説明

電磁弁の確実な閉鎖方法

本発明は、電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流値が印加され、その後、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流値が印加され、その後、電磁弁に、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流値が印加され、この場合、第3の電流値は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている、電磁弁の閉鎖方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁弁の確実な閉鎖方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術
ドイツ特許第10144879号から、ブレーキ回路内圧力上昇動特性の改善方法および装置が既知である。そこに記載のブレーキ装置は、ドライバとは独立のブレーキ係合を実行することが可能である。このために、切換弁が遮断され且つリターン・ポンプが作動される。
【特許文献1】ドイツ特許第10144879号
【発明の開示】
【0003】
本発明は、電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流ないしは第1の電流値が印加され、その後、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流ないしは第2の電流値が印加され、およびその後、電磁弁に、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流ないしは第3の電流値が印加される、電磁弁の確実な閉鎖方法に関するものである。第3の電流値は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている。したがって、本発明は、第1の完全な閉鎖過程と、および弁が予め一部分のみ開放された状態における第2の閉鎖過程とから構成されている電磁弁の閉鎖過程を含む。この場合、第1の閉鎖過程は第2の閉鎖過程よりも緩慢に行われるので、騒音は小さい。第2の閉鎖過程はより強く行われるので、この場合には、完全に漏れがないように弁を閉鎖させる。
【0004】
本発明の有利な形態は、電磁弁への第2の電流値の印加は電磁弁が完全には開放されないように短時間であることを特徴とする。完全には開放されないことにより、騒音を伴う第2の閉鎖過程の時間はできるだけ短く保持される。さらに、きわめて短時間で且つ一部分のみの開放により、閉じ込められた圧力の損失は最小にされる。
【0005】
本発明の有利な形態は、電磁弁が、車輪滑り制御の範囲内で利用可能な油圧ブレーキ回路の、マスタ・ブレーキ・シリンダ並びにリターン・ポンプ吐出側間に配置されている切換弁であることを特徴とする。
【0006】
本発明の有利な形態は、十分大きい強さのドライバ・ブレーキ操作が存在したときに電磁弁への第1の電流値の印加が行われることを特徴とする。これにより形成された弁の閉鎖によって、ドライバにより上昇されたブレーキ圧力はブレーキ回路内に閉じ込められ、且つこれが例えば車両の保持機能ないしは転がり発進阻止のために使用可能である。
【0007】
本発明の有利な形態は、ドライバ・ブレーキ操作の強さが既に再び低下したときにはじめて、電磁弁への第2の電流値および第3の電流値の印加が行われることを特徴とする。この時点においてドライバはブレーキ・ペダルを既にリセットまたは放しているので、ドライバは、その強さがより強い第2の閉鎖過程によって、いらだたせ且つ不快にさせるブレーキ・ペダルへの反作用を全く感じないか、もはやほとんど感じることはない。
【0008】
本発明の有利な形態は、切換弁の閉鎖により、上昇されたブレーキ圧力がブレーキ回路内に閉じ込められることを特徴とする。
本発明の有利な形態は、電磁弁に、第2の電流値を印加した直後に第3の電流値が印加されることを特徴とする。これにより、第2の閉鎖位相は時間的にできるだけ短く保持される。
【0009】
本発明の有利な形態は、第2の閉鎖後に、電磁弁に、電磁弁を閉鎖状態に保持する第4の電流値が印加されることを特徴とする。
本発明の有利な形態は、
− 電磁弁が無通電時に開放している電磁弁であることと、
− 第2の電流値が第1の電流値より小さいことと、および
− 第3の電流値が第1の電流値より大きいことと、
を特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、
− 電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流値が印加され、
− その後、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流値が印加され、
− その後、電磁弁に、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流値が印加され、
− この場合、第3の電流値は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている、
ように構成されている電磁弁の閉鎖装置を含む。
【0011】
本発明による方法の有利な形態は、本発明による装置の有利な形態としても表わされ、およびその逆としても表わされる。
図面は図1−4を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
走行動特性制御装置は、ブレーキが操作されていないときにブレーキ回路内に圧力を閉じ込めることによる車両の制動ないしは保持を要求する機能を含む。この場合、図1において112で表わされているマスタ・ブレーキ・シリンダおよびEVで表わされている入口弁の間の結合が、USVで表わされている切換弁の閉鎖により遮断されなければならない。このとき、それに続く圧力保持位相の時間の間、ブレーキが操作されていないとき、閉じ込められているブレーキ圧力は切換弁の前後の差圧として作用する。切換弁において場合により発生する漏れは、ブレーキ回路内のきわめて急速な圧力降下を形成し、このとき、110で表わされているリターン・ポンプによる新たな圧力上昇を要求することがある。この新たな圧力上昇は騒音と関連し、したがって車両同乗者に対する快適性の低下と関連する。車輪ブレーキ・シリンダは図1において111で表わされ、AVは出口弁を表わす。
【0013】
閉鎖過程即ち圧力保持位相への移行の間における切換弁の電気操作は切換弁の漏れ傾向に影響を与える。この漏れ傾向は切換弁の最適化操作により抑制することができる。
漏れ傾向に対する原因は、閉鎖過程後に残存する切換弁の最小残留開放である。この最小残留開放は、切換弁がきわめて緩慢に閉鎖したとき、即ち弁棒(バルブ軸)がきわめて小さい速度で弁座内に滑り込んだときに発生することがある。この場合、弁棒および弁座の表面粗さのために弁棒を固着させ且つ弁棒および弁座の間に僅かな残留開放を形成することがある。この残留開放がブレーキ回路内の圧力降下の原因となる。
【0014】
本発明により、弁棒を高い速度で、したがって高い運動エネルギーで弁座内に移動させることが可能となる。これは時間的にきわめて短い弁の開放によって行われる。これにより、弁棒は僅かなリフトを形成し、このリフトが、戻るときに、即ち弁の新たな閉鎖において弁棒の加速度に利用可能である。
【0015】
のちに記載の位相3におけるUSVの短時間開放により、およびこれに基づく容積流れにより、同時に、USV特に弁座領域の洗浄が行われる。例えばブレーキ液内に含まれる汚れ粒子により形成されることがある、場合により発生する弁座領域内の汚れの集積は、これにより弁座領域からかなり良好に除去される。この汚れの集積は、位相3においてUSVが完全に閉鎖されないことの他の原因でもある。
【0016】
図2において、図2a)により表わされる上の2つの線図内に、通常行われている既知の切換弁の操作が示され、その下側に、図2b)により表わされる下の2つの線図内に、本発明による切換弁の操作が示されている。
【0017】
2つの線図において、
− 横軸に時間tが目盛られ、および
− 縦軸に、それぞれ上の線図内に弁電流Iが、およびそれぞれ下の線図内に供給圧力pvorおよび車輪ブレーキ・シリンダ圧力pが目盛られている。
横軸はそれぞれ4つの位相に分割され、これらの4つの位相を以下に詳細に説明する。
【0018】
位相1:
t=0からt=t1まで継続するこの位相内において、ブレーキ・ペダルの操作により、ドライバの関数としてのブレーキ回路内における圧力上昇が行われる。これは、供給圧力が、したがって車輪ブレーキ・シリンダ圧力もまた、時間と共に上昇することによって確認可能である。無通電時に開放している切換弁は、弁のきわめて小さい通電(I=0)のために開放している。位相1において、弁電流は0であっても、またはまだ弁を開放させるには至らない値I0を有していてもよい。
【0019】
位相2:
この位相はt1からt2まで継続する。時点t1において、車輪ブレーキ・シリンダ圧力は、保持されるべき値に到達する。したがって、この時点において切換弁は閉鎖され、このことが、I=I0から、図2bにおける所定の値I1ないしは図2aにおける所定の値I2へのジャンプで確認可能である。この位相の間に、マスタ・ブレーキ・シリンダ内の供給圧力pvorは、ブレーキ・ペダルを放すことにより低下される。しかしながら、切換弁は閉鎖されているので、車輪ブレーキ・シリンダ内の圧力pは一定のままである。
【0020】
位相3:
この位相はt2からt3まで継続する。位相2において既に開始された供給圧力の低下と共に、切換弁の前後の圧力差は、時点t2において切換弁が開放するまで上昇する。線図a)に示す操作においては、この圧力低下は、弁における開放する力および閉鎖する力が平衡する点まで、即ち位相4の目標圧力が達成されるまで行われる。この場合、弁はきわめて緩慢に閉鎖し、即ち弁棒は0に近い速度で弁座内に滑り込み、したがって、弁座および弁棒の間に小さい残留開放が残存するという危険性が存在する。図2aに示す既知の操作においてのみならず、図2bに示す本発明による操作においてもまた同じ目標圧力が達成されるべきであるので、図2bに示す操作においては、位相3の開始時に、電流は値I=I1から値I=I2に低下される。
【0021】
線図b)に示す最適化操作は、目標圧力が達成されたとき、即ち開放する力および閉鎖する力が平衡したとき、弁が、値I3へのほぼジャンプ状の電流の低下によりさらに開放されることを特徴とする。それに続いて、切換弁は、電流パルスI4により閉鎖される。これは、弁棒が高い速度で弁座内に移動され、したがって弁を完全に閉鎖させることになる。
【0022】
位相4:
t>t3に対するこの位相は、その間にブレーキ圧力がブレーキ回路内に閉じ込められ且つ一定に保持されるべき圧力保持位相である。圧力保持位相においては、切換弁は電流I5により操作される。I5は、弁の閉鎖のために必ず必要な電流よりも高い電流即ちI5>I2である。これにより、圧力保持の間に、閉鎖する力の側により高い力余裕が得られる。
【0023】
本発明による方法の流れ図が図3に示されている。本方法がブロック300においてスタートしたのち、ブロック301において、電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流値が印加される。その後、ブロック302において、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流値が印加される。その後、ブロック303において、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流値が印加され、この場合、第3の電流値は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている。ブロック304において、本発明による方法は終了する。
【0024】
本発明による装置の構成図が図4に示されている。この場合、ブロック400は例えば圧力センサのようなセンサ手段を表わし、その出力信号は操作手段401に供給され、一方、操作手段401は、本発明によって電磁弁402を操作する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、例えばABS、ASRまたは走行動特性制御のような車輪滑り制御の範囲内において使用可能なブレーキ回路図を示す。
【図2】図2は、a)通常の電磁弁操作およびb)本発明による電磁弁操作における、圧力および弁電流の異なる時間線図を示す。
【図3】図3は本発明による方法の流れ図を示す。
【図4】図4は本発明による装置の構成図を示す。
【符号の説明】
【0026】
110 リターン・ポンプ
111 車輪ブレーキ・シリンダ
112 マスタ・ブレーキ・シリンダ
300 スタート
301 電磁弁の第1の閉鎖(第1の電流値)
302 電磁弁の新たな部分開放(第2の電流値)
303 電磁弁の第2の閉鎖(第3の電流値)
304 終了
400 センサ手段(圧力センサ)
401 操作手段
402 電磁弁
AV 出口弁
EV 入口弁
I 弁電流
I0、I1、I2、I3、I4、I5 電流値
p 車輪ブレーキ・シリンダ圧力
pvor 供給圧力(ドライバ・ブレーキ操作)
t 時間
USV 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁(402)の閉鎖方法であって、
− 電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流値(I1)が印加され(301)、
− その後、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流値(I3)が印加され(302)、
− その後、電磁弁に、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流値(I4)が印加され(303)、
− この場合、第3の電流値(I4)は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている、
電磁弁(402)の閉鎖方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
電磁弁への第2の電流値(I3)の印加は、電磁弁が完全には開放されないように短時間であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、
電磁弁は、マスタ・ブレーキ・シリンダ(112)とリターン・ポンプ(110)吐出側との間に配置されている、車輪滑り制御の範囲内で利用可能な油圧ブレーキ回路の切換弁(USV)であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3の方法において、
十分大きい強さのドライバ・ブレーキ操作(pvor)が存在したとき、電磁弁への第1の電流値(I1)の印加が行われることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、
ドライバ・ブレーキ操作(pvor)の強さが既に再び低下したときにはじめて、電磁弁への第2の電流値(I3)および第3の電流値(I4)の印加が行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5の方法において、
切換弁(USV)の閉鎖により、上昇されたブレーキ圧力(p)がブレーキ回路内に閉じ込められることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、
電磁弁に、第2の電流値(I3)を印加した直後に第3の電流値(I4)が印加されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法において、
第2の閉鎖後に、電磁弁に、電磁弁を閉鎖状態に保持する第4の電流値(I5)が印加されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1の方法において、
− 電磁弁が無通電時に開放している電磁弁であることと、
− 第2の電流値(I3)が第1の電流値(I1)より小さいことと、および
− 第3の電流値(I4)が第1の電流値(I1)より大きいことと、
を特徴とする方法。
【請求項10】
電磁弁(402)の閉鎖装置であって、
操作手段(401)により、
− 電磁弁に、電磁弁を第1の閉鎖に導く第1の電流値(I1)が印加され、
− その後、電磁弁に、電磁弁を新たな部分開放に導く第2の電流値(I3)が印加され、
− その後、電磁弁に、電磁弁を第2の閉鎖に導く第3の電流値(I4)が印加され、
− この場合、第3の電流値(I4)は、第2の閉鎖が第1の閉鎖よりも高い電磁弁閉鎖速度で行われるように選択されている、
前記操作手段(401)を含む、電磁弁(402)の閉鎖装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−517604(P2009−517604A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541694(P2008−541694)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068412
【国際公開番号】WO2007/060111
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】