説明

電磁弁、及びそれを用いた高圧ポンプ

【課題】 ノーマリークローズ型の電磁弁において、コイルへの通電オフ時の閉弁応答性を向上する。
【解決手段】 高圧ポンプの吸入弁部30Aとして適用される電磁弁は、コイル51への通電時、フランジ55Aと可動コア53との間に電磁吸引力が発生し、可動コア53が吸引方向(図の左方向)へ移動する。コイル51への通電がオフされると、電磁吸引力が消滅し、可動コア53およびステム41は、第2スプリング43Aの付勢力によって反吸引方向(図の右方向)へ一体に移動する。また、弁体32は、第1スプリング33の付勢力によって、シート部材31のシート部316に着座する閉弁方向に移動する。第1スプリング33と第2スプリング43Aとの付勢方向が同一なので、弁体32の閉弁作動に対して、可動コア53およびステム41の重量が負荷とならない。よって、軽量の弁体32が単独で移動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁、及びそれを用いた高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンへ燃料を供給する燃料供給装置には、高圧燃料を圧送する高圧ポンプが設けられる。一般に、高圧ポンプはエンジンの回転に応じてプランジャが往復移動し、吸入行程、調量行程、加圧行程の行程サイクルを繰り返すことによって、燃料タンクから吸入した燃料を、燃料噴射弁に接続されるコモンレールへ吐出する。
【0003】
この行程サイクルを作り出すため、プランジャの往復移動に応じて開閉する電磁弁が高圧ポンプの吸入弁として適用される。具体的には、(1)プランジャ下降時に吸入弁を開いて燃料を吸入し、(2)プランジャがストローク途中まで上昇する間、吸入弁を開き、燃料の一部を戻して調量した後、(3)吸入弁を閉じ、プランジャが残りのストロークを上昇することによって燃料を加圧し吐出する、という行程サイクルを繰り返す。ここで、(2)の調量行程から(3)の加圧行程への切換タイミングを調整することによって要求供給量に相応する調量が実現される。
【0004】
ここで、高圧ポンプに適用される電磁弁は、コイルへの通電および非通電と開閉との関係によって、ノーマリーオープン型とノーマリークローズ型とに分けられる。
ノーマリーオープン型の電磁弁を適用した高圧ポンプは、非通電時に吸入行程および調量行程が実行され、通電時に燃料を加圧し吐出する。
一方、ノーマリークローズ型の電磁弁を適用した高圧ポンプは、通電時に吸入行程および調量行程が実行され、非通電時に燃料を加圧し吐出する。
【0005】
例えば、特許文献1の高圧ポンプに適用されるノーマリークローズ型の電磁弁は、プランジャロッド31(本発明の「弁体」に相当)とアンカー35(本発明の「可動コア」に相当)とが一体に形成されている。コイルへの非通電時、ばね部材34がアンカー35を第1コア部33(本発明の「固定コア」に相当)から離間する方向へ付勢することにより、アンカー35と一体に形成されたプランジャロッド31は、吸入弁部31aがシート部32aに接触した閉弁状態となる(特許文献1の図4、図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−106947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の高圧ポンプに適用される電磁弁は、可動コアと弁体とが一体に形成されているため、一体に移動する重量が重くなり、通電オフ時の移動速度が遅くなる。したがって、通電オフの指令から閉弁完了までの「閉弁応答時間」が長くなる。すなわち「閉弁応答性」が良くない。閉弁が完了するまでの時間は、プランジャの上昇に伴って加圧室の燃料が上流側に戻され、圧送量が低下する。その結果、特に、高回転時に大流量が要求されるとき、要求される供給量に対してポンプ圧送量が不足することとなる。
【0008】
また、ノーマリークローズ型の別の電磁弁の構成として、「可動コアと弁体とが別体に設けられ、かつ、可動コアの付勢手段が、可動コアを電磁吸引力の吸引方向であって弁体の閉弁方向と反対方向(開弁方向)に付勢する」構成を想定する。この構成は、コイルの通電時には弁体を開弁させるのに有利である反面、通電オフ時には、可動コアの付勢手段の付勢力に抗して、弁体と可動コアとを閉弁方向に一体に動かす必要がある。言い換えれば、弁体が閉弁するとき、可動コアの重量が負荷となり、弁体を含む可動部の総重量が重くなる。そのため、通電オフ時の移動速度が遅くなり、弁体の閉弁応答時間が長くなる。よって、上記の特許文献1に係る電磁弁と同様にポンプ圧送量の不足を招くおそれがある。
【0009】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、ノーマリークローズ型の電磁弁において、コイルへの通電オフ時の閉弁応答性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の電磁弁は、往復移動可能な弁体、シート部材、第1付勢手段、導線が巻回されるコイル、固定コア、可動コア、ステムおよび第2付勢手段を備える。
シート部材は、弁体が着座または離座可能なシート部を有する。
第1付勢手段は、弁体をシート部に着座する閉弁方向に付勢する。
固定コアは、コイルへの通電により電磁吸引力を発生する。
可動コアは、固定コアとの間に電磁吸引力が発生したとき吸引方向に移動する。
ステムは、可動コアと一体に形成され、可動コアと一体に吸引方向に移動したとき弁体の一方の端部に当接し、弁体を開弁方向に押圧する。
第2付勢手段は、可動コアおよびステムを吸引方向と反対方向である反吸引方向に付勢する。
【0011】
ここで、第1付勢手段の付勢方向である閉弁方向と第2付勢手段の付勢方向である反吸引方向とは同一方向である。そして、コイルへの通電をオフしたとき、可動コアおよびステムは、第2付勢手段の付勢力によって反吸引方向に移動し、弁体は、第1付勢手段の付勢力によって閉弁方向に移動する。
【0012】
以上の構成によるノーマリークローズ型の電磁弁は、弁体が、可動コアおよびステムと別体に設けられる。したがって、弁体と可動コアとが一体に形成される従来技術と比べ、コイルへの通電オフ時に、軽量の弁体が単独で移動することができる。
さらに、第2付勢手段は、弁体の閉弁方向と同一方向に可動コアおよびステムを付勢するため、第2付勢手段の付勢力が弁体の閉弁作動に対する負荷とならない。したがって、通電オフ時の閉弁応答時間が短縮し、閉弁応答性が向上する。よって、この電磁弁を高圧ポンプに適用した場合、要求される供給量に対してポンプ圧送量を適正に確保することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、コイルへの通電をオフしたとき、可動コアおよびステムは、弁体が閉弁方向に移動する速度よりも速い速度で反吸引方向に移動する。
これにより、コイルへの通電オフ時、可動コアおよびステムが先行して反吸引方向に移動し、これに続いて弁体が閉弁方向に移動する。すなわち、可動コアおよびステムと弁体とは、一体にではなく独立して移動する。したがって、可動コアおよびステムの重量が負荷とならず、弁体を含む可動部の総重量が軽くなる。よって、通電オフ時の弁体の閉弁応答性をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項3および4では、第2付勢手段の設置位置に関する構成を具体的に示す。
請求項3に記載の発明によると、第2付勢手段は、一端が固定コアに当接し、他端が可動コアに当接する。言い換えれば、第2付勢手段は、固定コアと可動コアとの間に挟持され、可動コアを固定コアから離間させる方向(反吸引方向)に付勢する。
この場合、第2付勢手段が可動コアを直接押圧する比較的、単純な構成とすることができる。ただし、固定コアの可動コアと対向する側の端部に第2付勢手段を収容するスペースが必要となる分、電磁吸引力が作用する磁路面積が減少することとなる。
【0015】
請求項4に記載の発明によると、第2付勢手段は、一端がステムに設けられる鍔部に当接し、他端が固定される。例えば、他端は、シート部材のシート部と反対側であって可動コア側の端面に当接するように設けられる。
この場合、第2付勢手段はステムの鍔部を押圧する。また、固定コアの可動コアと対向する側の端部に第2付勢手段を収容するスペースが不要となるため、電磁吸引力が作用する磁路面積を確保するのに有利である。逆に、確保する磁路面積を請求項3の構成と同等とすれば、請求項3の構成に対し可動コアの外径を小さくすることができる。そのため、可動コアの重量を軽量化することができ、閉弁応答性をさらに向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、高圧ポンプに係る発明である。この高圧ポンプは、プランジャ、シリンダ、ハウジング、及び吸入弁部を備える。
シリンダは、プランジャを往復移動可能に収容する。ハウジングは、プランジャにより燃料が加圧される加圧室、及び、当該加圧室へ燃料を導入する導入通路を有する。吸入弁部は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁によって構成され、プランジャの往復移動に応じて開閉し導入通路と加圧室とを連通または遮断する。
【0017】
高圧ポンプは、特に高速回転で使用される場合、例えば数msオーダーの高速応答が要求される。よって、本発明の電磁弁による閉弁応答性向上の効果が顕著に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による電磁弁を吸入弁部として適用した高圧ポンプの全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の高圧ポンプにおける吸入弁閉状態を示す断面図である。
【図3】図1の高圧ポンプにおける吸入弁開状態を示す断面図である。
【図4】(a)図2、(b)図3の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による電磁弁を適用した高圧ポンプの作動を説明する特性図である。
【図6】本発明の第1実施形態による電磁弁と比較例との閉弁応答性を比較する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態による電磁弁を吸入弁部として適用した高圧ポンプにおける吸入弁閉状態を示す断面図である。
【図8】比較例の電磁弁を吸入弁部として適用した高圧ポンプにおける吸入弁閉状態を示す断面図である。
【図9】比較例の電磁弁を適用した高圧ポンプの作動を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の電磁弁は、高圧ポンプ10の吸入弁部30Aとして適用される。この高圧ポンプ10は、車両用ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射装置に用いられる。コモンレール式燃料噴射装置は、主に燃料タンク、高圧ポンプ10、図示しないコモンレールおよび燃料噴射弁を備えている。
高圧ポンプ10は、燃料タンクから吸い上げた常圧の燃料を加圧し、高圧燃料をコモンレールへ供給する。コモンレールは、高圧ポンプ10から供給された高圧燃料を蓄圧するとともに、当該コモンレール内の高圧燃料をエンジン各気筒に設けられた燃料噴射弁に分配する。燃料噴射弁は、分配された高圧燃料を気筒の燃焼室に噴射供給する。
【0020】
高圧ポンプ10のポンプハウジング11は、主に、カムハウジング70、軸受カバー75および弁ハウジング12により構成される。
カムハウジング70および軸受カバー75は、駆動軸80を収容し、フィードポンプ72からなる予備圧送部、及びカム83、プランジャ13等からなる圧送部を構成する。
【0021】
弁ハウジング12は、弁収容穴16に吸入弁部30Aを収容する。また、弁ハウジング12の筒部18は、外壁がカムハウジング70のカム室71に連通する挿入孔77に挿入されて収容されている。筒部18の内部にはプランジャ13を往復移動可能に支持するシリンダ(プランジャ摺動孔)14が形成されている。筒部18のシリンダ14の内壁、プランジャ13の軸方向端面、吸入弁部30Aのシート部材31および弁体32に区画された空間に、燃料が加圧される加圧室95が形成される。
弁ハウジング12は、特許請求の範囲に記載の「ハウジング」に相当する。
【0022】
カムハウジング70には、軸受けカバー75を軸方向に挿入し支持する支持孔76が形成されており、支持孔76はカム室71と連通している。
軸受カバー75は、図1の破線で図示されるボルト等の固定部材でカムハウジング70に固定されている。軸受カバー75と駆動軸80の駆動力入力部81との間は、オイルシール89によりシールされている。
【0023】
第1軸受ブッシュ86は、軸受カバー75に圧入固定され、駆動軸80の一方(図1のの上方)の軸端部である駆動力入力部81を回転可能に支持する。第2軸受ブッシュ87は、カムハウジング70に圧入固定され、駆動軸80の他方(図1の下方)の軸端部であるフィードポンプ駆動部82を回転可能に支持する。軸受カバー75がカムハウジング70に固定されることにより、第1軸受ブッシュ86と第2軸受ブッシュ87とは、同軸上に配置される。
【0024】
駆動軸80は、駆動力入力部81、フィードポンプ駆動部82、およびカム83を有している。カム83は、駆動力入力部81とフィードポンプ駆動部82との間に形成され、カムハウジング70のカム室71に収容される。カム83は、輪郭が円形状を呈している。また、カム83の偏心軸83jは、駆動力入力部81及びフィードポンプ駆動部82の中心軸80jに対し偏心している。
【0025】
フィードポンプ72は、駆動軸80のフィードポンプ駆動部82と直接に、または継手部材などを介して連結されている。
フィードポンプ72は、燃料タンクから燃料を吸引し予備加圧する低圧供給ポンプであり、インナギア式ポンプやベーン式ポンプなどの周知のポンプ構造で構成されている。
【0026】
フィードポンプ72で予備加圧された燃料は、図示しない圧力調整装置によって、燃料の予備圧力(フィード圧)を一定に保つように調整されている。フィードポンプ72から吐出されたフィード燃料は、カムハウジング70に設けられたフィード燃料供給口90、及び弁ハウジング12の導入通路91を経由して加圧室95へ供給される。また、フィード燃料の一部は、図示しない絞り部を介してカム室71へ供給される。
【0027】
高圧ポンプ10の圧送部は、駆動軸80のカム83、プランジャ13、及び、カム83とプランジャ13との間に設けられ駆動軸80の駆動力をプランジャ13へ伝達するカムリング84とを備えている。圧送部は、フィードポンプ72より吐出されるフィード燃料を加圧室95で更に高圧に加圧して圧送する。
【0028】
プランジャ13は、駆動軸80のカム83に対して中心軸80jおよび偏心軸83jに直交する方向に配置されている。
プランジャ13のカム83側の端部には、カムリング84の外壁側の摺接部85に対して、図1の左右方向に相対的に摺接移動可能なタペット部13aが形成されている。すなわち、プランジャ13のタペット部13aの端部と、カムリング84の摺接部85の端部とは、互いに平行な平面で形成されている。
【0029】
カムリング84は、外壁が、摺接部85に対応する平坦面と、円弧状の曲面とからなる多角形状に形成され、内壁が円形に形成される。カムリング84の内壁には、第3軸受ブッシュ88が固定される。第3軸受ブッシュ88は、円形状のカム83に対して相対回転可能である。
【0030】
プランジャ13のタペット部13aと弁ハウジング12との間には、筒部18の軸方向に沿ってプランジャスプリング19が設置されている。これにより、プランジャ13のタペット部13aは、カムリング84の摺接部85に常に押し当てられている。
このプランジャスプリング19の付勢力と、加圧室95内の燃料圧力によりプランジャ13が受ける作用力とによって、カムリング84の回転が規制される。その結果、カムリング84は、それ自体は回転(自転)せず、駆動軸80の回転によるカム83の動きに従って、駆動軸80の中心軸80jの周りを公転しつつ、図1の左右方向に往復移動する。
【0031】
すると、カムリング84の往復移動に伴って、プランジャ13がシリンダ14の内壁に沿って往復移動する。以下、プランジャ13が図1の右方向に移動することを「上昇する」といい、プランジャ13が図1の左方向に移動することを「下降する」という。
プランジャ13が下降すると、導入通路91から吸入弁部30Aを経由して加圧室95にフィード燃料が吸入される。また、プランジャ13が上昇すると、加圧室95内の燃料が加圧され、燃料噴射圧相当の燃料圧に高圧化される。
【0032】
加圧室95の吐出側の燃料通路96には逆止弁68が設けられている。逆止弁68は、コモンレールおよび燃料噴射弁へ供給される吐出燃料が加圧室95へ逆流するのを防止する。加圧室95の内圧が逆止弁68の開弁圧を超えると、加圧された高圧燃料は、吐出通路97を経由して吐出口98から圧送され、コモンレールおよび燃料噴射弁へ供給される。
【0033】
次に、吸入弁部30Aおよび電磁アクチュエータ50Aについて図2〜図4を参照して説明する。
吸入弁部30Aは、シート部材31、弁体32、「第1付勢手段」としての第1スプリング33、保持部材34およびプラグねじ39からなり、導入通路91から加圧室95への燃料通路を開閉する。
シート部材31は、略円筒状に形成され、弁ハウジング12の弁収容穴16の底部に設けられる。シート部材31は、中心軸に沿って形成される軸孔311、及び、軸孔311と外壁312とを径方向に貫通する複数の連通孔313を有する。弁収容穴16の、シート部材31と電磁アクチュエータ50Aとの間の空間は、燃料溜まり室93を形成する。
【0034】
シート部材31の軸方向の電磁アクチュエータ50A側の面は、段差状に形成されている。径方向内側の端面314は、第1スプリング33の座面となる。また、プラグねじ39は、外径に形成される雄ねじが弁収容穴16内壁の雌ねじに螺合して弁ハウジング12に組み付けられる。シート部材31の径方向外側の段差面315がプラグねじ39に押圧されることで、シート部材31は、弁収容穴16の底に押し付けられ、固定される。
シート部材31の軸方向の加圧室95側の面には、軸孔311の周囲に凹テーパ状のシート部316が形成される。シート部316は、弁体32の先端に設けられる弁部321が着座可能である。
【0035】
弁体32は、軸状であり、加圧室95側から軸方向に弁部321、中径部322、小径部323が形成される。弁部321は、弁体32の中で外径が最大であり、加圧室95の反対側がシート部材31側のシート部316に対応するテーパ形状に形成されている。
中径部322は、シート部材31の軸孔311に摺動可能に収容される。また、中径部322の周方向の一部には、軸孔311との間に燃料通路を確保するための平坦部325が形成される。
弁部321と中径部322との間には、弁部321のテーパ部から連続するくびれ部324が形成される。くびれ部324は、シート部材31の軸孔311に対応する位置に設けられ、軸孔311の内壁との隙間に環状通路92を形成する。
【0036】
保持部材34は、シート部材31の電磁アクチュエータ50A側で、弁体32の小径部323に圧入等により嵌合する。保持部材34の電磁アクチュエータ50A寄りの外壁には鍔部341が形成される。第1スプリング33は、保持部材34の鍔部341とシート部材31の端面314との間に挟持される。また、保持部材34の周方向の一部には、燃料通路を確保するための溝部342が形成される。
保持部材34が弁体32に固定されることで、弁体32および保持部材34は軸方向の可動範囲が規制される。また、外部の力が作用しないとき、第1スプリング33の付勢力により、弁体32は、弁部321がシート部316に着座する閉弁方向に付勢される。
【0037】
次に、電磁アクチュエータ50Aは、コイル51、第一ステータ52、可動コア53、第二ステータ54、フランジ(第三ステータ)55A、ステム41、「第2付勢手段」としての第2スプリング43A、ストッパ57、スプール58およびスペーサ59を備えている。
コイル51は、樹脂製のスプール58に導線が巻回されている。コイル51へ通電することにより、フランジ55Aと可動コア53との間に電磁吸引力が発生し、可動コア53は図2〜図4の左方向に移動する。以下、図2〜図4の左方向を「吸引方向」、図2〜図4の右方向を「反吸引方向」という。
【0038】
第一ステータ52、第二ステータ54、及びフランジ(第三ステータ)55Aは、磁性材料で形成されている。第一ステータ52は、フランジ55Aの加圧室95と反対側で、コイル51の径方向内側に設けられている。第二ステータ54は、コイル51の径方向外側を覆うように設けられており、フランジ55Aと第一ステータ52とを磁気的に接続している。
第三ステータであるフランジ55Aは、弁ハウジング12の加圧室95と反対側の端部に取り付けられている。フランジ55Aは、加圧室95と反対側の吸引面551Aが可動コア53と対向する。また、フランジ55Aには、ステム41が挿通する軸孔552、及び軸孔552の周りで吸引面551Aに開口するスプリング収容室553が形成される。
【0039】
ここで、フランジ55Aの吸引面551Aの外径をφd1とし、スプリング収容室553の面取り口元径をφd2とすると、吸引面551Aの面積である磁路面積SAは下式1で示される。
SA=π/4×(φd1−φd2)2 ・・・(式1)
【0040】
第一ステータ52とフランジ55Aとの間には、非磁性材料から形成されるスペーサ59が介装されている。スペーサ59は、溶接やロウ付け等により第一ステータ52およびフランジ55Aに接続される。スペーサ59は、第一ステータ52とフランジ55Aとの間で磁気が短絡しないように磁気を遮断する。
【0041】
可動コア53は、磁性材料で円筒状に形成されている。可動コア53は、軸方向については第一ステータ52とフランジ55Aとの間に、径方向については第一ステータ52およびスペーサ59の径方向内側に、軸方向に往復移動可能に収容されている。コイル51に通電したとき、可動コア53は第三ステータであるフランジ55Aに吸引されて移動する。また、可動コア53は軸方向に貫通する連通孔531を有している。これにより、往復移動時、可動コア53の軸方向の前後の圧力は均等に維持される。
【0042】
ステム41は、可動コア53と溶接、ロウ付け、かしめ等によって一体に設けられ、可動コア53と共にアーマチャアッセンブリ40Aを構成する。ステム41は、フランジ55Aの軸孔552に挿通され、可動コア53と共に軸方向に往復移動する。また、ステム41の吸引方向の端部は、弁体32の端部に対向する。以下、アーマチャアッセンブリ40Aの吸引方向への移動を「前進」、反吸引方向への移動を「後退」という。
【0043】
第2スプリング43Aは、フランジ55Aのスプリング収容室553に収容され、一端がスプリング収容室553の底面に当接し、他端が可動コア53のフランジ55A側の端面に当接する。第2スプリング43Aは、可動コア53およびステム41を反吸引方向に付勢する。このとき、ステム41は、反吸引方向の端部が第1ステータ52の内底に設けられたストッパ57に当接することによって後退限が規制される。
【0044】
(作動)
次に、高圧ポンプ10の作動について説明する。高圧ポンプ10は、駆動軸80のカム83の回転に連動してプランジャ13が図1の左右方向に上昇または下降し、吸入行程、調量行程、及び、加圧行程のサイクルを繰り返すことで作動する。
【0045】
(0)初期状態
コイル51への通電されていないとき、可動コア53は、第2スプリング43Aの付勢力によってストッパ57に押し付けられている(図2参照)。そのとき、弁体32は、第1スプリング33の付勢力によってシート部316に着座している(図2、図4(a)参照)。
なお、環状通路92の燃料は、弁体32の中径部322に形成された平坦部325、及び保持部材34の溝部342を経由して燃料溜まり室93と流通可能であり(図4(a)の破線矢印F2)、環状通路92と燃料溜まり室93との燃料圧力が均衡する。
【0046】
(1)吸入行程
吸入行程でカムリフトが下降し始めると、加圧室95内が減圧されるため、環状通路92と加圧室95との間に差圧が生じる。そして、環状通路92の燃料圧力が第1スプリング33の付勢力を超えると、弁体32は、シート部316から離座(開弁)し始める。
コイル51に通電されると、フランジ55Aと可動コア53との間に、磁路面積SAに比例する電磁吸引力が発生する。この電磁吸引力が第2スプリング43Aの付勢力を超えると、アーマチャアッセンブリ40A(ステム41および可動コア53)は、吸引方向にリフト(前進)し始める。そして、ステム41の先端が弁体32に当接し、弁体32を開弁方向に押す。コイル51へ通電されている間、ステム41は弁体32を開弁状態に保つ(図3、図4(b)参照)。
【0047】
開弁状態では、燃料は、導入通路91から環状通路92を経由して加圧室95へ流入する(図4(b)の実線矢印F1)。燃料の一部は、弁体32の中径部322に形成された平坦部325、及び保持部材34の溝部342を経由して燃料溜まり室93と流通する(図4(b)の破線矢印F2)。これにより、環状通路92と燃料溜まり室93との燃料圧力が均衡し、また、流通する燃料が弁体32とシート部材31との摺動部を潤滑する。
【0048】
(2)調量行程
カムリフトが下死点から上昇に転じると、吸入行程から調量行程に移行する。このとき、コイル51への通電は継続され、弁体32は開弁状態を保っている。プランジャ13の上昇に伴い、加圧室95に吸入された燃料が環状通路92に吐き戻され、調量が行われる。
【0049】
(3)加圧行程
コイル51への通電がオフされると、可動コア53とフランジ55Aとの間の電磁吸引力が消滅する。すると、アーマチャアッセンブリ40Aは、第2スプリング43Aの付勢力によって反吸引方向に移動し初期状態の位置に復帰する。また、弁体32は、第1スプリング33の付勢力により閉弁方向に移動する。
その結果、加圧室95から環状通路92への燃料の吐き戻しが終了する。その後、プランジャ13の上昇に伴って加圧室95の内圧が上昇し、逆止弁68の開弁圧を超えると、燃料は、吐出通路97を経由して吐出口98から吐出される(図1参照)。
【0050】
ここで、コイル51への通電をオフしたとき、アーマチャアッセンブリ40Aの反吸引方向への移動速度が弁体32の閉弁速度よりも速くなるように、第1スプリング33および第2スプリング43Aのばね荷重等が設定される。具体的には、第2スプリング43Aの付勢力が第1スプリング33の付勢力よりも大きくなるように設定される。
これにより、アーマチャアッセンブリ40Aは、電磁吸引力の消滅とともに先行して反吸引方向に後退し、それに続いて、弁体32が閉弁方向に移動する。すなわち、アーマチャアッセンブリ40Aと弁体32とは、それぞれ別の付勢力により独立して移動する。
【0051】
(対比)
次に、本実施形態の効果について、比較例と対比しつつ説明する。
図8に、高圧ポンプの吸入弁部20Cとして適用される比較例の電磁弁を示す。吸入弁部20Cは、バルブアウタボディ23とバルブインナボディ24との間の空間に弁部材21が設置されている。弁部材21は、バルブインナボディ24のスプリング収容室242に収容された第1スプリング22の付勢力によって、バルブアウタボディ23のシート部231に着座するように付勢されている。
【0052】
一方、電磁アクチュエータ50Cでは、第2スプリング56は、ニードル61の反吸引側の端部とストッパ57との間に設けられ、ニードル61を吸引方向(図8の左方向)へ付勢している。ここで、第2スプリング56の付勢力は、第1スプリング22の付勢力よりも弱く設定されているため、コイル51に通電されていない状態では、弁部材21は、第2スプリング56の付勢力の影響を受けることなくシート部231に着座する。
その他、電磁アクチュエータ50Cにおいて図2、図3と同一の符号を付した部材は、第1実施形態の電磁アクチュエータ50Aと実質的に同一である。
なお、プランジャ13の往復移動方向、及び導入通路911の位置が第1実施形態と異なっているが、これらは本質的な違いではない。
【0053】
コイル51に通電されると、フランジ55Cと可動コア53との間に電磁吸引力が発生する。そして、ニードル61は、電磁吸引力と第2スプリング56の付勢力とによって吸引方向(図8の左方向)に前進する。
一方、弁部材21は、吸入弁部20Cが高圧ポンプに適用される場合は、第1実施形態と同様に、弁部材21の上流側と下流側とに生ずる燃料差圧によって開弁する。また、仮に弁部材21の両側に差圧が生じない場合であっても、前進したニードル61が第1スプリング22の付勢力に抗して弁部材21を押すことで、弁部材21は、第1スプリング22の付勢力に抗して開弁する。その結果、導入通路911と加圧室95とは、バルブアウタボディ23およびバルブインナボディ24の内部の通路を経由して連通する。
なお、高圧ポンプに適用される場合、ニードル61に設けられる鍔部611は、鍔部611の上流側と下流側とに生ずる差圧を利用して、弁部材21の開弁をアシストする。
【0054】
コイル51への通電がオフされると、可動コア53への電磁吸引力が消滅する。そして、弁部材21は、第1スプリング22の付勢力と第2スプリング56の付勢力との差の力によって閉弁方向に移動し、ニードル61を反吸引方向(図8の右方向)に押すとともに、シート部231に着座する。すなわち、弁部材21は、閉弁時にそれ自身の閉弁作動に加え、第2スプリング56の付勢力に抗してニードル61を押すという「余分な仕事(負荷)」を負っている。これによる影響について、次に図9を参照して説明する。
【0055】
図9は、比較例の電磁弁を高圧ポンプの吸入弁として適用したときの作動特性を示す。詳しくは、(a)カムリフトの1サイクルに対応する(b)通電(オンオフ)指令、(c)電流、(d)弁部材21およびニードル61のリフト、(e)ポンプ圧送量変化を示す。
時刻taでカムリフトが上死点から下降し始め、吸入行程が実行される。このとき、加圧室95の燃圧が減圧するため、弁部材21の上流通路912側と加圧室95側との差圧により弁部材21は開弁方向に移動し、時刻t2で開弁完了する。また、時刻t1で通電オンの指令によりコイル51に通電開始され、電磁アクチュエータ50Cに電磁吸引力が発生する。そして、ニードル61が前進し、時刻t3で前進限(フルリフト)に達する。
【0056】
時刻tbでカムリフトが下死点に達し、吸入行程から調量行程に移行する。時刻t4に最大値に達した電流は、要求される圧送量に応じて決まる時刻tcでの通電オフ指令によって切断される。その後、弁部材21は、上述のように、ニードル61を後退方向に押し戻しながら閉弁する。すると、この「ニードル61を押し戻す負荷」が大きいほど、通電オフ時刻tcから弁部材21が閉弁完了する時刻t5までの閉弁応答時間TvCは長くなる。ここで、「閉弁応答時間が長くなる」ことを「閉弁応答性が悪くなる」という。
【0057】
通電オフ時刻tc後、見かけ上は、調量行程から加圧行程に移行するものの、閉弁応答時間Tvc中は加圧室95の燃料が上流通路912に戻されることになるため、実際には燃料の加圧および吐出(圧送)が行われない。
そして、閉弁応答時間TvCを経過した時刻t5から燃料の加圧および吐出が行われる。しかし、このとき既にカムの位置は上死点に近づいており、残りの上昇ストロークが少なくなっているため、ポンプ圧送量QCが低下する。よって、閉弁応答性の悪化は、ポンプ圧送量の低下、すなわち要求される供給量に対するポンプ圧送量の不足を引き起こす。
【0058】
このように、比較例の電磁弁は、高速応答が要求される装置に適用された場合、閉弁応答性が問題となる。そこで次に、図5を参照して、本実施形態の作動特性と対比する。
図5における各パラメータは、図9と同一である。また、吸入行程から調量行程までの挙動については比較例とほぼ同様である。なお、詳細には、通電オンのとき電磁吸引力に対して第2スプリング43Aの付勢力がロスとなるため、時刻t3が比較的遅くなる傾向がある。しかし、このことは、高圧ポンプとしての機能に関して何ら影響しない。
【0059】
時刻tcで通電オフ指令によってコイル51への通電が切断された後、アーマチャアッセンブリ40Aは、第2スプリング43Aの付勢力により、弁体32の閉弁作動に先行して反吸引方向(図1の右方向)に後退する。そして、弁体32は、アーマチャアッセンブリ40Aが負荷となることなく、第1スプリング33の付勢力によって単独で閉弁方向に移動する。したがって、迅速な閉弁作動が可能となるため、閉弁開始時刻t4から閉弁完了時刻t5までの閉弁応答時間TvAを短縮し、閉弁応答性を向上させることができる。
すると、時刻t5で、カムの上死点までの上昇ストロークが十分に残っているため、ポンプ圧送量QAが増加する。よって、閉弁応答性を向上させることで、要求される供給量に対してポンプ圧送量を適正に確保することができる。
【0060】
図6は、本実施形態による吸入弁部30A、及び比較例による吸入弁部20Cの閉弁応答性を比較して示す図である。
図6に示すように、本実施形態における第1スプリング33、または比較例における第1スプリング22のばね荷重が大きくなるほど、閉弁応答時間は短縮する。仮に、第1スプリング以外の要因(可動部重量、移動距離等)をすべて同等とすると、第1スプリングのばね荷重が同一のとき、比較例の吸入弁部20Cよりも本実施形態の吸入弁部30Aの方が閉弁応答時間を短縮することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の電磁弁について、図7を参照して説明する。第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の電磁弁は、第1実施形態と同様、高圧ポンプの吸入弁部30Bとして適用される。吸入弁部30Bは、第1実施形態の吸入弁部30Aに対し、ステムおよびフランジの形状、並びに第2スプリングの設置箇所が異なる。
【0062】
ステム42は、フランジ55Bのシート部材31側に、径外方向へ突出する鍔部421が形成されている。「第2付勢手段」としての第2スプリング43Bは、第1スプリング33の径外側に配置され、一端がステム42の鍔部421に当接し、他端が保持部材34の端面314に当接する。これにより、第2スプリング43Bは、アーマチャアッセンブリ40B(ステム42および可動コア53)を反吸引方向(図7の右方向)に付勢する。
また、フランジ55Bは、第1実施形態のフランジ55Aのように吸引面に開口するスプリング収容室553を設ける必要がない。
【0063】
ここで、フランジ55Bの吸引面551Bの外径をφd3とし、軸孔552の面取り口元径をφd4とすると、吸引面551Bの面積である磁路面積SBは下式2で示される。
SB=π/4×(φd3−φd4)2 ・・・(式2)
【0064】
コイル51に通電されると、フランジ55Bと可動コア53との間に、磁路面積SBに比例する電磁吸引力が発生する。そして、アーマチャアッセンブリ40Bは、第2スプリング43Bの付勢力に抗して吸引方向(図7の左方向)に前進し、ステム42が弁体32を押す。すると、弁体32は、第1スプリング33の付勢力に抗して開弁する。
【0065】
コイル51への通電がオフされると、第2スプリング43Bの付勢力によってアーマチャアッセンブリ40Bが反吸引方向(図7の右方向)に後退する。また、第1スプリング33の付勢力によって弁体32が閉弁方向に移動し、シート部316に着座する。このとき、アーマチャアッセンブリ40Bの移動速度が弁体32の閉弁速度よりも速くなるように、言い換えれば、アーマチャアッセンブリ40Bの移動が弁体32の閉弁作動に先行するように、第1スプリング33および第2スプリング43Bのばね荷重等が設定される。これにより、第1実施形態と同様、弁体32の閉弁応答性を向上させることができる。
【0066】
また、第2実施形態では磁路面積SBが上記の式2のように定められる。そこで、第1実施形態と同等の電磁吸引力を発生させるためには、磁路面積SBを第1実施形態の磁路面積SA(式1参照)と同一とすればよい。すると、第2実施形態ではスプリング収容室553が設けられない分、面取り口元径φd4は第1実施形態の径φd2よりも小さくなるため、吸引面551Bの外径φd3を第1実施形態の外径φd1よりも小さくすることができる。そのため、可動コア53の外径を小さくし、可動コア53を軽量化することができる。よって、吸入弁部30Bの閉弁応答性をさらに向上することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、通電オフ時のアーマチャアッセンブリ40A、40Bの反吸引方向への移動速度が弁体32の閉弁速度よりも速くなるように、第1スプリング33および第2スプリング43A、43Bのばね荷重等が設定されている。しかし、アーマチャアッセンブリ40A、40Bの移動速度は、必ずしも弁体32の閉弁速度よりも速くなくてもよい。
【0068】
アーマチャアッセンブリ40A、40Bの移動速度が、アーマチャアッセンブリ40A、40Bが無いと仮定したときの弁体32単独での閉弁速度よりも遅い場合、弁体32の閉弁速度はアーマチャアッセンブリ40A、40Bの移動速度に制限されることとなる。
しかし、その場合でも、アーマチャアッセンブリ40A、40Bは、弁体32と同方向に付勢され、同一方向に移動するため、弁体32の閉弁作動に対して速度の差分のみがロスとなるに過ぎない。すなわち、図8の比較例のようにニードル61が弁体32の閉弁方向と反対方向に付勢されている場合と比べれば、弁体32の閉弁作動は明らかに有利になる。したがって、本発明の効果を発揮することができる。
【0069】
(イ)第2実施形態の吸入弁部30Bでは、第2スプリング43Bは、ステム42の鍔部421と反対側の端部がシート部材31の端面314に当接する。これに限らず、第2スプリング43Bの鍔部421と反対側の端部は、いずれかの部材によって固定されればよい。例えば、プラグねじの内壁に段差部を設け、この段差部に第2スプリング43Bの端部が当接するようにしてもよい。
【0070】
(ウ)上記実施形態では、高圧ポンプ10に、プランジャ13、吸入弁部30A、30B、電磁アクチュエータ50A、50B等が一組設けられるものとして説明した。その他の実施形態では、高圧ポンプは、駆動軸の周囲に、プランジャ、吸入弁部、電磁アクチュエータ等からなるユニットが複数組設けられてもよい。
【0071】
(エ)本発明の電磁弁は、ディーゼルエンジン用の高圧ポンプに限らず、ガソリンエンジン用の高圧ポンプの吸入弁部に適用されてもよい。また、本発明の電磁弁は、エンジン用の高圧ポンプに限らず、例えば燃料噴射弁等、高速応答が要求される様々な用途に適用することができる。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 ・・・高圧ポンプ、
12 ・・・弁ハウジング(ハウジング)、
13 ・・・プランジャ、
14 ・・・シリンダ、
30A、30B・・・吸入弁部(電磁弁)、
31 ・・・シート部材、
316 ・・・シート部、
32 ・・・弁体、
33 ・・・第1スプリング(第1付勢手段)、
40A、40B・・・アーマチャアッセンブリ(=ステム+可動コア)、
41、42 ・・・ステム、
43A、43B・・・第2スプリング(第2付勢手段)、
50A、50B・・・電磁アクチュエータ、
51 ・・・コイル、
53 ・・・可動コア、
55A、55B・・・フランジ(第三ステータ、固定コア)、
91 ・・・導入通路、
95 ・・・加圧室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動可能な弁体と、
前記弁体が着座または離座可能なシート部を有するシート部材と、
前記弁体を前記シート部に着座する閉弁方向に付勢する第1付勢手段と、
導線が巻回されるコイルと、
前記コイルへの通電により電磁吸引力を発生する固定コアと、
前記固定コアとの間に電磁吸引力が発生したとき吸引方向に移動する可動コアと、
前記可動コアと一体に形成され、前記可動コアと一体に吸引方向に移動したとき前記弁体の一方の端部に当接し前記弁体を開弁方向に押圧するステムと、
前記可動コアおよび前記ステムを前記吸引方向と反対方向である反吸引方向に付勢する第2付勢手段と、
を備え、
前記第1付勢手段の付勢方向である前記閉弁方向と前記第2付勢手段の付勢方向である前記反吸引方向とは同一方向であり、
前記コイルへの通電をオフしたとき、前記可動コアおよび前記ステムは、前記第2付勢手段の付勢力によって前記反吸引方向に移動し、前記弁体は、前記第1付勢手段の付勢力によって前記閉弁方向に移動することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記コイルへの通電をオフしたとき、前記可動コアおよび前記ステムは、前記弁体が前記閉弁方向に移動する速度よりも速い速度で前記反吸引方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記第2付勢手段は、一端が前記固定コアに当接し、他端が前記可動コアに当接することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第2付勢手段は、一端が前記ステムに設けられる鍔部に当接し、他端が固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項5】
プランジャと、
前記プランジャを往復移動可能に収容するシリンダと、
前記プランジャにより燃料が加圧される加圧室、及び、当該加圧室へ燃料を導入する導入通路を有するハウジングと、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁によって構成され、前記プランジャの往復移動に応じて開閉し前記導入通路と前記加圧室とを連通または遮断する吸入弁部と、
を備えることを特徴とする高圧ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2459(P2013−2459A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131002(P2011−131002)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】