説明

電磁弁および4ポート切り替え弁機構

【課題】流れ方向を切り替え可能に弁体の開口部を通過する流体の圧力損失が小さい電磁弁およびこの電磁弁を用いた4ポート切り替え弁機構を提供する。
【解決手段】電磁弁10は、開口部40を有する弁座38と、開口部40を閉塞しまたは開放する上弁体部42aおよび下弁体部42bからなる弁体42を備え、下弁体部42bは突起状部に形成されるとともに、突起状部が平面視で開口部40を覆う大きさに形成され、突起状部の外周に、弁座38に当接して開口部40を閉塞することができる周回突起42を備える。突起状部は鏡面加工される。上弁体部42aおよび下弁体部42bの間に断熱層44が設けられる。筺体部14は、弁座38を介して、流体が切り替え可能に流入または流出するポートに連通する上部室30および下部室32を備える。弁体42を下方に付勢するバネ49と、プランジャ20を保持する永久磁石24が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁および4ポート切り替え弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的駆動弁は、電磁弁(ソレノイドバルブ)と電動弁に大別される。電磁弁は、ソレノイドの磁力を用いてプランジャを吸引、付勢して弁を開閉する。電動弁は、ソレノイドの磁力に代えて電動機によってプランジャを付勢する。この構造の違いから、電磁弁は電動弁に比べて応答速度が速いことが特徴である。現在、使用される電気的駆動弁の大半は電磁弁である。
【0003】
電磁弁の開閉構造には、平面的に配置された2つの室から上方に向けて2つの開口部が形成される弁座を弁体のダイアフラムが変位して閉塞または開放するものと(例えば特許文献1参照)、平面的にあるいは上下に配置された2つの室が開口部を有する弁座で仕切られ、弁体が弁座に当接して弁座を閉塞し、あるいは突起状の弁体が開口部に挿入されて弁座を閉塞し、弁体が開口部から離間して弁座を開放するものがある(例えば特許文献2参照)。
これらいずれの開閉構造を有する電磁弁においても、通常、流体の入り口ポートに接続される室と流体の出口ポートに接続される室は定まっており、このため、このような一方通行の流路によって定められる流動条件を前提とした弁構造となっている。したがって、流体の流れ方向を逆にして電磁弁を用いると、流動抵抗の増加や流動の乱れ等を著しく生じるおそれがある。
【0004】
ところで、本出願人は、可動コア(プランジャ)の外周に真空断熱層を形成した断熱機能付き電磁弁を提案している(特許文献3参照)。この電磁弁によれば、流体の熱がソレノイドに移動して磁気抵抗の増加を来たす不具合が軽減され、消費エネルギの増加を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−239374号公報
【特許文献2】特開2002−147642号公報
【特許文献3】特開2004−150616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、流体の流れ方向を切り替えて電磁弁を使用しようとすると、弁の開閉構造の部分で流動状態が大きく変化することによる不具合を生じる点である。この不具合は、比較的多量の気体を取り扱うときに顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電磁弁は、
流体の通路となる開口部を有する弁座と、該開口部を閉塞しまたは開放する弁体を備え、
該弁体の該弁座に対向する側が突起状部に形成されるとともに、平面視で該開口部を覆う大きさに形成され、該突起状部の外周に、該弁座に当接して該開口部を閉塞することができる周回突起を備え、
該弁座を介して、流体が切り替え可能に流入または流出するポートに連通する上部室および下部室を備えてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電磁弁は、好ましくは、前記突起状部が鏡面加工されてなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電磁弁は、好ましくは、前記開口部の開口面積が300〜6000mmであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電磁弁は、好ましくは、前記流体が気体であり、該気体が流動するときの前記上部室と前記下部室の内部圧力差が20kPa以下に設定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電磁弁は、好ましくは、
前記弁体に接続され、該弁体を昇降するプランジャを備え、該プランジャと該弁体の前記突起状部の間に断熱層が設けられ、該プランジャの該弁体との接続部分が中空筒状に形成されてなることを特徴とする。
このとき、好ましくは、前記弁体が、前記突起状部を含む下弁体部および上弁体部の二体で構成され、該下弁体部および該上弁体部の間に前記断熱層が設けられてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電磁弁は、好ましくは、前記弁体を下動時に付勢するバネと、前記プランジャの上部の外周に設けられ、通電により該プランジャを吸引して上動させる第一のソレノイドおよび通電により該プランジャを釈放して下動させる第二のソレノイドと、該プランジャの外周に設けられる永久磁石を備えてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る4ポート切り替え弁機構は、上記の電磁弁を平面視で2行2列に4つ配設してなり、それぞれの電磁弁に少なくとも3つのポートを設けるとともに隣り合う電磁弁のポートに接続して、4つの流入または流出ポートを構成し、該電磁弁の開閉操作によって該4つの流出または流入ポートの流路を切り替えて2流路を構成することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電磁弁は、流体の通路となる開口部を有する弁座と、開口部を閉塞しまたは開放する弁体を備え、弁体の弁座に対向する側が突起状部に形成されるとともに、平面視で開口部を覆う大きさに形成され、突起状部の外周に、弁座に当接して開口部を閉塞することができる周回突起を備え、弁座を介して、流体が切り替え可能に流入または流出するポートに連通する上部室および下部室を備えてなるため、流れ方向を切り替え可能に弁体の開口部を通過する流体の圧力損失が小さい。
また、本発明に係る4ポート切り替え弁機構は、上記の電磁弁を平面視で2行2列に4つ配設してなり、それぞれの電磁弁に少なくとも3つのポートを設けるとともに隣り合う電磁弁のポートに接続して、4つの流入または流出ポートを構成し、電磁弁の開閉操作によって4つの流出または流入ポートの流路を切り替えて2流路を構成することができるこため、上記の電磁弁の効果を好適に奏することができるとともに、機構内部で2流路の流体の混合を生じるおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本実施の形態例に係る電磁弁の弁閉止状態における断面構造を示す図である。
【図2】図2は4ポート切り替え弁機構の作動状態を説明するための平面図である。
【図3】図3は4ポート切り替え弁機構の図3とは異なる作動状態を説明するための平面図である。
【図4】図4は4ポート自動流路切換機構が用いられる低露点空気発生装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0017】
まず、本実施の形態例に係る電磁弁について、図1を参照して説明する。
【0018】
図1に例示する本実施の形態例に係る電磁弁10は、駆動部12と、駆動部12によって駆動される弁および弁の上下動によって連通されまたは連通が遮断される上下室を含む筺体部14で構成される。駆動部12は断熱層13を介して筺体部14に取り付けられる。
【0019】
駆動部12は、ケーシング16の中に、2段のソレノイド(第二のソレノイド)18aおよびソレノイド(第一のソレノイド)18bと、ソレノイド18a、18bによって囲まれる、プランジャ(可動鉄片。移動コアということもある。)20およびコア(移動コアに対して固定コアということもある。)22を有する。駆動部12は、さらに、ソレノイド18bの下方に、プランジャ20を囲む、例えばフェライト磁石からなる永久磁石24を有する。
ケーシング16は、例えば冷間圧延鋼板(SPCC)材料で形成される。ソレノイド18a、18bは、例えば銅コイルで形成される。プランジャ20は、例えば磁性ステンレス材料で中空円筒状に形成される。コア22は、例えば磁性ステンレスで形成される。
駆動部12と筺体部14の間にソレノイド18a、18bや永久磁石24等を支持するグランド26が設けられる。グランド26と永久磁石24の間に例えばセラミックファイバーペーパー製の断熱層28が設けられる。グランド26は、グランド上部26a及びグランド上部26aの下方に内嵌めされるグランド下部26bで構成され、プランジャ20の下部が挿通される。
【0020】
筺体部14は、例えば直方体状に形成される。筺体部14は、上部室30および下部室32の2室で構成され、2室は中央に円形の開口部29aを有する仕切り壁29で仕切られる。筺体部14は、電磁弁10の使用条件に応じて適宜断熱施工される。
上部室30および下部室32は、それぞれポート34、36に連通する。仕切り壁29の上面および開口部29aの内部を覆って例えばFKM(フッ素ゴム)材料で形成されるパッキンが設けられ、弁座38とされる。弁座38は、上部室30および下部室32の間の流体の通路となる円形の開口部40を有する。
プランジャ20の下部は筺体部14に進入し、下端部が例えばSUS304材料で形成される弁体42に固着される。弁体42は、上弁体部42aと下弁体部42bの二体構造であり、上弁体部42aおよび下弁体部42bの間に例えばセラミックファイバーペーパー製の断熱層44が設けられる。プランジャ20の下端部は下弁体部42bの中央に係止される。プランジャ20は、弁体42との接続部分が中空筒状部21に形成される。中空筒状部21を含む係止構造部分は、空間23を残した状態で、例えばSUS304材料製のキャップで閉塞される。
下弁体部42b、言い換えれば弁体42の弁座38に対向する側は、キャップ46の部分を除いて、突起状部に形成される。突起状部は、流体の流動状態の乱れを小さくすることができるものである限り、球の一部を切り取った湾曲面形状、放物面形状、あるいは円錐・角錐等の錐形状その他の適宜の形状とすることができる。
下弁体部42bの突起状部は、平面視で開口部40を覆う大きさに形成される。下弁体部42bは、突起状部の外周に、弁座38に当接して開口部40を閉塞することができる周回突起48を備える。開口部40の開口面積は、下弁体部42bの形状に相応して、300〜6000mmであることが好ましい。また、開口部40の開口径:周回突起48の径(周回突起48の頂点の軌跡で形成される円の直径)=1:1.1〜1:1.3であることが好ましい。突起状部は、鏡面加工されることが好ましい。
上弁体部42aに下端部を係止し、上端部をグランド下部26bに当接して、例えばグランド下部26bを巻回するコイルバネからなるバネ49が設けられる。
なお、図1に現れる各種のシール部材や部品の係止構造の説明は省く。
【0021】
上記のように構成される電磁弁10は、以下のように作用する。
ソレノイド18a、18bは、いわゆるラッチ式ソレノイド弁であり、ソレノイド18bに通電することでプランジャ20を吸引、上動し、ソレノイド18aに通電することでプランジャ20を釈放して、下動する。
プランジャ20および弁体42の自重、バネ49の付勢力ならびに永久磁石24の吸引力に勝る力でソレノイド18bに吸引されてプランジャ20が上動することで、図1に示すように弁座38の開口部40を閉止していた弁体42は、プランジャ20とともに上動し、弁座38の開口部40を瞬時に開放する。上動したプランジャ20はソレノイド18bの通電を停止しても、プランジャ20および弁体42の自重ならびにバネ49の付勢力に勝る永久磁石24の吸引力によって上動位置に確実に保持される。したがって、プランジャ20が上動位置にある間はソレノイド18bへの通電を続けることが不要であり、省エネルギが実現される。
一方、プランジャ20および弁体42の自重およびバネ49の付勢力に助けられ、永久磁石24の吸引力のみに勝る吸引力でソレノイド18aに釈放されてプランジャ20が下動することで、弁体42は、弁座38の開口部40を瞬時に閉止する。下動したプランジャ20はソレノイド18aの通電を停止してもプランジャ20および弁体42の自重、バネ49の付勢力ならびに永久磁石24の吸引力によって下動位置に確実に保持される。したがって、プランジャ20が下動位置にある間はソレノイド18aへの通電が不要である。
【0022】
開口部40の開放状態において、例えばポート36から下部室32に流入した流体は開口部40を介して上部室30に流入し、ポート34から流出する。このとき、開口部40が大きいため、またこれにより開口部40を通過する流体の流動状態の乱れが小さいため、開口部40を通過する流体の圧力損失が小さい。
上部室30に流入した流体は弁体42に衝突するが、下弁体部42bが突起状部に形成され、かつ鏡面加工されているため、流体の流動状態の乱れが小さく、流体の圧力損失が小さい。
一方、開口部40の開放状態において、流体の流れ方向の切り替えにより、例えばポート34から上部室30に流入した流体は開口部40を介して下部室32に流入し、ポート36から流出する。このとき、開口部40が大きいため、またこれにより開口部40を通過する流体の流動状態の乱れが小さいため、開口部40を通過する流体の圧力損失が小さい。
上部室30から下部室32に移動する流体は弁体42に接するが、下弁体部42bが突起状部に形成され、かつ鏡面加工されているため、流体の流動状態の乱れが小さく、流体の圧力損失が小さい。
すなわち、本実施の形態例に係る電磁弁10は、流れ方向を切り替え可能に弁体38の開口部40を通過する流体の圧力損失が小さい。
【0023】
例えば温度の高い流体が電磁弁10を通過するとき、流体の輻射熱や熱伝導によって、弁体42が受けた熱がプランジャ20を介してソレノイド18a、18bに伝搬する等し、これにより、ソレノイド18a、18bの吸引力を低下させるおそれがある。しかし、電磁弁10は、下弁体部42bが鏡面加工されているため、輻射による下弁体部42bの受熱、昇温は軽減され、また、プランジャ20が中空円筒部21を有するため、プランジャ20によるソレノイド18a、18bへの伝熱が軽減され、また、グランド26が受けた熱は断熱層28によって遮断される。また、駆動部12と筺体部14の間に設けた断熱層13によっても上部室30からソレノイド18a、18bへの伝熱が遮断される。なお、弁体42およびプランジャ20の接続構造によっては、一体的に形成した弁体42とプランジャ20の間に断熱層44を設けてもよい。
また、弁体42が開口部42を閉止した状態において、上部室30および下部室32において流体がそれぞれの室に設けられる複数のポートのうちの1つから各室30、32に流入、流出して流動する場合、上部室30および下部室32のそれぞれにおいて流動する異なる流体間の熱移動は弁体42によって効率的に遮断される。
【0024】
本実施の形態例に係る電磁弁10に流通する流体が気体(ガスを含む)であり、さらにまた、気体が流動するときの上部室34と下部室32の内部圧力差が20kPa以下に設定されると、電磁弁10の効果をより顕著に発揮することができる。また、流動する気体の圧力は、常圧(大気の圧力に近い圧力)であると、好ましい。
【0025】
つぎに、本実施の形態例に係る4ポート切り替え弁機構について、図2〜図4を参照して説明する。
図2および図3は、相互に異なる作動状態を説明するための4ポート切り替え弁機構の平面図であり、図4は、4ポート切り替え弁機構を用いたプロセスの一例を説明するための図である。
【0026】
4ポート切り替え弁機構50は、4つの本実施の形態例に係る電磁弁10で構成される。
以下、4ポート切り替え弁機構50を4ポート自動流路切換機構50という。
4ポート自動流路切換機構50の4つの電磁弁52a〜52dは平面視で2行2列に配設される。電磁弁52a〜52dはそれぞれ少なくとも3つのポートを有する。電磁弁52a〜52dがそれぞれ例えば4つのポートを有する場合、各ポートの接続関係を調整することにより、4ポート自動流路切換機構50の4つのポートの位置関係を適宜変更することができる。
電磁弁52a〜52dの筺体部54a〜54dには、上室(上部室)および下室(下部室)に、それぞれ合計3つの流体の出入り口となるポート部(ポート)56a〜56d、58a〜58d、60a〜60dが設けられる。これらの各ポート部56a〜56d、58a〜58d、60a〜60dは、4つの電磁弁52a〜52dを組み合わせて一体化したときに図2および図3に示すような接続構造となるように、それぞれの電磁弁52a〜52dごとに異なる室および壁位置に設けられる。
すなわち、電磁弁52aについては、2つのポート部56a、58aは筺体部54aの下室の直交する壁位置に設けられ(以下、下室のポートであることを示すために、1Fの記号を付す。)、ポート部60aは上室のポート部56aと斜め上方の対向する壁位置に設けられる(以下、上室のポートであることを示すために、2Fの記号を付す。)。ポート部56aは4ポート自動流路切換機構50のひとつの開放端(ポート 流出・流入口)となる。
電磁弁52bについては、電磁弁52aの下室と向き合う下室の壁位置にポート部56bが設けられポート部58aと接続されるとともに、上室の直交する壁位置にポート部58b、60bが設けられる。ポート部58bは4ポート自動流路切換機構50の他のひとつの開放端となる。
電磁弁52cについては、電磁弁52b上室と向き合う上室の壁位置にポート部56cが設けられポート部60bと接続されるとともに、下室の直交する壁位置にポート部58c、60cが設けられる。ポート部58cは4ポート自動流路切換機構50の他のひとつの開放端となる。
電磁弁23dについては、電磁弁52cの下室と向き合う下室の壁位置にポート部56dが設けられポート部60cと接続されるとともに、電磁弁52aの上室と対向する上室の壁位置およびこれと直行する位置に、それぞれポート部58d、60dが設けられる。ポート部58dはポート部60aと接続される。ポート部54dは4ポート自動流路切換機構50の他のひとつの開放端となる。
すなわち、4ポート切り替え弁機構50は、2種の流体の流路を画成する4つのポート部56a、58b、58c、60dを備える。
【0027】
図2は、4ポート自動流路切換機構50の電磁弁52a、52cを開とし、電磁弁52b、52dを閉とした状態を示す。なお、4ポート自動流路切換機構50の作用の理解の便宜のために、図2および図3において、各電磁弁について開の状態のものにO、閉の状態のものにSの符号をそれぞれ付す。
電磁弁52aの下室のポート部56aから流入した流体は、電磁弁52aが開であるため、上室に流入し、ポート部60a、58dを介して電磁弁52dの上室に流入する。なお、電磁弁52bは閉の状態であるため、電磁弁52aの下室と電磁弁52bの下室がポート部58a、56bを介して連通状態であっても、電磁弁52bの下室の流体と上室の流体は完全に遮断され、両室の流体が混合することはない。電磁弁52dの上室に流入した流体は、電磁弁52dが閉であるため、上室のポート部54dから流出する。
一方、電磁弁52bの上室のポート部58bから流入した流体は、電磁弁52bが閉であるため、上室のポート部60bおよび電磁弁52cの上室のポート部56cを介して電磁弁52cの上室に流入する。上室に流入した流体は、電磁弁52cが開であるため、下室に流入し、ポート部58cから流体が流出する。なお、電磁弁52dは閉の状態であるため、電磁弁52cの下室と電磁弁52dの下室がポート部60c、56dを介して連通状態であっても、電磁弁52dの下室の流体と上室の流体は完全に遮断され、両室の流体が混合することはない。
これにより、4ポート自動流路切換機構50は、ポート部56aから流入してポート部54dから流出する1つの流体の流路と、ポート部58bから流入してポート部58cから流出する他の1つの流体の流路を画成する。
【0028】
つぎに、図3に示すように、4ポート自動流路切換機構50の電磁弁52a、52cを閉とし、電磁弁52b、52dを開とすると、電磁弁52aのポート部56aから流入する流体は電磁弁52bのポート部58bから流出し、電磁弁52dのポート部60dから流入する流体は電磁弁52cのポート部58cから流出し、両流体は4ポート自動流路切換機構50の内部で混合を生じることがない。
【0029】
以上説明した4つの電磁弁52a〜52dを組み合わせて一体化した4ポート自動流路切換機構50は、例えば低露点空気発生装置で好適に用いることができる。
図4に概略構成を示す低露点空気発生装置62は、水分凝縮ユニット64と、温度スイング吸着ユニット66と、低露点空気供給ユニット68を備える。図4中、各機器間をつなぐ各線は空気ダクトおよびその中の空気の流れを示し、そのうち、実線は処理空気または低露点空気の流れを、破線は再生用空気の流れを、それぞれ示す。なお、各機器および空気ダクトは、適宜断熱材で覆われる。
【0030】
水分凝縮ユニット12は水分凝縮除去機構を備え、処理空気を冷却、除湿する。
温度スイング吸着ユニット66は、2系列の吸着剤部66a、66bを有する。吸着剤部66a、66bには適宜の水分吸着剤が装填される。2系列の吸着剤部66a、66bは、ひとつの系列が水分吸着工程用の吸着剤部(図4では吸着剤部66a)であり、他のひとつの水分脱着工程用の吸着剤部(図4では吸着剤部66b)である。2系列の吸着剤部66a、66bは、水分吸着工程用と水分脱着工程用を切り替え可能に設けられる。
また、温度スイング吸着ユニット66は、再生用空気供給部70を有する。再生用空気供給部70に供給する空気(図4中、矢印Bで示す。)は、外気であってもよく、また、水分吸着工程用に供する吸着剤部66aから流出する温度スイング吸着後の空気の一部であってもよく、また、低露点空気供給ユニット64の昇圧前の温度スイング吸着後の空気の一部であってもよい。これにより、吸着剤部(図4では吸着剤部66b)に吸着された水分を脱着し、再生された吸着剤部が水分吸着工程用に供される。
低露点空気供給ユニット68は、温度調整機構と昇圧機構を備え、温度スイング吸着後の空気の温度を調整するとともにさらに供給に必要な圧力に昇圧して供給先に供給する。
【0031】
低露点空気発生装置62は、本実施の形態例の第一および第二の4ポート自動流路切換機構50a、50bを有し、接続される各ユニット間を流通する空気の流路を切り替える。なお、図4中、4ポート自動流路切換機構50a、50bの4つの電磁弁について、開の状態のものを○、閉の状態のものを●で示す。
図2と対照して説明すると、4ポート自動流路切換機構50aにおいて、水分凝縮ユニット64から流出する処理空気は、ポート部56aから4ポート自動流路切換機構50aに流入し、ポート部60dから流出し、吸着剤部66aに流入する。一方、吸着剤部66bから流出する再生用空気の排ガスは、ポート部58bから4ポート自動流路切換機構50aに流入し、ポート部58cから流出して外部に放出され、または例えば熱源として再生用空気供給部70に流入する。
吸着剤部が切り替えられて、吸着剤部66bが水分吸着工程用に供される場合、図3と対照して説明すると、水分凝縮ユニット64から流出する処理空気は、ポート部56aから4ポート自動流路切換機構50aに流入し、ポート部58bから流出し、吸着剤部66bに流入する。一方、吸着剤部66aから流出する再生用空気の排ガスは、ポート部60dから4ポート自動流路切換機構50aに流入し、ポート部58cから流出して外部に放出され、または例えば熱源として再生用空気供給部70に流入する。
第二の4ポート自動流路切換機構50bについては、説明を省略する。
4ポート自動流路切換機構50a、50bは、速い応答速度で流路切り替え動作し、また4ポート自動流路切換機構50a、50bの内部での異種流体の混合を防ぐ高いシール性を有し、また、4ポート自動流路切換機構50a、50bの内部を通過する流体の圧力損失が小さく、また、4ポート自動流路切換機構50a、50bの内部での2つの流体間の熱移動も少ない。
【0032】
本実施の形態例に係る4ポート切り替え弁機構は、以上説明した低露点空気発生装置に限らず、例えば空気清浄化装置を始めとする、空気の発生、調整、再生及び循環等の制御システムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10、52a〜52d 電磁弁
12 駆動部
13、28、44 断熱層
14、54a〜54d 筺体部
16 ケーシング
18a、18b ソレノイド
20 プランジャ
21 中空筒状部
22 コア
23 空間
24 永久磁石
26 グランド
26a グランド上部
26b グランド下部
29 仕切り壁
30 上部室
32 下部室
34、36、56a〜56d、58a〜58d、60a〜60d ポート
38 弁座
40 開口部
42a 上弁体部
42b 下弁体部
48 周回突起
49 バネ
50 4ポート切り替え弁機構
62 低露点空気発生装置
64 水分凝縮ユニット
66 温度スイング吸着ユニット
68 低露点空気供給ユニット
66a、66b 吸着剤部
70 再生用空気供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の通路となる開口部を有する弁座と、該開口部を閉塞しまたは開放する弁体を備え、
該弁体の該弁座に対向する側が突起状部に形成されるとともに、平面視で該開口部を覆う大きさに形成され、該突起状部の外周に、該弁座に当接して該開口部を閉塞することができる周回突起を備え、
該弁座を介して、流体が切り替え可能に流入または流出するポートに連通する上部室および下部室を備えてなることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記突起状部が鏡面加工されてなることを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記開口部の開口面積が300〜6000mmであることを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項4】
前記流体が気体であり、該気体が流動するときの前記上部室と前記下部室の内部圧力差が20kPa以下に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記弁体に接続され、該弁体を昇降するプランジャを備え、
該プランジャと該弁体の前記突起状部の間に断熱層が設けられ、
該プランジャの該弁体との接続部分が中空筒状に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁体が、前記突起状部を含む下弁体部および上弁体部の二体で構成され、該下弁体部および該上弁体部の間に前記断熱層が設けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記弁体を下動時に付勢するバネと、前記プランジャの上部の外周に設けられ、通電により該プランジャを吸引して上動させる第一のソレノイドおよび通電により該プランジャを釈放して下動させる第二のソレノイドと、該プランジャの外周に設けられる永久磁石を備えてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電磁弁を平面視で2行2列に4つ配設してなり、
それぞれの電磁弁に少なくとも3つのポートを設けるとともに隣り合う電磁弁のポートに接続して、4つの流入または流出ポートを構成し、該電磁弁の開閉操作によって該4つの流出または流入ポートの流路を切り替えて2流路を構成することができることを特徴とする4ポート切り替え弁機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122550(P2012−122550A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274156(P2010−274156)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(594185097)伸和コントロールズ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】