説明

電磁波シールド性光透過性窓材の製造方法、及び電磁波シールド性光透過性窓材

【課題】高精度のメッシュパターンを有する光透過性電磁波シールド材の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材101上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層102を形成する工程と、
前記アンカーコート層102上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層103を形成する工程と、
前記前処理層103上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層104を形成する工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の前面フィルタや、病院などの電磁波シールドを必要とする建築物の窓に用いられ得る貼着用シート等として有用な光透過性電磁波シールド材の製造方法、前記製造方法により製造された光透過性電磁波シールド材、および前記光透過性電磁波シールド材を含むディスプレイ用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA機器や通信機器等の普及にともない、これらの機器から発生する電磁波によりもたらされる人体への影響が懸念されている。また、携帯電話等の電磁波により精密機器の誤作動などを起こす場合もあり、電磁波は問題視されている。
【0003】
そこで、OA機器のPDPの前面フィルタとして、電磁波シールド性および光透過性を有する光透過性電磁波シールド材が開発され、実用に供されている。このような光透過性電磁波シールド材はまた、電磁波から精密機器を保護するために、病院や研究室等の精密機器設置場所の窓材としても利用されている。
【0004】
この光透過性電磁波シールド材では、光透過性と電磁波シールド性を両立することが必要である。そのために、光透過性電磁波シールド材には、例えば、(1)透明基材の一方の面に、金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュからなる電磁波シールド層が設けられたものが使用される。この導電性のメッシュの部分によって電磁波がシールドされ、開口部によって光の透過が確保される。
【0005】
この他にも、光透過性電磁波シールド材には、電子ディスプレイ用フィルタとして種々のものが提案されている。例えば、(2)金属銀を含む透明導電薄膜が設けられた透明基材、(3)透明基材上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明基材上に導電性粉末を含む導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が一般的に知られている。
【0006】
このように電磁波シールド層において、優れた光透過性と電磁波シールド性を両立させるには、メッシュ状の透明導電層を用い、極めて線幅を細くし、非常に微細なパターンとする必要がある。しかしながら、前記した従来の光透過性電磁波シールド材では、光透過性と電磁波シールド性を十分に両立させるのが困難であった。すなわち、(1)の光透過性電磁波シールド材では、細線化に限界があり、微細なメッシュパターンを得るのが困難なうえ、目ずれや目曲がりなどの繊維の配列が乱れる問題がある。(2)の光透過性電磁波シールド材の場合、電磁波シールド性が十分ではなく、金属特有の反射光沢が強いなどの問題がある。(3)の光透過性電磁波シールド材では、製造工程が長く、コストが高くなるなどの問題がある。また、(4)の光透過性電磁波シールド材では、十分な電磁波シールド性を得ることが困難であり、電磁波シールド性を向上させるためにパターンを厚くして導電性粉末の量を多くすると、光透過性が低下するなどの問題を有している。
【0007】
しかしながら、前記(4)の光透過性電磁波シールド材の製造は、例えば、金属粉末又はカーボン粉末などの導電性粉末と、樹脂とを含む導電性インクを用い、透明基材上に凹版オフセット印刷法により印刷パターンを形成する方法を用いて行われる。したがって、前記(4)の光透過性電磁波シールド材では、エッチング加工などを必要とせず、簡易な方法かつ低コストで製造できるという利点を有している。
【0008】
そこで、前記(4)の技術を改良したものとして、特許文献1および2では、導電性インクを凹版オフセット印刷法により透明基材上に印刷パターンを形成した後、さらに電磁波シールド性を向上させるために、無電解めっきまたは電解めっきなどにより、前記印刷パターン上に金属層を選択的に形成する方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特許第3017987号明細書
【特許文献2】特許第3532146号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1〜3による電磁波シールド性光透過窓材では、透明基材上に印刷された導電性インクまたは触媒インクがダレたり、広がるなどして、これらのインクを精度よく印刷することができず、微細なパターンを有するメッシュ状の導電層を形成するのが困難であった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、高精度のメッシュパターンを有する光透過性電磁波シールド材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題に鑑み種々の検討を行った結果、透明基材上に特定のガラス転移温度及び数平均分子量を有する合成樹脂を含むアンカーコート層を予め形成し、このアンカーコート層上に触媒インクを印刷することにより、印刷後の触媒インクのダレ、広がりを抑制できることを見出した。
【0013】
さらに、本発明者等は、前記触媒インクとして、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤(1)、又は複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤(2)を用いることにより、これらの前処理剤に含まれる成分が凝集することなく均一に高分散するため、より高い精度で触媒インクを印刷することができることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の第1は、透明基材上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層を形成する工程と、
前記アンカーコート層上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程と、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法である。
【0015】
さらに、本発明の第2は、透明基材上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層を形成する工程と、
前記アンカーコート層上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、合成樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程と、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の方法及び第2の方法によれば、無電解めっき前処理剤を透明基材に印刷する際、ダレ、ハジキ等が発生することなく、線幅や厚さが均一であり寸法精度が優れたメッシュパターンを容易に形成することができる。さらに、アンカーコート層上での無電解めっき前処理剤のダレによる前処理層の厚さの低下が抑制され、無電解めっき前処理剤の転写量を増加することも可能となる。したがって、メッシュ状の導電層の形状も寸法精度の優れたものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の方法]
まず、本発明の第1の製造方法を、図1を参照して説明する。
【0018】
本発明の第1の方法では、まず、透明基材101上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層102を形成する工程(矢印(1))を実施する。次いで、前記アンカーコート層102上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層103を形成する工程(矢印(2))を実施する。そして、前記前処理層103上に、無電解めっき処理により、金属などの導電材料からなるメッシュ状の導電層104を形成する工程(矢印(3))を実施する。
【0019】
前記アンカーコート層は、上記合成樹脂を含むことにより無電解めっき前処理剤の吸収性に優れる。したがって、前記アンカーコート層上にダイレクトグラビア印刷等を用いて印刷された無電解めっき前処理剤が適度に保持され、ダレ、ハジキ等を発生することなく、ほぼ設計通りの寸法、形状で円滑に無電解めっき前処理剤の印刷を行うことができる。したがって、線幅の小さい微細なメッシュ状の前処理層を形成することが可能となる。また、前記無電解めっき前処理剤中では、シランカップリング剤、アゾール系化合物、および貴金属化合物が、均一に高分散されている。したがって、スジやカブリの発生がない、微細なパターンを有するメッシュ状の前処理層を精度よく形成することが可能となる。このようなメッシュ状の前処理層上に無電解めっき処理を行うことで、線幅の小さい微細なメッシュ状の導電層を形成することが可能となる。
【0020】
以下に、本発明の第1の方法を各工程ごとに順を追ってより詳細に説明する。
【0021】
(アンカーコート層形成工程)
本発明の方法では、初めに、透明基材上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層を形成する工程を実施する。
【0022】
アンカーコート層に使用される合成樹脂は、ガラス転移温度が、10℃以下、好ましくは−20〜10℃、特に好ましくは−10〜8℃である。また、前記合成樹脂は、数平均分子量Mnが、10,000〜30,000、好ましくは10,000〜25,000、特に好ましくは10,000〜20,000の範囲内である。このような合成樹脂によれば、無電解めっき前処理剤の吸収性に優れたアンカーコート層を形成することができる。
【0023】
なお、本発明において、合成樹脂のガラス転移温度及び数平均分子量は、後記する実施例に記載の測定方法を用いて実施することができる。
【0024】
アンカーコート層に使用される合成樹脂として、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及びセルロース樹脂を好ましく挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種以上混合して使用しても良い。また他の樹脂を少量(20質量%以下程度)併用しても良い。なかでもポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0025】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ウレタン樹脂 、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリエステル系ウレタン樹脂が好ましく挙げられる。
【0026】
前記ポリウレタン樹脂として具体的には、ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応生成物からなるポリエステル系ウレタン樹脂を使用することができる。
【0027】
前記ポリエステル系ポリオールとしては、低分子ジオールとジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。なお、前記低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、グリセリン等のトリオール、ソルビトール等のヘキサオールが挙げられる。前記ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類、等が単独使用又は2種以上使用される。また、前記ラクトンには、ε−カプロラクトン等が使用される。
【0028】
そして、ポリエステル系ポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサブチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられ、これらが単独使用又は2種以上使用される。
【0029】
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等);脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等);脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等)のポリイソシアネート、或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体、又は多量体等が、単独使用又は2種以上使用される。
【0030】
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との使用比率は、特に限定されないが、通常はポリエステル系ポリオール:ポリイソシアネート化合物=1:0.01〜0.5程度(モル比)の範囲内において、使用する化合物の種類等に応じて適宜決定すれば良い。
【0031】
前記ポリエステル樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレートなどを用いることができる。
【0032】
前記アンカーコート層は、活性水素を含む基を有する合成樹脂及び少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを含む組成物を用いて形成されるのが好ましい。このような組成物の硬化層をアンカーコート層として使用することで、アンカーコート層上への無電解めっき前処理剤の印刷精度をさらに向上させることができる。
【0033】
前記活性水素を含む基としては、ヒドロキシル基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基等を挙げることができ、ヒドロキシル基が好ましい。活性水素を含む基の当量(例、ヒドロキシル価)は、樹脂(1g)に対して10〜300mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲が好ましい。
【0034】
上記ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物等のポリイソシアネートも使用することができる。これらの中で芳香族系ポリイソシアネートが好ましい。
【0035】
合成樹脂に対するポリイソシアネートの使用量は、2〜30質量%、特に5〜20質量%が好ましい。
【0036】
アンカーコート層形成用組成物は、さらに、シリコーンオイルを、0.0005〜5質量%、特に0.0005〜0.5質量%含有しているのが好ましい。このようにシリコーンオイルを含有することにより、アンカーコート層に対する無電解めっき前処理剤の接触角度を高くすることができ、アンカーコート層上への無電解めっき前処理剤の印刷精度をさらに向上させることができる。さらに、アンカーコート層に含まれる上述した数平均分子量(Mn)を有する合成樹脂により、シリコーンオイルをアンカーコート層の最表面にブリードさせることができ、シリコーンオイルによる効果をより高く発揮させることができる。
【0037】
前記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、及びエポキシ変性シリコーンオイルを挙げることができる。なかでも、上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。
【0038】
ジメチルシリコーンオイルは、一般に、末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンであり、メチルフェニルシリコーンオイルは、末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンの側基のメチル基の一部がフェニル基に置き換わったフェニル化ポリシロキサンであり、メチルハイドロジェンシリコーンオイルは末端、側鎖がメチル基のジメチルポリシロキサンの側基のメチル基の一部が水素に置き換わった水素化ポリシロキサンであり、これらは一般に直鎖状シリコーンオイルである。
【0039】
アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、及びエポキシ変性シリコーンオイルは、一般に、上記ポリシロキサンの末端又は側鎖の一部が有機基(ポリエーテル基、アルキル基又はエポキシ基)に置き換わった変性ポリシロキサンである。
【0040】
アンカーコート層形成用組成物は、さらに、有機溶剤を含むのが好ましい。また、前記組成物には、さらにフィラー、界面活性剤などを適宜添加してもよい。
【0041】
前記有機溶剤としては、具体的には、消防法に規定されている第4類の第1石油類に属する溶剤、第4類の第2石油類に属する溶剤が適している。
【0042】
第1石油類に属する溶剤としては、例えばトルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。また、第4類の第2石油類に属する溶剤としては、例えばキシレン、酢酸n−ブチル、セロソルブ、セロソルブアセテート、n−ブタノール、イソブタノール、及びシクロヘキサノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
アンカーコート層は、一般的に、上記合成樹脂、及び必要に応じてポリイソシアネート、シリコーンオイルを含む組成物を塗布、硬化させることにより形成される。前記組成物の塗布方法としては、グラビアコート、マイクログラビアコート、ダイコート、リップコート、ロールリバースコート、ワイヤーバーコート、キスコート等既存のコーティング法のいずれでも採用することができる。硬化は、常温でも可能であり、その場合、例えば1〜5日(特に2〜4日)の間放置する。加熱すれば、その温度に応じて加熱時間は短縮される。
【0044】
透明基材上に塗布した組成物は、80〜140℃、特に90〜120℃に加熱して、硬化させるのが好ましい。この際の加熱時間は、0.5〜3分程度であればよい。
【0045】
アンカーコート層の厚さは、0.1〜1μm、特に0.1〜0.5μmが好ましい。これにより、無電解めっき前処理剤の吸収性に優れるアンカーコート層とすることができる。
【0046】
前記組成物を塗布する透明基材としては、透明性(特に、可視光に対して)を有する基板であれば良く、その材料の例として、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート)、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中で、加工処理(加熱、溶剤、折り曲げ)による劣化が少なく、透明性の高い材料であるPET、PEN、PC、PMMAが好ましい。
【0047】
この透明基材の厚さは、電磁波シールド性光透過窓材の用途等によっても異なるが、通常の場合1μm〜5mmの範囲、特に10μm〜1mmの範囲にあることが好ましい。
【0048】
(メッシュ状の前処理層形成工程)
次に、本発明の方法では、前記アンカーコート層上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程を実施する。
【0049】
前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記シランカップリング剤は、一分子中に金属補足能を持つ官能基を有するものを用いるのが好ましい。これにより、無電解めっき触媒である貴金属化合物の活性を効果的に発現する電子状態、配向とすることが可能となり、被めっき材との高い密着性が得られる。
【0050】
前記シランカップリング剤として、エポキシ基含有シラン化合物を好ましく挙げることができる。前記エポキシ基含有シラン化合物としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、得られる前処理層が透明基材および導電層と高い密着性を呈することから、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが好ましく挙げられる。
【0051】
次に、前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記アゾール系化合物としては、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、セレナゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、ベンダゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、インダゾールなどが挙げられる。これらに制限されるものではないが、シランカップリング剤が有するエポキシ基などの官能基および貴金属化合物との反応性に優れることから、イミダゾールが特に好ましい。
【0052】
前記無電解めっき前処理剤において、前記シランカップリング剤および前記アゾール系化合物は単に混合されているだけでもよいが、これらを予め反応させて反応生成物を形成してもよい。これにより、貴金属化合物を前処理層中に原子レベルでより高分散できるとともに、得られる前処理層の光透過性を向上させることができる。
【0053】
前記シランカップリング剤と前記アゾール系化合物とを反応させるには、例えば、80〜200℃でアゾール系化合物1モルに対して0.1〜10モルのシランカップリング剤を混合して5分〜2時間反応させるのが好ましい。その際、溶媒は特に不要であるが、水の他、クロロホルム、ジオキサンメタノール、エタノール等の有機溶媒を用いてもよい。このようにして得られた前記シランカップリング剤と前記アゾール系化合物との反応生成物に、貴金属化合物を混合することで、前記無電解めっき前処理剤が得られる。
【0054】
次に、前記無電解めっき前処理剤に用いられる前記貴金属化合物は、無電解めっき処理において銅やアルミニウムなどの金属を選択的に析出・成長させることができる触媒効果を示すものである。具体的には、高い触媒活性が得られることから、パラジウム、銀、白金、および金などの金属原子を含む化合物を用いるのが好ましい。前記化合物としては、前記金属原子の塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、アンモニウム塩などのアンミン錯体などが用いられるが、特にパラジウム化合物、中でも塩化パラジウムが好ましい。
【0055】
前記無電解めっき前処理剤は、前記アゾール系化合物および前記シランカップリング剤に対し、前記貴金属化合物を、好ましくは0.001〜50mol%、より好ましくは0.1〜20mol%含むのがよい。前記貴金属化合物の濃度が、0.001mol%未満では十分な触媒活性が得られずに所望する厚さを有する導電層を形成できない恐れがあり、50mol%を超えると添加量の増加に見合った貴金属化合物による触媒効果が得られない恐れがある。
【0056】
また、前記無電解めっき前処理剤は、有機溶剤を含んでいるのが好ましい。前記有機溶剤としては、具体的には、消防法に規定されている第4類の第1石油類に属する溶剤、第4類の第2石油類に属する溶剤が適している。
【0057】
第1石油類に属する溶剤としては、例えばトルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。また、第4類の第2石油類に属する溶剤としては、例えばキシレン、酢酸n−ブチル、セロソルブ、セロソルブアセテート、n−ブタノール、イソブタノール、及びシクロヘキサノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの有機溶剤であれば、印刷された無電解めっき前処理剤に含まれる有機溶剤がアンカーコート層に吸収されても、アンカーコート層と透明基材との優れた密着性を確保することができる。
【0058】
前記無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤、着色剤などの各種添加剤をさらに含有させてもよい。
【0059】
前記無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
【0060】
前記無電解めっき前処理剤をアンカーコート層に印刷するには、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、静電印刷等の印刷方法を用いることができる。特に、細線化のためには、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷が好適である。グラビア印刷を用いる場合、印刷速度は5〜50m/分とするのがよい。
【0061】
このように前記無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
【0062】
メッシュ状(格子状を含む)の前処理層の線幅は、一般に25μm以下、好ましくは5〜20μmで、特に5〜15μmを有する。線のピッチは300μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。
【0063】
前処理層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。また線は網状であるが、格子状とすることが好ましい。
【0064】
前記前処理層の厚さは、0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5μmとするのがよい。これにより、アンカーコート層および導電層との高い密着性を確保することができる。
【0065】
(メッシュ状の導電層形成工程)
次に、本発明の方法では、上述の通りに形成した前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層を形成する工程を実施する。無電解めっき処理を行うことにより、微細な金属粒子が濃密で実質的な連続皮膜として沈積形成されて、前処理層上のみに選択的に導電層を得ることが可能となる。
【0066】
めっき金属は、導電性を有してメッキ可能である金属であれば使用することができ、金属単体、合金、導電性金属酸化物等であってもよく、均一な金属薄膜又は一様に塗布された微細な微粒子等からなるものであってもよい。
【0067】
無電解めっきにおけるめっき金属としては、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、白金、銅、チタン、コバルト、鉛等を用いることができる。特に、高い電磁波シールド性が得られる導電層が得られることから、好ましくは、銀、銅又はアルミニウムが好ましく用いられる。これらのめっき金属を用いて形成される導電層は、前処理層との密着性に優れる他、光透過性と電磁波シールド性の両立に好適である。
【0068】
前記無電解めっきは、無電解めっき浴を用いて常法に従って常温または加温下で行うことができる。即ち、めっき金属塩、キレート剤、pH調整剤、還元剤などを基本組成として含むめっき液を建浴したものにめっき基材を浸漬して行うか、構成めっき液を2液以上と分けて添加方式でめっき処理を施すなど適宜選択すれば良い。
【0069】
無電解めっきとして一例を挙げると、Cuからなる導電層を形成する場合、硫酸銅等の水溶性銅塩1〜100g/L、特に5〜50g/L、ホルムアルデヒド等の還元剤0.5〜10g/L、特に1〜5g/L、EDTA等の錯化剤20〜100g/L、特に30〜70g/Lを含み、pH12〜13.5、特に12.5〜13に調整した溶液に、前処理層及びアンカーコート層を有する透明基材を50〜90℃、30秒〜60分浸漬する方法を採用することができる。
【0070】
無電解めっきをする際に、めっきされる基板を揺動、回転させたり、その近傍を空気撹拌させたりしてもよい。
【0071】
メッシュ状(格子状を含む)の導電層の線幅は、一般に25μm以下、好ましくは5〜20μmで、特に5〜15μmを有する。線のピッチは300μm以下が好ましい。また、開口率は75〜95%であることが好ましく、特に80〜95%である。
【0072】
導電層の線で囲まれた開口部の形状は、円、楕円、角形(4角形、6角形)など任意の形状とすることができるが、一般に角形であり、特に正方形であることが好ましい。また線は網状であるが、格子状とすることが好ましい。
【0073】
本発明の方法では、メッシュ状の導電層を形成する工程の後、電気めっき処理を行って前記導電層上に金属メッキ層を形成しても良い。
【0074】
電気めっき処理に用いる材質としては、金属めっき層が優れた電磁波シールド効果を有するものであればよく特に制限はないが、例えば、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、銀、及び、金等の金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、2種以上の合金として使用されてもよい。
【0075】
金属めっき層の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、充分な電磁波シールド効果を付与できないことがある一方、10μmを超えると、電気めっき層が巾方向にも広がることから、線幅が太くなり、導電層の開口率が低くなってしまうことがある。
【0076】
金属めっき層における表面抵抗率としては、3Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。金属めっき層の表面抵抗率が3Ω/□を超えると、導電性が不充分で、電磁波シールド効果が不充分となることがある。
【0077】
また、メッシュ状の導電層、又は電気めっき層には、黒化処理を行っても良く、例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色メッキ、黒又は暗色系インキの塗布等を行うことができる。
【0078】
上述した本発明の第1の方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材は、透明基材上に形成されたアンカーコート層が所定の合成樹脂を含有することによって、無電解めっき前処理剤を、ダレ、ハジキ等が発生することなく、高い精度で印刷することができる。これにより、線幅や厚さが均一な、寸法精度の優れた(即ち、設計寸法との差がほとんど無い)メッシュ状の前処理層を容易に形成することができ、メッシュ状の導電層の形状も寸法精度の優れたものが得られる。したがって、本発明の方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材は、電磁波シールド性や光透過性に優れる。
【0079】
[第2の方法]
次に、本発明の第2の製造方法について説明する。本発明の第2の製造方法は、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、バインダー樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いる以外は、上述した第1の製造方法と同様に実施することができる。すなわち、本発明の第2の方法は、図1に示すように、透明基材101上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層102を形成する工程(矢印(1))を実施する。次いで、前記アンカーコート層102上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、バインダー樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層103を形成する工程(矢印(2))を実施する。そして、前記前処理層103上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層104を形成する工程(矢印(3))を実施する。
【0080】
このような本発明の第2の方法においても、上述した第1の方法と同様に、アンカーコート層が、上記合成樹脂を含むことにより無電解めっき前処理剤の吸収性に優れる。したがって、前記アンカーコート層上に、ほぼ設計通りの寸法、形状で円滑に無電解めっき前処理剤の印刷を行うことができる。したがって、線幅の小さい微細なメッシュ状の前処理層を形成することが可能となる。さらに、前記無電解めっき前処理剤において複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は分散性に優れ、これらが印刷時に均一に高分散且つ固着することにより、無電解めっき前処理剤をほぼ設計通りの寸法の形状で印刷することが可能となる。したがって、スジやカブリの発生がない、微細なパターンを有するメッシュ状の前処理層を精度よく形成することが可能となる。このようなメッシュ状の前処理層上に無電解めっき処理を行うことで、線幅の小さい微細なメッシュ状の導電層を形成することが可能となる。
【0081】
本発明の第2の製造方法は、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、バインダー樹脂とを含む無電解めっき前処理剤を用いる以外は、上述した第1の製造方法と同様に実施することができる。したがって、アンカーコート層を形成する工程及びメッシュ状の導電層を形成する工程については、上述した第1の方法と同様に実施することができるため説明を省略し、以下では、前記アンカーコート層上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、バインダー樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程について説明する。
【0082】
(メッシュ状の前処理層形成工程)
前記無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物としては、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含むものが好ましく用いられる。より好ましくは、Pd又はAgの金属元素と、Si、Ti又はZrの金属元素とを含むものが挙げられる。このような複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物は、高いめっき金属析出能力を有し、さらに前処理剤中での安定性及び分散性に優れた特性を有する。
【0083】
なかでも、前記特性が特に優れることから、下記式(I)
【0084】
【化1】

【0085】
(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合、xは1であり、M1がAgである場合、xは2であり、nは1〜20の整数である)で示される複合金属酸化物水化物を用いるのが特に好ましい。
【0086】
前記式(I)において、M1はPd又はAgであるが、Pdであるのが好ましい。また、M2はSi、Ti又はZrであるが、Tiであるのが好ましい。これにより、高いめっき析出能力を有する複合金属酸化物水水化物が得られる。
【0087】
前記複合金属酸化物水化物として具体的には、PdSiO3、Ag2SiO3、PdTiO3、Ag2TiO3、PdZrO3及びAg2TiO3などの水化物が挙げられる。
【0088】
上述した複合金属酸化物水化物は、それぞれの相当する金属塩、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、相当する金属酸化物の水和物等を原料とし、これらを加熱し、加水分解する方法などを用いることによって得られる。
【0089】
また、前記複合金属酸化物としては、M1X・M22(M1、M2及びXについては、上記式(I)と同義である)で示されるものが好ましく用いられる。
【0090】
前記無電解めっき前処理剤に用いられる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、0.01〜10μm、特に0.05〜3μmのものを用いるのが好ましい。これにより、凝集が抑制された高い分散性および触媒活性を有する複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物とすることができる。
【0091】
なお、本発明において、前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の平均粒子径は、前処理層の断面を電子顕微鏡(好ましくは透過型電子顕微鏡)により倍率100万倍程度で観測し、少なくとも100個の複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物のの面積円相当径を求めた数平均値とする。
【0092】
前記複合金属酸化物及び/又は前記複合金属酸化物水化物の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜70質量部とするのが好ましい。前記含有量が、10質量部未満では十分なめっき析出能力が得られない恐れがあり、100質量部を超えるとこれらの複合金属酸化物の凝集に基づくスジやカブリが形成する恐れがある。
【0093】
前記無電解めっき前処理剤は、バインダー樹脂を含む。これにより、前処理層のアンカーコート層及び導電層との密着性を向上させることができ、前処理層が剥離し難くなり、導電層をより精度よく形成することが可能となる。
【0094】
前記バインダー樹脂は、アンカーコート層および導電層との密着性を確保できるものであれば、特に制限されない。前記バインダー樹脂として、好ましくは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、およびエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。これらによれば、透明基材および導電層との高い密着性が得られ、前処理層上に導電層を精度よく形成することができる。また、これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いられてもよいほか、2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
前記バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂は、アンカーコート層に使用される合成樹脂として上述したのと同様のものが挙げられる。
【0096】
前記アクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタアクリル酸アルキルエステル類のホモポリマーが使用できるが、特にポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートまたはポリブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0097】
前記塩化ビニル樹脂は、従来公知の塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂、または従来公知の各種のコポリマー樹脂であり、特に限定されるものではない。該コポリマー樹脂としては、従来公知のコポリマー樹脂を使用でき、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂などの塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル−プロピレンコポリマー樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル−アクリロニトルコポリマー樹脂などが代表的に例示される。特に好ましくは、塩化ビニル単独樹脂、エチレン−塩化ビニルコポリマー樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー樹脂などを使用するのが良い。
【0098】
前記無電解めっき前処理剤におけるバインダー樹脂の含有量は、無電解めっき前処理剤の全量に対して、10〜100質量%、特に10〜30質量%とするのが好ましい。これにより、高い密着性を有する前処理層を形成することが可能となる。
【0099】
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらに無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含有することにより、印刷精度を向上することができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。前記無機微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属ウィスカー、セラミッックウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、スメクタイト等が好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよい他、2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
前記無機微粒子の平均粒子径は、0.01〜5μm、特に0.1〜3μmとするのが好ましい。前記無機微粒子の平均粒子径が、0.01μm未満であると無機微粒子の添加により所望するほどの印刷精度の向上が得られない恐れがあり、5μmを超えるとスジやカブリが発生し易くなる恐れがある。
【0101】
前記無電解めっき前処理剤における無機微粒子の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、10〜100質量部、特に10〜30質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0102】
また、前記無電解めっき前処理剤は、さらにチキソトロピック剤を含有してもよい。前記チキソトロピック剤によれば、前処理剤の流動性を調整することにより印刷精度を向上させることができ、より精度の高い導電層を形成することが可能となる。チキソトロピック剤としては、従来公知のものであれば使用できる。好ましくは、アマイドワックス、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等を使用することができる。
【0103】
前記無電解めっき前処理剤におけるチキソトロピック剤の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部、特に1〜15質量部とするのが好ましい。これにより、高い印刷適正を持った前処理剤とすることができる。
【0104】
本発明の無電解めっき前処理剤は、黒色着色剤をさらに含有していてもよい。これにより、印刷精度の向上とともに、得られる光透過性電磁波シールド材において透明基材側から見た際の防眩効果を付与することができる。
【0105】
前記黒色着色剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、黒鉛、および活性炭などが好ましく挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。カーボンブラックの平均粒径は、好ましくは0.1〜1,000nm、特に好ましくは5〜500nmである。
【0106】
前記無電解めっき前処理剤における黒色着色剤の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部とするのが好ましい。これにより、防眩効果を有する前処理層を精度よく形成することが可能となる。
【0107】
黒色着色剤を用いる場合、市販されている墨インキを用いて無電解めっき前処理剤を調製するのが好ましい。このような墨インキとしては、東洋インキ製造株式会社製 SS8911、十条ケミカル株式会社製 EXG−3590、大日精化工業株式会社製 NTハイラミック 795R墨などがある。例えば、東洋インキ製造株式会社製 SS8911の場合、溶剤中に、カーボンブラックの他、さらに塩化ビニルおよびアクリル樹脂などを含む。したがって、前記した市販品であれば、バインダー樹脂および黒色着色剤を含む無電解めっき前処理剤の調製を容易に行うことができる。
【0108】
また、前記無電解めっき前処理剤は、有機溶剤を含んでいるのが好ましい。前記有機溶剤としては、具体的には、消防法に規定されている第4類の第1石油類に属する溶剤、第4類の第2石油類に属する溶剤が適している。
【0109】
第1石油類に属する溶剤としては、例えばトルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。また、第4類の第2石油類に属する溶剤としては、例えばキシレン、酢酸n−ブチル、セロソルブ、セロソルブアセテート、n−ブタノール、イソブタノール、及びシクロヘキサノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの有機溶剤であれば、印刷された無電解めっき前処理剤に含まれる有機溶剤がアンカーコート層に吸収されても、アンカーコート層と透明基材との優れた密着性を確保することができる。
【0110】
前記無電解めっき前処理剤には、必要に応じて体質顔料、界面活性剤などの各種添加剤をさらに含有させてもよい。
【0111】
本発明の方法では、上述した無電解めっき前処理剤を、透明基材上にメッシュ状に印刷することにより、前記透明基材上にメッシュ状の前処理層を形成する。これにより、簡易な方法で所望する微細なパターンを有する前処理層を形成することができる。
【0112】
前記無電解めっき前処理剤の粘度は、印刷により微細な線幅および間隙(ピッチ)を有する前処理層を得るためには、25℃において、好ましくは500〜5000cps、より好ましくは1000〜3000cpsとするのがよい。
【0113】
このように前記無電解めっき前処理剤を印刷した後、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃で加熱することにより乾燥させるのがよい。乾燥温度が80℃未満では、溶媒の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られない恐れがあり、160℃を超えると化合物の熱分解が生じる恐れがある。塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は5秒〜5分が好ましい。
【0114】
なお、無電解めっき前処理剤を透明基材に印刷する方法及びメッシュ状の前処理層におけるパターンの形状については、上述した第1の方法と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0115】
前記前処理層の厚さは、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmとするのがよい。これにより、透明基材および導電層との高い密着性を確保することができる。
【0116】
本発明の第2の方法では、上述の通りにして透明基材上にメッシュ状の前処理層を形成する工程の後、メッシュ状の導電層を形成する工程の前に、前記前処理層に還元処理を行う工程を実施するのが好ましい。還元処理することで、前記前処理層に含まれる無電解めっき触媒である複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物に含まれる金属種を還元し、活性成分である金属種のみを超微粒子状で均一に析出させることができる。このように還元析出した金属種は、高い触媒活性を有し且つ安定であることから、前記前処理層と前記アンカーコート層との密着性及び無電解めっきの析出速度を向上させ、さらには複合金属酸化物及び複合金属酸化物水化物の使用量を少なくすることが可能となる。
【0117】
前記還元処理は、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物を還元して金属化できる方法であれば特に制限されない。具体的には、(i)前記前処理層が形成された透明基材を、還元剤を含む溶液を用いて処理する液相還元法、(ii)前記前処理層が形成された透明基材を、還元性ガスと接触させる気相還元法などが好ましく用いられる。
【0118】
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法として、具体的には、前記前処理層が形成された透明基材を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法、前記透明基材の前記前処理層が形成された面に還元剤を含む溶液をスプレーする方法などが用いられる。
【0119】
前記還元剤を含む溶液は、所定の還元剤を水などの溶媒に分散又は溶解させて調製されるものである。前記還元剤としては、特に制限されないが、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ブドウ糖、アミノボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)、トリメチルアミンボラン(TMAB)、ヒドラジン、ジエチルアミンボラン、ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、イミダゾール、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸塩、硫酸ヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、ハイドロサルファイト(Na224:亜二チオン酸ナトリウムともいう)等が挙げられる。前記還元剤は、後工程で用いる無電解めっき浴中に含まれる還元剤と同一のものを用いると、還元処理後の前記透明基材を水洗処理することなく無電解めっきを行うことができ、また無電解めっき浴の組成を変化させる恐れも少ない。
【0120】
前記還元剤としては、高い還元性が得られることから、アミノボラン、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン、ハイドロサルファイト、及びホルマリンを用いるのが好ましい。
【0121】
前記還元剤を含む溶液における還元剤の含有量は、0.01〜200g/L、特に0.1〜100g/Lとするのが好ましい。還元剤の濃度が低すぎる場合には十分に還元処理を行うのに所要時間が長くなる恐れがあり、還元剤の濃度が高すぎる場合には析出させためっき触媒が脱落する恐れがある。
【0122】
前記液相還元法において還元剤を含む溶液を用いて処理する方法としては、前処理層に含まれる複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物の高い還元性が得られることから、前記前処理層が形成された透明基材を還元剤を含む溶液中に浸漬させる方法を用いるのが好ましい。
【0123】
前記透明基材を浸漬させる場合、前記還元剤を含む溶液の温度は、20〜90℃、特に50〜80℃とするのが好ましい。また、浸漬時間は、少なくとも1分以上、好ましくは1〜10分程度とすればよい。
【0124】
一方、前記気相還元法を用いて還元処理を行う場合、前記還元性ガスとしては、水素ガス、ジボランガスなど、還元性を有する気体であれば特に制限されない。還元ガスを用いた還元処理時の反応温度および反応時間は、使用する還元ガスの種類などに応じて適宜決定すればよい。
【0125】
上述した本発明の第2の方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材は、透明基材上に形成されたアンカーコート層が所定の合成樹脂を含有することによって、無電解めっき前処理剤を、ダレ、ハジキ等が発生することなく、高い精度で印刷することができる。これにより、線幅や厚さが均一な、寸法精度の優れた(即ち、設計寸法との差がほとんど無い)メッシュ状の前処理層を容易に形成することができ、メッシュ状の導電層の形状も寸法精度の優れたものが得られる。したがって、本発明の方法により得られる電磁波シールド性光透過窓材は、電磁波シールド性や光透過性に優れる。
【0126】
上述した本発明の第1の方法及び第2の方法により製造された電磁波シールド性光透過窓材は、前述のように開口率が高いため光透過性に優れ、さらにモアレ現象が防止され、電磁波シールド性に優れるため、特に、PDP(プラズマディスプレイパネル)の前面フィルタや、病院等の電磁波シールドを必要とする建築物の窓材料(例えば貼着用フィルム)等として有用である。なお、防眩層を形成した電磁波シールド性光透過窓材を、PDP(プラズマディスプレイパネル)として用いる場合には、視認性の点で、防眩層が、透明基材上において観察者側に配されるよう使用するのが好ましい。
【実施例】
【0127】
(実施例1)
1.アンカーコート層の形成
PETフィルム(厚さ100μm;Sグレード;(株)帝人製)上に、グラビアコートにより、下記の組成のアンカーコート層形成用組成物を、乾燥厚さ0.3μmとなるように塗布した後、100℃、1分間乾燥して、溶剤を除去した。これによりアンカーコート層を形成した。
【0128】
アンカーコート層形成用組成物の組成;
ポリエステル樹脂 100質量部
(製品名バイロン(登録商標)670、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)20,000、ガラス転移温度(Tg)7℃)
ポリイソシアネート 15質量部
(製品名CAT−10L、東洋モートン株式会社製)
シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン) 0.12質量部
(製品名KF−96−20CS、信越化学工業株式会社製)
メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比) 2900質量部
2.メッシュ状の前処理層の形成
イミダゾールに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、モル比で1:1となるように混合し、1時間、100分間、反応させることにより得られた反応生成物を5wt%含む水溶液に、25℃で撹拌しながら塩化パラジウムを添加し、塩化パラジウム濃度が10g/Lの溶液を調製した。これをn−ブタノールで100体積倍に希釈し、塩化パラジウム濃度が100mg/Lの前処理剤を調製した。
【0129】
次に、前記前処理剤を、上記で作製したアンカーコート層上にグラビア印刷によってパターニングした後、120℃、5分間乾燥させることにより、前記PETフィルム上にメッシュ状の前処理層を形成した。なお、グラビア印刷版として、線幅16μm、線深さ5μm、線間隔290μmの溝を有する金型を用いた。また、メッシュ状の前処理層は、線幅17μm、厚さ0.6μm、線間隔290μm、開口率90%であった。
【0130】
次に、上記で得られた前処理層が形成されたPETフィルムを、60℃の次亜リン酸ナトリウム溶液(NaH2PO2濃度:30g/L)に、3分間浸漬させ、前処理層の還元処理を行った。
【0131】
3.金属導電層の作製
上記で還元処理された前処理層が形成されたPETフィルムを、無電解銅めっき液(メルテックス株式会社製 メルプレートCU−5100)に浸漬し、50℃、20分間で、無電解銅めっき処理してメッシュ状の金属導電層を作製し、電磁波シールド性光透過窓材を得た。前記金属導電層は、線幅20μm、厚さ1μm、線間隔290μm、開口率90%であった。
【0132】
(実施例2)
アンカーコート層形成用組成物において、下記のポリエステル樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性光透過窓材を作製した。
【0133】
ポリエステル樹脂(製品名バイロン(登録商標)560、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)19,000、ガラス転移温度(Tg)7℃)
(比較例1〜4)
アンカーコート層形成用組成物において、下記のポリエステル樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、電磁波シールド性光透過窓材を作製した。
【0134】
比較例1
ポリエステル樹脂(製品名GK−680、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)6,000、ガラス転移温度(Tg)10℃)
比較例2
ポリエステル樹脂(製品名GK−810、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)6,000、ガラス転移温度(Tg)46℃)
比較例3
ポリエステル樹脂(製品名GK−890、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)11,000、ガラス転移温度(Tg)17℃)
比較例4
ポリエステル樹脂(製品名バイロン(登録商標)200、東洋紡績株式会社製;数平均分子量(Mn)17,000、ガラス転移温度(Tg)67℃)
(評価)
1.ガラス転移温度(Tg)
アンカーコート層の形成に使用したポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を、動的粘弾性測定装置(レオメトリクス社製 RPS−II)を用いて、−50℃から100℃まで10℃/分で昇温しながら、歪み1%、周波数1Hzの条件で温度分散を測定し、これにより得られる損失正接(tanδ)の最大値をガラス転移温度とする。結果を表1に示す。
【0135】
2.数平均分子量Mn
アンカーコート層の形成に使用したポリエステル樹脂の数平均分子量Mnを、下記条件で測定した。
【0136】
装置:東ソー社製、高速液体クロマトグラフィー「HLC−8120GPC」、
カラム:東ソー社製、「Super H2000+H4000」、6mm I.D.,15cm、
溶離液:THF、
流速:0.500ml/min、
検出器:RI、
カラム恒温槽温度:40℃、
ポリスチレン標準。
【0137】
3.メッシュ状の前処理層の寸法
アンカーコート層上に形成したメッシュ状の前処理層の線幅、線高さ(厚さ)を測定した。設計寸法であるグラビア印刷版が有する溝の線幅(16μm)、線深さ(5μm)よりも差が大きいほど印刷ダレ量が多くなる。結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0139】
上記の各製造方法から得られる本発明の光透過性電磁波シールド性窓材は、優れた視認性と電磁波シールド性を備えたものであり、プラズマディスプレイパネル(PDP)前面フィルタ用として特に好適な光透過性電磁波シールド性窓材であり、他のディスプレイ用のフィルタとしても好適な光透過性電磁波シールド性窓材である。
【0140】
さらに、電磁波の影響を避けることが求められる用途において広く使用可能な電磁波シールド性光透過窓材であり、例えば精密機器等に設けられた表示窓や病院や研究室等の窓材等の用途においても、好適に使用可能で同様の優位性を有する新規な電磁波シールド性光透過窓材である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の第1及び第2の製造方法を、各工程に沿って説明した説明図である。
【符号の説明】
【0142】
101 透明基材、
102 アンカーコート層、
103 メッシュ状の前処理層、
104 メッシュ状の導電層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層を形成する工程と、
前記アンカーコート層上に、シランカップリング剤とアゾール系化合物との混合物又は反応生成物、及び貴金属化合物を含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程と、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項2】
前記組成物が、シリコーンオイルを0.0005〜5質量%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基含有シラン化合物である請求項1又は2に記載の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項4】
前記アゾール系化合物が、イミダゾールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項5】
透明基材上に、ガラス転移温度が10℃以下であり、且つ数平均分子量Mnが10,000〜30,000の範囲内である合成樹脂を含む組成物を塗布することにより、アンカーコート層を形成する工程と、
前記アンカーコート層上に、複合金属酸化物及び/又は複合金属酸化物水化物と、バインダー樹脂とを含む無電解めっき前処理剤をメッシュ状に印刷して、メッシュ状の前処理層を形成する工程と、
前記前処理層上に、無電解めっき処理により、メッシュ状の導電層を形成する工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項6】
前記複合金属酸化物及び前記複合金属酸化物水化物が、Pd、Ag、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される少なくとも2種の金属元素を含む請求項5に記載の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。
【請求項7】
前記複合金属酸化物水化物が、下記式(I)
【化1】

(式中、M1はPd又はAgを表し、M2はSi、Ti又はZrを表し、M1がPdである場合にはxは1であり、M1がAgである場合にはxは2であり、nは1〜20の整数である)で示される5又は6に記載の電磁波シールド性光透過窓材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−118490(P2010−118490A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290572(P2008−290572)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】