説明

電磁駆動装置および光量調節装置

【課題】コイルへの通電を遮断すると、磁気的偏りによる付勢力で遮光部材を全閉位置に保持する電磁駆動装置を用いた光量調節装置において、ステータヨークの回転方向に対する適正位置の設定調整が面倒であった。
【解決手段】磁性体からなるステータヨーク10の内周上に突条10a,10bを設けてロータマグネット8に対して磁気的な偏りを生じさせるステータヨーク10を、凹部を設けたコイルボビン,地板5または板金4に嵌合させて固定することにより、コイルへの通電遮断後に遮光部材2,3が全閉位置に保持され、回転方向に対するステータヨーク10の適正位置を安定して供給でき、接着剤などによるステータヨーク10の固定を不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁駆動装置およびこの電磁駆動装置を備えた光量調節装置に係り、特にビデオカメラやデジタルカメラ等において受光量に応じてレンズの絞り口径を制御するために使用される絞り駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルカメラ等において受光量に応じてレンズの絞り口径を制御するために使用される光量調節装置の遮光部材としての絞り羽根は、対を成して互いに相対的に移動して光量を調節する構成が一般的に採用されている。
【0003】
絞り羽根を駆動する電磁駆動装置としては、例えば図8に示されるものがある。この装置においては、コイル(不図示)を巻回するためのコイルボビン(上ボビン101aと下ボビン101bとにより上下2分割に構成されている)101と、このボビン101に巻回されたコイルと、絞り羽根(不図示)を駆動させる作動レバー102と、この作動レバー102に固定され、作動レバー102を旋回させるロータマグネット103と、コイル通電により発生した磁束が通る経路(磁路)を形成するための筒状のヨーク104から構成される。そして、作動レバー102に固定されたロータマグネット103とコイルが巻回されたボビン101はヨーク104内に収容されている(特許文献1)。
【0004】
この電磁駆動装置において、コイル通電によって生じたロータマグネット103の回転力は、作動レバー102を介して不図示の一対の絞り羽根に駆動力として伝達される。一対の絞り羽根は、光通過口が形成された不図示の地板にスライド自在に支持され、各絞り羽根に形成した貫通穴に作動レバー102の両端部に形成した係合ピン102aが係合し、作動レバー102の旋回運動により一対の絞り羽根を互いに相反する方向に平行駆動して光通過口の開口面積を変化させる。
【0005】
このような電磁駆動装置を利用した光量調整装置は、ヨーク104の磁気的な偏りにより電源を遮断した後、遮光部材である一対の絞り羽根が全閉位置に固定されるようにしている。この磁気的な偏りは、図8に示すように、ヨーク104にスリット105を形成して磁束の磁気的な偏りを得るようにしている。
【0006】
図7は、この絞り駆動装置のロータマグネット103がステータヨーク104に設けられたスリット105を形成する端面による磁束の磁気的偏りによって、回転方向一方に付勢される様子を表わしている。
【0007】
磁束はヨーク104内を通り易いので、図7中矢印で示すような磁路が形成される。ヨーク104内において、磁気的に最も安定する状態は、ヨーク104の中心とスリット105の中央とを結ぶ図7中のP−P’線と、ロータマグネット103の極の境界とが一致する状態であり、この状態に一番近い位置を図7(a)に示す全閉位置としている。全閉位置では、遮光部材を全閉で保持させるため、円弧状の矢印方向である反時計回り方向(閉じ方向)に磁気的偏りによる力が働くようになっている。
【0008】
そして、コイルへの通電を行うと、N極からスリット105の一方の端面を経て磁気的回路が形成され(図7(b)に示す中間位置)、ロータマグネット103が通電電流に応じて前記磁気的偏り力に抗して時計方向に回転する。そしてさらに通電電流が強くなると図7(c)に示す全開位置まで回転する。
【0009】
また特許文献2では、コイルへの通電をOFFしたとき、磁気的偏り力を利用して一方向にロータマグネットを回転させて所定位置に保持する構成の電磁駆動装置として、ヨークとは別に独立した磁性体(ピン)を、ボビンの外周上またはヨークの内周上に付随させ、上記した特許文献1と同様の磁気的偏りを持たせて同様の効果を得ている。
【特許文献1】特開平08−019239号公報
【特許文献2】実開平07−019740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述した特許文献1に開示されているスリット形状を持つステータヨーク(以下スリットヨークと称す)を用いた電磁駆動装置では、ステータヨークの圧環強度が弱く、外力を加えられた時、ヨークに変形が起こり易い。製造したスリット形状を持つヨークを一箇所に多数個まとめて保管する際、スリットヨークの端が隣り合うヨークのスリット部に入り込んで、互いに引っ掛かってしまい、それを外す際にヨークが変形することがある。更に、スリットである隙間が設けられている分、スリットがないものと比較すると磁気的な飽和がはやまる傾向にある。
【0011】
また、電磁駆動装置の組み立て時においてヨークに変形や損傷が起こり易く、ステータヨークおよびマグネットで構成される磁気回路の磁気特性を劣化させて駆動トルクの低下を招くことが考えられる。この場合には遮光部材が閉じきらず、完全に光を遮断できなくなるおそれがある。
【0012】
また、このようなスリットヨークを用いた電磁駆動装置では、ヨークをボビンに嵌め込んだ後、作動レバーが全閉状態になるよう適正な位置にスリット位置を微調整し、接着剤などを用いてヨークをボビンに接合させなければならない。
【0013】
さらに、特許文献2に開示のように、ヨークの内周上またはボビンの外周上に、ヨークとは独立した磁性体を付随する場合は、作動レバーが全閉状態になるよう適正な位置に、磁性体をヨークまたはボビンに接合する必要があり、部品点数、作業工数の費用が余分に掛かる。
【0014】
また、ヨークは円筒形であっても微妙な不規則な磁気的偏りがあり、磁生体を適正な位置に接合しても、その後ヨークが回転すると、やはり前述のような特性的な不具合が発生する。これを防ぐためには、ヨークも磁性体に対して相対的な位置が変化しないように、接着剤などで固定する必要があり、さらに手間が余分にかかる可能性がある。
【0015】
本発明の目的は、スリットのない円筒形状のステータヨークを使用することができるようにする。またロータマグネットの回転範囲を適正な位置に位置決めする最終位置決め調整を組み立て時に不要にする。さらにコイルへ非通電の場合にロータマグネットをステータヨークに対して所定の位置に磁気的偏り力で保持することができる電磁駆動装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
本発明の他の目的は、電磁駆動装置を構成するステータヨークをボビンまたは駆動部の保持部材などに単純に組付けるだけで、遮光部材を適正に制御できる光量調節装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的を実現する電磁駆動装置の構成は、回動可能と成す永久磁石からなるロータマグネットと、前記ロータマグネットの回転範囲を規制する回転規制部をもつ回転規制部材と、前記ロータマグネットの回転軸周りに配置され、該ロータマグネットに向けて突出し、該ロータマグネットとの間で生じる磁気的偏りに基づく付勢力を発生するための少なくとも一つの突出部を有すると共に、前記回転規制部材に対する位置決め部を有する略円筒形のステータヨークと、前記ステータヨークの内側に配置され、前記ロータマグネットと対向しこれを駆動するための磁気を発生するコイルと、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の目的を実現する他の電磁駆動装置は、前記ステータヨークの突出部は、他の略円筒部より断面が厚くなるように一体に設けられ、前記ステータヨークは前記突出部と位置決め部を含んで粉末冶金成形法によって圧縮成形されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の目的を実現する光量調節装置の構成は、絞り開口を有する地板に対して遮光部材を移動させることにより光量を制御する光量調節装置において、上記した電磁駆動装置を駆動源とし、前記電磁駆動装置のロータマグネットと一体に回動する動力伝達部材を介して前記遮光部材を駆動することを特徴とする。
【0020】
本発明の目的を実現する他の光量調節装置は、前記コイルへの通電を遮断した状態において、前記遮光部材は、該遮光部材が前記絞り開口を全閉する全閉位置に、前記磁気的偏りに基づく付勢力により保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による電磁駆動装置によれば、ステータヨークの形状を円筒形状に保つことによって、スリットヨークに比べ飽和しづらく、圧環強度が強く変形を起こし難くなっている。
【0022】
また、内周上に突出部を設けたステータヨークを、回転規制部材としてのボビンまたは地板または駆動部などの取り付け部材に対して位置決めすることによって、ロータマグネットの回転範囲を適正に規制することができる。これによりステータヨークの磁気的偏りに基づく付勢力とロータマグネットの回転範囲の関係を、容易に、かつ安定して得ることができる。またさらに回転方向位置に対するステータヨークの微調整と、接着剤などによる回転方向に対する位置固定の作業工程を省略でき、安価な電磁駆動装置を提供できる。
【0023】
また、この電磁駆動装置を、光量調節装置に適用することにより、ステータヨークをボビンまたは駆動部の保持部材などに単純に組付けるだけで、遮光部材を適正に制御できる光量調節装置を提供できる。
【0024】
さらに、ロータマグネットに対向し、磁束が集中するステータヨークの突出部の厚みが他の円筒部分の厚みより厚いため、磁気的なロスを減らすことができ、効率の良い電磁駆動装置および光量調節装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜図5は本発明の実施形態を示す。
【0026】
図1は電磁駆動装置と、この電磁駆動装置を動力源として用いたビデオカメラ用光量調
節装置の分解斜視図を示している。
【0027】
図1および図2において、電磁駆動装置を構成する駆動コイルは省略されているが、2分割構成の第1コイルボビン部6と第2コイルボビン部9を合わせて形成されるコイルボビンの周りを回転軸と平行な向きにコイルが巻き回されている。前記コイルボビンは、第1コイルボビン部6に形成された突起部6cにより、メーター地板5に位置決め固定されて電磁駆動装置を構成する。メーター地板5は開口部1aが形成された地板1にさらに位置決め固定されて光量調節装置を構成する。
【0028】
8はステータヨーク10と同軸の中心を持つ回転自在なロータマグネット(永久磁石)であり、周方向に2極着磁されている。7は動力伝達部であるところの駆動伝達レバーであり、両端部に係合ピン7aが形成されたレバー本体7bを有している。レバー7bの長手方向中心部に形成された回転軸部7cが圧入などによってロータマグネット8に貫通固定され、貫通端部が第2コイルボビン部9に軸支されている。この動力伝達部はロータマグネットと一体で成形されていても良い。
【0029】
ロータマグネット8のS極とN極は、駆動伝達レバー7が延びる回転中心軸線に直交する直径方向の軸線位置を境界として線対称に形成されている。図4のように紙面を表裏方向に貫通する軸線を駆動伝達レバー7の回転中心軸線とする場合には、S極とN極は上下方向に分かれて形成されている。なお、図1のような光量調節装置を構成する場合、各係合ピン7aは、地板1と絞りケース4の間で動く遮光部材2,3の各係合孔2a,3aに夫々係合して、地板1の開口部1aを開閉する。
【0030】
また、駆動伝達レバー7は、第1コイルボビン部6が位置決め固定された回転規制部材であるメーター地板5に設けられた回転規制部5aにレバー本体7bが当接することで回転範囲を規制されており、ロータマグネット8の回転角度もこれにより規制されている。本実施形態において回転規制部5aは、駆動伝達レバー7の係合ピン7aがメーター地板5を貫通する穴部5bの端部に形成されている。しかし、回転規制部5aはメーター地板5の他の部分に形成されても同様の効果を有する。
【0031】
10は強磁性体からなるステータヨークであり、コイル通電により発生した磁束が通る経路(磁路)を形成する。
【0032】
本実施形態において、ステータヨーク10は、全周にわたって切れ目のない円筒形状に形成されている。図3(b)に示すように、このステータヨーク10の内周上に、中心軸線Oを通過する直径軸線上に、該中心軸線Oに向かって突出し、ロータマグネット8の軸方向に沿って延びる突出部である横断面凸形状の突条10a、10bを軸方向に沿って対向して形成している。
【0033】
また、メーター地板5に固定される第2コイルボビン部9はステータヨーク10内に装入されるが、図3(a)に示すように、第2コイルボビン部9の外周部の対向位置に、一方の突条10aの一部に係合する凹部9aが形成されると共に、他方の突条10bに係合する凹部9bが軸方向に沿って形成されている。さらに、本実施形態では、第1コイルボビン部6に一方の突条10aの他部に係合する凹部6aが形成されている。図3(c)に示すように、第1コイルボビン部6の凹部6aは一方の突条10aに対して反時計周り方向への回転が規制され、第2コイルボビン部9の凹部9aは一方の突条10aに対して時計回り方向の回転が規制されている。したがって、コイルボビンはステータヨーク10に対し、ロータマグネット8の回転方向について移動不能に固定されている。
【0034】
前述のように、第1コイルボビン部6と第2コイルボビン部9は、メーター地板5に位置決め固定されている。このため、ステータヨーク10の一対の突条10a,10bは第1コイルボビン部6の凹部6a及び第2コイルボビン部9の凹部9a,9bによりメーター地板5に設けられた回転規制部に対して位置決めされる。なお、本実施形態においてはメーター地板5に回転規制部を設け、このメーター地板5に固定される第1コイルボビン部6及び第2コイルボビン部9によりステータヨーク10を位置決めすることで、ロータマグネット8とステータヨーク10との位置決めを行っているが、図1に於けるメーター地板5の如きサブ地板に第1、第2ボビン部6,9に設けた凹部6a,9a,9bと同様の位置決め部を設けてステータヨーク10を位置決めしても良い。
【0035】
また、光量調節装置として構成する場合は、地板に直接位置決め部を設けるような構成にしても勿論かまわない。
【0036】
さらに、本実施形態においては、ロータマグネット8の回転量(範囲)を制限する回転規制部を、メーター地板5の駆動伝達レバー7のレバー本体7bが当接する部分に設けたが、開口部1aを有する地板1あるいは第2ボビン部6に設けることもできる。
【0037】
本実施形態において、ステータヨーク10は、対向する一対の突条10a,10bを内周面に一体として成形した円筒状としている。このステータヨーク10は、磁性粉末と樹脂を使用した焼成法や、焼結成形法、射出成形粉末冶金法(MIM成形)、冷間鍛造法など粉末冶金成形法によって形成された圧縮成形品である。いずれの方法においても突条10a,10bは円筒形状をなすステータロータ10の本体部の内側、つまり内装されるロータマグネット8に向けて本体部の肉厚より厚くなるように成形されている。
【0038】
次に、この駆動装置の作動を説明する。
【0039】
本実施形態の電磁駆動装置を構成するステータヨーク10は、本体部の内周上に直径線上で対向して一対の突条10a,10bを形成し、この一対の突条10a,10bは内装しているロータマグネット8との距離が短く、磁束が通り易い。このため、図5に示すように、ロータマグネット8の回転位置にかかわらず、一対の突条10a,10bの部分での磁束量が多くなる。特に最大の磁束発生位置であるロータマグネット8の極の頂点が磁性体に強く引かれ、ロータマグネット8の極の頂点はステータヨーク10の一対の突条10a,10bと対向しようとする方向に付勢される。
【0040】
即ち、図4において、ロータマグネット8のN極の頂点は一方の突条10aの右側に位置し、S極の頂点は他方の突条10bの左側に位置しているので、ロータマグネット8は反時計方向に回動しようとする。
【0041】
このように、ステータヨーク10の一対の突条10a,10bにはステータヨーク10の本体部における他の部分より多く磁束が集中するが、一対の突条10a,10bは前記他の部分より断面が厚くなるように成形されているため、磁気的に飽和することが無く、磁気的なロスを無くすことができる。
【0042】
このような状態で、不図示のコイルへ通電して、ロータマグネットを反時計方向である磁気的偏りによる力と反対方向、つまり時計方向に回転させると、更に磁気的に不安定な状態となり、全閉状態に戻ろうとする力が大きくなる。コイル通電によって生じたロータマグネットの回転力は、例えば図1に示すように、駆動伝達レバー7を介して遮光部材2,3に駆動力として伝達される。
【0043】
遮光部材2,3は、各遮光部材2,3の両側辺に形成したガイド溝2b,3bと、地板1のガイドピン1bとの係合作用によって平行移動し、光通過口1aの開口面積を変化させることによって、光量調節を行う。通常はコイル通電しない状態を全閉状態とし、最大にコイル通電した状態を全開状態とする。本実施形態においては、二枚の遮光羽根がそれぞれ別の係合ピンと係合して平行移動するが、公知のような他の光量調節装置、すなわち一枚あるいは二枚以上の羽根を駆動するものでも同様である。もちろん、遮光羽根は平行移動するものだけではなく、旋回移動するものであっても良い。
【0044】
遮光部材2,3が開く方向に動くに従い、磁気的偏りがさらに偏る方向に変化し、ロータマグネット8を全閉状態に戻そうとする力が大きくなる。さらにその力に打ち勝つようにコイルに供給する電力を大きくすることで、遮光部材2,3が全開となるまで作動する。
【0045】
また、供給電力を調整することにより、任意の位置に遮光部材2,3を移動させ、保持することができる。駆動伝達レバー7は、遮光部材2,3が全開位置に位置する時の回転角度と全閉位置に位置する時の回転角度が、それぞれ違う回転方向で同じ大きさとなる位置を中心にとり、遮光部材2,3が全開位置または全閉位置に配置される時の回転角度を最大値として、それ以上の角度には回転しないよう、メーター地板5に設けられた回転規制部5aによって、回転角度を制限されており、遮光部材2,3が全開位置または全閉位置で保持される時は、駆動伝達レバー7がその回転規制部にコイル通電による電磁力で付勢されている。
【0046】
本実施形態においては、図4のように、ステータヨーク10内において磁気的に最も安定する状態は、ステータヨーク10の中心とステータヨーク10内周に設けた一対の突条10a,10bの中央とを結ぶS−S’線と、ロータマグネット8の極の境界(Q−Q’線)とが直角な状態、即ちQ−Q’がP−P’の位置になったときである。
【0047】
また、最も不安定になるのはQ−Q’線がS−S’線の位置になったときであり、本実施形態において通常の使用では、Q−Q’線の作動範囲はP−P’線とS−S’線の範囲より狭い、例えばR−R’線とT−T’線の間に設定している。
【0048】
そして、コイルへの通電を遮断すると、Q−Q’線(駆動伝達レバー7のレバー本体7bの長手方向の中心軸線)はP−P’線の位置に向かうが、前記回転規制部によりR−R’線の位置で停止する。この停止状態において、ロータマグネット8には上述した磁気的偏りによる力に基づく付勢力が残っている。この停止位置を遮光部材の全閉位置とすることにより、遮光部材2,3は常に閉方向(反時計方向)に付勢されることとなり、安定した閉状態を維持できることになる。
【0049】
また、遮光部材2,3の全開位置をS−S’線の手前のT−T’線とすることにより、ロータマグネット8の作動範囲のどの位置においても、R−R’線に向かう反時計方向の安定した付勢力が働く。この為コイルへの通電電力を調整することにより、常に安定した動作が可能となる。
【0050】
図3は、メーター地板5に固定される第2コイルボビン部9の外周上に凹部9a,9b、第1コイルボビン部6の外周上に凹部6aを設け、ステータヨーク10の内周上に一体的に設けた対向する一対の突条10a、10bを嵌合させることによって、コイルボビンに対してステータヨーク10を位置決め固定する様子を表わしている。
【0051】
組み立て手順としては、コイルへの通電遮断後に、遮光部材2,3を回転規制部により全閉位置に保持させる位置にコイルボビンを配置する。コイルボビンの配置位置が決定すると、コイルボビンの外周部に形成された凹部9a,9b,6aの配置が自動的に決定される。ステータヨーク10の一対の突条10a,10bと、コイルボビンの凹部9a,9b,6aとの位置関係は予め設定されているので、ステータヨーク10の一対の突条10a、10bをコイルボビンの凹部9a,9b,6aに嵌合するだけで、ステータヨーク10の回転方向に対する適正位置を容易に安定して得られる。これにより回転方向位置に対するステータヨーク10の微調整と、接着剤などによる回転方向に対する位置固定の作業工程を省略できる。
【0052】
つまり、付勢力を発生させるステータヨーク10の内周に設けた一対の突部10a、10bをロータマグネット8の回動範囲を規制する回転規制部に対して位置決めするための位置決め部である凹部9a、9b、6aを、コイルボビンに一体で成形することにより、容易に安定した磁気特性を持つ電磁駆動装置あるいは光量調節装置を実現できる。
【0053】
上記した実施形態において、ステータヨーク10の内周面に突出部である突条を2つ形成しているが、突条を1つでも良くまた3つでもよい。また、突条をコイルボビンとの位置決めを行う手段としても兼用しているが、別に位置決め用の突条を設けるようにしても良い。
【0054】
さらに、ステータヨーク10の一対の突条10a、10bをコイルボビンの凹部9a、9b、6aに嵌合(係合)させて位置決めを行っているが、コイルボビン以外に、メーター地板5、または絞りケース(板金)4に嵌合させるようにして位置決めを行っても良い。
【0055】
図6は今まで説明してきた電磁駆動装置を他の光量調節装置に適用した実施形態を示す。
【0056】
電磁駆動装置201は、前述の実施形態において説明したものと同じ部品構成となっていて、開口部203が形成された地板202に直接位置決め固定されている。駆動伝達レバー201aは前述の実施形態と異なり係合ピン201bが1つであり、係合ピン201bは地板202の長孔202aを貫通して駆動リング204の長孔204aと係合する。駆動リング204は地板202の開口部203の周囲に回転可能に取り付けられる。駆動リング204は複数(本実施形態では6枚)の遮光部材205を旋回駆動して、地板202の開口部203の開口量を変える。
【0057】
尚、地板202に形成されている長孔202aは電磁駆動装置201のロータマグネットの回転範囲を規制する回転規制部を構成しており、長孔202aの内端に係合ピン201bが当接することでロータマグネットの回転範囲を規制する。
【0058】
206は絞りケースで、地板202に取り付けられ、駆動リング204及び遮光部材205が作動する空間を構成する。本実施形態においてはさらに、電磁駆動装置201とは異なる不図示の他の駆動装置により駆動され、開口部203を開閉するシャッター羽根207a,207bを有する。これら駆動リング204およびシャッター羽根207a,207bは、カバー板208により地板202に取り付けられる。
【0059】
このような構成において、電磁駆動装置201の駆動伝達レバー201aは、前述の実施形態と同様に形成されたステータヨーク201cと、地板202に形成された回転規制部(長孔202a)により回転範囲が規制される。これにより駆動リング204の回転量が決定されるので、遮光部材205が旋回したときの開き位置及び閉じ位置が正確に決定される。
【0060】
また、遮光部材205が開口部203の開口量を決定した後、シャッター羽根207a,207bが不図示の駆動部に駆動され開口を開閉させる。
【0061】
本実施形態においては、駆動伝達レバー201aと遮光部材205の間に駆動リング204を介するようにしたが、駆動伝達レバーの係合ピン201bが遮光部材205と直接係合して旋回させるように構成することもできる。また、遮光部材は複数の構成となっているが、一枚で構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態である光量調節装置の分解斜視図。
【図2】図1における電磁駆動装置の縦断面図。
【図3】(a)は図1に示す第2コイルボビンの凹部を示す図、(b)はステータヨークの正面図、(c)はコイルボビンとステータヨークとの嵌合状態を示す図。
【図4】図1に示すステータヨークとロータマグネットとの間で作用する磁気的な偏りによる力と、遮光部材の可動範囲を説明する図。
【図5】図4に示す電磁駆動装置と遮光部材の全閉、中間、全開の作動を説明する図。
【図6】図1から図5に示す電磁駆動装置を他の光量調節装置に適用した実施形態を示す分解斜視図。
【図7】(a)〜(c)は従来のスリットヨークを用いた電磁駆動装置と遮光部材の全閉、中間、全開の作動を説明する図。
【図8】従来の電磁駆動装置の分解斜視図。
【符号の説明】
【0063】
1 地板
1a 開口部 1b ガイドピン
2、3 遮光部材
2a,3a 係合孔 2b,3b ガイド溝
4 絞りケース(板金)
5 メーター地板
5a 回転規制部 5b 穴部
6 第1コイルボビン部
6a 凹部 6c 突起部
7 駆動伝達レバー
7a 係合ピン 7b レバー本体
8 ロータマグネット
9 第2コイルボビン部
9a、9b 凹部
10 ステータヨーク
10a,10b 突条
11 防塵カバー
201 電磁駆動装置
201a 駆動伝達レバー 201b 係合ピン 201c ステータヨーク
202 地板
202a 長穴
203 開口部
204 駆動リング
204a 長穴
205 遮光部材
206 絞りケース
207a,207b シャッター羽根
208 カバー板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能と成す永久磁石からなるロータマグネットと、
前記ロータマグネットの回転範囲を規制する回転規制部をもつ回転規制部材と、
前記ロータマグネットの回転軸周りに配置され、該ロータマグネットに向けて突出し、該ロータマグネットとの間で生じる磁気的偏りに基づく付勢力を発生するための少なくとも一つの突出部を有すると共に、前記回転規制部材に対する位置決め部を有する略円筒形のステータヨークと、
前記ステータヨークの内側に配置され、前記ロータマグネットと対向しこれを駆動するための磁気を発生するコイルと、
を有することを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記ステータヨークの位置決め部は、前記ステータヨークの突出部が兼ねることを特徴とする請求項1記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記ステータヨークの位置決め部は、前記回転規制部材と嵌合することによって、該ステータヨークの突出部を前記ロータマグネットの回転方向に位置決めすることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記ステータヨークの位置決め部は、前記コイルが巻回されるコイルボビンの凹部と嵌合し、該コイルボビンは該回転規制部材に位置決め固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記回転規制部材は、前記コイルが巻回されるコイルボビンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記ステータヨークの突出部は、他の略円筒部より断面が厚くなるように一体に設けられ、前記ステータヨークは前記突出部と位置決め部を含んで粉末冶金成形法によって圧縮成形されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電磁駆動装置。
【請求項7】
絞り開口を有する地板に対して遮光部材を移動させることにより光量を制御する光量調節装置において、
請求項1から6のいずれかに記載の電磁駆動装置を駆動源とし、前記電磁駆動装置のロータマグネットと一体に回動する動力伝達部材を介して前記遮光部材を駆動することを特徴とする光量調節装置。
【請求項8】
前記コイルへの通電を遮断した状態において、前記遮光部材は、該遮光部材が前記絞り開口を全閉する全閉位置に、前記磁気的偏りに基づく付勢力により保持されることを特徴とする請求項7に記載の光量調節装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−170976(P2008−170976A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317189(P2007−317189)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】