説明

電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法

【課題】軟磁性合金粉末の脱落を抑制しつつ、電磁波吸収特性が向上する電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11と結着材12とを含む複数の合金粉末層13を積層して構成されている。合金粉末層13の上面13a付近では、軟磁性合金粉末11の含有量が相対的に低く、合金粉末層13の下面13b付近では、軟磁性合金粉末11の含有量が相対的に高くなっている。複数の合金粉末層13は、合金粉末層13の上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置するように積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性合金粉末からなる電磁波ノイズ抑制体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機内等において、携帯用電子機器による電磁波干渉の問題、具体的には、携帯電話による電磁波干渉が原因と思われる医療機器の誤動作が報告されている。このため、携帯用電子機器や携帯電話等から生じる不要な高周波電波の輻射や発生を防止することが重大な課題となっている。こうした不要な高周波電波を抑制するものとして、電磁波吸収シートなどの電磁波ノイズ抑制体が用いられている。
【0003】
電磁波ノイズ抑制体のノイズ抑制効果は、使用周波数帯域に対応する複素透磁率の虚数部μ”が大きな値を示すものほど優れている。電磁波ノイズ抑制体の一例として、Fe−Al−Si系合金やFe−Ni系合金等の軟磁性合金粉末を樹脂等の結着材と共にシート状に成形したものが提案されている。例えば、特許文献1には、扁平状の軟磁性合金粉末を結着材に添加した混合物を射出成形して、扁平粒子を一方向に配向させた電磁波ノイズ抑制体の製造方法が開示されている。この文献に開示の方法によれば、射出成形により扁平粒子が一方向に配向されるため、軟磁性合金粉末の充填率が向上し、複素透磁率の虚数部μ”を高めることができる。
【0004】
また、電子機器の小型化や高機能化が進み、それに伴い、電磁波ノイズ抑制体をより薄くすると共に、磁気特性をより向上させることも求められている。例えば、特許文献2には、扁平状の軟磁性粉末と溶媒に溶解した結合剤とを混練し、ドクターブレード法により磁性粉末を面方向に配向させながらシートを成形し、シー卜に対しその面方向に垂直に加圧する方法が開示されている。特許文献3には、リサイクル性を目的として、カレンダーロールにより磁性体粉末及びマトリクス材料の混合物からシートを成形し、熱プレスによりフレーク状の軟磁性体粉末をシートの面方向に配向させる方法が開示されている。なお、この文献に開示の製造の過程では、架橋が行なわれない。特許文献4には、扁平磁性粉の配向度を向上させるため、ドクターブレード法により得られた複数の合金粉末層シートを積層して更に熱プレスする方法が開示されている。この文献に開示の方法によれば、合金粉末層の表面に存在する欠損部が他の合金粉末層により埋められるため、電磁波吸収体内の空隙が少なくなり、電磁波抑制効果を高めることができる。また、この方法によれば、ステアリン酸塩からなる潤滑剤を添加することにより、合金粉末が高密度に充填されるため、複素透磁率の虚数部μ”を高めることができる。また、特許文献5には、ドクターブレード法又は射出成形法等を用いて、有機絶縁樹脂に含まれる扁平状のフェライト粒子を一方向に配向させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−68117号公報
【特許文献2】特開2000−4097号公報
【特許文献3】特開2002−299112号公報
【特許文献4】特開2004−221522号公報
【特許文献5】特開2001−210924号公報
【発明の概要】
【0006】
電磁波ノイズ抑制体において、電磁波吸収特性やノイズ抑制特性を向上させるには、軟磁性合金粉末を高配向に、かつ高密度に充填する必要がある。しかしながら、上記の理由を目的として軟磁性合金粉末の量を増やした場合、電磁波ノイズ抑制体の表面から軟磁性合金粉末が脱落し易くなるといった問題が生じる。また、電子機器に用いられる電磁波ノイズ抑制体には、安全上の規格を満たすため、軟磁性合金粉末以外に難燃剤等の添加物を加える必要もある。このような理由から、軟磁性合金粉末をより高密度に充填するためにその含有量を増やすことは困難である。よって、電磁波吸収特性やノイズ抑制特性等の更なる向上は困難であり、従来の方法を用いたとしても、実数部透磁率μ’で100を超える電磁波ノイズ抑制体シートは得られなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軟磁性合金粉末の脱落を抑制しつつ、電磁波吸収特性が向上する電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、軟磁性合金粉末と結着材とを含む複数の合金粉末層を積層して構成されている電磁波ノイズ抑制体において、合金粉末層の上面付近では軟磁性合金粉末の含有量が相対的に低く、合金粉末層の下面付近では軟磁性合金粉末の含有量が相対的に高く、複数の合金粉末層は、合金粉末層の上面を電磁波ノイズ抑制体の外表面に配置するように積層されていることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、積層された複数の合金粉末層は、架橋により互いに接合されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、軟磁性合金粉末は扁平粒子からなり、軟磁性合金粉末は、その長軸を合金粉末層の厚み方向と直交する方向に一致させて配向されていることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、電磁波ノイズ抑制体に含まれる軟磁性合金粉末の含有量は、30体積%以上70体積%以下の範囲であることを要旨とする。
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、軟磁性合金粉末と結着材とを含む複数の合金粉末層を積層して構成されている電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、軟磁性合金粉末と結着材とを混合しスラリー状の成形材料を調整する調整工程と、スラリー状の成形材料を離型シート上に略均一な厚みで塗布して成形材料中の軟磁性合金粉末を沈降させる成形材料塗布工程と、離型シート上の成形材料を乾燥して合金粉末層を形成する乾燥工程と、離型シートから合金粉末層を剥離した後、複数の合金粉末層を積層する工程であって、各合金粉末層の上面付近では軟磁性合金粉末の含有量が相対的に低く、合金粉末層の下面付近では軟磁性合金粉末の含有量が相対的に高く、合金粉末層の上面を電磁波ノイズ抑制体の外表面に配置するように複数の合金粉末層を積層する積層工程と、熱プレスにより、積層された複数の合金粉末層を接合する接合工程とを備えることを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の発明において、複数の合金粉末層は一対の合金粉末層からなり、複数の合金粉末層は、各合金粉末層の下面同士を対向させて積層されることを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6記載の発明において、離型シートから合金粉末層を剥離した後、積層される合金粉末層の境界面を挟む一対の合金粉末層のうち少なくとも一方の境界面に架橋剤を塗布することを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5又は6記載の発明において、スラリー状の成形材料を調整する際に架橋剤を加えることを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項4〜8のうちいずれか一項に記載の発明において、合金粉末層の厚さは50μm以上250μm以下の範囲であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、軟磁性合金粉末の脱落を抑制しつつ、電磁波吸収特性が向上する電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電磁波ノイズ抑制体の横断面図。
【図2】(a)〜(c)は電磁波ノイズ抑制体を製造する工程を説明する断面図。
【図3】本発明の別例に係る電磁波ノイズ抑制体の横断面図。
【図4】(a),(b)は電磁波ノイズ抑制体の製造工程を説明する横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電磁波ノイズ抑制体およびその製造方法を具体化した一実施形態について図1〜図2(c)を参照して説明する。
図1に示すように、電磁波ノイズ抑制体10は、パソコンなどの電子機器から発生する高周波の電磁波ノイズを抑制する電磁波ノイズ抑制シートとして形成されている。電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11と結着材12とを含む複数の合金粉末層13を積層して構成されている。本実施形態において、電磁波ノイズ抑制体10は、同じ厚さを有する2枚の合金粉末層13により構成されている。図2(a)に示すように、各合金粉末層13の上面13a付近では軟磁性合金粉末11の含有量が相対的に低く、合金粉末層13の下面13b付近では軟磁性合金粉末11の含有量が相対的に高くなっている。合金粉末層13は、それらの上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置するように積層されている。即ち、図2(c)に示すように、合金粉末層13は、それらの下面13bを互いに対向させて積層されている。このように積層された合金粉末層13は、架橋により互いに接合されている。
【0018】
軟磁性合金粉末11は、それ自体が自然共鳴し電磁波を熱エネルギーに変換することにより、電磁波の透過や反射を防止する機能を有している。電磁波ノイズ抑制体10の面全体に電磁波吸収特性やノイズ抑制特性を付与するとの観点から、軟磁性合金粉末11は、電磁波ノイズ抑制体10の面全体に亘って均一に分散していることが好ましい。本実施形態において、軟磁性合金粉末11は、積層される合金粉末層13の境界面14付近にて最も高密度に充填されると共に、境界面14から離れるに従い徐々に密度が低くなるように充填されている。即ち、軟磁性合金粉末11の密度は、電磁波ノイズ抑制体10の内部で相対的に高く、電磁波ノイズ抑制体10の外表面付近で相対的に低くなっている。軟磁性合金粉末11として、公知の材料を用いることができる。軟磁性合金粉末11の具体例として、例えば、FeSi、FeNi、FeSiAl、FeNiSiB、FeSiB等の鉄系の軟磁性金属、CoFeSiB等のコバルト系軟磁性金属、MnZnフェライト、MgZnフェライト、NiZnフェライト等の軟磁性酸化物などが挙げられる。
【0019】
軟磁性合金粉末11は、扁平粒子からなる粉末である。軟磁性合金粉末11の表面形状は、粒子間の摩擦抵抗が小さく高密度に充填できるとの観点から、丸みを帯びていることが好ましい。軟磁性合金粉末11の平均粒径は、結着材12との混合や軟磁性合金粉末11の配向などを容易に行えるよう所定の範囲に設定されている。具体的には、軟磁性合金粉末11の平均粒径は、30〜100μmの範囲であることが好ましい。軟磁性合金粉末11の平均粒径が30μm未満の場合、実数部透磁率μ’が上げられないという問題があり、好ましくない。一方、軟磁性合金粉末11の平均粒径が150μmを越える場合、合金粉末層13への充填性が悪くなってしまうため、好ましくない。
【0020】
電磁波ノイズ抑制体10の電磁波吸収特性やノイズ抑制特性を向上させるには、軟磁性合金粉末11を高密度に充填する必要がある。また、軟磁性合金粉末11を高密度に充填するには、電磁波ノイズ抑制体10の面方向に沿って軟磁性合金粉末11を高度に配向させる必要がある。これらの観点から、軟磁性合金粉末11の扁平率は高い方が好ましい。具体的には、軟磁性合金粉末11のアスペクト比は、15以上であることが好ましい。軟磁性合金粉末11は、その長軸を合金粉末層13の厚み方向と直交する方向一致させて配向されている。即ち、軟磁性合金粉末11は、その長軸を合金粉末層13の面方向に一致させて配向されている。
【0021】
軟磁性合金粉末11の含有量は、電磁波ノイズ抑制体10に所望の透磁率を付与できるとの観点から、30体積%以上70体積%以下の範囲であることが好ましい。即ち、電磁波ノイズ抑制体10の体積をV1、軟磁性合金粉末11の体積をV2とした場合、V2/V1の値が0.3〜0.7の範囲であることが好ましい。軟磁性合金粉末11の含有量が30体積%未満の場合、所望の透磁率が得られず、好ましくない。一方、軟磁性合金粉末11の含有量が70体積%を越える場合、電磁波ノイズ抑制体10の表面から軟磁性合金粉末11が脱落し易くなり、また材料コストの上昇を招く等の問題が生じるため、好ましくない。
【0022】
結着材12は、軟磁性合金粉末11を電磁波ノイズ抑制体10内に保持する機能を有している。結着材12として、公知の高分子化合物を用いることができる。結着材12として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が用いられる。熱可塑性樹脂の具体例として、例えば、酢酸ビニル樹脂、フッ化ビニル樹脂、アクリル酸エステル−アクリルニトリル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース等)、スチレンブタジエン共重合体、アミノ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂及び反応型樹脂の具体例として、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、高分子ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、低分子量グリコールと高分子ジオールとイソシアネートの混合物等、及びこれらの樹脂の混合物、各種合成ゴム等が挙げられる。
【0023】
架橋剤15は、結着材12を構成する高分子化合物同士を化学的に結合したり、高分子化合物を構成する分子間を化学的に結合したりして、直鎖状の分子構造から網目状の構造を形成する機能を有している。架橋剤15として、公知の架橋剤が用いられるが、結着材12の種類に応じて選択することが好ましい。架橋剤15として、過酸化物架橋剤やイソシアネート系架橋剤、加硫剤、加硫促進剤などが用いられ、それらのうち、各種の高分子化合物に対して高い架橋効果を示すとの観点から、過酸化物架橋剤を用いることが好ましい。過酸化物架橋剤の具体例として、例えば、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、パーカーボネート類(パーオキシジカーボネート類)、アルキルパーエステル類が挙げられる。イソシアネートの具体例として、例えば、ジフエニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXD1)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメレチンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネン・ジイソシアネート(NBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,3−プロパンジオール(1,3−PDO)等が挙げられる。
【0024】
上記の組成物以外に、電磁波ノイズ抑制体10の用途に応じて、各種の添加剤を加えることもできる。具体的には、UL規格などの安全上の規格を満たすため、難燃剤などの添加剤を加えることもできる。難燃剤の具体例として、塩素系や臭素系などのハロゲン系のほか、リン系、リン酸エステル系、赤リン系、グアニジン系、トリアジン系、メラミン系、アンチモン系、金属水酸化物系などが挙げられる。また、電磁波ノイズ抑制体10の劣化や変質などを抑制するため、老化防止剤などの添加剤を加えることもできる。老化防止剤の具体例として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。
【0025】
次に、電磁波ノイズ抑制体10の製造方法について図2(a)〜図2(c)を参照して説明する。
電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11と結着材12とを混合しスラリー状の成形材料を調整する調整工程と、スラリー状の成形材料を離型シート16上に略均一な厚みで塗布して成形材料中の軟磁性合金粉末11を沈降させる成形材料塗布工程と、離型シート16上の成形材料を乾燥して合金粉末層13を形成する乾燥工程と、離型シート16から合金粉末層13を剥離した後、積層される合金粉末層13の境界面を挟む一対の合金粉末層13のうち少なくとも一方の境界面14に架橋剤15を塗布してから、合金粉末層13の上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置するように複数の合金粉末層13を積層する積層工程と、熱プレスにより、積層された複数の合金粉末層13を接合する工程とを経て製造される。
【0026】
調整工程では、スラリー状の成形材料が調整される。具体的には、まず、結着材12と、必要に応じて、難燃剤や老化防止剤等の添加剤とを配合し、公知の混合手段を用いて均一になるまで混合する。そして、その混合物に有機溶媒を配合しスラリー状にしてから、軟磁性合金粉末11を加えて均一になるまで混合する。混合手段として、例えば、ミキサー、振動攪拌機、混練ロール、ニーダーなどが挙げられる。成形材料の粘度は、有機溶剤を用いて、次の成形材料塗布工程で成形材料をシート状に形成可能な粘度に調整されることが好ましい。
【0027】
成形材料塗布工程では、ドクターブレード法を用いて、調整工程で得られたスラリー状の成形材料を離型シート16上にてシート状に形成する。具体的には、図2(a)に示すように、離型シート16上に、略均一な厚みでスラリー状の成形材料が塗布される。より具体的には、ドクターブレードの水平刃と離型シート16との隙間を調節し、スラリー状の成形材料をドクターブレードの受け口に流し込みながら、離型シート16を一定速度で滑らせることにより、離型シート16上にスラリー状の成形材料が塗布される。成形材料をシート状に塗布するための手段として、ドクターブレード法以外に、バーコータ、ロールコータ、及びアプリケーター等が挙げられる。
【0028】
ドクターブレード法による塗布により、成形材料は、軟磁性合金粉末11を一方向に配向させながら離型シート16上に塗布される。即ち、ドクターブレード法による塗布により、軟磁性合金粉末11は、その長軸をシートの厚み方向と直交する方向、即ち、シートの面方向に一致させて配向される。塗布後、成形材料は、移動又は停止している離型シート16上にて静置される。このため、結着材12よりも比重の高い軟磁性合金粉末11はその自重により沈降し、離型シート16の表面付近、即ち、シート状に形成される成形材料の下面(後述する合金粉末層13の下面13b)付近に凝集する。このとき、軟磁性合金粉末11は、その配向状態を維持したまま沈降し、凝集する。
【0029】
乾燥工程では、公知の乾燥手段を用いて、スラリー状のシート(成形材料)に含まれる有機溶剤を揮発させて、シートを乾燥させる。これにより、シートが固化して、シート状の合金粉末層13が形成される。乾燥後、合金粉末層13は、所定の形状及び大きさに裁断されると共に、離型シート16から剥離される。なお、合金粉末層13の厚さは、50μm以上250μm以下の範囲であることが好ましい。合金粉末層13の厚さが50μm未満である場合、離型シート16から合金粉末層13を容易に剥がすことができず、好ましくない。また、合金粉末層13の厚さが250μmを越えると、成形材料中に含まれる有機溶剤を完全に揮発させることができず、また、スラリー状のシート(成形材料)がその自重により変形し易くなり、好ましくない。
【0030】
積層工程では、まず、離型シート16から合金粉末層13を剥がした後、図2(b)に示すように、合金粉末層13を上下反転させる。こうして、電磁波ノイズ抑制体10を構成する2枚の合金粉末層13を準備し、軟磁性合金粉末11が凝集している合金粉末層13の下面13bに、スプレーや刷毛塗りなどの公知の手段を用いて、架橋剤15が塗布される。このとき、架橋剤15は、積層される合金粉末層13の境界面14を挟む一対の合金粉末層13のうち一方又は両方の境界面14、即ち合金粉末層13の下面13bに塗布される。また、架橋剤15は、有機溶剤の影響によって分解する可能性があるとの理由から、有機溶剤で希釈せずに塗布した方が好ましいが、有機溶剤に希釈してから合金粉末層13の下面に塗布してもよい。後者の場合、作業時の取り扱い性を考慮すれば、架橋剤15の塗布後、有機溶剤を揮発させ塗布面を乾燥させてから、合金粉末層13を積層する方が好ましい。続いて、図2(c)に示すように、軟磁性合金粉末11が凝集している合金粉末層13の下面13b同士を対向させる。そして、架橋剤15が塗布された合金粉末層13の下面13bを別の合金粉末層13の下面13bに密着させるように、両合金粉末層13を積層させる。換言すれば、各合金粉末層13の上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置するように、両合金粉末層13を積層させる。
【0031】
接合工程では、熱プレスにより、積層された2枚の合金粉末層13を接合すると共に、電磁波ノイズ抑制体10を所定の厚さにまで圧縮する。この接合工程では、電磁波ノイズ抑制体10の外表面からの加圧により軟磁性合金粉末11が高密度に充填されると共に、加熱により架橋反応が進むため積層された2枚の合金粉末層13が圧縮状態で接合される。これにより、電磁波ノイズ抑制体10内の空気が除去されると共に圧縮状態が維持されるため、熱プレス解除後も電磁波ノイズ抑制体10の膨張は抑制される。こうして、軟磁性合金粉末11が高密度に充填されたシート状の電磁波ノイズ抑制体10が製造される。
【0032】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11と結着材12とを含む複数の合金粉末層13を積層して構成されている。合金粉末層13は、それらの上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置するように積層されている。この構成によれば、合金粉末層13の上面13aが電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置されるため、電磁波ノイズ抑制体10の外表面における軟磁性合金粉末11の含有量を相対的に低くすることができる。よって、電磁波ノイズ抑制体10の表面から軟磁性合金粉末11が脱落することを抑制できる。これに対し、合金粉末層13の下面13bが電磁波ノイズ抑制体10の内部に配置されるため、電磁波ノイズ抑制体10内にて軟磁性合金粉末11を高密度に充填することもできる。よって、軟磁性合金粉末11の脱落を抑制しつつ、電磁波吸収特性やノイズ抑制特性が向上する。なお、本実施形態において、電磁波ノイズ抑制体10は、同じ厚さを有する2枚の合金粉末層13により構成されている。この構成によれば、電磁波ノイズ抑制体10を構成する合金粉末層13の数を必要最小限に抑えることができる。よって、電磁波ノイズ抑制体10の製造コストを抑制することができる。
【0033】
(2)積層された合金粉末層13は、架橋により互いに接合されている。この構成によれば、例えば、積層された複数の合金粉末層13をプレス成形した後も、各合金粉末層13は、架橋により接合され続けるため、圧縮状態の厚さをそのまま維持することができる。よって、軟磁性合金粉末11が高密度に充填されたシート状の電磁波ノイズ抑制体10を容易に形成することができる。また、各合金粉末層13が架橋により強固に接合されるため、各合金粉末層13の層間剥離を抑制することもでき、電磁波ノイズ抑制体10の耐熱性や耐薬品性も向上する。
【0034】
(3)扁平粒子からなる軟磁性合金粉末11がその長径方向を合金粉末層13の厚み方向と直交する方向に一致させて配向されるため、軟磁性合金粉末11をより高配向に、より高密度に充填することができる。よって、電磁波ノイズ抑制体10の電磁波吸収特性やノイズ抑制特性がより一層向上する。
【0035】
(4)軟磁性合金粉末11の含有量は、30体積%以上70体積%以下の範囲であることが好ましい。この構成によれば、軟磁性合金粉末11の脱落や材料コストの上昇などを抑制しつつ、電磁波ノイズ抑制体10の電磁波吸収特性やノイズ抑制特性を更に向上させることができる。
【0036】
(5)合金粉末層13の厚さは、50μm以上250μm以下の範囲であることが好ましい。即ち、合金粉末層13の厚さを50μm以上にすることで、離型シート16から合金粉末層13を容易に剥がすことができる。また、合金粉末層13の厚さを250μm以下にすることで、成形材料中に含まれる有機溶剤を十分に揮発させることができ、また、スラリー状の成形材料がその自重による変形してしまうことを抑制することもできる。
【0037】
(6)調整工程では、まず、結着材12と、必要に応じて、難燃剤や老化防止剤等の添加剤とを配合し、公知の混合手段を用いて均一になるまで混合する。そして、その混合物を有機溶媒に溶かしてスラリー状の液状物を調整し、この液状物に軟磁性合金粉末11を加えて均一になるまで混合する。このように、スラリー状の液状物に軟磁性合金粉末11を加えてから混合することにより、扁平粒子からなる軟磁性合金粉末11が混合時に破壊されることを防ぐことができる。
【0038】
上記の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、積層された複数の合金粉末層13は架橋により接合されていたが、架橋以外の方法により接合されてもよい。架橋以外の接合方法として、例えば、熱融着や、超音波溶着、接着剤や粘着材による固着などが挙げられる。
【0039】
・本実施形態において、軟磁性合金粉末11は、電磁波ノイズ抑制体10の面全体に亘って均一に分散していたが、用途や設計仕様等に応じて、電磁波ノイズ抑制体10の面の一部に分散していてもよい。
【0040】
・図3に示すように、電磁波ノイズ抑制体20を3枚の合金粉末層13により構成してもよい。この場合も、合金粉末層13の上面13aを電磁波ノイズ抑制体20の外表面に配置するように、3枚の合金粉末層13が積層されている。即ち、合金粉末層13の上面13aを電磁波ノイズ抑制体10の外表面に配置しさえすれば、電磁波ノイズ抑制体を構成する合金粉末層13の数は3枚以上であってもよい。
【0041】
・図4(a),(b)に示すように、軟磁性合金粉末11と結着材12とを混合してスラリー状の成形材料を調整する際、架橋剤15を加えてもよい。この場合、スラリー状の成形材料を塗布後、乾燥により有機溶剤を揮発させている間は、架橋剤15の反応分解を進行させないように乾燥条件を調整する必要がある。しかしながら、この方法によれば、離型シート16から合金粉末層13を剥離した後に架橋剤15を塗布する方法と同様に、軟磁性合金粉末11を高密度に充填できると共に、実数部透磁率μ’の高い電磁波ノイズ抑制体30を得ることもできる。また、スラリー状の成形材料中に予め架橋剤15を加えるため、離型シート16から合金粉末層13を剥離した後に架橋剤15を塗布する方法と比較して、製造工程を簡略化することができる。よって、電磁波ノイズ抑制体30の製造コストをより一層低減することができる。
【0042】
・本実施形態において、電磁波ノイズ抑制体10は、電磁波ノイズ抑制シートとして形成されていたが、用途や設計仕様等に応じて、ブロック状に形成されてもよい。
【実施例】
【0043】
次に、実施例、比較例を挙げて本発明の電磁波ノイズ抑制体について更に具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1では、結着材12として、カルボキシル基含有NBRを用いた。添加剤として、難燃剤及び滑剤であるメラミンシアヌレート(「MC−6000」日産化学工業株式会社)と、赤燐(「120UF」燐化学工業株式会社)と、老化防止剤(「アデカスタブAO−50」株式会社ADEKA)とをそれぞれ表1に示す量(重量比)で配合し、ニーダーを用いて均一になるまで混練した。その後、配合物を有機溶剤(シクロヘキサノン)に溶かしてスラリー状の液状物を調整し、この液状物に軟磁性合金粉末11を加え、プラネタリーミキサーを用いて均一になるまで混練した。なお、軟磁性合金粉末11として、長径が約50μmである鱗片状のFeSiAl合金粉末を用いた。こうして得られた成形材料を、バーコータを用いて離型シート16上に塗布した。続いて、離型シート16上で成形材料を乾燥して有機溶剤を揮発させることにより、約100μmの厚さを有するシート状の合金粉末層13を形成した。ここでは、乾燥温度は90℃で、乾燥時間は5分とした。更に、この合金粉末層13を離型シート16から剥離した後、合金粉末層13の下面13bに架橋剤15を塗布した。架橋剤15として、ジアルキルパーオキサイド(「パークミルD」日油株式社製)の2wt%エタノール溶液を用いた。そして、架橋剤15が塗布された合金粉末層13の下面13bを乾燥した後、上記の合金粉末層13の下面13bと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させるようにして、両合金粉末層13を積層した。最後に、熱プレスにより、180℃3分の加熱圧縮を行い、両合金粉末層13を接合してシート状の電磁波ノイズ抑制体10を作製した。
(実施例2)
実施例2の電磁波ノイズ抑制体10は、架橋剤15として、ジアルキルパーオキサイド(「パークミルD−40」(40%含有粉)日油株式社製)を用いた以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(実施例3)
実施例3の電磁波ノイズ抑制体10は、架橋剤15として、ジアルキルパーオキサイド(「パークミルD」日油株式社製)を5重量部配合したことと、スラリー状の成形材料中に架橋剤15を予め加えたこと以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(実施例4)
実施例4の電磁波ノイズ抑制体10は、架橋剤15を加えずに熱プレスのみにより合金粉末層13を接合した以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(実施例5)
実施例5の電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11及び有機溶剤の配合量を表1に示す量(重量比)にそれぞれ変更した以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(実施例6)
実施例6の電磁波ノイズ抑制体10は、軟磁性合金粉末11及び有機溶剤の配合量を表1に示す量(重量比)にそれぞれに変更した以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(比較例1)
比較例1では、合金粉末層13の下面13bと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させるのではなく、合金粉末層13の上面13aと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させて両合金粉末層13を接合し、シート状の電磁波ノイズ抑制体10を作製した。比較例1の電磁波ノイズ抑制体10は、合金粉末層13の向きを変えて両合金粉末層13を接合した以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
(比較例2)
比較例2では、合金粉末層13の下面13bと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させるのではなく、合金粉末層13の上面13aと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させて、さらに架橋剤15を用いずに熱プレスのみにより両合金粉末層13を接合し、シート状の電磁波ノイズ抑制体10を作製した。比較例2の電磁波ノイズ抑制体10は、合金粉末層13の向きを変えて、架橋剤15を用いずに両合金粉末層13を接合した以外は、実施例1の電磁波ノイズ抑制体10と同じである。
【0044】
実施例1〜6、比較例1〜2の電磁波ノイズ抑制体10について、軟磁性合金粉末11の含有量をそれぞれ磁性粉割合(体積%)として表1に示す。また、実施例1〜6、比較例1〜2の電磁波ノイズ抑制体10のシート圧縮率(%)、比重、難燃性、実数部透磁率μ’をそれぞれ評価し、それらの結果を表1に示す。なお、シート圧縮率(%)は以下の式を用いて求めた。
【0045】

圧縮率=1−(プレス後放置後のシート厚み/プレス前シート厚み)

難燃性については、UL94垂直燃焼性試験に基づき評価した。実数部透磁率μ’は、外径14mm、内径6mmのリング状に打ち抜いて作製したサンプルについて、アジレントテクノロジー社製のRFインピーダンス/マテリアルアナライザ「HP 4291B」を用いて測定した。表1に示す実数部透磁率μ’は、1MHzの周波数領域での実数部透磁率μ’の値を示す。
【0046】
また、軟磁性合金粉末11の脱落評価として、電磁波ノイズ抑制体10の上面または下面に微粘着テープ(「パナプロテクトGN50」パナック株式会社製)をローラー加圧により綺麗に貼り付けてからすぐに剥がし、テープ上の粘着面を目視で観察した。その結果を表1に示す。粉末脱落評価の結果については、○、×の2段階で評価した。○は、軟磁性合金粉末11の脱落が見られなかったことを示し、×は、軟磁性合金粉末11の脱落が見られたことを示す。
【0047】
【表1】

表1の結果より、合金粉末層13の下面13bと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させて両合金粉末層13を接合した実施例1〜6では、電磁波ノイズ抑制体10の上面及び下面のいずれにおいても軟磁性合金粉末11の脱落は見られなかった。これに対し、合金粉末層13の上面13aと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させて両合金粉末層13を接合した比較例1〜2では、軟磁性合金粉末11が凝集している電磁波ノイズ抑制体10の下面13bにおいて軟磁性合金粉末11の脱落が見られた。また、実施例1〜6において、軟磁性合金粉末の含有量の増加と共に、実数部透磁率μ’の値が増大することも確認された。これらの結果より、合金粉末層13の下面13bと別の合金粉末層13の下面13bとを対向させて両合金粉末層13を接合することにより、軟磁性合金粉末11の脱落を抑制しつつ、電磁波吸収特性が向上することが裏付けられた。
【0048】
また、表1の結果より、架橋剤15を塗布した実施例1〜3,5,6では、シート圧縮率が45%を越えたのに対し、架橋剤15を塗布しない実施例4では、シート圧縮率が40%未満にすぎなかった。これは、軟磁性合金粉末11が扁平状であり、高密度に充填すると空気を多く含有し易いとの理由から、実施例4の場合、熱プレスしても元の状態に復帰し易く、他の実施例の場合と比較して高密度に充填できなかったものと考えられる。一方、実施例1〜3,5,6の場合、熱プレスにより、積層される合金粉末層13の境界面で架橋されると共に圧縮状態が維持されるため、各合金粉末層13の圧縮状態での厚さがそのまま維持されるものと考えられる。よって、積層された合金粉末層13を架橋により接合すれば、電磁波ノイズ抑制体10全体の厚さを薄くすることができ、電磁波ノイズ抑制シートを形成するのに有利であることも裏付けられた。
【0049】
また、表1の結果より、実施例6では、実数部透磁率μ’が125を越えたのに対し、実施例5では、実数部透磁率μ’が50未満にすぎなかった。これは、実施例5の磁性粉割合が体積割合で実施例6の磁性粉割合の1/2以下であることによるものと考えられる。また、実施例6では、実施例1よりも磁性粉割合が高いため、その分、実数部透磁率μ’の値も大きくなっている。しかしながら、実施例1の実数部透磁率μ’の値と大きな差は無いうえに、磁性粉割合の増加と共に材料コストも上昇すること加え、軟磁性合金粉末11の脱落も懸念される。これらの結果から、本発明を用いた製法であっても、製造コストや軟磁性合金粉末11の脱落等を考慮しつつ、所望の磁波吸収特性やノイズ抑制特性を得るには、軟磁性合金粉末11の割合を30体積%以上70体積%以下に設定すべきであることも裏付けられた。
【符号の説明】
【0050】
10…電磁波ノイズ抑制体、11…軟磁性合金粉末、12…結着材、13…合金粉末層、13a…上面、13b…下面、14…境界面、15…架橋剤、16…離型シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性合金粉末と結着材とを含む複数の合金粉末層を積層して構成されている電磁波ノイズ抑制体において、
前記合金粉末層の上面付近では前記軟磁性合金粉末の含有量が相対的に低く、前記合金粉末層の下面付近では前記軟磁性合金粉末の含有量が相対的に高く、前記複数の合金粉末層は、前記合金粉末層の上面を前記電磁波ノイズ抑制体の外表面に配置するように積層されていることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波抑制体において、
前記積層された複数の合金粉末層は、架橋により互いに接合されていることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電磁波ノイズ抑制体において、
前記軟磁性合金粉末は扁平粒子からなり、前記軟磁性合金粉末は、その長軸を前記合金粉末層の厚み方向と直交する方向に一致させて配向されていることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁波ノイズ抑制体において、
前記電磁波ノイズ抑制体に含まれる前記軟磁性合金粉末の含有量は、30体積%以上70体積%以下の範囲であることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体。
【請求項5】
軟磁性合金粉末と結着材とを含む複数の合金粉末層を積層して構成されている電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、
前記軟磁性合金粉末と前記結着材とを混合しスラリー状の成形材料を調整する調整工程と、
前記スラリー状の成形材料を離型シート上に略均一な厚みで塗布して前記成形材料中の軟磁性合金粉末を沈降させる成形材料塗布工程と、
前記離型シート上の成形材料を乾燥して合金粉末層を形成する乾燥工程と、
前記離型シートから前記合金粉末層を剥離した後、複数の合金粉末層を積層する工程であって、前記各合金粉末層の上面付近では前記軟磁性合金粉末の含有量が相対的に低く、前記合金粉末層の下面付近では前記軟磁性合金粉末の含有量が相対的に高く、前記合金粉末層の上面を前記電磁波ノイズ抑制体の外表面に配置するように前記複数の合金粉末層を積層する積層工程と、
熱プレスにより、積層された複数の合金粉末層を接合する接合工程と
を備えることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、
前記複数の合金粉末層は一対の合金粉末層からなり、前記複数の合金粉末層は、前記各合金粉末層の下面同士を対向させて積層されることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、
前記離型シートから前記合金粉末層を剥離した後、積層される合金粉末層の境界面を挟む一対の合金粉末層のうち少なくとも一方の境界面に架橋剤を塗布することを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、
前記スラリー状の成形材料を調整する際に架橋剤を加えることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項に記載の電磁波ノイズ抑制体の製造方法において、
前記合金粉末層の厚さは50μm以上250μm以下の範囲であることを特徴とする電磁波ノイズ抑制体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−216830(P2011−216830A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86244(P2010−86244)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】