説明

電荷輸送膜及び有機電界発光素子

【課題】長寿命な有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】有機電界発光素子に、架橋性ポリマーを含有する電荷輸送膜であって、該架橋性ポリマーは、25℃、測定周波数100Hz及び測定交流電圧250mVで下記測定用素子を用いて測定される比誘電率が3.3以上6.3以下であることを特徴とする、電荷輸送膜を備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋性ポリマーを含有する電荷輸送膜に関し、特に有機電界発光素子の正孔輸送膜として使用される電荷輸送膜、並びに、それを用いた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
コダック社による真空蒸着法を用いた積層型の有機電界発光素子の発表以来、有機ELディスプレイの開発が盛んに行なわれ、現在実用化されつつある。
このような積層型有機電界発光素子では、陽極と陰極との間に複数の有機層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層等)が積層して設けられる。これらの有機層の形成は、多くの場合、低分子系色素等の有機層の材料を真空蒸着することにより行なわれている。しかし、真空蒸着法では均質で欠陥がない薄膜を得ることは困難であり、且つ、数層もの有機層を形成するには長時間を要するため、素子の製造効率の面でも課題があった。
【0003】
これに対して、積層型有機電界発光素子の複数の有機層を湿式成膜法によって形成する技術が報告されている。例えば、特許文献1では、架橋基を有する化合物を含有する組成物を塗布して光や熱で架橋させることにより得られる架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜および発光層を有する有機電界発光素子が記載されている。架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜を用いると、該電荷輸送膜の上層に湿式成膜法で他の層を容易に形成することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−114987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の従来の架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜を有する有機電界発光素子では、十分な寿命が得られていなかった。
本発明では、架橋性ポリマーを含む電荷輸送膜を有する有機電界発光素子において、長寿命な有機電界発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、高ければ高いほど良いと考えられていた電荷輸送膜の比誘電率の範囲を、ある一定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることがわかり、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、架橋性ポリマーを含有する電荷輸送膜であって、該架橋性ポリマーは、25℃、測定周波数100Hz及び測定交流電圧250mVで下記測定用素子を用いて測定される比誘電率が3.3以上6.3以下であることを特徴とする、電荷輸送膜に存する(請求項1)。
【0008】
[測定用素子]
ITOからなる厚さ100nm以上200nm以下のITO層上に、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子(重量平均分子量:10,000以上50,000以下、重量平均分子量/数平均分子量:1以上3以下)2.0重量%、及び、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を含む安息香酸エチル溶液を成膜し、大気中230℃で3時間ベークしてなる厚さ30nmの層を備えた測定用陽極と、前記測定用陽極上に形成された、前記架橋性ポリマーからなる厚さ100nm以上200nm以下のサンプル層と、前記サンプル層上に形成された、Alからなる厚さ80nmの測定用陰極とを備えた測定用素子。
【化1】

【0009】
このとき、前記測定用素子で測定される電流変異点が、1050kV/cm以上であることが好ましい(請求項2)。
【0010】
本発明の別の要旨は、陽極、陰極、並びに、該陽極と該陰極との間に設けられた本発明の電荷輸送膜を備えることを特徴とする、有機電界発光素子に存する(請求項3)。
このとき、該電荷輸送膜が正孔輸送層であることが好ましい(請求項4)。
【0011】
本発明の別の要旨は、上記の有機電界発光素子を用いることを特徴とする、有機ELディスプレイに存する(請求項5)。
【0012】
本発明の別の要旨は、上記の本発明の電荷輸送膜に含有される架橋性ポリマーを形成することを特徴とする、架橋基を有する化合物に存する(請求項6)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長寿命な有機電界発光素子を実現できる電荷輸送膜、及び、長寿命な有機電界発光素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0015】
[1.電荷輸送膜]
電荷輸送膜とは、正孔、電子等の電荷が外部から印加されるか膜内部において発生した場合に、当該電荷を輸送する性質を有する膜のことをいう。本発明の電荷輸送膜は、所定の電荷輸送膜用組成物を用いて形成されるものであって、少なくとも架橋性ポリマーを含有するものである。
【0016】
[1−1.架橋性ポリマー]
本発明に係る架橋性ポリマーとは、架橋基を有する化合物を架橋させて得られるポリマーをいう。すなわち、架橋基を有する少なくとも一種のモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーをその架橋基により連結したポリマーのことをいう。架橋基を有する化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。
【0017】
架橋基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル由来の基;ビニル基、トリフルオロビニル基等の置換基を有していてもよいビニル基;スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合を有する基;ベンゾシクロブテン環由来の基などが挙げられる。なお、架橋基を有する化合物は、上記の架橋基を、1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
【0018】
架橋基を有する化合物は、通常、電荷輸送性の化合物である。架橋基を有する化合物が有する架橋基の数に特に制限はないが、単位電荷輸送ユニットあたり通常2.0未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下となる数が好ましい。架橋性ポリマーの比誘電率を好適な範囲に納めるためである。また、架橋基の数が多すぎると、反応活性種が発生し、他の材料に悪影響を与える可能性があるためである。
ここで、単位電荷輸送ユニットとは、架橋基を有する化合物がモノマーの場合、モノマーそのものであり、架橋基をのぞいた骨格(主骨格)のことを示す。架橋基を有する化合物がオリゴマーやポリマーの場合、有機化学的に共役がとぎれる構造の繰り返しの場合は、その繰り返しの構造を単位電荷輸送ユニットとする。また、広く共役が連なっている構造の場合には、電荷輸送性を示す最小繰り返し構造、乃至はモノマー構造を示す。単位電荷輸送ユニットとしては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ペリレン、フルオレン、トリフェニレン、カルバゾール、トリアリールアミン、テトラアリールベンジジン、1,4−ビス(ジアリールアミノ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0019】
架橋基を有する化合物がポリマーの場合(分子量分布を有する化合物である場合)、その重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。
ここでいう重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量が算出される。
【0020】
架橋基を有する化合物がモノマーの場合(単一の分子量で特定される化合物である場合)、その分子量は、通常5000以下、好ましくは2500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。
【0021】
さらに、架橋基を有する化合物としては、正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体などのアリールアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体などのアリールアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体などのアリールアミン誘導体がより好ましい。
なお、ここで「誘導体」とは当該用語を付された化合物を排除するものではなく、例えば「トリフェニルアミン誘導体」は、トリフェニルアミンと、トリフェニルアミンから誘導して得られる化合物との両方を含むものとする。
【0022】
アリールアミン誘導体は、下記式(A)で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。特に、下記式(A)からなる繰り返し単位を有する重合体であることが好ましく、その場合、Ar1とAr2とがそれぞれ各繰り返し単位で異なるものであってもよい。
【化2】

(上記式中、Ar1及びAr2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【0023】
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの、6員環の単環または2〜5縮合環由来の基が挙げられる。
【0024】
置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の基が挙げられる。
【0025】
溶解性、耐熱性の点から、ArおよびArは、各々独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、ピリジン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の基やベンゼン環が2環以上連結してなる基(例えば、ビフェニル基やターフェニル基)が好ましい。
【0026】
中でも、ベンゼン環由来の基(フェニル基)、ベンゼン環が2環連結してなる基(ビフェニル基)およびフルオレン環由来の基(フルオレニル基)が好ましい。
【0027】
特に、式(A)で表される繰り返し単位を有する化合物は、側鎖のArがフェニル基のような単環の場合は、その架橋基の数が単位電荷輸送ユニットあたり0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
【0028】
ArおよびArはその置換基として、前述した架橋基を有することが好ましい。置換基として架橋基を有する場合は、架橋基はアルキレン基等の連結基を介して、ArまたはArに結合していてもよい。
ArおよびArが有していてもよい置換基としては、特に制限はないが、例えば、下記置換基群Zから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0029】
[置換基群Z]
メチル基、エチル基等の炭素数が好ましくは1以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルキル基;
ビニル基等の炭素数が好ましくは2以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルケニル基;
エチニル基等の炭素数が好ましくは2以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基等の炭素数が好ましくは1以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルコキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の炭素数が好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは炭素数24以下のアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数が好ましくは2以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルコキシカルボニル基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数が好ましくは2以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;
ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の炭素数が好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、また好ましは36以下、さらに好ましくは24以下のジアリールアミノ基;
フェニルメチルアミノ基等の炭素数が好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、また、好ましくは36以下、さらに好ましくは炭素数24以下のアリールアルキルアミノ基;
アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数が好ましくは2以上、また、好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアシル基;
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;
トリフルオロメチル基等の炭素数が好ましくは1以上、また好ましくは12以下、さらに好ましくは6以下のハロアルキル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数が好ましくは1以上、また好ましくは24以下、さらに好ましくは12以下のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の炭素数が好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは炭素数24以下のアリールチオ基;
トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の好ましくは炭素数2以上、さらに好ましくは3以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは24以下のシリル基;
トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の炭素数が好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは24以下のシロキシ基;
シアノ基;
フェニル基、ナフチル基等の炭素数が好ましくは6以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは24以下の芳香族炭化水素環基;
チエニル基、ピリジル基等の炭素数が好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上、また好ましくは36以下、さらに好ましくは24以下の芳香族複素環基;等が挙げられる。
上記各置換基は、さらに置換基を有していてもよく、その例としては前記置換基群Zに例示した基が挙げられる。
【0030】
ArおよびArの置換基の分子量としては、さらに置換した基を含めて500以下が好ましく、250以下がさらに好ましい。
溶解性の点から、ArおよびArが有していてもよい置換基としては、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数1〜12のアルコキシ基が好ましい。
【0031】
架橋基を有する化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
また、電荷輸送膜中には、架橋性ポリマーが1種のみ含まれていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含まれていてもよい。その場合、2種以上の少なくとも1種の架橋性ポリマーの誘電率が3.3以上6.3以下であることが好ましく、電荷輸送膜中に含まれる全ての架橋性ポリマーの誘電率が3.3以上6.3以下であることが特に好ましい。
【0035】
〔架橋性ポリマーの物性〕
〔比誘電率〕
本発明に係る架橋性ポリマーは、室温25℃、測定周波数100Hz及び測定交流電圧250mVで下記測定用素子を用いて測定される比誘電率が、3.3以上であり、また、6.3以下、好ましくは4.0以下である。比誘電率が上記範囲となることにより、本発明の電荷輸送膜を用いた有機電界発光素子の長寿命化が可能となる。
【0036】
測定用素子としては、ITO(即ち、インジウム・スズ酸化物)からなる厚さ100nm以上200nm以下のITO層上に、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子(重量平均分子量:10,000以上50,000以下、重量平均分子量/数平均分子量:1以上3以下)2.0重量%、及び、下記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を含む安息香酸エチル溶液を成膜し、大気中230℃で3時間ベークしてなる厚さ30nmの層を備えた測定用陽極と、前記測定用陽極上に形成された、本発明に係る架橋性ポリマーからなる厚さ100nm以上200nm以下のサンプル層と、前記サンプル層上に形成された、Alからなる厚さ80nmの測定用陰極とを備えたものを用いる。
【化6】

【0037】
具体的な測定方法としては、以下のように行なえばよい。なお、図1に、測定用素子の層構成を模式的に示す。
図1に示すように、ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を100nm以上200nm以下の厚さに堆積したもの(例えば、三容真空社製、スパッタ成膜品。寸法250mm×375mm)を用意する。これに、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングしてITO層2を形成する。こうしてパターンを形成されたITO層を有する基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行う。
【0038】
次に、上記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子(重量平均分子量10,000以上50,000以下、重量平均分子量/数平均分子量:1以上3以下)2.0重量%、及び、上記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を含む安息香酸エチル溶液を調製する。そして、この安息香酸エチル溶液を、下記表1に示す成膜条件でスピンコート法により成膜し、膜厚30nmの高分子層3を形成する。これにより、ITO層2と高分子層3とから測定用陽極4が構成される。
【表1】

【0039】
その後、当該測定用陽極4上に、本発明に係る架橋性ポリマーを形成する架橋基を有する化合物を用いてサンプル層5を形成する。サンプル層5は、該架橋基を有する化合物を溶媒に溶解または分散させて塗布液を調製し、これを当該測定用陽極4上にスピンコートにて成膜する。該溶媒は、架橋基を有する化合物に併せて適宜選択でき、以下に詳述する電荷輸送膜用組成物に含有される溶媒として例示したものが挙げられる。スピンコートの条件は、スピナ回転数150〜1500rpm、スピナ回転時間30秒、窒素雰囲気であることが好ましい。成膜後、加熱して溶媒を除去する。また、この加熱と同時または別に加熱することにより、架橋基を有する化合物の架橋反応をさせるか、或いは、加熱と同時または別に光等の電磁エネルギーを照射することにより架橋反応をさせる。これにより、架橋性ポリマーからなるサンプル層を得る。該加熱後または、該照射後のサンプル層の膜厚は100nm以上200nm以下となるようにする。
【0040】
サンプル層5を形成した素子を、例えばグローブボックスに連結されたマルチチャンバー型真空蒸着装置内に大気に曝すことなく搬入し、油回転ポンプ等により装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が9.9×10−4Pa以下になるまでクライオポンプ等を用いて排気する。次に、金属蒸着チャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、ITO層2のストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置する。そして、装置内の真空度が9.9×10−4Pa以下になるまで排気する。その後、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.2〜16.0Å/秒、真空度2.0〜250×10−5Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成し、これを測定用陰極6とする。なお、測定用陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持する。以上のようにして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有するサンプルとして、本発明に係る架橋性ポリマーの比誘電率の測定に用いる測定用素子が得られる。
【0041】
こうして得られた測定用素子をそのまま用いて比誘電率を測定してもよいが、測定用素子の作製から比誘電率の測定までの間に時間を要する場合には、測定用素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行うことが好ましい。
作製した測定用素子を、大気に曝すことなく、窒素グローブボックスに搬入する。一方、窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(例えば、株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(例えば、ダイニック株式会社製)を設置する。この上に、測定用素子を、測定用陰極が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせる。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させる。
【0042】
上記のようにして得られた測定用素子の電極4,6に、室温25℃の条件で、測定周波数100Hz、測定交流電圧250mVの電圧を印加し、測定用素子について静電容量を計測する。この際、一回あたりの測定速度を480ミリ秒に設定し、等価回路には並列等価回路を選択し、例えば、1秒に1点測定値を取得する方法で30分間測定した後、その平均値をサンプル層5を形成する架橋性ポリマーの静電容量とする。そして、計測された静電容量から、以下の関係式(1)により比誘電率を算出することにより、比誘電率の測定を行なう。
【数1】

(関係式(1)において、Cは計測された静電容量を表わし、dはサンプル層の膜厚を表わし、Sは面積(パターニングされたITO層2とアルミニウム(測定用陰極6)とが交差してできる面の面積)を表わし、εは比誘電率を表わし、εは真空中の誘電率を表わす。)
【0043】
前記の静電容量の計測には、株式会社エヌエフ回路設計ブロック社製ZM2353型LCRメーターを用い、2335AL型テストフィクスチャ(2個のクリップで4端子接続ができるケルビンクリップ)を用いることができるが、同等の計測ができる装置であればいずれを用いてもよい。計測の際は、作製した測定用素子のITO層2からコンタクトプローブを用いて電極を取り出し、前述のクリップで挟んで測定すればよい。
【0044】
ここで、本発明に係る架橋性ポリマーの比誘電率を測定する上で、上記のような測定方法を用いた理由は、以下のとおりである。
本発明の電荷輸送膜は、その使用時に他の有機層と積層されて使用されることが多い。例えば本発明の電荷輸送膜を有機電界発光素子の構成要素として使用する場合には、通常、正孔注入層などの有機層と積層して使用される。このように有機層と積層した場合にその比誘電率を測定すると、測定される比誘電率は、架橋性ポリマー単独の比誘電率と必ずしも一致しない。したがって、本発明に特有の効果を奏する架橋性ポリマーの比誘電率を測定する場合には、所定の有機層と積層された状態での比誘電率を測定することが適切である。そこで、本発明においては、測定用陽極4として、ITO層2に所定の高分子層3を積層したものを用いているのである。
【0045】
比誘電率は、直流駆動のようなデバイスの場合、その応答性を無視すれば、以下の3種の分極により主に影響を受ける。
(1)電子分極(主に電子雲の電場の変化に追随して変化する:分子分極率)
(2)変形分極(原子核の位置が電場の変化に追随して変化する:分子振動)
(3)配向分極(分子の持つ永久双極子により配向の変化が起こることで生ずる:分子回転)
【0046】
したがって、架橋性ポリマーを構成する電荷輸送ユニット自身やそれに置換する基の位置の非対称化[主に(3)に影響]、架橋性ポリマーへの孤立電子対を持つヘテロ原子の導入[主に(1)に影響]、架橋性ポリマーにおける自由度の高い置換基や分子の設計[主に(2)に影響]、架橋基を有する化合物を塗布した際に電荷輸送ユニットが配向しやすい分子構造や溶媒の選出[主に(1)に影響]などの工夫により、本発明に係る架橋性ポリマーの比誘電率を高めることができる。
【0047】
さらに、架橋基を有する化合物の電荷輸送ユニットあたりの架橋基の数の調整も比誘電率と密接な関係がある。したがって、架橋基の種類によるが、前述の通り、電荷輸送ユニットあたりの架橋基の数を2.0未満にすることにより、本発明の比誘電率の範囲とすることができる。
また、架橋性ポリマーの共役長や立体障害を制御して、適度な平面性をポリマーに持たせることにより、比誘電率を高めることができる。このように、架橋性ポリマーすなわち架橋基を有する化合物の設計及び選択により、本発明の比誘電率の範囲を有する架橋性ポリマーを得ることができる。
【0048】
また、架橋性ポリマーの主鎖に置換する基の位置や種類の調整も,比誘電率に影響を与えやすい電子雲の広がりなどに影響を与えるため、本発明の比誘電率の範囲とするために有効である。例えば、トリアリールアミン誘導体等のアミン系化合物において、架橋基を導入する際、アミンを規準にしてメタ位に導入すると、目的とする比誘電率の範囲に収まりやすい。
【0049】
本発明はまた、上記比誘電率を満たす架橋性ポリマーを形成する架橋基を有する化合物に関する。このような架橋基を有する化合物は、上記電荷輸送膜用組成物に含有される架橋基を有する化合物として詳述したものと同様であり、また、架橋性ポリマーを形成した後に、上記比誘電率を満たすものである。
【0050】
〔電流変異点〕
本発明に係る架橋性ポリマーは、前記の測定用素子で測定される電流変異点が、1050kV/cm以上が好ましく、また、通常2500kV/cm以下が好ましく、2000kV/cm以下がより好ましい。電流変異点が低すぎると本発明の電荷輸送膜が電荷によって容易に破壊されて劣化する可能性があり、電流変異点が高すぎると絶縁性を生じることがあり、電荷輸送性が下がる場合がある。
【0051】
前記の電流変異点とは、サンプルに対して正孔又は電子のみ、或いはその両方を注入した場合において、それらを印加するに用いた電圧に対して検出される電流密度の値の最初の極大値、乃至は急激に電流値が増大または下降する点における電圧の値の絶対値をkV単位に変換し、サンプルの膜厚(cm)で割った値のことをいう。ただし、低電位において起こる電荷の印加に伴う微少なノイズや、乱高下が起こる現象の場合は、電流変異点とはみなさない。
【0052】
本発明に係る架橋性ポリマーの電流変異点の測定方法は、以下のとおりである。
サンプルとして、比誘電率の測定方法で用いたものと同様の測定用素子を用意する。また、電荷の印加のために使用する電圧の発生及びそれに伴う電流値の検出については、Keithley社製2400型ソースメーターを使用することが好ましいが、同等の装置であってもよい。そして、測定用素子の電荷を注入したい電極に、ソースメーターの出力側の電極をつなぎ、電圧を変化させたときの電流の値を読み取る。電圧は、2秒に0.1V上昇させる。電圧を上昇させ続ける事により、ある電圧において電流値が明らかに下降または急上昇の挙動を示すので、そのときの電圧の値の絶対値をkVの単位に変換し、膜厚(cm)で割ることにより、電流変異点を求める。
【0053】
電流変異点は、架橋性ポリマー中を電荷が流れた時に、その電荷量に対して架橋性ポリマーが耐えきれず、その架橋性ポリマーとしての性質が破壊される現象の方が優位な状態に成った点である。そのため、発生するラジカルイオン種の自己分解を防ぐ事が、電流変異点を高める一つの方法である。例えば、ラジカルカチオン種を発生する架橋性ポリマーの場合、架橋性ポリマーの分子構造において、トリアリールメチル位及び/又はベンジル位に、水素を結合させたりカルボニル基を結合させたりしないようにすることで、電荷輸送ユニットに自身の壊変により安定ラジカルまたはイオン種が発生することを防ぎ、電流変異点を高めることができる。これは、水素を結合させた場合にはプロトンの放出により安定ラジカルを発生する可能性があること、及び、カルボニル基を結合させた場合には結合切断により安定カチオン種(トリチルカチオンなど)を発生するため比較的容易に切断されることなどに対応したものである。これは、後述する実施例を参照すると、pk−H1やpk−H3がpk−H2に比べて電流変異点が小さいことからも推定される(ベンジル位水素の除去)。
また、架橋性ポリマー自身のガラス転移点Tgを高めることも、電流変異点を高める一つの方法と考えられる。これは、結晶化が起こった場合、電流はその温度で急激に上昇し、架橋性ポリマーとしての性質を失う可能性があるためである。
【0054】
[1−2.電荷輸送膜の膜厚]
本発明の電荷輸送膜の寸法に制限はないが、その膜厚は、通常100nm以上、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上であり、また、通常200nm以下、好ましくは180nm以下、より好ましくは150nm以下である。膜厚が薄すぎると電荷輸送膜に対して電極の特性が影響する可能性があり、厚すぎると膜質が悪くなる可能性がある。
【0055】
[1−3.電荷輸送膜の製造方法]
本発明の電荷輸送膜の製造方法に制限はないが、通常は、架橋性ポリマーを形成する架橋基を有する化合物(架橋基を有する、モノマー、オリゴマー及び/又はポリマー)、並びに、必要に応じて用いられるそれ以外の成分を含む組成物(以下適宜、「電荷輸送膜用組成物」という)を調製し、この電荷輸送膜用組成物を成膜した後、架橋基を有する化合物を架橋させて架橋性ポリマーを形成することで、電荷輸送膜を製造する。また、電荷輸送膜用組成物には通常は適切な溶媒を含有させ、架橋基を有する化合物、並びに、それ以外の成分を溶解又は分散させるようにする。
【0056】
電荷輸送膜用組成物に含有させる架橋基を有する化合物は、前記の説明のとおりである。また、これらの架橋基を有する化合物、並びに、それ以外の成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
電荷輸送膜用組成物において、架橋基を有する化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。架橋基を有する化合物を2種以上組み合わせて用いる場合は、その合計量が上記範囲となるようにする。
【0058】
電荷輸送膜用組成物に含有させる溶媒は、特に制限されるものではないが、上述した架橋基を有する化合物、並びに、それ以外の成分を溶解させるものが好ましい。具体的には、溶媒は、本発明の電荷輸送膜用組成物に含まれる溶質を、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上溶解するものを用いる。
【0059】
好適な溶媒の例を挙げると、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。
なお、溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0060】
電荷輸送膜用組成物に含有される溶媒の濃度は特に制限はないが、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。溶媒が少なすぎても多すぎても膜質が悪くなる傾向がある。
【0061】
さらに、電荷輸送膜用組成物は、架橋基を有する化合物以外の成分を含んでいてもよい。その例としては、架橋反応を促進するための添加剤、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤、電子受容性化合物、バインダー樹脂、架橋基を有する化合物以外の電荷輸送性を有する化合物等が挙げられる。従って、これらの成分は、架橋性ポリマー以外の成分として電荷輸送膜中に含まれていてもよい。
架橋反応を促進するための添加剤は、電荷輸送膜の溶解性を低下させるために使用される。架橋反応が促進されることにより電荷輸送膜の溶媒に対する溶解性が低下し、当該電荷輸送膜上に他の層を塗布により形成することが可能となる。
【0062】
架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
【0063】
また、電荷輸送性を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい。その例を挙げると、有機電界発光素子で通常用いられる正孔輸送性化合物及び電子輸送性化合物などが挙げられる。
【0064】
電荷輸送膜用組成物の成膜方法としては、例えば、スピンコート法、スプレー法、インクジェット法、スクリーン法などの湿式成膜法が挙げられる。また、通常は電荷輸送膜用組成物は溶媒を含んでいるため、成膜後、必要に応じて乾燥により溶媒を除去する。乾燥の条件は任意であり、加熱乾燥、減圧乾燥などにより乾燥を行うことができる。
【0065】
上記の成膜後、光等の電磁エネルギー照射及び/又は加熱により、架橋反応を進行させる。必要に応じて乾燥により溶媒を除去してもよい。これにより、成膜された膜中の架橋基を有する化合物が架橋し、架橋性ポリマーとなることにより、当該膜を本発明の電荷輸送膜として得ることができる。得られる電荷輸送膜は架橋により溶媒に対する溶解性が低下するため、更にその上に湿式成膜法等により成膜することが可能となる。
【0066】
架橋反応を光等の電磁エネルギー照射により進行させる場合、電磁エネルギー照射の照射装置に制限はない。例えば、光の照射を用いる場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源;前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置などを用いることができる。また、光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置;電子レンジなどを用いることもできる。
電磁エネルギーの照射時間としては、電荷輸送膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常0.1秒以上、好ましくは10時間以下である。
【0067】
一方、架橋反応を加熱により進行させる場合、加熱温度に制限はないが、通常80℃以上、通常400℃以下である。また、加熱時の圧力にも制限は無く、常圧であってもよく、減圧であってもよい。加熱時間は通常1分以上、通常24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、例えば、ホットプレート上で加熱を行ったり、オーブン内で加熱を行なったりすればよい。具体例を挙げると、ホットプレート上で、温度120℃以上で、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0068】
なお、上記の加熱及び電磁エネルギー照射は、いずれか一つのみを行ってもよく、2つ以上の操作を任意に組み合わせて行なってもよい。また、組み合わせて行なう場合、それらを実施する順序は特に限定されない。
【0069】
また、上記の架橋反応は、架橋後に得られる本発明の電荷輸送膜が含有する水分、及び/又は電荷輸送膜の表面に吸着する水分の量を低減するために、水分量が少ない雰囲気で行うことが好ましく、水分を含まない雰囲気で行うことがより好ましい。また、意図しない酸化等の反応が進行することを防止する観点からは、不活性雰囲気において架橋反応を行うことが好ましく、例えば窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0070】
[2.有機電界発光素子]
本発明の有機電界発光素子は、陽極、陰極、並びに、陽極と該陰極との間に設けられた本発明の電荷輸送膜を備えるものである。以下、本発明の有機電界発光素子について、一実施形態を示して詳細に説明する。
【0071】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の層構成を模式的に示す断面図である。図2(a)に示す有機電界発光素子10は、基板11の上に、陽極12、正孔注入層13、電荷輸送膜14、発光層15、電子注入層16及び陰極17を、この順に積層することにより構成される。
【0072】
[2−1.基板]
基板11は、有機電界発光素子10の支持体となるものである。
基板11の材料は制限されないが、例としては、石英、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。これらの材料は何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0073】
基板11の形状も制限されないが、例としては、板、シート、フィルム、箔等、或いはこれらの二種以上を組み合わせた形状等が挙げられる。
中でも、基板11としては、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。
【0074】
なお、基板11の材料として合成樹脂を使用する場合には、ガスバリア性に留意することが望ましい。基板11のガスバリア性が低過ぎると、基板11を通過した外気により、有機電界発光素子1が劣化する場合がある。よって、合成樹脂からなる基板11の少なくとも片面に、緻密なシリコーン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する、等の手法を講じることが好ましい。
【0075】
基板11の厚さは制限されないが、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常50mm以下、好ましくは3mm以下の範囲が望ましい。基板11が薄過ぎると機械的強度が低くなる場合があり、厚過ぎると素子の重量が増加し過ぎる場合がある。
【0076】
なお、基板11は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0077】
[2−2.陽極]
基板11の上には、陽極12が形成される。
陽極12は、発光層15側の層(正孔注入層13又は電荷輸送膜14)への正孔注入の役割を果たすものである。
【0078】
陽極12の材料は、導電性を有する材料であれば任意であるが、例としては、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。
これらの陽極12の材料は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0079】
陽極12を形成する手法は制限されないが、通常はスパッタリング法、真空蒸着法等が用いられる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の金属ハロゲン化物の微粒子、カーボンブラック等の炭素材料の微粒子、導電性金属酸化物の微粒子、導電性高分子の微粉末等の材料を用いる場合には、これらの材料を適当なバインダー樹脂溶液に分散させ、基板11上に塗布することにより、陽極12を形成することもできる。
【0080】
更に、導電性高分子を材料として用いる場合は、電解重合により基板11上に直接、薄膜を形成したり、基板11上に導電性高分子を塗布したりする等の手法により、陽極12を形成することもできる(Applied Physics Letters,1992年,Vol.60,pp.2711参照)。
【0081】
陽極12の厚みは、陽極12に求められる透明性により異なる。
陽極12に透明性が求められる場合は、陽極12による可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極12の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲が望ましい。陽極12が薄過ぎると電気抵抗が大きくなる場合があり、厚過ぎると透明性が低下する場合がある。
【0082】
一方、陽極12が不透明でよい場合、例えば、陽極12が基板11を兼ねる場合、陽極12の厚さは基板11と同様、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、また、通常50mm以下、好ましくは30mm以下の範囲が望ましい。陽極12が薄過ぎると機械的強度が低くなる場合があり、厚過ぎると有機電界発光素子の重量が増加し過ぎる場合がある。
【0083】
なお、陽極12は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
更には、陽極12を上述の基板11と一体に形成し、陽極12が基板11を兼ねる構成としてもよい。
【0084】
なお、陽極12の形成後、陽極12に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極12表面に対して、紫外線(UV)処理、オゾン処理、プラズマ処理(例えば酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理等)等の処理を行なうことが好ましい。
【0085】
[2−3.正孔注入層]
陽極12の上には、正孔注入層13が形成される。
正孔注入層13は、陽極12から電荷輸送膜14へ正孔を輸送する層である。
正孔注入層13は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層13中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
さらに正孔注入層13は、必要に応じて、バインダー樹脂や塗布性改良剤を含んでもよい。なお、バインダー樹脂は、電荷のトラップとして作用し難いものが好ましい。
【0086】
〔正孔輸送性化合物〕
正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。ただし、湿式成膜法に用いる場合には、湿式成膜法に用いる溶媒への溶解性が高い方が好ましい。
【0087】
正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
【0088】
芳香族アミン化合物の種類は特に制限されず、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型炭化水素化合物)が好ましい。
【0089】
また、芳香族アミン化合物の中でも、特に、芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0090】
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例としては、下記式(i)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【化7】

(上記式(i)中、Ara1、Ara2は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ara3〜Ara5は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。Zは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表わす。また、Ara1〜Ara5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【化8】

(上記各式中、Ara6〜Ara16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価または2価の基を表わす。Ra1およびRa2は、各々独立して、水素原子または任意の置換基を表わす。)
【0091】
Ara1〜Ara16としては、任意の芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の1価または2価の基が適用可能である。これらの基は各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、これらの基は、更に任意の置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下が好ましい。
【0092】
Ara1、Ara2としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。
【0093】
また、Ara3〜Ara5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基がさらに好ましい。
【0094】
一般式(i)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
なお、正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用するのが好ましい。
【0095】
〔電子受容性化合物〕
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
【0096】
電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
【0097】
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物等が好ましい。また、種々の溶剤に可溶で湿式成膜に適用可能である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物等が好ましい。
【0098】
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好適例も同様である。例えば、下記構造式で表わされる化合物が挙げられるが、何らそれらに限定されるものではない。
【化9】

なお、電子受容性化合物は1種類のみを用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0099】
〔カチオンラジカル化合物〕
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
【0100】
カチオンラジカルとしては、正孔輸送性化合物として前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、溶解性などの点から好適だからである。
【0101】
ここで、カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
【0102】
また、PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
【0103】
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、または、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
なお、カチオンラジカル化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0104】
〔正孔注入層13の製造方法〕
正孔注入層13は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で形成することができるが、例えば、湿式成膜法または真空蒸着法により陽極12上に形成される。
【0105】
湿式成膜法による層形成の場合、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上の所定量を、必要により電荷のトラップとして作用し難いバインダー樹脂や塗布性改良剤と共に溶剤に溶解させて、まず塗布溶液を調製する。次いで、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等の湿式成膜法により陽極上に塗布し、乾燥して、正孔注入層13を形成させることができる。
【0106】
湿式成膜法による層形成のために用いられる溶剤としては、前述の各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を溶解することが可能な溶剤であれば、その種類は特に限定されない。なお、正孔注入層に用いられる各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を失活させる可能性のある失活物質または失活物質を発生させる物質を含まないことが好ましい。
好ましい溶剤の具体例としては、エーテル系溶剤またはエステル系溶剤が挙げられる。なお、溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0107】
上記塗布溶液中における溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常、99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、さらに好ましくは99.9重量%以下である。なお、2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにすればよい。
【0108】
真空蒸着法による層形成の場合には、まず、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、次いで、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気する。その後、るつぼを加熱し(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱し)、蒸発量を制御して蒸発させて(2種以上材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させることができる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱し蒸発させて正孔注入層形成に用いることもできる。
【0109】
上述のようにして形成される正孔注入層13の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。正孔注入層13が薄すぎると、正孔注入性が不十分になる可能性がある。また、厚すぎると、抵抗が高くなる場合がある。
【0110】
なお、正孔注入層13は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいし、異なる材料からなる層であってもよい。
【0111】
[2−4.電荷輸送膜]
電荷輸送膜14は、[1.電荷輸送膜]の項で説明した構成を有する層である。本実施形態では、電荷輸送膜14は陽極12又は正孔注入層13から発光層15へ正孔を輸送する正孔輸送膜(正孔輸送層)として機能している。
【0112】
[2−5.発光層]
電荷輸送膜14の上には、発光層15が形成される。
発光層15は、電界を与えられた電極間において、陽極12から正孔注入層13及び電荷輸送膜14を通じて注入された正孔と、陰極17から電子注入層16を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
【0113】
発光層15は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する材料(正孔輸送性化合物)、或いは、電子輸送の性質を有する材料(電子輸送性化合物)とを含有する。
【0114】
発光材料としては、湿式成膜法で発光層15を形成することが好ましいため、何れも低分子系の材料を使用することが好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子を製造する場合、発光材料として少なくとも蛍光発光材料を用いることが好ましい。ただし、燐光発光材料を併用してもよい。例えば、本発明の有機電界発光素子を備える発光表示装置の場合、発光色ごとに蛍光発光材料と燐光発光材料とを分けて用いてもよく、1つの有機電界発光素子の中で蛍光発光材料と燐光発光材料とを混合して用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることもできる。
【0115】
青色発光を与える蛍光発光材料としては、例えば、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光発光材料としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光発光材料としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光発光材料としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0116】
また、燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体が挙げられる。
【0117】
燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(I)又は式(II)で表わされる化合物が挙げられる。
【0118】
ML(q−j)L′ (I)
(式(I)中、Mは金属を表わし、qは上記金属の価数を表わす。また、L及びL′は二座配位子を表わす。jは0、1又は2の数を表わす。)
【0119】
【化10】

(式(II)中、Mは金属を表わし、Tは炭素原子又は窒素原子を表わす。R〜Rは、それぞれ独立に置換基を表わす。但し、Tが窒素原子の場合は、R及びRは無い。)
【0120】
以下、まず、式(I)で表わされる化合物について説明する。
式(I)中、Mは任意の金属を表わし、好ましいものの具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
【0121】
また、式(I)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
【化11】

(上記Lの部分構造において、環A1は、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。)
【0122】
該芳香族炭化水素基としては、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環由来の1価の基などが挙げられる。
【0123】
該芳香族複素環基としては、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環由来の1価の基などが挙げられる。
【0124】
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表わす。
【0125】
該含窒素芳香族複素環基としては、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の基が挙げられる。具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環由来の1価の基などが挙げられる。
【0126】
環A1又は環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基;芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0127】
また、式(I)中、二座配位子L′は、以下の部分構造を有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表わす。
【0128】
【化12】

【0129】
中でも、L′としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
【化13】

【0130】
式(I)で表わされる化合物として、更に好ましくは、下記式(Ia)、(Ib)、(Ic)で表わされる化合物が挙げられる。
【0131】
【化14】

(式(Ia)中、Mは、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0132】
【化15】

(式(Ib)中、Mは、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0133】
【化16】

(式(Ic)中、Mは、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、jは、0、1又は2を表わし、環A1及び環A1′は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2′は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。)
【0134】
上記式(Ia)〜(Ic)において、環A1及び環A1′の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0135】
上記式(Ia)〜(Ic)において、環A2及び環A2′の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
【0136】
上記式(Ia)〜(Ic)で表わされる化合物が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
【0137】
なお、これら置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1′が有する置換基と環A2′が有する置換基とが結合することにより、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
【0138】
中でも、環A1、環A1′、環A2及び環A2′の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。
【0139】
また、式(Ia)〜(Ic)におけるM〜Mの好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
【0140】
上記式(I)及び(Ia)〜(Ic)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0141】
【化17】

【0142】
【化18】

【0143】
【化19】

【0144】
上記式(I)で表わされる有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL′として2−アリールピリジン系配位子、即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるものを有する化合物が好ましい。
【0145】
また、国際特許公開第2005/019373号パンフレットに記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
【0146】
次に、式(II)で表わされる化合物について説明する。
式(II)中、Mは金属を表わす。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0147】
また、式(II)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
【0148】
更に、Tが炭素原子の場合、R及びRは、それぞれ独立に、R及びRと同様の例示物で表わされる置換基を表わす。また、Tが窒素原子の場合は、R及びRは無い。
【0149】
また、R〜Rは、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。
更に、R〜Rのうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0150】
式(II)で表わされる有機金属錯体の具体例(T−1、T−10〜T−15)を以下に示すが、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
【0151】
【化20】

【0152】
発光材料として用いる化合物の分子量は、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。分子量が低過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を招いたりする場合がある。分子量が高過ぎると、有機化合物の精製が困難となったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする場合がある。
【0153】
なお、発光層15は、上に説明した各種の発光材料のうち、何れか1種のみを含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
【0154】
低分子系の正孔輸送性化合物の例としては、前述の正孔注入層13の正孔輸送性化合物として例示した各種の化合物の他、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91, pp.209)等が挙げられる。
なお、正孔輸送性化合物は、何れか1種のみを含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
【0155】
低分子系の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等がある。
なお、電子輸送性化合物は、何れか1種のみを含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
【0156】
これら正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物は発光層においてホスト材料として使用されることが好ましいが、ホスト材料として具体的には以下のような化合物を使用することができる。
【0157】
【化21】

【0158】
発光層15の形成法としては、湿式成膜法、真空蒸着法が挙げられるが、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られる点や、形成のための時間が短くて済む点から、低分子系の材料を用いて湿式成膜法で発光層15を形成することが好ましい。
【0159】
湿式成膜法により発光層15を形成する場合、上述の材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを上述の正孔注入層13の上に塗布・成膜し、乾燥して溶剤を除去することにより形成する。
【0160】
成膜の手法は制限されないが、発光層形成用組成物の成分や下地となる電荷輸送膜や正孔注入層13の性質等に応じて、スピンコート法、スプレー法等の塗布法や、インクジェット法、スクリーン法等の印刷法等を任意に選択して用いることが可能である。
【0161】
湿式成膜法により成膜を行なった場合、成膜後に乾燥処理等を行なう。
乾燥処理の手法は特に制限されないが、例としては自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。また、加熱乾燥と減圧乾燥とを組み合わせて実施してもよい。
【0162】
加熱乾燥を行なう場合、その手法の例としては、ホットプレート、オーブン、赤外線照射、電波照射等が挙げられる。
加熱乾燥を行なう場合、加熱温度としては、通常は室温以上、好ましくは50℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは260℃以下の範囲が望ましい。なお、加熱乾燥時の温度は一定でもよいが、変動してもよい。
【0163】
減圧乾燥を行なう場合、乾燥時の圧力としては、通常は常圧以下、好ましくは10kPa以下、より好ましくは1kPa以下の範囲が望ましい。
乾燥処理の時間は、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲が望ましい。
【0164】
発光層15の厚さは制限されないが、通常5nm以上、好ましくは20nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは100nm以下の範囲が望ましい。発光層15が薄過ぎると発光効率が低下したり、寿命が短くなる場合があり、厚過ぎると素子の電圧が高くなる場合がある。
【0165】
なお、発光層15は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0166】
[2−6.電子注入層]
発光層15の上には、電子注入層16が形成される。
電子注入層16は、陰極17から注入された電子を効率よく発光層15へ注入する役割を果たす。
【0167】
電子注入を効率よく行なうために、電子注入層16を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。
この場合、電子注入層16の厚さは、通常0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常5nm以下、好ましくは2nm以下の範囲が望ましい。
【0168】
更に、例えばバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物;8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
【0169】
この場合、電子注入層16の厚さは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲が望ましい。
【0170】
これらの電子注入層16の材料は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0171】
電子注入層16は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層15上に積層することにより形成される。
【0172】
湿式成膜法の詳細は、上述の発光層15の場合と同様である。
一方、真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板11上の発光層15上に電子注入層16を形成する。
【0173】
電子注入層16としてのアルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行なう。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。
【0174】
有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層16を形成する。
このとき、通常は電子注入層16の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
【0175】
なお、電子注入層16は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0176】
[2−6.陰極]
電子注入層16の上には、陰極17が形成される。
陰極17は、発光層15側の層(電子注入層16又は発光層15など)に電子を注入する役割を果たす。
【0177】
陰極17の材料としては、前記の陽極12に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましい。仕事関数の低い金属の例としては、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等、又はそれらの合金が挙げられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等が挙げられる。
これらの陰極17の材料は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0178】
陰極17の厚さは制限されないが、通常は陽極12と同様である。
なお、陰極17は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0179】
[2−7.正孔阻止層]
図2(a)に示す有機電界発光素子10の構成において、発光層15と電子注入層16との間に正孔阻止層18を設けることも可能である。以下、この実施形態について以下に説明する。
【0180】
図2(b)は、本発明の更に別の実施形態に係る有機電界発光素子10’の層構成を模式的に示す断面図である。図2(b)に示す有機電界発光素子10’は、基板11の上に、陽極12、正孔注入層13、電荷輸送膜14、発光層15、正孔阻止層18、電子注入層16及び陰極17を、この順に積層することにより構成される。
【0181】
なお、図2(b)において、図2(a)と同じ符号を用いて示した有機電界発光素子10’の構成要素、即ち基板11、陽極12、正孔注入層13、電荷輸送膜14、発光層15、電子注入層16及び陰極17の構成や形成方法等の詳細は、図2(a)の有機電界発光素子1の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0182】
正孔阻止層18は、発光層15上に、発光層15の陰極17側の界面と接するように積層されるが、陽極12から移動してくる正孔が陰極17に到達するのを阻止する役割と、陰極17から注入された電子を効率よく発光層15の方向に輸送する役割とを有する化合物(これを「正孔阻止材料」という。)により形成される。
【0183】
正孔阻止層18を構成する材料(正孔阻止材料)に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
【0184】
これらの条件を満たす正孔阻止材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)が挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止材料として好ましい。
【0185】
正孔阻止材料の具体例としては、以下に挙げる構造の化合物が挙げられる。
【化22】

【0186】
これらの正孔阻止材料は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0187】
正孔阻止層18も、発光層15と同様、湿式成膜法を用いて形成することもできるが、通常は真空蒸着法により形成される。真空蒸着法の手順の詳細は、上述の電子注入層16の場合と同様である。
【0188】
正孔阻止層18の厚さは制限されないが、通常0.5nm以上、好ましくは1nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下の範囲が望ましい。正孔阻止層18が薄過ぎると、正孔阻止能力不足による発光効率の低下が生じる場合があり、正孔阻止層18が厚過ぎると、素子の電圧が高くなる場合がある。
【0189】
なお、正孔阻止層18は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいが、異なる材料からなる層であってもよい。
【0190】
[2−8.電子輸送層]
図2(a)に示す有機電界発光素子10の構成において、発光層15と電子注入層16との間に電子輸送層19を設けることも可能である。以下、この実施形態について以下に説明する。
【0191】
図2(c)は、本発明の更に別の実施形態に係る有機電界発光素子10”の層構成を模式的に示す断面図である。図2(c)に示す有機電界発光素子10”は、基板11の上に、陽極12、正孔注入層13、電荷輸送膜14、発光層15、電子輸送層19、電子注入層16及び陰極17を、この順に積層することにより構成される。
【0192】
なお、図2(c)において、図2(a)と同じ符号を用いて示した有機電界発光素子10”の構成要素、即ち基板11、陽極12、正孔注入層13、電荷輸送膜14、発光層15、電子注入層16及び陰極17の構成や形成方法等の詳細は、図2(a)の有機電界発光素子10の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0193】
電子輸送層19は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において、陰極17から注入された電子を効率よく発光層15の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0194】
電子輸送層19に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極17又は電子注入層16からの電子注入効率が高く、且つ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物(即ち、電子輸送材料)を用いる。
【0195】
電子輸送材料の例としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0196】
なお、これらの電子輸送材料は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0197】
電子輸送層19の形成方法に制限は無い。電子輸送層19は発光層15と同様、湿式成膜法を用いて形成することもできるが、通常は真空蒸着法により形成される。真空蒸着法の手順の詳細は、電子注入層16の場合と同様である。
【0198】
電子輸送層19の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0199】
[2−9.その他]
以上、本発明の製造方法の詳細について、図2(a)〜(c)に示す有機電界発光素子10、10’、10”を製造する場合を例として説明したが、本発明の製造方法の詳細は、上記説明によって限定されるものではない。
【0200】
例えば、本発明の製造方法により製造される有機電界発光素子の構成は、図2(a)〜(c)の有機電界発光素子10、10’、10”の構成に制限されるものではなく、有機電界発光素子10、10’、10”の構成に対して任意の変更を加えた構成であってもよい。
【0201】
変更の例として、図2(a)に示す有機電界発光素子10に対し、図2(b)に示す正孔阻止層18、及び図2(c)に示す電子輸送層19のうち二以上の層を組み合わせて設けた構成が挙げられる。
【0202】
また、別の変更の例として、図2(a)〜(c)に示す有機電界発光素子10、10’、10”の層構成において、その積層順を変更した構成や、一又は二以上の層を付加又は省略した構成等が挙げられる。
【0203】
積層順の異なる構成の例としては、図2(a)〜(c)に示す有機電界発光素子10、10’、10”の層構成において、基板11に対して他の各層を、有機電界発光素子10、10’、10”とは逆の順に積層した構成等が挙げられる。
【0204】
別の層を付加した構成の例としては、正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極12への付着力を改善させる目的で、陽極12と正孔注入層13との間に陽極バッファ層を設けた構成や、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、陰極17の上に、更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層(例えばアルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等からなる層)を設けた構成等が挙げられる。
【0205】
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、上述の基板11以外の構成要素を順次積層することにより、有機電界発光素子10、10’、10”を構成することも可能である。
【0206】
また、上述の各種の有機電界発光素子10、10’、10”を構成する層のうち、基板2以外の層からなるユニット(発光ユニット)を複数段重ねた構造(複数の発光ユニットを積層した構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0207】
また、上述の各種層構成を有する有機電界発光素子10、10’、10”を、単一の有機電界発光素子10、10’、10”として構成してもよいが、複数の有機電界発光素子10、10’、10”がアレイ状に配置された構成としてもよい。このような構成の例としては、陽極12と陰極17とがX−Yマトリックス状に配置された構成が挙げられる。なお、アレイ状に配置された複数の有機電界発光素子10、10’、10”が、一又は二以上の層、例えば基板11を共有する構成としてもよい。
このような有機電界発光素子は、発光装置に備えられるフラットパネルディスプレイや光源として用いられる。
【0208】
[3.有機ELディスプレイ]
本発明の有機電界発光素子は、有機ELディスプレイに使用することができる。本発明により得られる有機電界発光素子は、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機ELディスプレイを形成することができる。
【0209】
[4.本発明の利点]
本発明の電荷輸送膜を備えた有機電界発光素子は、従来の有機電界発光素子よりも長寿命である。
また、本発明の電荷輸送膜は通常は電荷の輸送能が高く、かつ、耐電圧・電流性に優れるため、これを用いて製造された有機電界発光素子は、通常、高い耐久性を有する。
【実施例】
【0210】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更して実施できる。
【0211】
[合成例1:目的物1の合成]
【化23】

【0212】
窒素気流中、試薬1[N−(4−ビフェニル)−N−(4−メトキシ)アミン](5.78g)、試薬2[4−ヨード−4’−メトキシビフェニル](7.16g)、銅(1.87g)、炭酸カリウム(5.80g)、およびテトラグライム(15ml)を、200℃に加熱下、10時間撹拌した。放冷後、クロロホルム(200ml)を加えて、攪拌した後、不溶物を濾別し、濾液を濃縮した。得られた固形分をエタノールで懸濁洗浄し、目的物1(7.10g)を得た。
【0213】
[合成例2:目的物2の合成]
【化24】

【0214】
窒素気流中、目的物1(6.86g)、およびジクロロメタン(100ml)を、0℃に冷却し、三臭化ホウ素の1M塩化メチレン溶液(35ml)を滴下した。室温まで昇温し、2時間攪拌した。重曹水を加えた後、酢酸エチルで抽出して、有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)によって精製し、目的物2(3.68g)を得た。EI−MS(m/z=429(M))により、生成物が目的物2であることを確認した。
【0215】
[合成例3:目的物3(h1)の合成]
【化25】

【0216】
窒素気流中、水酸化カリウム(3.25g)とジメチルスルホキシド(100ml)を、室温で15分撹拌し、目的物2(5.00g)を加え、室温で15分攪拌し、3−(4−ブロモブトキシメチル)−3−メチルオキセタン(6.90g)を加え、室温で8時間攪拌した。塩化メチレン(200ml)及び水(200ml)を加えて、攪拌した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル混合液)で精製することにより、目的物3(4.2g)を得た。DEI−MS(m/z=741(M))により、生成物が目的物3であることを確認した。
【0217】
[合成例4:目的物4の合成]
【化26】

【0218】
DCスターラー、滴下漏斗、および冷却管を装備した4口フラスコに、50重量%水酸化ナトリウム水溶液(300g)とヘキサン(250mL)の混合溶液を加え、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド(TBABr)(4.98g、15.5mmol)を添加した。混合物を5℃まで冷却後、メチルオキセタンメタノール(31g)と1,4−ジブロモブタン(200g)の混合物を激しく攪拌しながら滴下した。滴下終了後、室温で15分間攪拌し、さらに還流下、15分間攪拌し、室温まで放冷しながら15分間攪拌した。有機層を分離し、有機層を水洗して硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下に除去し、減圧蒸留(0.42mmHg、72℃)にて3−(4−ブロモブトキシメチル)−3−メチルオキセタン(52.2g)を得た。
【0219】
窒素気流中、ジメチルスルホキシド(50ml)に粉砕した水酸化カリウム(8.98g)を加え、次いでm−ブロモフェノール(6.92g)を加えて30分間撹拌後、3−(4−ブロモブトキシメチル)−3−メチルオキセタン(12.33g)を加えて室温で6時間撹拌した。析出物を濾取した後、塩化メチレンで抽出してオイル層を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン混合液)で精製することにより、目的物4(11.4g)を得た。
【0220】
[合成例5:目的物5(h2)の合成]
【化27】

【0221】
窒素気流中、N,N’−ビス(4−ビフェニル)アミン(4.69g)、目的物4(4.00g)、tert−ブトキシナトリウム(1.63g)、およびトルエン(90ml)の溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.063g)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.098g)、およびトルエン(10ml)を窒素雰囲気下、60℃で15分間攪拌して調製した溶液を加えて、85℃に加熱下、4時間攪拌した。放冷後、トルエン及び活性白土を加え、室温で15分間攪拌した後、不溶物を濾別し、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン溶媒)で精製し、トルエン溶媒で活性白土処理を行うことにより、目的物5(2.61g)を得た。
このもののガラス転移温度は14℃であり、融点は観測されず、窒素気流下での重量減少開始温度は404℃であった。
また、DEI−MS(m/z=569(M))により、生成物が目的物5であることを確認した。
【0222】
[合成例6:目的物6の合成]
【化28】

【0223】
窒素気流中、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(2.74g)、目的物4(9.00g)、tert−ブトキシナトリウム(3.69g)、およびトルエン(50ml)の溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.071g)、ビス(トリフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.152g)、およびトルエン(5ml)を窒素雰囲気下、60℃で15分間攪拌して調製した溶液を加えて、85℃に加熱下、2時間攪拌した。放冷後、トルエンおよび活性白土を加え15分間攪拌した後、不溶物を濾別、濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/塩化メチレン混合液)で精製することにより、目的物6(6.52g)を得た。
【0224】
[合成例7:目的物7の合成]
【化29】

【0225】
窒素気流中、水酸化カリウム(49.4g)、ジメチルスルホキシド(220ml)の混合溶液に、1−ブロモヘキサン(28.1ml)、3−ブロモフェノール(36.3g)を順次投入し、室温で8時間撹拌した。反応溶液に水350mlを加えて得られた溶液から、塩化メチレン(450ml)で抽出し、抽出液を食塩水で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、無色の液体として、目的物7(44.3g)を得た。
【0226】
[合成例8:目的物8の合成]
【化30】

【0227】
窒素気流中、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.673g)、ビス(トリフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.708g)、およびトルエン(455ml)を、室温で10分間攪拌して得た溶液に、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(13.02g)、目的物7(33.10g)、tert−ブトキシナトリウム(14.99g)を順次投入し、90℃の油浴中、6時間攪拌した。放冷後、酢酸エチル1リットルと食塩水500mlを加え、振り混ぜた後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/塩化メチレン混合液)および塩化メチレン/メタノールからの再結晶により精製し、目的物8の白色結晶(21.44g)を得た。
【0228】
[合成例9:目的物9(H4)の合成]
【化31】

【0229】
窒素気流中、目的物6(0.840g)、目的物8(6.00g)、4,4’−ジブロモブフェニル(3.76g)、tert−ブトキシナトリウム(3.26g)、およびトルエン(60ml)の溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.125g)、トリ−tert−ブチルフォスフィン(0.196g)、およびトルエン(5ml)を、窒素雰囲気下、60℃で15分間攪拌して調製した溶液を加えて、加熱還流下、2時間攪拌した。続いて、ブロモベンゼン(0.190g)およびトルエン(25ml)を加え、加熱還流下、1時間攪拌した。続いて、ジフェニルアミン(0.410g)を加え、加熱還流下、1.5時間攪拌した。放冷後、トルエンおよび活性白土を加え15分間攪拌した後、不溶物を濾別、濾液を濃縮し、塩化メチレンを加え、メタノールに再沈殿させた。沈殿物を濾取後、トルエンに溶解させた溶液に、活性白土を加え15分間攪拌した後、不溶物を濾別、濾液を濃縮し、塩化メチレンを加え、メタノールに再沈殿させた。沈殿物を濾取後、減圧乾燥することにより、目的物9(2.74g)を得た。この高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は158000、数平均分子量(Mn)31000であった。
【0230】
なお、一般に、下記式(I)で表される繰り返し単位を得るためのモノマーが非対称構造であるため、通常、前記のモノマーにより高分子化合物を合成すると、式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(I’)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が得られる。目的物9もこのような高分子化合物に該当するが、ここでは、式(I)に対応する構造式のみを記載している。
【化32】

(式(I)及び式(I’)において、Rは任意の置換基を表わす。)
【0231】
[合成例10:目的物10(H6)の合成]
(化合物1)
【化33】

【0232】
2−ニトロフルオレン(25.0g)、1−ブロモヘキサン(58.61g)、テトラブチルアモンニウムブロマイド(TBAB)(7.63g)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(220ml)に水酸化ナトリウム水溶液(17M)35mlをゆっくり滴下し、室温で3時間反応した。酢酸エチル(200ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を酢酸エチル(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル混合液)で精製することにより、化合物1(44.0g)を得た。
【0233】
(モノマー1)
【化34】

【0234】
化合物1(44.0g)、テトラヒドロフラン(THF)(120ml)、エタノール(EtOH)(120ml)に10%Pd/C(8.6g)を加え、50℃に昇温後、ヒドラジン・1水和物(58.0g)をゆっくり滴下し、50℃で3時間反応した。放冷後、反応液を、セライトを通して濾過し、濾液を濃縮後、析出した結晶をメタノールで洗浄した。減圧濾過、乾燥することにより、モノマー1(34.9g)を得た。
【0235】
(化合物2)
【化35】

【0236】
窒素気流中、3−ブロモスチレン(5.0g)、3−ニトロフェニルボロン酸(5.5g)、トルエン:エタノール(Toluene/EtOH)(80ml:40ml)、炭酸ナトリウム水溶液(2M)20mlを、60℃に加熱下、30分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)を加え、6時間還流した。室温まで放冷した後、反応液に塩化メチレン(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、分液し、水層を塩化メチレン(100ml×2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン混合液)で精製することにより、化合物2(5.5g)を得た。
【0237】
(化合物3)
【化36】

【0238】
窒素気流中、化合物2(2.8g)、4−ブロモシクロブテン(3.64g)、N,N−ジメチルホルムアミド(76ml)、炭酸カリウム(2.73g)、テトラブチルアモンニウムブロマイド(TBAB)(2.67g)を、60℃に加熱下、30分間撹拌し、ビス〔μ−クロロ〔5−クロロ−2−〔(4−クロロフェニル)(ヒドロキシイミノ)メチル〕フェニル〕パラジウム〕(Pd cat./DMF)(24.1mg)を加え、130℃に加熱下、7.5時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液に酢酸エチルおよび水を加え攪拌後、分液、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル混合液)で精製することにより、化合物3(1.7g)を得た。
【0239】
(モノマー2)
【化37】

【0240】
窒素気流中、化合物3(1.6g)、酢酸(AcOH)(30ml)、エタノール(30ml)、塩酸(1N、1ml)、水(4ml)および還元鉄(5.5g)を1.5時間還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(30ml)および水(30ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル混合液)で精製することにより、モノマー2(1.3g)を得た。
【0241】
(化合物4)
【化38】

【0242】
反応容器内にフッ化カリウム(23.01g)を仕込み、減圧下、加熱乾燥と窒素置換を繰り返し系内を窒素雰囲気とした。3−ニトロフェニルボロン酸(6.68g)、4−ブロモ−ベンゾシクロブテン(7.32g)、脱水テトラヒドロフラン(50ml)を仕込み、撹拌した。そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(Pd(dba))(0.21g)を加え、さらに系内を十分に窒素置換して、室温でトリ−t−ブチルホスフィン(0.47g)を加え、添加終了後、そのまま1時間攪拌させた。反応終了後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムを加え脱水乾燥し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、化合物4(8.21g)を得た。
【0243】
【化39】

化合物5(8.11g)、テトラヒドロフラン36ml、エタノール36ml、10%Pd/C(1.15g)を仕込み、70℃で加熱撹拌した。そこへヒドラジン一水和物(10.81g)をゆっくり滴下した。2時間反応後、放冷し、反応液をセライトでろ過して濾液を濃縮した。この濾液に酢酸エチルを加え、水で洗浄し、有機層を濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することにより、モノマー3(4.90g)を得た。
【0244】
(化合物5)
【化40】

【0245】
窒素気流中、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(212mg)、よう化銅(104mg)、ジオキサン(75mL)を攪拌した。この液にトリ−t−ブチルホスフィン(331mg)を添加して15分、室温で攪拌した。この溶液にジ−i−プロピルアミン(3.31g)、4−ブロモベンゾシクロブテン(5.00g)、1,7−オクタジイン(20.3g)を加えて室温下9時間攪拌した。得られた反応混合物を400Paの減圧下、バス温60℃で軽沸分を留去した後、飽和食塩水(50mL)、1N塩酸(5mL)を添加し、酢酸エチル(30mLで3回)で抽出、有機層を飽和食塩水(30mLで2回)で洗浄した。酢酸エチル層を濃縮すると粗成生物(7.7g)が得られた。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)にて精製することにより2.78gの化合物5を無色の油状物として得た。
【0246】
(化合物6)
【化41】

【0247】
窒素気流中、m−ヨウ化ニトロベンゼン(3.64g)、炭酸カリウム(5.06g)、よう化銅(111mg)、トリフェニルホスフィン(307mg)、5%Pd/C(623mg)、メトキシエタン/水=1/1の混合溶媒(95mL)を室温下、1時間攪拌した。この液に化合物5(2.77g)をジメトキシエタン(2mL)に溶解させた溶液を添加し、70℃のバス(内温63℃)で7時間加熱反応した。得られた反応混合物を、セライトを通してろ過した後、エバポレーターで濃縮、1N塩酸25mLを添加して酢酸エチル(30mLで3回)で抽出、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水(20mLを3回)で洗浄した。有機層を濃縮して得られた粗生成物を酢酸エチル−n−ヘキサンの混合溶媒から再結晶して2.50gの化合物6をごく薄い黄色の針状結晶として得た。
【0248】
(モノマー4)
【化42】

【0249】
化合物6(2.31g)を、テトラヒドロフラン(15mL)、エタノール(15mL)に溶解させた。この溶液に水素化触媒としてラネーニッケル(1.07g)(日興リカ社製、R−200)を添加、水素で3回置換後、水素下、室温で35時間反応させた。反応液を、セライトを通してろ過、エバポレーターで濃縮して2.8gの粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)にて精製することにより1.72gのモノマー4を白色の針状結晶として得た。
【0250】
(モノマー5)
【化43】

【0251】
窒素気流中、化合物2(2.5g)、酢酸(60ml)、エタノール(60ml)、塩酸(1N、2ml)、水(8ml)および還元鉄(12.4g)を1時間還流した。室温で反応液を濾過し、酢酸エチル(100ml)および水(100ml)を加え攪拌後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和し、分液し、水層を酢酸エチル(100mlで2回)で抽出し、有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル混合液)で精製することにより、モノマー5(2.1g)を得た。
【0252】
(H6の合成)
【化44】

【0253】
一級アミンとして、モノマー4、モノマー1、モノマー5を、モノマー4:モノマー1:モノマー5=0.8274:0.0863:0.863のモル比で用い、ジブロマイドとして、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)アントラセンを用いて重合反応を行い、ポリマー1(H6)を合成した。
【0254】
モノマー4(0.1087g)、モノマー1(1.185g)、モノマー5(0.069g)、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)アントラセン(1.000g)、およびtert−ブトキシナトリウム(1.26g、トルエン(10ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。
【0255】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.042g)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.066g)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。
【0256】
窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.5時間、90℃に加熱し反応した。続いて、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)アントラセン(0.940g)を追添加した。1時間加熱還流した後、反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。
【0257】
得られた粗ポリマー1をトルエン150mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.52g)、tert−ブトキシナトリウム(0.63g)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。
【0258】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.021g)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.033g)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。
【0259】
窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、3時間、加熱還流反応した。この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(1.63g)を添加し、再度調製した溶液Dを加え、さらに、4時間、加熱還流反応した。反応液を放冷し、エタノール中に滴下し、エンドキャップした粗ポリマー1を得た。
【0260】
このエンドキャップした粗ポリマー1をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより2回精製し、精ポリマー1(H6)を得た(1.63g)。
【0261】
得られた精ポリマー1の重量平均分子量(Mw)は330000、分散度(Mw/Mn)は9.2であった。
【0262】
[合成例11:目的物11(H7)の合成]
【化45】

【0263】
一級アミンとして、上述のモノマー3、モノマー1を、モノマー3:モノマー1=0.8298:0.1702のモル比で用いた点、ジブロマイドとして、9,10−ビス(4−ブロモフェニル)アントラセンを用いて重合反応を行った点を除いて、ポリマー1(H6)と同様にしてポリマー2(H7)を合成した。
【0264】
得られたポリマー2(H7)の重量平均分子量(Mw)は68000、分散度(Mw/Mn)は2.5であった。
【0265】
[合成例12:目的物12(H8)の合成]
【化46】

【0266】
一級アミンとして、上述のモノマー3、モノマー1、アニリンを、モノマー3:モノマー1:アニリン=0.134:0.665:0.201のモル比で用いた点、ジブロマイドとして、4,4’−ジブロモビフェニル、2,7−ジブロモ−9,9’−スピロビ〔フルオレン〕をモル比0.5:0.5で用いて重合反応を行った点を除いて、ポリマー3(H8)をポリマー1(H6)と同様にして合成した。
【0267】
得られたポリマー3(H8)の重量平均分子量(Mw)は23000、分散度(Mw/Mn)は1.4であった。
【0268】
[合成例13:目的物13(H9)の合成]
【化47】

【0269】
一級アミンとして、上述のモノマー3、アニリンを、モノマー3:アニリン=0.9442:0.0558のモル比で用いた点、ジブロマイドとして、4,4”−ジブロモ−2’,5’−ジ−n−オクチル−p−ターフェニルを用いて重合反応を行った点を除いて、ポリマー4(H9)をポリマー1(H6)と同様にして合成した。
【0270】
得られたポリマー4(H9)の重量平均分子量(Mw)は72000、分散度(Mw/Mn)は2.0であった。
【0271】
[合成例14:目的物14(H10)の合成]
【化48】

【0272】
一級アミンとして、上述のモノマー2、モノマー1、アニリンを、モノマー2:モノマー1:アニリン=0.101:0.505:0.394のモル比で用いた点、ジブロマイドとして、4,4’−ジブロモビフェニルを用いて重合反応を行った点を除いて、ポリマー5(H10)をポリマー1(H6)と同様にして合成した。
【0273】
得られたポリマー5(H10)の重量平均分子量(Mw)は26000、分散度(Mw/Mn)は1.7であった。
【0274】
[合成例15:目的物15(H11)の合成]
【化49】

一級アミンとして、上述のモノマー3、アニリンを、モノマー3:アニリン=0.224:0.776のモル比で用いた点、ジブロマイドとして、1,3−ビス(7−ブロモ−9,9−ジヘキシルフルオレン−2−イル)ベンゼンを用いて重合反応を行った点を除いて、ポリマー5(H11)をポリマー1(H6)と同様にして合成した。
得られたポリマー5(H11)の重量平均分子量(Mw)は77000、分散度(Mw/Mn)は2.2であった。
【0275】
[測定用素子の作製]
図1に示すように、ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品。)に、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングしてITO層2を形成した。このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0276】
次に、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子(重量平均分子量:26500、数平均分子量:12000)2.0重量%、及び、下記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を含む安息香酸エチル溶液を調製した。この安息香酸エチル溶液を、前記表2に示す成膜条件でスピンコート法により成膜し、膜厚30nmの高分子層3を形成し、ITO層2と高分子層3とから測定用陽極4を形成した。
【化50】

【0277】
また、表2に示すように、サンプル層5の材料を溶媒に溶解させて塗布液(電荷輸送膜用組成物)を調製し、これを、当該測定用陽極4上に、スピナ回転時間:30秒、スピンコート雰囲気:窒素中の条件でスピンコートし、ベークを行い、サンプル層5を形成した。
【0278】
【表2】

【0279】
なお、サンプル層の材料とした化合物は、以下のとおりである。また、H1、H2及びH3において、h1とh2との比は重量比を表わす。Meはメチル基を表す。
【化51】

【化52】

【0280】
サンプル層5を形成した素子をグローブボックスに連結されたマルチチャンバー型真空蒸着装置内に大気に曝すことなく搬入し、油回転ポンプ等により装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が9.9×10−4Pa以下になるまでクライオポンプ等を用いて排気した。次に、隣接する金属蒸着チャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、ITO層2のストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が9.9×10−4Pa以下になるまで排気した。その後、アルミニウムをモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜16.0Å/秒、真空度2.0〜250×10−5Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成し、これを測定用陰極6とした。なお、以上の測定用陰極6の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0281】
引き続き、測定用素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、測定用陰極6の形成を終了した素子を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。以上の様にして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有する測定用素子を作製した。
【0282】
[比誘電率の測定]
測定用素子の静電容量を測定し、静電容量と誘電率の基本的な関係式(1)から比誘電率を算出した。静電容量の測定には、(株)エヌエフ回路設計ブロック社製ZM2353型LCRメーターを用い、2335AL型テストフィクスチャ(2個のクリップで4端子接続ができるケルビンクリップ)を用いた。測定の際は、作製した測定用素子のITO層2からコンタクトプローブを用いて電極を取り出し、前述のクリップで挟んで測定した。測定の条件は、室温25℃の条件で、測定周波数100Hz、測定電圧250mV、一回あたりの測定速度を480ミリ秒に設定し、等価回路には並列等価回路を選択し、1秒に1点測定値を取得する方法で30分間測定した後、その平均値をサンプルの静電容量とした。
測定された比誘電率は、表4および表6に示す。
【0283】
[電流変異点の測定]
電荷の印加のために使用する電圧の発生及びそれに伴う電流値の検出については、Keithley社製2400型ソースメーターを使用した。
上述した測定用素子の電荷を注入したい極に、ソースメーターの出力側の電極をつなぎ、電圧を変化させたときの電流の値を読み取った。電圧は、2秒に0.1V上昇させた。電圧を上昇させ続ける事により、ある電圧において、電流値が明らかに下降または急上昇の挙動を示したので、そのときの電圧の値の絶対値をkVの単位に変換し、膜厚(cm)で割ることにより、電流変異点を求めた。
測定された電流変異点を、表4および表6に示す。
【0284】
[駆動試験用素子の作製]
比誘電率を測定したサンプルに対応した実際の有機電界発光素子を作製する場合は、次の様に行った。図3に示すように、ガラス基板11上に、ITO透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品。)に、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターンイングしてITO層12を形成した。このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純粋による水洗、超純粋による超音波洗浄、超純粋による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0285】
次に、2.0重量%の前記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子、及び、0.8重量%の前記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを含む安息香酸エチル溶液を調製した。この安息香酸エチル溶液を、前記表1に示す成膜条件でスピンコート法により成膜し、膜厚30nmの正孔注入層13を得た。
【0286】
その後、電荷輸送膜用組成物として、上述の架橋基を有する化合物H1〜H5、pk−H1〜pk−H3をそれぞれ下記表3に示す溶媒に溶解又は分散させた塗布液を調製し、これを正孔注入層13上にスピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒、スピンコート雰囲気:窒素中)にて成膜し、架橋処理を行うことで架橋ポリマーからなる電荷輸送膜(正孔輸送層)14を形成した。各実施例ならびに比較例の材料、成膜条件ならびに架橋処理後の膜厚は下記表3の通りである。
【0287】
【表3】

【0288】
なお、架橋基を有する化合物としてH4を使用した実施例3におけるリンスの処理は、電荷輸送膜形成後、成膜時と同じスピンコーターの条件でキシレンを用いてスピンアウトすることで行った。
【0289】
次に、下記構造式で示される有機化合物(C1)、(C2)、および(C3)を用いて、以下の条件で、発光層形成用組成物を調製した。この組成物を下記の条件で電荷輸送膜上にスピンコートすることにより成膜し、乾燥することにより、膜厚40nmの発光層15を形成した。
【化53】

【0290】
<発光層形成用組成物>
溶媒 キシレン
塗布液濃度 C1:1.0重量%
C2:1.0重量%
C3:0.1重量%
<発光層15の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
ベーク条件 真空中 130℃ 1時間
【0291】
次に、正孔注入層13、電荷輸送膜14および発光層15を湿式成膜した基板をグローブボックスに連結されたマルチチャンバー型真空蒸着装置内に大気に曝すことなく搬入し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が5.3×10−5Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気し、下記構造式(C4)で表される化合物を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層18を得た。蒸着時の真空度は3.1〜4.8×10−5Pa、蒸着速度は0.6〜1.1Å/秒の範囲で制御し、膜厚5nmの膜を発光層15の上に積層して正孔阻止層18を形成した。
【化54】

【0292】
次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行い、電子輸送層19を成膜した。蒸着時の真空度は2.9〜4.9×10−5Pa、蒸着速度は0.7〜1.3Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層19の上に積層して電子輸送層19を形成した。
【0293】
ここで、電子輸送層19までの蒸着を行った素子を、電子輸送層19までを蒸着した有機層蒸着チャンバーから金属蒸着チャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が8.7×10−5Pa以下になるまで排気した。
【0294】
電子注入層16として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.07〜0.15Å/秒、真空度4.7〜10.0×10−5Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層19の上に成膜した。次に、陰極17としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜16.0Å/秒、真空度2.0〜13.0×10−5Paで制御して膜厚80nmの陰極17を形成した。以上の2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0295】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極17の形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
【0296】
[輝度半減寿命の測定]
駆動試験用素子を用いて、輝度半減寿命を測定した。結果を表4に示す。また、2500cd/m条件における輝度半減寿命と架橋性ポリマーの比誘電率との関係を表わす相関図を図4に示し、2500cd/m条件における輝度半減寿命と架橋基を有する化合物中の架橋基の数との関係を表わす相関図を図5に示し、2500cd/m条件における)輝度半減寿命と架橋性ポリマーの電流変異点との関係を表わすグラフを図6に示す。なお、図4において破線は比誘電率3.3〜6.3の範囲を表わす。また、図5において破線は架橋基の数が2であるラインを表わす。さらに、図6において破線は電流変異点が1050kV/cmであるラインを表わす。
また、輝度半減寿命の測定法、及び、架橋基の数の数え方は、以下のとおりである。
【0297】
・輝度半減寿命の測定法
輝度半減寿命の測定法(以下、駆動試験という)を次に示す。始めに、対象となる素子が2500cd/mで発光するときの電流値を測定した。次に、対象となる素子に先ほど測定した電流値に保って電流を流した。その際の素子の輝度を観測し続け、初期の輝度、すなわち2500cd/mが半減するまでの時間を測定し、これを輝度半減寿命とした。なお、温度条件は室温で行った。
<駆動条件>
温度 室温
駆動方式 直流駆動(DC駆動)
初期輝度 2,500cd/m
【0298】
・架橋基の数の数え方
ここで、架橋基の数は、単位輸送ユニット当たりの架橋基の数のことをいう。計算方法を改めて示すと、架橋性ポリマーを形成する架橋基を有する化合物が、1種類のモノマーである場合には、そのモノマーに置換されている架橋基の数がそれに当たる。また、架橋性ポリマーを形成する架橋基を有する化合物が複数種のモノマー体を混合するものである場合は、それぞれのモノマーに置換した置換基の数と混合するモル比とから単純に計算する。例えばH1の場合、h1には2つ置換基があり、h2には一つ置換基があり、そのモル比は30対70であるから、この混合物1モルの中には、h1由来の架橋基が0.6モル、h2由来の架橋基が0.7モル存在することになるので、単位電荷輸送ユニット当たりの架橋基の数は(0.6+0.7)/1=1.3個となる。さらに、架橋基を有する化合物がオリゴマー系/モノマー系の場合は、前記の架橋基の数は、架橋性ポリマーを形成する電荷輸送能を持つ主骨格に対する架橋基の数になる。例えばH4の場合、電荷輸送能を持つ主骨格はベンジジンになるため、これをエーテル結合で繋いだ繰り返し構造が100個連結している場合、架橋基は20個あることになり、前記架橋基の数は0.2個となる。
【0299】
【表4】

【0300】
[青蛍光発光材料を用いた駆動試験用素子の作製]
比誘電率を測定したサンプルに対応した実際の発光素子を作製する他の実施例として、青蛍光発光材料を用いた駆動試験用素子(以下、「青蛍光駆動試験用素子」ということがある。)を作成した。図3に示すように、ガラス基板11上に、ITO透明導電膜を150nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品。)に、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターンイングしてITO層12を形成した。このITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純粋による水洗、超純粋による超音波洗浄、超純粋による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0301】
次に、2.0重量%の前記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子、及び、0.8重量%の前記式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを含む安息香酸エチル溶液を調製した。この安息香酸エチル溶液を、前記表1に示す成膜条件でスピンコート法により成膜し、膜厚30nmの正孔注入層13を得た。
【0302】
その後,電荷輸送膜用組成物として上述の架橋基を有する化合物H6〜H11をそれぞれ下記表5に示す溶媒に溶解又は分散させた塗布液を調製し、これを正孔注入層13上にスピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒、スピンコート雰囲気:窒素中)にて成膜し、架橋処理を行うことで架橋ポリマーからなる電荷輸送膜(正孔輸送層)14を形成した。各実施例ならびに比較例の材料、成膜条件ならびに架橋処理後の膜厚は下記表5の通りである。
【表5】

【0303】
次に、下記構造式で示される有機化合物(C5)及び(C6)を用いて、以下の条件で、発光層形成用組成物を調製した。この組成物を下記の条件で電荷輸送膜上にスピンコートすることにより成膜し、乾燥することにより、膜厚40nmの発光層15を形成した。
【化55】

【0304】
<発光層形成用組成物>
溶媒 トルエン
塗布液濃度 C5:0.75重量%
C6:0.075重量%
<発光層15の成膜条件>
スピナ回転数 1500rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 窒素中
ベーク条件 真空中 130℃ 1時間
【0305】
次に、正孔注入層13、電荷輸送膜14および発光層15を塗布成膜した基板をグローブボックスに連結されたマルチチャンバー型真空蒸着装置内に大気に曝すことなく搬入し、油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、装置内の真空度が3×10−4Pa以下になるまでクライオポンプを用いて排気し、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラフェニルフェノラート)アルミニウムを真空蒸着法によって積層し正孔阻止層18を得た。蒸着時の真空度は3×10−4Pa以下、蒸着速度は0.8〜1.2Å/秒の範囲で制御し、膜厚10nmの膜を発光層15の上に積層して正孔阻止層18を形成した。
【0306】
次いで、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムを加熱して蒸着を行い、電子輸送層19を成膜した。蒸着時の真空度は2.9〜4.9×10−5Pa、蒸着速度は0.7〜1.3Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層19の上に積層して電子輸送層19を形成した。
【0307】
ここで、電子輸送層19までの蒸着を行った素子を、電子輸送層19までを蒸着した有機層蒸着チャンバーから金属蒸着チャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して、有機層蒸着時と同様にして装置内の真空度が8.7×10−5Pa以下になるまで排気した。
【0308】
電子注入層16として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.07〜0.15Å/秒、真空度4.7〜10.0×10−5Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層19の上に成膜した。次に、陰極17としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.6〜16.0Å/秒、真空度2.0〜13.0×10−5Paで制御して膜厚80nmの陰極17を形成した。以上の2層型陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
【0309】
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
真空蒸着装置に連結された窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(株式会社スリーボンド製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極17の形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
【0310】
[駆動寿命の測定]
青蛍光駆動試験用素子を用いて、駆動寿命を測定した。結果を表6に示す。また、1000cd/m条件におけるH6を規準とした際の輝度8割減寿命との相対比(以下,相対寿命)と架橋性ポリマーの比誘電率との関係を表わす相関図を図7に示し、1000cd/m条件における相対寿命と架橋性ポリマーの電流変異点との関係を表わすグラフを図8に示す。なお、図7において破線は比誘電率3.3〜6.3の範囲を表わす。さらに、図8において破線は電流変異点が1050kV/cmであるラインを表わす。
また、輝度8割減寿命の測定法は、以下のとおりである。
【0311】
・駆動寿命の測定法
駆動寿命の測定法(以下、駆動試験という)を次に示す。始めに、対象となる素子が1000cd/mで発光するときの電流値を測定した。次に、対象となる素子に先に測定した電流値に保って電流を流した。その際の素子の輝度を観測し続け、初期の輝度、すなわち1000cd/mが8割減するまでの時間を測定し、これを駆動寿命とした。なお、温度条件は室温で行った。
<駆動条件>
温度 室温
駆動方式 直流駆動(DC駆動)
初期輝度 1000cd/m
【0312】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0313】
本発明は、例えば、有機電界発光素子、電子写真感光体、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等に用いることができ、特に、有機電界発光素子に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0314】
【図1】測定用素子の層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)はいずれも本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の層構成を模式的に示す断面図である
【図3】駆動試験用素子、及び青蛍光駆動試験用素子の層構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例及び比較例で測定した輝度半減寿命と架橋性ポリマーの比誘電率との関係を表わすグラフである。
【図5】本発明の実施例及び比較例で測定した輝度半減寿命と架橋基を有する化合物中の架橋基の数との関係を表わすグラフである。
【図6】本発明の実施例及び比較例で測定した輝度半減寿命と架橋性ポリマーの電流変異点との関係を表わすグラフである。
【図7】本発明の実施例及び比較例で測定した1000cd/m条件におけるH6を規準とした際の輝度8割減寿命との相対比(以下,相対寿命)と架橋性ポリマーの比誘電率との関係を表わす相関図である。破線は比誘電率3.3〜6.3の範囲を表わす。
【図8】本発明の実施例及び比較例で測定した1000cd/m条件における相対寿命と架橋性ポリマーの電流変異点との関係を表わすグラフである。破線は電流変異点が1050kV/cmであるラインを表わす。
【符号の説明】
【0315】
1 ガラス基板
2 ITO層
3 高分子層
4 測定用陽極
5 サンプル層
6 測定用陰極
10,10’,10” 有機電界発光素子
11 基板(ガラス基板)
12 陽極(ITO層)
13 正孔注入層
14 電荷輸送膜
15 発光層
16 電子注入層
17 陰極
18 正孔阻止層
19 電子輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ポリマーを含有する電荷輸送膜であって、該架橋性ポリマーは、25℃、測定周波数100Hz及び測定交流電圧250mVで下記測定用素子を用いて測定される比誘電率が3.3以上6.3以下である
ことを特徴とする、電荷輸送膜。
[測定用素子]
ITOからなる厚さ100nm以上200nm以下のITO層上に、下記式(P1)に示す繰り返し構造を有する正孔輸送性高分子(重量平均分子量:10,000以上50,000以下、重量平均分子量/数平均分子量:1以上3以下)2.0重量%、及び、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.8重量%を含む安息香酸エチル溶液を成膜し、大気中230℃で3時間ベークしてなる厚さ30nmの層を備えた測定用陽極と、
【化1】

前記測定用陽極上に形成された、前記架橋性ポリマーからなる厚さ100nm以上200nm以下のサンプル層と、
前記サンプル層上に形成された、Alからなる厚さ80nmの測定用陰極とを備えた測定用素子。
【請求項2】
前記測定用素子で測定される電流変異点が、1050kV/cm以上である
ことを特徴とする、請求項1記載の電荷輸送膜。
【請求項3】
陽極、陰極、並びに、該陽極と該陰極との間に設けられた請求項1又は請求項2記載の電荷輸送膜を備える
ことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項4】
該電荷輸送膜が正孔輸送層である
ことを特徴とする、請求項3記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の有機電界発光素子を用いる
ことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の電荷輸送膜に含有される架橋性ポリマーを形成する
ことを特徴とする、架橋基を有する化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−117800(P2009−117800A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208114(P2008−208114)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】