説明

電荷電圧変換回路、検出装置及び電子機器

【課題】電荷電圧変換後の電圧信号のS/Nを向上する電荷電圧変換回路、検出装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】電荷電圧変換回路は、キャパシターC1と、差動電流信号を構成する第1の信号ISPが供給される第1の入力ノードNI1と、キャパシターC1の一端側のノードである第1のノードN1との間に設けられる第1の入力用スイッチ素子NI1と、差動電流信号を構成する第2の信号ISMが供給される第2の入力ノードNI2と、第1のノードN1との間に設けられる第2の入力用スイッチ素子NI2と、キャパシターC1に蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための出力用スイッチ素子SQ1と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷電圧変換回路、検出装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やカーナビゲーションシステム等の電子機器には、角速度等の物理量を検出するためのジャイロセンサーが組み込まれている。このジャイロセンサーは、例えば手振れ補正や姿勢制御、GPS自律航法等に用いられる。
【0003】
近年、ジャイロセンサーの1つとして圧電型の振動ジャイロセンサーが注目されている。この振動ジャイロセンサーは、角速度レベルを振幅とする差動電流信号を検出信号として出力する。そして、ジャイロセンサーの検出装置は、その差動電流信号を電圧信号に電荷電圧変換(例えば特許文献1、2)し、その電圧信号をA/D変換して角速度レベルに応じたデジタルデータを出力する(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−221274号公報
【特許文献2】特開2008−122122号公報
【特許文献3】特開2008−224230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電荷電圧変換回路に演算増幅器等のアクティブな回路が含まれる場合、そのアクティブな回路が発生するノイズにより、電荷電圧変換後の電圧信号のS/Nが劣化するという課題がある。
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、電荷電圧変換後の電圧信号のS/Nを向上する電荷電圧変換回路、検出装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、キャパシターと、差動電流信号を構成する第1の信号が供給される第1の入力ノードと、前記キャパシターの一端側のノードである第1のノードとの間に設けられる第1の入力用スイッチ素子と、前記差動電流信号を構成する第2の信号が供給される第2の入力ノードと、前記第1のノードと、の間に設けられる第2の入力用スイッチ素子と、前記キャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための出力用スイッチ素子と、を含む電荷電圧変換回路に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1の入力用スイッチ素子がオンすることでキャパシターが第1の信号によりチャージされ、第2の入力用スイッチ素子がオンすることでキャパシターが第2の信号によりチャージされる。そして、出力用スイッチ素子がオンすることで、キャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号が出力される。これにより、電荷電圧変換後の電圧信号のS/Nを向上すること等が可能になる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、前記差動電流信号の搬送波信号の周波数に同期した周波数のクロックによりオン・オフ制御されてもよい。
【0010】
このようにすれば、差動電流信号の搬送波信号の周波数に同期した周波数で、キャパシターを差動電流信号によりチャージできる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記クロックの周波数は、前記搬送波信号の周波数と同じであってもよい。
【0012】
このようにすれば、差動電流信号の搬送波信号の周波数と同じ周波数のクロックにより第1,第2の入力用スイッチ素子をオン・オフ制御できる。これにより、搬送波信号により伝送される所望信号の検波が可能になる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、逆相の前記クロックにより、排他的にオン・オフ制御されてもよい。
【0014】
このようにすれば、第1の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてキャパシターを第1の信号によりチャージし、第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてキャパシターを第2の信号によりチャージできる。
【0015】
また、本発明の一態様では、第1の期間において、前記第1の入力用スイッチ素子がオフになり、前記第2の入力用スイッチ素子がオンになり、前記第1の期間に続く第2の期間において、前記第1の入力用スイッチ素子がオンになり、前記第2の入力用スイッチ素子がオフになり、前記出力用スイッチ素子は、前記第1の期間と前記第2の期間を合わせた期間を少なくとも1回繰り返した後に、オンになってもよい。
【0016】
このようにすれば、第1の入力用スイッチ素子と第2の入力用スイッチ素子を排他的にオン・オフ制御することができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、グランド電圧が供給されるグランドノードと、前記キャパシターの他端側のノードである第2のノードとの間に設けられる第1のグランド用スイッチ素子と、前記グランドノードと、前記第1のノードとの間に設けられる第2のグランド用スイッチ素子と、を含み、前記第1のグランド用スイッチ素子は、前記第1の入力用スイッチ素子がオンになる期間及び、前記第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになり、前記第2のグランド用スイッチ素子は、前記出力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになってもよい。
【0018】
このようにすれば、第1,第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間において第1のグランド用スイッチ素子をオンにすることで、キャパシターをチャージできる。また、出力用スイッチ素子がオンになる期間において第2のグランド用スイッチ素子をオンにすることでキャパシターの電荷に対応する電圧を出力できる。
【0019】
また、本発明の一態様では、第2のキャパシターと、前記第1の入力ノードと、前記第2のキャパシターの一端側のノードである第3のノードとの間に設けられる第3の入力用スイッチ素子と、前記第2の入力ノードと、前記第3のノードとの間に設けられる第4の入力用スイッチ素子と、前記第2のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための第2の出力用スイッチ素子と、を含んでもよい。
【0020】
このようにすれば、第3,第4の入力用スイッチ素子がオンすることで、それぞれ第1,第2の電流信号により第2のキャパシターをチャージできる。そして、第2の出力用スイッチ素子がオンすることで、第2のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力できる。
【0021】
また、本発明の一態様では、前記第3の入力用スイッチ素子は、前記第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになり、前記第4の入力用スイッチ素子は、前記第1の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになってもよい。
【0022】
このようにすれば、キャパシター第2の信号によりチャージされる間に第2のキャパシターを第1の信号によりチャージでき、キャパシターが第1の信号によりチャージされる間に第2のキャパシターを第2の信号によりチャージできる。
【0023】
また、本発明の一態様では、第3のキャパシターと、前記第1の入力ノードと、前記第3のキャパシターの一端側のノードである第5のノードとの間に設けられる第5の入力用スイッチ素子と、前記第2の入力ノードと、前記第5のノードとの間に設けられる第6の入力用スイッチ素子と、前記第3のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための第3の出力用スイッチ素子と、を含んでもよい。
【0024】
このようにすれば、第5,第6の入力用スイッチ素子がオンすることで、それぞれ第1、第2の信号により第3のキャパシターをチャージできる。そして、第3の出力用スイッチ素子がオンすることで、第3のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力できる。
【0025】
また、本発明の一態様では、前記第3のキャパシターは、前記キャパシターが前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子によりチャージされる第1のチャージ期間と次の第2のチャージ期間との間の期間において、前記第5の入力用スイッチ素子と前記第6の入力用スイッチ素子によりチャージされてもよい。
【0026】
このようにすれば、キャパシターに対する第1のチャージ期間と第2のチャージ期間との間の期間において、第3のキャパシターをチャージできる。
【0027】
また、本発明の一態様では、前記差動電流信号は、センサーデバイスから供給される電流信号であってもよい。
【0028】
このようにすれば、出力信号として差動電流信号を出力する種々のセンサーデバイスからの出力信号を電荷電圧変換できる。
【0029】
また、本発明の一態様では、前記センサーデバイスは、駆動信号により駆動され、前記駆動信号の周波数に同期した搬送波信号により所望信号を伝送する前記差動電流信号を出力し、前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、前記駆動信号に基づくクロックによりオン・オフ制御されてもよい。
【0030】
このようにすれば、第1,第2の入力用スイッチ素子が駆動信号に基づくクロックによりオン・オフ制御されることで、駆動信号の周波数に同期した搬送波信号により伝送される所望信号を検波することが可能になる。
【0031】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の電荷電圧変換回路を含む検出装置に関係する。
【0032】
また、本発明のさらに他の態様は、上記に記載の検出装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の比較例。
【図2】電荷電圧変換回路の基本構成例。
【図3】電荷電圧変換回路の基本構成例の信号波形例。
【図4】電荷電圧変換回路の構成例。
【図5】電荷電圧変換回路の構成例の第1の信号波形例。
【図6】電荷電圧変換回路の構成例の第1の周波数特性例。
【図7】電荷電圧変換回路の構成例の第2の信号波形例。
【図8】電荷電圧変換回路の構成例の第2の周波数特性例。
【図9】電荷電圧変換回路の変形例。
【図10】電荷電圧変換回路の変形例の信号波形例。
【図11】検出装置の構成例。
【図12】検出装置の信号波形例。
【図13】A/D変換回路の詳細な構成例。
【図14】A/D変換回路の信号波形例。
【図15】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0035】
1.比較例
まず、図1を用いて本実施形態の比較例について説明する。図1に示す比較例は、センサーデバイスSDA、電荷電圧変換回路QVA、A/D変換回路ADAを含む。
【0036】
センサーデバイスSDAは、例えば水晶振動子を用いた圧電型の振動ジャイロセンサーであり、差動電流信号ISP,ISMを出力する。電荷電圧変換回路QVAは、この差動電流信号ISP,ISMをQV変換して差動電圧信号VQP,VQMを出力する。この電荷電圧変換回路QVAは、演算増幅器OPAと抵抗素子RA1,RA2とキャパシターCA1,CA2により構成される積分回路である。
【0037】
このように演算増幅器OPAを用いてQV変換を行う場合、差動電圧信号VQP,VQMには演算増幅器OPAからのノイズが出力される。例えば、そのノイズとして、演算増幅器OPAに含まれるトランジスターが発生する1/fノイズ等が出力される。このように、A/D変換回路ADAの前段に演算増幅器OPAがあると、A/D変換回路ADAに入力される差動電圧信号VQP,VQMのS/Nが劣化してしまい、A/D変換後のデジタル信号のS/Nも劣化するという課題がある。あるいは、A/D変換回路ADAの前段に、ノイズを低減するためのフィルター回路が必要になるという課題がある。
【0038】
2.電荷電圧変換回路の基本構成例
図2に、演算増幅器を含まず、スイッチ素子とキャパシターにより構成される本実施形態の電荷電圧変換回路の基本構成例を示す。この電荷電圧変換回路は、キャパシターC1、第1の入力用スイッチ素子SI1、第2の入力用スイッチ素子SI2、出力用スイッチ素子SQ1、第1のグランド用スイッチ素子SG1、第2のグランド用スイッチ素子SG2を含む。
【0039】
具体的には、第1の入力ノードNI1には、第1の電流信号ISPが入力され、第2の入力ノードNI2には、第2の電流信号ISMが入力される。これらの電流信号ISP,ISMは、センサーデバイスからの差動電流信号を構成する信号であり、例えば図11で後述するセンサーデバイス10から入力される。
【0040】
第1のノードN1と第2のノードN2との間には、キャパシターC1が設けられる。そして、入力ノードNI1とノードN1との間には、入力用スイッチ素子SI1が設けられ、入力ノードNI2とノードN1との間には、入力用スイッチ素子SI2が設けられる。ノードN2とグランドノードNGとの間にはグランド用スイッチ素子SG1が設けられる。これらのスイッチ素子SI1,SI2,SG1は、差動電流信号ISP,ISMによりキャパシターC1をチャージするためのスイッチ素子であり、例えばCMOSトランジスターにより構成される。
【0041】
ノードN2と出力ノードNQ1との間には、出力用スイッチ素子SQ1が設けられる。ノードN1とグランドノードNGとの間には、グランド用スイッチ素子SG2が設けられる。これらのスイッチ素子SQ1,SG2は、キャパシターC1によりQV変換された電圧信号VQPを出力するためのスイッチ素子であり、例えばCMOSトランジスターにより構成される。
【0042】
なお、グランドノードNGには、例えば0V等のグランド電圧が供給される。あるいは、グランドノードNGには、基準電圧として0V以外の電圧が供給されてもよい。
【0043】
上記の電荷電圧変換回路によれば、演算増幅器を用いることなく差動電流信号ISP,ISMのQV変換(電荷電圧変換)を行うことができる。また、この電荷電圧変換回路は、バンドパスフィルターやローパスフィルターとして機能することが可能であり、スイッチ素子のオン・オフ制御を変更することにより周波数特性を変更可能である。
【0044】
3.基本動作例
次に、図3を用いて上記の電荷電圧変換回路の動作について説明する。図3には、バンドパスフィルターとして機能させる場合の信号波形例を示す。なお以下では、電流信号ISPがノードNI1からノードN1に向かって流れる場合に、電流信号ISPは正の電流信号であるとする。また、電流信号ISMがノードNI2からノードN1に向かって流れる場合に、電流信号ISMは正の電流信号であるとする。
【0045】
図3のA1に示すように、差動電流信号ISP,ISMは、キャリア信号(搬送波信号)により所望信号を伝送する信号であり、所望信号は、検波によりキャリア信号の振幅を信号として取り出すことで取得される信号である。そして、上述のスイッチ素子は、この差動電流信号ISP,ISMのキャリア信号の周波数に同期してオン・オフ制御される。
【0046】
具体的には、A2に示すように、電流信号ISMが負である期間においてクロックCK2がアクティブ(第1の論理レベル)になり、スイッチ素子SI2がオンし、キャパシターC1が電流信号ISMによりチャージされる。次に、A3に示すように、電流信号ISPが負である期間においてクロックCK1がアクティブになり、スイッチ素子SI1がオンし、キャパシターC1が電流信号ISPによりチャージされる。A4に示すように、キャパシターC1がチャージされる期間において、クロックCK3がアクティブになり、スイッチ素子SG1がオンする。そして、A5に示すように、キャパシターC1がチャージされる期間が終了した後にクロックCK4がアクティブになり、スイッチSQ1,SG2がオンになり、電圧信号VQPが出力される。
【0047】
なお、センサーデバイスが圧電式の振動ジャイロセンサーである場合、ジャイロセンサーの回転方向が反転すると差動電流信号ISP,ISMの位相は180度回転する。すなわち、図3に示す差動電流信号ISP,ISMが反時計回りの場合の信号であるとすると、時計回りの場合には、差動電流信号ISP,ISMが正である期間においてスイッチ素子SI2,SI1がオンすることになる。
【0048】
さて上述のように、演算増幅器を用いてQV変換を行うと、その演算増幅器が出力するノイズによって、次段のA/D変換回路に入力される電圧信号のS/Nが劣化してしまうという課題がある。
【0049】
この点、本実施形態の電荷電圧変換回路は、図2に示すように、キャパシターC1と、第1の入力用スイッチ素子SI1と、第2の入力用スイッチ素子SI2と、出力用スイッチ素子SQ1を含む。そして、スイッチ素子SI1は、差動電流信号を構成する第1の信号ISPが供給される第1の入力ノードNI1と、キャパシターC1の一端側のノードである第1のノードN1との間に設けられる。スイッチ素子SI2は、差動電流信号を構成する第2の信号ISMが供給される第2の入力ノードNI2と、第1のノードN1との間に設けられる。スイッチ素子SQ1は、キャパシターC1に蓄積された電荷に対応する電圧信号VQPを出力するためのスイッチ素子である。
【0050】
このようにすれば、スイッチ素子SI1がオンすることでキャパシターC1が電流信号ISPによりチャージされ、スイッチ素子SI2がオンすることでキャパシターC1が電流信号ISMによりチャージされる。そして、スイッチ素子SQ1がオンすることで、キャパシターC1に蓄積された電荷に対応する電圧信号VQPが出力される。ここで、キャパシターC1に蓄積された電荷に対応する電圧信号とは、電荷をQとした場合に、VQP=Q/C1により表される電圧信号である。
【0051】
これにより、演算増幅器を用いることなく差動電流信号ISP,ISMをQV変換できるため、QV変換後の電圧信号のS/Nを向上すること等が可能になる。また、図4〜図8で後述するように、スイッチ素子のオン・オフ制御を変更することにより容易に周波数特性を変更できる。
【0052】
また、本実施形態では、図3に示すように、第1の入力用スイッチ素子SI1と第2の入力用スイッチ素子SI2は、差動電流信号ISP,ISMの搬送波信号(キャリア信号)の周波数に同期した周波数のクロックCK1,CK2によりオン・オフ制御される。
【0053】
このようにすれば、差動電流信号ISP,ISMの搬送波信号の周波数に同期した周波数で、キャパシターC1が差動電流信号ISP,ISMによりチャージされる。
【0054】
より具体的には、本実施形態では、クロックCK1,CK2の周波数は、搬送波信号の周波数と同じ周波数である。
【0055】
このようにすれば、差動電流信号ISP,ISMの搬送波信号の周波数と同じ周波数のクロックCK1,CK2によりスイッチ素子SI1,SI2をオン・オフ制御できる。これにより、差動電流信号ISP,ISMを検波し、搬送波信号により伝送される所望信号を抽出できる。ここで、クロックCK1,CK2の周波数とは、例えば図3に示すようにキャパシターC1をチャージする期間T1における周波数である。
【0056】
また、本実施形態では、第1の入力用スイッチ素子SI1と第2の入力用スイッチ素子SI2は、逆相のクロックCK1,CK2により、排他的にオン・オフ制御される。
【0057】
このようにすれば、キャパシターC1が差動電流信号ISP,ISMにより交互にチャージされるため、図6等で後述するようにバンドパスフィルターのフィルター特性を実現できる。ここで、逆相とは、クロックCK1,CK2の位相が180度異なることである。また、排他的にオン・オフ制御されるとは、スイッチ素子SI1,SI2の一方のスイッチ素子がオンになる期間において他方のスイッチ素子がオフになることである。
【0058】
また、本実施形態では、図3のA2に示すように、第1の期間において、第1の入力用スイッチ素子SI1がオフになり、第2の入力用スイッチ素子SI2がオンになる。A3に示すように、第1の期間に続く第2の期間において、第1の入力用スイッチ素子SI1がオンになり、第2の入力用スイッチ素子SI2がオフになる。そして、A5に示すように、出力用スイッチ素子SQ1は、第1の期間と第2の期間を合わせた期間を少なくとも1回(例えば2回)繰り返した後に、オンになる。
【0059】
このようにすれば、スイッチ素子SI1,SI2を排他的にオン・オフ制御できる。また、そのオン・オフ制御の後に出力用スイッチ素子をオンすることで、そのオン・オフ制御によりチャージされたキャパシターC1の電荷に対応する電圧信号を出力できる。
【0060】
また、本実施形態の電荷電圧変換回路は、図2に示すように、第1のグランド用スイッチ素子SG1と、第2のグランド用スイッチ素子SG2を含む。スイッチ素子SG1は、グランド電圧が供給されるグランドノードNGと、キャパシターC1の他端側のノードである第2のノードN2との間に設けられる。スイッチ素子SG2は、グランドノードNGと第1のノードN1との間に設けられる。そして、図3のA4に示すように、スイッチ素子SG1は、第1の入力用スイッチ素子SI1がオンになる期間及び、第2の入力用スイッチ素子SI2がオンになる期間においてオンになる。A5に示すように、スイッチ素子SG2は、出力用スイッチ素子SQ1がオンになる期間においてオンになる。
【0061】
このようにすれば、スイッチ素子SG1を、スイッチ素子SI1,SI2がオンになる期間においてオンにすることで、グランド電圧を基準としてキャパシターC1をチャージできる。また、スイッチ素子SG2を、出力用スイッチ素子SQ1がオンになる期間においてオンにすることで、グランド電圧を基準としてキャパシターC1の電荷に対応する電圧を出力できる。
【0062】
なお、図2に示すスイッチ素子SI1,SI2,SQ1,SG1,SG2は、例えば図示しない制御部からのクロック信号CK1〜CK4によりオン・オフ制御される。例えば、クロック信号CK1〜CK4は図11で後述する同期信号CLKに基づいて生成される。
【0063】
4.電荷電圧変換回路の詳細な構成例
図4に、電荷電圧変換回路の構成例を示す。この電荷電圧変換回路は、第1〜第4の変換部QV1〜QV4を含む。
【0064】
変換部QV1は、差動電流信号ISP,ISMをサンプリングして電圧信号VQPを出力する。この変換部QV1は、第1のキャパシターC1、第1の入力用スイッチ素子SI1、第2の入力用スイッチ素子SI2、第1の出力用スイッチ素子SQ1、第1のグランド用スイッチ素子SG1、第2のグランド用スイッチ素子SG2、第1のリセット用スイッチSR1を含む。
【0065】
変換部QV2は、変換部QV1と同じ期間において差動電流信号ISP,ISMをサンプリングし、電圧信号VQMを出力する。電圧信号VQPとVQMは、差動電圧信号を構成する信号である。この変換部QV2は、第2のキャパシターC1、第3の入力用スイッチ素子SI3、第4の入力用スイッチ素子SI4、第2の出力用スイッチ素子SQ2、第3のグランド用スイッチ素子SG3、第4のグランド用スイッチ素子SG4、第2のリセット用スイッチSR2を含む。
【0066】
変換部QV3は、変換部QV1と交互にサンプリングを行う。すなわち、変換部QV3は、変換部QV1が電圧信号VQPを出力する期間において差動電流信号ISP,ISMをサンプリングする。この変換部QV3は、第3のキャパシターC1、第5の入力用スイッチ素子SI5、第6の入力用スイッチ素子SI6、第3の出力用スイッチ素子SQ3、第5のグランド用スイッチ素子SG5、第6のグランド用スイッチ素子SG6、第3のリセット用スイッチSR3を含む。
【0067】
変換部QV4は、変換部QV2と交互にサンプリングを行う。すなわち、変換部QV4は、変換部QV2が電圧信号VQMを出力する期間において差動電流信号ISP,ISMをサンプリングする。この変換部QV4は、第4のキャパシターC4、第7の入力用スイッチ素子SI7、第8の入力用スイッチ素子SI8、第4の出力用スイッチ素子SQ4、第7のグランド用スイッチ素子SG7、第8のグランド用スイッチ素子SG8、第4のリセット用スイッチSR4を含む。
【0068】
5.第1の動作例
次に、上記の電荷電圧変換回路をバンドパスフィルターとして機能させる場合の動作例について説明する。図5に、この場合における信号波形例を示す。
【0069】
図5のB1に示すように、クロックCK2がアクティブになり、スイッチ素子SI1,SI3がオンする。このとき、キャパシターC1が電流信号ISMによりチャージされ、キャパシターC2が電流信号ISPによりチャージされる。すなわち、C1とC2は逆極性の電流によりチャージされる。次にB2に示すように、クロックCK1がアクティブになり、スイッチ素子SI2,SI4がオンし、キャパシターC1,C2がそれぞれ電流信号ISP,ISMによりチャージされる。そして、再びクロックCK2,CK1が順次アクティブになる。B3に示すように、このキャパシターC1,C2をチャージする期間T1において、クロックCK3がアクティブになり、スイッチ素子SG1,SG3がオンになる。
【0070】
次に、B4に示すように、クロックCK4がアクティブになり、スイッチ素子SQ1,SG2,SQ2,SG4がオンになり、キャパシターC1,C2の電荷に対応する電圧が電圧信号VQP,VQMとして出力される。B5に示すように、クロックCK5がアクティブになり、スイッチ素子SR1,SR2がオンになり、キャパシターC1,C2の電荷がリセットされる。
【0071】
キャパシターC3,C4は、キャパシターC1,C2の電圧出力と電荷リセットを行う期間T1’において、チャージされる。すなわち、B6に示すように、クロックCK7がアクティブになり、スイッチ素子SI6,SI7がオンし、キャパシターC3,C4がそれぞれ電流信号ISM,ISPによりチャージされる。次に、B6に示すように、クロックCK6がアクティブになり、スイッチ素子SI5,SI8がオンし、キャパシターC3,C4がそれぞれ電流信号ISP,ISMによりチャージされる。そして、再びクロックCK7,CK6が順次アクティブになる。B8に示すように、期間T1’においてクロックCK8がアクティブになり、スイッチ素子SG5,SG7がオンになる。
【0072】
次に、B9に示すように、クロックCK9がアクティブになり、スイッチ素子SQ3,SG6,SQ4,SG8がオンになり、キャパシターC3,C4の電荷に対応する電圧が電圧信号VQP,VQMとして出力される。B10に示すように、クロックCK10がアクティブになり、スイッチ素子SR3,SR4がオンになり、キャパシターC3,C4の電荷がリセットされる。
【0073】
このようにして、キャパシターC1,C3が交互にサンプリングを行って電圧信号VQPを出力し、キャパシターC2,C4が交互にサンプリングを行って電圧信号VQMを出力する。この動作例における電荷電圧変換回路の伝達関数は、下式(1)により表される。
【0074】
H=(1−z−1+z−2−z−3)/4 ・・・ (1)
図6に、この伝達関数の周波数特性を示す。図6では、差動電流信号ISP,ISMのキャリア周波数が50kHzである場合を例に示す。図6のD1に示すように、この伝達関数は、キャリア周波数の50kHzを通過させるバンドパスフィルターの周波数特性を有する。そのため、差動電流信号ISP,ISMを検波して所望信号を取り出すことが可能である。また、D2に示すように、80kHz付近にノッチを有する。そのため、80kHz付近に不要信号が存在する場合には、その不要信号を抑制できる。例えば、振動ジャイロセンサーでは、駆動周波数と共鳴周波数との違いにより不要信号が発生するが、本実施形態では、その不要信号を抑制できる可能性がある。
【0075】
6.第2の動作例
次に、図4で上述の電荷電圧変換回路をローパスフィルターとして機能させる場合の動作例について説明する。図7に、この場合における信号波形例を示す。
【0076】
図7のE1に示すように、クロックCK2は非アクティブ(第2の論理レベル)に設定され、スイッチ素子SI2,SI3はオフに設定される。すなわち、キャパシターC1は電流信号ISPだけでチャージされ、キャパシターC2は電流信号ISMだけでチャージされる。また、E2に示すように、クロックCK7は非アクティブに設定され、キャパシターC3,C4はそれぞれ電流信号ISP,ISMだけでチャージされる。他のクロックやスイッチ素子の動作については上述の動作例と同様である。
【0077】
この動作例における電荷電圧変換回路の伝達関数は、下式(2)により表される。
【0078】
H=(1+z−1+z−2+z−3)/4 ・・・ (2)
図8に、この伝達関数の周波数特性を示す。図8では、差動電流信号ISP,ISMのキャリア周波数が50kHzである場合を例に示す。図8のF1に示すように、この伝達関数は、ローパスフィルターの周波数特性を有する。また、F2に示すように、この伝達関数は、キャリア周波数の50kHzを通過させるバンドパスフィルターの周波数特性を有する。そのため、差動電流信号ISP,ISMを検波して所望信号を取り出すことが可能である。このように、スイッチ素子のオン・オフ制御を変更することで、容易に電荷電圧変換回路のフィルター特性を変更できる。
【0079】
上記実施形態の電荷電圧変換回路は、図4に示すように、第2のキャパシターC2と、第3の入力用スイッチ素子SI3と、第4の入力用スイッチ素子SI4と、第2の出力用スイッチ素子SQ2を含む。そして、スイッチ素子SI3は、第1の入力ノードNI1と、第2のキャパシターC2の一端側のノードである第3のノードN3との間に設けられる。スイッチ素子SI4は、第2の入力ノードNI2と、第3のノードN3との間に設けられる。スイッチ素子SQ2は、第2のキャパシターC2に蓄積された電荷に対応する電圧信号VQMを出力する。
【0080】
このようにすれば、スイッチ素子SI3,SI4がオンすることで、それぞれ電流信号ISP,ISMによりキャパシターC2がチャージされる。そして、スイッチ素子SQ2がオンすることで電圧信号VQMが出力される。これにより、出力信号として差動電圧信号VQP,VQMを出力することが可能になる。
【0081】
具体的には本実施形態では、図5のB1に示すように、第3の入力用スイッチ素子SI3は、第2の入力用スイッチ素子SI2がオンになる期間においてオンになる。また、B2に示すように、第4の入力用スイッチ素子SI4は、第1の入力用スイッチ素子SI1がオンになる期間においてオンになる。
【0082】
このようにすれば、キャパシターC1が電流信号ISMによりチャージされる間にキャパシターC2が電流信号ISPによりチャージされ、キャパシターC1が電流信号ISPによりチャージされる間にキャパシターC2が電流信号ISMによりチャージされる。このようにして、差動電圧信号VQP,VQMを出力することが可能になる。
【0083】
また本実施形態の電荷電圧変換回路は、図4に示すように、第3のキャパシターC3と、第5の入力用スイッチ素子SI5と、第6の入力用スイッチ素子SI6と、第3の出力用スイッチ素子SQ3を含む。そして、スイッチ素子SI5は、第1の入力ノードNI1と、第3のキャパシターC3の一端側のノードである第3のノードN5との間に設けられる。スイッチ素子SI6は、第2の入力ノードNI2と、第5のノードN5との間に設けられる。スイッチ素子SQ3は、第3のキャパシターC3に蓄積された電荷に対応する電圧信号VQPを出力する。
【0084】
このようにすれば、スイッチ素子SI5,SI6がオンすることで、それぞれ電流信号ISP,ISMによりキャパシターC3がチャージされる。そして、スイッチ素子SQ3がオンすることで電圧信号VQPが出力される。これにより、キャパシターC1とC3が交互にサンプリングと出力を行うことが可能になる。
【0085】
具体的には本実施形態では、図5に示すように、第3のキャパシターC3は、キャパシターC1の第1のチャージ期間T1と次の第2のチャージ期間T2との間の期間T1’において、スイッチ素子SI5,SI6によりチャージされる。期間T1,T2は、第1のキャパシターC1がスイッチ素子SI1,SI2によりチャージされる期間である。
【0086】
このようにすれば、キャパシターC1とC3を交互にチャージできる。これにより、キャパシターC1が電圧信号を出力する期間T1’においても差動電流信号ISP,ISMをサンプリングできる。
【0087】
なお、図4に示すスイッチ素子SI1〜SI8,SQ1〜SQ4,SG1〜SG8,SR1〜SR4は、例えば図示しない制御部からのクロック信号CK1〜CK10によりオン・オフ制御される。例えば、クロック信号CK1〜CK10は図11で後述する同期信号CLKに基づいて生成される。
【0088】
7.電荷電圧変換回路の変形例
図9に、電荷電圧変換回路の変形構成例を示す。この電荷電圧変換回路は、第1〜第4のキャパシターC1〜C4、第1〜第4の入力用スイッチ素子SI1〜SI4、第9〜第12の入力用スイッチ素子SI9〜SI12、第1〜第4の出力用スイッチ素子SQ1〜SQ4、第1〜第8のグランド用スイッチ素子SG1〜SG8、第1〜第4のリセット用スイッチ素子SR1〜SR4を含む。なお以下では、図4で上述の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0089】
キャパシターC1,C3が交互にサンプリングと出力を行うのは、図4で上述の構成例と同様である。この変形例では、スイッチ素子SI9,SI11がキャパシターC1,C3のいずれのチャージを行うかを選択する。また、スイッチ素子SI10,SI12はキャパシターC2,C4のいずれのチャージを行うかを選択する。
【0090】
図10に、この電荷電圧変換回路をバンドパスフィルターとして機能させる場合の信号波形例を示す。図10のG1に示すように、クロックCK11,CK12が交互にアクティブになり、スイッチ素子SI1,SI2が交互にオンし、スイッチ素子SI3,SI4が交互にオンする。これは、期間T1,T1’でともに行われる。G2に示すように、期間T1においてクロックCK3がアクティブになり、スイッチ素子SI9,SI10,SG1,SG3がオンになり、キャパシターC1,C2がチャージされる。G3に示すように、期間T1’においてクロックCK8がアクティブになり、スイッチ素子SI11,SI12,SG5,SG7がオンになり、キャパシターC3,C4がチャージされる。
【0091】
この変形例は、上式(1)と同様にバンドパスフィルターの伝達関数を有する。また、CK12を非アクティブに設定することで、ローパスフィルターとして機能させることも可能である。
【0092】
上記変形例によれば、図4で上述の構成例と比べてクロック信号の数を削減できる。そのため、スイッチ素子のオン・オフ制御が簡素になり、制御回路の回路規模を抑制することができる。
【0093】
なお、図9に示すスイッチ素子SI1〜SI4,SI9〜SI12,SQ1〜SQ4,SG1〜SG8,SR1〜SR4は、例えば図示しない制御部からのクロック信号CK3CK5,CK8〜CK12によりオン・オフ制御される。例えば、クロック信号CK3CK5,CK8〜CK12は図11で後述する同期信号CLKに基づいて生成される。
【0094】
8.検出装置
図11に、上述の電荷電圧変換回路が適用された検出装置の構成例を示す。この検出装置30は、駆動回路40、検出回路60を含む。ここで、検出装置30は図11の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0095】
センサーデバイス10は、ジャイロセンサー等の物理量トランスデューサーである。ジャイロセンサーは、例えば水晶などの圧電材料により形成される音叉型圧電振動子により構成される。なお以下では、センサーデバイス10が振動ジャイロセンサーである場合を例に説明するが、本実施形態ではこれに限定されない。
【0096】
ここで、物理量トランスデューサーとは、物理量(物の性質の度合いを表す量であり、その単位が定義されているもの)を他の物理量に変換するための素子である。変換対象となる物理量としては、コリオリ力以外にも重力などの力や、加速度、質量などが考えられる。また変換により得られる物理量としては、電流以外にも電圧等であってもよい。
【0097】
駆動回路40は、駆動信号VD(駆動電圧、駆動電流)を出力してセンサーデバイス10を駆動し、センサーデバイス10からフィードバック信号IFD(出力電流)を受ける。このようにして発振ループを形成し、センサーデバイス10を励振させる。
【0098】
検出回路60は、駆動信号VDにより駆動されるセンサーデバイス10から検出信号ISP、ISM(差動電流信号)を受け、検出信号ISP、ISMから所望信号を検出する。所望信号は、センサーデバイス10の検出軸に対する回転方向と回転速度を表す信号であり、例えばセンサーデバイス10の回転により発生するコリオリ力を表す信号である。
【0099】
より具体的には、駆動回路40は、増幅回路42、2値化回路46、AGC(Automatic Gain Control)回路50を含む。
【0100】
増幅回路42は、センサーデバイス10からのフィードバック信号IFDを増幅する。具体的には、増幅回路42は、I/V変換回路であり、フィードバック信号IFDである出力電流を増幅して電圧に変換し、増幅後の信号VD2を出力する。
【0101】
2値化回路46は、正弦波である増幅後の信号VD2の2値化処理を行い、2値化処理により得られた同期信号(参照信号)CLKを、検出回路60に出力する。例えば、この2値化回路46は、正弦波の信号VD2が入力されて、矩形波の同期信号CLKを出力するコンパレーターにより実現できる。
【0102】
AGC回路50は、駆動信号VDのゲインの自動調整を行う。具体的には、AGC回路50は、増幅後の信号VD2を監視し、発振ループのゲインを制御する。例えば、AGC回路50は、センサーデバイス10の駆動振幅を検出し、検出された駆動振幅に応じた制御電圧を出力し、その制御電圧に基づいて駆動信号のゲインを制御する。このようにしてAGC回路50は、駆動信号VDの振幅が一定となるようにゲインを自動調整し、ジャイロセンサーの振動子の振動速度を一定に制御する。
【0103】
検出回路60は、電荷電圧変換回路70、A/D変換回路100を含む。
【0104】
電荷電圧変換回路70は、センサーデバイス10からの検出信号ISP,ISMをQV変換し、変換後の差動電圧信号VQP,VQMをA/D変換回路100に対して出力する。電荷電圧変換回路70は、2値化回路46からの同期信号CLKに同期して動作する。
【0105】
A/D変換回路100は、電荷電圧変換回路70からの差動電圧信号VQP,VQMをA/D変換し、変換後のデジタル信号ADQを出力する。具体的には、A/D変換回路100は、2値化回路46からの同期信号CLKに同期したクロックにより動作し、同期信号CLKに同期して出力される差動電圧信号VQP,VQMをサンプリングしてA/D変換を行う。例えば、このA/D変換回路100は、逐次変換型A/D変換回路や、デルタシグマ型A/D変換回路により実現できる。
【0106】
図12に、上記の検出装置30の信号波形例を示す。図12に示すように、駆動信号VDとして正弦波の信号を出力し、センサーデバイス10を駆動する。同期信号CLKは、駆動信号VDを2値化した信号であり、同期信号CLKと同じ周波数のクロック信号である。センサーデバイス10は、検出信号(ISP−ISM)として、コリオリ力に応じて振幅変調された信号を出力する。この検出信号のキャリア信号は、駆動信号VDと同じ周波数の信号である。そして、検出信号をQV変換し、離散的な電圧信号であるQV変換出力(VQP−VQM)を同期信号CLKに同期して出力する。例えば、図4で上述の電荷電圧変換回路の場合、駆動信号VDの周波数を50kHzとすると、QV変換出力の周波数は25kHzである。このQV変換出力の包絡線(点線の曲線で表す)は、検出対象である所望信号に対応する。
【0107】
上記実施形態によれば、図11に示すように、差動電流信号ISP,ISMは、センサーデバイス10から供給される電流信号である。
【0108】
このようにすれば、出力信号として差動電流信号を出力する種々のセンサーデバイスからの出力信号を受けて、その出力信号をQV変換できる。
【0109】
また、本実施形態では、センサーデバイス10は、駆動信号VDにより駆動され、その駆動信号VDの周波数に同期した搬送波信号により所望信号を伝送する差動電流信号ISP,ISMを出力する。そして、第1の入力用スイッチ素子SI1と第2の入力用スイッチ素子SI2は、駆動信号VDに基づくクロックCLKによりオン・オフ制御される。
【0110】
このようにすれば、スイッチ素子SI1,SI2が駆動信号VDに基づくクロックCLKによりオン・オフ制御されることで、駆動信号VDの周波数に同期した搬送波信号により伝送される所望信号を検波により抽出できる。
【0111】
9.A/D変換回路
図13に、A/D変換回路100の詳細な構成例を示す。このA/D変換回路100は、第1のデルタ演算部110、第1のシグマ演算部120、第2のデルタ演算部130、第2のシグマ演算部140、量子化回路150を含む。
【0112】
このA/D変換回路100は、いわゆるデルタシグマ型のA/D変換回路である。すなわち、デルタ演算部110は、出力信号ADQP,ADQMと入力信号VQP,VQMとの差分値を出力する。このデルタ演算部110は、キャパシターCB1,CB2、スイッチ素子S1〜S8、AND回路AB1〜AB4、インバーターI1,I2を含む。
【0113】
シグマ演算部120は、デルタ演算部110からの出力信号である差分値を積分する。このシグマ演算部120は、演算増幅器OB1、キャパシターCB3,CB4、スイッチ素子S9〜S12を含む。
【0114】
デルタ演算部130は、出力信号ADQP,ADQMと、シグマ演算部120からの出力信号との差分値を出力する。このデルタ演算部130は、キャパシターCB5,CB6、スイッチ素子S13〜S20、AND回路AB5〜AB8、インバーターI3,I4を含む。
【0115】
シグマ演算部140は、デルタ演算部130からの出力信号である差分値を積分する。このシグマ演算部140は、演算増幅器OB2、キャパシターCB7,CB8、スイッチ素子S21,S22を含む。
【0116】
量子化回路150は、シグマ演算部140からの出力信号を量子化し、量子化後の出力信号ADQP,ADQMを出力する。量子化回路150は、例えばコンパレーターにより構成され、シグマ演算部140からの差動信号の大小関係を判定して2値化を行う。
【0117】
図14に、上記A/D変換回路100のクロック信号波形例を示す。図4等で上述のように、クロックCK4,CK9がアクティブである期間において、QV変換後の電圧信号VQP,VQMが出力される。図14のH1,H2に示すように、クロックCK4,CK9がアクティブである期間において、クロックCK13がアクティブになり、デルタ演算回路110,130が入力信号をサンプリングする。次に、H3,H4に示すように、クロックCK14がアクティブになり、デルタ演算回路110,130が差分値を求め、シグマ演算回路120,140が積分演算を行う。このようにして、電荷電圧変換回路70からの電圧信号VQP,VQMをサンプリングしてA/D変換を行う。
【0118】
10.電子機器
図15に、上記の検出装置30が適用された電子機器の構成例を示す。この電子機器は、センサーデバイス10、検出装置30(広義には、集積回路装置)、処理部510、記憶部520、無線回路530、アンテナ540を含む。なお、本実施形態の電子機器は図15の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0119】
この電子機器では、センサーデバイス10が、各種の物理量(力、加速度、質量等)を検出する。そして、物理量を電流(電荷)や電圧等に変換して、検出信号として出力する。検出装置30は、センサーデバイス10からの検出信号を受けて、その検出信号のA/D変換を行う。処理部510は、検出装置30からのデジタルデータを受けて、そのデジタルデータに対する信号処理を行う。記憶部520は、検出装置30からのデジタルデータや処理部510からのデジタルデータを記憶する。無線回路530は、検出装置30や処理部510からのデジタルデータに対して変調処理などを行い、アンテナ540を用いて外部機器(相手側の電子機器)に送信する。またアンテナ540を用いて、外部機器からのデータを受信し、ID認証を行ったり、センサーデバイス10の制御等を行ってもよい。
【0120】
上記の構成例によれば、煙センサー、光センサー、人感センサー、圧力センサー、生体センサー、ジャイロセンサー等を内蔵した様々な電子機器を実現できる。また、無線通信を利用して非接触でデータの書き込みと読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)に用いられるICタグ(RFタグ)などの電子機器を実現できる。
【0121】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(搬送波信号、センサーデバイス、検出信号等)と共に記載された用語(キャリア信号、ジャイロセンサー、差動電流信号等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また電荷電圧変換回路、検出装置、電子機器等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 センサーデバイス、30 検出装置、40 駆動回路、42 増幅回路、
46 2値化回路、50 AGC回路、60 検出回路、70 電荷電圧変換回路、
100 A/D変換回路、110 第1のデルタ演算部、
120 第1のシグマ演算部、130 第2のデルタ演算部、
140 第2のシグマ演算部、150 量子化回路、510 処理部、
520 記憶部、530 無線回路、540 アンテナ、
C1〜C4 第1〜第4のキャパシター、CK1 クロック、
CK1〜CK14 第1〜第14のクロック、CLK 同期信号、
IFD フィードバック信号、ISM,ISP 差動電流信号、
N1 第1のノード、N2 第2のノード、NG グランドノード、
NI1 第1の入力ノード、NI2 第2の入力ノード、NQ1 第1の出力ノード、
NQ2 第2の出力ノード、QV1〜QV4 第1〜第4の変換部、
SG1〜SG8 第1〜第8のグランド用スイッチ素子、
SI1〜SI12 第1〜第12の入力用スイッチ素子、
SQ1〜SQ4 第1〜第4の出力用スイッチ素子、
SR1〜SR4 第1〜第4のリセット用スイッチ素子、
VD 駆動信号、VQP,VQM 差動電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシターと、
差動電流信号を構成する第1の信号が供給される第1の入力ノードと、前記キャパシターの一端側のノードである第1のノードとの間に設けられる第1の入力用スイッチ素子と、
前記差動電流信号を構成する第2の信号が供給される第2の入力ノードと、前記第1のノードと、の間に設けられる第2の入力用スイッチ素子と、
前記キャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための出力用スイッチ素子と、
を含むことを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、
前記差動電流信号の搬送波信号の周波数に同期した周波数のクロックによりオン・オフ制御されることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記クロックの周波数は、
前記搬送波信号の周波数と同じであることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、
逆相の前記クロックにより、排他的にオン・オフ制御されることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項5】
請求項4において、
第1の期間において、
前記第1の入力用スイッチ素子がオフになり、前記第2の入力用スイッチ素子がオンになり、
前記第1の期間に続く第2の期間において、
前記第1の入力用スイッチ素子がオンになり、前記第2の入力用スイッチ素子がオフになり、
前記出力用スイッチ素子は、
前記第1の期間と前記第2の期間を合わせた期間を少なくとも1回繰り返した後に、オンになることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
グランド電圧が供給されるグランドノードと、前記キャパシターの他端側のノードである第2のノードとの間に設けられる第1のグランド用スイッチ素子と、
前記グランドノードと、前記第1のノードとの間に設けられる第2のグランド用スイッチ素子と、
を含み、
前記第1のグランド用スイッチ素子は、
前記第1の入力用スイッチ素子がオンになる期間及び、前記第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになり、
前記第2のグランド用スイッチ素子は、
前記出力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
第2のキャパシターと、
前記第1の入力ノードと、前記第2のキャパシターの一端側のノードである第3のノードとの間に設けられる第3の入力用スイッチ素子と、
前記第2の入力ノードと、前記第3のノードとの間に設けられる第4の入力用スイッチ素子と、
前記第2のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための第2の出力用スイッチ素子と、
を含むことを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記第3の入力用スイッチ素子は、
前記第2の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになり、
前記第4の入力用スイッチ素子は、
前記第1の入力用スイッチ素子がオンになる期間においてオンになることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
第3のキャパシターと、
前記第1の入力ノードと、前記第3のキャパシターの一端側のノードである第5のノードとの間に設けられる第5の入力用スイッチ素子と、
前記第2の入力ノードと、前記第5のノードとの間に設けられる第6の入力用スイッチ素子と、
前記第3のキャパシターに蓄積された電荷に対応する電圧信号を出力するための第3の出力用スイッチ素子と、
を含むことを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項10】
請求項9において、
前記第3のキャパシターは、
前記キャパシターが前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子によりチャージされる第1のチャージ期間と次の第2のチャージ期間との間の期間において、前記第5の入力用スイッチ素子と前記第6の入力用スイッチ素子によりチャージされることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記差動電流信号は、
センサーデバイスから供給される電流信号であることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項12】
請求項11において、
前記センサーデバイスは、
駆動信号により駆動され、前記駆動信号の周波数に同期した搬送波信号により所望信号を伝送する前記差動電流信号を出力し、
前記第1の入力用スイッチ素子と前記第2の入力用スイッチ素子は、
前記駆動信号に基づくクロックによりオン・オフ制御されることを特徴とする電荷電圧変換回路。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の電荷電圧変換回路を含むことを特徴とする検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の検出装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−44571(P2012−44571A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185779(P2010−185779)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】