説明

電磁弁

【課題】油圧ヒステリシスを抑制する。
【解決手段】入力ポート52と出力ポート54とドレンポート56とフィードバックポート58の各ポートの連通と遮断とにより出力ポート54の出力圧を制御する電磁弁において、フィードバックポート58から作動油を導入可能なフィードバック室80を設け、このフィードバック室80を出力ポート54の出力圧が最大のときにフィードバックポート58とフィードバック室80とが遮断されると共にフィードバック室80に密閉空間が形成されるよう構成する。出力ポート54の出力圧が最大のときにフィードバック室80内の作動油が保持されるから、この状態から出力圧を低下させて、フィードバック室80をフィードバックポート58に連通させたときに、スプール44に素早くフィードバック力を作用させることができる。この結果、油圧ヒステリシスを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁弁としては、入力ポートと出力ポートとドレンポートとフィードバックポートとが形成されたスリーブと、スリーブ内を進退自在に配置されたスプールと、を有する調圧バルブ部と、推力を発生させて調圧バルブ部を駆動するリニアソレノイド部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電磁弁では、スプールとして外スプールと内スプールとを有し、出力圧を調圧している最中にはフィードバック圧が外スプールに作用するよう内スプールでフィードバックポートを開放し、出力圧を最大で固定しているときにはフィードバック圧が外スプールに作用しないよう内スプールでフィードバックポートを遮断している。フィードバックポートが遮断されると、フィードバック油路内のオイルはドレンされるようになっており、これによりフィードバック力は作用しなくなる。
【特許文献1】特開2005−155893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、こうした電磁弁では、フィードバックポートを遮断しているときに内部のオイルをドレンすると、フィードバック力がなくなるから、安定した出力圧を確保することができるものの、その状態から出力圧を低下させて調圧する際には、フィードバックポートが開放されて再び外スプールにフィードバック圧が作用するまでに時間を要するから、出力圧にヒステリシスが生じる。
【0004】
本発明の電磁弁は、出力圧にヒステリシスが生じるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁弁は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の電磁弁は、
入力ポートと出力ポートとドレンポートとフィードバックポートとが形成され前記各ポートに作動流体が流出入するスリーブと、該スリーブに挿入される軸状部材であって軸方向の移動に伴って前記各ポートの連通と遮断とを行なうスプールと、を有する弁部と、該スプールを軸方向に移動させるソレノイド部とを備え、前記ソレノイド部の駆動により前記各ポートの開口面積の徐変を伴って前記入力ポートと前記出力ポートとを連通すると共に前記出力ポートと前記ドレンポートとを遮断する第1の状態と前記入力ポートと前記出力ポートとを遮断すると共に前記出力ポートと前記ドレンポートとを連通する第2の状態とを切替可能な電磁弁であって、
前記フィードバックポートに接続され、該フィードバックポートを介して流入される作動流体により前記スプールにフィードバック力を作用させるフィードバック室が形成され、
前記フィードバック室は、前記弁部の状態が切り替えられている最中には前記フィードバックポートと前記フィードバック室とが連通され、前記弁部が前記第1の状態のときには前記フィードバックポートと前記フィードバック室とが遮断されると共に該フィードバック室に流入している作動流体が保持されるよう形成されてなる
ことを要旨とする。
【0007】
この本発明の電磁弁では、ソレノイド部の駆動により入力ポートと出力ポートとドレンポートとフィードバックポートの各ポートの開口面積の徐変を伴って入力ポートと出力ポートとを連通すると共に出力ポートとドレンポートとを遮断する第1の状態と入力ポートと出力ポートとを遮断すると共に出力ポートとドレンポートとを連通する第2の状態とを切替可能とし、フィードバックポートに接続されこのフィードバックポートを介して流入される作動流体によりスプールにフィードバック力を作用させるフィードバック室を形成し、このフィードバック室を、弁部の状態が切り替えられている最中にはフィードバックポートとフィードバック室とが連通され、弁部が第1の状態のときにはフィードバックポートとフィードバック室とが遮断されると共にこのフィードバック室に流入している作動流体が保持されるよう形成する。したがって、弁部が第1の状態から状態を切り替える際には、フィードバック室に作動流体が保持されているから、素早くフィードバック力をスプールに作用させることができる。この結果、出力圧にヒステリシスが生じるのを抑制することができる。また、弁部が第1の状態のときにフィードバックポートを遮断するから、ソレノイド部として大きな推力を発生するものを用いる必要がなく、電磁弁をコンパクトなものとすることができる。
【0008】
こうした本発明の電磁弁において、前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入した作動流体の流出が制限されるよう形成されてなるものとすることもできる。この場合、前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入した作動流体が排出されないよう形成されてなるものとすることもできるし、前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入した作動流体がオリフィスを介して排出されるよう形成されてなるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明の電磁弁において、前記入力ポートを介してライン圧を入力して調圧すると共にオートマチックトランスミッションに組み込まれたクラッチに前記出力ポートを介して直接に出力可能に形成されてなるものとすることもできる。ライン圧を入力して直接にクラッチに出力するタイプの電磁弁は、通常、ソレノイド部としては比較的大きな推力が要求され、ソレノイド部が大型化する傾向にあるが、本発明では、ソレノイド部を大型化することなく、電磁弁としての機能を十分に発揮させることができる。ここで、「クラッチ」には、二つの回転系を接続する通常のクラッチが含まれる他、一つの回転系をケースなどの固定系に接続するものも含まれる。
【0010】
さらに、本発明の電磁弁において、前記スプールは、前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なうランドを備えるものとすることもできる。こうすれば、ランドを用いてフィードバックポートとフィードバック室との連通と遮断とを行なうことができる。
【0011】
また、本発明の電磁弁において、前記スプールは、前記入力ポートと前記出力ポートと前記ドレンポートとの間の連通と遮断とを行なうと共に前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なう単一の部材であるものとすることもできるし、前記スプールは、前記入力ポートと前記出力ポートと前記ドレンポートとの間の連通と遮断とを行なう第1のスプールと、該第1のスプールとの相対的な移動を伴って前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なう第2のスプールとを備えるものとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の一実施例としての電磁弁20の構成の概略を示す構成図であり、図2は第1実施例の電磁弁20を備える油圧回路10の一部の構成の概略を示す構成図である。第1実施例の電磁弁20は、例えばオートマチックトランスミッションに組み込まれたクラッチの油圧制御に用いられ、図示するように、オイルタンク12に貯留されている作動油をオイルポンプ14により圧送されると共にレギュレータバルブ16により調圧された油圧(ライン油圧)から最適なクラッチ圧を生成してクラッチCLをダイレクトに制御可能なダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして構成されており、ソレノイド部30と、このソレノイド部30により駆動されてライン油圧を入力すると共に入力したライン油圧を調圧して出力する調圧バルブ部40とを備える。
【0014】
ソレノイド部30は、底付き円筒部材としてのケース31と、ケース31の内周側に配置され絶縁性のボビン32aに絶縁導線が巻回されてなるコイル(ソレノイドコイル)32と、ケース31の開口端部にフランジ外周部が固定されたフランジ部34aとフランジ部34aからコイル32の内周面に沿って軸方向に延伸された円筒部34bとからなる第1のコア34と、ケース31の底部に形成された凹部の内周面と接触すると共にコイル32の内周面に沿って第1のコア34の円筒部34bと所定間隔を隔てた位置まで軸方向に延伸された円筒状の第2のコア35と、第2のコア35に挿入され第1のコア34の内周面および第2のコア35の内周面を軸方向に摺動可能なプランジャ36と、第1のコア34の円筒部34bに挿入されプランジャ36の先端に当接すると共に円筒部34bの内周面を軸方向に摺動可能なシャフト38とを備える。また、ソレノイド部30は、コイル32からの端子がケース31の外周部に形成されたコネクタ部39に配策されており、この端子を介してコイル32への通電が行なわれる。
【0015】
第1のコア34の円筒部34bの先端部は、外面には先端に向かうほど外径が小さくなるようテーパが形成され、内面にはシャフト38の外径よりも大きな外径のプランジャ36の先端部が嵌挿可能にプランジャ受け34cが形成されている。プランジャ受け34cには、プランジャ36が第1のコア34に直接当接しないよう非磁性材料により形成された環状のリング34dが設けられている。
【0016】
ケース31と第1のコア34と第2のコア35とプランジャ36は、いずれも純度の高い鉄などの強磁性材料により形成されており、第1のコア34の円筒部34bの端面と第2のコア35の端面との間の空間は、非磁性体として機能するよう形成されている。なお、この空間は、非磁性体として機能させればよいから、ステンレススチールや黄銅などの非磁性金属を設けるものとしても構わない。
【0017】
ソレノイド部30では、コイル32に通電すると、ケース31,第2のコア35,プランジャ36,第1のコア34,ケース31の順にコイル32の周囲を周回するよう磁束が流れる磁気回路が形成され、これにより第1のコア34とプランジャ36との間に吸引力が作用してプランジャ36が吸引される。前述したように、プランジャ36の先端には第1のコア34の内周面を軸方向に摺動可能なシャフト38が当接されているから、プランジャ36の吸引に伴ってシャフト38は前方(図中左方向)に押し出される。
【0018】
調圧バルブ部40は、バルブボディ100に組み込まれるものとして構成されており、一端がソレノイド部30のケース31および第1のコア34に取り付けられた略円筒状のスリーブ50と、スリーブ50の内部空間に挿入され一端がソレノイド部30のシャフト38の先端に当接されたスプール60と、スリーブ50の他端にネジ止めされたエンドプレート42と、エンドプレート42とスプール60の他端との間に設けられてスプール60をソレノイド部30側の方向へ付勢するスプリング44とを備える。なお、エンドプレート42は、そのネジ位置を調整することにより、スプリング44の付勢力を微調整することができるようになっている。
【0019】
スリーブ50は、その内部空間の開口部として、図1中のスリーブ50における略中央位置に形成されレギュレータバルブ16(オイルポンプ14)からの作動油を入力する入力ポート52と、図1中の右寄りの位置に形成されクラッチCL側に作動油を吐出する出力ポート54と、図1中の右端の位置に形成され作動油をドレンするドレンポート56と、図1中の左寄りの位置に形成され出力ポート54からの作動油をバルブボディ100の内面とスリーブ50の外面とにより形成された油路58aを介して入力してスプール60にフィードバックするフィードバックポート58とが形成されている。また、スリーブ50の両端部には、スプール60の摺動に伴ってスリーブ50の内周面とスプール60の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔59a,59bも形成されている。
【0020】
スプール60は、スリーブ50の内部に挿入される軸状部材として形成されており、図1に示すように、スリーブ50の内径と略同一の外径の円柱状の三つのランド62,64,66と、図中の右側のランド62と中央のランド64との間を連結しランド62,64の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド62,64から中央部に向かうほど小さな外径となるようテーパ状に形成され入力ポート52と出力ポート54とドレンポート56の各ポート間を連通可能な連通部68と、図中の中央のランド64と左側のランド66との間を連結しスリーブ50の内壁と共にスプール60にフィードバック力を作用させるためのフィードバック室80を形成する連結部69とを備える。
【0021】
フィードバック室80に隣接するランド64の外面には、溝部64aが形成されており、スプール60(ランド64)がソレノイド部30寄りに位置しているときには、溝部64aを介してフィードバックポート58とフィードバック室80とを連通し、スプール60(ランド64)がエンドプレート42寄りに位置しているときには、フィードバックポート58をフィードバック室80から遮断する。このフィードバック室80は、溝部64aがフィードバックポート58に対して遮断されているときには、隣接する二つのランド64,66とバルブボディ100とにより密閉空間を形成し、内部に存在する作動油が保持されるようになっている。
【0022】
次に、こうして構成された第1実施例の電磁弁20の動作について説明する。図3は、第1実施例の電磁弁20の動作を説明する説明図である。まず、コイル32への通電がオフされている場合を考える。この場合、スプール60はスプリング44の付勢力によりソレノイド部30側へ移動しているから、ランド64により入力ポート52が閉塞されて入力ポート52と出力ポート54とが遮断されると共に連通部68を介して出力ポート54とドレンポート56とが連通された状態となる(図3(a)参照)。したがって、クラッチCLには油圧は作用しない。なお、フィードバックポート58は、ランド64の溝部64aを介してフィードバック室80に連通された状態となる。次に、コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1のコア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接されたスプール60がエンドプレート42側に移動する。これにより、入力ポート52と出力ポート54とドレンポート56とが互いに連通した状態となり、入力ポート52から入力された作動油は一部が出力ポート54に出力されると共に残余がドレンポート56に出力される(図3(b)参照)。また、フィードバックポート58はランド64の溝部64aを介してフィードバック室80に連通した状態となり、スプール60には出力ポート54の出力圧に応じたフィードバック力が作用する。したがって、スプール60は、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング44のバネ力とフィードバック室80のフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、スプール60がエンドプレート42側に移動し、入力ポート52の開口面積を広げると共にドレンポート56の開口面積を狭める。コイル32への通電が最大となると、スプール60はプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート42寄りに移動し、連通部68により入力ポート52と出力ポート54とが連通されると共にランド62によりドレンポート56が閉塞されて出力ポート54とドレンポート56とが遮断される(図3(c)参照)。これにより、クラッチCLには最大油圧が作用することになる。また、ランド64によりフィードバックポート58が閉塞されてフィードバックポート58とフィードバック室80とが遮断された状態となり、フィードバック室80にはこれ以上の作動油が導入されないから、スプール60に作用するフィードバック力が弱まる。これにより、ソレノイド部30の必要な推力(吸引力)を小さくすることができるから、ソレノイド部を大型化することなく、調圧バルブ部40を適切に駆動することができる。このように、第1実施例の電磁弁20では、コイル32への通電がオフされている状態で入力ポート52と出力ポート54とを遮断すると共に出力ポート54とドレンポート56とを連通するから、ノーマルクローズ型の電磁弁として機能することがわかる。
【0023】
いま、クラッチCLに最大油圧が作用している状態(図3(c)の状態)を考える。この状態では、フィードバックポート58は閉塞され、フィードバック室80は隣接するランド64,66とバルブボディ100とにより密閉空間が形成されて内部に作動油が保持されている状態となっている。この状態からコイル32への通電を弱めると、ソレノイド部30の吸引力が弱くなるから、スプール60はソレノイド部30側へ移動する(図3(b)の状態)。このとき、フィードバック室80は、ランド64の溝部64aを介してフィードバックポート58に連通し、フィードバック室80には出力ポート54の出力圧に応じた作動油が導入されるが、フィードバック室80には既に作動油が保持されているから、出力ポート54からの出力圧はフィードバック室80に素早く伝達されてフィードバック力がスプール60に作用する。図4に、コイル32に印加する電流Iと出力ポート54の出力圧Poとの関係を示す。図4(a)は実施例における電流Iと出力圧Poとの関係を示し、図4(b)は比較例における電流Iと出力圧Poとの関係を示す。なお、比較例は、フィードバックポート58が閉塞されている状態でフィードバック室80内の作動油がドレンされるものを用いた。図示するように、実施例の電磁弁20では、比較例に比してコイル32に印加する電流Iに対して出力圧Poのヒステリシスが小さくなる。フィードバック室80を、溝部64aがフィードバックポート58に対して遮断されているときには、隣接する二つのランド64,66とバルブボディ100とにより密閉空間を形成して内部に存在する作動油を保持するように形成するのは、こうした理由に基づいている。
【0024】
以上説明した第1実施例の電磁弁20によれば、出力ポート54の出力圧が最大油圧の状態のときにフィードバックポート58を閉塞すると共にフィードバック室80内の作動油を保持するから、出力圧を最大油圧から小さくするときにはスプール60にフィードバック力を素早く作用させることができる。この結果、出力圧にヒステリシスが生じるのを抑制することができる。もとより、プランジャ36の推力(吸引力)が最大(コイル32への通電が最大)のときに出力ポート54の出力圧が最大油圧となるノーマルクローズ型の電磁弁を用いて出力ポート54の出力圧が最大油圧のときにフィードバックポート58を閉塞してスプール60に作用するフィードバック力を弱くするから、ソレノイド部30で必要なプランジャ36の推力を小さくすることができ、ソレノイド部30を大型化させることなくダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして十分な機能を発揮させることができる。
【0025】
第1実施例の電磁弁20では、コイル32への通電が遮断している状態で入力ポート52と出力ポート54とを遮断すると共に出力ポート54とドレンポート56とを連通するノーマルクローズ型の電磁弁として構成するものとしたが、図5の変形例の電磁弁120に示すように、コイル32への通電が遮断している状態で入力ポート152と出力ポート154とを連通すると共に出力ポート154とドレンポート156とを遮断するノーマルオープン型の電磁弁として構成するものとしてもよい。なお、この変形例の電磁弁120では、実施例の電磁弁20のソレノイド部30と同一のものを用いているから、ソレノイド部30についての説明は省略する。変形例の電磁弁120では、調圧バルブ部140は、バルブボディ200に組み込まれるものとして構成されており、第1実施例の電磁弁20と同様に、スリーブ150とスプール160とエンドプレート142とスプリング144とを備える。スリーブ150は、その内部空間の開口部として、図5中のスリーブ150における略中央位置に形成され作動油を入力する入力ポート152と、図5中の左寄りの位置に形成されクラッチCL側に作動油を吐出する出力ポート154と、図5中の左端の位置に形成され作動油をドレンするドレンポート156と、図5中の右寄りの位置に形成され出力ポート154からの作動油をバルブボディ200の内面とスリーブ150の外面とにより形成された油路158aを介して入力してスプール160にフィードバックするフィードバックポート158とが形成されている。また、スリーブ150の両端部には、スプール160の摺動に伴ってスリーブ150の内周面とスプール160の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔159a,159bも形成されている。スプール160は、スリーブ150の内径と略同一の外径の円柱状の三つのランド162,164,166と、図中の左側のランド166と中央のランド164との間を連結しランド164,166の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド164,166から中央部に向かうほど小さな外径となるようテーパ状に形成され入力ポート152と出力ポート154とドレンポート156の各ポート間を連通可能な連通部168と、図中の中央のランド164と右側のランド162との間を連結しスリーブ150の内壁と共にスプール160にフィードバック力を作用させるためのフィードバック室180を形成する連結部169とを備える。フィードバック室180に隣接するランド164の外面には、溝部164aが形成されており、スプール160(ランド164)がソレノイド部30寄りに位置しているときには、ランド164によりフィードバックポート158とフィードバック室180とを遮断し、スプール160(ランド164)がスプリング144寄りに位置しているときには、溝部164aを介してフィードバックポート158とフィードバック室180とを連通する。このフィードバック室180は、溝部164aがフィードバックポート158に対して遮断されているときには、隣接する二つのランド162,164とバルブボディ200とにより密閉空間を形成し、内部に流入している作動油が保持されるようになっている。
【0026】
次に、こうして構成された変形例の電磁弁120の動作について説明する。図6は、変形例の電磁弁120の動作を説明する説明図である。まず、コイル32への通電がオフされている場合を考える。この場合、スプール160はスプリング144の付勢力によりソレノイド部30側へ移動しているから、連通部168を介して入力ポート152と出力ポート154とが連通すると共にランド166によりドレンポート156が閉塞されて出力ポート154とドレンポート156とが遮断された状態となる(図6(a)参照)。これにより、クラッチCLには最大油圧が作用する。また、ランド164によりフィードバックポート158が閉塞されてフィードバックポート158とフィードバック室180とが遮断された状態となり、フィードバック室180にはこれ以上の作動油が導入されないから、スプール160に作用するフィードバック力が弱まる。フィードバック室180は、フィードバックポート158との遮断に伴って密閉空間が形成され、内部の作動油は流出されることなく保持される。次に、コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1のコア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接されたスプール160がエンドプレート142側に移動する。これにより、入力ポート152と出力ポート154とドレンポート156とが互いに連通した状態となり、入力ポート152から入力された作動油は一部が出力ポート154に出力されると共に残余がドレンポート156に出力される(図6(b)参照)。また、フィードバックポート158はランド164の溝部164aを介してフィードバック室180に連通した状態となり、スプール160には出力ポート154の出力圧に応じたフィードバック力が作用する。したがって、スプール160は、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング144のバネ力とフィードバック室180のフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、スプール160がエンドプレート142側に移動し、入力ポート152の開口面積を狭めると共にドレンポート156の開口面積を広げる。コイル32への通電が最大となると、スプール160はプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート142寄りに移動し、ランド164により入力ポート152が閉塞されて入力ポート152と出力ポート154とが遮断されると共に連通部168を介して出力ポート154とドレンポート156とが連通された状態となる(図6(c)参照)。したがって、クラッチCLには油圧は作用しない。なお、フィードバックポート158は、ランド164の溝部164aを介してフィードバック室180に連通した状態となる。このように、変形例の電磁弁120では、コイル32への通電がオンされている状態で入力ポート152と出力ポート154とを連通すると共に出力ポート154とドレンポート156とを遮断するから、ノーマルオープン型の電磁弁として機能することがわかる。
【0027】
こうした変形例の電磁弁120によっても、出力ポート154の出力圧が最大油圧の状態のときにフィードバックポート158を閉塞すると共にフィードバック室180内の作動油を保持するから、第1実施例の電磁弁20と同様の効果を奏することができる。また、プランジャ36の推力(吸引力)がゼロ(コイル32への通電がオフ)のときに出力ポート154の出力圧が最大油圧となるノーマルオープン型の電磁弁を用いて出力ポート154の出力圧が最大油圧のときにフィードバックポート158を閉塞してスプール160に作用するフィードバック力を弱くするから、スプリング144としてバネ力が強いものを用いる必要がない。したがって、ソレノイド部30で必要なプランジャ36の推力を小さくすることができるから、ソレノイド部30を大型化させることなくダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして十分な機能を発揮させることができる。
【実施例2】
【0028】
次に、第2実施例の電磁弁220について説明する。図7は第2実施例の電磁弁220の構成の概略を示す構成図である。この第2実施例の電磁弁220は、調圧バルブ部240のスプールとして2つのスプール260,270を備える点でスプール60を1つだけしか備えない第1実施例の電磁弁20と異なる。なお、第2実施例の電磁弁220では、実施例の電磁弁20のソレノイド部30と同一のものを用いているから、ソレノイド部30についての説明は省略する。
【0029】
調圧バルブ部240は、バルブボディ300に組み込まれるものとして構成されており、スリーブ250と、外スプール260と、外スプール260の内部に組み込まれた内スプール270と、エンドプレート242と、外スプール260をソレノイド部30側に付勢するスプリング244とを備える。
【0030】
スリーブ250には、その内部空間の開口部として、図7中のスリーブ250における略中央位置に形成され作動油を入力する入力ポート252と、図7中の右寄りの位置に形成されクラッチCL側に作動油を吐出する出力ポート254と、図7中の右端の位置に形成され作動油をドレンするドレンポート256と、図7中の左寄りの位置に形成され出力ポート254からの作動油をバルブボディ300の内面とスリーブ250の外面とにより形成された油路258aを介して入力して外スプール260にフィードバックするフィードバックポート258とが形成されている。また、スリーブ250の両端部には、外スプール260の摺動に伴ってスリーブ250の内周面と外スプール260の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔259a,259bも形成されている。
【0031】
外スプール260は、スリーブ250の内径と略同一の外径を有する円柱状の二つのランド262,264と、二つのランド262,264を連結しランド262,264の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド262,264から中央部に向かうほど小さな外径となるようテーパ状に形成され入力ポート252と出力ポート254とドレンポート256の各ポート間を連通可能な連通部268とを備える。ランド264のエンドプレート242側の端部には、スプリング受け266が設けられており、エンドプレート242とスプリング受け266との間にスプリング244が配置されている。また、ランド264は、内スプール270を収容する中空の部材として構成されており、三つの貫通孔264a〜264cが形成されている。
【0032】
内スプール270は、外スプール260のランド264の内部空間に収納されており、ランド264の内径と略同一の外径の円柱状の二つのランド272,274と、二つのランド272,274よりも小さな外径で二つのランド272,274を連結し外スプール260のランド264の貫通孔264bと貫通孔264cとを連通する連通部276とを備える。また、内スプール270のランド274と外スプール260のスプリング受け266との間にはスプリング278が配置されており、スプリング278により内スプール270が外スプール260のソレノイド部30側に付勢されている。
【0033】
外スプール260の貫通孔264aは、出力ポート254の出力圧が内スプール270にスプリング278の付勢力とは反対方向に作用するよう形成されている。貫通孔264aを介して内スプール270にスプリング278の付勢力に打ち勝つ油圧が作用していないときには、スプリング278により内スプール270がソレノイド部30側に外スプール260に対して相対移動し、連通部276により貫通孔264b,264cを連通し、フィードバックポート258はランド264の貫通孔264b,内スプール270の連通部276,ランド264の貫通孔264cを介してフィードバック室280と連通する。一方、貫通孔264aを介して内スプール270にスプリング278の付勢力に打ち勝つ油圧が作用すると、内スプール270はエンドプレート242側に外スプール260に対して相対移動し、内スプール270のランド272により外スプール260のランド264の貫通孔264bを閉塞してフィードバックポート258とフィードバック室280とを遮断する。このとき、フィードバック室280は、外スプール260のランド264と内スプール270のランド272,274とバルブボディ300とにより密閉空間を形成し、内部に流入している作動油が保持されるようになっている。
【0034】
こうして構成された第2実施例の電磁弁220の動作について説明する。図8は、第2実施例の電磁弁220の動作を説明する説明図である。まず、コイル32への通電がオフされている場合を考える。この場合、外スプール260はスプリング244の付勢力によりソレノイド部30側へ移動しているから、ランド264により入力ポート252が閉塞されて入力ポート252と出力ポート254とが遮断されると共に連結部268を介して出力ポート254とドレンポート256とが連通された状態となる(図8(a)参照)。したがって、クラッチCLには油圧は作用しない。なお、フィードバックポート258は、ランド264の貫通孔264b,内スプール270の連通部276,ランド264の貫通孔264cを介してフィードバック室280に連通された状態となる。次に、コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1コア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接された外スプール260がエンドプレート242側に移動する。これにより、入力ポート252と出力ポート254とドレンポート256とが互いに連通した状態となり、入力ポート252から入力された作動油は一部が出力ポート254に出力されると共に残余がドレンポート256に出力される(図8(b)参照)。また、フィードバックポート258はランド264の貫通孔264b,連通部276,貫通孔264cを介してフィードバック室280に連通した状態となり、外スプール260には出力ポート254の出力圧に応じたフィードバック力が作用する。したがって、スプール260は、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング244のバネ力とフィードバック室280のフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、スプール260がエンドプレート242側に移動し、入力ポート252の開口面積を広げると共にドレンポート256の開口面積を狭める。コイル32への通電が最大となると、スプール260はプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート242寄りに移動し、連通部268により入力ポート252と出力ポート254とが連通されると共にランド262によりドレンポート256が閉塞されて出力ポート254とドレンポート256とが遮断される(図8(c)参照)。これにより、クラッチCLには最大油圧が作用することになる。また、この際、内スプール270には貫通孔264aを介してスプリング278の付勢力を上回る油圧が作用してエンドプレート242側に外スプール260に対して相対移動し、内スプール270のランド272により外スプール260の貫通孔264bが閉塞されてフィードバックポート258とフィードバック室280とが遮断された状態となる。したがって、フィードバック室280にはこれ以上の作動油が導入されないから、外スプール260に作用するフィードバック力が弱まる。これにより、ソレノイド部30の必要な推力(吸引力)を小さくすることができるから、ソレノイド部を大型化することなく、調圧バルブ部240を適切に駆動することができる。このように、第2実施例の電磁弁220では、コイル32への通電がオフされている状態で入力ポート252と出力ポート254とを遮断すると共に出力ポート254とドレンポート256とを連通するから、ノーマルクローズ型の電磁弁として機能することがわかる。
【0035】
いま、クラッチCLに最大油圧が作用している状態(図8(c)の状態)を考える。この状態では、フィードバックポート258が閉塞され、フィードバック室280はランド264とランド272,274とバルブボディ300とにより密閉空間が形成されて内部に作動油が保持されている状態となっている。この状態からコイル32への通電を弱めると、ソレノイド部30の吸引力が弱くなるから、外スプール260はソレノイド部30側へ移動する(図8(b)の状態)。このとき、フィードバック室280は、貫通孔264b,連通部276,貫通孔264cを介してフィードバックポート258に連通し、フィードバック室280には出力ポート254の出力圧に応じた作動油が導入されるが、フィードバック室280には既に作動油が保持されているから、出力ポート254からの出力圧はフィードバック室280に素早く伝達されてフィードバック力が外スプール260に作用する。したがって、出力圧のヒステリシスは小さくなる。
【0036】
以上説明した第2実施例の電磁弁220によれば、出力ポート254の出力圧が最大油圧の状態のときにフィードバックポート258を閉塞すると共にフィードバック室280内の作動油を保持するから、第1実施例の電磁弁20と同様の効果を奏することができる。
【0037】
第2実施例の電磁弁220では、コイル32への通電が遮断している状態で入力ポート252と出力ポート254とを遮断すると共に出力ポート254とドレンポート256とを連通するノーマルクローズ型の電磁弁として構成するものとしたが、図9の変形例の電磁弁320に示すように、コイル32への通電が遮断している状態で入力ポート352と出力ポート354とを連通すると共に出力ポート354とドレンポート356とを遮断するノーマルオープン型の電磁弁として構成するものとしてもよい。変形例の電磁弁320では、調圧バルブ部340は、バルブボディ400に組み込まれるものとして構成されており、第2実施例の電磁弁220と同様に、スリーブ350と外スプール360と内スプール370とエンドプレート342とスプリング344とを備える。スリーブ350には、その内部空間の開口部として、図9中のスリーブ350における略中央位置に形成され作動油を入力する入力ポート352と、図9中の左寄りの位置に形成されクラッチCL側に作動油を吐出する出力ポート354と、図9中の左端の位置に形成され作動油をドレンするドレンポート356と、図9中の右寄りの位置に形成され出力ポート354からの作動油をバルブボディ400の内面とスリーブ350の外面とにより形成された油路358aを介して入力して外スプール360にフィードバックするフィードバックポート358とが形成されている。また、スリーブ350の両端部には、外スプール360の摺動に伴ってスリーブ350の内周面と外スプール360の外周面との間から漏れ出た作動油を排出するための排出孔359a,359bも形成されている。外スプール360は、スリーブ350の内径と略同一の外径を有する円柱状の二つのランド362,364と、二つのランド362,364を連結しランド362,364の外径よりも小さな外径で且つ互いのランド362,364から中央部に向かうほど小さな外径となるようテーパ状に形成され入力ポート352と出力ポート354とドレンポート356の各ポート間を連通可能な連通部368とを備える。ランド364のソレノイド部30側の端部には、スプリング受け366が設けられている。また、ランド364は、内スプール370を収容する中空の部材として構成されており、三つの貫通孔364a〜364cが形成されている。内スプール370は、ランド364の内径と略同一の外径の円柱状の二つのランド372,374と、二つのランド372,374よりも小さな外径で二つのランド372,374を連結し外スプール360のランド364の貫通孔364bと貫通孔364cとを連通する連通部376とを備える。また、内スプール370のランド374と外スプール360のスプリング受け366との間にスプリング378が配置されており、スプリング378により内スプール370が外スプール360のエンドプレート342側に付勢されている。外スプール360の貫通孔364aは、出力ポート354の出力圧が内スプール370にスプリング378の付勢力とは反対方向に作用するよう形成されている。貫通孔364aを介して内スプール370にスプリング378の付勢力に打ち勝つ油圧が作用していないときには、スプリング378により内スプール370がエンドプレート342側に外スプール360に対して相対移動し、連通部376により貫通孔364b,364cを連通し、フィードバックポート358はランド364の貫通孔364b,内スプール370の連通部376,ランド364の貫通孔364cを介してフィードバック室380と連通する。一方、貫通孔364aを介して内スプール370にスプリング378の付勢力に打ち勝つ油圧が作用すると、内スプール370はソレノイド部30側に外スプール360に対して相対移動し、内スプール370のランド372により外スプール360のランド364の貫通孔364bを閉塞してフィードバックポート358とフィードバック室380とを遮断する。このとき、フィードバック室380は、外スプール360のランド364と内スプール370のランド372,374とバルブボディ400とにより密閉空間を形成し、内部に流入している作動油が保持されるようになっている。
【0038】
こうして構成された変形例の電磁弁320の動作について説明する。図10は、変形例の電磁弁320の動作を説明する説明図である。まず、コイル32への通電がオフされている場合を考える。この場合、外スプール360はスプリング344の付勢力によりソレノイド部30側へ移動しているから、連通部368を介して入力ポート352と出力ポート354とが連通されると共にランド362によりドレンポート356が閉塞されて出力ポート354とドレンポート356とが遮断された状態となる(図10(a)参照)。したがって、クラッチCLには最大油圧が作用する。また、内スプール370のランド372により貫通孔364bが閉塞されてフィードバックポート358とフィードバック室380とが遮断された状態となり、フィードバック室380にはこれ以上の作動油が導入されないから、外スプール360に作用するフィードバック力は弱まる。フィードバック室380は、フィードバックポート358との遮断に伴って密閉空間が形成され、内部の作動油は流出されることなく保持される。次に、コイル32への通電がオンされると、コイル32に印加される電流の大きさに応じた吸引力で第1のコア34にプランジャ36が吸引され、これに伴ってシャフト38が押し出されてシャフト38の先端に当接された外スプール360がエンドプレート342側に移動する。これにより、入力ポート352と出力ポート354とドレンポート356とが互いに連通した状態となり、入力ポート352から入力された作動油は一部が出力ポート354に出力されると共に残余がドレンポート356に出力される(図10(b)参照)。また、フィードバックポート358は貫通孔364b,連通部376,貫通孔364cを介してフィードバック室380に連通した状態となり、外スプール360には出力ポート354の出力圧に応じたフィードバック力が作用する。したがって、外スプール360は、プランジャ36の推力(吸引力)とスプリング344のバネ力とフィードバック室380のフィードバック力とが丁度釣り合う位置で停止することになる。この際、コイル32に印加される電流が大きくなるほど、即ちプランジャ36の推力が大きくなるほど、外スプール360がスプリング側344に移動し、入力ポート352の開口面積を狭めると共にドレンポート356の開口面積を広げる。コイル32への通電が最大となると、外スプール360はプランジャ36の可動範囲の最もエンドプレート342寄りに移動し、ランド364により入力ポート352が閉塞されて入力ポート352と出力ポート354とが遮断されると共に連通部368を介して出力ポート354とドレンポート356とが連通された状態となる(図10(c)参照)。したがって、クラッチCLには油圧は作用しない。なお、フィードバックポート358は、貫通孔364b,連通部376,貫通孔364cを介してフィードバック室180に連通した状態となる。このように、変形例の電磁弁320では、コイル32への通電がオンされている状態で入力ポート352と出力ポート354とを連通すると共に出力ポート354とドレンポート356とを遮断するから、ノーマルオープン型の電磁弁として機能することがわかる。
【0039】
こうした変形例の電磁弁320によっても、出力ポート354の出力圧が最大油圧の状態のときにフィードバックポート358を閉塞すると共にフィードバック室380内の作動油を保持するから、第2実施例の電磁弁220と同様の効果を奏することができる。また、プランジャ36の推力(吸引力)がゼロ(コイル32への通電がオフ)のときに出力ポート354の出力圧が最大油圧となるノーマルオープン型の電磁弁を用いて出力ポート354の出力圧が最大油圧のときにフィードバックポート358を閉塞してスプール360に作用するフィードバック力を弱くするから、スプリング344としてバネ力が強いものを用いる必要がない。したがって、ソレノイド部30で必要なプランジャ36の推力を小さくすることができるから、ソレノイド部30を大型化させることなくダイレクト制御用のリニアソレノイドバルブとして十分な機能を発揮させることができる。
【0040】
第1実施例の電磁弁20や第2実施例の電磁弁220,これらの変形例では、フィードバック室80,180,280,380に隣接して排出孔59a,159a,259a,359aを設けるものとしたが、フィードバック室80,180,280,380を排出孔59a,159a,259a,359aに対して完全にシールするものとすれば、排出孔59a,159a,259a,359aを設けないものとしてもよい。
【0041】
第1実施例の電磁弁20では、フィードバックポート58が閉塞されているときにはフィードバック室80内の作動油が外部へ排出されないように構成するものとしたが、図11の変形例の調圧バルブ部40Bに示すように、スリーブ50にフィードバック室80と排出孔59aとをオリフィス90によって接続するものとしてもよい。この場合でも、フィードバック室80内の作動油の流出を制限するから、フィードバックポート58とフィードバック室80とが遮断されたときにフィードバック室80内に作動油をある程度保持しておくことができる。したがって、次に、フィードバックポート58が開放されたときにフィードバックポート58からの作動油によって比較的素早くフィードバック力をスプール60に作用させることができ、油圧のヒステリシスを抑制することができる。なお、オリフィス90は、スリーブ50に設けるものに限られず、スプール60のランド66に形成するものとしてもよいし、バルブボディ100に形成するものとしてもよい。なお、変形例の電磁弁120や第2実施例の電磁弁220,その変形例の電磁弁320についても同様である。
【0042】
第1実施例の電磁弁20や第2実施例の電磁弁220,これらの変形例では、スリーブ50,150,250,350やスプール60,160,260,270,360,370などからなる調圧バルブ部40,140,240,340をバルブボディ100,200,300,400に組み込むものとしたが、バルブボディにスリーブ部を一体的に形成すると共にこのスリーブ部にスプールなどを挿入することにより電磁弁を構成するものとしてもよい。
【0043】
第1実施例の電磁弁20や第2実施例の電磁弁220,これらの変形例では、オートマチックトランスミッションに組み込まれたクラッチCLの油圧制御に用いるものとしたが、流体圧により作動する如何なる作動機構の流体圧制御に用いるものとしてもよい。
【0044】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電磁弁の製造産業や自動車産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施例としての電磁弁20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】第1実施例の電磁弁20を備える油圧回路10を部分的に示す部分構成図である。
【図3】第1実施例の電磁弁20の動作を説明する説明図である。
【図4】電流Iと出力圧Poとの関係を示す説明図である。
【図5】変形例の電磁弁120の構成の概略を示す構成図である。
【図6】変形例の電磁弁120の動作を説明する説明図である。
【図7】第2実施例の電磁弁220の構成の概略を示す構成図である。
【図8】第2実施例の電磁弁220の動作を説明する説明図である。
【図9】変形例の電磁弁320の構成の概略を示す構成図である。
【図10】変形例の電磁弁320の動作を説明する説明図である。
【図11】変形例の調圧バルブ部40Bの構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0047】
20,120,220,320,420 電磁弁、30 ソレノイド部、31 ケース、32 コイル、32a ボビン、34 第1のコア、34a フランジ部、34b 円筒部、34c プランジャ受け、34d リング、35 第2のコア、36 プランジャ、38 シャフト、39 コネクタ部、40,140,240,340,調圧バルブ部、42,142,242,342 エンドプレート、44,144,244,344 スプリング、50,150,250,350 スリーブ、52,152,252,352 入力ポート、54,154,254,354 出力ポート、56,156,256,356 ドレンポート、58,158,258,358 フィードバックポート、58a,158a,258a,358a 油路、59a,59b,159a,159b,259a,259b,359a,359b 排出孔、60,160 スプール、62,64,66,162,164,166,262,264,362,364 ランド、64a,164a 溝部、68,168,268,368 連通部、69,169 連結部,100,200,300,400 バルブボディ、260,360 外スプール、264a〜264c,364a〜364c 貫通孔、266,366 スプリング受け、270,370 内スプール、272,274,372,374 ランド、276,376 連通部、278,378 スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートと出力ポートとドレンポートとフィードバックポートとが形成され前記各ポートに作動流体が流出入するスリーブと、該スリーブに挿入される軸状部材であって軸方向の移動に伴って前記各ポートの連通と遮断とを行なうスプールと、を有する弁部と、該スプールを軸方向に移動させるソレノイド部とを備え、前記ソレノイド部の駆動により前記各ポートの開口面積の徐変を伴って前記入力ポートと前記出力ポートとを連通すると共に前記出力ポートと前記ドレンポートとを遮断する第1の状態と前記入力ポートと前記出力ポートとを遮断すると共に前記出力ポートと前記ドレンポートとを連通する第2の状態とを切替可能な電磁弁であって、
前記フィードバックポートに接続され、該フィードバックポートを介して流入される作動流体により前記スプールにフィードバック力を作用させるフィードバック室が形成され、
前記フィードバック室は、前記弁部の状態が切り替えられている最中には前記フィードバックポートと前記フィードバック室とが連通され、前記弁部が前記第1の状態のときには前記フィードバックポートと前記フィードバック室とが遮断されると共に該フィードバック室に流入している作動流体が保持されるよう形成されてなる
電磁弁。
【請求項2】
前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入している作動流体の流出が制限されるよう形成されてなる請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入している作動流体が排出されないよう形成されてなる請求項2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記フィードバック室は、前記弁部が前記第1の状態のときには、前記流入している作動流体がオリフィスを介して排出されるよう形成されてなる請求項2記載の電磁弁。
【請求項5】
前記入力ポートを介してライン圧を入力して調圧すると共にオートマチックトランスミッションに組み込まれたクラッチに前記出力ポートを介して直接に出力可能に形成されてなる請求項1ないし4いずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記スプールは、前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なうランドを備える請求項1ないし5いずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記スプールは、前記入力ポートと前記出力ポートと前記ドレンポートとの間の連通と遮断とを行なうと共に前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なう単一の部材である請求項1ないし6いずれか記載の電磁弁。
【請求項8】
前記スプールは、前記入力ポートと前記出力ポートと前記ドレンポートとの間の連通と遮断とを行なう第1のスプールと、該第1のスプールとの相対的な移動を伴って前記フィードバックポートと前記フィードバック室との連通と遮断とを行なう第2のスプールとを備える請求項1ないし6いずれか1項に記載の電磁弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−58013(P2009−58013A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224516(P2007−224516)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】