説明

電磁弁

【課題】同軸度を確保するとともに強度を高めつつコアヨーク間の磁気遮断を行うことができる電磁弁を提供する。
【解決手段】コア31とヨーク32が薄肉部101で連結された一体化部品102を切削加工し、一体化部品102をインサート部品としてMIM成形を行う。すなわち、一体化部品102を金型にセットし、非磁性体の金属粉末にバインダーを混合した混合材料を金型に供給する。脱脂工程でバインダーを蒸発させるなどして除去し、残存した金属粉末を焼結することで一体化部品102を構成するコア31及びヨーク32の突き合わせ部分33の外周部に連結部品34が一体形成された一体成形品15を形成する。一体成形品15の内側面121を切削して内径加工を行う。このとき、薄肉部101及び突出部105を切削削除することで、コア31とヨーク32間に間隙部95を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧を制御する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の自動変速機の油圧回路において油圧を制御する際には、図4に示すような電磁弁801が用いられていた。
【0003】
この電磁弁801のカバー811内には、ソレノイド812が収容されており、該ソレノイド812内には、コア813とヨーク814がガイド815によって連結されてなるモジュール816が収容されている。このモジュール816内には、プランジャ817が収容されており、前記ソレノイド812への通電に応じて作動するように構成されている。
【0004】
このように、前記コア813と前記ヨーク814とが前記ガイド815で連結された電磁弁801にあっては、前記コア813と前記ヨーク814の同軸度を確保するために、高い寸法精度が要求され、コスト高となる。また、複数の部品の組み合わせで同軸度が決まるため、一体構造と比較してヒステリシスが劣るという問題があった。
【0005】
これらを解決する為に、図5に示すように、コア901とヨーク902とを一体形成した電磁弁903構造が考案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電磁弁903にあっては、前記コア901と前記ヨーク902との連設部911の強度確保のために、当該連設部911は厚肉に形成されており、金属による連設部分の増加に伴って磁気効率の悪化を招いてしまう。
【0007】
このため、前記連設部911にレーザー加工を施して複数の穴921,・・・を設けるこで、磁気回路の磁気遮断が行われており、これによりコスト高を招いていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、同軸度を確保するとともに強度を高めつつコアヨーク間の磁気遮断を行うことができる電磁弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の電磁弁にあっては、磁気回路を構成する筒状のコア及びヨークが軸方向に連結され一体化された電磁弁において、切削加工された前記コア及び前記ヨークの突き合わせ部分を外周部からMIM成形でモールディングして、前記コアと前記ヨークとを、MIM成形された非磁性体金属製の連結部品によって離間した状態で連結した。
【0010】
ここで、MIM(Metal Injection Molding)成形とは、金属粉末にバインダーを混合した混合材料をインサート部品がセットされた金型に供給した後、脱脂工程でバインダーを除去するとともに残存した金属粉末を焼結することで、インサート部品がインサートされた成形品を一体形成する成形方法である。
【0011】
すなわち、切削加工された前記コア及び前記ヨークは、その突き合わせ部分が外周部から前記MIM成形によりモールディングされることによって連結部品が形成されており、前記コアと前記ヨークとは、MIM形成で一体形成された前記連結部品によって離間した状態で連結されている。
【0012】
このため、前記コアと前記ヨークとを別部品で連結する場合と比較して、前記コアと前記ヨークとの同軸度が高められる。
【0013】
また、前記MIM成形では、金属粉末を焼結して前記連結部品を前記コア及び前記ヨークに一体形成するため、前記コア及び前記ヨークは、非磁性体金属製の連結部品によって連結される。これにより、前記コア及び前記ヨークの連結部分は、金属製の前記連結部品によって補強される。
【0014】
そして、前記コア及び前記ヨークは、非磁性体金属製の前記連結部品によって離間した状態で連結されている。このため、同軸度を確保する為に前記コアと前記ヨークとを一体化した場合と比較して、コアヨーク間の磁気遮断が確実に行われる。
【0015】
また、本発明の請求項2の電磁弁にあっては、磁気回路を構成する筒状のコア及びヨークが軸方向に連結され一体化された電磁弁において、非磁性体金属が筒状に切削加工されてなる連結部品に、前記コア及び前記ヨークをMIM成形で一体形成し、前記コアと前記ヨークとを前記連結部品で包囲した状態で離間して連結した。
【0016】
すなわち、非磁性体金属が筒状に切削加工されてなる連結部品には、コア及びヨークが前述したMIM成形によって一体形成されており、MIM成形された前記コア及び前記ヨークは、前記連結部品によって包囲された状態で連結されている。
【0017】
このため、前記コアと前記ヨークとを別部品で連結する場合と比較して、前記コアと前記ヨークとの同軸度が高められる。
【0018】
また、前記コア及び前記ヨークを連結する前記連結部品は、非磁性体金属で構成されている。このため、前記コア及び前記ヨークの連結部分は、金属製の前記連結部品で包囲された状態で補強される。
【0019】
そして、前記コア及び前記ヨークは、非磁性体金属製の前記連結部品によって離間した状態で連結されている。このため、同軸度を確保する為に前記コアと前記ヨークとを一体化した場合と比較して、コアヨーク間の磁気遮断が確実に行われる。
【0020】
さらに、請求項3の電磁弁おいては、前記コア又は前記ヨークの少なくともいずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して抜け方向への移動を阻止する凹凸の抜け防止構造を設けた。
【0021】
すなわち、前記コア又は前記ヨークの少なくともいずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して抜け方向への移動を阻止する凹凸の抜け防止構造が設けられており、この抜け防止構造が構成された前記コア又は前記ヨークと前記連結部品との不用意な剥離及び脱落が防止される。
【0022】
加えて、請求項4の電磁弁では、前記コア及び前記ヨークを薄肉部を介して連結した状態で前記連結部品と一体化するとともに、前記コア及び前記ヨークの内径加工を行う際に前記薄肉部を切削して前記コアと前記ヨークとを切り離した。
【0023】
すなわち、前記コア及び前記ヨークは、薄肉部を介して連結された状態で前記連結部品と一体化されており、前記コア及び前記ヨークが別体化された場合と比較して、前記コア及び前記ヨークと前記連結部品との一体化工程が容易に行われる。
【0024】
そして、前記コア及び前記ヨークの内周面を切削して内径加工を行う際には、その工程において、前記薄肉部を切削することで、前記コアと前記ヨークとが切り離された状態が形成される。
【0025】
また、請求項5の電磁弁にあっては、前記コア又は前記ヨークの少なくといずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造を設けた。
【0026】
すなわち、前記コア又は前記ヨークの少なくといずれか一方と前記連結部品との接触部分には、互いに係合して回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造が設けられており、この回転防止構造が構成された前記コア又は前記ヨークと前記連結部品との不用意な回転が防止される。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明の請求項1の電磁弁にあっては、コアとヨークとをMIM成形で一体形成された連結部品によって離間した状態で連結することができるので、前記コアと前記ヨークとの同軸度を高めることができる。
【0028】
このため、前記コアと前記ヨークとを別部品で連結する構造上、前記コアと前記ヨークの同軸度を確保するために高い寸法精度が要求される場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、複数の部品を組み合わせて形成する場合と比較して、磁気的特性の向上を図ることができる。
【0029】
また、前記MIM成形では、金属粉末を焼結して前記連結部品を前記コア及び前記ヨークに一体形成するため、前記コア及び前記ヨークを非磁性体金属製の連結部品によって連結することができる。
【0030】
これにより、前記コア及び前記ヨークの連結部分を、金属製の前記連結部品によって外周部から包囲した状態で補強することができる。
【0031】
そして、前記コア及び前記ヨークは、非磁性体金属製の前記連結部品によって離間した状態で連結されている。
【0032】
このため、同軸度を確保するとともに前記コアと前記ヨークとの連結部分での剛性を確保する為に前記コアと前記ヨークとを一体化した場合と比較して、レーザー加工等を施すことなく、コアヨーク間の磁気遮断を確実に行うことができる。これにより、連結部分での剛性を維持しつつ、磁気効率の悪化を防止することができる。
【0033】
また、本発明の請求項2の電磁弁にあっては、MIM成形によってコア及びヨークを切削加工された連結部品に一体形成できるので、前記コアと前記ヨークとの同軸度を高めることができる。
【0034】
このため、前記コアと前記ヨークとを別部品で連結する構造上、前記コアと前記ヨークの同軸度を確保するために高い寸法精度が要求される場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、複数の部品を組み合わせて形成する場合と比較して、磁気的特性の向上を図ることができる。
【0035】
また、前記コア及び前記ヨークを連結する前記連結部品は、非磁性体金属で構成されている。
【0036】
このため、前記コア及び前記ヨークの連結部分を、金属製の前記連結部品によって外周部から包囲した状態で補強することができる。
【0037】
そして、前記コア及び前記ヨークは、非磁性体金属製の前記連結部品によって離間した状態で連結されている。
【0038】
このため、同軸度を確保するとともに前記コアと前記ヨークとの連結部分での剛性を確保する為に前記コアと前記ヨークとを一体化した場合と比較して、レーザー加工等を施すことなく、コアヨーク間の磁気遮断を確実に行うことができる。これにより、連結部分での剛性を維持しつつ、磁気効率の悪化を防止することができる。
【0039】
さらに、請求項3の電磁弁おいては、前記コア又は前記ヨークの少なくともいずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して抜け方向への移動を阻止する凹凸の抜け防止構造が設けられている。
【0040】
このため、この抜け防止構造が構成された前記コア又は前記ヨークと前記連結部品との不要な離脱を防止することができる。これにより、成形後の取り扱い時に生じ得る不具合を防止することができる。
【0041】
加えて、請求項4の電磁弁では、前記コア及び前記ヨークを薄肉部で連結された状態で前記連結部品と一体化するため、前記コア及び前記ヨークが別体化された場合と比較して、前記コア及び前記ヨークと前記連結部品との一体化工程を容易に実施することができる。
【0042】
そして、前記コア及び前記ヨークの内周面を切削して内径加工を行う際には、当該工程において、前記薄肉部を切削することで、前記コアと前記ヨークとが切り離された状態を形成することができる。
【0043】
これにより、前記内径加工と、前記コア及び前記ヨークの切り離し加工とを、同一の工程で行うことができる。
【0044】
また、請求項5の電磁弁にあっては、前記コア又は前記ヨークの少なくといずれか一方と前記連結部品との接触部分には、互いに係合して回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造が設けられている。
【0045】
このため、この回転防止構造が構成された前記コア又は前記ヨークと前記連結部品との不用意な回転を防止することができる。これにより、切削加工で内径加工をする際には、不要な回転を防止できるため、加工容易性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す説明図である。
【図2】同実施の形態の一体成形品を成形手順を示す説明図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態の一体成形品を成形手順を示す説明図である。
【図4】従来の電磁弁を示す図である。
【図5】他の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第一の実施の形態)
【0048】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0049】
図1は、本実施の形態にかかる電磁弁1を示す図であり、該電磁弁1は、例えば自動車の自動変速機における油圧回路で油圧を制御するものである。
【0050】
この電磁弁1は、円筒容器状のカバー11を備えており、該カバー11内には、ボビン12にコイル13が巻回されてなるソレノイド14が収容されている。該ソレノイド14は中空状に形成されており、当該ソレノイド14の内側には、磁気回路を構成する一体成形品15が収容されている。
【0051】
この一体成形品15の図中下端には、側方へ向けて延出したフランジ部21が一体形成されており、前記ソレノイド14は、このフランジ部21に支持されている。このフランジ部21は、ノズル22に形成された鍔部23に面接されており、前記カバー11の下縁は、全周に渡って前記鍔部23の下面側に折曲されている。
【0052】
これにより、前記ノズル22及び前記一体成形品15は、前記カバー11の下縁が折曲されてなるカシメ部24によって固定されており、前記一体成形品15と前記ノズル22の前記鍔部23とは、前記カバー11内に収容された状態で固定されている。
【0053】
前記一体成形品15は、図1中左方に示したように、前記フランジ部21が形成された円筒状のコア31と、該コア31と共に磁気回路を構成する円筒状のヨーク32と、前記コア31と前記ヨーク32との突き合わせ部分33を包囲した状態で前記コア31及び前記ヨーク32を連結した連結部材34とによって構成されている。
【0054】
前記コア31は、強磁性体の金属によって形成されており、前記フランジ部21より上端へ突出した部位は、その外形寸法が上方へ向かうに従って小さくなるコア側テーパ部41を構成している。該コア側テーパ部41の周面は、傾斜面42で構成されており、当該傾斜面42には、軸方向に貫通した縦穴43,・・・が複数箇所に設けられている。
【0055】
このコア31の軸方向上方に設けられた前記ヨーク32も、強磁性体の金属によって形成されており、当該ヨーク32の下端部側には、一般部51より外形寸法が小さい小径部52が形成されている。該小径部52の上部側には、矩形状に後退したリング溝53が周方向に延設されており、該リング溝53は、当該ヨーク32の全周に渡って形成されている。
【0056】
前記小径部52の下端部には、その外形寸法が下端へ向かうに従って小さくなるヨーク側テーパ部61が形成されており、該ヨーク側テーパ部61の下端は、前記コア31に設けられた前記コア側テーパ部41の上端から離間した状態で対向するように構成されている。これにより、当該ヨーク側テーパ部61の下端面と前記コア側テーパ部41の上端面とで磁気の受渡を行えるように構成されている。
【0057】
前記連結部材34は、非磁性体の金属によって形成されている。該連結部品34は、前記コア31の上端側に形成された前記コア側テーパ部41の一部と、前記ヨーク32の下端部に設けられた前記小径部52とを包囲するように形成されており、前記コア31と前記ヨーク32との前記突き合わせ部分33は、当該連結部品34によって外周部から包囲されるように構成されている。
【0058】
この連結部品34は、前記コア31の上端部と前記ヨーク32の下端部とに密着した状態で一体形成されており、前記コア31の上端部に密着した部位には、前記傾斜面42に密着したコア側テーパ面71が内側に形成されている。該コア側テーパ面71からは、円柱状のピン72,・・・が複数下方ヘ向けて延出しており、各ピン72,・・・は、前記コア側テーパ部41の前記傾斜面42に開設された縦穴43に挿入されるように構成されている。
【0059】
これにより、当該連結部品34と前記コア31との接触部分には、互いに係合して周方向である回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造81が前記ピン72,・・・及び前記縦穴43,・・・によって構成されている。
【0060】
前記連結部品34の前記ヨーク32に密着した部位には、前記ヨーク側テーパ部61の周面に密着したヨーク側テーパ面85が内側に形成されており、該ヨーク側テーパ面85より上部側には、矩形状に突出したリング状の凸条82が内側面に沿って周方向に延設されている。この凸条82は、当該連結部品34の内周面の全周に渡って形成されており、当該凸条82は、前記ヨーク32の前記小径部52に形成された前記リング溝53に内嵌するように構成されている。
【0061】
これにより、当該連結部品34と前記ヨーク32との接触部分には、互いに係合して軸方向である抜け方向への移動を阻止する凹凸の抜け防止構造91が前記連結部品34の前記凸条82と前記ヨーク32の前記リング溝53とによって構成されている。
【0062】
この状態において、前記コア31と前記ヨーク32とは、前記連結部品34を介して連結されており、該連結部品34は、前記コア31と前記ヨーク32とを離間した状態で保持するように構成されている。これにより、前記コア31及び前記ヨーク32間には、磁気回路を遮断する間隙部95が全周に渡って形成されている。
【0063】
この一体成形品15を形成する際には、図2中左側に示したように、先ず、前記コア31の上端と前記ヨーク32の下端とが薄肉円筒状の薄肉部101で連結され一体化された一体化部品102を切削加工によって形成する。なお、前記薄肉部101の外周部には、矩形状に後退した凹溝103が全周に渡って形成されている。
【0064】
そして、この一体化部品102をインサート部品としてMIM成形を行う。
【0065】
ここで、MIM(Metal Injection Molding)成形とは、金属粉末にバインダーを混合した混合材料をインサート部品がセットされた金型に供給した後、脱脂工程でバインダーを除去するとともに残存した金属粉末を焼結することで、インサート部品がインサートされた成形品を一体形成する成形方法である。
【0066】
具体的に説明すると、この一体化部品102を図外の金型にセットするとともに、非磁性体の金属粉末にバインダーを混合した混合材料を前記金型に供給する。そして、脱脂工程にて前記バインダーを蒸発させるなどして除去するとともに残存した前記金属粉末を焼結することで、図2中中央に示したように、前記一体化部品102を構成する前記コア31及び前記ヨーク32の前記突き合わせ部分33の外周部に前記連結部品34が一体形成された一体成形品15を形成する。
【0067】
このとき、前記連結部品34は、流動性を有した前記混合材料によって形成されている。このため、前記コア31に設けられた前記縦穴43,・・・に浸入した混合材料が焼結されることによって前記ピン72,・・・が当該連結部品34に一体形成される。また、前記ヨーク32に設けられたリング溝53に浸入した前記混合材料が焼結されることによって前記凸条82が前記連結部品34に一体形成される。さらに、前記コア31及びヨーク32間に設けられた前記凹溝103に浸入した前記混合材料が焼結されることによって、リング状の突出部105が前記連結部品34の内側面の全周に渡って形成される。
【0068】
次に、この一体成形品15の内側面121を切削して、前記コア31及び前記ヨーク32の内径加工を行う。このとき、前記一体化部品15に形成された前記薄肉部101の厚み寸法以上、具体的には、前記連結部品34に設けられた突出部105の基端まで内側から切削することで、図2中右側に示したように、前記薄肉部101及び前記突出部105を切削削除する。これにより、前記コア31と前記ヨーク32とが切り離されるとともに、前記コア31と前記ヨーク32との間に前記間隙部95を形成する。
【0069】
以上の構成にかかる本実施の形態において、切削加工されたコア31及びヨーク32は、その突き合わせ部分33が外周部からMIM成形によりモールディングされており、前記突き合わせ部分33の外周部には、連結部品34が一体形成されている。
【0070】
これにより、前記コア31及び前記ヨーク32の突き合わせ部分33を、MIM成形で一体形成された前記連結部品34によって連結することができるので、前記コア31と前記ヨーク32との同軸度を高めることができる。
【0071】
このため、前記コア31と前記ヨーク32とを別部品であるガイドで連結する構造上、前記コア31と前記ヨーク32との同軸度を確保するために高い寸法精度が要求される場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、複数の部品を組み合わせて形成する場合と比較して、磁気的特性の向上を図ることができる。
【0072】
また、前記MIM成形では、金属粉末を焼結して前記連結部品34を前記コア31及び前記ヨーク32に一体形成するため、前記コア31及び前記ヨーク32を非磁性体金属製の前記連結部品34によって連結することができる。
【0073】
これにより、前記コア31及び前記ヨーク32の連結部分を、金属製の前記連結部品34によって外周部から包囲した状態で補強することもできる。
【0074】
そして、前記コア31及び前記ヨーク32は、非磁性体金属製の前記連結部品34によって離間した状態で連結されている。
【0075】
このため、同軸度を確保するとともに前記コア31と前記ヨーク32との連結部分での剛性を確保する為に前記コア31と前記ヨーク32とを一体化した場合と比較して、レーザー加工等を施すことなく、コアヨーク間の磁気遮断を確実に行うことができる。
【0076】
したがって、連結部分での剛性を維持しつつ、磁気効率の悪化を防止することができる。
【0077】
また、前記コア31及び前記ヨーク32は、薄肉部101で連結された一体化部品102の状態で前記連結部品34と一体化されている。このため、前記コア31及び前記ヨーク32が別体化された場合と比較して、前記MIM成形により前記コア31及び前記ヨーク32に前記連結部品34を一体成形する際の工程が容易となる。
【0078】
そして、前記コア31及び前記ヨーク32の内周面121を切削して内径加工を行う際には、当該内径加工工程において、前記薄肉部101を切削することで、前記コア31と前記ヨーク32とが切り離された状態を形成することができる。
【0079】
これにより、前記内径加工と、前記コア31及び前記ヨーク32の切り離し加工とを、同一の工程で行うことができ、作業効率を向上することができる。
【0080】
また、前記連結部品34に前記凸条82を設けるとともに、前記ヨーク32に前記凸条82と係合する前記リング溝53を設けることによって軸方向である抜け方向への移動を阻止する抜け防止構造91が構成されている。
【0081】
このため、この抜け防止構造91が構成された前記ヨーク32と前記連結部品34との不要な離脱を防止することができる。これにより、成形後の取り扱い時に生じ得る不具合を防止することができる。
【0082】
さらに、前記連結部品34の前記コア側テーパ面71からは、円柱状のピン72,・・・が下方ヘ向けて延出しており、前記コア31の前記コア側テーパ部41の前記傾斜面42には、前記各ピン72,・・・が挿入される縦穴43,・・・が設けられている。このため、前記連結部品34の前記円柱状のピン72,・・・と前記コア31の前記縦穴43,・・・とによって互いに係合して回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造81が構成されている。
【0083】
このため、この回転防止構造81が構成された前記コア31又は前記ヨーク32と前記連結部品34との不用意な回転を防止することができる。これにより、切削加工で内径加工をする際には、不要な回転を防止できるため、加工容易性を高めることができる。
【0084】
(第二の実施の形態)
【0085】
図3は、本発明の第二の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0086】
すなわち、前述した一体成形品15を形成する際には、図3中左側に示したように、先ず、非磁性体金属を筒状に切削加工して前述と同形状であって、リング状の前記突出部105が内側面の全周に渡って形成された連結部品34を形成する。
【0087】
そして、この連結部品34をインサート部品として前述したMIM成形を行う。
【0088】
具体的に説明すると、この連結部品34を図外の金型にセットするとともに、非磁性体の金属粉末にバインダーを混合した混合材料を前記金型に供給する。そして、脱脂工程にて前記バインダーを蒸発させるなどして除去するとともに残存した前記金属粉末を焼結することで、図3中中央に示したように、前記連結部品34の内側に前記コア31及びヨーク32が前記薄肉部101で連結されてなる前記一体化部品102をMIM成形で一体形成する。
【0089】
これにより、前記連結部品34の内側に前記コア31及び前記ヨーク32の前記突き合わせ部分33に前記連結部品34が一体形成された一体成形品15が形成される。
【0090】
このとき、前記コア31及びヨーク32を備えた前記一体化部品102は、流動性を有した前記混合材料によって形成されている。
【0091】
このため、前記連結部品34に設けられた前記ピン72,・・・によって、前記コア31には、前記各ピン72,・・・の外周部に供給された混合材料が焼結されることによって、前記ピン72,・・・が内嵌する前記縦穴43,・・・が形成される。
【0092】
また、前記連結部品34に設けられた前記凸条82によって、前記ヨーク32には、前記凸条82の外周部に供給された前記混合材料が焼結されることによって、前記凸条82が内嵌する前記リング溝53が前記ヨーク32に形成される。
【0093】
そして、前記コア31及びヨーク32間には、前記連結部品34の前記突出部105の外周部に供給された前記混合材料が焼結されることによって、当該突出部105に外嵌する前記凹溝103が前記コア31及び前記ヨーク32間に形成される。
【0094】
次に、この一体成形品15の内側面121を切削して、前記コア31及び前記ヨーク32の内径加工を行う。このとき、前記一体化部品15に形成された前記薄肉部101の厚み寸法以上、具体的には、前記連結部品34に設けられた突出部105の基端まで内側から切削することで、図3中右側に示したように、前記薄肉部101及び前記突出部105を切削削除する。これにより、前記コア31と前記ヨーク32とが切り離されるとともに、前記コア31と前記ヨーク32との間に前記間隙部95を形成する。
【0095】
このように、前記連結部品34には、前記コア31及びヨーク32が前記MIM成形で一体形成され、前記コア31及び前記ヨーク32の突き合わせ部分33が前記連結部品34で包囲された状態で離間して連結された前記一体成形品15を形成することができる。
【0096】
以上の構成にかかる本実施の形態において、非磁性体金属が筒状に切削加工されてなる前記連結部品34には、コア31及びヨーク32が前述したMIM成形によって一体形成されており、MIM成形された前記コア31及び前記ヨーク32は、前記連結部品34によって包囲された状態で連結されている。
【0097】
これにより、前記コア31と前記ヨーク32とを別部品であるガイドで連結する場合と比較して、前記コア31と前記ヨーク32との同軸度を高めることができる。
【0098】
また、前記コア31と前記ヨーク32とを別部品であるガイドで連結する構造上、前記コア31と前記ヨーク32との同軸度を確保するために高い寸法精度が要求される場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、複数の部品を組み合わせて形成する場合と比較して、磁気的特性の向上を図ることができる。
【0099】
また、前記コア31及び前記ヨーク32を連結する前記連結部品34は、非磁性体金属で構成されている。
【0100】
このため、前記コア31及び前記ヨーク32の連結部分を、金属製の前記連結部品34によって外周部から包囲した状態で補強することができる。
【0101】
そして、前記コア31及び前記ヨーク32は、非磁性体金属製の前記連結部品34によって離間した状態で連結されている。
【0102】
このため、同軸度を確保するとともに前記コア31と前記ヨーク32との連結部分での剛性を確保する為に前記コア31と前記ヨーク32とを一体化した場合と比較して、レーザー加工等を施すことなく、コアヨーク間の磁気遮断を確実に行うことができる。
【0103】
したがって、連結部分での剛性を維持しつつ、磁気効率の悪化を防止することができる。
【0104】
また、前記回転防止構造81及び前記抜け防止構造91によって、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
なお、本実施の形態では、前記連結部品34に前記凸条82を設けるとともに、前記ヨーク32に前記凸条82と係合して軸方向である抜け方向への移動を阻止する前記リング溝53を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、凸部を形成する前記凸条82を前記ヨーク32側に設け、凹部を形成する前記リング溝53を前記連結部品34に設けても良い。
【0106】
また、前記コア31に前記凸条82又は前記リング溝53を設け、これらと係合する前記リング溝53又は前記凸条82を前記連結部品34に設けても良い。
【0107】
そして、本実施の形態では、前記連結部品34に前記ピン72,・・・を設けるとともに、前記コア31に前記縦穴43,・・・を設けた場合に付いて説明したが、これに限定されるものでは無く、凸部を構成する前記ピン72,・・・を前記コア31に設け、凹部を構成する前記縦穴43,・・・を前記連結部品34に設けても良い。
【0108】
また、前記ヨーク32に前記ピン72,・・・又は前記縦穴43,・・・を設け、これらと係合する前記縦穴43,・・・又は前記ピン72,・・・を前記連結部品34に設けても良い。
【符号の説明】
【0109】
1 電磁弁
15 一体成形品
31 コア
32 ヨーク
34 連結部品
33 突き合わせ部分
43 縦穴
53 リング溝
72 ピン
81 回転防止構造
82 凸条
91 抜け防止構造
95 間隙部
101 薄肉部
102 一体化部品
121 内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路を構成する筒状のコア及びヨークが軸方向に連結され一体化された電磁弁において、
切削加工された前記コア及び前記ヨークの突き合わせ部分を外周部からMIM成形でモールディングして、前記コアと前記ヨークとを、MIM成形された非磁性体金属製の連結部品によって離間した状態で連結したことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
磁気回路を構成する筒状のコア及びヨークが軸方向に連結され一体化された電磁弁において、
非磁性体金属が筒状に切削加工されてなる連結部品に、前記コア及び前記ヨークをMIM成形で一体形成し、前記コアと前記ヨークとを前記連結部品で包囲した状態で離間して連結したことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
前記コア又は前記ヨークの少なくともいずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して抜け方向への移動を阻止する凹凸の抜け防止構造を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記コア及び前記ヨークを薄肉部を介して連結した状態で前記連結部品と一体化するとともに、前記コア及び前記ヨークの内径加工を行う際に前記薄肉部を切削して前記コアと前記ヨークとを切り離したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の電磁弁。
【請求項5】
前記コア又は前記ヨークの少なくといずれか一方と前記連結部品との接触部分に互いに係合して回転方向への移動を阻止する凹凸の回転防止構造を設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220401(P2011−220401A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88375(P2010−88375)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】