説明

電磁遮断弁

【課題】サイズを大きくすることなく、燃料電池への、異常な高圧の水素ガスの供給を好適に防止できる電磁遮断弁を提供することを課題とする。
【解決手段】プランジャ225と弁頭部226が、当接及び離反可能に連結されて弁体224bを構成する。そして、弁口227aを流通する水素流量が増大したとき、負圧力Rが弁頭部226を吸引し、プランジャ225から弁頭部226が離反した状態で、弁頭部226が弁座部227bに着座する。さらに、連通孔226dを開通し、導入口221と排出口222を、連通孔226dを介して連通する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば燃料電池車両に備わる燃料電池システムには、高圧の水素ガスが充填される水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給する供給路に、供給路を流通する高圧の水素ガスを好適な圧力に減圧する減圧弁と、燃料電池システムの停止時等に水素ガスの流通を遮断する、例えば主止弁となる電磁遮断弁が備わる。
そして、電磁遮断弁は制御装置によって、開弁及び閉弁が制御される。
【0003】
このような燃料電池システムにおいて、例えば減圧弁に不具合が生じ、供給路における水素圧力が異常に高くなったとき、所定圧力を超えた高圧の水素ガスが燃料電池に供給されるのを防止するため、例えば特許文献1に示すように、水素ガスの供給路において、減圧弁の下流に安全弁を備える場合がある。
【0004】
例えば減圧弁の不具合によって、供給路の水素圧力が所定圧力を超えた高圧になった場合、制御装置が、供給路に備わる圧力センサによって高圧を検出してから電磁遮断弁を閉弁して水素ガスの供給路を遮断するまでに遅れが生じる。
そこで、制御装置が高圧を検出してから電磁遮断弁が供給路を遮断するまでは安全弁を開弁し、安全弁に設けられるリリーフ開口部から高圧の水素ガスを放出することで、供給路における水素圧力の上昇を抑制している。
【0005】
しかしながら、安全弁のリリーフ開口部の開口面積が小さいと、高圧の水素ガスの安全弁への供給量が、安全弁の水素放出量を上回り、供給路における水素圧力がさらに上昇して、燃料電池に高圧の水素ガスが供給される場合がある。
したがって、安全弁のリリーフ開口部には、充分に大きな開口面積が必要となるが、リリーフ開口部の開口面積を大きくするためには安全弁のサイズを大きくする必要があり、質量が増えるとともに製造コストが高くなるという問題がある。また、安全弁を備える燃料電池システムの規模も大きくなる。
【0006】
このような問題に対応するため、例えば特許文献2には、流通するガス流量の増大に伴って、制御装置を介することなくガス流量を減少できる電磁遮断弁が開示されている。
例えば特許文献2に開示される電磁遮断弁は、ガス流路におけるガス流量が増大すると、テーパを有する流路に備わるボールが流路を狭め、ガス流量を減少できる。したがって、燃料電池システムの水素ガスの供給路に適用した場合、供給路の水素流量が増大すると、電磁遮断弁における水素流量が減少し、供給路の水素流量を減少できる。
【0007】
供給路における水素圧力が上昇して所定圧力を超えると、安全弁が開弁して水素ガスが放出されることから、供給路の水素流量が増大する。例えば特許文献2に開示される電磁遮断弁は、供給路の水素流量が増大すると、電磁遮断弁における水素流量が減少し、供給路の水素流量を減少することから、安全弁への水素ガスの供給量を減少させることができる。したがって、安全弁のリリーフ開口部の開口面積を大きくすることなく、供給路の水素圧力の上昇を抑制し、燃料電池への高圧の水素ガスの供給を防止できる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−207363号公報
【特許文献2】特開平09−178096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば特許文献2に開示される電磁遮断弁は、供給路を開閉する弁体に加えて、供給路を遮断するボールが備わるとともに、ボールを動作させるためのテーパを有する流路を設ける必要があり、電磁遮断弁のサイズが大きく、且つ重くなるという問題がある。また、ボール等の遮断部材は、水素ガスの流量の変化で常に動いていることから、流路や遮断部材が磨耗し、粉塵が発生するという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は、サイズを大きくすることなく、燃料電池への異常な高圧の水素ガスの供給を好適に防止できる電磁遮断弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、ガスの導入口及び排出口が形成される弁室と、前記導入口と前記排出口を連通する弁口の周囲に形成される弁座部と、前記弁座部に対して着座・離間自在に、前記弁室に収納される弁体と、前記弁体を付勢して、前記弁座部に着座させる付勢手段と、供給される電流で前記弁室に磁場を発生するコイルと、前記弁体に備わり、前記弁室に発生する磁場で磁化するプランジャと、磁化した前記プランジャを吸引して、前記弁体を前記弁座部から離間させる固定鉄心と、を備え、前記コイルに電流が供給されたときは、前記固定鉄心が磁化した前記プランジャを吸引し、前記弁体が前記弁座部から離間して前記弁口を開通し、前記コイルへの電流の供給が停止したときは、前記付勢手段の付勢力で、前記弁体が前記弁座部に着座して前記弁口を閉鎖する電磁遮断弁とした。そして、前記弁体が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する、前記導入口における前記ガスの圧力に対する負圧が、所定圧力値を超えて大きくなったとき、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とした。
【0012】
この発明によると、弁座部に発生する、導入口における前記ガスの圧力に対する負圧が所定圧力値を超えて大きくなると、弁体を負圧で弁座部の側に吸引して弁座部に着座させることができる。
【0013】
また、本発明は、前記弁体が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する前記負圧が、前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、前記プランジャが前記固定鉄心に吸引されている状態であっても、前記弁体は、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とした。
【0014】
この発明によると、プランジャが固定鉄心に吸引され、弁体が弁座部から離間している場合であっても、弁座部に発生する負圧が所定圧力値を超えて大きくなったときには、弁体を負圧で弁座部の側に吸引し、弁座部に着座させることができる。
【0015】
また、本発明は、前記弁体は、前記弁座部に着座する弁頭部が、遊びを有する連結部を介して、前記プランジャと当接・離反可能に連結されてなり、前記弁頭部には、前記弁座部に着座したときに前記導入口と前記排出口を連通するための連通孔が形成され、前記連通孔は、前記弁頭部と前記プランジャが当接したときに閉鎖するとともに、前記弁頭部と前記プランジャが離反したときに開通し、前記弁頭部が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する前記負圧が、前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、前記弁頭部と前記プランジャが離反した状態で前記弁頭部が前記弁座部に着座し、前記導入口と前記排出口は、前記連通孔を介して連通することを特徴とした。
【0016】
この発明によると、弁座部に着座する弁頭部が、遊びを有する連結部を介してプランジャに連結され、プランジャと弁頭部が当接・離反する弁体とすることができる。さらに、弁頭部に、弁座部に着座したときに導入口と排出口を連通する連通孔を備え、プランジャと弁頭部が当接したときに連通孔が閉鎖するとともに、プランジャと弁頭部が離反したときに連通孔が開通する弁体とすることができる。
そして、弁頭部が弁座部から離間しているときに弁座部に発生する負圧が、所定圧力値を超えて大きくなったときには、連通孔が開通した状態で弁頭部が弁座部に着座し、導入口と排出口が連通孔を介して連通する構成にできる。
したがって、導入口から排出口に流通するガスの流量を低減できる。
また、前記の構造は弁体の一部として構成でき、電磁遮断弁のサイズを大きくする必要がない。
【0017】
また、本発明は、前記コイルへの電流の供給が停止したとき、前記付勢手段は、前記弁頭部と前記プランジャを当接させて前記連通孔を閉鎖するとともに、前記弁頭部を前記弁座部に着座させることを特徴とした。
【0018】
この発明によると、コイルへの電流の供給が停止した場合は、連通孔を閉鎖することで、導入口から排出口に向かうガスの流通を完全に遮断できる。
【0019】
また、本発明は、水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給する供給路と、前記水素タンクと前記燃料電池の間で前記供給路に備わって、前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力がシステム許容値を超えたときに開弁して前記水素ガスを大気中に放出する安全弁と、を有する燃料電池システムに、前記水素タンクと前記安全弁の間で前記供給路に備わって、前記導入口から前記排出口に向かって前記水素ガスを流通させるとともに、前記安全弁が開弁して前記排出口における前記水素ガスの圧力が低下し、前記負圧が前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とする電磁遮断弁とした。
【0020】
この発明によると、安全弁を備える燃料電池システムの水素ガスの供給路に備わり、供給路を流通する水素ガスの圧力がシステム許容値を超えて安全弁が開弁したときに、弁体が弁座部に着座する電磁遮断弁を構成できる。そして、弁頭部に連通孔が形成されている場合、導入口と排出口を連通孔を介して連通することができる。
【0021】
また、本発明は、前記燃料電池システムには、前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値以下のときには前記コイルに電流を供給し、且つ前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値を超えたときには前記コイルへの電流の供給を停止する制御装置が備わり、前記弁体が前記弁座部から離間している場合に、前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値を超えて、前記制御装置が前記コイルへの電流の供給を停止するとともに前記安全弁が開弁したとき、前記プランジャが前記固定鉄心に吸引されている状態であっても、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とした。
【0022】
この発明によると、供給路の水素圧力がシステム許容値を超えた場合に、制御装置からのコイルへの電流の供給が停止してもプランジャが固定鉄心に吸引された状態にあるときに安全弁が開弁すると、弁体を弁座部に着座させることができる。
したがって、コイルへの電流の供給が停止してから弁体が弁座部に着座するまでに遅れがある場合であっても遅れを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サイズを大きくすることなく、燃料電池への異常な高圧の水素ガスの供給を好適に防止できる電磁遮断弁を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電磁遮断弁が備わる燃料電池システムの構成を示す図である。図1に示す本実施形態に係る燃料電池システム1は、例えば、図示しない燃料電池車両(移動体)に搭載される。
図1に示すように燃料電池システム1は、燃料電池スタック(燃料電池)10と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素ガス(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、を備えている。
さらに、燃料電池システム1を制御する制御装置3が備わる。
【0025】
制御装置3は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータおよびプログラム、周辺回路などを含んで構成され、ROMに記憶されるプログラムを実行することで、燃料電池システム1を制御する。
【0026】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック10は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セルが積層されることで構成され、複数の単セルは、電気的に直列に接続されている。単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟み2枚の導電性を有するアノードセパレータおよびカソードセパレータと、を備えている。
【0027】
MEAは、1価の陽イオン交換膜(例えばパーフルオロスルホン酸型)からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノードおよびカソードとを備えている。アノードおよびカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体から主に構成されると共に、アノードおよびカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)を含んでいる。
【0028】
アノードセパレータには、各MEAのアノードに対して水素を給排するため単セルの積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セルの面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔および溝がアノード流路11(燃料ガス流路)として機能している。
カソードセパレータには、各MEAのカソードに対して空気を給排するため単セルの積層方向に延びる貫通孔(内部マニホールドと称される)や、単セルの面方向に延びる溝が形成されており、これら貫通孔および溝がカソード流路12(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0029】
このようなアノード流路11を介して各アノードに水素が供給されると、後記式(1)の電極反応が起こり、また、カソード流路12を介して各カソードに空気が供給されると、後記式(2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。そして、燃料電池スタック10が発電し、燃料電池スタック10と走行モータ等の外部回路とが電気的に接続されると電流が取り出されるようになっている。
2H→4H+4e …(1)
+4H+4e→2HO …(2)
【0030】
このようにして燃料電池スタック10が発電すると、カソードで生成した水(水蒸気)の一部は、電解質膜を透過し、アノードに移動する。したがって、カソードから排出されるカソードオフガス、およびアノードから排出されるアノードオフガスは、いずれも多湿となる。
【0031】
<アノード系>
アノード系は、燃料電池スタック10よりも上流側に備えられる、水素タンク21、常閉型の電磁遮断弁22、エゼクタ23、及び減圧弁25、並びに燃料電池スタック10よりも下流側に備えられる、気液分離器24、及び常閉型のパージ弁26を備えている。
【0032】
水素タンク21は、配管21a、電磁遮断弁22、配管22a、減圧弁25、配管25a、エゼクタ23、および配管23aを介して、アノード流路11の入口側に接続されている。配管22aと配管25aの間には、水素タンク21から送出される高圧の水素ガスを好適な圧力に減圧する減圧弁25が接続され、この減圧弁25には、カソード流路12に向かう空気の圧力が信号圧(パイロット圧)として入力されており、減圧弁25は、前記空気の圧力とアノード流路11における水素ガスの圧力とが極間差圧を守るように制御するようになっている(図示せず)。
そして、燃料電池車両のイグニッションスイッチがONされ、燃料電池スタック10の起動が要求されたときに電磁遮断弁22が開弁すると、水素タンク21の水素ガスが配管21a等を介してアノード流路11に供給されるようになっている。
なお、減圧弁25の下流は、減圧された中圧の水素ガスが流通する領域であることから中圧部を形成し、配管25aは、中圧の水素ガスが流通することから、以下、中圧配管25aと称する。
【0033】
中圧配管25aには、水素ガスの圧力(以下、水素圧力と称する)を検出して検出信号に変換し、制御装置3に入力する圧力センサ27aが備わる。
制御装置3は、圧力センサ27aが検出する中圧配管25aの水素圧力がシステム許容値を超えた場合に電磁遮断弁22を閉弁して水素ガスの流通を遮断し、高圧の水素ガスが、燃料電池スタック10に供給されることを防止する。
さらに、中圧配管25aには安全弁27が配設される。安全弁27は、中圧配管25aの水素圧力がシステム許容値を超えたときに開弁して水素ガスを大気中に放出し、システム許容値を超えた圧力の水素ガスが、燃料電池スタック10に供給されることを防止している。
【0034】
すなわち、安全弁27は、圧力センサ27aが検出する中圧配管25aの水素圧力がシステム許容値を超えたことを制御装置3が検出してから、電磁遮断弁22が閉弁するまでの間に流通する高圧の水素ガスを大気中に放出し、システム許容値を超えた圧力の水素ガスが、燃料電池スタック10に供給されることを確実に防止する。
なお、システム許容値は、燃料電池システム1の構成要素の耐圧などによって、適宜設定される圧力値である。
【0035】
アノード流路11の出口は、配管24a、気液分離器24、配管24bを介して、エゼクタ23の吸込口に接続されている。そして、アノード流路11(アノード)から排出された未反応の水素を含むアノードオフガスは、気液分離器24において、これに同伴する液状の水分が分離された後、燃料電池スタック10の上流側のエゼクタ23に戻されるようになっている。
そして、エゼクタ23に戻されたアノードオフガスは、水素タンク21からの水素ガスと混合された後、アノード流路11に再供給されるようになっている。
一方、気液分離器24で分離された水分は、一時的に気液分離器24内に貯留された後、配管24cを介して排出される。
【0036】
パージ弁26は、常閉型の電磁弁であり、燃料電池スタック10の発電時において、配管24aおよび配管24bを循環するアノードオフガス(水素)に含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合に、制御装置3によって開かれる弁である。パージ弁26の上流側は、配管26aを介して配管24bに接続され、下流側は、配管26bを介して、図示しない希釈器に接続される。
【0037】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ31が酸素を含む空気を配管31aを介して燃料電池スタック10のカソード流路12に供給し、カソードオフガスが配管32bを介して排出される系である。
【0038】
図2は、アノード系に備わる電磁遮断弁を示す図であって、(a)は外観図、(b)は、図2の(a)のX1−X1断面図である。
電磁遮断弁22は、常閉型の弁で、例えば制御装置3(図1参照)から電流を供給されて開弁する構成が好適である。
この場合、制御装置3は、電磁遮断弁22に電流を供給する電源装置の機能を有することが好ましい。
または、電磁遮断弁22に電流を供給する図示しない電源装置を備え、図示しない電源装置が、制御装置3からの指令によって、電磁遮断弁22に対する電流の供給、及び供給停止を切り換える構成であってもよい。
【0039】
図2の(a)に示すように、電磁遮断弁22は、両端が閉塞した円筒状の本体部220の一端の側に、配管21aが接続される導入口221と配管22aが接続される排出口222が形成され、水素タンク21(図1参照)から送出される水素ガスは、配管21aから導入口221を介して本体部220の中空部に導入され、排出口222から配管22aに排出される。
以下、図2の(a)に示すように、導入口221及び排出口222が形成される側を下方にして、電磁遮断弁22の上下を設定する。
そして、本実施形態において、排出口222は導入口221よりも下方に形成される。
また、導入口221の上方には、本体部220の周囲にコイル223が配設される。
【0040】
図2の(b)に示すように、本体部220の中空部は弁室220aを形成し、略円柱型のプランジャ225が、弁室220aの軸方向に摺動可能に収納される。
また、弁室220aには、導入口221と排出口222の間の周囲が突出して弁座部227bが形成されて、導入口221と排出口222の間には、弁室220aの軸方向に開口する弁口227aが形成され、導入口221と排出口222は、弁口227aを介して連通している。
すなわち、弁口227aの周囲に弁座部227bが形成されている。
そして、プランジャ225は、弁座部227bに対して近接・離反する方向に摺動する。
【0041】
また、プランジャ225の、弁座部227bの側には、プランジャ225と一体に動作して弁口227aを閉鎖する弁頭部226が取り付けられ、弁体224bを構成する。
【0042】
図3は、弁体の構成を示す図である。図3に示すように、弁体224bは、弁頭部226とプランジャ225を含んで構成される。弁頭部226は、例えば有底円筒型の部材で、底壁部226aには、軸方向に貫通する貫通孔で連通孔226dが形成される。
また、側壁部226bには、軸方向に長い長孔226cが、円筒型の中心を挟んで対称の位置に、2つ形成される。
【0043】
プランジャ225の先端部は、例えば外径が縮小して縮径部225aを形成する。縮径部225aの外径は弁頭部226の開口の内径より小さく、縮径部225aを弁頭部226の開口に挿入したとき、縮径部225aと側壁部226bの間に間隙が形成される構成が好適である。
また、縮径部225aには、ピン228が圧入されるピン孔225bが、径方向に貫通して形成される。
【0044】
そして、弁頭部226の開口にプランジャ225の縮径部225aを挿入し、ピン228を、弁頭部226の長孔226cを介して、プランジャ225のピン孔225bに圧入する。
このとき、ピン228の両端部が縮径部225aから突出し、弁頭部226の長孔226c、226cに嵌合する構成とし、さらに、ピン228が長孔226c、226cに沿って摺動可能な構成とする。
【0045】
このような構成によって、弁頭部226は、プランジャ225の軸方向に移動可能に、プランジャ225の下方の端部に取り付けられる。
すなわち、ピン228と長孔226cとで、弁頭部226とプランジャ225の連結部を形成し、さらに、ピン228が長孔226cを摺動することで、遊びを有する連結部を形成する。
また、弁頭部226がプランジャ225に近づく方向に移動したとき、縮径部225aの端部が弁頭部226の底壁部226aに当接して連通孔226dを閉鎖し、弁頭部226がプランジャ225から離れる方向に移動したとき、縮径部225aの端部が弁頭部226の底壁部226aから離反して連通孔226dが開通する構成が好適である。
【0046】
図2の(b)に戻って、弁室220aには、例えばプランジャ225の上方に、プランジャ225を弁座部227bの側に向かって付勢する圧縮ばね(付勢手段)224aが備わる。圧縮ばね224aは、プランジャ225を弁座部227bの側に向かって付勢することで、プランジャ225に取り付けられる弁頭部226を弁座部227bに着座させ、弁口227aを閉鎖する。すなわち、電磁遮断弁22を閉弁する。
【0047】
図4の(a)は、弁口が閉鎖した状態を示す断面図である。図4の(a)に示すように、プランジャ225は、圧縮ばね224aで弁座部227bの側に向かって付勢され、弁頭部226を弁座部227bに着座させて弁口227aを閉鎖する。
そして、水素タンク21(図1参照)から送出され、配管21aを介して弁室220aに導入される水素ガスの流れを遮断する。
さらに、プランジャ225は、圧縮ばね224aの付勢力で、縮径部225aの端部が弁頭部226の底壁部226aに当接し、連通孔226dを閉鎖する。
すなわち、弁頭部226は、弁座部227bに着座して弁口227aを閉鎖し、プランジャ225の縮径部225aは、弁頭部226の底壁部226aに当接して連通孔226dを閉鎖する。
【0048】
図4の(b)は、弁口が開通した状態を示す断面図である。
本体部220の周囲に配設されるコイル223に、例えば制御装置3から電流が供給されると、弁室220aの内部に磁場が発生してプランジャ225が磁化し、圧縮ばね224aの付勢力に抗して、本体部220が、磁化したプランジャ225を軸方向に吸引する。そして、プランジャ225は弁座部227bから離反する方向に摺動する。
【0049】
また、プランジャ225に取り付けられる弁頭部226は、プランジャ225と一体に移動し、弁座部227bから離間して弁口227aを開通する。すなわち、電磁遮断弁22を開弁する。
そして、水素タンク21(図1参照)から送出される水素ガスは、配管21aから弁口227aを介して配管22aに流通する。
なお、前記のように動作するため、プランジャ225、及び本体部220は強磁性体で形成されることが好適である。この構成によって、本体部220は、磁化したプランジャ225を吸引する固定鉄心になる。
【0050】
また、電磁遮断弁22の上方が鉛直上方になるように燃料電池システム1(図1参照)に備わる場合、弁頭部226は、弁座部227bから離間すると自重によってプランジャ225に対して下方に移動し、縮径部225aの端部が底壁部226aから離反して連通孔226dが開通する。
【0051】
図5は電磁遮断弁が開弁し、水素ガスが流通するときの状態を示す断面図である。
図5に示すように、弁口227aは半径rの円形で、弁体224bは、ストロークLで動作する電磁遮断弁22とする。
また、コイル223への電流の供給によって発生する磁場で磁化されたプランジャ225が、本体部220に吸引力Nで吸引されて弁口227aが開通し、このとき圧縮ばね224aが荷重Kをプランジャ225に印加する構成とする。
なお、電磁遮断弁22の上方が鉛直上方になるように燃料電池システム1(図1参照)に備わる場合、荷重Kには、弁体224bの質量も含まれる。
【0052】
このような電磁遮断弁22において、水素ガスが、配管21aから配管22aに流通する場合、弁座部227bにおいて圧力損失ΔPが発生する。圧力損失ΔPは、導入口221側の水素圧力PINと排出口222側の水素圧力POUTの差であり、排出口222側の水素圧力POUTは、導入口221側の水素圧力PINより低くなる。このことによって、弁座部227bには、導入口221側の水素圧力PINに対する負圧が発生する。
【0053】
プランジャ225は、弁座部227bに発生する負圧による閉弁方向の力(以下、負圧力と称する)R及び圧縮ばね224aが印加する荷重Kによって、下方に引き寄せられる。
しかしながら、吸引力Nが、負圧力Rと荷重Kの和(R+K)より大きい場合、プランジャ225は吸引力Nによって上方に吸引されて弁口227aが開通し、電磁遮断弁22の開弁を維持できる。
【0054】
負圧力Rは、圧力損失ΔPと、弁口227aの開口面積Sの積(ΔP×S)で算出される力であり、圧力損失ΔPは、弁口227aにおける水素ガスの通過流量Qの二乗と定数Aの積(Q×A)で表すことができる。
また、弁口227aにおける開口面積Sは、2πr×Lで表すことができる。
したがって、電磁遮断弁22の開弁を維持する条件は、下式(3)が成り立つことである。
N > (Q×A)×(2πr×L)+K ・・・・・(3)
【0055】
換言すると、式(3)の右辺に示される、負圧力Rと荷重Kの和((Q×A)×(2πr×L)+K)が吸引力Nより大きくなると、電磁遮断弁22の弁頭部226は、弁口227aの側に引き寄せられて、弁頭部226が弁口227aを閉鎖する。
【0056】
図1に示すように、減圧弁25と燃料電池スタック10の間には、安全弁27が配設される。そして、例えば減圧弁25の不具合等で、中圧配管25aの水素圧力が上昇してシステム許容値を超えると、安全弁27が開弁して水素ガスを大気中に放出することから、中圧配管25aの水素流量が増大し、中圧配管25aと減圧弁25を介して接続される配管22aの水素流量も増大する。
【0057】
配管22aにおける水素流量が増大すると、図5に示す電磁遮断弁22の弁口227aにおける水素ガスの通過流量Qが増大し、負圧力Rが増大する。
【0058】
そこで、本実施形態に係る電磁遮断弁22は、弁口227aにおける水素ガスの通過流量が、標準時の通過流量の最大値QSMAXより大きな通過流量Q´になったときの負圧力Rでプランジャ225が弁口227aの側に引き寄せられ、弁頭部226が弁口227aを閉鎖するように弁口227aの開口面積Sを設定する。
【0059】
すなわち、弁口227aにおける水素ガスの通過流量がQ´のときの負圧力Rと荷重Kの和((Q´×A)×(2πr×L)+K)が吸引力Nより大きくなるように、電磁遮断弁22の弁口227aの開口面積Sを設定する。
この場合、弁口227aにおける水素ガスの通過流量がQ´の時の、導入口221側の水素圧力PINと排出口222側の水素圧力POUTの差である圧力損失ΔP(Q´×A)で発生する負圧が、請求項に記載の所定圧力値になる。
【0060】
なお、標準時の通過流量の最大値QSMAXは、減圧弁25(図1参照)が正常に動作し、安全弁27(図1参照)が開弁しないときの弁口227aにおける、水素ガスの通過流量の最大値とする。
そして、通過流量の最大値QSMAXは、配管21a、22a(図1参照)の管径や配管長さ、水素タンク21(図1参照)に充填される水素圧力などによって決定される値であり、燃料電池システム1(図1参照)に要求される仕様に基づいて決定される値である。
【0061】
弁頭部226が弁口227aを閉鎖する負圧力Rを得るための通過流量Q´は、例えば、最大値QSMAXに所定の安全率(例えば、1より大きな値)を積算した値とすることが好適である。
このように通過流量Q´を設定することで、減圧弁25(図1参照)に異常が発生していない場合に、電磁遮断弁22の弁口227aにおける水素ガスの通過流量Qが、許容範囲内の変動等によって最大値QSMAXを超えたときに、弁頭部226が弁口227aを閉鎖する誤動作を防止できる。
【0062】
定数Aは、水素ガスと流路(配管21a、配管22a、弁室220aなど)との摩擦係数など、電磁遮断弁22や水素ガスに固有の値であり、あらかじめ決定される値である。
吸引力Nは、プランジャ225や本体部220の素材、コイル223の巻き数、コイル223に供給する電流値などを適宜選択して組み合わせ、任意の値を設定できる。したがって、圧縮ばね224aの付勢力に抗してプランジャ225を好適に吸引できる吸引力Nとすればよい。
また、荷重Kは、圧縮ばね224aのばね定数及びストロークLに基づいて決定される値であり、圧縮ばね224aのばね定数を適宜選択することにより、ストロークLに基づいた荷重Kを設定できる。圧縮ばね224aは、例えば、弁口227aを流通する水素ガスを完全に遮断するように、弁頭部226を弁座部227bに圧接する付勢力を発生するばね定数を有することが好適である。
【0063】
このようにして、通過流量Q´、定数A、吸引力N、及び荷重Kを設定したとき、負圧力Rと荷重Kの和((Q´×A)×(2πr×L)+K)が吸引力Nより大きくなるように、弁口227aの開口面積Sを設定すればよい。
開口面積S(2πr×L)は、弁口227aの半径rと弁体224bのストロークLに基づいて決定される値であり、例えば弁口227aの半径rを設定すると、それに伴って必要なストロークLが決定される。
【0064】
以上のように、弁口227aの開口面積S、荷重K、吸引力Nを適宜設定して電磁遮断弁22を構成し、弁口227aにおける水素ガスの通過流量がQ´のときに、弁頭部226が弁口227aを閉鎖する電磁遮断弁22を構成する。
【0065】
図6は、弁頭部が弁座部に着座した状態を示す断面図である。
例えば、減圧弁25(図1参照)に不具合が発生し、中圧配管25aの水素圧力が上昇してシステム許容値を超え、安全弁27(図1参照)が開弁すると、配管22a、中圧配管25a(図1参照)の水素流量が増大し、弁口227aにおける水素ガスの通過流量がQ´を超える場合がある。
このとき、図6に示すように、負圧力Rで弁頭部226が下方に引き寄せられて弁座部227bに着座し、弁口227aは弁頭部226で閉鎖される。
【0066】
一方、中圧配管25aの水素圧力が上昇してシステム許容値を超えると、制御装置3はコイル223への電流の供給を停止する。しかしながら、制御装置3が中圧配管25aの水素圧力の上昇を検出してから、圧縮ばね224aの付勢力で弁体224bが弁座部227bに着座するまでには遅れがあり、プランジャ225が吸引力Nで本体部220に吸引された状態がしばらく維持される。したがって、ピン228が弁頭部226の長孔226cの上端に当接する位置で釣り合って停止して、プランジャ225の縮径部225aの端部は、弁頭部226の底壁部226aから離反し、連通孔226dが開通する。
【0067】
そして、水素ガスは、導入口221から連通孔226dを経由して、排出口222に向かって流通する。
ここで、連通孔226dの開口面積を、弁口227aの開口面積に比べて充分に小さく形成すると、連通孔226dを流通する水素流量は、弁口227aを流通する水素流量より少なくなる。このことによって、配管22aの水素流量を低減でき、配管22aと減圧弁25(図1参照)を介して接続される中圧配管25a(図1参照)の水素流量を低減できる。
【0068】
このように、本実施形態に係る電磁遮断弁22(図1参照)は、安全弁27(図1参照)が開弁したときに、中圧配管25a(図1参照)の水素流量を低減できることから、安全弁27への水素ガスの供給量を低減できる。したがって、安全弁27に設けられる図示しないリリーフ開口部の開口面積を大きくすることなく、中圧配管25aの水素圧力の上昇を好適に抑制できる。このことによって、システム許容値を超えた圧力の水素ガスが、燃料電池スタック10(図1参照)に供給されることを確実に防止できるという優れた効果を奏する。
【0069】
図7は、減圧弁に不具合が発生したときの状態遷移を示す図である。
以下、主に図7を参照し、(a)に示す中圧配管25a(図1参照)の水素圧力の遷移、(b)に示す制御装置3の発する指令の遷移、(c)に示す電磁遮断弁22(図1参照)の状態遷移、(d)に示す安全弁27(図1参照)の状態遷移、及び(e)に示す安全弁27の水素放出量の遷移について、時間経過に沿って説明する(適宜図1〜図6参照)。
【0070】
図7に示すように、時刻tで減圧弁25に不具合が発生すると、(a)に示すように、中圧配管25aの水素圧力が標準の水素圧力Pから上昇する。
なお、標準の水素圧力Pは、減圧弁25が正常に動作し、安全弁27が開弁していないときの中圧配管25aの水素圧力とする。
【0071】
そして、時刻tで中圧配管25aの水素圧力がPに達すると、制御装置3は異常を検出し、(b)に示すように、時刻tにおいて、電磁遮断弁22を閉弁する指令を発する。具体的に制御装置3は、電磁遮断弁22のコイル223への電流の供給を停止する。
したがって、時刻tにおける圧力Pが、請求項に記載のシステム許容値になる。
【0072】
しかしながら、コイル223への電流の供給が停止されてからプランジャ225が完全に消磁するまでの時間などによる遅れが生じ、従来、(c)に破線で示すように、時刻tになって電磁遮断弁22は閉弁する。
【0073】
したがって、時刻tまでは電磁遮断弁22が閉弁しない状態が継続し、(a)に示すように中圧配管25aの水素圧力は上昇する。そして、時刻tで中圧配管25aの水素圧力がPになったとき、(d)に示すように、安全弁27が開弁する。
なお、安全弁27が開弁する圧力Pは、制御装置3が異常を検出する圧力P(システム許容値)より大きい値としたが、これは限定されるものではなく、圧力Pで制御装置3が異常を検出するのと同時に安全弁27が開弁する構成であってもよい。
【0074】
安全弁27が開弁すると、中圧配管25aの水素ガスは、安全弁27のリリーフ開口部から大気中に放出され、中圧配管25aにおける水素圧力の上昇が抑制される。
これは、(e)に示すように、中圧配管25aの水素ガスが、安全弁27のリリーフ開口部から所定の水素放出量で大気中に放出されることによる。
【0075】
しかしながら、水素タンク21から電磁遮断弁22を介して、安全弁27に供給される水素ガスの供給量が、(e)に示される、安全弁27の水素放出量の上限QMAXを上回ると、(a)に示すように、中圧配管25aの水素圧力はさらに上昇する。
【0076】
したがって、従来、(a)に破線で示すように、中圧配管25aの水素圧力は、時刻tに電磁遮断弁22が閉弁するまで上昇し、時刻tに中圧配管25aの水素圧力はPに達する。
仮に、中圧配管25a、及び燃料電池スタック10の許容圧力が水素圧力P以下のPである場合、時刻tのときの中圧配管25aの水素圧力を、P以下にする必要がある。
【0077】
そして、時刻tのときの中圧配管25aの水素圧力をP以下にする方法として、例えば、安全弁27の水素放出量の上限QMAXを増大する方法が考えられる。
すなわち、(e)に一点鎖線で示すように、安全弁27の水素放出量の上限をQMAX´に増大すると、(a)に一点鎖線で示すように、中圧配管25aの水素圧力の上昇を緩やかにすることができ、時刻tのときの中圧配管25aの水素圧力をP以下にできる。
【0078】
安全弁27の水素放出量の上限QMAXは、安全弁27のリリーフ開口部の開口面積などによって決定され、安全弁27のリリーフ開口部の開口面積を広げることで、水素放出量の上限QMAXを例えばQMAX´に増大できる。
【0079】
しかしながら、安全弁27のリリーフ開口部を広げると、安全弁27のサイズが大きくなり、安全弁27の質量が増えるとともに製造コストが高くなるという問題がある。
また、燃料電池システム1の規模が大きくなることから、燃料電池システム1が図示しない燃料電池車両に備わる場合、燃料電池車両が大型化するという問題がある。
【0080】
そこで、本実施形態においては、安全弁27が開弁して中圧配管25aの水素流量が増大したとき、電磁遮断弁22の弁頭部226が弁口227aを閉鎖し、電磁遮断弁22を閉弁する構成とした。
さらに、弁口227aより開口面積の小さい連通孔226dを開通し、連通孔226dを介して中圧配管25aに水素ガスを流通し、安全弁27に水素ガスを供給する構成とした。
すなわち、安全弁27の水素放出量が上限QMAXのときの弁口227aにおける水素ガスの通過流量Q´で、弁頭部226が弁口227aを閉鎖するとともに、連通孔226dを開通する電磁遮断弁22とした。
【0081】
したがって、(e)に示すように、安全弁27の水素放出量が上限QMAXに達すると、(c)に実線で示すように、時刻tで電磁遮断弁22が閉弁する。
さらに、図6に示すように、連通孔226dが開通する。そして、水素タンク21の水素ガスは連通孔226dを流通し、配管22aを介して中圧配管25a流通し、安全弁27に供給される。
【0082】
しかしながら、連通孔226dは弁口227aより開口面積が小さく、連通孔226dを流通する水素流量は、弁口227aを流通する水素流量より少ないことから、安全弁27への水素ガスの供給量が減少する。
したがって、中圧配管25aの水素ガスを安全弁27から大気中に放出することで、中圧配管25aの水素圧力を、(a)に実線で示すように低下することができる。このことによって、中圧配管25aの水素圧力をPより低いP以下に抑えることができる。
【0083】
そして、時刻tになると、プランジャ225の縮径部225aの端部が圧縮ばね224aの付勢力によって弁頭部226の底壁部226aに圧接され、連通孔226dが閉鎖される。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る電磁遮断弁22(図1参照)を備える燃料電池システム1(図1参照)は、システム許容値を超える高圧の水素ガスが燃料電池スタック10(図1参照)に供給されることを防止でき、燃料電池システム1(図1参照)の破損を防止できるという優れた効果を奏する。
【0085】
そして、図2の(b)に示すように、弁頭部226は、弁体の一部としてプランジャ225に連結できることから、本体部220のサイズを大きくすることなく、弁頭部226をプランジャ225に連結できる。
したがって、電磁遮断弁22のサイズを大きくする必要がなく、電磁遮断弁22が備わる燃料電池システム1(図1参照)の規模を大きくする必要がない。
【0086】
なお、中圧配管25a(図1参照)における水素圧力が上昇してシステム許容値を超えた場合に限らず、例えば、燃料電池システム1(図1参照)が異常であると制御装置3(図1参照)が検出する程度に急激な圧力降下が中圧配管25aに発生し、弁座部227b(図2の(b)参照)における導入口221(図2の(b)参照)側の水素圧力に対する負圧が所定圧力値を超えて大きくなった場合であっても、本実施形態に係る電磁遮断弁22(図1参照)は、制御装置3からの指令で閉弁するより先に、弁頭部226(図2の(b)参照)で弁口227a(図2の(b)参照)を閉鎖し、弁口227aにおける水素ガスの通過流量を抑制できる。
【0087】
中圧配管25a(図1参照)に急激な圧力降下が発生する理由としては、例えば中圧配管25aに亀裂が生じて水素ガスが漏出する場合が考えられる。
このような場合であっても、本実施形態に係る電磁遮断弁22(図1参照)は、制御装置3(図1参照)からの指令で閉弁するより先に、弁頭部226(図2の(b)参照)で弁口227a(図2の(b)参照)を閉鎖して弁口227aにおける水素ガスの通過流量を抑制することで、亀裂から漏出する水素ガスを好適に抑制できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本実施形態に係る電磁遮断弁が備わる燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】アノード系に備わる電磁遮断弁を示す図であって、(a)は外観図、(b)は、図2の(a)のX1−X1断面図である。
【図3】弁体の構成を示す図である。
【図4】(a)は、弁口が閉鎖した状態を示す断面図、(b)は、弁口が開通した状態を示す断面図である。
【図5】電磁遮断弁が開弁し、水素ガスが流通するときの状態を示す断面図である。
【図6】弁頭部が弁座部に着座した状態を示す断面図である。
【図7】減圧弁に不具合が発生したときの状態遷移を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 燃料電池システム
3 制御装置
10 燃料電池スタック(燃料電池)
21 水素タンク
22a 配管(供給路)
22 電磁遮断弁
25a 中圧配管(供給路)
27 安全弁
220 本体部(固定鉄心)
220a 弁室
221 導入口
222 排出口
223 コイル
224a 圧縮ばね(付勢手段)
224b 弁体
225 プランジャ
226 弁頭部
226c 長孔(連結部)
226d 連通孔
227b 弁座部
228 ピン(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの導入口及び排出口が形成される弁室と、
前記導入口と前記排出口を連通する弁口の周囲に形成される弁座部と、
前記弁座部に対して着座・離間自在に、前記弁室に収納される弁体と、
前記弁体を付勢して、前記弁座部に着座させる付勢手段と、
供給される電流で前記弁室に磁場を発生するコイルと、
前記弁体に備わり、前記弁室に発生する磁場で磁化するプランジャと、
磁化した前記プランジャを吸引して、前記弁体を前記弁座部から離間させる固定鉄心と、を備え、
前記コイルに電流が供給されたときは、前記固定鉄心が磁化した前記プランジャを吸引し、前記弁体が前記弁座部から離間して前記弁口を開通し、
前記コイルへの電流の供給が停止したときは、前記付勢手段の付勢力で、前記弁体が前記弁座部に着座して前記弁口を閉鎖する電磁遮断弁であって、
前記弁体が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する、前記導入口における前記ガスの圧力に対する負圧が、所定圧力値を超えて大きくなったとき、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とする電磁遮断弁。
【請求項2】
前記弁体が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する前記負圧が、前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、
前記プランジャが前記固定鉄心に吸引されている状態であっても、前記弁体は、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とする請求項1に記載の電磁遮断弁。
【請求項3】
前記弁体は、前記弁座部に着座する弁頭部が、遊びを有する連結部を介して、前記プランジャと当接・離反可能に連結されてなり、
前記弁頭部には、前記弁座部に着座したときに前記導入口と前記排出口を連通するための連通孔が形成され、
前記連通孔は、前記弁頭部と前記プランジャが当接したときに閉鎖するとともに、前記弁頭部と前記プランジャが離反したときに開通し、
前記弁頭部が前記弁座部から離間しているときに前記弁座部に発生する前記負圧が、前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、前記弁頭部と前記プランジャが離反した状態で前記弁頭部が前記弁座部に着座し、
前記導入口と前記排出口は、前記連通孔を介して連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁遮断弁。
【請求項4】
前記コイルへの電流の供給が停止したとき、前記付勢手段は、前記弁頭部と前記プランジャを当接させて前記連通孔を閉鎖するとともに、前記弁頭部を前記弁座部に着座させることを特徴とする請求項3に記載の電磁遮断弁。
【請求項5】
水素タンクから燃料電池に水素ガスを供給する供給路と、
前記水素タンクと前記燃料電池の間で前記供給路に備わって、前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力がシステム許容値を超えたときに開弁して前記水素ガスを大気中に放出する安全弁と、を有する燃料電池システムに、前記水素タンクと前記安全弁の間で前記供給路に備わって、前記導入口から前記排出口に向かって前記水素ガスを流通させるとともに、
前記安全弁が開弁して前記排出口における前記水素ガスの圧力が低下し、前記負圧が前記所定圧力値を超えて大きくなったときには、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電磁遮断弁。
【請求項6】
前記燃料電池システムには、
前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値以下のときには前記コイルに電流を供給し、且つ前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値を超えたときには前記コイルへの電流の供給を停止する制御装置が備わり、
前記弁体が前記弁座部から離間している場合に、
前記供給路を流通する前記水素ガスの圧力が前記システム許容値を超えて、前記制御装置が前記コイルへの電流の供給を停止するとともに前記安全弁が開弁したとき、
前記プランジャが前記固定鉄心に吸引されている状態であっても、前記弁体が、前記負圧で前記弁座部の側に吸引されて前記弁座部に着座することを特徴とする請求項5に記載の電磁遮断弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−1916(P2010−1916A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159334(P2008−159334)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】