説明

電線離隔測定器具

【課題】電線と電線との離隔距離を容易に測定することができる電線離隔測定器具を提供する。
【解決手段】電線離隔測定器具1は、支柱2と、前記支柱2の先端部分に設けられた測定手段3とを備え、前記測定手段3は、2本の電線5の距離を計測する定規11を有する。前記定規11は、基端11bが前記支柱2に軸支され、先端11cが線材16の一端16aに連結されており、前記線材16の他端16bは、前記支柱2の先端8aを介して前記支柱2の基端部分に設けられたリール18に連結されている。リール18を操作して定規11を傾動させて定規11を電線5に到達させることにより、容易に定規11を電線5に位置決めすることができるので、容易に電線5と電線5との離隔距離δを容易に測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2本の電線の離隔距離を測定する電線離隔測定器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線は、施設場所の状況や電圧に応じて、感電又は火災のおそれがないように施設する必要があり、そのため、施設される電線と電線との離隔距離が規定されている。例えば、「電気設備技術基準」の第78条第1項第2号には、低圧架空電線が架空弱電流電線等と接近する場合は、低圧架空電線と架空弱電流電線等との離隔距離は、60cm以上であること、と定められている。
【0003】
このような基準を満たすため、電線を施設する場合など、現場においては、巻尺が用いられていた(例えば特許文献1)。この特許文献1に係る巻尺は、径の異なる複数の絶縁性筒体を連結して構成された伸縮自在の絶縁性スティック内に、先端が最小径の筒体の先端部に固定された状態で布製の尺材を収納してなる。これにより、特許文献1では、容易に携帯できると共に、計測に際し感電事故の恐れを防止することができる。
【特許文献1】特開平6−185901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、地上から電線までの距離を測定するには適しているものの、2本の電線の離隔距離を計測することが困難であるという問題があった。特に、電線が水平方向に離れている場合には、地上から電線までの距離を測定できたとしても、電線同士の離隔距離を正確に測定することは容易でない。
【0005】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、電線と電線との離隔距離を容易に測定することができる電線離隔測定器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、支柱と、前記支柱に設けられた測定手段とを備え、前記測定手段は、少なくとも2本の電線間に掛架され前記2本の電線の距離を計測する定規を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1において、前記定規は、基端が前記支柱に軸支され、先端が線材の一端に連結されており、前記線材の他端は、前記支柱の先端を介して前記支柱の基端部分に設けたリールに連結されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記定規の基端に、前記2本の電線のうち1本を係止する係止部を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記定規の目盛りが設けられている一側表面を撮影する測定用カメラを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記2本の電線を含む測定現場の全体風景を撮影する記録用カメラを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の電線離隔測定器具によれば、定規を支柱によって2本の電線に到達させることによって、電線と電線との離隔距離を容易に測定することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の電線離隔測定器具によれば、リールを操作して定規を傾動させて定規を電線に到達させることにより、容易に定規を電線に位置決めすることができるので、より容易に電線と電線との離隔距離を容易に測定することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の電線離隔測定器具によれば、定規の基端に1本の電線を位置決めすることができるので、より正確に電線と電線との離隔距離を容易に測定することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の電線離隔測定器具によれば、地上から離れた位置にある定規と第2電線とが交差した部分をユーザが容易に確認し、記録することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の電線離隔測定器具によれば、測定対象を含む全体的な風景を撮影することができるので、容易に測定現場を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0017】
図1に示す電線離隔測定器具1は、支柱2と、測定手段3と、記録手段4とを備え、地上Gに立設された複数の電柱(図示しない)間に掛架された電線5に支柱2によって測定手段3を到達させ、該測定手段3によって少なくとも2本の電線5(第1電線5aと第2電線5b)の離隔距離δを測定し、記録手段4により前記測定結果を記録し得るように構成されている。ここで、離隔距離δとは、2本の電線間の距離をいい、本図においては、第1電線5aと第2電線5bとの距離である。
【0018】
支柱2は、基端管柱6、中管柱7、及び先端管柱8を備え伸縮自在に構成されており、地上Gのユーザが基端管柱6を把持し、所定長さに調節して、電柱に掛架された電線5に測定手段3を到達させ得る長さに形成されている。本実施形態では、支柱2は、外径の異なる複数(本図では5本)の円筒状の管柱を互いに入れ子式に順次挿入して伸縮自在に構成されている。具体的には、支柱2は、基端に配置された基端管柱6と、前記基端管柱6より外径を順次小さくした中管柱7としての第1管柱7a、第2管柱7b、及び第3管柱7cと、前記第3管柱7cより外径を小さくした先端管柱8とを備える。尚、各管柱には、図示しないがストッパが設けられており、それぞれの管柱を所定長さ引き伸ばした状態で固定し得るように構成されている。
【0019】
そして、支柱2は、基端管柱6、第1〜第3管柱7a,7b,7c、及び先端管柱8をそれぞれ順に内挿して伸縮自在に構成されている。この支柱2の先端部分には測定手段3が設けられている。本実施形態では、基端管柱6にスイッチ部9が設けられている。
【0020】
測定手段3は、定規11と、位置決め機構12とを有し、全体として、位置決め機構12により定規11を第1電線5aと第2電線5bとの間に位置決めし、定規11により第1電線5aと第2電線5bとの離隔距離δを測定し得るように構成されている。
【0021】
定規11は、一側表面11aに基端11bをゼロとする長さの目盛りが形成された絶縁性部材、例えばプラスチック製板材からなる。この定規11は、先端11cが先端管柱8の先端8aに略一致する位置であって、基端11bが支柱2の側面に設けられたヒンジ13に連結されている。また、定規11は、自重で支柱2の内側から外側へ向かって回動し得る重さを有することが好ましい。本実施形態では、ヒンジ13は、第3管柱7cの先端に設けられている。これにより定規11は基端11bにおいて、支柱2の側面に軸支されている。
【0022】
また、定規11の他側表面11dの基端11b部分には、第1電線5aを係止する係止部14が設けられている。係止部14は、略U字状の部材からなり、定規11に沿って定規11の先端方向に開口していると共に、定規11のゼロの位置に設けられている。
【0023】
位置決め機構12は、線材16、プーリ17、及びリール18からなり、前記定規11を所定位置に位置決めし得るように構成されている。線材16は、種々のものが考えられるが、例えばナイロン製の糸を用いることができる。プーリ17は、前記先端管柱8の先端8aに取付けられており、支柱2の一側から他側へ線材16が行き来できるように構成されている。リール18は、前記基端管柱6に取付けられている。
【0024】
線材16は、一端16aが前記定規11の先端11cに連結されており、他端16bが前記支柱2の先端8aに設けられたプーリ17に係回されて前記支柱2の基端管柱6に設けられたリール18に連結されている。これにより、リール18によって線材16を巻き上げたり、巻き戻したりすることで、ヒンジ13を回転中心として定規11を傾動させ得る。
【0025】
記録手段4は、測定用カメラ20と、記録用カメラ21と、測定用カメラ20及び記録用カメラ21が電気的に接続された記録装置22とからなり、測定用カメラ20及び記録用カメラ21で撮影した映像を記録装置22に保存し得るように構成されている。この測定用カメラ20及び記録用カメラ21は、上記したスイッチ部9に設けられたスイッチ(図示しない)によりシャッターを切れるように構成されている。
【0026】
測定用カメラ20は、前記定規11の一側表面11aを撮影し得るように構成されている。本実施形態では、測定用カメラ20は、定規11に垂直に立設されたステイ23に取付けられている。この測定用カメラ20は、所定長さを有する定規11の全長を撮影するため、広角レンズを備えたものが好ましい。測定用カメラ20は、撮影した画像データを図示しないインターフェースからケーブル24を介して記録装置22へ送信する。
【0027】
記録用カメラ21は、測定する測定対象を含む測定現場を特定するための全体的な風景を撮影し得るように構成されている。本実施形態では、記録用カメラ21は中管柱7(本図では第2管柱7b)に取付けられており、斜め上方を撮影し得るように設けられている。記録用カメラ21は、前記測定用カメラ20と同様に、撮影した画像データを図示しないインターフェースからケーブル25を介して記録装置22へ送信する。
【0028】
記録装置22は、図示しないが、システム制御部がメモリから読み出した各種プログラムに従って全体を統括的に制御し、測定用カメラ20又は記録用カメラ21から受信した画像データを受信すると、該画像データを再生し、表示手段26に表示すると共に、内蔵した記録媒体、例えばハードディスクや、挿入された光ディスク等に画像データを保存し得るように構成されている。
【0029】
次に上記のように構成された電線離隔測定器具1の各部の作用及び効果について説明する。尚、電線離隔測定器具1は、説明の便宜上、支柱2を収縮させて最も短かくした状態であって、線材16を巻き上げた状態、すなわち定規11が支柱2に沿った状態を初期状態として説明する。また、測定対象としての第1電線5aと第2電線5bとは、水平方向に長さα、鉛直方向にβだけ離れた状態で平行に掛架されているものとする。さらに、基端管柱6の基端6aは、地上Gに当接しているものとする。
【0030】
まず、測定現場において測定対象である第1電線5a及び第2電線5bを特定したら、スイッチ部9のスイッチを押下することにより記録用カメラ21のシャッターを切り、記録用カメラ21で測定対象を含む全体的な風景を撮影する。当該撮影した画像の画像データは、記録用カメラ21のインターフェースからケーブル24を介して記録装置22へ送信される。記録装置22は、画像データを受信すると、画像を再生すると共に、表示手段26に表示する。ユーザは、当該表示手段26により、撮影した画像を確認した上で記録装置22の記録媒体に記録データとして保存する。
【0031】
次いで、第1電線5aに係止部14を係止できるまで支柱2を伸長させ、第1電線5aに係止部14が係止した長さで固定する。ここで、係止部14は、略U字状の部材からなり、定規11に沿って定規11の先端11c方向に開口していることにより、支柱2を伸長させることで下側から第1電線5aに当接させることができるので、第1電線5aに不要な負荷をかけずに係止部14を第1電線5aに係止させることができる。
【0032】
次いで、リール18を巻き戻して線材16を供給し、ヒンジ13を回転中心として定規11を回動させ、定規11の他側表面11dを第2電線5bに当接させる。この定規11の一側表面11aに形成された所定長さの目盛りは、係止部14の位置がゼロであるので、図2に示すように、第2電線5bと定規11が交差した位置の目盛りが第1電線5aと第2電線5bとの離隔距離δとなる。
【0033】
このように、定規11の他側表面11dを第2電線5bに当接させた状態で、スイッチ部9のスイッチを押下することにより測定用カメラ20のシャッターを切り、測定用カメラ20で定規11の一側表面11aを撮影する。当該撮影した画像の画像データは、測定用カメラ20のインターフェースからケーブル24を介して記録装置22へ送信される。記録装置22は、画像データを受信すると、画像を再生すると共に、表示手段26に表示する。ユーザは、当該表示手段26により、撮影した画像を確認した上で記録装置22の記録媒体に測定データとして保存する。このとき、記録装置22は、前記記録データと前記測定データとを1対1で関連付けて保存する。
【0034】
上記したように、本実施形態に係る電線離隔測定器具1は、支柱2と、測定手段3とを備え、前記測定手段3は、2本の電線5間に掛架され前記2本の電線5の離隔距離δを計測する定規11を有することにより、地上Gから離れた位置に掛架された第1電線5aと第2電線5bとの離隔距離δを容易に測定することができる。
【0035】
また、測定手段3は、基端11bが支柱2に軸支された定規11と、該定規11を第1電線5aと第2電線5bとの間に位置決めする位置決め機構12とを有することにより、第1電線5aと第2電線5bとが鉛直方向及び水平方向に離れていた場合でも、第1電線5aと第2電線5bとの離隔距離δを直接的に測定することができる。
【0036】
位置決め機構12は、一端16aが前記定規11の先端11cに接続された線材16と該線材16の他端16bが接続され該線材16を巻き上げたり巻き戻したりするリール18とを備えることにより、ユーザが手元でリール18を操作して基端を回転中心として定規11を回動させることができるので、容易に定規11を第2電線5bに位置決めすることができる。
【0037】
また、電線離隔測定器具1は、記録手段4を備えることにより、測定したデータを容易に保存することができる。
【0038】
記録手段4は、測定用カメラ20を有することにより、地上Gから離れた位置にある定規11と第2電線5bとが交差した部分をユーザが容易に確認し、記録することができる。
【0039】
また、記録手段4は、記録用カメラ21を有することにより、測定対象を含む全体的な風景を撮影することができるので、容易に測定現場を特定することができる。
【0040】
このようにして、第1電線5aと第2電線5bとの離隔距離δを測定し終えたら、リール18を巻き上げて定規11を基端管柱6の方向へ回動させて鉛直方向に立設させた後、支柱2を収縮させて初期状態に戻す。このとき、係止部14は、定規11の先端11c方向に開口していることにより、定規11を回動させて鉛直方向に立設させた状態で支柱2を収縮させるだけで、第1電線5aとの係止を解除することができる。
【0041】
本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記した実施形態では、撮影した画像を確認する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、撮影する前に記録用カメラ21を通して記録装置22の表示手段26に映し出されるリアルタイムの映像を確認しながら、ユーザが所望の画像を撮影し得るように構成してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、支柱2は、中管柱7が3本の管柱で構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、不使用時には短くしておくことができるとともに、必要に応じて所定長さに伸ばすことができれば足り、例えば、1本、2本、4本、又は5本などで構成してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、ヒンジ13は、第3管柱7cの先端に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、支柱2の先端8aから定規11の長さ分だけ下方であればよく、例えば、先端管柱8の基端部分などであってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、定規11は、プラスチック製である場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばセラミック製や、木製などであってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、記録用カメラ21は第2管柱7bに設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、測定対象を含む全体風景を撮影できれば足り、例えば、基端管柱6に設けてもよい。
【0046】
また、電線離隔測定器具1は、支柱2の基端から係止部14までの長さを測定し得る尺材を設けてもよい。これにより、支柱2の基端6aを地上Gに当接させた状態で、支柱2を伸長させて係止部14を電線の下側に当接させることにより、当該電線と地上Gとの距離を計測することができる。
【0047】
また、本実施形態では、電線離隔測定器具1は、少なくとも2本の電線の離隔距離を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、3本、4本、又はそれ以上を一度に測定し得るように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係る電線離隔測定器具の全体構成を模式的に示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る電線離隔測定器具の定規と電線との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 電線離隔測定器具
2 支柱
3 測定手段
4 記録手段
5 電線
11 定規
11a 一側表面
11b 基端
11c 先端
14 係止部
16 線材
16a 一端
16b 他端
18 リール
20 測定用カメラ
21 記録用カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、前記支柱に設けられた測定手段とを備え、
前記測定手段は、少なくとも2本の電線間に掛架され前記2本の電線の離隔距離を計測する定規を有する
ことを特徴とする電線離隔測定器具。
【請求項2】
前記定規は、基端が前記支柱に軸支され、先端が線材の一端に連結されており、
前記線材の他端は、前記支柱の先端を介して前記支柱の基端部分に設けたリールに連結されている
ことを特徴とする請求項1記載の電線離隔測定器具。
【請求項3】
前記定規の基端に、前記2本の電線のうち1本を係止する係止部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の電線離隔測定器具。
【請求項4】
前記定規の目盛りが設けられている一側表面を撮影する測定用カメラを設けた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線離隔測定器具。
【請求項5】
前記2本の電線を含む測定現場の全体風景を撮影する記録用カメラを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線離隔測定器具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−287928(P2009−287928A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137565(P2008−137565)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(501331544)東電タウンプランニング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】