電磁アクチュエータ及びこれを用いた光量調整装置
【課題】磁気効率の向上を計り、小型で出力トルクの大きい電磁アクチュエータ、及び小型かつコンパクトな光量調整装置を提供する。
【解決手段】非磁性体から成る基板フレームと、この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材とを設け、上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備える。そして、上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、それぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有する。
【解決手段】非磁性体から成る基板フレームと、この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材とを設け、上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備える。そして、上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、それぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−S極に着磁したマグネットロータに電磁コイルと連結した磁気誘導部材を対向配置し、この電磁コイルに正逆電流を印加することによって所定角度範囲でロータを往復動する電磁アクチュエータに係わり、デジタルカメラその他の光学機器に組み込まれ、
シャッタ、絞り装置或いはオートフォーカス機構の駆動装置として用いられる電磁アクチュエータ及びこれを用いた光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の電磁アクチュエータはカメラ装置などの小型機器に組み込まれ比較的小さいトルクで変位量の小さい機能部品を駆動するものとして広く用いられている。例えばカメラ装置ではシャッタ羽根、絞り羽根などの光量規制装置の駆動手段として用いられ、その構造はN−S極に着磁したマグネットロータをコイルに電流を印加することによって生起した磁界で所定角度往復回転するようにしている。そして、このコイルで生起する磁界はマグネットロータの周囲にコイルを巻回して永久磁石と対向させる構造と、コイルの中心に鉄芯を設けて、この鉄芯の一端をマグネットロータの磁極と対向させる構造がそれぞれ知られている。
【0003】
本発明は後者の一端をマグネットロータの磁極に対向させた軟磁性部材の他端部にコイルを巻回するアクチュエータに関する。従来このようなアクチュエータは例えば特許文献1のように図13にその組立分解図を、図14に組立状態の断面図を示す構造が提案されている。つまり樹脂などの地板PH1の中央にマグネットロータPG1を回転自在に配置し、このロータの周囲に対向する一対の軟磁性部材(鉄芯部材)PF1、PF2が配置されている。そして、この鉄芯部材PF1、PF2にはそれぞれ図13に示すような2つの折曲片PF5、PF6とPF3、PF4が設けられ、一方の折曲片PF5(PF6)はマグネットロータPG1の外周面と少許の間隔を形成して対向する位置に配置され、他方の折曲片PF3(PF4)にはコイルPE1(PE2)の中心に嵌合する位置に配置されている。このコイルPE1(PE2)は地板PH1に取り付けたカバー枠PC1に固定されている。
【0004】
そこでこの2つのコイルに生起した磁界で磁気回路を構成する為にコイルPE1、PE2の中心に位置する折曲片PF3、PF4は連結ヨークPB1で磁気的に連結されている。この連結ヨークPB1はコ字状の軟磁性部材の折曲片で構成され、その先端部PB2とPB3とは各コイルの中心部でそれぞれ折曲片PF3及びPF4に接合され、この接合によって折曲片PF3、PF4に生起した磁界が連結ヨークPB1に伝わり、マグネットロータPG1の周囲に磁気回路を形成する。尚、図示PA1、PA2は連結ヨークとコイルを組み込んだカバー枠PC1を鉄芯部材を組み込んだ地板PH1に固定するビス部材である。
【特許文献1】特開2001−352741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにマグネットロータの磁極と対向する位置に一対の軟磁性部材を配置し、この部材にコイルを巻回してN−S相反する磁極部を形成する場合に、従来の構造では次の問題が発生する。
【0006】
つまりロータの周囲に配置した一対の軟磁性部材でN−S磁気回路を構成する際に従来は前掲特許文献1のようにロータの外周に近接する位置に軟磁性部材の折曲片を設けて磁極部を形成し、この折曲片と距離を隔てた位置に第2の折曲片を設け、この折曲片の周囲にコイルを巻回している。そしてこのような軟磁性部材をロータの周囲に一対配置し、この2つの軟磁性部材をコ字状のヨーク(軟磁性部材)で連結して磁気回路を構成している。
【0007】
従って基板フレームに第1、第2の軟磁性部材を配置して磁極部を構成し、この2つの磁極部をヨーク部材で連結してロータの周囲に磁気回路を構成することとなり、3つの部材の連結でループ状の磁気回路が構成される。このような構成では必ず軟磁性部材の接合による連結、つまりコイルの中心に位置する軟磁性部材(鉄芯部材)とヨーク部材とは製造上一体に形成することが出来ない為、接合部の磁気抵抗が高く磁気効率が悪く磁気回路で得られる磁気トルクが得られない問題がある。これはロータの外周方向に磁極を形成する折曲片、更にその外側にコイルの巻回領域を隔ててコイルを巻回する折曲片を配置している為、この2つの軟磁性部材を連結して磁気回路を構成する為のヨーク部材を別部材で構成しなければコイルを嵌合することが出来ないことに由来する問題である。
【0008】
またその構造はロータを中心にその外周方向外側に軟磁性部材の折曲片(磁極部)とコイルを巻回する折曲片の順に配置されるから装置が大径、大型となることは当然であり、最新のデジタルカメラなどの小型装置には適さない。同時に従来のようにロータを核にしてその外周に磁極形成片(折曲片)、コイル及びコイル鉄芯(コイル巻回用の折曲片)を配置する構造では装置を小型化する為にはマグネットロータを小径に構成しなければならず、その制御も製造上の精度を確保することも困難である。これは例えば軟磁性部材の磁極形成部の位置、形状が製造上バラつきが生じた場合に円筒状のロータが小径のときには大径に比べその影響が大きく、またコイルに印加する制御電流にバラつきが生じた場合も同様となる為である。
【0009】
そこで本発明は、励磁コイルに生起した磁界によってマグネットロータに回転力を付与する際に磁気回路の効率の向上を計り、小型で出力トルクの大きい電磁アクチュエータの提供をその課題とし、またこれを用いて小型かつコンパクトな光量調整装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため以下の構成を採用する。
非磁性体から成る基板フレームと、この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材とを設け、上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備える。尚、上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、それぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有する。
【0011】
上記励磁コイルを上記先端折曲片のコイル巻回部に配置し、上記マグネットロータを外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置した。前記磁気誘導部材の磁極形成部を前記マグネットロータの回転軸を挟んで互いに対向配置し、この一対の磁極形成部はその一方と上記回転軸とを過ぎる直線に対し他方が所定角度変位した位置で上記マグネットロータと対向するように配置した。
【0012】
そして前記基板フレームは合成樹脂材料で形成し、この基板フレームには前記マグネットロータの回転軸を支持する軸受孔と、前記磁気誘導部材の先端折曲片を貫通させる係合孔と、この係合孔の周囲に前記励磁コイルを巻廻するコイル枠を一体に形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は基板フレームに回転自在に配置したマグネットロータの周囲に略コ字状の軟磁性部材を配置し、この部材両端の折曲片にロータの回転軸方向に沿って磁極形成部とコイル巻回部を設けることによって、ロータの外周に形成する一対の磁極を単一の軟磁性部材で構成することが可能である。従って従来のように複数の部材を接合して磁気回路を構成する場合に比べ、接合部に生ずる磁気的ロスが少なく、磁気トルクを最大限マグネットロータに作用させることが出来、効率の良い、アクチュエータの提供が可能である。
【0014】
また、磁気誘導部材はマグネットロータの回転軸方向に沿ってコイル巻回部と磁極形成部とを形成してあるから、この軸方向にコイルとマグネットロータが上下に重なって配置されることとなり、マグネットロータの外径を小さくすることなく装置の小型コンパクト化が可能であり、マグネットロータの外径が確保されることからその制御も容易である。
【0015】
更に、本発明は磁気誘導部材をマグネットロータの周囲に所定の角度範囲で配置することにより装置非使用時にマグネットロータの磁極を磁気誘導部材の吸収作用でロータを開放域又は閉成域に保持することが可能となる。従って光量調整装置の羽根をクローズバネなどを用いることなく羽根を閉成状態又は開放状態に保持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明の電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置の斜視図であり、図2は電磁アクチュエータ装置の組立分解図を、図8はその組立状態の断面図である。
【0017】
まず図1に基づいて後述する電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置について説明する。図示のものはシャッタ装置でカメラ装置のレンズ鏡筒に組込まれる地板(基板)SGと、この地板SGに配置されたシャッタ羽根SB1、SB2と、この羽根を開閉駆動する電磁アクチュエータAXとから構成されている。地板SGは中央に光路開口SG1を有する偏平な基板で、例えば樹脂材料のモールド成形で形成され、その外径は組込まれるカメラ装置などの鏡筒の形状に応じて構成する。特にこの地板外径を小さくすることによって小型機器例えば携帯電話などに組込むことが可能であり、また通常の撮影レンズなどの鏡筒は円筒形である関係上、この地板は外部に突出することのない円形状が好適とされている。
【0018】
そこで地板SGに形成された光路開口SG1にはその開口を開閉するシャッタ羽根SB1、SB2が配置される。この羽根は1枚或いは図示のように2枚、若しくはそれ以上の枚数で構成される。シャッタ羽根SB1、SB2はその基端部を地板SGに植設したピンSG2、SG3にそれぞれ回動自在に支持され羽根先端部が光路開口SG1を開放及び遮閉する。この羽根は地板SGにピンで回動自在に配置する他、開口SG1を過るようにスライド(摺動)自在に配置しても良い。このように配置された羽根は、駆動装置に連結されるが、図示SB3、SB4は羽根の回動軌跡と略々直交する方向に形成されたスリット溝であり、後述するロータの駆動アームAB4が嵌合される。
【0019】
そこで駆動装置について図2に基づき説明する。
本発明の電磁駆動装置は基板フレームAEとこの基板フレームに回動自在に軸支されたマグネットロータABと、このマグネットロータの着磁極と対向する位置に磁極(磁気回路)を形成する磁気誘導部材AFと、この磁気誘導部材に磁気を付与する励磁コイルADとで構成される。
【0020】
基板フレームAEは上記各構成部品を組込む形状に構成され、上下一対のプレート部材の間に各構成部品を組込むようにする。この基板フレームAEは樹脂などの非磁性材料で形成し、またフレーム構成はその一方を前述の光量調整装置の基板で兼用しても良い。図示のものは下部フレームAEと上部フレームAAで構成され、上部フレームAAは周囲に側壁を備えたカバー部材で構成してある。
【0021】
次にマグネットロータABは中央に回転軸AB1を有する円筒形状の永久磁石AB2で構成する。永久磁石AB2はその外周を2極(N−S極)に分極着磁し、その中心に回転軸AB1を一体に設け、この回転軸には駆動アームAB3を一体形成する。このマグネットロータABは例えば磁性材料を焼結加工で中空円筒形状に焼成し、これに回転軸AB1と駆動アームAB3とを樹脂のインサート成形で一体形成する。そして外周を2極に分極着磁してN−S極を形成する。また駆動アームAB3には前述のシャッタ羽根SB1、SB2に形成したスリット溝SB3、SB4に係合する駆動アームAB4を一体に設ける。
【0022】
このように構成したマグネットロータABは基板フレームに回動自在に軸承する。図示のものは下部フレームAEに軸受孔AE1が上部フレームAAに軸受孔AA2が設けてあり、ロータABの回転軸AB1の両端をこの各軸受孔に嵌合してある。また前述の基板フレームを構成する下部フレームAEは樹脂などの非磁性材料で形成され、コイル枠AE4、AE5と突起AE2、AE3が一体に設けてある。このコイル枠AE4、AE5には後述する励磁コイルが巻回され、突起AE2、AE3には励磁コイルの保護板ACが係止される。この下部フレームAEには次の構造の磁気誘導部材AFが取付けられている。
【0023】
この磁気誘導部材AFは基板フレームに回動自在に取付けられたマグネットロータABの磁極と少許の間隙(磁気ギャップ)を形成して対向する2つの磁極形成部AF1a、AF2aとコイル巻回部AF1b、AF2bを有する略コ字状の軟磁性部材で構成される。
【0024】
つまり鉄などによる軟磁性材の板状部材の両端を折り曲げて両端部に先端折曲片AF1、AF2を設ける。この一対の折曲片AF1、AF2はマグネットロータの外径より若干大きい間隔で形成され下部フレームAEに形成した係合孔AE8、AE9(図8参照)に嵌合される。この係合孔AE8、AE9はコイル枠AE4、AE5の中心に設けられている。
【0025】
また磁気誘導部材AFには折曲片AF1とAF2とを連結する連結部AF3を有している。従って折曲片AF1の磁極形成部AF1aがN極のときには他方の折曲片AF2の磁極形成部AF2aはS極となるように磁気回路が構成される。また折曲片AF1、AF2にはロータの回転軸AB1に沿ってコイル巻回部AF1b、AF2bと磁極形成部AF1a、AF2aが配置されることとなる。このとき図8に示すように下部フレームAEとマグネットロータABとの間には図示Lのスペースが設けられ、このスペースが励磁コイルを巻回する空間となる。
【0026】
そこで励磁コイルADは中央にコイル枠AE4、AE5に嵌合する孔AD1を有し、図2円周方向に巻回されたコイル線で構成され、このコイルがコイル枠AE4、AE5に嵌合支持される。するとこのコイル枠を介して折曲片AF1、AF2には外周にコイルADが巻回され、コイルへの通電によって生起した磁界で折曲片AF1、AF2は磁化される。
このコイルによる磁化作用で折曲片先端部の磁極形成部AF1a、AF2aにはN−S対向する磁極が形成される。図示ACは励磁コイルADの保護板で非磁性材料で折曲片AF1、AF2を挿通する孔AC1を備え、前述の下部フレームAEに形成した突起AE2、AE3上に当接した状態で上部フレームAAの周側壁に嵌合保持される。
【0027】
次にかかる構成のアクチュエータの組立方法を説明する。下部フレームAEの係合孔AE8、AE9に磁気誘導部材AFの折曲片AF1、AF2を圧入する。するとこの折曲片は下部フレームAEと一体に形成したコイル枠AE4、AE5の中心に形成された係合孔AE8、AE9で保護され磁気誘導部材AFは下部フレームAEに一体に固定される。次いでコイル枠AE4、AE5に別途巻線機で巻回した励磁コイルADの孔AD1を嵌合して組込み、その上に保護板ACを同様にその孔AC1をコイル枠AE4、AE5に嵌合して組込む。そこでこのコイルADと保護板ACとを例えば接着剤でコイル枠AE4、AE5に接合する。
【0028】
次にマグネットロータABの回転軸AB1の下端部を下部フレームAEの軸受孔AE1に嵌合し、この回転軸AB1の上端部を上部フレームAAの軸受孔AA2に嵌合する。このとき上部フレームAAは開口部AA1から駆動アームAB3が外部に突出するように組込み、下部フレームAEと一体化する。
【0029】
この上部フレームと下部フレームの結合はビス止め、或いは一方に突起、他方にこの突起に係合する凹部を形成し弾性変形を利用して両者を結合・離脱させるようにする。また基板AEに固定された励磁コイルADはコイルの巻き始めと巻き終わりの口出線は互いに流れる電流の方向が逆になるように端子AE6、AE7にハンダ付けする。コイルの口出線は図9にAE8、AE9で示す口出端子取付用の孔に仮止めする。これによって作動時の磁極形成部AF1a、AF2aには一方にN極、他方にS極が生起される。
【0030】
次に、図3は図2の状態で組み上げたアクチュエータAXを上方から見た平面図を示すもので、上部フレームAAの開口部AA1から装置外に突出したマグネットロータABの駆動アームAB3が実線位置を境に時計方向の第1の位置O1(シャッタ全開の開放位置)と半時計方向の第2の位置O2(シャッタ全閉の閉鎖位置)との間で往復回転する。尚、図11及び図12で詳述するが、図示実線で示すマグネットロータABの中間位置は説明のために示したもので、アクチュエータAXの励磁コイルADが無通電状態の場合には、無通電状態になった時点でのマグネットロータABの駆動アームAB3の位置により第1の位置O1(シャッタ全開の開放位置)か第2の位置O2(シャッタ全閉の閉鎖位置)に保持され、この実線で示す中間位置はいずれかの位置への通過状態でこの位置に停止することは無い。
【0031】
次に、図4はそのマグネットロータABの永久磁石AB2の中央部位置で切断した平面断面図であって、磁気誘導部材AFの一対の折曲片AF1、AF2の装置内における配置関係は、折曲片AF2の中央部位とマグネットロータABの回転軸AB1の中心を通る基準直線を基準に反時計方向に角度θ(≒18°)変位した位置に折曲片AF1が配置されている。また、マグネットロータABの永久磁石AB2は図示の符号N、Sで示す位置が極頂部でこの方向にN−Sの2極着磁されている。
【0032】
そして、図示の様な中間位置から仮に永久磁石AB2のN磁極部が時計方向に多少でも変位することで、永久磁石AB2のN磁極は折曲片AF1がこの時点でS磁極に励磁コイルAD(図2、図5参照)により励磁され、また折曲片AF2が逆にN磁極に励磁コイルADにより励磁されており、磁気的に折曲片AF2に反発し折曲片AF1に吸引され、マグネットロータABは時計方向に引き続き回転する。また、逆に中間位置から仮に永久磁石AB2のN磁極部が反時計方向に多少でも変位することで、永久磁石AB2のN磁極は折曲片AF1がこの時点でN磁極に励磁コイルADにより励磁され、また折曲片AF2が逆にS磁極に励磁コイルADにより励磁されており、磁気的に折曲片AF1に反発し折曲片AF2に吸引され、マグネットロータABは反時計方向に引き続き回転する。
【0033】
次に図11に基づいてマグネットロータABの磁極と磁気誘導部材AFの折曲片AF1、AF2との位置関係を示す。
【0034】
まずマグネットロータABは図中N−Sで示す位置を極頂点に着磁され、図示反時計方向に角度α1、時計方向に角度α2の範囲内で往復動自在に基板フレームAEに取付けられている。このロータの作動角度は例えば図2に示す上部フレームAAに形成した開口部AA1で駆動アームAB3の駆動アームAB4を規制することによって行う。図示のものは角度α1、α2をそれぞれ約20°、全体の作動角度αを約40°に設定してある。
【0035】
そして折曲片AF1、AF2はその一方とロータの回転軸とを結ぶ直線に対し他方が所定角度θ変位した位置に配置してある。図示の角度θは約18°に設定してある。これはロータのN−S着磁方向と回転軸AB1と折曲片AF1、AF2の磁極形成部AF1a、AF2aとを結ぶ方向とが往復作動域内で一致することが無いように配置することによって駆動アームの作動端でディテントトルクをロータに作用する為である。
【0036】
このように一対の磁気誘導部材をロータの周囲に従来は180°隔てた位置に配置するのに対し、図示のように180度より狭い角度(例えば160度)に配置することによって左右往復動するロータの右限位置と磁極形成部AF1aとの距離が短くなり、コイルの無通電状態でロータは磁気誘導部材によって右限域に保持される。ロータの左限域でも同様に磁極形成部AF2aの左限域に保持されることとなる。
【0037】
図12は図11で示すマグネットロータABの中心を通るX−X断面で、本発明の磁気回路構成を説明するための配置図で、磁気誘導部材AFの一対の折曲片AF1、AF2は連結部AF3の両側端から延在した端部を折り曲げ加工により紙面上方略直角に折り曲げ形成され、同時にその連結部AF3は面打ち加工で板厚が極力薄く成形されている。尚、折り曲げ加工により一対の折曲片AF1、AF2と連結部AF3が一体加工する他、鋳造加工で一体成形しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係わる電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置の斜視図。
【図2】本実施例に係わる電磁アクチュエータ装置の組立分解図。
【図3】図2の装置の上側平面図。
【図4】図2の装置をマグネットロータ中心部で切断した断面図。
【図5】図2の装置を励磁コイル中心部で切断した断面図。
【図6】図2の装置の底面図。
【図7】図2の装置の側面図。
【図8】図7の装置の断面図。
【図9】図2の装置の右側面図。
【図10】図9の装置の側断面図。
【図11】本発明に係わるマグネットロータの磁極と磁気誘導部材の折曲片との位置関係を示す説明図。
【図12】本発明における磁気回路構成の説明図。
【図13】従来のアクチュエータを用いた光量調整装置の概要斜視図。
【図14】図13の装置の断面図。
【符号の説明】
【0039】
AA 上部フレーム
AB マグネットロータ
AB3 駆動アーム
AB4 駆動ピン
AC 保護板
AD 励磁コイル
AE 下部フレーム
AF 磁気誘導部材
AF1、AF2 折曲片
AF1a、AF1b 磁極形成部
AX 電磁アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明はN−S極に着磁したマグネットロータに電磁コイルと連結した磁気誘導部材を対向配置し、この電磁コイルに正逆電流を印加することによって所定角度範囲でロータを往復動する電磁アクチュエータに係わり、デジタルカメラその他の光学機器に組み込まれ、
シャッタ、絞り装置或いはオートフォーカス機構の駆動装置として用いられる電磁アクチュエータ及びこれを用いた光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の電磁アクチュエータはカメラ装置などの小型機器に組み込まれ比較的小さいトルクで変位量の小さい機能部品を駆動するものとして広く用いられている。例えばカメラ装置ではシャッタ羽根、絞り羽根などの光量規制装置の駆動手段として用いられ、その構造はN−S極に着磁したマグネットロータをコイルに電流を印加することによって生起した磁界で所定角度往復回転するようにしている。そして、このコイルで生起する磁界はマグネットロータの周囲にコイルを巻回して永久磁石と対向させる構造と、コイルの中心に鉄芯を設けて、この鉄芯の一端をマグネットロータの磁極と対向させる構造がそれぞれ知られている。
【0003】
本発明は後者の一端をマグネットロータの磁極に対向させた軟磁性部材の他端部にコイルを巻回するアクチュエータに関する。従来このようなアクチュエータは例えば特許文献1のように図13にその組立分解図を、図14に組立状態の断面図を示す構造が提案されている。つまり樹脂などの地板PH1の中央にマグネットロータPG1を回転自在に配置し、このロータの周囲に対向する一対の軟磁性部材(鉄芯部材)PF1、PF2が配置されている。そして、この鉄芯部材PF1、PF2にはそれぞれ図13に示すような2つの折曲片PF5、PF6とPF3、PF4が設けられ、一方の折曲片PF5(PF6)はマグネットロータPG1の外周面と少許の間隔を形成して対向する位置に配置され、他方の折曲片PF3(PF4)にはコイルPE1(PE2)の中心に嵌合する位置に配置されている。このコイルPE1(PE2)は地板PH1に取り付けたカバー枠PC1に固定されている。
【0004】
そこでこの2つのコイルに生起した磁界で磁気回路を構成する為にコイルPE1、PE2の中心に位置する折曲片PF3、PF4は連結ヨークPB1で磁気的に連結されている。この連結ヨークPB1はコ字状の軟磁性部材の折曲片で構成され、その先端部PB2とPB3とは各コイルの中心部でそれぞれ折曲片PF3及びPF4に接合され、この接合によって折曲片PF3、PF4に生起した磁界が連結ヨークPB1に伝わり、マグネットロータPG1の周囲に磁気回路を形成する。尚、図示PA1、PA2は連結ヨークとコイルを組み込んだカバー枠PC1を鉄芯部材を組み込んだ地板PH1に固定するビス部材である。
【特許文献1】特開2001−352741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにマグネットロータの磁極と対向する位置に一対の軟磁性部材を配置し、この部材にコイルを巻回してN−S相反する磁極部を形成する場合に、従来の構造では次の問題が発生する。
【0006】
つまりロータの周囲に配置した一対の軟磁性部材でN−S磁気回路を構成する際に従来は前掲特許文献1のようにロータの外周に近接する位置に軟磁性部材の折曲片を設けて磁極部を形成し、この折曲片と距離を隔てた位置に第2の折曲片を設け、この折曲片の周囲にコイルを巻回している。そしてこのような軟磁性部材をロータの周囲に一対配置し、この2つの軟磁性部材をコ字状のヨーク(軟磁性部材)で連結して磁気回路を構成している。
【0007】
従って基板フレームに第1、第2の軟磁性部材を配置して磁極部を構成し、この2つの磁極部をヨーク部材で連結してロータの周囲に磁気回路を構成することとなり、3つの部材の連結でループ状の磁気回路が構成される。このような構成では必ず軟磁性部材の接合による連結、つまりコイルの中心に位置する軟磁性部材(鉄芯部材)とヨーク部材とは製造上一体に形成することが出来ない為、接合部の磁気抵抗が高く磁気効率が悪く磁気回路で得られる磁気トルクが得られない問題がある。これはロータの外周方向に磁極を形成する折曲片、更にその外側にコイルの巻回領域を隔ててコイルを巻回する折曲片を配置している為、この2つの軟磁性部材を連結して磁気回路を構成する為のヨーク部材を別部材で構成しなければコイルを嵌合することが出来ないことに由来する問題である。
【0008】
またその構造はロータを中心にその外周方向外側に軟磁性部材の折曲片(磁極部)とコイルを巻回する折曲片の順に配置されるから装置が大径、大型となることは当然であり、最新のデジタルカメラなどの小型装置には適さない。同時に従来のようにロータを核にしてその外周に磁極形成片(折曲片)、コイル及びコイル鉄芯(コイル巻回用の折曲片)を配置する構造では装置を小型化する為にはマグネットロータを小径に構成しなければならず、その制御も製造上の精度を確保することも困難である。これは例えば軟磁性部材の磁極形成部の位置、形状が製造上バラつきが生じた場合に円筒状のロータが小径のときには大径に比べその影響が大きく、またコイルに印加する制御電流にバラつきが生じた場合も同様となる為である。
【0009】
そこで本発明は、励磁コイルに生起した磁界によってマグネットロータに回転力を付与する際に磁気回路の効率の向上を計り、小型で出力トルクの大きい電磁アクチュエータの提供をその課題とし、またこれを用いて小型かつコンパクトな光量調整装置の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため以下の構成を採用する。
非磁性体から成る基板フレームと、この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材とを設け、上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備える。尚、上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、それぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有する。
【0011】
上記励磁コイルを上記先端折曲片のコイル巻回部に配置し、上記マグネットロータを外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置した。前記磁気誘導部材の磁極形成部を前記マグネットロータの回転軸を挟んで互いに対向配置し、この一対の磁極形成部はその一方と上記回転軸とを過ぎる直線に対し他方が所定角度変位した位置で上記マグネットロータと対向するように配置した。
【0012】
そして前記基板フレームは合成樹脂材料で形成し、この基板フレームには前記マグネットロータの回転軸を支持する軸受孔と、前記磁気誘導部材の先端折曲片を貫通させる係合孔と、この係合孔の周囲に前記励磁コイルを巻廻するコイル枠を一体に形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は基板フレームに回転自在に配置したマグネットロータの周囲に略コ字状の軟磁性部材を配置し、この部材両端の折曲片にロータの回転軸方向に沿って磁極形成部とコイル巻回部を設けることによって、ロータの外周に形成する一対の磁極を単一の軟磁性部材で構成することが可能である。従って従来のように複数の部材を接合して磁気回路を構成する場合に比べ、接合部に生ずる磁気的ロスが少なく、磁気トルクを最大限マグネットロータに作用させることが出来、効率の良い、アクチュエータの提供が可能である。
【0014】
また、磁気誘導部材はマグネットロータの回転軸方向に沿ってコイル巻回部と磁極形成部とを形成してあるから、この軸方向にコイルとマグネットロータが上下に重なって配置されることとなり、マグネットロータの外径を小さくすることなく装置の小型コンパクト化が可能であり、マグネットロータの外径が確保されることからその制御も容易である。
【0015】
更に、本発明は磁気誘導部材をマグネットロータの周囲に所定の角度範囲で配置することにより装置非使用時にマグネットロータの磁極を磁気誘導部材の吸収作用でロータを開放域又は閉成域に保持することが可能となる。従って光量調整装置の羽根をクローズバネなどを用いることなく羽根を閉成状態又は開放状態に保持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
図1は本発明の電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置の斜視図であり、図2は電磁アクチュエータ装置の組立分解図を、図8はその組立状態の断面図である。
【0017】
まず図1に基づいて後述する電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置について説明する。図示のものはシャッタ装置でカメラ装置のレンズ鏡筒に組込まれる地板(基板)SGと、この地板SGに配置されたシャッタ羽根SB1、SB2と、この羽根を開閉駆動する電磁アクチュエータAXとから構成されている。地板SGは中央に光路開口SG1を有する偏平な基板で、例えば樹脂材料のモールド成形で形成され、その外径は組込まれるカメラ装置などの鏡筒の形状に応じて構成する。特にこの地板外径を小さくすることによって小型機器例えば携帯電話などに組込むことが可能であり、また通常の撮影レンズなどの鏡筒は円筒形である関係上、この地板は外部に突出することのない円形状が好適とされている。
【0018】
そこで地板SGに形成された光路開口SG1にはその開口を開閉するシャッタ羽根SB1、SB2が配置される。この羽根は1枚或いは図示のように2枚、若しくはそれ以上の枚数で構成される。シャッタ羽根SB1、SB2はその基端部を地板SGに植設したピンSG2、SG3にそれぞれ回動自在に支持され羽根先端部が光路開口SG1を開放及び遮閉する。この羽根は地板SGにピンで回動自在に配置する他、開口SG1を過るようにスライド(摺動)自在に配置しても良い。このように配置された羽根は、駆動装置に連結されるが、図示SB3、SB4は羽根の回動軌跡と略々直交する方向に形成されたスリット溝であり、後述するロータの駆動アームAB4が嵌合される。
【0019】
そこで駆動装置について図2に基づき説明する。
本発明の電磁駆動装置は基板フレームAEとこの基板フレームに回動自在に軸支されたマグネットロータABと、このマグネットロータの着磁極と対向する位置に磁極(磁気回路)を形成する磁気誘導部材AFと、この磁気誘導部材に磁気を付与する励磁コイルADとで構成される。
【0020】
基板フレームAEは上記各構成部品を組込む形状に構成され、上下一対のプレート部材の間に各構成部品を組込むようにする。この基板フレームAEは樹脂などの非磁性材料で形成し、またフレーム構成はその一方を前述の光量調整装置の基板で兼用しても良い。図示のものは下部フレームAEと上部フレームAAで構成され、上部フレームAAは周囲に側壁を備えたカバー部材で構成してある。
【0021】
次にマグネットロータABは中央に回転軸AB1を有する円筒形状の永久磁石AB2で構成する。永久磁石AB2はその外周を2極(N−S極)に分極着磁し、その中心に回転軸AB1を一体に設け、この回転軸には駆動アームAB3を一体形成する。このマグネットロータABは例えば磁性材料を焼結加工で中空円筒形状に焼成し、これに回転軸AB1と駆動アームAB3とを樹脂のインサート成形で一体形成する。そして外周を2極に分極着磁してN−S極を形成する。また駆動アームAB3には前述のシャッタ羽根SB1、SB2に形成したスリット溝SB3、SB4に係合する駆動アームAB4を一体に設ける。
【0022】
このように構成したマグネットロータABは基板フレームに回動自在に軸承する。図示のものは下部フレームAEに軸受孔AE1が上部フレームAAに軸受孔AA2が設けてあり、ロータABの回転軸AB1の両端をこの各軸受孔に嵌合してある。また前述の基板フレームを構成する下部フレームAEは樹脂などの非磁性材料で形成され、コイル枠AE4、AE5と突起AE2、AE3が一体に設けてある。このコイル枠AE4、AE5には後述する励磁コイルが巻回され、突起AE2、AE3には励磁コイルの保護板ACが係止される。この下部フレームAEには次の構造の磁気誘導部材AFが取付けられている。
【0023】
この磁気誘導部材AFは基板フレームに回動自在に取付けられたマグネットロータABの磁極と少許の間隙(磁気ギャップ)を形成して対向する2つの磁極形成部AF1a、AF2aとコイル巻回部AF1b、AF2bを有する略コ字状の軟磁性部材で構成される。
【0024】
つまり鉄などによる軟磁性材の板状部材の両端を折り曲げて両端部に先端折曲片AF1、AF2を設ける。この一対の折曲片AF1、AF2はマグネットロータの外径より若干大きい間隔で形成され下部フレームAEに形成した係合孔AE8、AE9(図8参照)に嵌合される。この係合孔AE8、AE9はコイル枠AE4、AE5の中心に設けられている。
【0025】
また磁気誘導部材AFには折曲片AF1とAF2とを連結する連結部AF3を有している。従って折曲片AF1の磁極形成部AF1aがN極のときには他方の折曲片AF2の磁極形成部AF2aはS極となるように磁気回路が構成される。また折曲片AF1、AF2にはロータの回転軸AB1に沿ってコイル巻回部AF1b、AF2bと磁極形成部AF1a、AF2aが配置されることとなる。このとき図8に示すように下部フレームAEとマグネットロータABとの間には図示Lのスペースが設けられ、このスペースが励磁コイルを巻回する空間となる。
【0026】
そこで励磁コイルADは中央にコイル枠AE4、AE5に嵌合する孔AD1を有し、図2円周方向に巻回されたコイル線で構成され、このコイルがコイル枠AE4、AE5に嵌合支持される。するとこのコイル枠を介して折曲片AF1、AF2には外周にコイルADが巻回され、コイルへの通電によって生起した磁界で折曲片AF1、AF2は磁化される。
このコイルによる磁化作用で折曲片先端部の磁極形成部AF1a、AF2aにはN−S対向する磁極が形成される。図示ACは励磁コイルADの保護板で非磁性材料で折曲片AF1、AF2を挿通する孔AC1を備え、前述の下部フレームAEに形成した突起AE2、AE3上に当接した状態で上部フレームAAの周側壁に嵌合保持される。
【0027】
次にかかる構成のアクチュエータの組立方法を説明する。下部フレームAEの係合孔AE8、AE9に磁気誘導部材AFの折曲片AF1、AF2を圧入する。するとこの折曲片は下部フレームAEと一体に形成したコイル枠AE4、AE5の中心に形成された係合孔AE8、AE9で保護され磁気誘導部材AFは下部フレームAEに一体に固定される。次いでコイル枠AE4、AE5に別途巻線機で巻回した励磁コイルADの孔AD1を嵌合して組込み、その上に保護板ACを同様にその孔AC1をコイル枠AE4、AE5に嵌合して組込む。そこでこのコイルADと保護板ACとを例えば接着剤でコイル枠AE4、AE5に接合する。
【0028】
次にマグネットロータABの回転軸AB1の下端部を下部フレームAEの軸受孔AE1に嵌合し、この回転軸AB1の上端部を上部フレームAAの軸受孔AA2に嵌合する。このとき上部フレームAAは開口部AA1から駆動アームAB3が外部に突出するように組込み、下部フレームAEと一体化する。
【0029】
この上部フレームと下部フレームの結合はビス止め、或いは一方に突起、他方にこの突起に係合する凹部を形成し弾性変形を利用して両者を結合・離脱させるようにする。また基板AEに固定された励磁コイルADはコイルの巻き始めと巻き終わりの口出線は互いに流れる電流の方向が逆になるように端子AE6、AE7にハンダ付けする。コイルの口出線は図9にAE8、AE9で示す口出端子取付用の孔に仮止めする。これによって作動時の磁極形成部AF1a、AF2aには一方にN極、他方にS極が生起される。
【0030】
次に、図3は図2の状態で組み上げたアクチュエータAXを上方から見た平面図を示すもので、上部フレームAAの開口部AA1から装置外に突出したマグネットロータABの駆動アームAB3が実線位置を境に時計方向の第1の位置O1(シャッタ全開の開放位置)と半時計方向の第2の位置O2(シャッタ全閉の閉鎖位置)との間で往復回転する。尚、図11及び図12で詳述するが、図示実線で示すマグネットロータABの中間位置は説明のために示したもので、アクチュエータAXの励磁コイルADが無通電状態の場合には、無通電状態になった時点でのマグネットロータABの駆動アームAB3の位置により第1の位置O1(シャッタ全開の開放位置)か第2の位置O2(シャッタ全閉の閉鎖位置)に保持され、この実線で示す中間位置はいずれかの位置への通過状態でこの位置に停止することは無い。
【0031】
次に、図4はそのマグネットロータABの永久磁石AB2の中央部位置で切断した平面断面図であって、磁気誘導部材AFの一対の折曲片AF1、AF2の装置内における配置関係は、折曲片AF2の中央部位とマグネットロータABの回転軸AB1の中心を通る基準直線を基準に反時計方向に角度θ(≒18°)変位した位置に折曲片AF1が配置されている。また、マグネットロータABの永久磁石AB2は図示の符号N、Sで示す位置が極頂部でこの方向にN−Sの2極着磁されている。
【0032】
そして、図示の様な中間位置から仮に永久磁石AB2のN磁極部が時計方向に多少でも変位することで、永久磁石AB2のN磁極は折曲片AF1がこの時点でS磁極に励磁コイルAD(図2、図5参照)により励磁され、また折曲片AF2が逆にN磁極に励磁コイルADにより励磁されており、磁気的に折曲片AF2に反発し折曲片AF1に吸引され、マグネットロータABは時計方向に引き続き回転する。また、逆に中間位置から仮に永久磁石AB2のN磁極部が反時計方向に多少でも変位することで、永久磁石AB2のN磁極は折曲片AF1がこの時点でN磁極に励磁コイルADにより励磁され、また折曲片AF2が逆にS磁極に励磁コイルADにより励磁されており、磁気的に折曲片AF1に反発し折曲片AF2に吸引され、マグネットロータABは反時計方向に引き続き回転する。
【0033】
次に図11に基づいてマグネットロータABの磁極と磁気誘導部材AFの折曲片AF1、AF2との位置関係を示す。
【0034】
まずマグネットロータABは図中N−Sで示す位置を極頂点に着磁され、図示反時計方向に角度α1、時計方向に角度α2の範囲内で往復動自在に基板フレームAEに取付けられている。このロータの作動角度は例えば図2に示す上部フレームAAに形成した開口部AA1で駆動アームAB3の駆動アームAB4を規制することによって行う。図示のものは角度α1、α2をそれぞれ約20°、全体の作動角度αを約40°に設定してある。
【0035】
そして折曲片AF1、AF2はその一方とロータの回転軸とを結ぶ直線に対し他方が所定角度θ変位した位置に配置してある。図示の角度θは約18°に設定してある。これはロータのN−S着磁方向と回転軸AB1と折曲片AF1、AF2の磁極形成部AF1a、AF2aとを結ぶ方向とが往復作動域内で一致することが無いように配置することによって駆動アームの作動端でディテントトルクをロータに作用する為である。
【0036】
このように一対の磁気誘導部材をロータの周囲に従来は180°隔てた位置に配置するのに対し、図示のように180度より狭い角度(例えば160度)に配置することによって左右往復動するロータの右限位置と磁極形成部AF1aとの距離が短くなり、コイルの無通電状態でロータは磁気誘導部材によって右限域に保持される。ロータの左限域でも同様に磁極形成部AF2aの左限域に保持されることとなる。
【0037】
図12は図11で示すマグネットロータABの中心を通るX−X断面で、本発明の磁気回路構成を説明するための配置図で、磁気誘導部材AFの一対の折曲片AF1、AF2は連結部AF3の両側端から延在した端部を折り曲げ加工により紙面上方略直角に折り曲げ形成され、同時にその連結部AF3は面打ち加工で板厚が極力薄く成形されている。尚、折り曲げ加工により一対の折曲片AF1、AF2と連結部AF3が一体加工する他、鋳造加工で一体成形しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係わる電磁アクチュエータを用いたカメラ用光量調整装置の斜視図。
【図2】本実施例に係わる電磁アクチュエータ装置の組立分解図。
【図3】図2の装置の上側平面図。
【図4】図2の装置をマグネットロータ中心部で切断した断面図。
【図5】図2の装置を励磁コイル中心部で切断した断面図。
【図6】図2の装置の底面図。
【図7】図2の装置の側面図。
【図8】図7の装置の断面図。
【図9】図2の装置の右側面図。
【図10】図9の装置の側断面図。
【図11】本発明に係わるマグネットロータの磁極と磁気誘導部材の折曲片との位置関係を示す説明図。
【図12】本発明における磁気回路構成の説明図。
【図13】従来のアクチュエータを用いた光量調整装置の概要斜視図。
【図14】図13の装置の断面図。
【符号の説明】
【0039】
AA 上部フレーム
AB マグネットロータ
AB3 駆動アーム
AB4 駆動ピン
AC 保護板
AD 励磁コイル
AE 下部フレーム
AF 磁気誘導部材
AF1、AF2 折曲片
AF1a、AF1b 磁極形成部
AX 電磁アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材と、
上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備え、
上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成され、
このそれぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有し、
この磁極形成部は上記マグネットロータの磁極と対向するように配置され、上記コイル巻回部には上記励磁コイルが配置されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
非磁性体から成る基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記基板フレーム上に突出して取付けられた所定の間隔を有する一対の磁気誘導部材と、
上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備え、
上記一対の磁気誘導部材は両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、
この一対の先端折曲片は、上記基板フレーム上に突出して配置され上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有し、
上記基板フレーム上には上記励磁コイルと上記マグネットロータとがこの順に上方に配置され、
この励磁コイルは上記先端折曲片のコイル巻回部に配置され、
上記マグネットロータは外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記磁気誘導部材の磁極形成部は前記マグネットロータの回転軸を挟んで互いに対向配置され、
この一対の磁極形成部はその一方と上記回転軸とを過ぎる直線に対し他方が所定角度変位した位置で上記マグネットロータと対向するように配置され、
前記マグネットロータの外周に2極着磁された磁極が上記一対の磁気誘導部材と等距離となる位置を中心に所定角度範囲で往復動するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記基板フレームは合成樹脂材料で形成され、
この基板フレームには前記マグネットロータの回転軸を支持する軸受孔と、
前記磁気誘導部材の先端折曲片を貫通させる係合孔と、
この係合孔の周囲に前記励磁コイルを巻廻するコイル枠が一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
光路開口を有する地板と、
この地板に配置され上記光路開口を規制する光量調整部材と、
この光量調整部材を駆動する電磁アクチュエータとを備え、
この電磁アクチュエータは、
基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する磁気誘導部材と、
上記磁気誘導部材に磁気を生起する励磁コイルと、
上記磁気誘導部材を構成する両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材と、
この一対の先端折曲片に形成され上記マグネットロータの磁極と対向するように配置された磁極形成部と、
上記先端折曲片に形成され外周に上記励磁コイルが巻回されるコイル巻回部とから構成されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項6】
光路開口を有する地板と、
この地板に配置され上記光路開口を規制する光量調整部材と、
この光量調整部材を駆動する電磁アクチュエータとを備え、
上記電磁アクチュエータは、
非磁性体から成る基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記基板フレーム上に突出して取付けられ一対の磁極形成部を有する磁気誘導部材と、
上記磁気誘導部材の磁極形成部に磁気を生起する励磁コイルと、
上記磁気誘導部材を構成する両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材と、
この一対の先端折曲片に形成され上記マグネットロータの磁極と対向するように配置された磁極形成部とから構成され、
上記励磁コイルと上記マグネットロータとは上記基板フレーム上にこの順に上方に配置され、
該励磁コイルは上記先端折曲片のコイル巻回部に、上記マグネットロータは外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項1】
基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する一対の磁気誘導部材と、
上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備え、
上記一対の磁気誘導部材は、両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成され、
このそれぞれの先端折曲片は上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有し、
この磁極形成部は上記マグネットロータの磁極と対向するように配置され、上記コイル巻回部には上記励磁コイルが配置されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
非磁性体から成る基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記基板フレーム上に突出して取付けられた所定の間隔を有する一対の磁気誘導部材と、
上記一対の磁気誘導部材それぞれに磁気を生起する励磁コイルとを備え、
上記一対の磁気誘導部材は両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材で構成し、
この一対の先端折曲片は、上記基板フレーム上に突出して配置され上記マグネットロータの回転軸方向に磁極形成部とコイル巻回部とを有し、
上記基板フレーム上には上記励磁コイルと上記マグネットロータとがこの順に上方に配置され、
この励磁コイルは上記先端折曲片のコイル巻回部に配置され、
上記マグネットロータは外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置されていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記磁気誘導部材の磁極形成部は前記マグネットロータの回転軸を挟んで互いに対向配置され、
この一対の磁極形成部はその一方と上記回転軸とを過ぎる直線に対し他方が所定角度変位した位置で上記マグネットロータと対向するように配置され、
前記マグネットロータの外周に2極着磁された磁極が上記一対の磁気誘導部材と等距離となる位置を中心に所定角度範囲で往復動するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記基板フレームは合成樹脂材料で形成され、
この基板フレームには前記マグネットロータの回転軸を支持する軸受孔と、
前記磁気誘導部材の先端折曲片を貫通させる係合孔と、
この係合孔の周囲に前記励磁コイルを巻廻するコイル枠が一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
光路開口を有する地板と、
この地板に配置され上記光路開口を規制する光量調整部材と、
この光量調整部材を駆動する電磁アクチュエータとを備え、
この電磁アクチュエータは、
基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記マグネットロータの磁極と対向する磁極を形成する磁気誘導部材と、
上記磁気誘導部材に磁気を生起する励磁コイルと、
上記磁気誘導部材を構成する両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材と、
この一対の先端折曲片に形成され上記マグネットロータの磁極と対向するように配置された磁極形成部と、
上記先端折曲片に形成され外周に上記励磁コイルが巻回されるコイル巻回部とから構成されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項6】
光路開口を有する地板と、
この地板に配置され上記光路開口を規制する光量調整部材と、
この光量調整部材を駆動する電磁アクチュエータとを備え、
上記電磁アクチュエータは、
非磁性体から成る基板フレームと、
この基板フレームに回動自在に支持され外周に磁極を有する円筒状のマグネットロータと、
上記基板フレーム上に突出して取付けられ一対の磁極形成部を有する磁気誘導部材と、
上記磁気誘導部材の磁極形成部に磁気を生起する励磁コイルと、
上記磁気誘導部材を構成する両端部に先端折曲片を有する略コ字状の軟磁性部材と、
この一対の先端折曲片に形成され上記マグネットロータの磁極と対向するように配置された磁極形成部とから構成され、
上記励磁コイルと上記マグネットロータとは上記基板フレーム上にこの順に上方に配置され、
該励磁コイルは上記先端折曲片のコイル巻回部に、上記マグネットロータは外周に形成された磁極と上記先端折曲片の磁極形成部とが間隙を形成して対向するように配置されていることを特徴とする光量調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図8】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−94660(P2006−94660A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278896(P2004−278896)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
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