説明

電解質の精製方法、この方法により得られる電解質および発電装置ならびにこれらの使用

本発明は、少なくとも1種のアルカリ金属塩を含むイオン性電解質の精製方法に関する。この方法は、少なくとも1種のカルシウム塩の粒子が関与する少なくとも1つの接触工程を含む。本発明の方法は、そのとりわけ低い水含量によって特に特徴付けられる新規電解質を得るために使用できる。成分として前記電解質を含む、対応する電気化学的発電装置は、優れた安定性により特徴付けられ、非常に安全である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のアルカリ金属塩を含むイオン性電解質(ionic electrolyte)の精製を可能にする方法に関する。この精製は、イオン性電解質を、少なくとも1種のカルシウム塩と接触させることによって実施される。
こうして精製されるイオン性電解質は、特に、液体、ポリマーゲルまたは溶融塩タイプあるいはこれらの少なくとも2種の混合物からなるタイプのものである。
本発明の方法は、より詳しくは、処理される電解質を強く脱水することを可能にする。
【0002】
本発明は、特に、混合および純粋タイプの電解液(electrolytic solution)の調製に適用される。これらの溶液は、カーボネートタイプ(例えば、エチレンカーボネート(EC)またはプロピレンカーボネート(PC))の少なくとも1種の溶媒中に溶解した、アルカリ土類元素の塩(例えば、リチウム塩)の少なくとも1種を含む。
本発明の方法はまた、不純物を含むリチウム塩の精製にも使用できる。
このように、本発明の方法は、特に、水が150ppm未満であり得る、低い残留水含量を示す、イオン伝導性タイプの電解液を得ることを可能にする。
【0003】
本発明の方法は、特に、水が100ppm未満である精製されたリチウム塩を得ることも可能にし、これらのうち、HO含量が20ppm以下であるものは新規であり、本発明の一部をなす。
本発明の方法により得られる精製された電解質、特に、電解質溶液1リットル当たり水含量が20ppm以下である、本発明の方法により得られる無水溶液は、これらの独自の固有の特性により新規であり、また本発明の一部をなす。
同様に、本発明の精製された電解質および/または本発明の精製されたリチウム塩を組み入れた本発明の電気化学的発電装置は、特に、保存に際してひときわ優れた安定性を示し、それらは新規であり、また本発明の主題をなす。
【背景技術】
【0004】
高エネルギー密度を得るために、特にLiイオンまたはLi金属タイプの電池の製造に使用されるイオンタイプの電解液は、通常、指定量の塩(例えば、アルカリ金属塩)、溶媒、および、場合により、ゲルタイプのコンシステンシー(consistency;粘稠度)が望まれる場合には、ポリマーを混合することによって調製される。
【0005】
リチウムイオン電池の分野においては、LiPF+EC−DECタイプの電解質が市販の電池に使用されている。時間の関数としての電解質の経時変化(エージング)により水が生成する。電解質の長期保存の結果、水の生成により電解質が汚染されるということが起こる。電解質中の水の量が50ppmを超える時、電池の性能は損なわれ、そのため、寿命が短くなり、望ましくない自己放電現象が強まる。
【0006】
電解質の調製の間、水含量は非常に重要である。なぜなら、電解質中の水の存在がまた、特に、
− フッ素化誘導体、例えばHFなどの、電池の全ての部分を攻撃する攻撃的な酸;
− アルカリ金属塩の存在下でin situに生成し、電池の抵抗を不必要に増大させる、アルカリ金属塩の水酸化物;および
− 妨害するイオン反応;
の発生の原因にもなるからである。
【0007】
さらに、水は、電解質を還元し、また電極上の不動態皮膜の生成の原因となる。この反応はガスの生成を伴い、電池を安全でないものにする。
イオンタイプの電解質の水含量は、電解質の調製時には、通常、500と1000ppmの範囲内にある。
電気化学的装置における、重量で100ppmを超える水を含む電解質の存在は、その装置を安全でないものにし、また電極での出力低下を生じるため、その工業的関心を低下させる原因となる。
【0008】
イオン溶液の水含量を制限するのに現在用いられる技法の中で、特に、
− 水含量の少ない成分の使用および無水媒体中での調製;および
− モレキュラーシーブを通すことによる脱水;
が挙げられる。
これらの方法は、特に、モレキュラーシーブを数回通すことが必要であり、モレキュラーシーブは限られた回数使用された後で再生されなければならないという事実のために、実施するには複雑で、多くの費用がかかる。
さらに、このような電解質に存在する残留水の含量は依然として大きく、他の不純物も依然として存在する。
【0009】
電解質の精製のための知られている方法の複雑さと高コスト性は、「Handbook of Battery Materials(電池材料ハンドブック)」(J.O.Besenhard、Wiley−VCH、1999)の464頁に報告されている。
リチウム塩をベースとする電解液の精製は、通常このような塩が不純物を伴って得られるので、一層複雑である。
さらに、電解液は、保存時にも使用中にも、水和しようとする顕著な傾向を有するので、結果的に、これらの溶液がその中に存在する電気化学的装置の有効性をかなり低下させてしまう。保存時の有効性の損失は数カ月後に、また使用中の有効性の低下は、湿気の多い地域、特に熱帯地域においては数サイクルの後に、認められる。
【0010】
有効性のこれらの損失(低下)により、同様に費用の掛かる方法によって工場で再び脱水するために、電解質を工場に送り返すこと、あるいは安価な電気化学的装置に電解質を組み入れることが必要になる。
炭化カルシウム(CaC)の導入による中性溶液(例えばオイル)の脱水は、Hydro−Quebecの特許CA−A−22 077 30に記載されている。しかし、この文献は、CaCがイオンタイプの溶液を精製するために使用され得るという事実に関する如何なる言及も含まない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、従来技術として記載した方法の不都合を持っておらず、電解質の部分的な脱水だけでなく、高レベルの精製を可能にする、電気化学的イオン溶液の新規な精製方法が求められていた。
さらに、このような方法は、電解液が調製される工場でも、通常の作業者による保存場所でも、いずれでも実施できるべきであり、費用が掛からず、最少限の設備を必要とすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明との関連において、「電解液」という用語は、電解質(電解液)として使用できる任意の溶液を意味すると理解されている。著作「Electrochemistry Method(電気化学的方法)」(Allen J.Bard、Larry R.Faulkner、1980年版、John Wiley & Sons)の2頁に定義されている溶液は、特に関連がある。
電解質の概念は電気化学的発電装置の概念に結び付いており、電気化学的発電装置では、2つの相(電解質1/電解質2または電解質/電極)を含む系が電荷の運動の要因となる。
【0013】
上記の参考文献においては、電解質は、本質的に、その相を通して電荷がイオンの運動により発生する第1相として定義されている。
電解質は液体溶液または溶融塩であり得るし、あるいは、それらは、イオン伝導性固体、例えば、移動できるナトリウムイオンを示す、ナトリウム β−アルミナであり得る。
表面の第2相は別の電解質であり得るし、あるいは、電荷がその相を通して電子の運動により生じる相である電極であり得る。
【0014】
本発明の方法の使用によって精製できる電解液は、好ましくは、
− 0.1と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩(好ましくは、KTFSI、NaBF、リチウム塩およびこれらの塩の少なくとも2種の混合物から選択される);
− アルカリ金属塩の溶媒(これは、溶液のイオン伝導性に寄与する);
− 6000ppm以下、好ましくは50と5000ppmの間の不純物(好ましくは、少なくとも700から2000ppmの水を含み、他の不純物は、好ましくは、HF、NaおよびKからなる群から選択される);および
− 好ましくは、ポリマーゲルタイプの電解質の場合には、30重量%以下の1種のポリマーまたはポリマーのブレンド(これは、液体電解質内に1つのゲルマトリックスまたはいくつかのゲルマトリックスの生成をもたらす);
を含む。
【0015】
本発明の主題である方法は、カルシウム塩の粒子が、精製されようとする液体電解質に接触させられる少なくとも1つの段階を含むことに特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
電解質が、架橋によりゲルマトリックスを生じることができるポリマーを含む場合には、ポリマーの架橋は、好ましくは、架橋剤の存在下で、および/またはUV源の存在下で、本発明による精製処理の終了後に完了される。
本発明との関連において、溶融塩の一般的特質におけるそれらの定義として、「Molten Salt Techniques(溶融塩の技術)」(1巻、D.G.Lovering、R.J.Gale、1942、Plenum Press(New York)刊、C 1983−1984)、より特定すると、この文献の2から5頁が参照され、この文献は参照により本特許出願に組み込まれる。
【0017】
G.MorantおよびJ.Hladikは、「Electrochimie des sels fondus(溶融塩の電気化学)」(I巻、proprietes de transport(輸送特性)、Paris Masson刊、1969)の、propriete des solvants(溶媒の性質)の章において、液体の構造に基づいて、溶融塩は2つのグループに分けられることを具体的に記載している。第1グループはアルカリ金属ハロゲン化物のような化合物からなり、これらは主にイオン力により結合しており、第2グループは共有結合を必須なものとして含む化合物を含む。この文献は参照により本特許出願に組み込まれる。
【0018】
溶融塩は特殊な溶媒であり、イオン化溶媒と見なされ、この溶媒は、無機化合物を容易に溶かすことができ、高温で操作することが可能である。これらは、LiCl−KCl、NaCl−KClおよびLiNO−KNOのように、イオン性塩であることが多い。この定義は、session 2003,specific test−PC network−Institut National Polytechnique de Toulouse(セッション2003、特別試験−PCネットワーク−国立トゥールーズ理工科学院)から引用した。この文献は参照により本特許出願に組み込まれる。
【0019】
本発明との関連において、「溶融塩」という用語は、−30と350℃の間、好ましくは−20と60℃の間の温度で液体状態にある塩を意味すると理解されている。これは、350℃を超える温度では、本発明での混合物中に存在するポリマーが炭化され得る危険があるためである。
さらに一層特定すると、本発明との関連において利点のある溶融塩は、イミダゾリウム、イミジニウム、ピリジニウム、アンモニウム、ピロリウム、スルホニウムおよびホスホニウムの塩ならびにこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される少なくとも2種の塩からなるものである。
【0020】
好ましい例として、US−A−5,683,832(Bonhote他)に記載されている可溶性疎水性塩、および、M.Armand等による文献「Room Temperature Molten Salts as Lithium Battery Electrolyte(リチウム電池の電解質としての室温溶融塩)」(Electrochimica Acta,49(2004)4583−4588頁)に記載されるもの、ならびにこれらの少なくとも2種の混合物が挙げられる。これらの2つの文献は参照により本特許出願に組み込まれる。
これらの溶融塩は、本発明でのポリマー(polymer)/溶融塩(molten salts)/溶媒(solvent)(PSS)の3成分混合物中に存在する。これらの混合物、および、イオン伝導性塩の添加により得られる対応する4成分混合物は、室温(周囲温度)で均質な液状である。
【0021】
3成分または4成分混合物に存在するポリマーまたはポリマーブレンドは、3分岐(3-branch)ポリエーテルタイプ(好ましくは、Hydro−Quebecの特許であるUS−A−6,280,882に記載されているもの)または4分岐(4-branch)ポリエーテルタイプ(好ましくは、WO 03/063287の番号で公開されたHydro−Quebecの国際特許出願に記載されているもの)のポリマー、あるいはEGタイプのビニルポリマー(好ましくは、DKSの特許出願であるEP−A−1 249 461に記載されているもの)およびこれらのポリマーの少なくとも2種のブレンドの種類から選択される。この段落で挙げたこれらの文献は参照により本特許出願に組み込まれる。これらの好ましい種類のポリマーは、さらに有利には、紫外線、赤外線、熱処理および/または電子線(Eビーム)により架橋できるポリマーから選択される。これらのポリマーは、好ましくは、透明であるように選択される。
【0022】
3分岐ポリマー
Hiroe Nakagawa等による文献「Relationship between Structural Factor of Gel Electrolyte and Characteristics of Electrolyte and Lithium−ion Polymer Battery Performances(ゲル電解質の構造因子および電解質の特性とリチウムイオンポリマー電池の性能との間の関係)」(日本での第44回シンポジウム、Nov.4−6、2003、要約 3D26)に例示されるように、3分岐ポリマーは3分岐櫛型(3-branch comb)の形状を有する。これらのポリマーの実質的に平行な3つの分岐は、小さな骨格(好ましくは、鎖中に3個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子を含む)の中央および2つの末端に好ましくは付いている。
【0023】
3個の炭素原子を含む鎖の場合、これらの原子の各々が分岐に連結している。
これらの3分岐ポリマーの中で特に、また本発明との関連において、1000から1,000,000の範囲の平均分子量(Mw)を示すもの、より一層好ましくは5000から100,000の範囲の平均分子量を有するものが好ましい。
【0024】
4分岐ポリマー
Hydro−Quebecの国際特許出願WO 03/063287には、本発明に好ましいと見なされる4分岐ポリマー類が記載されている。
このようなポリマーは4分岐櫛型(4-branch comb)の形状を有する。これらのポリマーの実質的に平行な4つの分岐は、それぞれ、好ましくは4個の原子(好ましくは、4個の炭素原子である)を含む鎖からなる小さな鎖の2つの末端の間および2つの末端に付いている(好ましくは、鎖に対称に付いている)。
【0025】
4個の炭素原子を含む鎖の場合、それぞれの原子が分岐に連結している。
このようなポリマーは、好ましくは、ハイブリッド(混成)末端を、より好ましくはアクリレート(好ましくはメタクリレート)およびアルコキシ(好ましくは、1から8個の炭素原子を有するアルコキシ、より好ましくは、メトキシまたはエトキシ)を、あるいはまた、ビニルハイブリッド末端を有し、前記4分岐ポリマーの少なくとも1つの分岐(好ましくは、少なくとも2つの分岐)は、架橋を生成できる。
【0026】
好ましくは、4分岐ポリマーは、米国特許US−A−6,190,804(Ishiko他)の第1欄および第2欄に定義されるものの1つである。この文献は参照を通して本特許出願に組み込まれる。
このようなポリマーは、好ましくは、次の官能基、アクリレートまたはメタクリレートおよびアルコキシ、アリルオキシおよび/またはビニルオキシ、を含む末端を有する少なくとも4つの分岐を有するポリエーテルタイプの星形ポリマーであり、これらの末端官能基の少なくとも1つ、好ましくはこれらの末端官能基の少なくとも2つは架橋を可能にするために活性である。
分子量が30,000以上のポリエーテルの他の種類は、本発明と関連して有利に使用される。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、4分岐ポリマーは、好ましくは高分子量を有する4官能性ポリマーであり、式(I)に対応する。
【0028】
【化1】

【0029】
式中、RおよびRはそれぞれ、水素原子または(好ましくは、1から7個の炭素原子の)低級アルキルを表し;Rは、水素原子またはメチル基を表し;mおよびnはそれぞれ、0以上の整数を表し;大きな分子量を有する各鎖において、m+n>35であり;R、RおよびR基の各々、ならびにパラメータmおよびnの各々は高分子量を有する4つの鎖において同じであっても異なっていてもよい。
【0030】
これらの4分岐ポリマーの中で特に、1000と1,000,000との間の平均分子量を有するもの、より一層好ましくは5000から100,000の範囲の平均分子量を有するものが特に好ましい。
別の好ましい形態によれば、ハイブリッド末端(アクリレートまたはメタクリレートおよびアルコキシ、アリルオキシ、ビニルオキシ)を有する少なくとも4分岐の星形ポリエーテルが選択される。
【0031】
また、EGタイプのビニルポリマー、より特定すると、DKSの特許出願EP−A−1 249 461に記載されるものが保護材料として特に利点がある。これらのポリマーの中で特に利点があるのは、600から2500までの範囲の平均分子量を有するものである。
この種類のポリマーは、有利には、エチレンオキシドおよび2,3−エポキシ−1−プロパノールと出発物質とを反応させることによって、あるいは、2,3−エポキシ−1−プロパノールと出発物質としてのエチレングリコールとを反応させてポリマー化合物を生成させることによって得ることができる。この段階の後、得られるポリマー化合物の骨格(バックボーン)および側鎖の各末端に重合性および/または非重合性官能基が導入される。
【0032】
1つまたは複数の活性水素残基を有する化合物およびアルコキシド化合物もまた出発物質として使用できる。
1つまたは複数の活性水素残基を有する化合物の活性水素残基の例には、好ましくは1から5個の活性水素残基を有するヒドロキシル基のグループが含まれる。1つまたは複数の活性水素残基を有する化合物の具体例には、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、グリセロール、ジグリセロール、ペンタエリトリトールおよびこれらの誘導体が含まれる。
具体的なアルコキシドの例には、また、CHONa、t−BuOKおよびこれらの誘導体が含まれる。
【0033】
本発明でのポリエーテルポリマー化合物は、式(1)により表される構造単位、また式(2)により表される構造単位および/または式(3)により表される構造単位を有する。1分子中の式(1)により表される構造単位の数は、1から22,800、より有利には5から11,400、より一層有利には10から5700である。式(2)または(3)(しかし、両方が含まれる場合、これは総数である)の構造単位の数は、1から13,600、より有利には5から6800、より一層有利には10から3400である。
式(1)、(2)および(3)は、以下である。
【0034】
【化2】

【0035】
各分子の末端に導入される重合性官能基の例には、(メタ)アクリレート残基、アリル基およびビニル基が含まれ、非重合性官能基の例には、アルキル基またはホウ素原子を含む官能基が含まれる。
上記のアルキル基のように、1から6個の炭素原子を有するアルキル基が有利であり、1から4個の炭素原子を有するものは一層有利であり、メチル基は特に有利である。
ホウ素原子を含む官能基の例には、次の式(4)および(5)により表されるものが含まれる。
【0036】
【化3】

【0037】
式(4)におけるR11およびR12、ならびに式(5)におけるR21、R22およびR23は、同じであって異なっていてもよく、各々は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ホルミル、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、カルボンアミノ(carbonamino)、オキシスルホニルアミノ、スルホンアミド、オキシカルボニルアミノ、ウレイド、アシル、オキシカルボニル、カルバモイル、スルホニル、スルフィニル、オキシスルホニル、スルファモイル、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、複素環、−B(R)(R)、−OB(R)(R)またはOSi(R)(R)(R)を表す。(R)、(R)および(R)はそれぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシル、ホルミル、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、カルボンアミノ、オキシスルホニルアミノ、スルホンアミド、オキシカルボニルアミノ、ウレイド、アシル、オキシカルボニル、カルバモイル、スルホニル、スルフィニル、オキシスルホニル、スルファモイル、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、複素環またはこれらの誘導体を表す。式(4)におけるR11およびR12ならびに式(5)におけるR21、R22およびR23は、一緒に結合して環を生成してもよく、この環は置換基を有し得る。それぞれの基はまた、置換基により置換されていてもよい。さらに、式(5)におけるXは、アルカリ金属イオンを表し、有利にはリチウムイオンである。
【0038】
ポリエーテルポリマーの分子鎖の末端は、全て、重合性官能基であっても非重合性官能基であってもよく、あるいは、両方を含んでいてもよい。
このタイプのポリエーテルポリマー化合物の平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、通常、それは、約500から200万、有利には約1000から150万である。
これらの好ましい種類のポリマーは、さらに有利には、紫外線、赤外線、熱処理および/または電子線(Eビーム)により架橋し得るポリマーから選択される。
【0039】
ポリマーマトリックスは、電解質前駆体が入れられた電気化学的装置において、WO 2004/088610の番号で公開された国際特許出願または2005/0234177 A1の番号で公開されたHydro−Quebecの米国特許出願に記載されている方法の1つを好ましくは用いることによって、好ましくは生成される。これらの文献の内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0040】
電解液へのCaCの導入は、脱水後に存在する残留水を減らすことを可能にし、次の反応による、アセチレンガスの生成を伴う:
CaC(固体)+2HO(電解質)→Ca(OH)(固体)+C(ガス)
水は、水酸化カルシウムの生成、およびアセチレンの脱ガスにより除去される。
アセチレンは、蒸発により、脱ガスにより、あるいは不活性ガス(例えば、窒素またはヘリウム)によるパージングにより除去され、これにより、電解液で生成したアセチレンを完全に除去することが可能である。
【0041】
予想外に、CaC粒子の大きさが残留水の量に影響を及ぼすことが見出された。これは、マイクロメーターの大きさ、好ましくはナノメートルの大きさの粒子の使用により、水分子とCaC粒子により生成される表面との間の接触表面積が増加し、このため除去される残留水の量が最大になることが実際に示されたためである。
電解質(HO)とカルシウム塩(例えば、CaC)粒子との間の接触を効率的にするために、混合物は、有利には1時間、運転されるミキサーに入れられる。
(好ましくは超遠心タイプの)遠心が、精製された電解質からなる液相を、水酸化カルシウムおよび僅かなパーセンテージの未反応炭化カルシウムからなる固相から分離するために使用される。
液相と固相の分離はまた、固相を沈殿させることによっても達成できる。
【0042】
本発明の方法は、連続的に、バッチ式に、または半連続的に実施できる。
精製の間に生成した水酸化カルシウムの焼成により回収された炭化カルシウムは、有利にリサイクルできる。
精製は、好ましくは、不活性雰囲気下で、より一層好ましくは、アルゴンおよび/または窒素下で実施される。
本発明の方法の半連続式実施の場合には、精製は、カルシウム塩の床が使い果たされるまで、液体電解質を、カルシウム塩の床に連続的に透過させることによって、有利に実施される。
【0043】
本発明の第1の主題は、少なくとも1種のアルカリ金属塩を含むイオン性電解質の精製方法からなる。この方法は、CaC、CaHおよびこれらの混合物からなる群から好ましくは選択される少なくとも1種のカルシウム塩の粒子が、当該電解質に接触させられる少なくとも1つの段階を含む。
【0044】
第1の代替形態によれば、本発明の方法は、イオン伝導性を付与し、またアルカリ金属塩を溶解する溶媒(この溶媒はイオンタイプである)の少なくとも1種を含む、好ましくは室温(周囲温度)で液体の、液体イオン性電解質の精製に適用される。
第2の代替形態によれば、電解質は1種のポリマーゲルタイプのもの、または少なくとも2種のポリマーゲルの混合物を含むタイプのものであり、精製は、ポリマーマトリックスの生成の前に実施される。
【0045】
第3の代替形態によれば、イオン性電解質は、アルカリ金属塩を含むかまたは含まず、好ましくは、リチウム塩を含むかまたは含まない、溶融塩(イオン液体)タイプのものである。より一層好ましくは、電解質は溶融塩または少なくとも2種の溶融塩の混合物を含む。
第4の代替形態によれば、イオン性電解質は、液体、ゲルおよび溶融塩のタイプの電解質からなる群から選択される少なくとも2種の電解質の混合物である。
【0046】
本発明の方法の利点のある実施形態によれば、精製は、
− 0.1と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− アルカリ金属塩の溶媒(これは、溶液のイオン伝導性に寄与する);および
− 6000ppm以下の不純物;
を含む液体電解質に適用される。
【0047】
本発明の方法の有利な別の実施形態によれば、本発明の方法は、
− 0.1と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− アルカリ金属塩の溶媒(これは、溶液のイオン伝導性に寄与する);
− 6000ppm以下の不純物;および
− ポリマーまたはポリマーブレンドであって、好ましくは、液体電解質内にゲルマトリックスを生成する30重量%以下のポリマー、あるいは、好ましくは、液体電解質内に1種または複数のゲルマトリックスを生成する30重量%以下のポリマーブレンド;
を含むゲル電解質の精製に適用される。
【0048】
本発明の方法の有利な別の実施形態によれば、本発明の方法は、
− 0と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− 場合により、アルカリ金属塩の溶媒(これは、溶液のイオン伝導性に寄与する);および
− 6000ppm以下の不純物;
を含む溶融塩タイプの電解質の精製に適用される。
【0049】
好ましくは、溶融塩の陰イオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)および/またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)である。
より有利には、溶融塩の陽イオンは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)および/またはN−メチル−N−プロピルピロリジニウムおよび/またはN−メチル−N−ブチルピロリジニウム(PY14)および/またはN−メチル−N−プロピルピペリジニウム(PPT3)である。
【0050】
本発明の方法の有利な別の実施形態によれば、本発明の方法は、(イオン液体+ポリマー)、(イオン液体+溶媒)および(イオン液体+溶媒+ポリマー)の群から選択される電解質混合物の精製に適用される。
本発明の精製方法は、アルカリ金属塩の任意のタイプを含む電解質の精製に適用できるが、KTFSI、NaBF、リチウム塩およびこれらの塩の少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるアルカリ金属塩の任意のタイプを含む電解質の精製に適用される時に、特に利点がある。
【0051】
本発明の方法により成功裏に精製される電解質は、好ましくは50と5000ppmの間(境界値も含まれる)の不純物を、より一層好ましくは700と2000ppmの間(境界値も含まれる)の水を含み、他の不純物は、好ましくは、HF、Na、Kおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、1と100マイクロメートルの間(境界値も含まれる)のd50、より一層好ましくは10と50マイクロメートルの間(境界値も含まれる)のd50を示す、カルシウム塩の粒子(これが精製を実施するために使用される)を用いて実施される。
【0052】
好ましくは、カルシウム塩の粒子は、BET法に従って測定して、5と200m/グラムの間(境界値も含まれる)、より一層好ましくは30と100m/グラムの間(境界値も含まれる)の比表面積を有する。
特に有利な結果は、用いられるカルシウム塩の量が、除去される水の量に対して過剰量である時に得られ、この用いられるカルシウム塩の量は、好ましくは、精製される電解質の20ml当たり少なくとも5グラム、より一層好ましくは、精製される電解質の20ml当たり10から15グラムである。
【0053】
利点のある別の代替形態によれば、本発明の電解質精製方法は、精製される電解質へのカルシウム塩の粒子の添加、および、こうして得られた混合物を、好ましくは機械的撹拌および/または超音波により、好ましくは5分と3時間の間の時間、やはり好ましくは不活性雰囲気(これは、好ましくは、アルゴン、窒素またはヘリウムあるいはこれらのガスの混合物からなる)下で、また有利には10と80℃の間の温度で、より一層好ましくは25と60℃の間の温度で、より一層有利には40℃辺りの温度で、均質化することにより実施される。
【0054】
優れた結果が、100マイクロメートルと1ナノメートルの間の大きさ、好ましくは50マイクロメートルと5ナノメートルの間の大きさを有するカルシウム塩の粒子を用いることによる本発明の精製方法で得られる。
好ましくは、電解質は、CaCおよび/またはCaHの粒子を、精製される電解質に接触させることによって精製される。
【0055】
有利には、アルカリ金属塩は、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiBOB、LiDCTAおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から好ましくは選択されるリチウム塩であり、このリチウム塩は、電解質の量に対して表して、好ましくは0.1と2モルの間、より好ましくは0.2と1モルの間の濃度で電解質中に存在する。リチウム塩はまた、電解質の量に対して表して0.5と1.5モルの間の濃度で電解質中に存在し得る。
アルカリ金属塩を溶解する溶媒が用いられる場合、溶媒は、好ましくは、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)、DME(ジメチルエチレン)、DMC(ジメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、GBL(γ−ブチロラクトン)およびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるカーボネートであり、この溶媒は、加えるアルカリ金属塩の量がこれに対して計算されるモル基準となる。
【0056】
ポリマーゲルタイプの電解質の精製のために本発明の方法を実施する際に、ポリマーは、ポリエーテル、シロキサン、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))のタイプまたはこれらのポリマーの少なくとも2種のブレンドからなるタイプのものであり、電解質のポリマー含量は、電解質の全重量の、好ましくは1と30%の間、より一層好ましくは5と15%の間である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態として、
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩;
− 溶媒;
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);
を含む液体電解質の精製への適用を挙げることができ、
この方法は、
a)電解質と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの組合せによって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムおよび過剰のカルシウム塩からなる固相を、精製された電解質からなる液相から分離する段階;および
c)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の分離は、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態として、
− 少なくとも1種の溶融塩;
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩(このアルカリ金属塩の量は溶融塩の量に対して表されている);および
− 溶媒(ある場合とない場合がある);
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);
を含む溶融塩タイプの電解質の精製への適用を挙げることができ、
この方法は、
a)電解質と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを混合物から除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの混合によって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムおよび過剰のカルシウム塩からなる固相を、精製された電解質からなる液相から分離する段階;および
c)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の分離段階は、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で、完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である。
【0059】
本発明の他の好ましい実施形態として、ゲルタイプの電解質の精製への適用を挙げることができる。このタイプの電解質では、精製は、
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩;
− 溶媒;
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);および
− 30重量%までの液体電解質中に存在するポリマー;
を含む電解質前駆体から出発して実施され、
この方法は、
a)電解質前駆体と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを混合物から除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの混合によって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムおよび過剰のカルシウム塩からなる固相を、精製された電解質前駆体からなる液相から分離する段階;
c)ポリマーをポリマーマトリックスに変換することによって、電解質前駆体をポリマーゲル電解質に変換する段階であって、この変換は、好ましくは、60と80℃の間(境界値も含まれる)の温度で、好ましくは15分と120分の間、好ましくは45と60分の間である時間、4分岐に関する特許WO 03/063287に記載されているものから好ましくは選択され、また500と2000ppm、好ましくは約1000ppmの含量であるマトリックスの前駆体の存在下で実施され、より一層有利には、前駆体は、Perkadox(商標)タイプ、Akzo−Nobel製の塩であり、ポリマーのポリマーマトリックスへの変換は、好ましくは、精製された電解質前駆体が入れられた電気化学的装置において実施される;および
d)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の分離は、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で、完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である。
【0060】
本発明の精製方法は、精製される電解質とは無関係に、連続的に実施でき、この場合、好ましくは、
− 段階c)において回収される炭化カルシウムは、段階a)にリサイクルされ;
− 精製は、好ましくは、不活性雰囲気下で、より一層好ましくは、アルゴンおよび/または窒素下で実施される。
本発明の精製方法は、精製される電解質とは無関係に、半連続的に実施でき、この場合、好ましくは、カルシウム塩の床が使い果たされるまで、カルシウム塩の床に、液体電解質を連続的に透過させることによって実施できる。
【0061】
本発明の第2の主題は、本発明の第1の主題による方法の1つを用いることによって得られる、精製された液体電解質からなる。
好ましくは、この電解質は、1種または複数の不純物の20ppm未満を含む。より一層有利には、電解質は、1種または複数の不純物の1ppm未満を含む。この不純物は、有利には、水である。
【0062】
有利には、液体電解質は、
− 少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− 溶媒;
− 不純物;および
− 場合により、ポリマー;
を含み、
前記電解質は次の条件:
− 10ppm未満の水(カール・フィッシャー法により測定して);
− 10ppm未満のHF(濾過により測定して);
− 10ppm未満のカリウム(ICP(誘導結合プラズマ)により測定して);および
− 10ppm未満のナトリウム(ICPにより測定して);
の少なくとも1つを満たす。
【0063】
有利には、液体電解質は、
− 5ppm未満の水;
− 5ppm未満のHF;
− 5ppm未満のカリウム;および
− 5ppm未満のナトリウム;
を含むであろう。
【0064】
より一層有利には、液体電解質は、
− 1ppm未満の水;
− 1ppm未満のHF;
− 1ppm未満のカリウム;および
− 1ppm未満のナトリウム;
を含むであろう。
【0065】
別の特に有利な代替形態によれば、液体電解質は、
− 0.5ppm未満の水;
− 0.5ppm未満のHF;
− 0.5ppm未満のカリウム;および
− 0.5ppm未満のナトリウム;
を含むであろう。
【0066】
本発明の第3の主題は、本発明の第1の主題を構成する方法を用いることによって得られる精製された電解質を含む、あるいは、本発明の第2の主題を成す精製された電解質を含む、電気化学的発電装置からなる。
前記発電装置は、有利には、LiイオンタイプまたはLi金属タイプのものである。
特に利点のある代替形態によれば、本発明の発電装置におけるアノードは、グラファイト、カーボン、炭素繊維、合金またはLiTi12またはこれらの少なくとも2種の混合物である。
【0067】
別の特に利点のある代替形態によれば、本発明の発電装置におけるカソードは、LiCoO、LiMnN、LiFeMPO、LiFePO、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、LiCoPOおよびLiTi12のタイプならびにこれらの少なくとも2種の混合物のカソードからなる群から選択される。
Li再充電可能タイプ(二次タイプ)または一次タイプで、発電装置のアノードがリチウム金属に基づいており、そして、本発明の電解質を含む本発明の発電装置が特に好ましい。
【0068】
本発明の第4の主題は、不純物を含むアルカリ金属塩の精製方法からなり、この方法は、アルカリ金属塩を、低蒸発温度を有し(好ましくは、アセトン、トルエン、ヘプタン、エタノールおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される)、水含量が非常に小さい溶媒に溶解すること、次いで、こうして得られたアルカリ金属塩溶液を過剰のカルシウム塩により処理すること、そして、最後に、アルカリ金属塩および溶媒を含む液相を、不純物および水酸化カルシウムを含む固相から分離することからなる。
【0069】
好ましくは、不純物を含むアルカリ金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびこれらの少なくとも2種の不純物を含む混合物から選択される。好ましくは、不純物を含むリチウム塩が選択されるであろう。
好ましくは、この精製方法は、アルカリ金属塩、好ましくは、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiBOB、LiDCTAおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択されるリチウム塩に適用される。
好ましくは、精製されるアルカリ金属塩(好ましくはリチウム塩)は、100と500ppmの間の、好ましくは水またはHFあるいはこれらの混合物の不純物含量を示す。
【0070】
有利には、精製されるアルカリ金属塩は、不純物を含む、ナトリウム、カリウムおよびリチウムの塩ならびにこれらの少なくとも2種の混合物の群から選択される。
有利には、精製されるリチウム塩は、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiPFおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
特に有利な成果は、0.1Mと2Mの間、好ましくは0.2Mと1Mの間である、(精製されるリチウム塩)/(低蒸発温度の溶媒)の比で、精製が実施される時に得られる。
【0071】
本発明の第5の主題は、本発明の第4の主題を成す方法の1つを用いることによって得られる、アルカリ金属塩、好ましくは精製されたリチウム塩からなる。
好ましくは、これらの精製されたアルカリ金属塩は、次の特性の少なくとも1つによって特徴付けられる:
− 20ppm以下の水含量;および
− 容量損失が減少したかまたはゼロで、電池の構成部品を破壊するHFなどの妨害反応物を生成することのない、アルカリ金属塩を含む電池のサイクルの、向上した安定性。
4と2.5ボルトの間で実施されるサイクル(充電/放電)試験において、100サイクル当たりの容量損失における少なくとも1%の低減が見出され得る。
【実施例】
【0072】
(本発明の好ましい実施形態の説明)
以下の実施例は純粋に例示のために記載され、特許請求の範囲に記載されている、本発明の主題への限定となるべきではない。
実施例1から3において用いられるリチウム塩およびこれらの調製方法は、特に、Hydro−Quebecの2つの特許、US−A−6,576,159およびUA−A−6,333,425に記載されている。
実施例4および5において用いられるリチウム塩は市販の製品である。
【0073】
実施例1
粒径d50=20μm、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定して30m/グラムの比表面積を有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、LiFSI+EC+γBLの組成を有する電解質の40mlと混合する。
電解質中に確認された不純物は、それぞれ200および1100ppmのHFとHOである。
調製は、ヘリウム雰囲気下で、グローブボックス内で実施する。次いで、ボトルを、グローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。次いで、混合物のボトルを、13,000rpm(1分間当たりの回転数)の回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して1ppm未満である。
【0074】
実施例2
19.8グラムのLiFSIを、100mlのEC+γBL(エチレンカーボネート及びガンマ−ブチロラクトン)に混合する。
電解質に確認された不純物はHFおよびHOである。
O含量は1000ppmであり、HF含量は150ppmである。溶液の色は黄色味を帯びている。
【0075】
2つの同じボタン電池を、次の配置構成:
天然グラファイト(NG)(−)/(電解質:1MのLiFSI+EC+γBL)/LiFePO(+)
に従って、LiFSI(1M)+EC+γBLの未精製の溶液の0.2mlを用いて組み上げる。この電池は750オームのインピーダンスを示す。
電池の性能の再現性を確認するために、2つの同じ電池をこうして調製した。
電気化学により、C/24サイクル(24時間の充電と24時間の放電)後に得た容量は、LiFePOについて5.25mAh/g(これは理論容量の3%に相当する)であることが示される。
【0076】
上で用いたEC+γBL中の1MのLiFSI溶液を、前の実施例1と同じ条件下で実施して、本発明の方法に従って精製する。その水含量は1ppmまで低下し、溶液の色は薄いことが見出される。
0.5mlの精製した溶液を用いて組み上げた、NG/1MのLiFSI EC+γBL(精製)/LiFePOのタイプの2つのボタン電池は、9オームのインピーダンスを示す。
得られた容量は140mAh/gであり、これは理論容量の80%に相当する。
【0077】
実施例3
14.9グラムのLiDCTA塩を、100mlのEC+γBLと混合する。この溶液の色は暗褐色である。
電解質に確認された不純物はHFおよびHOである。
O含量は1400ppmである。
LiTi12(−)/1MのLiDCTA+EC+γBL/LiFePO(+)のタイプの2つのボタン電池を組み上げる。これらのインピーダンスは950オームである。
2つのボタン電池の容量はLiFePOについて3.5mAh/gであり、これは理論容量の2%に相当する。
1MのLiDCTA+EC+γBLの溶液を、実施例1の条件下で実施して、本発明の方法に従って、2ppmの水含量が得られるまで精製する。得られた溶液は色が薄い。
【0078】
LiTi12(−)/1MのIFSI+EC+γBL/LiFePO(+)のタイプの2つのボタン電池を、精製した溶液を用いて組み上げる。これらのインピーダンスは7オームである。
これらの容量はLiFePOについて157mAh/gであり、これは理論容量の90%に当たる。
【0079】
実施例4(1000ppmの水の添加)
Tomiyama(日本)により2003年に販売された、1MのLiPF+EC+DEC(ジエチルカーボネート)の工業用溶液を、この実施例の実施に選択する。
この市販の電解液は、不純物として、20ppmの水含量、14ppmのHF含量、および、Ca、FeおよびKの構成要素の各々の1ppmの含量を備える。
【0080】
2つの同じボタン電池セルを、次の様に組み上げる:
NG(−)/1MのLiPF+EC+DEC/LiFePO(+)
これらのインピーダンスは10オームであり、これらの容量は理論容量の75%である。
1000ppmの量の水を、1MのLiPF+EC+DECの母液に注入した。24時間後に、HF含量は75ppmに上昇した。他方、Ca含量、Fe含量およびK含量は1ppmで一定に留まった。溶液は、黄色味を帯びた。市販の電解液への水の添加は、湿気の多い環境における電解質の経時変化(エージング)のモデルとすることができる。
【0081】
2つのボタン電池のインピーダンスは770オームまで増加する。得られた容量は理論容量の4%である。
1000ppmの水を含む、1MのLiPF+EC+DECの溶液を、実施例1の条件下で実施して、本発明の方法に従って、1ppmの水含量および3ppmのHF含量が得られるまで、精製する。
Na、CaまたはKの痕跡は全く検出されない。
2つの同じボタン電池を次の化学に従って組み上げる:
NG(−)/1MのLiPF+EC+DEC/LiFePO(+)
これら2つの電池のインピーダンスは7オームであり、容量は理論容量の80%である。
【0082】
実施例5−電解質の保存
Tomiyamaにより2003年に販売された、1MのLiPF+EC+DECの溶液を、この実施例の具体例として用いる。この溶液は、最初、20ppmの水、および14ppmのHFを含む。それをグローブボックスの外側に11カ月、保存する。
この場合、この期間の間に、水含量は500ppmに変わり、HF含量は350ppmに変わったことが見出される。
2つのボタン電池を次の様に組み上げる:
NG/1MのLiPF+EC+DEC/LiFePO
【0083】
この2つのセルのインピーダンスは450オームである。得られた容量は、LiFePOについて8.7mAh/gであり、これは理論容量の5%に当たる。
この溶液を、実施例1の条件下で実施して、本発明の方法に従って精製する。水含量は1ppmであり、HF含量は3ppmである。
精製した溶液を用いて組み上げた2つのボタン電池のインピーダンスは7オームである。
これらの電池の容量は、LiFePOについて140mAh/gであり、これは理論容量の80%に相当する。
【0084】
実施例6−TFSIイオン液体
粒径d50=20μm、測定した比表面積30m/グラムを有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、エチルメチルイミダゾリウム(EMI) ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)の組成を有する30mlのイオン液体と混合する。
精製される電解質の測定水含量は1200ppmである。
調製はヘリウム雰囲気下でグローブボックス内で実施する。
次いで、ボトルをグローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。
【0085】
次いで、混合物のボトルを、13,000rpmの回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して5ppm未満である。
【0086】
実施例7−TFSIイオン液体
粒径d50=20μm、測定した比表面積30m/グラムを有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、1MのLiTFSIを含む実施例6のエチルメチルイミダゾリウム(EMI) ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)の組成を有する35mlのイオン液体と混合する。
精製される電解質の測定水含量は1100ppmである。
【0087】
調製はヘリウム雰囲気下でグローブボックス内で実施する。次いで、ボトルをグローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。次いで、混合物のボトルを、13,000rpmの回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して7ppm未満である。
【0088】
実施例8−TFSIイオン液体+1MのLiTFSI混合物
粒径d50=20μm、測定した比表面積30m/グラムを有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、1MのLiTFSIを含む実施例6のエチルメチルイミダゾリウム(EMI) ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)の組成を有する30mlのイオン液体と混合する。
精製される電解質の測定水含量は1500ppmである。
【0089】
調製はヘリウム雰囲気下でグローブボックス内で実施する。次いで、ボトルをグローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。次いで、混合物のボトルを、13,000rpmの回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して10ppm未満である。
【0090】
実施例9−FSIイオン液体+1MのLiFST
粒径d50=20μm、測定した比表面積30m/グラムを有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、エチルメチルイミダゾリウム(EMI) ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)+1MのLiFSIの組成を有する40mlのイオン液体と混合する。
精製される電解質の測定水含量は1300ppmである。
【0091】
調製はヘリウム雰囲気下でグローブボックス内で実施する。次いで、ボトルをグローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。次いで、混合物のボトルを、13,000rpmの回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して10ppm未満である。
【0092】
実施例10−溶媒(アセトニトリル)中のLiTFSI塩の精製
粒径d50=20μm、測定した比表面積30m/グラムを有する10グラムの炭化カルシウム(CaC)粒子を、50mlの容積のポリエチレンボトルに入れ、アセトニトリル中1MのLiTFSIの組成を有する30mlのイオン液体と混合する。LiTFSIは2000ppmのHOを含み、アセトニトリル(Aldrich)は無水である。
精製される電解質の測定水含量は2000ppmである。
【0093】
調製はヘリウム雰囲気下でグローブボックス内で実施する。次いで、ボトルをグローブボックスの外側に置いたミキサーに1時間入れる。次いで、混合物のボトルを、13,000rpmの回転速度で運転する超遠心機に5分間入れる(これは、液相を固相から分離するために行なう)。
精製した電解質をグローブボックス内で沈殿により分離する。痕跡量の固体および不純物をできるだけ多く除去するために、この処理を3回繰り返す。最終の精製電解質中の残留水の量は、カール・フィッシャー法により測定して10ppm未満である。
【0094】
(特別な利点)
本発明の特に利点のある応用の1つは、6カ月を超えて保存される電解質の精製が可能であることにある。この精製技法は、電池を製造する会社、および電解質を製造する会社にとって特に経済的である。これは、電池を製造する会社の場合には、数週間続くと思われる製造上の問題が電解質の全在庫を無駄にする結果になり得るためである。
こうして、本発明による方法により、電解質の保存時間は可能性として無制限になる。
【0095】
本発明の別の応用として、電解質を製造する会社は、電解質の合成の後の最終段階としてこの精製方法を用いることができる。実際に、残留水は除去されるであろうから、電解質の保存期間は延長される。
本発明の別の応用として、リチウム塩の製造業者は、リチウム塩(不純物を含み、また水素化されている可能性がある固体状で得られることが多い)の品質を向上させることができる。リチウム塩はその吸湿性で知られている。リチウム塩は、最初に、低蒸発温度を有し(例えば、アセトン、トルエン、ヘプタン、エタノールまたはこれらの少なくとも2種の混合物)、また水含量が非常に小さい溶媒に溶かされる。過剰(溶液に存在する水の量に対して過剰量)のカルシウム塩によるリチウム塩溶液の処理により、液相と固相の分離後に水含量を数ppmの程度に減らすことが可能である。
【0096】
最後に、本発明の方法は、非常に優れた純度により特徴付けられる新規電解質を利用可能にすることにより、今日まで決して達成されなかった性能レベルを有する、リチウム塩をベースとする電解質を用いる電気化学的装置の製造を可能にする。
【0097】
本発明が具体的な実施例を用いて説明されたが、いくつかの変更および修正が前記実施例に付加され得ることが理解される。また、本発明は、本発明の原理に一般的に従い、また、特許請求の範囲に合致して、本発明が直面する活動分野において将来知られ慣例となり、前記の本質的要素に適用され得る、本説明のどのような変更も含む、そのような修正、本発明の使用法または適応をも包含しようとするものであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアルカリ金属塩を含むイオン性電解質の精製方法であって、少なくとも1種のカルシウム塩の粒子を前記電解質に接触させる少なくとも1つの段階を含む方法。
【請求項2】
前記イオン性電解質が液体で、好ましくは周囲温度で液体であり、前記イオン性電解質が、前記アルカリ金属塩を溶かすイオンタイプの溶媒の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記イオン性電解質が、ポリマーゲルタイプ、または少なくとも2種のポリマーゲルの混合物を含むタイプのものであり、前記精製がポリマーマトリックスの生成の前に実施される、請求項1に記載の精製方法。
【請求項4】
前記イオン性電解質が、アルカリ金属塩を含むかまたは含まず、好ましくはリチウム塩を含むかまたは含まない溶融塩タイプのものであり、より一層好ましくは、前記電解質が1種の溶融塩または少なくとも2種の溶融塩の混合物を含む、請求項1に記載の精製方法。
【請求項5】
前記イオン性電解質が、液体、ゲルおよび溶融塩のタイプからなる群から選択される少なくとも2種の電解質の混合物である、請求項1に記載の精製方法。
【請求項6】
液体タイプの前記イオン性電解質が、
− 0.1と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− 溶液のイオン伝導性に寄与する、アルカリ金属塩の溶媒;および
− 6000ppm以下の不純物;
を含む、請求項2に記載の精製方法。
【請求項7】
ゲルタイプの前記イオン性電解質が、
− 0.1と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− 溶液のイオン伝導性に寄与する、アルカリ金属塩の溶媒;
− 6000ppm以下の不純物;
− 場合により、前記イオン性電解質内にゲルマトリックスの生成をもたらす、30重量%以下のコポリマー;および
− 前記イオン性電解質内に1種のゲルマトリックスまたはいくつかのゲルマトリックスの生成をもたらす、1種のポリマーまたはポリマーのブレンド、好ましくは30重量%以下の1種のポリマーまたはポリマーのブレンド;
を含む、請求項3に記載の精製方法。
【請求項8】
溶融塩タイプの前記イオン性電解質が、
− 少なくとも1種の溶融塩;
− 0と2モルの間の少なくとも1種のアルカリ金属塩(アルカリ金属塩のこの量は溶融塩の量に対して表されている);
− 場合により、アルカリ金属塩の溶媒(これは、溶液のイオン伝導性に寄与する);および
− 6000ppm以下の不純物;
を含む、請求項4に記載の精製方法。
【請求項9】
前記溶融塩の陰イオンが、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)および/またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)である、請求項4または8に記載の精製方法。
【請求項10】
前記溶融塩の陽イオンが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)および/またはN−メチル−N−プロピルピロリジニウムおよび/またはN−メチル−N−ブチルピロリジニウム(PY14)および/またはN−メチル−N−プロピルピペリジニウム(PPT3)である、請求項4、8または9に記載の精製方法。
【請求項11】
前記電解質の前記混合物が、イオン液体とポリマーとを加えたもの、イオン液体と溶媒とを加えたもの、およびイオン液体と溶媒とポリマーとを加えたものの群から選択される、請求項5に記載の精製方法。
【請求項12】
前記アルカリ金属塩が、ナトリウム、カリウムおよびリチウムの塩ならびにこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択され、前記アルカリ金属塩が、好ましくは、KTFSI、KFSI、NaBF、リチウム塩およびこれらの塩の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項13】
前記イオン性電解質が、精製前に、50と5000ppmの間の不純物、好ましくは少なくとも700から2000ppmの水を含み、他の不純物が、好ましくは、HF、Na、Kおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項14】
前記精製を実施するために用いられる前記カルシウム塩の前記粒子が、1と100マイクロメートルの間(境界値も含まれる)のd50、より一層好ましくは、10と50マイクロメートルの間(境界値も含まれる)のd50を示す、請求項1から13のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項15】
カルシウム塩の前記粒子が、BET法により測定して、5と200m/グラムの間(境界値も含まれる)、より一層好ましくは30と100m/グラムの間(境界値も含まれる)の比表面積を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項16】
用いられるカルシウム塩の量が、除去される水の量に対して過剰であり、用いられるカルシウム塩の量が、好ましくは、精製される電解質の20ml当たり少なくとも5グラム、より一層好ましくは、精製される電解質の20ml当たり10から15グラムである、請求項1から15のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項17】
前記精製が、前記電解質へのカルシウム塩の粒子の添加、および、こうして得られた混合物を、好ましくは機械的撹拌および/または超音波により、好ましくは5分と3時間の間の時間、やはり好ましくは不活性雰囲気(好ましくは、アルゴン、窒素またはヘリウムあるいはこれらのガスの混合物からなる)下で、また好ましくは10と80℃の間の温度で、より好ましくは25と60℃の間の温度で、より一層好ましくは40℃辺りの温度で、均質化することにより実施される、請求項1から16のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項18】
カルシウム塩の前記粒子が、精製される前記電解質中に1と100マイクロメートルの間の大きさで存在する、請求項1から17のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項19】
カルシウム塩の前記粒子が、100マイクロメートルと1ナノメートルの間、好ましくは50マイクロメートルと5ナノメートルの間の大きさを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項20】
前記電解質の前記精製が、CaCおよび/またはCaHの粒子を、精製される前記電解質に接触させることによって実施される、請求項1から19のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項21】
前記アルカリ金属塩が、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiPF、LiClO、LIBF、LiCFSO、LIBOB、LiDCTAおよびこれらの塩の少なくとも2種の混合物からなる群から好ましくは選択されるリチウム塩であり、このリチウム塩が、電解質の量に対して表して、好ましくは0.1と2モルの間、より好ましくは0.2と1モルの間、または0.5と1.5モルの間の濃度で前記電解質中に存在する、請求項1から20のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項22】
前記アルカリ金属塩が、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)、DME(ジメチルエチレン)、DMC(ジメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、GBL(γ−ブチロラクトン)およびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される溶媒に溶解され、この溶媒が、これに対して加えるアルカリ金属塩の量が計算されるモル基準である、請求項2、6、7および8から18のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項23】
前記ポリマーが、ポリエーテル、シロキサン、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、EPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))のタイプまたはこれらのポリマーの少なくとも2種のブレンドのものであり、前記電解質の前記ポリマー含量が、前記電解質の全重量の、好ましくは1と30%の間、より一層好ましくは5と15%の間である、請求項3、7および11から18のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項24】
液体タイプの前記電解質が、
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩;
− 溶媒;および
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);
を含み、
a)前記電解質と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの混合によって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムと過剰のカルシウム塩とからなる固相を、精製された前記電解質からなる液相から分離する段階;および
c)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の前記分離が、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で、完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である、請求項2に記載の精製方法。
【請求項25】
溶融塩タイプの前記電解質が、
− 少なくとも1種の溶融塩;
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩(このアルカリ金属塩の量は前記電解質に存在する溶融塩の量に対して表されている);
− 溶媒;および
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);
を含み、
a)前記電解質と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを混合物から除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの混合によって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムと過剰のカルシウム塩とからなる固相を、精製された前記電解質からなる液相から分離する段階;および
c)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の前記分離が、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で、完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である、請求項4に記載の精製方法。
【請求項26】
ゲルタイプの前記電解質が、
− 0.1と2モルの間のアルカリ金属塩;
− 溶媒;
− 50と5000ppmの間の不純物(好ましくは700から2000ppmの水を含む);および
− 液体電解質中に存在する30重量%以下の1種のポリマーまたはポリマーのブレンド;
を含む電解質前駆体から調製され、
a)前記電解質前駆体と、除去される水の量に対して過剰量に相当する量のカルシウム塩とを混合する段階であって、好ましくは、ミキサーにおいて、5分と3時間の間の時間、より好ましくは約1時間、好ましくは生成するガスを混合物から除去しながら実施される機械的混合の段階;
b)沈殿、遠心または超遠心、あるいはこれらの技法の少なくとも2つの混合によって、特に段階a)において生成した水酸化カルシウムと過剰のカルシウム塩とからなる固相を、精製された前記電解質前駆体からなる液相から分離する段階;
c)前記ポリマーをポリマーマトリックスに変換することによって、前記電解質前駆体をポリマーゲル電解質に変換する段階であって、この変換は、好ましくは、60と80℃の間(境界値も含まれる)の温度で、好ましくは1分と2時間の間、より好ましくは15分と60分の間の時間、好ましくは500と2000ppmの間、より一層好ましくは約1000ppm程度の量のマトリックスの前駆体の存在下で実施され、この前駆体は、4分岐に関する国際特許出願WO 03/063287に記載されている化合物からなる群から好ましくは選択され、この化合物は、好ましくは、Perkadox(商標)タイプ、Akzo−Nobel製の塩であり、前記ポリマーのポリマーマトリックスへの前記変換は、好ましくは、精製された前記電解質前駆体が入れられた電気化学的装置において実施される;および
d)場合により、好ましくは焼成により、水酸化カルシウムを炭化カルシウムに変換する段階、および、こうして得られた炭化カルシウムを段階a)でリサイクルする段階;
を含み、
段階a)の最後に得られる混合物からの固相の前記分離が、迅速に、好ましくは、段階a)の終了後、10分未満で、より一層好ましくは5分未満で、完了されなければならず、所望の精製度合いを実現するために、段階a)およびb)は必要なだけ何回でも実施されることが可能である、請求項3に記載の精製方法。
【請求項27】
連続的に、半連続的に、またはバッチ式に実施される、請求項1から26のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項28】
連続的に実施され、
− 段階c)において回収される炭化カルシウムが段階a)にリサイクルされ;
− 前記精製が、好ましくは不活性雰囲気下で、より一層好ましくはアルゴンおよび/または窒素下で実施される;
請求項24から26のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項29】
カルシウム塩の床が使い果たされるまで、前記電解質を、好ましくは液体電解質を、カルシウム塩の床に連続的に透過させることによって、半連続的に実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項30】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法の1つを用いることによって得られる精製された電解質。
【請求項31】
好ましくは水である少なくとも1種の不純物を好ましくは20ppm未満含む、イオン性の液体、ポリマーゲルまたは溶融塩のタイプの、精製された電解質。
【請求項32】
請求項30または31に記載の前記精製された電解質、好ましくは、液体電解質であって、
− 少なくとも1種のアルカリ金属塩;
− 溶媒;
− 不純物;および
− 場合により、1種または複数のポリマーあるいは1種または複数のポリマーマトリックス;
を含み、
前記電解質が、次の条件:
− 10ppm未満の水(カール・フィッシャー法により測定して);
− 10ppm未満のHF(濾過により測定して);
− 10ppm未満のカリウム(ICP(誘導結合プラズマ)により測定して);および
− 10ppm未満のナトリウム(ICPにより測定して);
の少なくとも1つを満たす、精製された電解質。
【請求項33】
− 5ppm未満の水;
− 5ppm未満のHF;
− 5ppm未満のカリウム;および
− 5ppm未満のナトリウム;
を含む、請求項32に記載の液体電解質。
【請求項34】
− 1ppm未満の水;
− 1ppm未満のHF;
− 1ppm未満のカリウム;および
− 1ppm未満のナトリウム;
を含む、請求項33に記載の液体電解質。
【請求項35】
− 0.5ppm未満の水;
− 0.5ppm未満のHF;
− 0.5ppm未満のカリウム;および
− 0.5ppm未満のナトリウム;
を含む、請求項34に記載の液体電解質。
【請求項36】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法の1つを用いることによって得られる精製された電解質を含むか、請求項30から35のいずれか一項に記載の精製された電解質を含む電気化学的発電装置。
【請求項37】
LiイオンタイプまたはLi金属タイプの、請求項36に記載の電気化学的発電装置。
【請求項38】
アノードが、グラファイト、カーボン、炭素繊維、合金、LiTi12またはこれらの少なくとも2種の混合物である、請求項36または37に記載の電気化学的発電装置。
【請求項39】
カソードが、LiCoO、LiMnN、LiFeMPO、LiFePO、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、およびLiCoPOのタイプならびにこれらのタイプの少なくとも2種の混合物のカソードからなる群から選択される、請求項36から38のいずれか一項に記載の電気化学的発電装置。
【請求項40】
前記発電装置が、Li再充電可能タイプまたは一次タイプであり、そのアノードがリチウム金属に基づく、請求項36から39のいずれか一項に記載の電気化学的発電装置。
【請求項41】
不純物を含むアルカリ金属塩の精製方法であって、前記アルカリ金属塩を、低蒸発温度を有し、好ましくは、アセトン、トルエン、ヘプタン、エタノールおよびこれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択され、水含量が非常に小さい溶媒に溶解するステップ、次いで、こうして得られたアルカリ金属塩溶液を過剰のカルシウム塩により処理するステップ、そして、最後に、前記アルカリ金属塩および前記溶媒を含む液相を、不純物および水酸化カルシウムを含む固相から分離するステップからなる方法。
【請求項42】
前記不純物を含むアルカリ金属塩が、ナトリウム、カリウムおよびリチウムの不純物を含む塩ならびにこれらの塩の少なくとも2種の混合物の群から選択され、前記アルカリ金属塩が、好ましくは、LiFSI、LiTFSI、LiBETI、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、LiBOB、LiDCTAおよびこれらの不純物を含むリチウム塩の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される不純物を含むリチウム塩である、請求項41に記載の精製方法。
【請求項43】
精製される前記アルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩に存在する不純物の含量が100と500ppmの間である、請求項41または42に記載の精製方法。
【請求項44】
前記アルカリ金属塩に存在する不純物が、HOおよびHFならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項43に記載の精製方法。
【請求項45】
精製される前記アルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩の量が、低蒸発温度を有する溶媒の量に対して、0.1と2Mの間、好ましくは0.2と1Mの間である、請求項41から44のいずれか一項に記載の精製方法。
【請求項46】
請求項41から45のいずれか一項に記載の方法の1つを用いることによって得られるアルカリ金属塩、好ましくは精製されたリチウム塩。
【請求項47】
次の特性:
− 20ppm以下の水含量;および
− 容量損失が減少したかまたはゼロで、電池の構成部品を破壊するHFなどの妨害反応物を生成することのない、アルカリ金属塩を含む電池のサイクルの向上した安定性;
の少なくとも1つを特徴とする、請求項46に記載のアルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩。
【請求項48】
4と2.5ボルトの間で実施される充電/放電の試験において、100サイクル当たりの容量損失における少なくとも1%の低減を特徴とする、請求項47に記載のアルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩。

【公表番号】特表2009−506505(P2009−506505A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528302(P2008−528302)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001242
【国際公開番号】WO2007/025361
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(597164909)イドロ−ケベック (30)
【氏名又は名称原語表記】Hydro−Quebec
【Fターム(参考)】