説明

電磁回転機

【課題】大口径ファンを回転させる大トルクを発生させながら軽量かつ高エネルギー効率な電磁回転機を得る。
【解決手段】励磁コイルとしてのコイルAおよびコイルBはファンの外周端部に対向するファンケーシングの内周面には配設されていると共に電機子コイルとしてのコイルMは中央部において交差しファンの外周端部に配設されている。そして、コイルAまたはコイルBは、電流制御装置4(図示せず)によって、|Iai|=|Iai+1|かつIai=−Iai+1ならびに|Ibi|=|Ibi+1|かつIbi=−Ibi+1であって、なおかつ、コイルAが形成する実効磁場と、コイルBがコイルMに誘起する実効誘導電流との相互作用によって発生する実効電磁力の向きがファンの回転方向に一致するように励磁制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁回転機、特に航空機に組込まれるターボファンに適した電磁回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用ジェット推進装置、例えばターボジェットエンジンは、吸入口から内部に取り込んだ空気を圧縮機で高圧化しその圧縮された空気に燃料を混合し燃焼器で燃焼させ高温・高圧ガスとして後方に噴射させ、その反力を利用して推進力を得るものである。一方、取り込んだ空気の一部分を圧縮機、燃焼器および膨張機から成るコアエンジンに送り込まないで迂回させてファンのみを通過させ、その空気をファンにより流速を高めてそのまま後方に噴出して推進力を得るターボファンエンジン等がある。特に、コアエンジンよりもファンに送り込まれる空気量の多いターボファンエンジンは、高バイパス比ターボファンエンジンとも称され、音速よりも低音速領域で使用され燃料消費効率が高く且つ取り込んだ空気の大部分は燃焼させないため低エミッションであり、更にバイパス空気流が燃焼ガスを覆うため低騒音でもある。そのため、高バイパス比ターボファンエンジンは、省エネルギー、地球温暖化または酸性雨等の脱環境破壊の観点から時代のニーズに応えるものであり、旅客または貨物輸送航空機用エンジンとして多用されている。
【0003】
また、産業構造がグローバル化またはボーダレス化する中、旅客または貨物輸送に対する需要が増大する傾向にあると共に旅客量または貨物輸送量も増大する傾向にあり、旅客機または貨物輸送機に対して、大口径のファンを有する大推力のターボファンエンジンが求められている。さて、大口径のファンを駆動するには、大トルクを発生させる動力が必要となる。そのため、外部動力装置、例えば電動機を付加し、その電動機のトルクによってファンを駆動する手法がとられている。因みに、特許文献1には電動機から駆動力を得るものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−018860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電動機でファンを駆動する場合、大トルクを発生させるには、大きな磁場を発生する界磁と電機子コイルに大電流を流す大容量の発電システムが必要である。さらに、電機子の鉄芯構造によりエンジン部の重量が増加する問題がある。
ところで、低消費電力かつ軽量の電動機が考案されると、上記課題は解消されることになる。一般に、電動機において磁場(B)中で電機子コイルに電流(I)が流れると、その電流と磁場の外積(I×B)に比例した大きさと向きを持った電磁力が発生する。ここで、その磁場を時間変動させるとファラデーの電磁誘導の法則によって、電機子コイルに誘導電流が誘起され、その誘導電流(i)とその磁場(B)との相互作用によって誘導電流(i)と磁場(B)の外積(i×B)に比例した大きさと向きを持った電磁力が発生する。そして、その電磁力によって電機子コイルは回転しながら同軸のシャフトから動力を外部に出力する。しかし、電機子コイルを一定方向に回転させるためにはその電磁力の向きが常に一定とならなければならず、すなわち、電機子コイルに流れる誘導電流(i)と磁場(B)との外積(i×B)の結果生じるベクトルの向きが常に一定でなければならない。通常の直流モータの場合、永久磁石または電磁石によって界磁の向きは一定にされ、且つ整流子によって電機子電流の向きは一定にされるため、電磁力は常に一定方向に保たれ電機子は一定方向に回転駆動する。従って、磁場を時間変動させることによって電機子コイルに誘導電流を誘起させる場合、その誘導電流も時間変動することになり、電磁力の向きを一定にするにはその変動する磁場に対して誘導電流の向きを適切に制御しなければならないという問題がある。一方、磁場を時間変動させるためには、コイルに励磁電流を供給しなければならないが、できるだけ少ない電力でコイルを励磁させなければならないという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであって、大口径ファンを回転させる大トルクを発生させながら軽量かつ高エネルギー効率な電磁回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための第1の発明では、回転体および固定体を具備し且つ電機子コイルおよび励磁コイルの相互誘導作用により発生する電磁力を利用して前記回転体を駆動する電磁回転機であって、前記電機子コイルは該回転体の外周端部に配設され、且つ前記励磁コイルは該電機子コイルが対向する該固定体の内周面に配設されていることを特徴とする。
上記第1の発明の電磁回転機では、電機子コイルが回転側である回転体の外周端部に配設され、励磁コイルは固定側である固定体の内周面に配設されている。これにより、鉄芯、補助磁石およびハウジング等の部品が不要となり、全体重量を軽量にすることができると共に小さい電磁力で大トルクを発生することができるようになる。
【0006】
第2の発明では、前記励磁コイルはn(≧2)個の分割励磁コイルから構成され且つ前記電機子コイルは1又はそれ以上の分割電機子コイルから構成され、該分割電機子コイルは中央部近傍において交差していると共に該交差点を含む中心線において対称形態の閉コイルであり、一の分割電機子コイルの中央部近傍が一の分割励磁コイルの中央部近傍に重なり前記電磁力が発生する時に該分割電機子コイルは両側において他の分割励磁コイルと重なるようにした。
上記第2の発明の電磁回転機では、分割電機子コイルの中央部近傍がいずれかの分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に、両側において別の分割励磁コイルと重複する。この場合、その分割電機子コイルは異なる2個または3個の分割励磁コイルと中央部近傍と一方の側または中央部近傍と両側において重なっているので、これらの分割励磁コイルから個別に電磁誘導作用を受けることになる。そして、分割電機子コイルの中央部近傍に重なっている分割励磁コイルが励磁されると、その分割励磁コイルは分割電機子コイルに磁場を与えると共に誘導電流を誘起することが可能となるが、分割電機子コイルが中央部近傍において交差していることにより、その誘導電流はその分割電機子コイルの中央部近傍において互いに対向する向きに流れる。その結果、その誘導電流は互いに打ち消し合い実効電磁力としては作用しない。他方、分割電機子コイルの一方の側において重なる分割励磁コイルが励磁されると、同じく分割電機子コイルに誘導電流を誘起するが、分割電機子コイルは中央部近傍において交差していることによりその誘導電流は並行して流れ打ち消し合わない。同様に、分割電機子コイルの両側において重なる分割励磁コイルが、例えば互いに180°の位相差で励磁されると、各分割励磁コイルが分割電機子コイルの両側で誘起する誘導電流は大きさが同じで互いに180°の位相差を有するようになるが、分割電機子コイルが中央部近傍において交差していることによりこれらの誘導電流は分割励磁コイルの中央部近傍において互いに並行して流れる。その結果、その分割電機子コイルの中央部近傍においてはこれらの誘導電流と分割電機子コイルの中央部近傍を貫く磁場の相互作用によって実効電磁力が発生する。
【0007】
第3の発明では、一の分割電機子コイルの中央部近傍が一の分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に他の分割電機子コイルの中央部近傍は他の分割励磁コイルの中央部近傍に重なるようにした。
上記第3の発明の電磁回転機では、一の分割電機子コイルの中央部近傍が分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時は、他の全ての分割電機子コイルの中央部近傍がいずれかの分割励磁コイルの中央部近傍と重なるので、他の分割電機子コイルの中央部近傍においても同様に電磁力が発生し、電磁力は好適に倍増されることになる。
【0008】
第4の発明では、前記分割励磁コイルは前記分割電機子コイルの中央部近傍が該分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に前記回転体を回転させる実効電磁力に係る実効磁場を該分割電機子コイルに形成し且つ該分割電機子コイルのいずれか一方の端部が該分割励磁コイルに重なる時に同実効電磁力に係る実効誘導電流を該分割電機子コイルに誘起するように励磁制御される手段を備えるようにした。
上記第4の発明の電磁回転機では、分割励磁コイルは分割電機子コイルに対する相対位置に応じて実効電磁力に係る実効磁場を分割電機子コイルに供給し又は実効電磁力に係る実効誘導電流を分割電機子コイルに誘起するので、その実効磁場およびその実効誘導電流の相互作用によって回転体を回転させる実効電磁力が好適に発生する。
【0009】
第5の発明では、前記分割励磁コイルは前記分割電機子コイルのいずれか一方の端部に重なる時に通電され且つ該分割電機子コイルの他の端部に重なる隣り合う分割励磁コイルは通電方向に関して該分割励磁コイルに対し逆向きとなるように励磁制御される手段を備えるようにした。
上記第5の発明の電磁回転機では、分割電機子コイルを挟んでいる隣り合う分割励磁コイル同士は互いに逆向きに通電されることにより、互いに逆向きの磁場を分割電機子コイルの両側に形成し、その磁場が時間変動した際に誘起される誘導電流は互いに逆向きとなるが、分割電機子コイルが中央部近傍において交差していることによりこれらの誘導電流は分割電機子コイルの中央部近傍において互いに同じ向きとなり、その結果、実効電磁力の発生に関して好適に実効誘導電流となる。
【0010】
第6の発明では、前記分割励磁コイルは一の分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに形成する前記実効電磁力に係る実効磁場のベクトルと隣接する分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに誘起する同実効電磁力に係る実効誘導電流のベクトルとの外積の結果生じる力の向きが前記回転体の回転方向に一致するように励磁制御される手段を備えるようにした。
一般に、磁場中で導体に電流が流れると、その電流のベクトルとその磁場のベクトルとの外積に比例する電磁力が発生する。
そこで、上記第6の発明の電磁回転機では、分割電機子コイルの中央部近傍と重なる分割励磁コイルが電機子コイルに形成する実効磁場と、分割電機子コイルの両側で重なる2つの分割励磁コイルによって分割電機子コイルに誘起される実効誘導電流との相互作用によって発生する実効電磁力の向きは、その実効誘導電流の向きから実効磁場の向きへ回転させた時の右ねじの進む向きに一致する。従って、分割電機子コイルの両側で重複する2つの分割励磁コイルの通電方向と、分割電機子コイルの中央部近傍で重複する分割励磁コイルの通電方向を、実効誘導電流のベクトルと実効磁場のベクトルの外積の結果生じる力の向きが、回転体の回転方向に一致するように制御することで、回転体を好適に一定方向に回転させることができるようになる。
【0011】
第7の発明では、一の分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに形成する実効磁場と他の分割励磁コイルが該分割電機子コイルに誘起する実効誘導電流との電磁的位相差は、該実効磁場と該実効誘導電流の積分値が最大となるように励磁制御される手段を備えるようにした。
上記第7の発明の電磁回転機では、分割電機子コイルの中央部近傍と重複する分割励磁コイルが分割電機子コイルに形成する実効磁場と、分割電機子コイルの両側と重複する分割励磁コイルが分割電機子コイルに誘起する実効誘導電流との積が実効電磁力に比例し、その積分値が最大の時実効電磁力も最大となるので、その積分値が最大となるように各分割励磁コイルの電磁的位相差が設定され、回転体のエネルギー観点での効率が向上する。
【0012】
第8の発明では、前記分割励磁コイルは、交流電流を供給する電流供給手段と、該交流電流を双方向に導通させるスイッチング手段と、該交流電流を回収する蓄電手段と、該交流電流を補完する充電器とを具備すると共に閉回路を構成するようにした。
上記第8の発明の電磁回転機では、分割励磁コイルに交流電流を供給する電流供給手段によって分割励磁コイルは好適に励磁され磁場を分割電機子コイルに形成するが、分割励磁コイルに通電するその電流は時間変動するので、形成される磁場は時間変動し、その磁場の時間変動は分割電機子コイルに誘導電流を好適に誘起する。また、スイッチング手段によって、双方向にわたり分割励磁コイルに交流電流を通電することが可能になり、その結果、分割電機子コイルに誘起する誘導電流の向き又は分割電機子コイルに形成される磁場の向きを好適に変えることが可能になる。さらに、分割励磁コイルに通電される交流電流は蓄電手段によって回収され、損失分は充電器によって補完される。その結果、分割励磁コイルを励磁するための電力はほとんど消費されない。これにより、外部から電機子コイルに電力を供給することなく且つ励磁コイルを励磁するための電力をほとんど消費することなく、あるいは微少電力で回転体を一定の方向に回転させる実効電磁力を好適に発生することが可能になる。
【0013】
第9の発明では、前記閉回路はLC回路を構成し且つ該LC回路の時定数は回転体の回転周期に対して十分に小さく設定されるようにした。
上記第9の発明の電磁回転機では、LC回路の時定数が回転体の回転周期に対し十分に小さく設定されているので、分割電機子コイルの回転速度が無視できるようになり、分割励磁コイルが通電される際の分割電機子コイルとの相互誘導作用は準静的とみなされる。
【0014】
第10の発明では、前記充電器は、小型モータ発電機、小型ガスタービン発電機、燃料電池または超伝導発電機あるいはこれらを組み合わせたものとした。
上記第10の発明の電磁回転機では、分割励磁コイルを通電する交流電流は蓄電手段によって回収されながら双方向に通電されるので閉回路内部ではほとんど電力が消費されない。従って、小型モータ発電機、小型ガスタービン発電機、燃料電池または超伝導発電機あるいはこれらを組み合わせたもので好適に構成することができる。
【0015】
第11の発明では、前記分割励磁コイルおよび前記分割電機子コイルは、所定の温度以下で電気抵抗が限りなく小さくなる又は低電気抵抗性の導電材料から作られているものとした。
上記第11の発明の電磁回転機では、分割励磁コイルまたは分割電機子コイルは上記導電材料から作られているので、分割励磁コイルまたは分割電機子コイルが励磁される時に電気抵抗損失分を限りなく小さくすることができ、その結果、蓄電器の容量を小さくすることができ全体重量の軽量化に寄与することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁回転機によれば、励磁コイルは固定体の内周面に配設され且つ電機子コイルは励磁コイルに対向しながら回転体の外周端部に配設されているので、鉄芯等の重量部品が不要となり全体の重量が大幅に軽減され軽量化されると共に小さな電磁力で大きなトルクを発生させることが可能になる。また、励磁コイルは複数の分割励磁コイルで構成されると共に電機子コイルは複数の分割電機子コイルで構成され、且つ一の分割電機子コイルの中央部近傍が一の分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に、他の分割電機子コイルの中央部近傍は他の分割励磁コイルの中央部近傍と重なり且つ両側においてそれと別個の分割励磁コイルと各々重なるように、各分割励磁コイルは固定体の内周面に配設され且つ各分割電機子コイルは回転体の外周端部に配設されている。そして、各分割励磁コイルは分割電機子コイルとの相対位置に応じて各分割電機子コイルに対する作用が異なるように励磁方向が好適に制御されている。すなわち、分割励磁コイルが分割電機子コイルの中央部近傍に重なる時は、回転体を一定方向に回転させる実効電磁力に係る実効磁場をその各分割電機子コイルに形成する一方、分割励磁コイルが分割電機子コイルのいずれかの端部に重なる時は、その実効電磁力に係る実効誘導電流をその分割電機子コイルに誘起するように、その励磁が好適に制御されている。さらに、その実効誘導電流の向き及びその実効磁場の向きは回転体の回転方向に一致するように、各分割励磁コイルが好適に励磁制御されている。その結果、外部から分割電機子コイルに電流を供給することなく、その実効電磁力を好適に発生させ、回転体を一定方向に回転させることができる。また、分割励磁コイルを励磁した交流電流は蓄電手段によって順方向または逆方向に回収されると共にスイッチング手段によって再び順方向または逆方向に流され、その損失分は充電器によって補完される。また、鉄芯が存在しないためヒステリシス損および渦電流損といった磁気損失は少なくなる。その結果、分割励磁コイルの磁気エネルギーは蓄電手段によって電気エネルギーとして回収されスイッチング手段によって再利用される。従って、本発明の電磁回転機はエネルギー回収機能を有する。これにより、励磁コイルを励磁するための電力をほとんど消費することなく、あるいは微少消費電力で回転体を一定の方向に回転させる実効電磁力を好適に発生することが可能になる。その結果、回転体のエネルギー効率が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例である電磁駆動ファン100を示す要部正面図である。
この電磁駆動ファン100は、取り込んだ空気をそのまま流速を高めて後方へ噴出し、その反動でその噴出方向と逆向きの推力を発生させる回転体としてのファンブレード1と、該ファンブレード1が取り付けられているシャフト2と、ファンブレード1およびシャフト2を収容する固定体としてのファンケーシング3と、ファンブレード1の外周端部に対向してファンケーシング3の内周面に取り付けられ且つファンブレード1を回転させる実効電磁力に係る実効磁場を発生し分割励磁コイルとしてのコイルA列(i=1,2,・・・,n)と、同その実効電磁力に係る実効誘導電流を下記分割電機子コイルに誘起する分割励磁コイルとしてのコイルB列(i=1,2,・・・,n)と、ファンブレード1の外周端部に取り付けられ上記実効磁場および上記実効誘導電流の相互作用によって上記実効電磁力を発生する分割電機子コイルとしてのコイルM列(i=1,2,・・・,n)と、コイルAおよびコイルBに対する電流の制御を行う電流制御装置4と、コイルMの角度または変位を検出する位置検出センサ(図示せず)とを具備して構成されている。なお、分割励磁コイルは、コイルMに対する相対位置に応じて役割を変える、即ちコイルMの中央部に重なる時に上記実効電磁力に係る実効磁場をコイルMに供給し且つコイルMのいずれか一方の端部に重なる時に上記実効電磁力に係る実効誘導電流をコイルMに誘起する。従って、説明の便宜上、上記実効電磁力に係る実効磁場をコイルMに形成する場合をコイルAと、または上記実効電磁力に係る実効誘導電流をコイルMに誘起する場合をコイルBとし区別するが、構造上は全く同一のコイルであり、分割励磁コイルは、コイルAにもなり、コイルBにもなる。
【0019】
本実施例では、図2に示すように、コイルMの幅長をLとすると、コイルAまたはコイルBの幅長Lは略L/2になるように設定されている。
【0020】
なお、上記実効磁場とは、分割励磁コイルが分割電機子コイルに形成する磁場の中で上記実効電磁力の発生の原因となっている磁場のことであり、上記実効誘導電流とは、分割励磁コイルが分割電機子コイルに誘起する誘導電流の中で上記実効電磁力の発生の原因となっている誘導電流のことである。
【0021】
また、電流制御装置4は、上記コイルA列およびコイルB列の電流の制御に関し、例えば連続する複数のコイルAおよびコイルBを一組として、例えばコイルA、コイルB、コイルAi+1およびコイルBi+1を一組として制御を行う。
【0022】
また、上記コイルM列はファンブレード1の外周端部内に埋設され、上記コイルA列およびコイルB列は、ファンケーシング3の内周面内に埋設されていても良い。あるいは、上記コイルM列はファンブレード1の外周端部の一部分に配設され、上記コイルA列およびコイルB列は、ファンケーシング3の内周面の一部分に配設されていても良い
【0023】
上記電磁駆動ファン100によれば、電機子コイルとしてのコイルM列(i=1,2,・・・,n)がファンブレード1の外周端部に配設され、鉄芯等を要しない構造を採るようにしたため、全体の重量を軽量にすることが可能になる。さらに、コイルM列(i=1,2,・・・,n)が回転中心から遠いファンブレード1の外周端部に配設されているので、比較的小さい実効電磁力で大きなトルクを発生させることができ、ファンブレード1を好適に回転させることができるようになる。
【0024】
図2は、コイルA列またはコイルB列のコイルM列に対する2次元相対位置を示す説明図である。
この図は、コイルM列をファンケーシング3の内周面に投影し、そのファンケーシング3の内周面を2次元平面として展開した時の状態を示している。なお、コイルA列またはコイルB列はファンケーシング3の内周面に配設されているのでコイルM列に対し静止し、一方、コイルM列はファンブレード1の外周端部に配設されているのでコイルA列またはコイルB列に対し移動するものとなる。
【0025】
コイルAまたはコイルBは、例えば矩形状かつ単巻き又は複巻きの分割励磁コイルであり、端部にコイルAまたはコイルBと共にLC回路を構成するコンデンサCと、コイルAまたはコイルBに双方向の電流を導通する第1および第2サイリスタSCR,SCRと、コンデンサCの極性に応じてコンデンサCのバイアス方向を切り換える切換回路SWと、コンデンサCに電荷を供給する電源Sとを具備している。なお、第1および第2サイリスタSCR,SCRのスイッチング制御と切換回路SWの切り換え制御は、コイルMの回転位置を示す位置検出センサからの情報に基づいて電流制御装置4によって行われる。
【0026】
また、本発明に係る電磁駆動ファン100の作動については図3から7を参照しながら詳述するが、コイルAおよびコイルBは、コイルMに対してファンブレード1を回転させる実効電磁力の発生に寄与する点においては共通しているが、コイルMがその実効電磁力を発生するメカニズムにおいて、コイルAとコイルBの役割は全く異なるものである。すなわち、コイルAは、実効電磁力に係る実効磁場をコイルMに与えるのに対し、コイルBは実効電磁力に係る実効誘導電流をコイルMに誘起する役割を果たす。そして、コイルAがコイルMに誘起するファンブレード1の回転に寄与しない無効誘導電流は、コイルMの構造上の特徴により好適に打ち消されると共にコイルBがコイルMに及ぼすファンブレード1の回転に寄与しない無効磁場による無効電磁力は、同じく打ち消される。
【0027】
さらに、コイルAまたはコイルBは、コンデンサCと共にLC回路を構成しているので、サイリスタがオンされる時にコイルAまたはコイルBに流れる電流は、時間的に変動する電流、いわゆる交流電流である。これにより、その交流電流が励磁電流としてコイルAまたはコイルBを流れると、その励磁電流によって形成されコイルMを貫く磁場も時間変動するので、その磁場の時間変動によってコイルMにその磁場の時間変動を妨げる方向に誘導電流が流れる。これにより、外部から電流を供給することなく電機子コイルとしてのコイルMに電流を流すことができる。
【0028】
また、コイルAi+1に流れる電流をIai+1と、コイルBi+1に流れる電流をIbi+1とすると、隣り合うコイルA同士またはコイルB同士は、その大きさが等しく且つその向きが反対となる。すなわち、|Iai|=|Iai+1|かつIai=−Iai+1または|Ibi|=|Ibi+1|かつIbi=−Ibi+1となる。
【0029】
一般に、コイルAまたはコイルBの幅長をLとコイルMの幅長をLとすると、LおよびLの間にはL/2≦L<Lとの関係が成り立っている。これにより、コイルAまたはコイルBを通電することによって発生される磁場をコイルMに効率良く作用することが可能になる。なお、本実施例ではL=L/2の場合である。
【0030】
コイルMは、中央部において交差し且つ対称形態である8の字コイルであり、図示の都合上、単巻きであるが複巻きでも良い。詳細については図3から7を参照しながら後述するが、この交差により、例えばコイルAがコイルMに誘起する誘導電流は中央部において互いに打ち消し合い、結果的にコイルAは、ファンブレード1の回転に寄与する実効電磁力に係る実効磁場のみをコイルMに与えることになる。一方、例えばコイルBおよびコイルBi+1がコイルMに誘起する各誘導電流は、中央部において互いに同じ向きに流れ、その誘導電流によって発生される電磁力は加算されるが、コイルMの両端部においてコイルBおよびコイルBi+1がコイルMi+1に形成する磁場の向きは互いに逆向きであり且つ各誘導電流は互いに同じ向きに流れるので、その磁場とその誘導電流の相互作用によって発生する電磁力は互いに打ち消し合い、結果的にコイルBおよびコイルBi+1はコイルMに実効電磁力に係る実効誘導電流のみを誘起することになる。
【0031】
なお、本実施例では、最良の形態として、コイルMの両側に重なるコイル、例えばコイルBおよびコイルBi+1の2つの分割励磁コイルを励磁することにより実効電磁力に係る実効誘導電流をコイルMに誘起する構成となっているが、コイルBまたはコイルBi+1のどちらか一方を励磁することにより、すなわち1つの分割励磁コイルにより実効電磁力に係る実効誘導電流をコイルMに誘起する構成とすることも可能である。
【0032】
なお、本実施例ではスイッチング手段としてサイリスタが採用されているが、パワートランジスタ,パワーMOSFETまたはIGBT等の半導体スイッチング素子を用いても良い。
【0033】
また、電源Sは、例えば小型モータ発電機,小型ガスタービン発電機,燃料電池または蓄電池である。
【0034】
また、コイルA、コイルBおよびコイルMは、所定の温度以下で電気抵抗が限りなく小さくなる又は低電気抵抗性の導電材料から作られているコイルであり、例えば超伝導コイルである。
【0035】
ここで、図3から7を参照しながらファンブレード1の回転に寄与する実効電磁力を発生するメカニズムについて説明する。説明を容易にするために、コイルAi+1およびコイルMi+1の電磁誘導作用と、コイルBおよびコイルBi+1とコイルMi+1の電磁誘導作用を個別に説明する。
【0036】
図3は、コイルAi+1およびコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。なお、コンデンサCai+1は、図示の極性で充電されているものとする。
横軸を時間とした図7の(a)に示すように、分割励磁コイルの中央部が分割電機子コイルMi+1の中央部に一致するt=0の時に、電流制御装置4は第2サイリスタSCR2ai+1をオンにすると、コイルAi+1に図7の(b)に示す順方向の励磁電流Iai+1が流れ、図3において紙面の裏から表に向かって磁場Bai+1が形成される(図7の(c))。コイルAi+1はコンデンサCai+1と共にLC回路を構成しているので、コイルAi+1の電位差Vai+1および励磁電流Iai+1は一定の周期T(=2π×(LC)1/2)で振動し、互いに位相がπ/2だけ異なる半波正弦波になる。そして、コイルAi+1の電位差Vai+1はt=T/4でゼロになるがコイルAi+1の自己誘導によって電流を維持する向きに起電力が生じる。そのため励磁電流Iai+1は減少しながらも流れ続ける。コンデンサに初めと逆の電荷がたまるt=T/2の時に、電流制御装置4は第2サイリスタSCR2ai+1をオフとし、コンデンサCai+1は逆方向に充電される。図3に戻って、この磁場Bai+1を左磁場Bと右磁場Bに分割すると、左磁場Bの時間変動によって、dB/dtに比例する左誘導起電力EがコイルMi+1に誘起され、それに対応する左誘導電流iがコイルMi+1内を流れる。他方、右磁場Bの時間変動によって、dB/dtに比例する右誘導起電力EがコイルMi+1に誘起され、それに対応する右誘導電流iがコイルMi+1内を流れる。なお、励磁電流Iai+1の動作はファンブレード1の回転動作よりも極めて早く、励磁電流Iai+1が流れている間、ファンブレード1すなわちコイルMi+1は静止しているとみなされる。その結果、その励磁電流Iai+1による左磁場Bと右磁場Bの大きさは等しくなる。従って、左誘導起電力Eと右誘導起電力Eの大きさは等しくなると共に左誘導電流iと右誘導電流iの大きさも等しくなる。
【0037】
ところが、左誘導電流iおよび右誘導電流iは、コイルMi+1が中央部において交差しているため、電流の向きが互いに逆向きとなり、各誘導電流i,iは互いに打ち消し合い、結局、磁場Bai+1の時間変動によって誘導起電力および誘導電流は誘起されず、結果的に、コイルAi+1は磁場Bai+1のみをコイルMi+1に与えることになる。
【0038】
そして、図7の(a)に戻り、一定時間(=T)経過後に、分割電機子コイルの中央部が分割励磁コイルの中央部に再度重なる時に、電流制御装置4は、第1サイリスタSCR1ai+1をオンにすると、コイルAi+1に図7の(b)に示す逆方向の励磁電流Iai+1が流れ、図4において紙面の表から裏に向かって磁場Bai+1が形成される(図7の(c))。コイルAi+1はコンデンサCai+1と共にLC回路を構成しているので、コイルAi+1の電位差Vai+1および励磁電流Iai+1は一定の周期T(=2π×(LC)1/2)で振動し、互いに位相がπ/2だけ異なる半波正弦波になる。そして、その電位差Vai+1はt=T+T/4でゼロになるがコイルAi+1の自己誘導によって電流を維持する向きに起電力が生じる。そのため励磁電流Iai+1は減少しながらも流れ続ける。こうして、t=T+T/2でコンデンサにはt=Tと逆の電荷がたまり、電流制御装置4は第1サイリスタSCR1aiをオフとし、コンデンサCai+1は順方向に充電される。図4に戻り、図3と同様に、左誘導電流iおよび右誘導電流iは、コイルMi+1は中央部において交差しているため、電流の向きが互いに逆向きとなり、各誘導電流i,iは互いに打ち消し合い、結局、磁場Bai+1の時間変動によって誘導起電力および誘導電流は誘起されず、結果的に、コイルAi+1は磁場Bai+1のみをコイルMi+1に与えることになる。以後、これらの動作が繰り返し行われる。
【0039】
また、各コイルA,A,・・・,Ai−1,Ai+1,・・・,Aについても同様な動作になる。
【0040】
図5は、両側のコイルBおよびコイルBi+1とコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。なお、各コンデンサCbi,Cbi+1は、図示の極性で充電されているものとする。
【0041】
なお、前述したように同じ構造を持ったコイルB列の各コイルは図7に示したコイルAi+1と類似した動作を行うので図7を用いて説明する。図7の(d)に示すように、コイルAi+1の電位差Vai+1がゼロ、すなわちコイルAi+1の励磁電流Iai+1が最大となるt=T/4の時に、電流制御装置4は第1サイリスタSCR2biおよび第2サイリスタSCR2bi+1をオンにすると、コイルB,Bi+1に図7の(e)に示す励磁電流Ibi,Ibi+1が流れ、図5に示すようにそれぞれ紙面の表から裏に向かって左磁場Bbi、紙面の裏から表に向かって右磁場Bbi+1が形成される(図7の(f))。コイルBおよびコイルBi+1はコンデンサと共にLC回路を構成しているので、各電位差及び対応する各励磁電流は一定の周期T(=2π×(LC)1/2)で振動し、互いに位相がπ/2だけ異なる半波正弦波になる。そして、各コイルの電位差Vbi,Vbi+1はt=T/2でゼロになるが各コイルB,Bi+1の自己誘導によって電流を維持する向きに起電力が生じる。そのため各励磁電流Ibi,Ibi+1は減少しながらも流れ続ける。こうして、t=3T/4で各コンデンサCbi,Cbi+1には初めと逆の電荷がたまると、電流制御装置4は第1サイリスタSCR1biおよび第2サイリスタSCR2bi+1をオフとし、コンデンサCbiは順方向に充電され、コンデンサCbi+1は逆方向に充電される。図5に戻って、励磁電流IbiおよびIbi+1が図示の如く流れる。なお、励磁電流IbiおよびIbi+1の動作時間がファンブレード1の回転時間よりも十分に小さくなるようにLC回路の時定数が決定されているものとする。すなわち、励磁電流IbiおよびIbi+1が流れている間は、ファンブレード1すなわちコイルMi+1は静止しているとみなされる。
【0042】
左磁場Bbiの時間変動によって、dBbi/dtに比例する左誘導起電力EbiがコイルMi+1に誘起され、それに対応する左誘導電流ibiがコイルMi+1内を流れる。他方、右磁場Bi+1の時間変動によって、dBbi+1/dtに比例する左誘導起電力Ebi+1がコイルMi+1に誘起され、それに対応する左誘導電流ibi+1がコイルMi+1内を流れる。ところで、左磁場Bbiおよび左磁場Bbi+1は、大きさについて等しく且つ向きについて互いに逆向きであるから左誘導電流ibiと右誘導電流ibi+1は、互いに逆向きに誘起される(図7の(g))。
【0043】
ところが、コイルMは中央部において交差しているので左誘導電流ibiおよび右誘導電流ibi+1は、コイルMの中央部または両端部において互いに同じ向きとなるので、各誘導電流ibi,ibi+1は中央部において加算される。特に、図7の(c)に示すようにT/4≦t≦T/2においては、コイルAi+1が形成する上記磁場Bai+1が分割電機子コイルMi+1の中央部を貫いているので、その誘導電流ibi,ibi+1および上記磁場Bai+1の相互作用によって図7の(h)に示す実効電磁力Fが発生することになる。
【0044】
ところで、分割電機子コイルの両端部においては、各誘導電流ibi,ibi+1および各磁場Bbi,Bbi+1の相互作用によってそれぞれ電磁力Fbi,Fbi+1が発生するが、電流の向きは互いに同じであり且つ磁場の向きは互いに逆向きであるから、これらの電磁力Fbi,Fbi+1は互いに打ち消し合い実効電磁力としては作用しない。
【0045】
そして、図7の(d)に戻り、一定時間(=T+T/4)経過後に、電流制御装置4は、第2サイリスタSCR2biおよび第1サイリスタSCR1bi+1をオンにすると、各コイルB,Bi+1に図7の(e)に示す各励磁電流Ibi,Ibi+1が流れ、図6に示すように紙面の裏から表に向かって左磁場Bbi、紙面の表から裏に向かって右磁場Bbi+1が形成される(図7の(f))。各コイルB,Bi+1はコンデンサと共にLC回路を構成しているので、各コイルB,Bi+1の各電位差および対応する励磁電流は一定の周期T(=2π×(LC)1/2)で振動し、互いに位相がπ/2だけ異なる半波正弦波になる。そして、各電位差はt=T+T/2でゼロになるが各コイルB,Bi+1の自己誘導によって電流を維持する向きに各々起電力が生じる。そのため各励磁電流Ibi,Ibi+1は減少しながらも流れ続ける。こうして、t=T+3T/4で各コンデンサCbi,Cbi+1にはt=T+T/4と逆の電荷がたまり、電流制御装置4は第2サイリスタSCR2biおよび第1サイリスタSCR1bi+1をオフとする。図6に戻り、図5と同様に、左誘導電流ibiおよび右誘導電流ibi+1は、コイルMi+1が中央部において交差しているため、コイルMi+1の中央部において各誘導電流の向きは互いに同じ向きとなり、各誘導電流ibi,ibi+1は互いに加算し合う。特に、図7の(c)に示すようにT+T/4≦t≦T+T/2においては、コイルAi+1が形成する上記磁場Bai+1が分割電機子コイルMi+1の中央部を貫いているので、その誘導電流ibi,ibi+1および上記磁場Bai+1の相互作用によって図7の(h)に示す実効電磁力Fが発生することになる。
【0046】
ところで、分割電機子コイルの両端部においては、各誘導電流ibi,ibi+1および左磁場Bbi,Bbi+1の相互作用によってそれぞれ電磁力Fbi,Fbi+1が発生するが、電流の向きは互いに同じであり且つ磁場の向きは互いに逆向きであるから、これらの電磁力Fbi,Fbi+1は互いに打ち消し合い実効電磁力としては作用しない。結局、各磁場Bbi,Bbi+1の時間変動によって、コイルBおよびコイルBi+1は誘導電流のみをコイルMi+1に与えることになる。以後、これらの動作が繰り返し行われる。
【0047】
また、各コイルB,B,・・・,Ai−1,Bi+2,・・・,Aについても同様な動作になる。
【0048】
なお、コイルA列およびコイルB列の各コイルには、LC回路の時定数に対応する交流電流が流れ、各発生磁場および各誘導電流の向きを反転させるが、これらはサイリスタの切替えタイミングで同期されており、電磁力の方向が常時一方向となるように制御されている。
【0049】
また、本実施例の電流制御装置4は、コイルAi+1がコイルMi+1に形成する実効磁場Bai+1とコイルBおよびコイルBi+1がコイルMi+1に誘起する各誘導電流ibi,ibi+1との外積の積分値(実効電磁力)が最大となるように、各サイリスタをオン/オフ制御してコイルAi+1、コイルBおよびコイルBi+1に対し電磁的位相差を持たせるように励磁制御している。
【0050】
以上のように、コイルA列およびコイルB列はファンケーシングの内周面に配設され且つコイルM列はコイルA列またはコイルB列に対向しながらファン外周端部に配設されているので、鉄芯等の重量部品を用いない構成なので全体の重量が大幅に軽減され軽量化されると共に小さな電磁力で大きなトルクを発生させることが可能になる。また、コイルA列は一のコイルMの中央部が一のコイルAの中央部に重なる時に、他のコイルMの中央部は他のコイルAの中央部と重複し且つ両端部においてそれと別個のコイルBと各々重複するように、コイルA列およびコイルB列はファンケーシングの内周面に配設され且つコイルM列はファン外周端部に配設されている。そして、コイルAがコイルMの中央部に重なる時は、ファンを一定方向に回転させる実効電磁力に係る実効磁場をその各コイルMに形成し、あるいはコイルBがコイルMのいずれかの端部に重なる時は、その実効電磁力に係る実効誘導電流をそのコイルMに誘起するように、電流制御装置4はその励磁を好適に制御する。さらに、電流制御装置4は、その実効誘導電流の向き及びその実効磁場の向きがファンの回転方向に一致するように、コイルAおよびコイルBの励磁を好適に制御する。その結果、外部から電機子コイルとしてのコイルM列に電流を供給することなく、その実効電磁力を好適に発生させ、ファンを一定方向に回転させることができる。また、コイルA列およびコイルB列を励磁した交流電流はコンデンサによって順方向または逆方向に回収されると共にサイリスタによって再び順方向または逆方向に流され、その損失分は充電器によって補完される。また、鉄芯が存在しないためヒステリシス損および渦電流損といった磁気損失は少なくなる。その結果、コイルA列およびコイルB列の磁気エネルギーはコンデンサによって電気エネルギーとして回収されサイリスタによって再利用される。従って、電磁駆動ファン100はエネルギー回収機能を有する。これにより、励磁コイルとしてのコイルA列およびコイルB列を励磁するための電力をほとんど消費することなく、あるいは微少消費電力でファンを一定の方向に回転させる実効電磁力を好適に発生することが可能になる。その結果、ファンのエネルギー効率が飛躍的に向上する。
【実施例2】
【0051】
図8は、本発明の他の実施例である電磁回転機械200を示す要部断面図である。
この電磁回転機械200は、実効電磁力によって回転する回転体としての回転構体部11と、回転構体部11が取り付けられているシャフト2と、回転構体部11と対向する固定体としての固定構体部33と、回転構体部11の外周端部に対向して固定構体部33の内周面に取り付けられ且つ回転構体11を回転させる実効電磁力に係る実効磁場を発生し分割励磁コイルとしてのコイルA列と、同実効電磁力に係る実効誘導電流を下記分割電機子コイルに誘起する分割励磁コイルとしてのコイルB列と、回転構体部11の外周端部に取り付けられ上記実効磁場および上記実効誘導電流の相互作用によって上記実効電磁力を発生する分割電機子コイルとしてのコイルM列と、コイルAおよびコイルBに対する電流の制御を行う電流制御装置4と、コイルMの角度または変位を検出する位置検出センサ(図示せず)とを具備して構成されている。
【0052】
また、上記コイルM列は回転構体部11の外周端面に配設され、上記コイルA列およびコイルB列は、ファンケーシング3の内周面に配設されていても良い。
【0053】
なお、分割励磁コイルとしてのコイルA列およびコイルB列並びに分割電機子コイルとしてのコイルM列は、実施例1と同様な作動を行い実効電磁力を発生させて回転構体部11を回転させるが、上記電磁回転機械200では、コイルMが回転構体部11の外周端部の一部分にのみ配設され、なお且つコイルAおよびコイルBが回転構体部11の外周端部の一部分に対向するように固定構体部33に配設されているので、コイルAおよびコイルBならびにコイルMの相互誘導作用によって発生する実効電磁力は間欠的に回転構体部11に作用する。従って、上記電磁回転機械200における実効電磁力の平均値は実施例1の電磁駆動ファン100に比べ小さくなる。
【0054】
上記電磁回転機械200によれば、実施例1の電磁駆動ファン100と同様な効果に加え、回転体に対して実効電磁力を間欠的に作用することが可能となる。従って、低速で回転する大径の回転機械、例えば観覧車またはベルトコンベア等の回転駆動源に好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の電磁回転機は、ジェット推進装置のターボファンまたはその他の航空機用エンジン、電動機または発電機、その他の回転駆動される機械またはそれらを必要とするシステムに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例である電磁駆動ファンを示す要部正面図である。
【図2】コイルA列またはコイルB列のコイルM列に対する2次元相対位置を示す説明図である。
【図3】コイルAi+1およびコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。
【図4】コイルAi+1およびコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。
【図5】コイルBおよびコイルBi+1とコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。
【図6】コイルBおよびコイルBi+1とコイルMi+1の電磁誘導作用を示す説明図である。
【図7】コイルAi+1、コイルBおよびコイルBi+1の励磁を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例である電磁回転機械を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ファンブレード
2 シャフト
3 ファンケーシング
4 電流制御装置
分割励磁コイル
分割励磁コイル
分割電機子コイル
100 電磁駆動ファン
200 電磁回転機械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体および固定体を具備し且つ電機子コイルおよび励磁コイルの相互誘導作用により発生する電磁力を利用して前記回転体を駆動する電磁回転機であって、前記電機子コイルは該回転体の外周端部に配設され、且つ前記励磁コイルは該電機子コイルが対向する該固定体の内周面に配設されていることを特徴とする電磁回転機。
【請求項2】
前記励磁コイルはn(≧2)個の分割励磁コイルから構成され且つ前記電機子コイルは1又はそれ以上の分割電機子コイルから構成され、該分割電機子コイルは中央部近傍において交差していると共に該交差点を含む中心線において対称形態の閉コイルであり、一の分割電機子コイルの中央部近傍が一の分割励磁コイルの中央部近傍に重なり前記電磁力が発生する時に該分割電機子コイルは両側において他の分割励磁コイルと重なっている請求項1に記載の電磁回転機。
【請求項3】
一の分割電機子コイルの中央部近傍が一の分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に他の分割電機子コイルの中央部近傍は他の分割励磁コイルの中央部近傍に重なっている請求項2に記載の電磁回転機。
【請求項4】
前記分割励磁コイルは前記分割電機子コイルの中央部近傍が該分割励磁コイルの中央部近傍に重なる時に前記回転体を回転させる実効電磁力に係る実効磁場を該分割電機子コイルに形成し且つ該分割電機子コイルのいずれか一方の端部が該分割励磁コイルに重なる時に同実効電磁力に係る実効誘導電流を該分割電機子コイルに誘起するように励磁制御される手段を備えている請求項2又は3に記載の電磁回転機。
【請求項5】
前記分割励磁コイルは前記分割電機子コイルのいずれか一方の端部に重なる時に通電され且つ該分割電機子コイルの他の端部に重なる隣り合う分割励磁コイルは通電方向に関して該分割励磁コイルに対し逆向きとなるように励磁制御される手段を備えている請求項2から4のいずれかに記載の電磁回転機。
【請求項6】
前記分割励磁コイルは一の分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに形成する前記実効電磁力に係る実効磁場のベクトルと隣接する分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに誘起する同実効電磁力に係る実効誘導電流のベクトルとの外積の結果生じる力の向きが前記回転体の回転方向に一致するように励磁制御される手段を備えている請求項2から5のいずれかに記載の電磁回転機。
【請求項7】
一の分割励磁コイルが前記分割電機子コイルに形成する実効磁場と他の分割励磁コイルが該分割電機子コイルに誘起する実効誘導電流との電磁的位相差は、該実効磁場と該実効誘導電流の積分値が最大となるように励磁制御される手段を備えている請求項2から6のいずれかに記載の電磁回転機。
【請求項8】
前記分割励磁コイルは、交流電流を供給する電流供給手段と、該交流電流を双方向に導通させるスイッチング手段と、該交流電流を回収する蓄電手段と、該交流電流を補完する充電器とを具備すると共に閉回路を構成している請求項2から7のいずれかに記載の電磁回転機。
【請求項9】
前記閉回路はLC回路を構成し且つ該LC回路の時定数は回転体の回転周期に対して十分に小さく設定されている請求項8に記載の電磁回転機。
【請求項10】
前記充電器は、小型モータ発電機、小型ガスタービン発電機、燃料電池または超伝導発電機あるいはこれらを組み合わせたものである請求項8に記載の電磁回転機。
【請求項11】
前記分割励磁コイルおよび前記分割電機子コイルは、所定の温度以下で電気抵抗が限りなく小さくなる又は低電気抵抗性の導電材料から作られている請求項2から10のいずれかに記載の電磁回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−211739(P2006−211739A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16537(P2005−16537)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】