説明

電荷輸送材料、それを用いた薄膜及び有機電子デバイス、並びにパイ電子系化合物

【課題】新規な電荷輸送材料の提供。
【解決手段】パイ電子系ユニットであるパイ電子系環状母核(例えば、アントラセンユニット及びテトラセンユニット)を有する新規な電荷輸送材料の提供と、それらの材料を用いた有機電子デバイスの提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ、及び有機太陽電池等の種々の有機電子デバイスに利用可能な新規な電荷輸送材料、及びその種々の用途に関する。また、本発明は、電荷輸送材料として有用な新規なパイ電子系化合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイ電子系化合物が、種々の有機電子デバイスの電荷輸送材料として提案されている。代表的なものとして以下の構造のルブレンが知られている。
【0003】
【化1】

【0004】
ルブレンは、結晶状態では高い移動度を示すものの、非結晶状態では移動度がほとんど出ないため、デバイスに利用する際の形態や製造方法が制限されるという問題がある。薄膜状態で高い移動度を示す有機化合物を提供できれば、デバイスへの利用に有利である。
【0005】
一方、フッ素置換されたパイ電子系化合物についても種々報告されている。例えば、非特許文献1には、フッ素原子を含む置換基で置換されたアントラセン化合物が開示され、その発光特性について報告されている。しかし、電荷輸送能についてはなんら報告されていない。
また、特許文献1には、発光層中に、ドーパントとして、フッ素置換されたテトラセン誘導体を含有する有機EL素子が開示されている。
この様に、従来、フッ素置換されたパイ電子系化合物については、発光特性についての研究報告はあるものの、その電荷輸送能については報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2005/0095450A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ORGANIC LETTERS, 2008, Vol.10, No. 24, 5541-5544; "Meso-Disubstituted Anthracenes with Fluorine-Containing Groups: Synthesis, Light-Emitting Characteristics, and Photostability", Yoshio Matsubara, Atsushi Kimura, Yoshihiro Yamaguchi, and Zen-ichi Yoshida
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な電荷輸送材料、並びにそれを利用した、薄膜、有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ、及び有機太陽電池等の有機電子デバイスを提供することを課題とする。
また、本発明は、電荷輸送材料として有用な新規なパイ電子系化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料:
【化2】

式中、Ar1及びAr2はそれぞれ、5員又は6員の芳香族環を表し;R0はそれぞれ水素原子又は非芳香族性置換基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく;R1及びR2はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(I)又は(II)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(I)及び(II)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、Ar1及びAr2が5員環である場合は0〜3の整数であり、Ar1及びAr2が6員環である場合は0〜4の整数であり、m1及びn1が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;m2及びn2はそれぞれ0〜4の整数であり、m2及びn2が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;pは0又は1を表す。
【0010】
[2] 前記式(I)及び(II)中のpが0であり、下記式(Ia)及び(IIa)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する[1]の電荷輸送性材料:
【化3】

式中の記号の意義は、前記式(I)及び(II)中のそれぞれと同義である。
【0011】
[3] 式(I)で表される化合物が、下記式(Ia-1)で表される化合物である[1]又は[2]の電荷輸送材料:
【化4】

式中の記号の意義は、前記式(I)中のそれぞれと同義である。
【0012】
[4] R1及びR2がそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基である[1]〜[3]のいずれかの電荷輸送材料。
[5] R1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つの、フッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す[1]〜[4]のいずれかの電荷輸送材料。
[6] R1が、無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す[1]〜[5]のいずれかの電荷輸送材料。
[7] R1及びR2がそれぞれ、無置換のフェニル基、無置換のチエニル基、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[1]〜[6]のいずれかの電荷輸送材料。
[8] R1が無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R2がパーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[1]〜[7]のいずれかの電荷輸送材料。
[9] R3及びR4の少なくとも1つが、チエニル基であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの電荷輸送材料。
[10] R3及びR4の少なくとも一つが、式(I)又は(II)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である[1]〜[9]のいずれかの電荷輸送材料。
[11] 式(I)及び(II)中の全てのR0が水素原子である[1]〜[10]のいずれかの電荷輸送材料。
[12] L1及びL2の双方が単結合である[1]〜[11]のいずれかの電荷輸送材料。
[13] [1]〜[12]のいずれかの電荷輸送性材料からなる薄膜。
[14] [1]〜[12]のいずれかの電荷輸送性材料を含有する、有機電子デバイス。
[15]電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ又は有機太陽電池である[14]の有機電子デバイス。
【0013】
[16] 下記式(Ib)で表されるパイ電子系化合物:
【化5】

式中、R11及びR1はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(Ib)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【0014】
[17] 下記式(IIb)で表されるパイ電子系化合物:
【化6】

式中、R21は無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R22は少なくとも1つのフッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し、;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(IIb)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m2及びn2はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【0015】
[18] R11及びR21がそれぞれ、無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R12及びR22がそれぞれ、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表す[16]又は[17]の化合物。
[19] R11及びR21がそれぞれ、無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R12及びR22がそれぞれ、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[16]又は[17]の化合物。
[20] R3及びR4の少なくとも1つがチエニル基であることを特徴とする[16]〜[19]のいずれかの化合物。
[21] R3及びR4の少なくとも一つが、式(Ib)又は(IIb)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である[16]〜[20]のいずれかの化合物。
[22] L1及びL2の双方が単結合である[16]〜[21]のいずれかの化合物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な電荷輸送材料、並びにそれを利用した、薄膜、有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ、及び有機太陽電池等の有機電子デバイスを提供することができる。
また、本発明によれば、電荷輸送材料として有用な新規なパイ電子系化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセンの単結晶X線結晶構造解析によって得られたパッキング構造のORTEP図である。
【図2】微結晶PhF5PhTetraと微結晶ルブレンの355nmにおける時間分解マイクロ波伝導度の測定結果、並びに最大光伝導度を比較したグラフである。
【図3】実施例で作製した有機電界型トランジスタの模式図である。
【図4】実施例の有機電界型トランジスタの性能評価結果を示すグラフである。
【図5】実施例で作製した有機薄膜太陽電池の模式図である。
【図6】実施例の有機薄膜太陽電池の性能評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
1.電荷輸送材料
本発明は、下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料に関する。
【0019】
【化7】

【0020】
前記式中、pは0又は1を表す。前記式で表される化合物の例には、pが0である化合物であって、下記式(Ia)及び(IIa)でそれぞれ表される化合物が含まれる。
【0021】
【化8】

【0022】
前記式(I)中、Ar1及びAr2はそれぞれ芳香族環を表す。芳香族環は、環構成原子が炭素原子のみである炭化水素環であっても、1以上のヘテロ原子(例えば、S、Se、Te、N、NR(Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基)、O)を含むヘテロ環であってもよい。前者の例としては、ベンゼン環が挙げられ、即ち、下記式(Ia-1)で表されるヘテロセン化合物が含まれる。また、後者の例には、チオフェン環、及びセレノフェン環が挙げられ、即ち、下記式(Ia-2)で表される化合物が含まれる。
【0023】
【化9】

【0024】
式(Ia-2)中、Eは、S、Se、Te、NR(Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基)、又はOを表し、S又はSeが好ましく、Sがより好ましい。
【0025】
また、上記式で表される化合物の例には、pが1である化合物であって、下記式(Ic)及び(IIc)でそれぞれ表されるペンタセン誘導体、及びフェナントロ[1,10,9,8‐opqra]ペリレン誘導体が含まれる。
【0026】
【化10】

【0027】
式中、R0はそれぞれ水素原子又は非芳香族性置換基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく;R1及びR2はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(I)又は(II)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(I)及び(II)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、Ar1及びAr2が5員環である場合は0〜3の整数であり、Ar1及びAr2が6員環である場合は0〜4の整数であり、m1及びn1が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;m2及びn2はそれぞれ0〜4の整数であり、m2及びn2が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;pは0又は1を表す。
【0028】
前記式中、R0がそれぞれ表す非芳香族性置換基としては、アルキル基、アルキン基、アルコキシ基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基等が挙げられる。これらの基中の炭素原子数は1〜6が好ましい。R0はいずれも水素原子であるのが好ましい。
【0029】
前記式中、R1及びR2はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す。前記アリール基の例には、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が含まれる。また、前記へテロアリール基の例には、チエニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基等が含まれる。中でも、フェニル基、ナフチル基、チエニル基が好ましく、フェニル基及びチエニル基がより好ましい。R1及びR2はそれぞれ、無置換のフェニル基、無置換のチエニル基、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基であるのが好ましい。
【0030】
前記式中、R1及びR2の組合せが、静電的相互作用が強くなる組合せであると、当該静電的相互作用によって、分子のパッキング構造が制御され、パイ電子系ユニットであるパイ電子系環状母核(例えば、アントラセンユニット及びテトラセンユニット)のパイパイスタックが可能となり、高い電荷移動度が期待できる。
その一例としては、R1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つのフッ素、又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す、組合せである。電子供与基の例には、炭素原子数1〜6の、アルキル基、アルコキシル基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基が含まれる。
【0031】
より好ましい組み合わせ例は、R1が、無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子(より好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子)で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す組合せである。
【0032】
さらに好ましい組合せ例は、R1が無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R2がパーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である組合せである。
【0033】
前記式中、L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表す。2価の連結基の例には、炭素原子数1〜5のアルキレン基(例えばエチレン基)、炭素原子数2〜6のアルケニレン基(例えばエテニル基)、炭素原子数2〜6のアルキニレン基(例えばエチニレン基)、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、及びこれらの2以上の組み合わせからなる2価基が含まれる。L1及びL2は互いに同一であるのが好ましく、いずれも単結合であるのが好ましい。
【0034】
前記式中、R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(I)又は(II)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(I)及び(II)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、Ar1及びAr2が5員環である場合は0又は1であり、Ar1及びAr2が6員環である場合は0〜4の整数であり、m1及びn1が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;m2及びn2はそれぞれ0〜4の整数であり、m2及びn2が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。R3及びR4がそれぞれ表す置換基の例には、チエニル基、セレノフェン基、ピロール基、フラン基、チアゾール基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾフラン基、ベンゾジチエニル基が含まれる。中でも、チエニル基が好ましい。
式中、m1、n1、m2及びn2のいずれもが0である、即ち、無置換であってもよい。
【0035】
また、R3及びR4はそれぞれ結合して環を形成していてもよい。形成される環は、芳香環であるのが好ましく、5又は6員の芳香環であるのが好ましい。芳香環を構成している原子が炭素原子のみであってもよいし、1以上のヘテロ原子(例えば、S、Se、Te、N、NR(Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基)、O)を含んでいてもよい。以下に、式(Ia-1)の化合物について、R3及びR4がそれぞれ環を形成した化合物の例には、下記式(Ia-1-1)及び下記式(IIa-1-1)で表される化合物が含まれる。式中、EはS、Se、Te、NR(Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基)、又はOを表し、S又はSeが好ましく、Sがより好ましい。その他の記号については、上記式(I)中のそれぞれと同義であり好ましい例も同様である。
【0036】
【化11】

【0037】
また、R3及びR4の少なくとも1つが式(I)又は(II)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(I)及び(II)の化合物はそれぞれ多量体であってもよい。前記多量体である場合は、R3及び/又はR4が、前記式(I)又は(II)で表される化合物の残基であってもよいし、又は二価基を介して、前記式(I)又は(II)で表される化合物の残基が結合していてもよい。二価基の例には、下記の基が含まれる。
【0038】
【化12】

【0039】
前記多量体の例には、以下の式(Id-1)、(Id-2)、(IId-1)及び(IId-2)で表される化合物が含まれる。
【0040】
【化13】

【0041】
式中、nは1〜2000の整数を意味する。即ち、本発明において、「多量体」とは、一般的に、ポリマーといわれる比較的高い重合度の化合物であっても、一般的に、オリゴマーといわれる比較的低い重合度の化合物のいずれも含む意味である。
【0042】
前記式(I)で表される化合物の好ましい例には、以下の式(Ib)で表される化合物が含まれ、及び前記式(II)で表される化合物の好ましい例には、以下の式(IIb)で表される化合物が含まれる。
【0043】
【化14】

【0044】
式中、R11及びR1はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し、その他の記号については、上記式(I)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0045】
【化15】

【0046】
式中、R21は無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R22は少なくとも1つのフッ素原子又は塩素原子で置換された縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し、その他の記号については、上記式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
以下に、式(I)及び(II)で表される化合物の具体例を示すが、以下に具体例に限定されるものではない。
【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
【化20】

【0053】
上記式(I)及び(II)で表される化合物は、種々の有機合成反応を組合せることで合成することができる。
例えば、式(I)の化合物は、ジブロモテトラセンを出発原料として、鈴木カップリング反応を利用して、置換もしくは無置換の、アリール基又はヘテロアリール基を、パラジウム触媒を用いた炭素−水素結合活性化反応により導入することで合成することができる。
また式(II)の化合物も、9−(ヘテロ)アリール−10−ブロモアントラセンを出発原料として、上記と同様にして、置換(ヘテロ)アリール基を導入することで合成することができる。また、式(II)の化合物は、アントラキノン又はその誘導体を出発原料として合成することもできる。
【0054】
また、多量体は、塩化鉄を用いた酸化的に高分子化反応するか、もしくはパラジウム触媒を用いたカップリング反応による高分子化反応を参考にして合成することができる。前者の方法については、"Regioselective Polymerization of 3-(4-Octylphenyl)thiophene with FeCl3", M.R. Andersson, et al., Macromolecules, 1994, vol. 27, p. 6503-6506,に詳細な記載があり、参照することができ;及び後者の方法については、"Highly Efficient Solar Cell Polymers Developed via Fine-Tuning of Structural and Electronic Properties", Yongye Liang, et al., J. AM. CHEM. SOC., vol. 131, p. 7792-7799、に詳細な記載があり、参照することができる。
【0055】
上記式(I)及び(II)の化合物は、電荷輸送材料として有用である。特に、R1(式(Ib)及び(IIb)中では、それぞれR11及びR21)が、無置換又は電子供与基で置換された、アリール基もしくはヘテロアリール基であり、R2(式(Ib)及び(IIb)中では、それぞれR12及びR22)が、少なくとも1つ(より多く置換されているのが好ましく、全てが置換さているのがより好ましい)の水素原子がフッ素原子で置換された、アリール基もしくはヘテロアリール基である式(I)及び(II)の化合物は、R1及びR2の静電的相互作用が高く、分子のパッキング構造が制御され、テトラセン等のパイ電子系環状母核のパイパイスタッキング可能となるので、高い移動度を示すことが期待される。上記式(I)及び(II)の化合物は、パイ電子系化合物であるが、非結晶状態の薄膜の形態であっても、高い移動度を示し、その点で、非結晶状態ではほとんど移動度がでないルブレンと異なる。
【0056】
2.薄膜
本発明は、前記式(I)又は(II)で表される1種以上の化合物(多量体も含む)からなる電荷輸送材料からなる薄膜にも関する。本発明の薄膜は、電荷輸送膜又は有機半導体膜として、種々のデバイスに利用することができる。本発明の薄膜の形成方法については特に制限はない。薄膜は、蒸着法を利用して形成することができる。また、有機溶媒に対して溶解性のある化合物については、溶液を調製し、該溶液をキャスティングすることにより、又は該溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法で塗布することにより形成することができる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法を利用することもできる。更に、ラングミュア・ブロジェット法などを利用して形成することもできる。
薄膜の厚みは、用途に応じて決定されるであろう。通常、1nm以上であり、好ましくは30nm以上である。また、一般的には10μm以下、1μm以下が好ましく、さらに200nm以下が好ましい。
【0057】
なお、本発明の薄膜は、本発明の電荷輸送材料とともに、他の電荷輸送材料等を含有していてもよい。勿論、前記式(I)及び(II)で表される化合物のみを含有していてもよい。
【0058】
3.用途
本発明は、本発明の電荷輸送材料及びそれからなる薄膜の用途にも関する。本発明の電荷輸送材料及び薄膜は、種々の有機電子デバイスに利用することができる。例えば、有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ、及び有機太陽電池に利用することができる。また、光検出器、光センサ、論理回路、記憶素子、キャパシタ等に利用することもできる。
【0059】
例えば、有機電界効果型トランジスタのドレインとソースとの間のアクティブ半導体チャネルは、本発明の電荷輸送材料を含むことができる。有機電界効果型トランジスタの基本的な構成は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、有機半導体層、1つ以上のゲート絶縁層、及び所望により基板を含む。本発明の電荷輸送材料からなる薄膜を、前記電荷輸送層として利用することができる。
【0060】
また、有機電界発光素子の、電荷(正孔若しくは電子)注入または移動層の材料として、本発明の電荷輸送材料を利用することができる。また有機電界発光素子の発光層の材料(但し、ドープ以外の材料)として、本発明の電荷輸送材料を利用してもよい。
【0061】
また、有機太陽電池の一態様は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に、正孔注入層、p層、n層、及びバッファ層を積層した構成である。p層とn層との間に、p層及びn層の材料の双方を含む混合層を配置した構成も知られている。本発明の電荷輸送材料は、前記p層の材料として有用である。n層の材料としては、フラーレンが知られていて、フラーレンからなるn層と組み合わされて用いることができる。
【0062】
4.パイ電子系化合物
また、本発明は、下記式(Ib)及び(IIb)で表されるパイ電子系化合物にも関する。本発明のパイ電子系化合物は、電荷輸送材料として有用であり、本発明の電荷輸送材料からなる薄膜は、高い移動度を示す。中でも、R11及びR21がそれぞれ、無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R12及びR22がそれぞれ、少なくとも1つ(特に好ましくは全ての)水素原子がフッ素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基である化合物は、特に高い移動度を示す。
【0063】
【化21】

【0064】
式中、R11及びR1はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(Ib)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【0065】
【化22】

【0066】
式中、R21は無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R22は少なくとも1つのフッ素原子で置換された縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し、;L1及びL2はそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(IIb)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m2及びn2はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【0067】
前記式中の各記号の意義については上記の通りであり、好ましい範囲も同様である。
【実施例】
【0068】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0069】
1.合成例
[合成例1:5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)及び5,11-ジフェニルテトラセン(略称:PhPhTetra)の合成例]
(1)5,11−ジブロモテトラセンの合成
1Lの三口フラスコ中のテトラセン 2.0g(8.8mmol)のクロロホルム懸濁液(450mL)に、N−ブロモスクシンイミド 3.4g(19.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(90mL)を滴下し,窒素気流下で85℃で、4時間撹拌した。室温に戻した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、クロロホルムに溶かして分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をクロロホルムで洗った後、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン:クロロホルム=9:1を展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である5,11−ジブロモテトラセンの赤橙色固体を1.71g(4.42mmol;収率50%)得た。
【0070】
【化23】

【0071】
生成物の同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.25 (s, 2H, ArH), 8.48 (d, J = 9.2 Hz, 2H, ArH), 8.08 (d, J = 8.1 Hz 2H, ArH), 7.58-7.53 (m, 2H, ArH), 7.50-7.46 (m, 2H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ132.65, 130.63, 129.39, 127.84, 127.53, 127.52, 125.92.
APCI-HRMS (+): calcd. for C18H10Br2 [M+] 383.9149, found 383.9146.
【0072】
(2)5−ブロモ−11−フェニルテトラセンの合成
100mLの二口フラスコ中,ジブロモテトラセン 1.7g(4.4mmol)、フェニルボロン酸698mg(5.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)73mg(79.5μmol)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル308.1mg(0.6mmol)、2M炭酸カリウム水溶液18mL(36.0mmol)をトルエン(48mL)/エタノール(6.5mL)混合溶媒中に加え、窒素気流下95℃で4.5時間撹拌した。室温に戻した後、溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた固体をヘキサン:クロロホルム=9:1を展開溶媒としてシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である5−ブロモ−11-フェニルテトラセンの赤橙色固体を958.1mg(2.51mmol;収率57%)得た。
【0073】
【化24】

【0074】
得られた5−ブロモ−11−フェニルテトラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.26 (s, 1H, ArH), 8.46 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH), 8.30 (s, 1H, ArH), 8.12 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.77 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.64-7.42 (m, 10H, ArH).
13C NMRを以下に示す。
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ138.67, 137.64, 132.21, 131.49, 131.38, 130.06, 129.84, 129.70, 129.28, 129.02, 128.68, 128.53, 127.80, 127.40, 127.33, 126.74, 126.68, 126.64, 125.80, 125.57, 125.00, 122.45.
【0075】
(3)5,11-ジフェニルテトラセン(略称:PhPhTetra)の合成
(2)の5−ブロモ−11−フェニルテトラセンの合成の副生成物として5,11-ジフェニルテトラセンを307mg(0.80mmol;収率18%)得た。
【0076】
【化25】

【0077】
得られたPhPhTetraの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.36 (s, 2H, ArH), 7.83 (d, J = 8.6 Hz, 2H, ArH), 7.68-7.54 (m, 13H, ArH), 7.32-7.29 (m, 2H, ArH), 7.26-7.23 (m, 1H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ139.13, 136.82, 131.50, 130.98, 129.35, 129.03, 128.96, 128.50, 127.57, 126.58, 125.93, 125.27, 124.68.
【0078】
(4)5-ペンタフルオロフェニル−11-フェニルテトラセンの合成
シュレンク中、5−ブロモ−11−フェニルテトラセン 382mg(1.0mmol)、酢酸パラジウム(II)44mg(0.2mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル 156mg(0.4mmol)、炭酸カリウム487mg(3.5mmol)をペンタフルオロベンゼンの1M酢酸イソプロピル溶液4.5mL(4.5mmol)に加え、窒素気流下、80℃で43時間撹拌した。室温に戻した後、クロロホルムを溶媒として溶液をシリカゲルを通して濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した.得られた固体をヘキサン:クロロホルム=1:1を展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製を行い溶媒を除去したところ、目的物である5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセンの橙色固体を366mg(0.78mmol;収率78%)得た。
【0079】
【化26】

【0080】
得られたPhF5PhTetraの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2):δ8.54 (s, 1H, ArH), 8.22 (s, 1H, ArH), 7.92-7.89 (m, 2H, ArH), 7.69-7.62 (m, 4H, ArH), 7.55-7.53 (m, 2H, ArH), 7.50-7.49 (m, 1H ArH), 7.43-7.37 (m, 3H, ArH), 7.32-7.29 (m, 1H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ138.57, 138.01, 131.97, 131.42, 130.7.2, 130.32, 129.73, 129.61, 129.12, 128.89, 128.70, 128.56, 127.83, 127.20, 126.81, 125.66, 125.61, 124.89, 124.36, 123.21.
Anal. Calcd for C30H15F5: C, 76.59; H, 3.21. Found: C, 76.46; H, 3.61.
【0081】
[合成例2:5,11−ジチエニルテトラセンの合成及び5−チエニル−11−トリフルオロチエニルテトラセンの合成例]
(1)5-ブロモ-11-チエニルテトラセンの合成
100mLの二口フラスコ中,5,11−ジブロモテトラセン 500mg(1.30mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液 38mLにトリブチル(2−チエニル)すず 591mg(1.58mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 45mg(0.04mmol)、ヨウ化銅(I) 7mg(0.04mmol)を加え、80℃で22時間撹拌した。反応溶液にフッ化カリウム水溶液を加え、沈殿を除去し、分液漏斗を用いて水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。得られた固体をクロロホルム:ヘキサン=1:9を展開溶媒に用い,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製後、クロロホルムを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィーによりさらに精製し、目的物である5−ブロモ−11−チエニルテトラセンを175mg(045mmol;収率34%)得た。
【0082】
【化27】

【0083】
得られた5−ブロモ−11−チエニルテトラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.32 (s, 1H, ArH), 8.52 (s, 1H, ArH), 8.48 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH), 8.13 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.87-7.82 (m, 2H, ArH), 7.69 (d, J = 5.5 Hz, 1H, ArH), 7.55-7.52 (m, 1H, ArH), 7.49-7.45 (m, 1H, ArH), 7.41-7.37 (m, 4H, ArH).
【0084】
(2)5,11−ジチエニルテトラセンの合成
(1)の副生成物として5,11−ジチエニルテトラセンを57mg(0.15mmol;収率11%)で得た。
【0085】
【化28】

【0086】
得られた5,11−ジチエニルテトラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.59 (s, 2H, ArH), 7.90-7.85 (m, 4H, ArH), 7.71-7.69 (m, 2H, ArH), 7.40-7.38 (m, 2H, ArH), 7.36-7.34 (m, 4H, ArH), 7.31-7.29 (m, 2H, ArH).
【0087】
(3)5−チエニル−11−トリフルオロチエニルテトラセンの合成
20mLの二口フラスコ中、5−ブロモ−11−チエニルテトラセン 878mg(0.22mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液1mLにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 13mg(0.01mmol)、ヨウ化銅(I) 2mg(0.01mmol)を加え、80℃で50時間撹拌した。室温に戻した後、反応溶液にフッ化カリウム水溶液を加え、沈殿を除去し、分液漏斗を用いて水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去した。クロロホルムを溶媒としてシリカゲルを通して濾過し、溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィーにより精製し、目的物である5−チエニル−11−トリフルオロチエニルテトラセンを26mg(0.06mmol;収率25%)で得た。
【0088】
【化29】

【0089】
得られた5−チエニル−11−トリフルオロチエニルテトラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.65 (s, 1H, ArH), 8.58 (s, 1H, ArH), 7.97-7.88 (m, 3H, ArH), 7.84-7.81 (m, 1H, ArH), 7.72-7.69 (m, 1H, ArH), 7.44-7.35 (m, 6H, ArH).
【0090】
[合成例3:9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの合成例]
(1)9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの合成
30mLの二口フラスコ中、9−フェニルアントラセン 804mg(3.1mmol)を四塩化炭素13mLに溶かし、臭素500mg(3.1mmol)の四塩化炭素溶液(1.7mL)を滴下し、大気下室温、1時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させた後、溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をクロロホルムで洗い、合わせた有機層を水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行うことで目的物である9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの白色固体を770mg(2.31mmol;収率74%)得た。
【0091】
【化30】

【0092】
得られた9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.61 (dd, J = 0.9 Hz, 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.65 (dd, J = 0.9 Hz, 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.61-7.54 (m, 5H, ArH), 7.41-7.36 (m, 4H, ArH).
【0093】
(2)9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの合成
シュレンク中、9−ブロモ−10−フェニルアントラセン 103mg(0.3mmol)、酢酸パラジウム(II)14mg(1.1mmol)をペンタフルオロベンゼンの2.2M酢酸イソプロピル溶液1.4mL(3.1mmol)に加え、窒素気流下80℃で、46時間撹拌した。室温に戻した後、溶液を純水で洗い、水層を酢酸エチルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた固体をクロロホルム:ヘキサン=1:10を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの白色固体100.6mg(0.24mmol;収率77%)得た。
【0094】
【化31】

【0095】
得られたPhF5PhAnthraの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.74 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.64-7.55 (m, 5H, ArH), 7.50-7.45 (m, 4H, ArH), 7.40-7.37 (m, 2H, ArH).
【0096】
[合成例4:2,6−ジチエニル−9−ペンタフルオロ−10フェニルアントラセン(略称:PhF5PhAnthra-Th2)の合成例]
(1)2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオールの合成
100mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモアントラキノン 800mg(2.2mmol)のTHF懸濁液(35mL)にペンタフルオロマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液7.0mL(0.5M、3.5mmol)を加え室温で20時間撹拌した。その後、フェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液5.6mL(1.35M,7.4mmol)を加え、7時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させた後、ジエチルエーテルで希釈した反応溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をジエチルエーテルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオールの白色固体を595mg(0.97mmol;収率44%)得た。
【0097】
【化32】

【0098】
得られた2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−フェニルアントラセン−9,10−ジオールの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.65 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.45-7.41 (m, 5H, ArH), 7.40-7.38 (m, 3H, ArH), 7.30-7.29 (m, 2H, ArH), 3.10 (s, 1H, OH), 2.79 (s, 1H, OH).
【0099】
(2)2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの合成
50mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオール 506mg(0.83mmol)のジエチルエーテル溶液(10mL)に濃度57%のヨウ化水素水溶液17mLを加え、室温で30分間撹拌した。二亜硫酸ナトリウム水溶液で反応を停止させた後、溶液を純水で洗い、水層をジエチルエーテルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水および水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの白色固体を454mg(0.79mmol;収率95%)得た。
【0100】
【化33】

【0101】
得られた2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.87 (s, 1H, ArH), 7.66-7.58 (m, 5H, ArH), 7.53-7.51 (m, 1H, ArH), 7.45-7.40 (m, 4H, ArH).
【0102】
(3)2,6−ジチエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン(PhF5PhAnthra-Th2)の合成
10mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 116mg(0.20mmol)のジメチルホルムアミド溶液(1mL)にトリブチル(2−チエニル)すず 170mg(0.46mmol)とビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド 4mg(6μmol)を加え、130℃で30分間撹拌した。反応溶液をトルエンで希釈し、純水で洗い、水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジチエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンを101mg(収率86%)得た。
【0103】
【化34】

【0104】
得られたPhF5PhAnthra-Th2の同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2):δ7.91 (s, 1H, ArH), 7.77-7.75 (m, 2H, ArH), 7.71-7.63 (m, 5H, ArH), 7.78-7.53 (m, 3H, ArH), 7.39-7.39 (m, 1H, ArH), 7.35-7.34 (m, 1H, ArH), 7.31-7.29 (m, 2H, ArH), 7.12-7.10 (m, 1H, ArH), 7.07-7.05 (m, 1H, ArH).
【0105】
[合成例5:ポリ−(2,6−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン)(略称:Poly-(PhF5PhAnthra-Th2))の合成例]
20mLの二口フラスコ中、2,6−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 20mg(0.03mmol)のクロロホルム溶液3mLに塩化鉄(III) 25mg(0.15mmol)のクロロホルム懸濁液3mLを滴下し、室温で1時間撹拌した。反応溶液をメタノールに注ぎ、得られた沈殿を濾別した後、クロロホルムに溶かし、アンモニア水及びエチレンジアミン四酢酸水溶液で洗った。有機層を濃縮した後メタノールで再沈殿を行い,目的物であるポリ−(2,6−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル10−フェニルアントラセン)の橙色固体を13mg(収率65%)得た。
【0106】
【化35】

【0107】
[合成例6:ポリ−(2−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン)(略称:Poly-(PhF5PhAnthra-Th))の合成]
シュレンク中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 289mg(0.50mmol)、2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン 206mg(0.50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 25mg(21.6μmol)を凍結脱気したトルエン(17mL)とジメチルホルムアミド(6mL)に溶かし、120℃で66時間撹拌した。室温に戻した後、溶液をメタノールに拡散させ沈殿を濾別し、クロロホルムに溶かしてセライトを通して濾過した。溶液を濃縮しヘキサンで再沈させ、目的物であるポリ−(2−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン)を221mg(収率88%)得た。
【0108】
【化36】

【0109】
得られたポリ−(2−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン)の同定データを以下に示す。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.93-7.90 (br, 41H), 7.77 (br, 65H), 7.69 (br, 242H), 7.55 (br, 131H), 7.34-7.28 (br, 63H), 7.18-7.16 (br, 30H), 3.21-3.19 (br, 18H).
【0110】
2.固体状態の構造
5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)の単結晶X線結晶構造解析を行った。パッキング構造のORTEP図(50% probability for thermal ellipsoids)を、図1に示す。図1(a)はfront viewであり、図1(b)はside viewである。
図1(a)及び(b)から、PhF5PhTetraの単結晶は、電荷輸送性ユニットであるテトラセン骨格に導入したフェニル基とペンタフルオロフェニル基の静電的相互作用により分子のパッキング構造が制御され、テトラセンユニットがパイパイスタックする構造になっていることが理解できる。この解析から、高い電荷移動度が期待される。
【0111】
3.PhF5PhTetraの時間分解マイクロ波伝導度測定
微結晶PhF5PhTetraと微結晶ルブレンの波長355nmにおける時間分解マイクロ波伝導度を測定した。結果を図2(a)に示す。また、測定結果から、PhF5PhTetraとルブレンの波長355nmにおける最大光伝導度を算出し、図2(b)に示した。図2(a)及び(b)に示す結果から、本発明に係る式(I)の化合物は、ルブレンと同程度の光電導度を示すことが理解できる。
【0112】
4.有機薄膜電界効果型トランジスタの評価
図3に模式図として示した有機薄膜電解効果型トランジスタを作製し、性能を評価した。図3に示すトランジスタは、ボトムゲート・トップコンタクトの構成である。基板としては、OTS処理された、又は未処理のSiO2基板を用いた。該基板上に、5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)又は5,11-ジフェニルテトラセン(略称:PhPhTetra)をそれぞれ、蒸着速度0.5Å/sで室温で蒸着して、薄膜をそれぞれ形成した。それぞれのサンプルについて、トランジスタ特性を測定した。なお、測定は、不活性雰囲気下(酸素濃度0.1ppm未満)で行った。結果を図4のグラフ及び下記表にまとめた。なお、図4は、PhF5PhTetraの結果を示すグラフである。
【0113】
【表1】

*1 蒸着時の基板温度
*2 移動度
*3 電流オンオフ比
*4 閾値電圧
【0114】
上記結果から、本発明の式(I)で表される化合物であるPhF5PhTetra及びPhPhTetraの薄膜は、いずれも電荷輸送能を示すことが理解できる。特に、PhF5PhTetraは、高い移動度を示し、電荷輸送能に優れていることが理解できる。
【0115】
5.有機薄膜太陽電池の性能評価
図5に模式図として示した有機薄膜太陽電池を作製し、性能を評価した。ITO電極上に、PEDOT:PSSからなる正孔注入層、MoO3からなる陽極バッファ層(10 nm)、PhF5PhTetraからなるp層(30nm)、C60からなるn層(30nm)、NBphenからなる緩衝層(7nm)、及びAl電極をこの順で積層して、有機薄膜太陽電池のサンプルを作製した。なお、焼成処理はITO/PEDOT:PSS/MoO3/PhF5PhTetra/C60(電極蒸着前)まで作製した素子で行った。性能結果を図6のグラフ及び下記表に示す。
【0116】
【表2】

*1 短絡電流密度
*2 開放電圧
*3 曲線因子
*4 直列抵抗
【0117】
図5に示す結果、及び上記表に示す結果から、本発明の式(I)の化合物からなるp層を有する、有機薄膜太陽電池は、光電変換により良好な太陽電池特性を示すことが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料:
【化1】

式中、Ar1及びAr2はそれぞれ、5員又は6員の芳香族環を表し;R0はそれぞれ水素原子又は非芳香族性置換基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく;R1及びR2はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(I)又は(II)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(I)及び(II)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、Ar1及びAr2が5員環である場合は0〜3の整数であり、Ar1及びAr2が6員環である場合は0〜4の整数であり、m1及びn1が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;m2及びn2はそれぞれ0〜4の整数であり、m2及びn2が2以上のとき、2以上のR3及びR4はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく;pは0又は1を表す。
【請求項2】
前記式(I)及び(II)中のpが0であり、下記式(Ia)及び(IIa)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する請求項1に記載の電荷輸送性材料:
【化2】

式中の記号の意義は、前記式(I)及び(II)中のそれぞれと同義である。
【請求項3】
式(I)で表される化合物が、下記式(Ia-1)で表される化合物である請求項1又は2に記載の電荷輸送材料:
【化3】

式中の記号の意義は、前記式(I)中のそれぞれと同義である。
【請求項4】
1及びR2がそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項5】
1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つの、フッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す請求項1〜4のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項6】
1が、無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す請求項1〜5のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項7】
1及びR2がそれぞれ、無置換のフェニル基、無置換のチエニル基、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項8】
1が無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R2がパーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項9】
3及びR4の少なくとも1つが、チエニル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項10】
3及びR4の少なくとも一つが、式(I)又は(II)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項11】
式(I)及び(II)中の全てのR0が水素原子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項12】
1及びL2の双方が単結合である請求項1〜11のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料からなる薄膜。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料を含有する有機電子デバイス。
【請求項15】
有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ又は有機太陽電池である請求項14に記載の有機電子デバイス。
【請求項16】
下記式(Ib)で表されるパイ電子系化合物:
【化4】

式中、R11及びR1はそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(Ib)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m1及びn1はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【請求項17】
下記式(IIb)で表されるパイ電子系化合物:
【化5】

式中、R21は無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R22は少なくとも1つのフッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し、;L1及びL2はそれぞれ、単結合、又は2価の連結基を表し;R3及びR4はそれぞれ置換基を表すが、可能であれば互いに結合して、環を形成していてもよく、またR3及びR4の少なくとも1つが式(Ib)で表される残基を1以上含んでいてもよく、即ち式(IIb)の化合物はそれぞれ多量体であってもよく;m2及びn2はそれぞれ、0〜4の整数を表す。
【請求項18】
11及びR21がそれぞれ、無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R12及びR22がそれぞれ、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表す請求項16又は17に記載の化合物。
【請求項19】
11及びR21がそれぞれ、無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R12及びR22がそれぞれ、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項16又は17に記載の化合物。
【請求項20】
3及びR4の少なくとも1つがチエニル基であることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
3及びR4の少なくとも一つが、式(Ib)又は(IIb)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である請求項16〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
1及びL2の双方が単結合である請求項16〜21のいずれか1項に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187893(P2011−187893A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54572(P2010−54572)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】