説明

電磁シールド管、シールドケーブルの構造、および電磁シールド管の曲げ加工方法

【課題】 腐食や表面の凹み等が生じにくく、高いシールド性と形状保持性とを備えた電磁シールド管およびシールドケーブルを提供する。
【解決手段】 シールドケーブル1は、主に電磁シールド管3、端子7、電線9等から構成される。電磁シールド管3内部には、電線9が挿通される。被覆線である電線9の両端部には、端子7が接続される。なお、本発明においては、電線9に端子7が接続されたものをシールドケーブルと称するものとする。電磁シールド管3は、樹脂製の内層11、金属製の金属層13、樹脂製の外層15から構成される。電磁シールド管3は、最内層に内層11、最外層に外層15、内層11および外層15の間に金属層13が形成されて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電線が通線される電磁シールド管、これを用いたシールドケーブルの構造、および電磁シールド管の曲げ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルの保護管としては、鋼管やアルミニウムパイプなどの金属管や樹脂製のコルゲート管が用いられている。この際、保護管に収容されるケーブルから発生するノイズの影響や、外部からのノイズが内部のケーブルに与える影響が問題となる場合がある。例えば、ハイブリッド自動車においては、インバータ装置からの三相交流出力を駆動モータに供給するケーブルを保護するため、車体の下部等に車体の形状に合わせて保護管が配管される。この際、ケーブルから発生するノイズによってラジオ等に雑音が入ることから、シールド対策が必要である。
【0003】
このような保護管としては、金属製であって、耐久性の向上のため、最外層をステンレンス層として、他層を鉄製とした金属管がある(特許文献1)。
【0004】
また、樹脂製のコルゲート管に、金属層をめっきによって形成したコルゲート管がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−81158号公報
【特許文献2】特開平9−298382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような金属管は、金属製であるため重さの問題がある。この対策として金属管の肉厚を薄くすると、屈曲させた際に、屈曲部が潰れて偏平化し、所定の内径を確保することが困難となる。また、ある程度の肉厚を必要とするため、曲げ加工に大型の加工機が必要となる。このため、必ずしも製品形状への加工性が良いとは言えない。
【0007】
また、金属管は、外面に石はね等で衝撃が加えられた際に、容易に凹みが形成されるおそれがある。また、特許文献1のようにステンレスを用いると、高価となる。また、このような保護管は、外部からの水の付着のみではなく、内部にも結露等によって水分が付着する恐れがあり、最外層にのみステンレス層を形成したとしても、完全に腐食の問題が解消されるわけではない。
【0008】
また、特許文献2のような樹脂製のコルゲートチューブに無電解メッキ法を用いて金属層を形成する方法では、シールド性を発揮する金属層の厚みに限界があり、高いシールド特性と、金属層と樹脂層との密着性を両立することが困難である。また、樹脂製のコルゲートチューブは、通常可撓性を有するため、車両への固定に際しては、コルゲート管を車両の所定の位置に配置して位置を合わせながら所定部位を固定していく必要がある。このため、固定部品を多数要し、コルゲート管の車両への敷設固定の作業性に劣る。
【0009】
また、めっきによって樹脂コルゲート管に金属層を付着させるため、めっきの剥がれやめっきの腐食等の問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、腐食や表面の凹み等が生じにくく、高いシールド性と形状保持性とを備えた電磁シールド管、シールドケーブルの構造、および電磁シールド管の曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、内部に電線を挿通可能な電磁シールド管であって、樹脂製の内層と、前記内層の外周に形成される金属層と、前記金属層の外周に形成される樹脂製の外層と、を具備し、前記電磁シールド管は、前記内層と前記金属層と前記外層とが一体で形成される複合管であり、前記電磁シールド管は、前記電磁シールド管を曲げた後、前記金属層の塑性変形後の剛性が、前記内層および前記外層の弾性変形に伴う復元力に打ち勝つことにより、屈曲形状を保持することが可能な形状保持性を有することを特徴とする電磁シールド管である。
【0012】
前記金属層は、金属製の帯状部材の両端がラップ部で重ね合わさって形成されてもよく、前記ラップ部では、前記帯状部材の両端部の対向面が互いに直接接合せずに接触して筒状に形成されても良いが、ラップ部の一部を接合して形成しても良い。
【0013】
前記内層および前記外層の少なくとも一方の厚みが、前記金属層の厚みよりも厚いことが望ましい。前記外層が前記内層よりも厚いあるいは外層と内層の厚さが等しいことが望ましい。前記金属層は、アルミニウムで形成されることが望ましい。
【0014】
前記外層は、難燃性または耐候性の少なくとも一方を向上させる添加剤を含有し、かつ、必用に応じて前記外層には着色を目的とした顔料が添加されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、内部に金属層が形成されるため、内部に挿通する電線に対してシールド性を発揮することができる。また、内外層を樹脂製とし、中間層として金属層を形成するため、電磁シールド管の内面および外面に金属層が露出せず、電磁シールド管が腐食することがない。
【0016】
また、樹脂層が断熱性を有するため、管内で結露が生じにくく、結露した水により、内部の電線の絶縁破壊等の問題もない。
【0017】
また、金属層は、シールド性および形状保持性を確保するための最低限の厚みでよく、全体を金属層とする場合と比較して、曲げ加工が容易であり、金属管の曲げ加工で用いるような大型の油圧ベンダ等を用いることなく、手加工や小型の手動ベンダ等の簡易な装置で曲げ加工を行うことができる。
【0018】
また、従来のコルゲート管のような樹脂にめっき等による金属層を形成するのではなく、全体として形状保持性(複合管を曲げた際に、曲げた状態の形状を保持し、管を塑性変形させるだけの外力が付与されなければ元の形状に戻ることがない)を有するため、あらかじめ車両への固定レイアウトに合わせて形状を加工することが可能である。したがって、電磁シールド管の敷設作業性に優れる。
【0019】
また、特に金属層の内外層側に樹脂層が設けられるため、屈曲部において金属層が内部に潰れて偏平化することがない。また、全体として、略樹脂で構成されるため、全体を金属で構成するものと比較して、軽量化を達成することができる。特に、金属層の厚みを薄くし、内層または外層の厚みを厚くすることで、上述したような効果をより確実に得ることができる。
【0020】
また、外周に石などが衝突しても、弾性のある樹脂製の外層によって金属層に凹み等が生じることがない。
【0021】
なお、このような金属層は金属製の帯状部材を円状にフォーミングして形成することで、製造が容易である。また、帯状部材の端部を互いに突き合わせて当接させるか、あるいはラップ部を形成してラップ部の少なくとも一部を互いに接触させることで、ノイズの漏れもない。また、金属層は金属製の薄肉の帯状部材からなるので、曲げ加工時の曲げ性に優れる。すなわち、前述した曲げ時の偏平化等を防止することができる。
【0022】
また、外層の樹脂にのみ、難燃性、耐候性等を高めるための添加剤を添加することで、パイプ全体に対して添加する場合と比較して、必要最低限の添加量で当該効果を得ることができる。同様に、外層の樹脂のみを黄色やオレンジなどの顔料を添加することで、シールド層が高圧用か低圧用かを区別することができる。
さらに、外層の樹脂の金属層のラップ部は、着色時又は着色後に、外層樹脂の金属層のラップ部又はラップ部の中央に目印のための着色を行うことができる。ここで、ラップ部(ラップ部の円周方向位置)が曲げ加工面(曲げ加工されたシールド管の加工部が形成する平面)に含まれるように曲げを行うと、結局金属層が2層に重なったラップ部が外周又は内周として曲げることになることから、曲げ加工後の金属層の剛性を高めることができるので、曲げ加工を行う際には、少なくとも、このような曲げ部を含むように曲げることが望ましい。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる電磁シールド管を用い、前記電磁シールド管の内部に電線が挿通され、前記電磁シールド管の両端には前記電線と接続される端子部が設けられることを特徴とするシールドケーブルの構造である。前記電磁シールド管の外周には、樹脂製の波付管が被せられてもよい。
【0024】
第2の発明によれば、電磁シールド管が形状保持性を有するため、容易にシールドケーブルを敷設することができる。
また、第3の発明は。上記に記載の発明の記載の電磁シールド管を曲げ加工する場合に、金属層のラップ部を曲げ加工面に含むように曲げ加工を行うことを特徴とする電磁シールド管の曲げ加工方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、腐食や表面の凹み等が生じにくく、高いシールド性と形状保持性とを備えた電磁シールド管、シールドケーブルの構造および電磁シールド管の曲げ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シールドケーブル1を示す図。
【図2】電磁シールド管3を示す図で、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図3】シールド管3の他の実施形態を示す図。
【図4】シールドケーブルの敷設状態を示す図。
【図5】シールドケーブルの他の敷設状態を示す図。
【図6】外管21が設けられたシールドケーブルの例を示す図。
【図7】(a)は電磁シールド管3aを示す図、(b)は電磁シールド管3bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態にかかるシールドケーブル1について説明する。図1は、シールドケーブル1を示す図である。シールドケーブル1は、主に電磁シールド管3、端子7、電線9等から構成される。
【0028】
電磁シールド管3内部には、電線9が挿通される。被覆線である電線9の両端部には、端子7が接続される。なお、本発明においては、電線9に端子7が接続されたものをシールドケーブルの構造と称するものとする。
【0029】
図2は、電磁シールド管3を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は断面図である。電磁シールド管3は、樹脂製の内層11、金属製の金属層13、樹脂製の外層15から構成される。電磁シールド管3は、最内層に内層11、最外層に外層15、内層11および外層15の間に金属層13が形成されて構成される。
【0030】
内層11と外層15を構成する樹脂は、いずれも同じ樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂から選択することができる。なお、樹脂は架橋や変性してもよい。例えば、耐熱性を向上させるために架橋されていてもよいし、接着性を向上させるためにマレイン酸変性されていてもよい。また、ハロゲン系、リン系、金属水和物等の難燃剤を添加してもよく、酸化チタン等を添加して耐候性を向上させてもよい。
【0031】
なお、このような難燃剤や耐候性を向上させるための添加剤等は、外層15を構成する樹脂にのみ添加してもよい。すなわち、難燃性や耐候性を必要としない内層11の樹脂には添加しなくてもよい。
【0032】
また、外層15を構成する樹脂には、着色を目的とした顔料等を添加してもよい。通常、自動車等の高電圧ケーブルとして用いる場合には、他の一般的な保護管等と安全性の観点から区別する必要がある。例えば、このような高電圧線の保護管のみに着色を施す必要がある。しかしながら、ケーブル保護管の外部のメッキ層があるため、このような着色が困難である。例えば、従来の保護管の表面を単に塗装をしたのでは、塗装が剥離する恐れがある。
【0033】
これに対し、本発明では最外層が樹脂で構成されるため、樹脂自体を着色することが可能である。したがって、外層15のみを着色することで、外観に優れ、周囲の配管との識別等が可能となる。この場合でも、内層11の樹脂には着色は不要である。
【0034】
金属層13は、シールド効果を得ることが可能であれば、銅や鉄を用いてもよいが、軽量化やコスト等を考慮すると、アルミニウム製(アルミニウム合金を含む)とすることが望ましい。
【0035】
内層11、外層15の少なくともいずれか一方は、金属層13よりも厚く形成される。例えば、図示したように、金属層13よりも内層11、外層15の両方を厚くすることもできる。このようにすることで、特に屈曲時のシールド管3の偏平化を防止することができる。すなわち、内層11を十分に厚くすることで、金属層13が内側に偏平化することを防ぐことができ、外層15を十分に厚くすることで、金属層13が偏平化することを防止することができる。例えば、金属層13が曲げられて、金属層の曲げ加工部の外周がつぶれて、金属層の曲げ加工面方向と一致する直径が減少し、曲げ加工面方向と直交する方向の直径が増加して偏平化しようとしても、外層15は、曲げ加工前の円形に戻そうとする作用を金属層13に付与し、金属層13の偏平化を防止することができる。
【0036】
なお、金属層13の厚みは、必要なシールド特性を得ることができるとともに、内層11、外層15を形成した電磁シールド管3を曲げた際に、曲げられた状態における金属層13の剛性が、内層11および外層15が元の状態に戻ろうとする復元力よりも大きくなるように設定される。すなわち、電磁シールド管3の曲げ加工を行うと、内部の金属層13が塑性変形し、内層11および外層15は自らの可撓性によって弾性変形する。これに対し、内層11および外層15の弾性変形に伴う復元力よりも、曲げられた状態での金属層13の剛性が大きければ、可撓管3は曲げられた状態での形状を保持することができる。
【0037】
次に、電磁シールド管3の製造方法について説明する。まず、内層11となる樹脂管を押出加工等で製造する。次に、金属層13を構成する帯状部材である金属薄板(金属シート含む)を、フォーミング加工しつつ、一部がラップするように内層11の樹脂管の外周に送り筒状にする。以上により内層11の樹脂管の外周に金属層13を形成する。さらに、金属層13の外周に外層樹脂を押出被覆して、電磁シールド管3が完成する。
【0038】
このように製造することで、図2(b)に示すように、金属層13の一部にはラップ部17が形成される。なお、ラップ部17は、外層15が被覆される際に外側から押し付けられるため、ラップ部の金属薄板の端部同士は確実に接触する。したがって、図に示す断面において、シールド層を形成する金属層13には隙間が形成されることがない。
【0039】
なお、ラップ部17においては、外層15による被覆の前に、ラップ部17の少なくとも一部をバット溶接や超音波溶接等によって接合してもよく、このような接合を行わずに、単に接触している状態とすることもできる。また、ラップ部17の一部を直接当接させ、他の一部を接着剤によって接着してもよい。いずれの方法であっても、金属層13が周方向で連続(導通)していることが望ましい。このようにすることで、確実にシールド性を確保することができる。
【0040】
また、ラップ部17を形成せずに、図3に示すように、突き合わせ溶接を行ってもよい。この場合、金属薄板を筒状にして、金属薄板の端部同士(突き合わせ部18)を突き合わせ、突き合わせ部18を溶接により接合すればよい。この場合でも、金属層13が周方向で連続するため、確実にシールド性を確保することができる。尚、電磁シールド性を確保するためには、金属帯板の端部が円周方向のいずれかの位置で、接合または接触していることが望ましいが、多少のシールド性の低下を許容する場合は、必ずしも接触していなくても良い。
【0041】
なお、ラップ部17を接合しないで、金属薄板の端部同士が接触しているのみであれば、電磁シールド管3の曲げ加工時に、ラップ部17において、端部同士が互いの接触面において摺動することができる。すなわち、曲げ変形にともない、ラップ部17がわずかに周方向に開き、または閉じることができるため、変形を吸収し、金属層13の偏平化を防止することができる。なお、ラップ部17のラップ長は、電磁シールド管3の最大曲げ部(最小曲げ半径部)における曲げ加工で、ラップ部17が開いて金属層13に隙間が生じない範囲で設定すればよい。
【0042】
このような電磁シールド管としては、例えば、内径20mm、内層11の厚みを0.5mm、金属層13の厚みを0.5mm、外層15の厚みを1mmとし外径24mmのものを使用することができる。内層11および外層15をポリプロピレンとし、金属層13をアルミニウムとしたこのような電磁シールド管3は、手動ベンダで容易に曲げ加工を行うことができる。
【0043】
また、内層11と金属層13との間、または、金属層13と外層15との間には、それぞれ接着層等を設けてもよい。ここで、本発明において、内層の外周に形成される金属層とは、内層11と金属層13とが必ずしも直接接触していることに限られず、内層11と金属層13との間に別層が形成されている場合も含むものである。
【0044】
同様に、金属層の外周に形成される樹脂製の外層とは、金属層13と外層15とが必ずしも直接接触していることに限られず、金属層13と外層15との間に別層が形成されている場合も含むものである。
【0045】
また、内層と金属層と外層とが一体で形成されるとは、内層11、金属層13、外層15の各層同士が直接接触して一体化されているもののみではなく、内層11と金属層13との間または金属層13と外層15との間に別層が形成された場合でも、それぞれの層同士が一体化していることを含むものである。例えば、内層11と金属層13との間、または、金属層13と外層15との間に接着層を設けた場合のように、全体として一体化されているものを含むものである。
【0046】
次に、本発明のシールドケーブル1を用いたシールドケーブル敷設構造について説明する。図4(a)は、シールドケーブル敷設構造を示す図であり、図4(b)はシールドケーブル1の断面図である。なお、敷設されるシールドケーブルの形態は、図示した例に限られない。
【0047】
シールドケーブル1は、例えば自動車の下部に、所定のレイアウトで敷設され、車体等に所定間隔で固定される。この際、シールドケーブル1の所定の部位は、あらかじめ所定の曲率で曲げられて、部分的に固定部材19によって車両に固定される。なお、このような屈曲部は、必ずしも図示したような曲げ形態に限られず、レイアウトに応じて適宜曲げ角度や曲げ半径が設定される。
【0048】
シールドケーブル1内部には、例えば高圧電線である電線9が挿通される。なお、図示した例では、電線9が2本挿通される例を示すが、本発明はこれに限られない。
【0049】
シールドケーブル敷設構造としては、例えば、前述したシールドケーブル(内径20mm)に8mm径の電線9を二本挿通し、一方の端部(端子)がインバータ(図示を省略)に接続され、他方の端部(端子)がモータ(図示を省略)等に接続される。なお、金属層13は、インバータが収容される導電性のシールドケース(図示を省略)に電気的に接続される。
【0050】
ここで、シールドケーブル(電磁シールド管)の曲げ方向としては、ラップ部17が曲げ加工面にあたるようにすることが望ましい。ここで、曲げ加工面にあたるとは、曲げた際の電磁シールド管の曲げ加工部の外周部または内周部にラップ部が位置するように曲げることが望ましい。このようにすることで、電磁シールド管を曲げた際に、曲げ部の剛性を高くすることができる。このため、シールドケーブル(電磁シールド管)の形状保持性をより高めることができる。
【0051】
以上、本実施の形態によれば、中間層に金属層13が設けられるため、シールド性を有する。また、内層11、金属層13、外層15が一体で形成されるため、それぞれの軸方向の位置がずれたり、内部の金属層が抜け落ちることがない。
【0052】
また、金属層13の剛性が他層である内層11、外層15の弾性変形に伴う復元力よりも大きいため、曲げ加工時に曲げられた形状を保持することができる。この際、金属層13が従来の金属管と比較して薄いため、加工が容易である。したがって、あらかじめシールドケーブルの敷設形状に応じて曲げ加工を行うことで、シールドケーブル(電磁シールド管)の敷設作業性に優れ、車両に対する固定部材19の使用数、可撓管等と比較して削減することができる。
【0053】
また、内層11および外層15が樹脂製であるため、外部からの水の付着や内部への水の浸入、結露等によって、電磁シールド管3が腐食することがない。また、内層11および外層15が断熱効果を有するため、内部の結露を防止することができる。
【0054】
また、内層11および外層15の厚みを金属層13に対して厚くすることで、電磁シールド管3を曲げた際に、曲げ部における金属層13の偏平化(座屈)を防止することができる。
【0055】
また、金属層13が帯状部材から構成されるため、電磁シールド管3の製造が容易である。また、ラップ部が形成されるとともに、ラップ部で帯状部材の端部同士が接触するため確実にシールド性を確保できるとともに、接触面を接合せずに摺動可能とすることで、曲げ加工時における金属層15の偏平化を抑制することができる。
【0056】
また、例えば外層のみに難燃剤や耐候性向上等を目的とした添加剤を添加することで、電磁シールド管3の特性を向上させることができる。また、外層にのみ着色を施すことができる。この際、内層11には耐候性や難燃性が不要であるため、添加剤が不要である。したがって、全体を一体で構成する樹脂管等と比較して、添加剤の使用量を削減することができる。
【0057】
次に、他の実施の形態について説明する。図5は、シールドケーブル1の他の敷設構造を示す図である。なお、以下の説明において、図1〜図4に示した構成と同一の機能を奏する構成については、図1〜図4と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図5に示すシールドケーブル敷設構造は、図4に示すシールドケーブル敷設構造と略同様の構成であるが、シールドケーブル1の外周に外管21が設けられる点で異なる。外管21は、例えば樹脂製のコルゲート管である。外管21は、シールドケーブル1を外部から保護するために用いられる。
【0059】
図6は、外管21が設けられたシールドケーブル1の断面を示す図である。例えば、図6(a)に示すように、外管21とシールドケーブル1の間に、電線9aを設けてもよい。電線9aは、例えば低圧電線であり、低電圧の電力系や信号ケーブル等の微弱電流が流れる被覆電線である。
【0060】
このようにすることで、高圧電線である電線9(シールドケーブル1)と低圧電線である電線9aを一括して敷設することができる。なお、電線9は電磁シールド管3の内部に挿通されるため、電線9からのノイズは遮蔽される。したがって、電磁シールド管3と外管21の隙間に挿通される電線9aは、電線9からのノイズの影響を受けることがない。
【0061】
また、図6(b)に示すように、シールドケーブル1を矩形とすることもできる。また、図示を省略するが外管21を略矩形としてもよい。すなわち、外管21および電磁シールド管3の少なくともいずれかを略矩形形状とすることで、効率良く内部に電線9aを配置することができる。また、矩形形状とすることで、自動車下の狭いスペースにおいても設置が容易であり、省スペース化が図れる。尚、外管21の内部の電線9aは1本のみを配置したが、複数本配置することも可能である。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば、内層11と外層15の厚みは、必要な特性に応じて適宜設定することができる。図7(a)は、内層11を薄くし、外層15を厚くした電磁シールド管3aを示す図である。電磁シールド管3aによれば、極めて高い耐外傷性を有する。すなわち、外部から石等が衝突した場合でも、外層15が十分に厚いため、金属層13が損傷を受けることがない。また、電磁シールド管3aが曲げられた際に断面が偏平化することを防止することができる。
【0064】
また、電磁シールド管3は、外周から金属層13までの距離が長いため、外部から水が樹脂内を浸透した場合でも、金属層13の腐食をより防止することができる。なお、内層11は、形状保持性等に影響を与えなければ、薄くしたとしても金属層13が露出しないため、耐腐食性等に対しての効果を得ることができる。
【0065】
また、図7(b)に示すようなに、内層11を厚くし、外層15を薄くした電磁シールド管3bを用いてもよい。電磁シールド管3bによれば、金属層13が曲げ加工によって曲げ加工部の外周面が内周面側に近寄ることで偏平化することをより確実に防止することができる。したがって、曲げ部での内径が小さくなることがない。したがって、曲げ部でも内径が小さくなることがなく、電線の挿通作業性にも優れる。
【0066】
また、電磁シールド管3bは、外層15が薄いため、前述の通り、外層にのみ添加剤や顔料を添加する場合であっても、外層を構成する樹脂の使用量を少なくすることができるため、添加剤や顔料の使用量を削減することができる。なお、外層15は、形状保持性および耐外傷性等に影響を与えなければ、薄くしたとしても金属層13が露出しないため、耐腐食性等に対しての効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1、1a………シールドケーブル
3、3a、3b………電磁シールド管
7………端子
9、9a………電線
11………内層
13………金属層
15………外層
17………ラップ部
19………固定部材
21………外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電線を挿通可能な電磁シールド管であって、
樹脂製の内層と、
前記内層の外周に形成される金属層と、
前記金属層の外周に形成される樹脂製の外層と、
を具備し、
前記電磁シールド管は、前記内層と前記金属層と前記外層とが一体で形成される複合管であり、
前記電磁シールド管は、前記電磁シールド管を曲げた後、前記金属層の塑性変形後の剛性が、前記内層および前記外層の弾性変形に伴う復元力に打ち勝つことにより、屈曲形状を保持することが可能な形状保持性を有することを特徴とする電磁シールド管。
【請求項2】
前記金属層は、金属製の帯状部材の両端がラップ部で重ね合わさって形成されることを特徴とする請求項1記載の電磁シールド管。
【請求項3】
前記ラップ部では、前記帯状部材の両端部の対向面が互いに直接接合せずに接触して筒状に形成されることを特徴とする請求項2記載の電磁シールド管。
【請求項4】
前記内層および前記外層の少なくとも一方の厚みが、
前記金属層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項5】
前記外層が前記内層よりも厚いあるいは外層と内層の厚さが等しいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項6】
前記金属層は、アルミニウムで形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項7】
前記外層は、難燃性または耐候性の少なくとも一方を向上させる添加剤を含有し、かつ、必要に応じて前記外層には着色を目的とした顔料が添加されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項8】
顔料により着色した電磁シールド管の前記外層の、金属層のラップ部又はラップ部中央に対応する位置に、管軸方向に連続した目印を設けることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の電磁シールド管。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の電磁シールド管を用い、前記電磁シールド管の内部に電線が挿通され、前記電磁シールド管の両端には前記電線と接続される端子部が設けられることを特徴とするシールドケーブルの構造。
【請求項10】
前記電磁シールド管の外周には、樹脂製の波付管が被せられることを特徴とする請求項9記載のシールドケーブルの構造。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の電磁シールド管を曲げ加工する場合に、金属層のラップ部を曲げ加工面に含むように曲げ加工を行うことを特徴とする電磁シールド管の曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165562(P2012−165562A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23970(P2011−23970)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】