説明

電磁アクチュエータ

【課題】回転子の軸受け部を囲むようにして二つの固定子枠の外側に配置されるコイルが、着脱容易であるようにした構成の電磁アクチュエータを提供すること。
【解決手段】第1固定子枠1と第2固定子枠3とで構成された収容室内に、それらの軸受け孔1c,3dに軸受けされて回転子4が配置されている。第1固定子枠1の壁部1bには肉薄部1b−2が形成され、第2固定子枠3の壁部3aにも、肉薄部1b−2と対応するところが、対称的な形状の肉薄部3a−2として形成されている。空芯コイル5は、側方から挿入されて、軸受け孔1c,3dを囲むように配置され、その後、第1固定子枠1にヨーク6を嵌装することによって、取り付け状態となるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を有している回転子を、所定の角度範囲内でだけ往復回転させるようにし、該回転子と一体的に回転する出力部によって、被駆動部材を駆動するようにした電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明で対象としている電磁アクチュエータは、下記の特許文献1の図6及び図7に記載されているタイプのものである。即ち、この種の電磁アクチュエータは、筒状部の一端を塞いでいるような形状をした固定子枠と、その筒状部の他端を塞ぐようにしたもう一つの固定子枠との間で収容室を構成し、その収容室内に、永久磁石を有する回転子を配置している。そして、その回転子には、略径方向へ張り出した腕部が一体的に形成されていて、その腕部に設けられた出力部が、収容室外で被駆動部材を駆動するようになっている。また、上記の二つの固定子枠の外側には、両者にわたって一連となるように環状凹溝が形成されており、そこにコイルを巻回したあと、上記の筒状部の外側に、そのコイルをも包むようにして略円筒形をしたヨークを嵌装させている。そして、回転子は、コイルに供給する電流の方向に対応した方向へ回転力を付与されるようになっている。このような電磁アクチュエータは、これまでは、主としてカメラに内蔵されるレンズシャッタ装置,フォーカルプレンシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,バリア装置などの駆動源として用いられることが多かったが、施錠装置などカメラ関係以外の各種の小型装置の駆動源としても使用することが可能なものである。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2593991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電磁アクチュエータを組み立てるとき、従来は、収容室内で回転子を軸受け状態にした後、治具によって、二つの固定子枠がばらばらにならないように挟み付けておき、二つの固定子枠にわたって一連となるように形成された環状凹溝に、巻線機で、コイルを巻回するようにしていた。そのため、特殊な治具が必要になるほか、治具への着脱作業が面倒であるという問題点があった。また、組立後の検査で、回転子の軸受け状態が不適切であると判明して組み直すときは、分解するためにコイルを切断すると固定子枠を工具で傷付けてしまうため、巻き戻し作業を行なうようにしているが、その作業が非常に面倒であるほか、巻き戻したコイルを巻線機によって再利用することも不可能であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、特許文献1に記載されている上記のタイプの電磁アクチュエータにおいて、二つの固定子枠に対するコイルの取付け作業が極めて簡単であると共に、組立後の分解や再組立が容易に行なえ、コイルの再利用をも可能にした電磁アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の電磁アクチュエータは、永久磁石を有していて略円柱状をしており略径方向へ張り出した一体の腕部に少なくとも一つの出力部を設けている回転子と、前記回転子を収容するため前記回転子の円周面に対向した筒状部と前記回転子の回転軸の一方を軸受けする第1壁部とを有しており該第1壁部は外壁面に形成された直線状の第1段差面を境界として軸受け部を含む第1領域と該軸受け部を含まない第2領域とに分かれていて該第1領域が肉薄に形成されており該筒状部は該第1領域が該第1段差面に対して直交していて前記回転子を間にして引かれた二つの平行線の外側を切り落とした形状に形成されている第1固定子枠と、前記回転子の回転軸の他方を軸受けする第2壁部と該第2壁部から前記回転子の径方向へ延伸して形成され装置への取付部を有する取付け板部とを有していて該第2壁部と前記第1固定子枠との間に前記回転子の収容室を構成しており該第2壁部は外壁面に前記第1段差面と平行になるようにして形成された直線状の第2段差面を境界として前記第1領域に対向する略同じ平面形状の第3領域と前記第2領域に対向する略同じ平面形状の第4領域に分かれていて該第3領域が肉薄に形成されている第2固定子枠と、前記第1段差面と前記第2段差面に当接していて前記二つの軸受け部を囲むようにして前記二つの固定子枠の外側に嵌装されている少なくとも一つの空芯コイルと、前記筒部の外側に前記空芯コイルを包むように嵌装されている筒状のヨークと、を備えているようにする。
【0007】
その場合、前記取付け板部は、前記第3領域から形成されており、該取付け板部は、前記第3領域から前記第2段差面と直交する方向へ前記第3領域と略同じ幅で形成されているようにしてもよい。また、前記取付け板部は、前記第4領域から形成されているようにしてもよい。更に、前記取付け板部は、前記第3領域からと前記第4領域からとの両方に形成されており、前記第3領域から形成されている取付け板部は、前記第3領域から前記第2段差面と直交する方向へ前記第3領域と略同じ幅で形成されているようにしてもよい。
【0008】
また、前記第1壁部と前記第2壁部については、前記第1壁部の方だけを、前記第1領域と前記第2領域とが、同じ厚さに形成されているようにしてもよいし、前記第2壁部の方だけを、前記第3領域と前記第4領域とが、同じ厚さに形成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、特許文献1の図6及び図7に記載されているタイプの電磁アクチュエータにおいて、二つの固定子枠の外側に、空芯コイルを嵌装するように構成したため、従来のような特殊な治具を必要とせず且つコイルの取付け作業が極めて簡単であると共に、組立後の分解や再組立が容易に行なえ、コイルの再利用も可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。また、上記したように、本発明の電磁アクチュエータは、各種の小型製品の駆動源として採用することの可能なものであるが、そのような小型製品の代表的なものに、単独で製品化されるカメラや、携帯電話,パソコンなどの情報端末機器に内蔵されるカメラに組み込まれる各種のコンポーネントがある。そこで、実施例の電磁アクチュエータの説明をした後、それらのコンポーネントの一つであるレンズシャッタ装置(以下、単にシャッタ装置という)に採用されたときの態様も、図面を用いて簡単に説明する。尚、図1は、実施例の電磁アクチュエータを示す平面図であり、図2は、実施例の分解斜視図である。また、図3は、実施例の電磁アクチュエータをカメラ用のシャッタ装置に採用した状態を示す平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものであり、図4は、図3の要部断面図であり、図5は、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。
【実施例】
【0011】
先ず、図1,図2,図4を用いて本実施例の構成を説明する。第1固定子枠1は、合成樹脂製であって、後述する回転子4を収容するために、筒状部1aと、その軸方向の一端を塞ぐようにして形成された壁部1bとによって、全体としてコップ状(図4参照)に形成されており、壁部1bの略中心に軸受け孔1cを有している。そして、壁部1bは、外壁面に形成された直線状の段差面1b−1を境界として、軸受け孔1cを含む部位と軸受け孔1cを含まない部位とに分かれており、軸受け孔1cを含む部位が肉薄部1b−2として形成され、軸受け孔1cを含まない部位が肉厚部1b−3として形成されている。
【0012】
筒状部1aは、壁部1bの段差面1b−1よりも肉薄部1b−2側になる部位が、段差面1b−1に対して直交していて後述の回転子4を間にして引かれた二つの平行線の外側を切り落とした形状に形成されている。そして、この筒状部1aの下方部には、図2に分かりやすく示されているように、後述のヨーク6を嵌装する際にストッパの役目をする複数の円弧状をした段差面1a−1が形成されており、下端部には、図4に断面形状が明示されているフック部1a−2を形成している。また、図2において、筒状部1aの左側には切欠き部1a−3も形成されている。そして、この第1固定子枠1には、四つの溝孔1dが形成されており、それらに4本の磁性体棒2が圧入されている。
【0013】
第2固定子枠3は、合成樹脂製であって全体として平板状をしており、上記の壁部1bに対向している壁部3aと、その両側に延伸して形成された二つの取付け板部3b,3cとを有しており、壁部3aと第1固定子枠1との間に後述する回転子の収容室を構成している。そして、壁部3aは、略中心に軸受け孔3dを有している。また、図1及び図2からは分からないが図4から形状が推察できるように、壁部3aの外壁面(図2,図4における下方の面)には、第1固定子枠1の段差面1b−1と平行になるようにして段差面3a−1が形成されており、その直線状の段差面3a−1を境界にして、第1固定子枠1の肉薄部1b−2と対向する部位が、収容室側を残した肉薄部3a−2として形成され、第1固定子枠1の肉薄部1b−3と対向する部位が、肉厚部3a−3として形成されている。
【0014】
また、二つの取付け板部3b,3cのうち、取付け板部3bは、第1固定子1とは反対側の面が、肉薄部3a−2の収容室外側の面と略同じ平面であって、肉薄部1b−2,3a−2と略同じ幅に形成されており、逃げ孔3b−1,位置決め孔3b−2,取付孔3b−3を有している。また、取付け板部3cは、取付け板部3bよりも厚く形成されていて、位置決め孔3c−1,取付孔3c−2,大きな逃げ孔3c−3を有している。
【0015】
尚、本実施例では、取付け板部3bの、第1固定子1とは反対側の面が、肉薄部3a−2の収容室外側の面と略同じになっているが、本発明は、このような形状に限定されず、もっと第1固定子1側となるように形成しても構わない。また、取付け板部3bの幅は、本実施例の幅より狭くしても構わない。更に、本実施例の取付け板部3b,3cには、いずれも取付孔3b−3,3c−2が形成されているが、この種の電磁アクチュエータの場合には、取付孔を形成せず、装置のフック部に掛け止めするだけのものや、一方だけは装置にビス止めするが、他方は装置のフック部で掛け止めしたり、他の部材によって装置に押し付けているだけにしたものも知られている。従って、本発明の第2固定子枠3は、それらのように構成されたものも含まれる。
【0016】
第1固定子枠1と第2固定子枠3によって構成されている収容室には、回転子4が収容されている。この回転子4は、回転軸となる回転軸部4aと、図4に示すようにその回転軸部4aから略径方向下側に延伸するように形成された腕部4bと、収容室外において腕部4bの先端に形成された出力ピン4cとが合成樹脂で一体成形されており、回転軸部4aの周囲には、円筒形をしていて径方向に2極に着磁された永久磁石4dが固定されている。そして、この回転子4は、回転軸部4aの一端を第1固定子枠1の軸受け孔1cに回転可能に嵌合させ、他端を第2固定子枠3の軸受け孔3dに回転可能に嵌合させている。
【0017】
尚、本実施例の回転子4は、回転軸部4aと、腕部4bと、出力ピン4cとを合成樹脂製にしているが、それらを永久磁石製にしても構わない。また、本実施例においては、軸受け孔1c,3dを貫通孔として形成しているが、本発明の軸受け部の構成は、このような構成に限定されない。即ち、それらの軸受け孔1c,3dを有底孔(盲孔)としても構わない。また、軸受け孔1c,3dの形成部位に軸を形成し、回転軸部4aの両端部位に、それらの軸を回転可能に嵌合させるための孔を形成するようにしても構わない。更に、本実施例においては、腕部4bが、径方向に延伸して形成されているとはいえ、図4から分かるように、斜め下方に向かって形成されているが、もっと水平に近くなるように形成したり、水平に形成したりしても構わない。
【0018】
このようにして、回転子4を軸受けしている二つの固定子枠1,3の外側には、周知のように予め熱処理加工などによって四角い環状に成形された空芯コイル5が嵌装されている。そして、この空芯コイル5の嵌装は、次のようにして行なわれている。先ず、回転子4を二つの軸受け孔1c,3dに軸受けさせつつ、第1固定子枠1のフック部1a−2を第2固定子枠3の逃げ孔3b−1に挿入し、そのフック部1a−2を逃げ孔3b−1の縁に引っ掛けた状態にしておく。次に、空芯コイル5を図1及び図2の右側から左方向へ移動させてゆき、最初は取付け板部3bだけをくぐらせ、その後、固定子枠1,3の肉薄部1b−2,3a−2を、空芯コイル5が段差面1b−1,3a−1に当接するまでくぐらせるようにしている。
【0019】
空芯コイル5を嵌装した外側には、第1固定子枠1の筒状部1aと空芯コイル5を包むようにして、円筒形をしたヨーク6が、図2の上方から、筒状部1aの下方部に形成された複数の段差面1a−1に当接するまで嵌め込まれている。そして、本実施例の場合には、このヨーク6の嵌装によって、空芯コイル5が、がたつかないようになっている。
【0020】
このように、本実施例の電磁アクチュエータは、従来のように、二つの固定子枠1,3に、巻線機でコイルを巻回するのではなく、空芯コイル5を嵌装できるように構成しているので、組立作業が極めて容易になっている。また、組立後の検査で不具合が発見された場合や修理をする場合には、従来のようにコイルを最後まで巻き戻す必要がなく、空芯コイル5をそのまま移動させて外すだけであるから非常に簡単であり、外した空芯コイル5は、再組立に際して利用することも可能になっている。
【0021】
尚、本実施例の場合には、二つの固定子枠1,3に、いずれも肉薄部1b−2,3a−2を形成しているが、いずれか一方に肉薄部を形成するだけであっても、本発明の目的を達成することができる。また、本実施例の第1固定子1に形成されている筒状部1aは、回転子4の円周面を360度にわたって囲むように形成されているが、従来のこの種の電磁アクチュエータの構成においては、巻回されているコイルと回転子の円周面を接近させるために、図2において二点鎖線で示したような欠落部を、回転子を挟んで2箇所に形成し、そこから回転子が見えるようにしたものが知られている。そのため、本実施例の筒状部1aに、そのような欠落部を形成したものも、本発明の第1固定子枠である。
【0022】
本実施例の電磁アクチュエータの作動は、この種の周知の電磁アクチュエータの場合と同じであって、回転子4は、空芯コイル5に対して一方方向へ電流を供給すると、所定の角度範囲内で、第1位置から第2位置まで回転し、その後、電流の供給方向を逆にすると、回転子4は、第2位置から第1位置まで逆回転するようになっている。ところで、この種の電磁アクチュエータは、回転子4が途中位置まで回転したときに、空芯コイル5に対する通電を断つと、回転子4は、その途中位置で安定した停止状態を維持することができなくなってしまう。そのため、このままの構成では、被駆動部材を途中位置で停止させたい場合に、採用することができない。
【0023】
そこで、回転子4を途中位置で確実に停止させられるようにするために、二つの方法が知られている。その一つは、第1固定子枠1の筒状部1aの外面に凹部を形成して、ヨーク6との間にホール素子などの磁気感応素子を取り付けておくようにし、回転子4が所定の回転位置に達したことを検出すると、空芯コイル5に対する電流値や電流の供給方向を適宜制御して、見かけ上は停止しているようにすることである。そのため、本発明の電磁アクチュエータは、そのように磁気感応素子を取り付けたものであっても構わない。
【0024】
もう一つの方法は、空芯コイル5のほかに、もう一つの空芯コイルを一緒に嵌装しておき、空芯コイル5には回転子4に第2位置に向けて回転する力を与えるように電流を供給し、他方の空芯コイルには回転子4に第1位置へ向けて回転する力を与えるように電流を供給するようにすることである。それによって、両者の回転力に差を生じさせれば、回転子4をいずれか一方へ回転させることができるし、両者の回転力をバランスさせれば、所定の途中位置で停止させることが可能になる。そのため、本発明の電磁アクチュエータにおいては、そのように二つの空芯コイルを嵌装するようにしても構わない。
【0025】
更に、本実施例の場合には、回転子4の腕部4bの先端に、回転子4の回転軸と平行になるようにして出力ピン4cを設けているが、本発明は、出力ピンを回転子の回転軸と直交するようにして設けてもよい。また、この種の電磁アクチュエータには、特開2007−256721号公報に記載されているように、一つの腕部に出力ピンを二つ設けているものも知られているが、本発明には、そのように構成したものも含まれる。また、本実施例の場合は、出力部として出力ピン4cを設けているが、本発明の出力部は、そのような出力ピンに限定されず、腕部4bを回転子4の回転軸と直交するように形成していて、出力部は、その先端に設けられた部分歯車であるようにしてもよい。
【0026】
次に、図3〜図5を用いて、本実施例の電磁アクチュエータが、カメラ用のシャッタ装置に採用されたときの一例を説明するが、電磁アクチュエータの構成については既に詳しく説明してあるため、図3及び図5においては、必要最小限の部材部位にだけ符号を付けてある。図3に示されているカメラ用のシャッタ装置は、一般にレンズシャッタと言われているタイプのシャッタ装置である。地板11は、略中央部に、被写体光路となる円形の開口部11aを有している。また、地板11の背面側には、所定の間隔を空けて、地板11と略同じ形状をしているカバー板12が、三つのビス13によって取り付けられていて、両者の間に羽根室を構成している。そして、そのカバー板12にも、上記の開口部11aと重なるところに、開口部11aよりも直径の大きな開口部12aが形成されている。
【0027】
地板11の羽根室側の面には、二つの羽根取付軸11b,11cが立設されていて、それらの先端は、カバー板12に形成された孔から羽根室外へ突き出ている。また、地板11の羽根室側の面には、断面が半月状をした四つのストッパ軸11d,11e,11f,11gが立設されていて、それらの先端は、カバー板12に形成された孔から羽根室外へ突き出ている。そして、羽根室内には2枚のシャッタ羽根14,15が配置されている。地板11側に配置されているシャッタ羽根14は、上記の羽根取付軸11bに回転可能に取り付けられており、符号を省略してある周知の長孔と、上記のストッパ軸11fに当接する張出部14aを有している。また、カバー板12側に配置されているシャッタ羽根15は、上記の羽根取付軸11cに回転可能に取り付けられており、符号を省略してある周知の長孔と、上記のストッパ軸11gに当接する張出部15aを有している。
【0028】
本実施例の電磁アクチュエータは、羽根室外において、地板11に立設された位置決めピン11h,11iに、上記の第2固定子枠3の位置決め孔3b−2,3c−1を嵌合させ、第2固定子枠3の取付孔3b−3,3c−2からビス16,17をねじ込んで、地板11に取り付けられている。そして、このとき、上記の出力ピン4cは、第2固定子枠3の逃げ孔3c−3と同じ形状に形成された地板11の逃げ孔11jを貫通し、羽根室内で、2枚のシャッタ羽根14,15に形成された符号を付けていない周知の長孔に嵌合しており、その先端を、逃げ孔3c−3,11jと同じ形状に形成されたカバー板12の逃げ孔12bから羽根室外へ突き出している。
【0029】
このように構成されたシャッタ装置は、周知のように、フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも採用することが可能であるが、それらのうち、デジタルカメラに採用された場合の作動を簡単に説明しておく。図3に示されている状態は、シャッタ羽根14,15が開口部11aを全開にしている撮影待機状態である。そのため、被写体光が開口部11aを通過して固体撮像素子に当たっており、撮影者は、モニターによって、被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、電磁アクチュエータの空芯コイル5には電流が供給されていないが、周知のように、回転子4の永久磁石4dと4本の磁性体棒2との間に作用する永久磁石4dの磁力によって、回転子4には反時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、出力ピン4cによって、シャッタ羽根14には反時計方向へ回転する力が与えられ、シャッタ羽根15には時計方向へ回転する力が与えられているが、それらの回転は、ストッパ軸11d,11eによって阻止され、この状態が維持されている。
【0030】
この状態でカメラのレリーズボタンを押すと、露光制御回路からの信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その後、あらたに撮影のための電荷の蓄積が開始(撮影のための露光開始)される。そして、被写体の輝度に対応した所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、空芯コイル5に対して順方向の通電が行われ、回転子4は時計方向へ回転させられる。そのため、出力ピン4cは、シャッタ羽根14を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根15を反時計方向へ回転させて、開口部11aを閉じさせる。そして、シャッタ羽根14,15は、開口部11aを完全に閉鎖した直後に、それらの張出部14a,15aがストッパ軸11f,11gに当接することによって、閉じ作動を終了する。図5は、そのときの状態を示したものである。
【0031】
このようにして、シャッタ羽根14,15の閉じ作動が終了すると、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、空芯コイル5対して、先ほどとは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子4は図5において反時計方向へ回転させられ、出力ピン4cによって、シャッタ羽根14を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根15を時計方向へ回転させて、開口部11aの開き作動を行わせる。その後、シャッタ羽根14,15は、開口部11aを全開にすると、その直後に、ストッパ軸11d,11eに当接して開き作動を停止させられる。そして、空芯コイル5に対する通電が断たれると、図3に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0032】
尚、この構成例は、本実施例の電磁アクチュエータを、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置の駆動源として採用したものであるが、この基本構成は、撮影レンズを保護するためのレンズバリア装置として使用することも可能である。また、本実施例の2枚のシャッタ羽根14,15のうち、一方を大きくして他方を省けば、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置になるし、その1枚のシャッタ羽根に開口部11aよりも小さい開口部を形成することによって絞り羽根にすれば、絞り装置にもなる。更に、その開口部11aよりも小さい開口部をフィルタシートで覆うことによってフィルタ羽根にすれば、フィルタ装置にもなる。本実施例の電磁アクチュエータは、このように、種々のカメラ用装置の駆動源として採用できるほか、施錠装置などのカメラ関連以外の各種の小型装置用の駆動源としても採用することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の電磁アクチュエータを示す平面図である。
【図2】実施例の分解斜視図である。
【図3】実施例の電磁アクチュエータをカメラ用のシャッタ装置に採用した状態を示す平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図4】図3の要部断面図である。
【図5】実施例の電磁アクチュエータをカメラ用のシャッタ装置に採用した状態を示した平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【符号の説明】
【0034】
1 第1固定子枠
1a 筒状部
1a−1,1b−1,3a−1 段差面
1a−2 フック部
1a−3 切欠き部
1b,3a 壁部
1b−2,3a−2 肉薄部
1b−3,3a−3 肉厚部
1c,3d 軸受け孔
1d 溝孔
2 磁性体棒
3 第2固定子枠
3b,3c 取付け板部
3b−1,3c−3,11j,12b 逃げ孔
3b−2,3c−1 位置決め孔
3b−3,3c−2 取付孔
4 回転子
4a 回転軸部
4b 腕部
4c 出力ピン
4d 永久磁石
5 空芯コイル
6 ヨーク
11 地板
11a,12a 開口部
11b,11c 羽根取付軸
11d,11e,11f,11g ストッパ軸
11h,11i 位置決めピン
12 カバー板
13,16,17 ビス
14,15 シャッタ羽根
14a,15a 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有していて略円柱状をしており略径方向へ張り出した一体の腕部に少なくとも一つの出力部を設けている回転子と、
前記回転子を収容するため前記回転子の円周面に対向した筒状部と前記回転子の回転軸の一方を軸受けする第1壁部とを有しており該第1壁部は外壁面に形成された直線状の第1段差面を境界として軸受け部を含む第1領域と該軸受け部を含まない第2領域とに分かれていて該第1領域が肉薄に形成されており該筒状部は該第1領域が該第1段差面に対して直交していて前記回転子を間にして引かれた二つの平行線の外側を切り落とした形状に形成されている第1固定子枠と、
前記回転子の回転軸の他方を軸受けする第2壁部と該第2壁部から前記回転子の径方向へ延伸して形成され装置への取付部を有する取付け板部とを有していて該第2壁部と前記第1固定子枠との間に前記回転子の収容室を構成しており該第2壁部は外壁面に前記第1段差面と平行になるようにして形成された直線状の第2段差面を境界として前記第1領域に対向する略同じ平面形状の第3領域と前記第2領域に対向する略同じ平面形状の第4領域に分かれていて該第3領域が肉薄に形成されている第2固定子枠と、
前記第1段差面と前記第2段差面に当接していて前記二つの軸受け部を囲むようにして前記二つの固定子枠の外側に嵌装されている少なくとも一つの空芯コイルと、
前記筒部の外側に前記空芯コイルを包むように嵌装されている筒状のヨークと、
を備えていることを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記取付け板部は、前記第3領域から形成されており、該取付け板部は、前記第3領域から前記第2段差面と直交する方向へ前記第3領域と略同じ幅で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記取付け板部は、前記第4領域から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記取付け板部は、前記第3領域からと前記第4領域からとの両方に形成されており、前記第3領域から形成されている取付け板部は、前記第3領域から前記第2段差面と直交する方向へ前記第3領域と略同じ幅で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記第1壁部は、前記第1領域と前記第2領域とが、同じ厚さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記第2壁部は、前記第3領域と前記第4領域とが、同じ厚さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁アクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−247130(P2009−247130A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91337(P2008−91337)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】