説明

電磁波透過性光輝塗装樹脂製品及び製造方法

【課題】アルミニウムの光輝材を含むことで光輝性がある塗膜を有しながら電磁波透過性も有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムからなる扁平状の光輝材21を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜20を樹脂基材30上に有し、塗膜20中で、光輝材21はその平面が塗膜20の表面22に沿う方向に片寄って向いている状態に配向しており、塗膜20の表面22と直交する直交線の一本と交わる光輝材21の数の平均である平均重なり枚数(y)と、同一の直交線と交わり隣り合う光輝材21同士のこの直交線上における距離の平均である平均光輝材間距離(x)とが次の関係式を満たす。
y≧0.5・・・(数1)、y≦0.3969x+0.594・・・(数2)、x≧3・・・(数3)但し、xの単位はμm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基材上に光輝性塗膜を有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品及びこの電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車の塗装には、購入者の嗜好の変化(光輝性を有する塗装色の人気)から光輝材(マイカ、アルミニウム片等)入りの塗料を用いることが多くなってきている。従って、自動車を構成しているバンパー等の自動車の外装用樹脂製品も自動車の他の部位と調和のとれた外観を保つため、光輝材入りの塗料で塗装される機会が多くなってきている。
一方、自動車はその安全性を向上させるため、自動車が周囲の物に接近したことを運転者に警告する距離測定用のレーダー装置を自動車の各部、例えばラジエータグリル、バックパネル等の背後に設けることがある。このようなレーダー装置は、電磁波を対象物に照射して距離を測定していることから、レーダー装置と対象物との間に電磁波を遮断するもの(例えば金属等)があると、その機能を果たせなくなる。従って、レーダー装置の前面に位置するラジエータグリル等(レーダー装置のカバー部)の自動車の外装用樹脂製品についても電磁波透過性が必要となっている。
【0003】
このような背景により、特許文献1記載のように、光輝材としてマイカを含有するウレタン光輝性塗膜を有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品が提案されている。
【0004】
しかし、アルミニウムは導電性があることから、アルミニウム片を光輝材として含む光輝性塗膜を有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品を得ることは難しいと考えられていた。
【特許文献1】特開2004−244516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今回、アルミニウム片間の距離を大きくすると電磁波透過性が良くなる(電磁波の減衰が小さくなる)ことを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、アルミニウムの光輝材を含むことで光輝性がある塗膜を有しながら電磁波透過性も有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品及びこの電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(A)電磁波透過性光輝塗装樹脂製品
本発明の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品は、アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有し、
前記光輝性塗膜中で、前記光輝材はその平面が前記光輝性塗膜の表面に沿う方向に片寄って向いている状態に配向しており、
前記光輝性塗膜の表面と直交する直交線の一本と交わる前記光輝材の数の平均である平均重なり枚数(y)と、同一の前記直交線と交わり隣り合う前記光輝材同士の該直交線上における距離の平均である平均光輝材間距離(x)とが次の両関係式を満たしている。
y≧0.5・・・(数1)
y≦0.3969x+0.594・・・(数2)
但し、xの単位はμm
【0008】
(B)電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法
本発明の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法は、アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法であって、
前記光輝性塗膜の成分中の前記光輝材の質量%含有率の値と該光輝性塗膜のμm単位の膜厚の値との積が200以下であり、
前記塗料を一回塗装してなる前記光輝性塗膜の膜厚が10μm以下になるよう塗装することを特徴としている。
【0009】
本発明の別の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法は、アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法であって、
前記光輝性塗膜の成分中の前記光輝材の質量%含有率の値と該光輝性塗膜のμm単位の膜厚の値との積が100以下であり、
前記塗料が扁平状の非導電性顔料を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0011】
1.光輝材
光輝材としては、特に限定されないが、箔状等のアルミニウムを粉砕した粉砕アルミニウム(アルミフレーク)、蒸着等により形成された膜状のアルミニウムを粉砕した蒸着アルミニウム(蒸着アルミ)等が例示でき、平面の平滑性が高いことから光輝性に優れている蒸着アルミニウムが好ましい。
また、粉砕されたアルミニウムの外側が透明な不導電性物質で覆われているものが好ましい。
光輝材の平面の形状としては、特に限定はされないが、円形状、楕円形状、三角形状、正方形状及び矩形状も含む多角形状等が例示できる。光輝材の厚さは、特に限定はされないが、2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。光輝材の大きさは、特に限定はされないが、端部間の長さが150μm以下であることが好ましい。光輝材の平均粒径は、特に限定はされないが、60μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。
アルミニウムには、単体のアルミニウムはもちろんのこと、合金のアルミニウムも含まれる。
外側を覆う透明な不導電性物質としては、特に限定はされないが、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)等の樹脂、ガラス等が例示できる。
光輝材の平面が光輝性塗膜の表面に沿う方向に片寄って向いている状態(異方性の状態)とは、光輝材の平面が無秩序な方向に向いている状態(いわゆる、等方性の状態)ではなく、図2の写真に示すように、大方の光輝材(白色細長)が塗膜の表面(縦方向略中央)に沿っている状態である。
【0012】
2.光輝性塗膜
光輝性塗膜の膜厚は、特に限定はされないが、10〜40μmであることが好ましい、10μm未満では、塗膜として、十分な付着性や耐久性を確保することが難しくなり、40μmを超えると、塗装時のタレやたまり、乾燥時のワキ等により、仕上がり外観や作業性を確保することが難しくなるからである。
但し、塗料を一回塗装してなる光輝性塗膜の膜厚が10μmを超えると、塗膜が硬化するまでに、光輝材が塗膜中で沈降等してしまい、十分な光輝材間距離を確保することができないおそれがあるため、塗料を一回の塗装・焼き付けしてなる光輝性塗膜の膜厚を10μm以下にすることが好ましい。
また、平均光輝材間距離を大きくできることから、複数回に分けて塗り重ねるように塗装(焼き付けを含む)することが好ましい。
光輝性塗膜の成分中の光輝材の含有率としては、特に限定はされないが、粉砕アルミニウムの場合には、2.5〜10.0質量%であることが好ましい。2.5質量%未満では、良好な光輝性を有する塗膜を得ることが難しくなり、10.0質量%を超えると、光輝材同士の間隔が狭くなり、良好な電磁波透過性を有する塗膜を得ることが難しくなるからである。一方、蒸着アルミニウムの場合には、0.5〜2.0質量%であることが好ましい。これは、蒸着アルミニウムは粉砕アルミニウムよりも薄いことから比表面積が大きいことによる。
また、光輝性塗膜の成分中の光輝材の質量%(質量百分率単位)含有率の値と光輝性塗膜のμm単位の膜厚の値との積は、100以下が好ましい。
塗料としては、特に限定はされないが、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料等が例示できる。また、平均光輝材間距離を大きくすることができ、塗膜の光輝性が向上することから、扁平状の非導電性顔料を含んでいることが好ましい。
塗装方法としては、特に限定はされないが、エアースプレー塗装、エアーレススプレー塗装、浸漬塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装等が例示できる。
【0013】
3.扁平状の非導電性顔料
扁平状の非導電性顔料としては、特に限定はされないが、ガラスをフレーク状に粉砕したフレーク状ガラス、マイカの表面にチタン等の金属の酸化物の膜を形成したパールマイカ等が例示できる。
また、光輝性塗膜の成分中の含有率としては、特に限定はされないが、1〜20質量%であることが好ましい。
【0014】
4.樹脂基材
樹脂基材に用いられる樹脂としては、特に限定はされないが、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂等が例示できる。また、樹脂基材と光輝性塗膜とは直に接していてもよいし、樹脂基材と光輝性塗膜との間に、樹脂基材に対する光輝性塗膜の密着性を向上させるためのプライマー等の他の塗膜等が設けられていてもよい。
【0015】
5.直交線
塗膜の表面と直交する直交線としては、特に限定はされないが、塗膜の表面に対し直交する方向に切断した任意の塗膜断面の一部において、該部における塗膜断面を2以上の任意の整数倍に等分し、塗膜の表面と直交するような線が例示できる。
【0016】
6.平均重なり枚数(y)
平均重なり枚数(y)が、0.5に満たない(y<0.5)と、良好な光輝性を有する塗膜を得ることが難しくなり、0.3969x+0.594を超える(y>0.3969x+0.594)と、良好な電磁波透過性を有する塗膜を得ることが難しくなり、好ましくは、y≧0.9、且つ、y≦0.3969x+0.594である。
【0017】
7.平均光輝材間距離(x)
平均光輝材間距離(x)としては、特に限定はされないが、3μm以上であることが好ましく、より好ましくは、3.5μm以上である。
【0018】
8.電磁波透過性光輝塗装樹脂製品
本電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の用途としては、特に限定はされないが、ミリ波レーダー装着用のカバーや通信機器の筐体等のように、光輝性塗膜を有しつつ電磁波透過性も有することが好まれるものが例示できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アルミニウムの光輝材を含むことで光輝性がある塗膜を有しながら電磁波透過性も有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品及びこの電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有し、
光輝性塗膜中で、光輝材はその平面が光輝性塗膜の表面に沿う方向に片寄って向いている状態に配向しており、
光輝性塗膜の表面と直交する直交線の一本と交わる光輝材の数の平均である平均重なり枚数(y)と、同一の直交線と交わり隣り合う光輝材同士のこの直交線上における距離の平均である平均光輝材間距離(x)とが次の三つの関係式を満たす電磁波透過性光輝塗装樹脂製品。
y≧0.9・・・(数1)
y≦0.3969x+0.594・・・(数2)
x≧3・・・(数3)
但し、xの単位はμm
【実施例】
【0021】
図1、2に示すように、本発明の電磁波透過性塗装樹脂製品10は、ポリカーボネート(PC)基材30上に、アルミニウムからなる扁平状の光輝材21を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜20を有するものである。
また、光輝材21は、塗膜20中で、その平面が光輝性塗膜20の表面22に沿う方向(略平行)に配向している。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0022】
次の表1に示すものは、ポリカーボネート基材上に、塗膜成分中の粉砕アルミニウムの含有率と膜厚と塗装回数(塗装と焼き付けの繰り返し回数)とを変えた光輝性塗膜を有する実施例(9種類)と比較例(9種類)の平均重なり枚数(y)、平均光輝材間距離(x)、光輝性(IV値)及び電磁波(ミリ波)透過性(ミリ波透過減衰量)を測定したものである。また、この実施例と比較例の平均光輝材間距離と平均重なり枚数との関係のグラフを図4に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
本測定に用いた、試料の各要素は、以下の通りである。
・ポリカーボネート基材:板状(厚さ:5mm)
・塗料:アクリルウレタン塗料
・粉砕アルミニウム:扁平状(鱗片状、厚さ:1μm、平均粒径:15μm)
・塗装方法:スプレー塗装で行い、一回塗装する毎に焼き付けを行った。従って、複数回塗装を行ったものは、塗装・焼き付けを行う工程を複数回繰り返した。特に、実施例については、一回の塗装・焼き付けで形成される膜厚が10μm以下になるようにした。
【0025】
(1)ミリ波透過性
ミリ波透過性は、次のようにして求めたミリ波透過減衰量より、その値が1dB以下のものについては合格とし、1dBを超えるものについては不合格と評価した。
ミリ波透過減衰量は、電磁波吸収測定装置(自由空間法、財団法人ファインセラミックスセンター所有)を用いて測定した。
具体的には、室温において、Wバンド(76.575GHz)の電磁波を発信器から入射角0°にて試料に入射させ、試料をはさんで発信器と対峙する受信器で試料を透過した電磁波を受信して、ミリ波透過減衰量を測定し、その値から基材単体のミリ波透過減衰量の値を引いた値(塗膜単体のミリ波透過減衰量)を求めた。
【0026】
(2)光輝性
コピー用紙を10枚重ねた上で、メタリック感測定装置(関西ペイント社の商品名「ALCOPE LMR−200」)を用いて、IV値(Intensity Value)を測定した。IV値の値が大きい方が光輝性が高い。
【0027】
(3)平均重なり枚数(y)測定
図3に示すように、試料中の75mm×75mmの範囲から、塗膜表面に対し(樹脂基材の表面に対してでもある)直交する方向に切断した任意の塗膜断面を五つ作成した(図3a)。それぞれの塗膜断面の任意の位置(図3b)を顕微鏡で拡大し、画像を撮影した。この画像をもとに、幅(塗膜表面と平行方向の長さ)0.14mmの範囲の塗膜断面を5等分するように、塗膜表面と直交する直交線を4本引き(図3c)、それぞれの直交線と交わる光輝材の枚数を数えた。そして、それぞれの直交線毎の枚数を合計したものを、塗膜断面に引いた直交線の合計本数である20(4本×5断面)で割ったものを平均重なり枚数とした。
【0028】
(4)平均光輝材間距離(x)測定
図3に示すように、上記平均重なり枚数測定で引いた20本の直交線と交わる光輝材のうち、同一の直交線と交わり隣り合う光輝材同士のこの直交線上における距離Aを計測した。そして、このようにして計測した値の算術平均を平均光輝材間距離とした。
【0029】
図4に示すように、平均重なり枚数(y)が0.9枚以上のものは、外観(光輝性)が良好であり、平均重なり枚数(y)が0.3969x+0.594以下のものは、ミリ波透過性が合格(良好)であった。
【0030】
以上の結果より、本実施例(9種類)は、光輝性及び電磁波透過性が共に良好であった。一方、比較例(9種類)は、全て光輝性は良好であったが、電磁波透過性が悪かった。
【0031】
次に、ポリカーボネート基材上に、塗膜成分中の粉砕アルミニウムの含有率が5質量%、塗膜成分中のフレーク状ガラスの含有率が8質量%である塗料を用いた実施例10と、塗膜成分中の粉砕アルミニウムの含有率が5質量%、塗膜成分中のパールマイカの含有率が8質量%である塗料を用いた実施例11と、光輝材として蒸着アルミニウムを用い、その塗膜成分中の含有率が0.8質量%である塗料を用いた実施例12と、塗膜成分中の蒸着アルミニウムの含有率が0.8質量%、塗膜成分中のフレーク状ガラスの含有率が8質量%である塗料を用いた実施例13と、塗膜成分中の蒸着アルミニウムの含有率が0.8質量%、塗膜成分中のパールマイカの含有率が8質量%である塗料を用いた実施例14の平均重なり枚数(y)、平均光輝材間距離(x)、光輝性及び電磁波(ミリ波)透過性(ミリ波透過減衰量)を表2に示す。また、平均光輝材間距離と平均重なり枚数との関係のグラフを図4に示す。また、ミリ波透過性の合格と不合格との境界となる実施例2、3、10、12及び比較例5、6、7の値を用いて、平均光輝材間距離と平均重なり枚数との近似曲線(y=0.3969x+0.594)を求め、図4に示す。なお、測定方法は、上記の方法と同じである。
【0032】
【表2】

【0033】
本実施例の各要素は、以下の通りである。
・ポリカーボネート基材:板状(厚さ:5mm)
・塗料:アクリルウレタン塗料
・粉砕アルミニウム:扁平状(鱗片状、厚さ:1μm、平均粒径:15μm)
・蒸着アルミニウム:扁平状(鱗片状、厚さ:0.2μm、但し、厚さ0.03μmの蒸着アルミニウムの外側を樹脂が覆っている、平均粒径:12μm)
・フレーク状ガラス(厚さ:1μm、平均粒径:40μm)
・パールマイカ(厚さ:0.7μm、平均粒径:18μm)
・塗装方法:スプレー塗装で行い、一回塗装する毎に焼き付けを行った。従って、二回塗装を行ったものは、一回の塗装・焼き付けで形成される膜厚が10μmとなるようにし、塗装・焼き付けを行う工程を二回繰り返した。
【0034】
以上の結果より、実施例12は実施例5と比べ、光輝材に蒸着アルミニウムを用いたことにより、少ない含有率(粉砕アルミニウムの5分の1以下)でも光輝性を確保することができた。
実施例10、11は比較例6と比べ、実施例13、14は実施例12と比べ、フレーク状ガラス又はパールマイカを添加した塗料を用いたことにより、光輝性が向上した。
実施例10、11は比較例6と比べ、フレーク状ガラス又はパールマイカを添加した塗料を用いたことにより、平均光輝材間距離も大きくなることから、ミリ波透過減衰量が小さくなり、電磁波(ミリ波)透過性も向上した。
実施例10、11、13、14は、フレーク状ガラス又はパールマイカを添加した塗料を用いたことにより、膜厚が20μmの塗膜でも、実施例5、12のように複数回塗装(重ね塗り)を行わなくてもミリ波透過減衰量が1dB以下になり、電磁波(ミリ波)透過性を確保できた。
【0035】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施例の電磁波透過性塗装樹脂製品の表面付近の細部断面の模式図である。
【図2】同細部断面の顕微鏡写真である。
【図3】重なり枚数及び光輝材間距離の測定方法の説明図である。
【図4】平均光輝材間距離と平均重なり枚数との関係のグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 電磁波透過性光輝塗装樹脂製品
20 光輝性塗膜
21 光輝材
22 表面
30 樹脂基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有し、
前記光輝性塗膜中で、前記光輝材はその平面が前記光輝性塗膜の表面に沿う方向に片寄って向いている状態に配向しており、
前記光輝性塗膜の表面と直交する直交線の一本と交わる前記光輝材の数の平均である平均重なり枚数(y)と、同一の前記直交線と交わり隣り合う前記光輝材同士の該直交線上における距離の平均である平均光輝材間距離(x)とが次の両関係式を満たす電磁波透過性光輝塗装樹脂製品。
y≧0.5・・・(数1)
y≦0.3969x+0.594・・・(数2)
但し、xの単位はμm
【請求項2】
前記平均光輝材間距離(x)が次の関係式を満たす請求項1記載の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品。
x≧3・・・(数3)
【請求項3】
前記塗料が扁平状の非導電性顔料を含む請求項1又は2記載の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品。
【請求項4】
前記扁平状の非導電性顔料がフレーク状ガラス又はパールマイカである請求項3記載の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品。
【請求項5】
アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法であって、
前記光輝性塗膜の成分中の前記光輝材の質量%含有率の値と該光輝性塗膜のμm単位の膜厚の値との積が200以下であり、
前記塗料を一回塗装してなる前記光輝性塗膜の膜厚が10μm以下になるよう塗装することを特徴とする電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法。
【請求項6】
アルミニウムからなる扁平状の光輝材を含む塗料を塗装してなる光輝性塗膜を樹脂基材上に有する電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法であって、
前記光輝性塗膜の成分中の前記光輝材の質量%含有率の値と該光輝性塗膜のμm単位の膜厚の値との積が100以下であり、
前記塗料が扁平状の非導電性顔料を含むことを特徴とする電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法。
【請求項7】
前記扁平状の非導電性顔料がフレーク状ガラス又はパールマイカである請求項6記載の電磁波透過性光輝塗装樹脂製品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−30075(P2010−30075A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192444(P2008−192444)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】