば、裏面(x軸負の方向の面)にグランドが形成された基板の表面(x軸正の方向の面)に、入出力線300及びスタブ200とを積層して形成し、端子D及び端子Bに相当する位置で絶縁層に孔(スルーホール)を穿設し、その孔を介して、グランドと短絡させる。そして、このスタブ200の接続点Eと、短絡された端子Bに相当する位置とに、それぞれ端子A,Bが接続するように、帯状コイル100が配置される。
【0030】
次に、この電界結合器10が有する帯状コイル100の構成等について、詳しく説明する。
【0031】
[1.2 帯状コイル(電界結合用電極)について]
図2は、本実施形態に係る電界結合器10が有する帯状コイル100の斜視図である。図3(A)〜図3(C)は、本実施形態に係る電界結合器10が有する帯状コイル100の三面図である。そして、図4は、本実施形態に係る電界結合器10が有する帯状コイル100の展開図である。なお、図3(A)は、帯状コイル100の上面図(x軸正の方向から見た図)であり、図3(B)は、帯状コイル100の正面図(z軸正の方向から見た図)であり、図3(C)は、帯状コイル100の側面図(y軸負の方向から見た図)である。
【0032】
まず、帯状コイル100の構成の概要について説明する。帯状コイル100は、図2等に示すように、結合方向(x軸方向)と垂直な面(yz面)に沿って蛇行する帯状導体(図4参照)を、コイル軸AX1,AX2が結合方向(x軸方向)と垂直になるように曲折されて形成される。そして、帯状コイル100は、コイル軸AX1,AX2が面(yz面)に沿って中心部Oを取囲む形状を有する。更に、この帯状コイル100は、高周波信号の周波数に対して2分の1波長の電気長を有するように形成される。
【0033】
より具体的に説明する。
帯状コイル100は、スタブ200に接続される端子Aと、短絡される端子Bとの間を、大きく分けて、第1帯状コイル110と、第2帯状コイル120と、連結部130と、を含む。つまり、端子Aから端子Bまでの帯状コイル100の線路を考えると、線路は、端子Aから第1帯状コイル110を通り、その一端で連結部130に接続され、連結部130の他端は、第2帯状コイル120の一端に接続される。そして、第2帯状コイル120の他端は、端子Bに接続される。
【0034】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、2つの帯状コイルの一例であって、図3(A)に示すように、それぞれのコイル軸AX1,AX2が互いに平行になるように並べられて配置される。そして、連結部130が、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の一方の端部を連結する。従って、帯状コイル100の中心部Oは、図2及び図3(A)に示すように、帯状コイル100の形成面(yz面)内で、第1帯状コイル110,第2帯状コイル120及び連結部130により取囲まれることになる。
【0035】
本実施形態では、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130は、上述の通り帯状の導電体により形成され、一部折り返し地点等を除いて、所定の同一の帯幅を有するように形成される。そして、なお、この幅は、帯状コイル100の強度や抵抗値等により設定される。なお、帯状コイル100は、折り返し地点以外の位置において、帯の幅が拡大された部位を有してもよいが、このような帯状コイルについては、第3及び第4実施形態で説明する。
【0036】
第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130の長さは、上記高周波信号の周波数に対して2分の1波長の電気長を有するように設定される。この長さは、帯状コイル100の抵抗値や帯状コイル100のリアクタンス値等により異なるため、適宜設定される。このような電気長を有することにより、スタブ200を介して高周波信号が入力されると、その高周波信号は、帯状コイル100で共振する。その結果、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120には交番磁束が発生し、その交番磁束により、帯状コイル100の中心部Oにおいて、結合方向(x軸方向)に振動する縦波の電界が発生することになる。
【0037】
また、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の巻き方向は、連結部130(連結位置の一例)を挟んで反転している。換言すれば、上述のように帯状コイル100は、高周波信号に対して2分の1波長の電気長を有するが、この帯状コイル100は、4分の1波長の位置(中間位置)において、旋回方向が逆転される。つまり、図2に示すように、本実施形態の例の場合、第1帯状コイル110の巻き方向は、仮に端子Aから端子Bに直流電流を通電させた瞬間にコイル軸AX1正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。一方、第2帯状コイル120の巻き方向が反転されていない場合、コイル軸AX2負の方向に磁束が発生するが、第2帯状コイル120の巻き方向は、反転されているため、コイル軸AX2正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。なお、高周波信号が入力されて帯状コイル100で共振した場合には、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120で発生する磁束(電流との対比から擬似的に「磁流」とも言う)は、どちらか一方が反転されて、中心部Oを取囲む。その結果、帯状コイル100は、中心部Oで発生させる縦波の電界を強めることができ、電気的な特性及び結合特性を向上させることが可能となる。このコイルの巻き方が反転していること、及び、その際の共振等については、後ほど効果等と共に詳しく説明する。
【0038】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の構成について、更に具体的に説明する。第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、図4の展開図に示すように、それぞれ、蛇行した帯状線路110A及び帯状線路120Aを有し、この帯状線路110Aと帯状線路120Aとは、帯状の連結部130により接続されている。そして、第1帯状コイル110は、帯状線路110Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。一方、第2帯状コイル120も、帯状線路120Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。ここでは折曲げ角が直角である場合を示しているが、この折曲げ角に丸みなどを付けることも可能である。なお、図4に示す、帯状線路110A・帯状線路120A・連結部130のように蛇行した線路を有する帯状線路は、例えば、一枚の導体板(例えば板金)を打ち抜いて加工することにより製造することも可能である。更に、この帯状線路は、エッチングや、溶融した導電材料(例えば金属材料)を所定の型に流し込むなど様々な方法で形成することも可能である。この帯状線路の形成及び折曲げについては、下記の製造方法において再度説明する。
【0039】
第1帯状コイル110は、2つの帯状コイルのうちの1つの例であり、内側立上部111と外側折返部112と外側立上部113と内側折返部114とが繰り返して形成されて、コイル軸AX1を中心とするコイルを形成する。このうち内側立上部111と外側立上部113は、上記帯状線路が折曲げられることにより、結合方向(x軸方向)と平行に成形される。そして、内側折返部114が、上記基板(図示せず)上に配置され、その基板上において、内側立上部111と外側立上部113を連結する。一方、外側折返部112が、基板から結合方向に突出した面(yz面)上において、内側立上部111と外側立上部113を連結する。この際、外側折返部112は、内側立上部111の端部から外側に延設された第1延設部位と、外側立上部113の端部へと内側に延設された第2延設部位と、これらの部位を接続する外側張出部112Aと、を有する。そして、この第1延設部位は、第2延設部位よりも長く形成される。一方、内側折返部114は、外側立上部113の端部から内側に延設された第3延設部位と、次の繰り返し単位の内側立上部111の端部へと外側に延設された第4延設部位と、これらの部位を接続する内側張出部114Aと、を有する。そして、この第3延設部位は、第4延設部位よりも長く形成される。従って、図3(B)に示すように、第1帯状コイル110は、外側立上部113と内側立上部111と外側折返部112の第1延設部位と内側折返部114の第3延設部位とによりコイル軸AX1を中心とした1つのコイル面(1巻き)を形成する。図2及び図3(A)に示すように、このコイル面の単位が繰り返させることにより、第1帯状コイル110が形成される。なお、第1帯状コイル110と第2帯状コイル120とを連結する連結部130における第1帯状コイル110側の一部も、第1帯状コイル110の1のコイル面の一部を形成することとなる。この連結部130に内側立上部111を形成してコイルを形成する線路を更に引き伸ばすことも可能である。しかし、図2に示すようなコイル面の繰り返しによりコイル軸AX1に沿った適切な強度の磁界を生成できるので、連結部130に内側立上部111を形成せずとも、第1帯状コイル110を形成することができる。なお、連結部130に内側立上部111を形成しない図2に示すような形状の場合、下記の製造方法による製造を容易にすることができる。なお、上記第1帯状コイル110の外側張出部112Aは、張出部の一例であって、第1帯状コイル110の側面において、結合方向(x軸方向)と垂直な方向(y軸方向)に張り出して形成される。
【0040】
第2帯状コイル120は、2つの帯状コイルのうちの1つの例であり、外側立上部121と外側折返部122と内側立上部123と内側折返部124とが繰り返して形成されて、コイル軸AX2を中心とするコイルを形成する。このうち外側立上部121と内側立上部123は、上記帯状線路が折曲げられることにより、結合方向(x軸方向)と平行に成形される。そして、内側折返部124が、上記基板(図示せず)上に配置され、その基板上において、外側立上部121と内側立上部123を連結する。一方、外側折返部122が、基板から結合方向に突出した面(yz面)上において、外側立上部121と内側立上部123を連結する。この際、外側折返部122は、外側立上部121の端部から外側に延設された第5延設部位と、内側立上部123の端部へと内側に延設された第6延設部位と、これらの部位を接続する外側張出部122Aと、を有する。そして、この第5延設部位は、第6延設部位よりも長く形成される。一方、内側折返部124は、内側立上部123の端部から内側に延設された第7延設部位と、次の繰り返し単位の外側立上部121の端部へと外側に延設された第8延設部位と、これらの部位を接続する内側張出部124Aと、を有する。そして、この第3延設部位は、第4延設部位よりも長く形成される。従って、図3(B)に示すように、第2帯状コイル120は、外側立上部121と内側立上部123と外側折返部122の第5延設部位と内側折返部124の第3延設部位とによりコイル軸AX2を中心とした1つのコイル面(1巻き)を形成する。図2及び図3(A)に示すように、このコイル面の単位が繰り返させることにより、第2帯状コイル120が形成される。なお、上記第1帯状コイル110の場合と同様に、第1帯状コイル110と第2帯状コイル120とを連結する連結部130における第2帯状コイル120側の一部も、第2帯状コイル120の1のコイル面の一部を形成することとなる。この連結部130に内側立上部123を形成してコイルを形成する線路を更に引き伸ばすことも可能であるが、このような連結部130の内側立上部123は、上記第1帯状コイル110と同様に必ずしも必要ではない。そして、連結部130に内側立上部123を設けない場合、下記の製造方法における製造を容易にすることが可能である。
【0041】
なお、上記第1帯状コイル110の外側張出部112Aは、張出部の一例であって、第1帯状コイル110の側面において、結合方向(x軸方向)と垂直な方向(y軸方向)に張り出して形成される。一方、上記第2帯状コイル120の外側張出部122Aも、張出部の一例であって、第2帯状コイル120の側面において、結合方向(x軸方向)と垂直な方向(y軸方向)に張り出して形成される。このような外側張出部112A,122Aは、電界結合器10の製造時に、帯状コイル100を折曲げ加工して形成する際や、組立時の取り扱いにおいて、把持されうる。従って、この外側張出部112A,122Aにより、帯状コイル100を固定又は移動させることができるため、製造を容易にすることができる。また、上記の説明中、「内側」とは、例えば図3(A)に示すように、y軸方向を見た場合に、第1帯状コイル110又は第2帯状コイル120において中心部Oにより近い方向を意味し、「外側」とは、その逆に中心部Oから離れた方向を意味する。
【0042】
以上、本実施形態に係る電界結合器10の構成について説明した。
次に、図4及び図5本実施形態に係る電界結合器10の製造方法について説明する。
【0043】
[1.3 電界結合器の製造方法]
図5は、本実施形態に係る電界結合器10の製造方法を説明する説明図である。
まず、図5のステップS01が処理され、一枚の板状の導電体(例えば、板金。以下、板金として説明する。)が用意される。
【0044】
そして、ステップS03が処理され、ステップS01で用意された板金を、打抜き加工により、図4に示すような蛇行した帯状線路110A及び帯状線路120Aと、両者を連結する連結部130とを有する帯状の導体による線路が形成される(打抜ステップ)。
【0045】
その後、ステップS05が処理され、所定の型やジグなどにより、ステップS03で形成された帯状導体が、図4に示す点線の位置において結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられ、帯状コイル100が成形される(成形ステップ)。なお、このステップS05で形成される帯状コイル100は、上述のように2つの帯状コイル(第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120)を有する。そして、両者のコイル軸AX1,AX2は、結合方向(x軸方向)と垂直、かつ、結合方向と垂直な面(yz面)内で互いに平行になり、帯状コイル100の中心部Oを取囲むことになる。このステップS05の処理後は、ステップS07が処理される。
【0046】
ステップS07では、ステップS07で形成された帯状コイル100が、基板(図示せず)に配置され、かつ、端子Aがスタブ200に接続され、そして、端子Bが短絡される。その結果、図1に示したような電界結合器10が形成される。
【0047】
なお、ここでは、ステップS01及びステップS03を処理することにより、図4に示すような帯状導体の線路を形成する場合について説明した。しかしながら、本発明による線路の形成方法は、この例に限定されるものではない。例えば、導電体材料を、図4に示すような線路を形成する型に流し込むことにより成形することも可能である。しかしながら、上記ステップS01及びステップS03のように、板金を打抜いて成形する場合、加工が容易で、専用の型を形成する必要もなく、製造の手間及びコストを低減することができる。
【0048】
[1.4 電界結合器による動作と効果の例]
以上、本発明の第1実施形態に係る電界結合器10について説明した。このような電界結合器10は、中心部Oを取囲む2つの帯状コイル(第1帯状コイル110と第2帯状コイル120)を、擬似的に、図6に示すような線上導体により形成され、コイル軸が中心部Oの周りにドーナツ状に取囲むような形状を有するコイル400とみなすことができる。従って、図6に示すドーナツ状のコイル400を例に、電界結合器10による電界発生過程について説明する。
【0049】
上述の通り、帯状コイル100(コイル400)は、高周波信号の波長の2分の1の電気長を有する。従って、スタブ200から高周波信号が入力されると、帯状コイル100は、共振して定在波が立つ。その結果、中心部Oを中心として回転するような交番磁束が発生する。この交番磁束は、中心部O及びその近傍に、結合方向(x軸方向)に進行し、かつ、同方向に振動する縦波の電界を発生させる。従って、電界結合器10は、この縦波の電界により、他の通信装置が有する電界結合器(電界結合器10であってもよいが、それとは異なる平板電極などを有する結合器であってもよい。)と近接の非接触通信を行うことができる。
【0050】
一方、上述の通り、帯状コイル100(コイル400)の第1帯状コイル110と、第2帯状コイル120とは、互いに旋回方向(巻き方向)が反転している。この場合、中心部O及びその近傍に発生させる電界を強め、電気的特性を高めることが可能となる。より詳細に説明すると次の通りである。上述の通り、高周波信号が入力されると帯状コイル100は共振する。仮に、帯状コイル100をコイル軸が直線上のコイルで、電気長が2分の1波長であり、かつ、旋回方向が一定であるとすると、図7に示すような磁束が発生する。一方、本実施形態のように旋回方向が反転されていると、図8に示すような磁束が発生する。つまり、図7及び図8に示すコイル(つまり帯状コイル100など)の端部は、電流に対して開口端となるため、そこでの電流変化は大きく、そのため、端部での磁束も大きくなる。一方、コイルが2分の1波長の電気長を有するため、コイルでは2分の1波長の定在波が立つ。この際、図7に示すように旋回方向が一定だと、コイルの中心部を挟んで、互いに反対向きの磁束が発生する。この磁束は、互いに逆向きの電界を発生させる。従って、図6に示すようにドーナツ状にされた場合、中心部Oに発生する電界の強度は、ある程度通信可能ではあるものの、低くなる。これに対して、図8に示すように旋回方向が反転されていると、コイルの中心部を挟んで、互いに同じ向きの磁束(磁束B1,B2又はその逆)が発生する。この磁束は、同方向の電界を発生させる。従って、図6に示すように、ドーナツ状にされれば、中心部Oに発生する電界の強度は、強められ、図7に示す場合に比べても電界結合における結合強度を強め電気的特性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る帯状コイル100は、上述のように、例えば板金を、蛇行する帯状導体に打抜き、その後、その帯状導体を曲折することにより形成される。従って、容易な製造が可能である。これに対して、通常の線状の導体を巻き付けることにより形成するコイル400は、コイルの巻き付けが難しく時間もかかるため、製造が困難である。更に、コイル400を形成するためには中心部Oを取囲むようにドーナツ状に形成する必要があるが、このようにドーナツ状にコイルを形成することは、容易ではない。また、このようなコイルでは、コイル断面の面積を一定に保ったり、コイルの一巻き一巻き間のピッチ間隔を一定に保つことは、非常に難しい。従って、コイルの形状のばらつきが大きくなって製造誤差が大きくなり、例えば共振周波数が所望の値からずれてしまうなど、安定した磁束を発生させることが難しい。更に、通常のコイルの場合、コイルの断面を円形にするため、コイル400の厚みは直径分の長さとなり、薄型化することが難しい。これに対して、コイルの断面を楕円にすることも考えられるが、楕円のコイルを形成することは、更に製造を難しくしてしまう。このようなコイル400に対して、本実施形態に係る帯状コイル100は、打抜き及び折曲げという簡単かつ正確な工程で形成でき、コイルの断面を図3(B)の距離dxや距離dyを調整することにより一定に形成できる。更に、帯状コイル100は、同様にピッチ間隔を図3(A)の距離dzを調整することにより一定に形成することも可能である。従って、この帯状コイル100によれば、製造が容易になるばかりでなく、製造誤差を低減して、所望の値の共振周波数を実現可能であり磁界を安定的に発生させることができる。従って、本実施形態により製造される帯状コイル100によれば、更に電気的特性を向上させることが可能である。
【0052】
また、この際、図3(B)に示す距離dxを小さく形成することにより、帯状コイル100の厚みを薄くすることも可能であり、装置全体の小型化にも寄与することが可能である。更に、この帯状コイル100は、図4に示したように一枚の板金から形成することが可能であるが、本実施形態に係る帯状コイル100は、展開図が図4に示すように単純であり、かつ、面積が小さい。従って、打抜く板金の面積を減少させることができる。なお、この帯状コイル100の場合、板状の電界結合用電極を使用する場合と比べて、その面積によらずに安定して大きな電界を発生させることができるため、結合方向(x軸方向)と垂直な面(yz面)内の面積を小さくすることができることは言うまでもない。一方、帯状コイル100は、結合方向とは反対の方向にグランドが形成される。このグランドは、結合方向と反対の方向に対して電界が放射されることを防ぐことができる。なお、電界結合をするために通常の板状の電極を使用する場合、この電極とグランドとの距離が短いと結合方向に発生される電界強度が低下する。従って、このような板状の電極では、装置全体の厚みを薄くして低背化することが難しい。しかしながら、本実施形態に係る帯状コイル100の場合、コイル軸AX1,AX2に沿って発生させる交番磁界は、グランドとの距離が小さくても影響を受けにくく、帯状コイル100が結合方向に発生させる電界強度も低下せずに済む。よって、電界結合器10を低背かつ小型に形成することが可能である。
【0053】
以上、本発明の第1実施形態に係る電界結合器10について説明した。次に、順次この変更例である本発明の第2〜第4実施形態に係る電界結合器について説明する。なお、第2〜第4実施形態に係る電界結合器は、上記第1実施形態に係る電界結合器10に対して、帯状コイルの構成が一部異なるものの、残りの構成は上記第1実施形態と同様に形成される。従って、以下では、各実施形態の電界結合器が有する帯状コイルについて説明し、かつ、その帯状コイルにおいても上記帯状コイル100に対して異なる点について説明する。
【0054】
<2. 第2実施形態>
図9は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル500の斜視図である。図10(A)〜図10(C)は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル500の三面図である。なお、図10(A)は、帯状コイル500の上面図(x軸正の方向から見た図)であり、図10(B)は、帯状コイル500の正面図(z軸正の方向から見た図)であり、図10(C)は、帯状コイル500の側面図(y軸負の方向から見た図)である。
【0055】
本実施形態に係る帯状コイル500は、図9及び図10(A)〜図10(B)に示すように、基本的には帯状コイル100と同様に形成される。つまり、帯状コイル500は、第1帯状コイル110に対応する第1帯状コイル510と、第2帯状コイル120に対応する第2帯状コイル520と、連結部130とにより構成される。
【0056】
上記第1実施形態に係る第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、図2に示したように中心部Oから離れた外側折返部112,122が、結合方向前方(x軸正の方向)に突出している。そして、中心部Oに近い内側折返部114,124が、基板(図示せず)上に載置される。これに対して、図9及び図10(A)〜図10(B)に示すように、本実施形態に係る第1帯状コイル510及び第2帯状コイル520は、中心部Oに近い内側折返部114,124が結合方向前方(x軸正の方向)に突出する。そして、中心部Oから離れた外側折返部112,122が、基板(図示せず)上に載置される。従って、外側張出部112A,122Bは、基板上に載置されることになり、結合方向前方に突出した部位で、結合方向と垂直な方向(y軸方向)に張り出した部位がないため、帯状コイル500の強度を高めることができる。
【0057】
<3. 第3実施形態>
次に、図11及び図12(A)〜(C)を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル600について説明する。
【0058】
図11は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル600の斜視図である。図12(A)〜図12(C)は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル600の三面図である。なお、図12(A)は、帯状コイル600の上面図(x軸正の方向から見た図)であり、図12(B)は、帯状コイル600の正面図(z軸正の方向から見た図)であり、図12(C)は、帯状コイル600の側面図(y軸負の方向から見た図)である。
【0059】
本実施形態に係る帯状コイル600は、図11及び図12(A)〜図12(B)に示すように、基本的には第2実施形態に係る帯状コイル500と同様に形成される。つまり、帯状コイル600は、第1帯状コイル510に対応する第1帯状コイル610と、第2帯状コイル520に対応する第2帯状コイル620と、連結部130とにより構成される。
【0060】
この際、帯状コイル600の一部(本実施形態では、第2帯状コイル620の1つの内側折返部124の一部)において、帯状導体の帯幅が拡大した吸着ポイント630を有する。
【0061】
吸着ポイント630は、例えば、結合方向(x軸方向)と垂直な面(yz面)における帯状コイル600の重心位置(例えば中心部O)を含むように、帯幅が拡大されることが望ましい。そして、この吸着ポイント630は、帯状コイル600の製造時に、マウンタの吸着ノズルなどに吸着可能に形成される。従って、例えば、帯状コイル600の取扱時や実装時などにおいて、マウンタの吸着ノズルが、吸着ポイント630を吸着することができ、帯状コイル600を取り扱うことが可能となる。このような構成によれば、マウンタにより、帯状コイル600を自動で基板(図示せず)上に実装することが可能となり、容易に製造することができる。また、この際、上述のように、吸着ポイント630が帯状コイル600の重心位置に形成されることにより、マウンタは、帯状コイル600を傾けること無く指示することができるため、更に製造を容易にすることが可能である。
【0062】
<4. 第4実施形態>
最後に、図13及び図14(A)〜(C)を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル700について説明する。
【0063】
図13は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル700の斜視図である。図14(A)〜図14(C)は、本実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイル700の三面図である。なお、図14(A)は、帯状コイル700の上面図(x軸正の方向から見た図)であり、図14(B)は、帯状コイル700の正面図(z軸正の方向から見た図)であり、図14(C)は、帯状コイル700の側面図(y軸負の方向から見た図)である。
【0064】
本実施形態に係る帯状コイル700は、図13及び図14(A)〜図14(B)に示すように、基本的には第3実施形態に係る帯状コイル600と同様に形成される。つまり、帯状コイル700は、第1帯状コイル610に対応する第1帯状コイル710と、第2帯状コイル620に対応する第2帯状コイル720と、連結部130とにより構成される。
【0065】
ただし、吸着ポイント630に対応する吸着ポイント730が、帯状コイル700の帯状導体の長さの中央位置に形成されことが、上記第3実施形態とは異なる。そのために、端子A及び端子Bは、図14(A)に示すように、第2帯状コイル720の中間位置に設けられ、かつ、連結部130は、第1帯状コイル710と第2帯状コイル720との両端に1つずつ、合計2つ配置される。そして、端子A,Bと対向する第1帯状コイル710の内側折返部114に、吸着ポイント730が形成される。
【0066】
このような構成を有することにより、本実施形態に係る帯状コイル700は、より正確な重心位置に、吸着ポイント730を形成することができるため、更に製造を容易にすることが可能である。また、帯状導体の長さの中間点に吸着ポイント730が形成されるため、吸着ポイント730の前後の帯状導体における抵抗値を一定にすることができ、帯状コイル700に流れる電流を安定させることが可能である。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
第3実施形態及び第4実施形態において、吸着ポイントについて説明したが、本発明は、この例に限定されるものではなく、様々な位置に吸着ポイントを形成することも可能である。例えば、図2や図9に記載の帯状コイル100,400の連結部130を中心部Oまで延長して、その中心部Oにおいて吸着ポイントを形成することも可能である。
【0069】
また、上記第1実施形態〜第4実施形態では、帯状コイルの連結部130には、コイルが形成されていない場合を示したが、本発明はこの例に限定されるものではない。この連結部130にもコイルが形成されるように、第1帯状コイル又は第2帯状コイルと同様に形成することが可能である。ただし、上記第1実施形態〜第4実施形態に係る帯状コイルの場合、連結部130にコイルを形成する場合に比べて、展開図が図4に示すように単純であり、かつ、その面積が小さい。従って、上記第1実施形態〜第4実施形態に係る帯状コイルによれば、打抜く板材は小さい面積で済み、かつ、容易に打抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電界結合器の構成を説明する説明図である。
【図2】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの斜視図である。
【図3】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの三面図である。
【図4】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの展開図である。
【図5】同実施形態に係る電界結合器の製造方法を説明する説明図である。
【図6】同実施形態に係る電界結合器の動作等を説明する説明図である。
【図7】同実施形態に係る電界結合器が発生する磁束を説明する説明図である。
【図8】同実施形態に係る電界結合器が発生する磁束を説明する説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの斜視図である。
【図10】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの三面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの斜視図である。
【図12】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの三面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの斜視図である。
【図14】同実施形態に係る電界結合器が有する帯状コイルの三面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 電界結合器
100,500,600,700 帯状コイル
400 コイル
110,510,610,710 第1帯状コイル
110A,120A 帯状線路
111,123 内側立上部
112,122 外側折返部
113,121 外側立上部
114,124 内側折返部
120,520,620,720 第2帯状コイル
120A 帯状線路
130 連結部
200 スタブ
300 入出力線
400 コイル
630,730 吸着ポイント
A,B,C,D 端子
AX1,AX2 コイル軸
B1,B2 磁束
E 接続点
O 中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が前記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し、前記コイル軸が前記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを備え、
前記帯状コイルは、前記中心部で前記結合方向に振動する縦波の電界により結合する、電界結合器。
【請求項2】
前記帯状コイルは、前記中心部を挟んでコイル軸が互いに平行になるように配置され一端が連結された2つの帯状コイルで構成され、
各前記帯状コイルの巻き方向は、前記2つの帯状コイルの連結位置を挟んで反転している、請求項1に記載の電界結合器。
【請求項3】
給電端から供給される前記所定の周波数の高周波信号と共振し、当該共振による電圧の定在波の腹に相当する位置で前記帯状コイルの一端に接続された共振部と、
前記結合方向と反対の前記帯状コイルの一側に設けられるグランドと、
を更に備え、
前記帯状コイルの他端は、接地される、請求項1に記載の電界結合器。
【請求項4】
前記帯状コイルの一部には、製造時にマウンタで吸着可能なように帯幅が拡大した吸着ポイントが形成される、請求項1に記載の電界結合器。
【請求項5】
前記吸着ポイントは、前記結合方向と垂直な面内における前記帯状コイルの重心位置に形成される、請求項4に記載の電界結合器。
【請求項6】
前記帯状コイルは、コイル側面で前記結合方向と垂直な方向に張り出した張出部を有する、請求項1に記載の電界結合器。
【請求項7】
前記蛇行する帯状導体は、一枚の板金を蛇行する帯状に打ち抜いて形成される、請求項1に記載の電界結合器。
【請求項8】
電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が前記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数の波長に対して2分の1の実効長を有し、前記コイル軸が前記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを備え、
前記帯状コイルは、前記中心部で前記結合方向に振動する縦波の電界により結合して非接触通信を行う、通信装置。
【請求項9】
電界結合を行い非接触通信を行う2つの通信装置を備え、
前記2つの通信装置の少なくとも一方は、前記電界結合を行う結合方向と垂直な面に沿って蛇行する帯状導体を、コイル軸が前記結合方向と垂直になるように曲折して形成され、高周波信号の所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し、前記コイル軸が前記面に沿って中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを有し、
前記帯状コイルは、前記中心部で前記結合方向に振動する縦波の電界により結合して非接触通信を行う、通信システム。
【請求項10】
所定の周波数で電界結合を行う結合方向と垂直な一枚の板金を、蛇行する帯状に打ち抜いて、蛇行する帯状導体を形成する打抜ステップと、
前記蛇行する帯状導体を、コイル軸が前記結合方向と垂直になるように曲折して、前記所定の周波数に対して2分の1波長の電気長を有し前記コイル軸が中心部を取囲む形状を有する帯状コイルを形成する成形ステップと、
を有する、電界結合器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−34791(P2010−34791A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193930(P2008−193930)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】