電解重合可能なモノマーおよびそれらから調製される埋め込み可能な機器におけるポリマー被覆
活性物質が表面に結合している、電解重合ポリマーにより被覆された、例えば埋め込み可能な機器の導電性表面が開示される。そのような導電性表面を得るために設計および使用される電解重合可能なモノマー、ならびに、電解重合ポリマーを導電性表面に結合させるためのプロセス、機器および方法もまた開示される。本明細書中に示されるポリマー、プロセスおよび機器は、埋め込み可能な医療機器の調製において有益に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質が表面に結合している、電解重合ポリマーにより被覆された導電性表面、そのような導電性表面を得るために設計および使用される電解重合可能なモノマー、ならびに、電解重合ポリマーを導電性表面に結合させるためのプロセス、機器および方法に関連する。本明細書中に示されるポリマー、プロセスおよび機器は、埋め込み可能な医療機器の調製において有益に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、金属構造物が様々な目的のために生体に埋め込まれることが多い。そのような金属構造物には、例えば、ペースメーカー、グラフト、ステント、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、および、心臓弁が挙げられる。埋め込み可能な金属構造物は本来、生体適合性によって、より具体的には、血液適合性および組織適合性の両方によって特徴づけられなければならない。インプラントは典型的には、インプラントが凝固因子(例えば、タンパク質および血小板)の活性化をほんの少ししか誘導しないとき、血液に対して生体適合性があると見なされ、また、インプラントが過度な細胞増殖および慢性的な炎症を誘導しないとき、組織に対して生体適合性があると見なされる。
【0003】
しかしながら、大部分の金属表面の本来の親水的性質は多くの場合、埋め込み可能な金蔵構造物の生体適合性に悪影響を及ぼす。従って、多くの適用において、埋め込みの際、金属表面は最終的には、周囲の組織および体液に由来する吸着された生物学的物質(特に、タンパク質)の層により覆われる。生物学的物質の吸着した層は、血栓症および炎症をはじめとする様々な望まない生体反応に関わっている。加えて、病原性細菌は、金属表面に直接に付着するか、かかる吸着した層によって引き寄せられるかにしても、かかる機器の表面にコロニーを形成する傾向があり、これによって機器を様々な感染の中心地にしている。従って、金属表面の親水的性質は、インプラントが失敗することの直接の原因である。インプラントの失敗は医学的に有害であり、潜在的には致死的であり、大抵の場合、不快で、危険な、費用のかかるさらなる手術を必要とする。
【0004】
数多くの方策が、これらの問題を克服するために開発されており、その主要かつ共通する目標は、金属表面の親水性的性質を改変することである。これらの方策の詳細な説明が、例えば、米国特許第5069899号、同第6617142号、同第4979959号、同第3959078号、同第4007089号、同第5024742号および同第5024742号に見出される。
【0005】
最も一般的に使用されている埋め込み可能な金属構造物の1つがステントである。ステントは、再狭窄の急性合併症を防止または治療するために末梢動脈または冠状動脈に設置される血管内補綴物である。
【0006】
血液適合性および組織適合性を達成するためのステントの改変を、ステント材料を変えることによって行うことができる。しかしながら、これは、ステントを堅くしすぎるか、または、ステントを脆くしすぎるかのいずれかであるので、ステントの機械的挙動に影響を及ぼすことが多い。ステントの外側層のみが血液および周囲の組織と直接に相互作用するだけであるので、所望される生体適合性をステント表面にもたらすことができる物質の薄い被覆を適用することが、有望な方策であると見なされる。
【0007】
金属インプラント(例えば、ステント)に関連する望ましくない生物学的反応を最小限に抑えるための1つの方策が、金属表面を、保護的な細胞層の成長のための下地となる生体分子により被覆することである。このような生体分子には、例えば、増殖因子、細胞付着タンパク質および細胞付着ペプチドが含まれる。1つの関連した方策では、望ましくない生物学的反応を低下させる活性な医薬的な薬剤(例えば、血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗炎症剤および抗菌剤など)の金属表面への結合が伴う。
【0008】
数多くの方法が、生体分子および他の有益な物質(以降、これらはまとめて「活性物質」と呼ばれる)を例えばステントの金属表面に結合し、その結果、金属の生体適合性を増大させるために提供されている。
【0009】
1つの方法では、連結成分を金属表面に共有結合的に結合し、その後、所望する活性な成分を連結成分に共有結合的に結合することが伴う。リンカーを介した共有結合性の結合によって金属表面に結合している1つの活性な成分が抗凝固剤のヘパリンである。HepacoatTMステント(Cordis、Johnson and Johnson社)では、ヘパリンがステント表面に共有結合的に結合している。ヘパリンは、埋め込み後もステントに結合したままであり、所望の効果が血流における相互作用によって生じる。
【0010】
別の方法では、金属表面を、活性な成分とのイオン結合を形成するように構成された層により被覆することが伴う。例えば、米国特許第4442133号は、抗生物剤とのイオン結合を形成するトリドデシルメチルアンモニウムクロリド層を教示する。米国特許第5069899号は、アニオン性ヘパリンがイオン結合により結合する層によって被覆された金属表面を教示する。
【0011】
別の方法では、金属表面をポリマーにより被覆し、活性な医薬成分をポリマー内に閉じ込めることが伴う。埋め込まれると、活性な医薬成分がポリマー被覆から拡散し、これにより所望の効果を生じさせる。例えば、CypherTMステント(Cordis、Johnson and Johnson社)では、細胞増殖抑制剤のSirolimus(Wyeth Pharmaceuticals)が、ステントを被覆するポリマー層に閉じ込められている。埋め込まれると、活性な医薬成分がポリマー層から拡散し、これにより、ステント上での組織の成長を制限する。そのようなインプラントの欠点は、ポリマー被覆からの活性な医薬成分の拡散速度が制御不能または予測不能であることである。さらに、この方策は、ポリマーに効率的に捕捉され得るが、それにもかかわらず、生理学的条件下において妥当な速度で溶出することが可能である活性な医薬成分に限定される。
【0012】
しかしながら、上記の技術は、金属構造物への被覆物の接着が不良であることによって、また、それにより得られる粗い不均一な表面によって、また、金属構造物の埋め込み手順および埋め込み作業を複雑にし得る、被膜の比較的大きい制御できない厚さによって、また、比較的低い柔軟性によって制限される。後者は、典型的には展開可能な機器として設計されるステントに関して特に重要である。加えて、様々な活性物質を金属表面に結合することを伴う現在の技術には、ほとんどの場合、体内における活性物質の制御されない放出が伴う。
【0013】
上記の制限は電解重合によって克服することができる。
【0014】
導電性表面(例えば、金属表面など)を、電解重合可能なモノマーを使用して被覆することは、これにより、被覆された金属表面の物理的特性および化学的特性が、電気化学的重合プロセスのパラメーター(例えば、電解質または溶媒の性質、電流密度および電極電位など)を単に制御することによって制御されることが可能となるので、非常に好都合である。さらに、電気被覆は、残留応力が低い結晶性の高い堆積物の形成、および、多孔性表面を堆積させる能力を可能する低いプロセス処理温度によって特徴づけられる。様々な電解重合可能なモノマーが当該分野では既知であり、これらには、例えば、アニリン系化合物、インドール系化合物、ナフタレン系化合物、ピロール系化合物およびチオフェン系化合物が含まれる。電解重合条件下において表面の近くで酸化されたとき、そのような化合物は重合して、約15ミクロンまでの厚さのポリマー薄膜を形成する。そのようなポリマー薄膜は、表面に共有結合により結合していないが、典型的には、表面に存在する裂け目、すき間および割れ目を充填することによって表面に結合する。そのような薄膜は、例えば、米国特許第4548696号に教示されるように、バイオセンサーのための保護層として当該分野では広く使用されている。
【0015】
電解重合薄膜によって活性物質が負荷された埋め込み可能な医療機器が教示されている。例えば、国際特許出願公開WO99/03517(これは、本明細書中に全体が示されるかのように参考として組み込まれる)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを金属表面にイオン結合することを教示する。Journal of Biomedical Materials Research、第44巻、1999、121頁〜129頁には、ヘパリンを金属表面に陽イオン結合することが教示される。活性物質のこのような静電的結合はまた、生物系と接触してからの活性物質の制御できない放出によって制限される。
【0016】
従って、医療用金属構造体の表面を改変すること、その結果、そのような構造体の生体的適合性を高め、かつ、さらなる治療特性をそのような構造体に与えるようにすることは非常に有利であることが広く認識されている。先行技術では、様々な方策が、金属の埋め込み可能な機器に関連する制限を克服するために教示されるが、これらは、典型的には、活性物質を直接的または間接的のいずれかで金属表面に結合することを伴う。後者には、活性物質を様々な化学的相互作用(例えば、共有結合性の結合またはイオン結合の形成、封入など)によってリンカー分子またはポリマーに結合することが含まれる。しかしながら、現在知られている方策は、不均一な被覆;被覆の制御できない厚み;比較的低い柔軟性;および活性物質の制御できない放出によって、活性物質が結合するリンカーまたはポリマーの、金属表面への不良な付着によって制限される。
【0017】
従って、上記制限を有しない、具体的には、薄く、滑らかで、均一で、かつ、柔軟であり、また、体内における活性物質の制御された放出を可能にし、従って、埋め込み可能な金属構造物を構築するために使用することができる、活性物質が結合している金属表面が必要であることが広く認識されており、また、そのような金属表面を有することは非常に好都合である。
【発明の開示】
【0018】
本発明の1つの態様によれば、導電性表面を有する物体と、その表面に結合している電解重合ポリマーと、その電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物が提供され、ただし、活性物質は静電的相互作用以外の相互作用を介してポリマーに結合する。本発明の範囲からはまた、活性物質が、国際特許出願公開WO01/39813に記載されるように、共有結合性の相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する製造物(具体的には、医療機器)が除かれる。
【0019】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、物体は埋め込み可能な機器である。埋め込み可能な機器は、ペースメーカー、グラフト、ステント、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、注入口および心臓弁が可能である。好ましくは、埋め込み可能な機器はステントである。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、導電性表面はステンレス鋼を含む。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも1つの活性物質は、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合している複数の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せが可能である。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護剤は、疎水性ポリマー、両親媒性ポリマー、複数の疎水性の微粒子および/またはナノ粒子、複数の両親媒性の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せが可能である。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、生物活性剤は、治療活性な薬剤、標識薬剤、および、それらの任意の組合せが可能である。治療活性な薬剤は、抗血栓剤、抗血小板剤、抗凝固剤、増殖因子、スタチン、トキシン、抗菌剤、鎮痛剤、代謝拮抗剤、血管作用性薬剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、ホルモン、トロンビン阻害剤、オリゴヌクレオチド、核酸、アンチセンス、タンパク質、抗体、抗原、ビタミン、免疫グロブリン、サイトカイン、心臓血管薬剤、内皮細胞、抗炎症性薬剤、抗生物質、化学療法剤、抗酸化剤、リン脂質、抗増殖剤、コルチコステロイド、ヘパリン、ヘパリノイド、アルブミン、ガンマ−グロブリン、パクリタキセル、ヒアルロン酸、および、それらの任意の組合せが可能である。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤し、吸収され、埋め込まれ、および/または封入される。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、電解重合ポリマーは、ポリピロール、ポリチエニル、ポリフラニル、それらの誘導体、および、それらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含む。さらなるポリマーは電解重合ポリマーおよび化学的重合ポリマーが可能である。好ましくは、化学的重合ポリマーは、電解重合されたモノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる。同様に好ましくは、化学的重合ポリマーは電解重合ポリマーに共有結合により結合する。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、さらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質はさらなるポリマーに結合する。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質はさらなるポリマーを介して電解重合ポリマーに結合する。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質が結合している少なくとも1つのさらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0032】
活性物質もまた、さらなるポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入され得る。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、さらなるポリマーは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、活性物質が可溶性であるポリマー、柔軟なポリマー、および、それらの任意の組合せが可能である。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物は、活性物質を体内において制御可能に放出することができるように設計される。放出することが、約1日〜約200日間にわたって達成される。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、電解重合ポリマーは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合する。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質の量はポリマーの総重量の約0.1重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲である。1つの好ましい実施形態において、活性物質の量はポリマーの総重量の約50重量パーセントである。
【0038】
本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載される製造物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、導電性表面を有する物体を提供すること;第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;活性物質を提供すること;電解重合可能なモノマーを電解重合し、それにより、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体を得ること;および、活性物質を電解重合ポリマーに結合することを含む。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用および表面相互作用からなる群から選択される相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入される。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質を結合することが、活性物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している物体をこの溶液と接触させることによって行われる。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含み、かつ、プロセスはさらなるポリマーを電解重合ポリマーに結合し、それにより、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有し、かつ、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供することを含む。
【0043】
さらなるポリマーは電解重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、第2の電解重合可能なモノマーを、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有する物体に電解重合することを含む。
【0044】
好ましくは、第2のモノマーを電解重合することが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0045】
さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0046】
好ましくは、接触させることが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0047】
さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させながら、モノマーを重合することを含む。
【0048】
好ましくは、重合することが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。同様に好ましくは、化学的重合が、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0049】
さらなるポリマーは、電解重合ポリマーの一部分を形成する化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0050】
好ましくは、さらなるポリマーを形成することができる官能基が選択され、かつ、プロセスはさらに、電解重合ポリマーが結合している物体をそのような官能基の化学的重合に供することを含む。
【0051】
同様に好ましくは、さらなるポリマーの形成に関与することができる官能基が選択され、かつ、プロセスはさらに、さらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0052】
好ましくは、接触させることが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。同様に好ましくは、官能基は、光活性化可能な基、架橋基および重合開始基からなる群から選択される。
【0053】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーおよび/または電解重合することは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する電解重合ポリマーを提供するように選択される。電解重合可能なモノマーは、アルキルが少なくとも3個の炭素原子を有するN−アルキルピロール誘導体が可能である。
【0054】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合し、電解重合可能なモノマーは、それに共有結合により結合した活性物質を有しており、かつ、活性物質を電解重合ポリマーに結合することが、モノマーを電解重合することによって達成される。
【0055】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合し、第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、活性物質を共有結合により結合することができる反応基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0056】
活性物質を結合することは、活性物質を含有する溶液を、電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している物体と反応させることを含むことができる。
【0057】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、プロセスはさらに、電解重合する前に、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように物体の表面を処理することを含む。
【0058】
処理には、表面を手作業により研磨すること、および、表面を有機溶媒によりすすぎ洗浄することを含むことができる。
【0059】
代替として、処理にはまた、表面を酸(例えば、硝酸)と接触させること;表面を水性溶媒によりすすぎ洗浄すること;および、表面を超音波処理に供することを含むことができる。
【0060】
さらなる代替として、処理にはまた、表面を超音波処理に供すること;および、表面を、有機溶媒、水性溶媒またはそれらの組合せでよりすすぎ洗浄することを含むことができる。
【0061】
好ましくは、超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる。
【0062】
同様に好ましくは、超音波処理は有機溶媒中で行われる。
【0063】
本発明のさらに別の態様によれば、下記の官能基の1つ以上を有する電解重合可能なモノマーが提供される:(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基;および(vii)活性物質を共有結合により結合することができる官能基。
【0064】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基、活性物質を共有結合により結合することができる官能基、および/または、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基は、ω−カルボキシルアルキルである。
【0065】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーは、そのような官能基が結合しているピロール系化合物が可能である。
【0066】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アルキルは少なくとも3個の炭素原子を有する。
【0067】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基は、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体である。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0069】
少なくとも2つの電解重合可能な部分は同じまたは異なることが可能である。電解重合可能な部分のそれぞれが好ましくは独立して、置換または非置換のピロール、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される。
【0070】
少なくとも2つの電解重合可能な部分は、共有結合性の結合、スペーサーまたはそれらの組合せを介して互いに連結することができる。
【0071】
スペーサーは好ましくは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールからなる群から選択される。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの電解重合可能な部分と、そのような電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0073】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも1つの電解重合可能な部分と、そのような電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマーが提供される。官能基は、例えば、光活性化可能な基および架橋基が可能である。
【0074】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的重合ポリマーを形成することができる官能基は、アリル基およびビニル基が可能である。
【0075】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基は、光活性化可能な基および架橋基が可能である。
【0076】
本発明のなおさらに別の態様によれば、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように導電性表面を処理する方法が提供され、この場合、この方法は、電解重合ポリマーを表面に形成する前に、表面を、表面を手作業により研磨すること、表面を硝酸と接触させること、表面を超音波処理に供すること、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの手法に供することを含む。
【0077】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、医療機器を、その表面への電解重合に供している間、保持するための機器が提供され、この場合、この機器は、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が有孔被包体とかみ合い、従って、電場を有孔被包体の内部において生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップ(cups)とを含む。
【0079】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有孔被包体は、流体および化学物質がその中を通って流れることを可能にするために設計および構築される。
【0080】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの医療機器は少なくとも1つのステントアセンブリを含む。
【0081】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書中に記載されるような複数の保持機器と、これらの複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジが提供される。
【0082】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、カートリッジは少なくとも3つの保持機器を含む。
【0083】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも1つの医療機器を被覆するためのシステムが提供され、この場合、このシステムは、稼動可能な配置で、本明細書中に記載されるような少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、ただし、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を、この少なくとも1つの保持機器が、所定の時間、所定の順序で複数の処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築される。
【0084】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、システムはさらに、少なくとも1つの保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体を有するカートリッジを含む。
【0085】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有孔被包体は、流体および化学物質がその中を通って流れることを可能にするために設計および構築される。
【0086】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数の処理浴は、少なくとも1つの電解重合浴と、少なくとも1つの活性物質溶液浴とを含む。複数の処理浴のうちの少なくとも1つを、前処理浴、洗浄浴、すすぎ洗浄浴および化学的重合浴にすることができる。
【0087】
好ましくは、電解重合浴は、電解重合浴の基部に取り付けられ、かつ、外部の電源につながれる少なくとも1つの電極構造物を含む。
【0088】
加えて、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を少なくとも1つの電極構造物に取り付け、それにより、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第1の側面とかみ合わせるために作動可能である。
【0089】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、システムはさらに、少なくとも1つの電極構造物を運び、かつ、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第2の側面とかみ合わせるために作動可能であるアームを含む。
【0090】
本発明は、安定で、均一な接着性の被覆をもたらし、さらには、それに結合する活性物質を制御可能に放出するように設計することができる、金属表面を被覆するための新規なプロセスを提供することによって、現在既知の形態の欠点に対処することに成功している。
【0091】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0093】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0094】
用語「方法(method)」又は「プロセス(process)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0095】
本明細書中で使用される用語「アミン」は−NR’R’’基および−NR’−基の両方を記載し、ここでR’およびR’’はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールである。これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0096】
従って、アミン基は、R’およびR’’の両方が水素であるとき第1級アミンであり、R’が水素でありR’’がアルキル、シクロアルキルまたはアリールであるとき第2級アミンであり、またはR’およびR’’がそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたはアリールであるとき第3級アミンであることができる。
【0097】
用語「アルキル」および「アルキレン」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は置換または非置換であり得る。
【0098】
用語「アルケニル」および「アルケニレン」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの二重結合を有する本明細書中に定義されるアルキルを記載する。
【0099】
用語「ビニル」は−HC=CH2基を記載する。
【0100】
用語「アリル」は−CH2CH=CH2基を記載する。
【0101】
用語「アルキニル」および「アルキニレン」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの三重結合を有する本明細書中に定義されるアルキルを記載する。1つの例はアセチレン−CH≡CHである。
【0102】
用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有さない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。シクロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されたシクロアルキルは、1つまたは複数の置換基を有し得る。
【0103】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は置換または非置換であり得る。置換されたアリールは、1つまたは複数の置換基を有し得る。
【0104】
本明細書中で「ハロ」と交換可能にも示される用語「ハロゲン化物」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を記載する。
【0105】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハロゲン化物によってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0106】
用語「スルファート」は−O−S(=O)2OR’基または−O−S(=O)2−O−基を記載し、ここでR’は本明細書中上記に定義される通りである。
【0107】
用語「スルホナート」は−S(=O)2−R’基または−S(=O)2−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0108】
用語「ジスルフィド」は−S−SR’基または−S−S−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0109】
用語「ホスファート」は、−P(=O)(OR’)(OR’’)基または−P(=O)(OR’)(O)−基を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りである。
【0110】
本明細書中で使用される用語「カルボニル」または「カーボネート」は、−C(=O)−R’基または−C(=O)−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0111】
用語「ヒドロキシル」は−OH基を記載する。
【0112】
用語「アルコキシ」は、本明細書中に定義される−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を記載する。
【0113】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中に定義される−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0114】
用語「チオヒドロキシ」または「チオール」は−SH基を記載する。
【0115】
用語「ハロゲン化アシル」は、−(C=O)R’’’’基を記載し、ここでR’’’’は本明細書中に定義されるハロゲン化物である。
【0116】
用語「カルボキシレート」または「カルボキシ」は、−C(=O)−OR’基または−C(=O)−O−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0117】
用語「アクリレート」はCH2=CR’’−C(=O)R’を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りである。用語「アクリルアミド」はCH2=CR’’−C(=O)NR’R’’’を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りであり、R’’’はR’について定義されるとおりである。
【0118】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0119】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0120】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0121】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、金属性表面における被覆が、電流を加えることによって、所望のモノマー(1つ以上)および緩衝剤を含む溶液において行われ、金属性表面(ステント)が陽極として作用する、本発明の好ましい実施形態による電解重合装置の概略図である。
図2は、モノマーが最初に、活性なラジカルを得るために電流によって活性化され、その後、このラジカルがカップリング反応で他のピロールラジカルと反応する、ピロールの段階的電解重合プロセスの概略図である。
図3は、保護用の官能基がその表面に結合しているステントの概略図である。
図4は、薬物、および/または、その表面に結合したポリ乳酸粒子(PLA)に封入された薬物を有するステントの概略図であり、この場合、薬物がステントから制御可能に放出され得る。
図5は、薬物(D)が結合しているステントの概略図であり、この場合、薬物は、ステントに結合している間も活性がある。
図6は、本発明の好ましい実施形態による、反応性の側鎖を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造を示す(RおよびR’は有機残基を表し、Yは分解性または非分解性の化学結合を表す)。
図7(A〜B)は、薬物、または、共有結合により結合した薬物を包み込むナノ粒子を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造(図7A)、および、そのようなモノマーから得られる例示的な電解重合ポリマーの化学構造(図7B)を示す。
図8は、本発明の好ましい実施形態によるピロール誘導体の電解重合の典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムである。
図9は、本発明の実施形態による電解重合ピロール誘導体の厚さに対するCV数の影響を明らかにする比較プロットを示す。
図10(A〜J)は、様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
図11は、PLAを伴う電解重合ポリ(ブチルエステル)(A)、および、PLAを伴わない電解重合ポリ(ブチルエステル)(B)に取り込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図12は、本発明の実施形態による例示的な電解重合ピロール被覆ステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図13は、本発明の実施形態による例示的な、電解重合ピロールおよびPLAにより被覆されたステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図14は、本発明の実施形態による例示的な保持機器の概略図である。
図15は、本発明の実施形態による例示的なカートリッジの概略図である。
図16は、本発明の実施形態による例示的なシステムの概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0122】
本発明は、付加された治療的価値および/または向上した生体適合性を表面にもたらすことができる様々な活性物質をその中に効率的に取り込むことができる、導電性表面の新規な被覆に関する。従って、本明細書中に記載される新規な被覆は、医療機器の被覆として、具体的には、埋め込み可能な機器の被覆として有益に使用することができる。
【0123】
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0124】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0125】
本明細書中上記において議論されるように、金属表面を有する医療機器の使用は、望まない反応(例えば、血栓症および炎症)をもたらし、また、機器の生体適合性に悪影響を及ぼすその親水的性質によって制限されることが多い。そのような機器の生物学的性能を改善するために開発された方策には、金属表面を、生物活性剤(例えば、薬物)を場合によりさらに含むことがある疎水性の層によって被覆することが含まれる。先行技術では、疎水性部分を金属表面に結合させる様々な方法が教示される一方で、これらの方法は典型的には、被覆の接着が不良であること、および/または、被覆からの生物活性剤の制御されない放出によって制限される。
【0126】
金属の中でも、ステンレス鋼は、その耐腐食性および優れた機械的特性に基づいた、整形外科用インプラントおよび他の埋め込み可能な医療機器におけるその幅広い使用の理由から特に重要である。ステンレス鋼製インプラントの生体適合性は、その表面を有機分子または有機ポリマーにより改変することによって著しく改善させることができる。一般には、薬物溶出性の医療機器、具体的には、金属性表面が薬物負荷ポリマーにより被覆されるステントにおける増大した関心とともに、接着性の均一な薄い被覆(1μm〜2μm)が望まれる。
【0127】
しかしながら、現在使用されている技術、および、特に、ポリマー溶液に浸すか、または、ポリマー溶液を噴霧することによって機器を被覆するための方法は、金属構造物への被覆物の接着が不良であることによって、また、それにより得られる粗い不均一な表面によって、また、金属構造物の埋め込み手順および埋め込み作業を複雑にし得る、被膜の比較的大きい制御不能な厚さ(約15μm〜20μm)によって、また、比較的低い柔軟性によって制限される。後者は、典型的には展開可能な機器として設計されるステントに関して特に重要である。さらに、医療機器を被覆するために使用される既知のバイオポリマーのいくつか、例えば、ポリウレタン、ポリアクリラート、ならびに、様々な脂質およびリン脂質誘導体などは、多くの場合、インプラント環境、血液成分および組織との適合性を有していない。加えて、金属表面への活性物質の結合を伴う現在の技術には、ほとんどの場合、体内における活性物質の制御されない放出が伴う。
【0128】
本明細書中上記においてさらに議論されるように、上記の制限は電解重合によって克服することができる。安定な、接着性で、丈夫な電気伝導性被覆をもたらす電気化学的重合を使用して導電性ポリマーを金属表面に被覆することは、バイオセンサーの分野では広範囲に使用されている。上記で記載されたように、様々な活性な酵素が、ピロール、カルバゾールおよびチオフェンをはじめとする様々な導電性モノマーの電気化学的重合によってバイオセンサーの先端にコンジュゲート化されている。この被膜は実際に、金属性の先端に十分に接着し、また、活性化されたときには、ポリマーに結合する酵素によって生じた電流シグナルを伝えることができる導電性ポリマーとして使用される。
【0129】
重要な研究が、バイオセンサーにおける使用のための様々な導電性ポリマーの合成に関して行われたが、医療機器のための好適な電解重合可能な反応性被覆の使用については報告がほとんどなされなかった。
【0130】
本発明は、金属性表面を被覆するための様々な新規な方法論を提供することによって、現在既知の金属性医療機器に関連する制限を克服する。これらの方法論は、患者の体内にある間もそのコンシステンシーおよび接着性を保持し、従って、埋め込み可能な機器の被覆についての安全性および有効性の要件を満足する電解重合されたポリマー薄膜を堆積させることを伴う。これらの方法論はさらに、改善された生体適合性に加えて、その治療的効果ならびに/あるいは機器の機械的特徴および/または物理的特徴に関して機器性能に対する付加された価値を提供することができる、ポリマー被覆における活性物質の取り込みを伴う。治療活性な物質が被覆に取り込まれるとき、本明細書中に記載される方法論では、そのような物質の制御された様式でのゆっくりした放出を可能にする被覆を設計することができる。活性物質は、その放出の所望される速度および性質に依存して、様々な相互作用(例えば、共有結合的、水素結合、膨潤および吸収など)によってポリマー被覆に取り込むことができる。
【0131】
従って、本発明は、活性物質を負荷することができ、かつ、その活性物質を、所望されるならば、1日〜数ヶ月の期間の間、制御された様式で放出する接着性の被覆を金属性表面に形成することに関する。このような接着性の、金属構造物に十分に合った、丈夫で、安定な被覆は、酸化可能なモノマーを電解重合により金属表面に重合することによって調製される(例示的な電解重合については図1を参照のこと)。好ましい酸化可能なモノマーは、金属表面への電解重合のとき、金属表面に対する親和性を有するピロール誘導体およびピロールオリゴマーである。ピロール系モノマーの電解重合をもたらす化学的連鎖反応が図2に示される。このような被覆は、図3〜図5に概略的に例示されるように、薬物の負荷および経時的な放出のためにそのまま使用することができ、あるいは、電解重合被覆に吸収された反応性モノマーユニットの二次的な重合、または、化学的な結合もしくは特異的な相互作用を介して被覆に結合した反応性モノマーユニットの二次的な重合のいずれかにより別のポリマーの被覆層を被覆内または被覆表面に埋め込むためのプラットホームとして使用される場合がある。
【0132】
本発明を実施に移しているとき、例えば、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号(これらは、全体が本明細書中に示されたかのように参考として組み込まれる)に記載されるように、様々な新しく合成された電気化学的に重合可能なモノマー(これらはまた、電解重合可能なモノマーと呼ばれる)が設計され、首尾よく調製されている。これらの電解重合可能なモノマーは、生物活性剤および他の物質を電解重合の前または後のいずれでモノマーに結合することができるように設計された。具体的には、活性物質を、それ自体で、または、キャリア実体(例えば、ポリマーおよび微粒子およびナノ粒子)の一部としてのいずれかでモノマーに共有結合により結合することを可能にする官能基を有するそのような電解重合可能なモノマーが調製されている。そのような電解重合可能なモノマーは、活性物質のゆっくりした放出が、制御された様式で可能となるように、活性物質が共有結合性の相互作用(これは生分解性または非分解性のいずれかである)を介してモノマーに結合するように設計された。
【0133】
従って、下記の電解重合可能なモノマーが調製されている:(i)生物活性剤が切断可能な生分解性の結合(例えば、エステル、アミド、イミンなど)を介して共有結合により結合する電解重合可能なモノマー;(ii)生物活性剤がスペーサーを介して共有結合により結合する電解重合可能なモノマー;(iii)活性剤を取り込み、かつ、電解重合可能な基をさらに含有する微粒子およびナノ粒子;(iv)被覆された表面の受動的保護を提供し、かつ、さらには、それにおける活性剤の取り込みを可能にするポリマーが結合している電解重合可能なモノマー。
【0134】
これらの様々な電解重合可能なモノマーは、生体適合性かつ生体安定性がある安定なポリマー被覆を提供するために使用された。これらの様々な電解重合可能なモノマーはさらに、薄い接着性の均一な被覆を提供するために使用された。これらの様々な電解重合可能なモノマーはさらに、活性剤を局所的な送達および作用のために周囲の組織に制御された様式で放出するように設計された。
【0135】
従って、これらの電解重合可能なモノマーは、体腔における埋め込み可能な機器(例えば、ステントなど)の改善された短期および長期の性能を提供する、所定の特徴を有するポリマー被覆を得ることができるように設計された。
【0136】
さらに本発明を実施に移しているとき、活性剤を埋め込むことができるポリマー薄膜がその電解重合のときに得られるように設計された電解重合可能なモノマーが調製されている。従って、非共有結合的に結合した活性物質を、例えば、薄膜形態での不溶性の、三次元の架橋されたマトリックスに取り込むことができ、かつ、そのようなマトリックスから制御可能に放出させることができる。
【0137】
従って、下記の実施例の節において明らかにされるように、電解重合可能なモノマーの様々な誘導体が、金属表面に堆積させられるポリマー被覆を調製するために設計、調製および使用されている。そのような電解重合可能なモノマーは、活性物質(例えば、薬物および保護剤)が、得られたポリマー被覆に取り込まれ、かつ、所望されるならば、経時的に制御可能に放出され得るように設計された。そのような電解重合可能なモノマーはさらに、活性物質が、得られたポリマー被覆に共有結合性の相互作用または非共有結合性の相互作用のいずかれかを介して取り込まれるように設計された。
【0138】
本発明のこれらの新しく設計された電解重合ポリマーは、例えば、
(i)金属表面に対する特異的な親和性を示し、かつ、拡張可能なステントの場合などでの拡張の後でも、依然として無傷のままである、ある種のN−アルキルピロールモノマーのポリマー;
(ii)目的のポリマーまたは分子にさらに結合することができるか、あるいは、反応性モノマーの重合を開始させることができる反応性の側鎖基(例えば、ビニル、アミノ、アルコールまたはカルボン酸など)を有するピロール誘導体のポリマー;
(iii)相互貫入システムを形成するために別のポリマーを埋め込むことのために好適である多孔性の薄い被覆を形成するピロール誘導体のポリマー。そのような第2のポリマーを下塗りの多孔性ポリピロール被覆に負荷することができ、または、活性化されたとき、相互貫入ポリマーシステムに重合するモノマーを負荷することができる。
【0139】
従って、本発明の1つの態様によれば、導電性表面を有する物体と、その表面に結合している電解重合ポリマーと、その電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物が提供される。活性物質が非共有結合性の相互作用を介してポリマーに結合し、従って、活性物質が静電的相互作用を介してポリマー被覆に結合する製造物は本発明の範囲から除外される。本発明の範囲からはさらに、活性物質が共有結合性の相互作用を介してポリマー被覆に結合する製造物、具体的には、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号に記載される電解重合可能なモノマー、そのようなモノマーから調製されるポリマー、および、このようなポリマーを含有する機器が除外される。
【0140】
本明細書中で使用される表現「静電的相互作用」は、逆の電荷を有する2つの物質(すなわち、正に荷電した物質および負に荷電した物質)の間で形成される相互作用を示す。そのような相互作用は、典型的には、イオン結合を伴う。
【0141】
本明細書中上記において詳しく議論されたように、静電的相互作用による、埋め込み可能な機器への活性物質の結合は、その制御できない放出によって制限される。
【0142】
本明細書中上記で議論されるように、物体の親水性金属表面を改変することは医療機器(具体的には、埋め込み可能な医療機器)において非常に有益であると同時に、そのような物体は好ましくは医療機器である。医療機器は、金属表面を含み、かつ、例えば、体外機器(例えば、アフェレーシス機材、血液取り扱い機材、血液酸素供給器、血液ポンプ、血液センサーおよび流体輸送配管など)を包含する任意の医療機器が可能である。しかしながら、親水性金属表面を改変することは、医療機器が体内機器(例えば、大動脈グラフト、動脈管類、人工関節、血液酸素供給器膜、血液酸素供給器管類、身体インプラント、カテーテル、透析膜、薬物送達システム、体内プロテーゼ、気管内チューブ、ガイドワイヤ、心臓弁、大動脈内バルーン、医療用インプラント、ペースメーカー、ペースメーカーリード線、ステント、限外ろ過膜、血管グラフト、血管管類、静脈管類、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、および、注入口など、これらに限定されない)であり得るような埋め込み可能な医療バイスにおいて特に有用である。
【0143】
本発明による特に好ましい医療機器はステントであり、より具体的には、拡張可能なステントである。そのようなステントは、様々なタイプ、形状、用途および金属組成のものが可能であり、任意の知られているステントを包含し得る。代表的な例には、Zステント、Palmazステント、Mediventステント、Streckerステント、TantalumステントおよびNitinolステントが含まれる。
【0144】
表現「埋め込み可能な機器」は、長期間にわたって体腔内に置かれる任意の医療機器を記載するために本明細書中では使用される。
【0145】
本発明の関連で使用される好適な導電性表面には、限定されないが、1つまたは複数の金属あるいは金属合金から作製された表面が含まれる。金属は、例えば、鉄、スチール、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タンタル、白金、金、銀、銅、これらの任意の合金、および、これらの任意の組合せが可能であり得る。他の好適な導電性表面には、例えば、形状記憶合金、超弾性合金、酸化アルミニウム、MP35N、エルギロイ(elgiloy)、ハイネス(haynes)25、ステライト(stellite)、熱分解炭素および銀炭素が含まれる。
【0146】
特に有用な物体は埋め込み可能な医療機器であるので、また、さらに、そのような機器は典型的にはステンレス鋼から作製されるので、導電性表面は、好ましくは、ステンレス鋼を含む。
【0147】
本明細書中上記で詳しく議論されるように、一般には金属表面を有し、具体的にはステンレス鋼表面を有する医療機器は、ほとんどがそのような表面の不良な血液生体適合性および/または組織生体適合性に起因する多くの欠点を受ける。本明細書中上記でさらに議論されるように、不良な血液生体適合性は、典型的には、凝固タンパク質および血小板の活性化をもたらし、不良な組織生体適合性は、典型的には、過度な細胞増殖および炎症をもたらす。その生体適合性を高めるように表面を改変することは、電荷、濡れ性およびトポグラフィーに関して表面特性を改善することを目指す化学的手段および/または物理的手段によって行うことができる。これらは、ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)、Teflonおよびポリウレタン)などの物質の薄い層(薄膜)を表面に結合することによって達成することができる。あるいは、表面を改変することは、不良な生体適合性に関連する有害な作用を低下させることができるか、または、さらなる有益な効果を誘導することができる生物活性剤を表面に結合することによって行うことができる。
【0148】
従って、導電性表面は、本発明によれば、電解重合ポリマーに結合している1つまたは複数の活性物質を有する。
【0149】
表現「活性物質」は、物体の表面の特性(例えば、表面の生物学的特性、治療特性、化学的特性および/または物理的特性)に有益な影響を及ぼし得る任意の物質を記載するために本明細書中では使用され、これには、例えば、表面の電荷、濡れ性およびトポグラフィーに影響を及ぼす物質、表面によって誘導される有害な副作用を低下させる物質、ならびに/または、さらなる治療効果を物体に提供し得る医薬的に活性な成分が含まれる。
【0150】
従って、好ましい活性物質には、本発明によれば、限定されないが、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合しているマイクロ粒子および/またはナノ粒子、ならびに、これらの任意の組合せが含まれる。
【0151】
本明細書中で使用される表現「保護剤」により、被覆された表面を、望まない反応を受けないように保護することができ、従って、その環境との望まない相互作用に関して、物体を比較的不活性にすることができる薬剤が記載される。従って、物体が埋め込み可能な機器であるとき、保護剤は、血栓症および炎症を引き起こし得る、周囲の組織および体液からの生物学的物質(例えば、タンパク質など)の望まない吸収を防止または低下させることができる。
【0152】
本明細書中上記で記載されたように、埋め込み可能な機器に関連する望まない相互作用の大部分が金属表面の親水的性質から生じるので、本発明の関連における使用のために好適である好ましい保護剤は疎水性物質または両親媒性物質であり、より具体的には、ポリマー、微粒子およびナノ粒子などの疎水性物質または両親媒性物質である。
【0153】
本発明の関連における保護剤としての使用のために好適である例示的なポリマーには、限定されないが、非分解性のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG、MWを100〜4000の範囲に有するもの)、ならびに、置換されたポリエチレングリコールおよびそのアナログ(例えば、Jeffamine)など、同様にまた、アルキル化された電解重合可能なモノマーの電解重合によって形成されるポリマー(この場合、アルキルは5個を超える(好ましくは10個を超える)炭素原子を有する)が含まれる。
【0154】
本発明の関連における使用のために好適である例示的な粒子には、様々な物質から、また、当該分野で広く知られている様々な合成経路によって形成され得る非分解性の微粒子および/またはナノ粒子が含まれる。
【0155】
従って、様々なポリマーおよび粒子(例えば、ナノ粒子および微粒子など)を、本明細書中上記で記載されるように、その特性に影響を及ぼすようにそれ自体で表面に適用することができる。様々な生物活性剤が、表面の生物学的特性、具体的には、その治療的活性に影響を及ぼすように適用される。生物活性剤が結合しているポリマーおよび粒子は典型的には、その物理的特性および化学的特性に影響を及ぼすように、また、同時に、1つ以上の生物活性剤のキャリアとして作用するように表面に適用される。
【0156】
生物活性剤のキャリアとして役立つポリマーおよび粒子は、適用されたとき、安定または生分解性(生分解可能)のいずれかが可能である。用語「生分解性(生分解可能)」は、例えば、酵素(ヒドロラーゼおよびアミダーゼなど)と反応したときに分解することができるそのような物質を記載するために使用され、従って、用語「安定な」は、少なくともある長い期間にわたって、適用されたときに無傷であり続けるそのような物質を記載するために使用される。安定なキャリアからの生物活性剤の放出は、典型的には、薬剤の拡散によって行われる。
【0157】
表現「生物活性剤が結合している」は、本明細書中で言及されるポリマー、粒子および任意の他の部分に関しては、生物活性剤がそのような部分に結合する任意の形態を記載するために使用され、従って、生分解性の結合または安定な結合のいずれかによる共有結合性の結合、被包化、膨潤、吸収、および、任意の他の許容され得る結合形態を含む。
【0158】
表現「生物活性剤」は、対象において有益な活性を発揮することができる薬剤を記載するために本明細書中では使用される。そのような有益な活性には、本明細書中上記で議論されるように、物体の所望される用途に依存して、表面によって誘導される有害な副作用を低下させること、および/または、任意の他の治療的活性が含まれる。
【0159】
従って、生物活性剤は、治療活性な薬剤(これはまた、医薬的に活性な薬剤、活性な医薬的薬剤、または単に活性な薬剤として本明細書中では交換可能に示される)であり得る。
【0160】
生物活性剤はさらに標識薬剤が可能であり、標識薬剤は、生物活性剤が結合する物質を体内で検出するために、および/または、生物活性剤が結合する物質の所在を体内で突き止めるために役立つ場合があり、また、例えば、診断目的および追跡調査目的のために使用される場合がある。
【0161】
従って、表現「標識薬剤」は、検出可能な成分またはプローブを記載するために本明細書中では使用され、これには、例えば、発色団、蛍光性化合物、リン光性化合物、重金属クラスターおよび放射性標識化化合物、ならびに、任意の他の知られている検出可能な成分が含まれる。
【0162】
一部の場合において、治療活性な薬剤は標識される場合があり、従って、標識薬剤としてさらに役立ち得る。同様に、一部の標識薬剤(例えば、放射性同位体など)もまた、治療活性な薬剤として役立つ。
【0163】
生物活性剤は、物体の所望される適用に従って選択することができる。物体が医療機器である場合、生物活性剤は、医療機器によって治療されている状態、および、機器が埋め込まれる体腔に依存して選択される。
【0164】
本発明の関連における使用に適した、すなわちポリマー被覆中に組み込まれるのに適した生物活性剤の代表的な例には、限定されないが、血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗凝固剤、スタチン、毒素、増殖因子、抗菌剤、鎮痛剤、代謝拮抗剤、血管作用剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、ホルモン、トロンビン阻害剤、オリゴヌクレオチド、核酸、アンチセンス、タンパク質(例えば、血漿タンパク質、アルブミン、細胞付着タンパク質およびビオチンなど)、抗体、抗原、ビタミン、免疫グロブリン、サイトカイン、心臓血管剤、内皮細胞、抗炎症剤(これには、ステロイド系および非ステロイド系が含まれる)、抗生物質(これには、抗ウイルス剤および抗真菌剤などが含まれる)、化学療法剤、抗酸化剤、リン脂質、抗増殖剤、コルチコステロイド、ヘパリン、ヘパリノイド、アルブミン、ガンマ−グロブリン、パクリタキセル、ヒアルロン酸、および、これらの任意の組合せが含まれる。
【0165】
血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗凝固剤、スタチン、血管作用剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、トロンビン阻害剤、血漿タンパク質、心臓血管剤、内皮細胞、抗炎症剤、抗生物質、抗酸化剤、リン脂質、ヘパリンおよびヘパリノイドなどの生物活性剤は、物体がステントであるときには特に有用である。鎮痛剤、代謝拮抗剤、抗生物質および増殖因子などの生物活性剤は、物体が整形外科用インプラントであるときには特に有用である。
【0166】
一般に処方されるスタチンの非限定的な例には、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0167】
非ステロイド系抗炎症薬物の非限定的な例には、オキシカム系、例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムおよびCP−14,304など;サリチル酸系、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサールなど;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラクなど;フェナム酸系、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸など;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニクなど;ピロゾール系、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンなどが含まれる。
【0168】
ステロイド系抗炎症薬物の非限定的な例には、限定されないが、コルチコステロイド系、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルアンドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアンドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、および、これらの混合物が含まれる。
【0169】
鎮痛剤(鎮痛薬)の非限定的な例には、アスピリンおよび他のサリチル酸系薬剤(例えば、サリチル酸コリンまたはサリチル酸マグネシウムなど)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンナトリウムおよびアセトアミノフェンが含まれる。
【0170】
増殖因子は、数多くの機能(これには、接着分子産生の調節、細胞増殖を変化させること、血管化を増大させること、コラーゲン合成を高めること、骨代謝を調節すること、および、所与の領域への細胞の遊走を変化させることが含まれる)を有するホルモンである。増殖因子の非限定的な例には、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)および骨形態形成タンパク質(BMP)などが含まれる。
【0171】
毒素の非限定的な例には、アジュバントとしてもまた役立つコレラ毒素が含まれる。
【0172】
抗増殖剤の非限定的な例には、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミンおよびメチルメラミン、アルキルスルホナート、ニトロソウレアおよびトリアゼンなど;代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログなど;天然物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、タキサンおよび生物学的応答改変剤など;その他の薬剤、例えば、白金配位錯体、アントラセンジオン系薬剤、アントラサイクリン系薬剤、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体または副腎皮質抑制剤など;あるいは、ホルモンまたはアンタゴニスト、例えば、アドレノコルチコステロイド、プロゲスチン類、エストロゲン類、抗エストロゲン類、アンドロゲン類、抗アンドロゲン類または性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログなどが含まれる。化学療法剤の具体的な例には、例えば、ナイトロジェンマスタード、エピポドフィロトキシン、抗生物質、白金配位錯体、ブレオマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、エトポシド、4−OHシクロホスファミドおよびシス白金が含まれる。
【0173】
本明細書中上記で議論されたように、本明細書中に記載される電解重合ポリマーは好ましくは、活性物質のそれへの結合またはそれにおける取り込みを可能にするように設計される。用語「結合(attachment)」、用語「取り込み(incorporation)」、用語「負荷(loading)」、および、それらの任意の文法的変化形は、活性物質と、ポリマーとの間における相互作用を一般的に記載するために本明細書中では交換可能に使用される。
【0174】
好ましくは、活性物質が電解重合ポリマーに結合する相互作用には、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、物理的相互作用およびそれらの任意の組合せのいずれかが含まれる。
【0175】
表現「共有結合性の結合」は、活性物質がポリマーに共有結合により結合する相互作用を記載するために本明細書中では使用される。共有結合性の結合は、典型的には、活性物質およびポリマーを、そのような結合の形成を可能にするような条件で反応したときに形成される。
【0176】
共有結合性の結合は分解性または非分解性のいずれかが可能である。
【0177】
用語「分解性」は、用語「生分解性」と交換可能に本明細書中では使用され、生物学的プロセスの結果として、例えば、酵素プロセス(ヒドロラーゼおよびアミダーゼなどによるプロセス)の結果として体内で分解され得る結合を記載する。
【0178】
用語「非分解性」は、用語「非生分解性」および用語「安定な」と交換可能に本明細書中では使用され、生物学的プロセスを受けにくく、従って、体内において長期間にわたって無傷のままである結合を記載する。
【0179】
「非共有結合性の結合」は、活性物質と、ポリマーとの間における共有結合性の結合を伴わない相互作用を記載し、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、物理的相互作用および表面相互作用を含む。そのような結合は、典型的には、反応する物質(例えば、ポリマーおよび活性物質)を、そのような相互作用がこれらの物質のそれぞれの性質および特性の結果として形成されるように、特定の化学的操作を伴うことなく非常に近づけること(例えば、接触させること)によって形成される。
【0180】
従って、例えば、疎水性相互作用が、2つの疎水性反応物を接触させることの結果として形成される。水素結合が、少なくとも1つが1つ以上の電気的陰性原子を有する物質を接触させることの結果として形成される。表面相互作用が、例えば、ポリマーが多孔性であり、活性物質を細孔内に封入することを可能にするときに形成される。物理的相互作用には、本明細書中に記載されるような表面相互作用、ならびに、膨潤および被包化などの相互作用が含まれる。
【0181】
非共有結合性の相互作用は、典型的には、活性物質が膨潤し、吸収され、埋め込まれ、および/または封入され得る電解重合ポリマーをもたらす。
【0182】
電解重合ポリマーへの活性物質の結合はポリマーの性質に依存することができ、この場合、ポリマーの性質は、電解重合プロセスで使用された電解重合可能なモノマーの性質によって決定される。
【0183】
表現「電解重合ポリマー」は、その対応するモノマー(1つ以上)の溶液に電位を加えることによって形成させることができるポリマーを記載するために本明細書中では使用される。そのようなモノマーは「電解重合可能なモノマー」と呼ばれる。
【0184】
本発明の関連において使用可能である電解重合ポリマーの代表的な例には、限定されないが、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラニル、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリ(2,5−チエニレン)、フルオロアルミニウム、フルオロガリウム、フタロシアニン、および、それらの任意の組合せが含まれ、従って、これらのポリマーはそのまま使用することができ、または、骨格ユニットが、所望される特性を表面にもたらすことができる様々な物質(例えば、ポリマー、炭化水素、カルボキシラートおよびアミンなど)によって置換されるその誘導体として使用することができる。
【0185】
本発明の好ましい実施形態において、電解重合ポリマーは、ピロール化合物、チオフェン化合物、および、その誘導体(1つ以上のピロール残基および1つ以上のチオフェン残基から構成されるオリゴマーを含む)を電解重合することによって形成される。そのようなオリゴマーは、得られるポリマーが、柔軟性、安定性、および、金属性表面に対する大きい接着によって特徴づけられるので有益である。
【0186】
本発明の別の好ましい実施形態において、電解重合ポリマーは、1つ以上のピロール化合物(好ましくは、ピロール誘導体)、1つ以上のチエニル化合物(好ましくは、チエニル誘導体)、および、その組合せを電解重合することによって形成される。
【0187】
本明細書中を通して使用される用語「誘導体」は、ある種の物質または部分(例えば、ピロール)に関しては、好ましくは、その主要な化学的特徴および/または機能的特徴を維持しながら、化学的操作を受けている物質または部分を記載する。そのような化学的操作には、好ましくは、置換およびコンジュゲート化などが含まれる。
【0188】
本明細書中上記で議論されたように、本発明者らは今回、様々なピロール誘導体および/またはチエニル誘導体を設計し、首尾よく調製し、合成している。これらの誘導体は、製造物の意図された使用、活性物質の所望される放出特性、および、物体の所望される表面性状などに依存して、様々な相互作用を介して活性物質を結合することを可能にする電解重合ポリマーをもたらすように設計された。
【0189】
様々なピロール誘導体および/またはチエニル誘導体の調製および使用が下記の実施例の節において例示され、また、詳しく記載される。
【0190】
実施例の節において明らかにされるように、ピロールおよび/またはチエニルの種々の誘導体により、機械的性質、化学的性質に関して、また、活性物質をその中に埋め込む効率に関して、形成された電解重合ポリマーの種々の性質がもたらされることが見出された。
【0191】
従って、例えば、ピロールのN−アルキル誘導体の電解重合では、金属表面(具体的には、ステンレス鋼)に驚くほど十分に接着する薄い均一な多孔性の被覆が形成されることが見出された。被覆の厚さは、加えられたサイクル数によって十分に制御される。例えば、N−ピロールプロパン酸と、N−ピロールプロパン酸のブチルエステルおよびヘキシルエステルとの混合物は、50%拡張したときでも破れない冠状動脈ステント上の柔軟な薄い多孔性被覆を形成する。0.1ミクロン〜2ミクロンの厚さを有する被覆が、1回〜20回のエレクトロサイクルをそれぞれ加えることによって達成された。さらに、これらのN−アルキルポリピロール多孔性被覆は、被覆されたエレメントを薬物の有機溶液に浸け、溶媒を蒸発させることによって多量の薬物(パクリタキセル、エストラジオール、セロリムン(serolimun)、デキサメタゾン)を吸収する。そのような負荷された被覆は、バースト作用をほとんど伴うことなく、数週間の期間中、吸収された薬物を放出する。
【0192】
さらなるピロール誘導体および/またはチエニル誘導体がさらに、電解重合ポリマーを導電性表面に堆積させ、様々な活性物質をそれに結合させるためのモノマーとして使用することのために有益であることが見出されている。
【0193】
従って、例えば、互いに連結されている2つ以上(例えば、3つ、4つ、および、6つまで)の電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが、本明細書中下記において詳しく記載されるように、設計された。選択された部分、ならびに、間を連結する部分(スペーサー)の存在および性質に依存して、得られたポリマーの様々な化学的性質および機械的性質(例えば、柔軟性)を達成することができる。
【0194】
電解重合ポリマーの性質を操作することによって、さらなるポリマーの結合を、本発明の1つの実施形態によれば、製造物が、電解重合ポリマーに結合する少なくとも1つのさらなるポリマーをさらに含むように行うことができる。
【0195】
さらなるポリマーは、例えば、さらなる電解重合ポリマーおよび/または化学的重合ポリマーが可能である。
【0196】
さらなるポリマーは、好ましくは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、活性物質が可溶性であるポリマー、および/または、柔軟なポリマーであり、また、さらなるポリマーは、(i)被覆の機械的特性、物理的特性および/または化学的特性(例えば、電荷、湿潤性、柔軟性および安定性など)、および/または(ii)活性物質の放出プロフィルに影響を及ぼすように選択することができる。
【0197】
1つの実施形態において、さらなるポリマーは電解重合ポリマーである。従って、例えば、多層のポリマー被覆を、同じまたは異なるモノマーを毎回使用して、電解重合プロセスを繰り返し行うことによって達成することができる。
【0198】
別の実施形態において、さらなるポリマーは化学的重合ポリマーである。そのようなポリマーは、非共有結合性の相互作用によって電解重合ポリマーに結合させることができ、従って、電解重合モノマーの内部において膨潤、吸収または埋め込まれ得る。代替として、ポリマーは電解重合モノマーに共有結合により結合することができる。
【0199】
さらなる代替として、さらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。下記の実施例の節において例示されるように、電解重合可能なモノマーは、それに結合した化学的重合可能な基を有するように設計することができ、その結果、電解重合したとき、化学的重合可能な基は化学的重合ポリマーの形成に関与することができるようになる。従って、形成された化学的重合ポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0200】
別の代替において、さらなるポリマーは、対応するモノマーを電解重合ポリマー上に化学的に重合することによって形成される。このようにして形成されたポリマーは、例えば、架橋によって電解重合ポリマーとの相互貫入システムを形成することができ、従って、電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0201】
さらに別の代替において、電解重合可能なモノマーは、さらなるポリマーの化学的重合に関与し得る反応基を含むように設計することができる。そのような反応基は、例えば、放射線照射したときに重合を開始させることができる光活性化可能な基、または、重合プロセスを触媒の存在下で開始させることができる重合開始基が可能である。後者の例には、ビニル基およびアリル基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
これらの代替のそれぞれにおいて、多層の被覆が得られる。そのような多層被覆は、活性物質の逆戻り特性を制御するために使用することができる。活性物質を、本明細書中下記において例示されるように、電解重合ポリマーおよび/またはさらなるポリマーのいずれかに結合することができ、あるいは、その間に封入することができる。
【0203】
従って、例えば、活性物質を、さらなるポリマーによってさらに被覆される電解重合ポリマーに(共有結合的または非共有結合的のいずれかで)結合することができる。場合により、活性物質をさらなるポリマーに(共有結合的または非共有結合的のいずれかで)結合することができ、それにより、さらなるポリマーが電解重合ポリマーの中に埋め込まれ、従って、活性物質はさらなるポリマーを介して電解重合ポリマーに結合する。
【0204】
従って、多層のポリマー被覆を、同じまたは異なるモノマーを毎回使用して、電解重合プロセスを繰り返し行うことによって達成することができる。
【0205】
代替として、多層被覆を、電解重合ポリマーをさらなるポリマーと相互作用させ、その結果、後者が疎水性相互作用のために電解重合ポリマーに埋め込まれるようにすることによって達成することができる。
【0206】
さらなる代替として、多層被覆を、化学的に調製されたポリマーを電解重合ポリマーに共有結合により結合することによって達成することができる。これは、電解重合プロセスにおいて、ポリマーが置き換えられるモノマーを利用することによって、あるいは、反応して、化学的重合ポリマーを電解重合ポリマーの形成と同時に、または、電解重合ポリマーの形成の後で形成することができる重合可能な基を有するモノマーを利用することによって達成することができる。このように形成されたさらなるポリマーは最終的には電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0207】
さらなる代替として、化学的重合ポリマーは、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる反応基を有する電解重合可能なモノマーを利用することによって形成させることができる。そのような反応基は、例えば、光活性化可能な基が可能である。従って、形成された電解重合ポリマーは、照射したとき、様々なモノマーと反応し、電解重合ポリマー上でのその重合を活性化することができるそのような光活性化可能な基を有する。そのような反応基はまた、例えば、重合開始基が可能である。従って、形成された電解重合ポリマーは、様々なモノマーと接触させたとき、架橋された相互貫入システムが形成されるようにその重合を開始させるような基を有する。
【0208】
さらなるポリマー、または、その調製のために使用されるモノマーは、分解性の結合または非分解性の結合のいずれかを提供するように選択される。
【0209】
本発明の実施形態の関連において使用される好適な非分解性ポリマーは、血液適合性および生体適合性があり、非剛直性(拡張可能なステントに適用されたとき、その拡張を可能にするように)であり、および/または、被覆された表面へのその負荷を可能にするように、一般的な有機溶媒(例えば、塩素化炭化水素、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、N−メチルピロリドンおよび乳酸エステル)に可溶性であるそのようなポリマーである。代表的な例には、医療機器において一般に使用されるポリウレタン、シリコーン、ポリアクリラートおよびメタクリラート(特に、ラウリルメタクリラートのコポリマー)が含まれる。ブタジエンおよびイソプレンを含有するポリマーもまた好適である。
【0210】
本発明の実施形態の関連において使用される好適な生分解性ポリマーには、限定されないが、乳酸、グリコール酸およびカプロラクトンに基づくポリマーが含まれる。これらのポリマーは、被覆された表面を、ポリマーの薄い溶液に、あるいは、生物活性剤と、生物活性剤の負荷および放出を容易し、および/または制御するために使用される他の添加剤とを伴うポリマーの薄い溶液に浸けることによって、電解重合された被覆の表面および内部に適用することができる。特に注目されるのが、乳酸のホモポリマー、グリコール酸との乳酸のコポリマー、および、カプロラクトンを含有するコポリマーである。
【0211】
電解重合ポリマーに結合させるとき、ポリマーは、ポリマーが電解重合ポリマーの内部および/または表面に十分かつ均一に分布するようにポリマーの薄い溶液に浸けるか、または、ポリマーの薄い溶液を噴霧することによって負荷することができる。ポリマーの負荷を増大させるために、数回の連続した浸漬を適用することができる。ポリマー溶液の浸漬または噴霧は、インプラントの特定部分におけるポリマーの何らかの堆積を有しない均一な被覆をもたらす様々な温度条件および環境条件のもとで行うことができる。
【0212】
利用されたポリマーおよび電解重合可能なモノマーの性質、ならびに、活性物質が負荷される条件および段階を操作することによって、活性物質の放出プロフィルを制御することができる。
【0213】
従って、例えば、ポリマー溶液は、ポリマー溶液に溶解または分散された生物活性剤、または、生物活性剤が負荷された粒子を含有することができる。種々の浸漬被覆または噴霧被覆が適用される。
【0214】
一例において、上記で記載されたように得られる多孔性のポリピロール被覆には、負荷された電解重合ポリマーが、被覆からの生物活性剤の放出をより良好に制御するために、および/または、血液適合性および生体適合性、ならびに、機器への被覆の接着、結合および安定性を改善するために、非分解性ポリマーの薄い層により目張りされるように、生物活性剤が負荷され、その後、非分解性ポリマーが適用される。
【0215】
別の例において、化学的重合溶液は、電解重合ポリマーに適用されたとき、生物活性剤が負荷され、かつ、その放出を長期間通して可能にする、化学的ポリマーおよび電解重合ポリマーのポリマーマトリックスが形成されるように、生物活性剤をポリマー含有量の50%もの高い量で含有することができる。生物活性剤の放出速度をさらに制御するために、さらなるポリマーを以前に負荷されたポリマー−生物活性剤マトリックスに適用することができる。そのような技術は、ポリマーマトリックス内における(50重量パーセントもの高い)活性物質の大きい負荷量をもたらす。
【0216】
代替として、電解重合ポリマーは、開始させたとき、重合して、電解重合ポリマーとの相互貫入ネットワークを形成する化学的重合可能なモノマーと接触させることができる。そのような化学的重合可能なモノマーが電解重合溶液に加えられるとき、これらのモノマーが封入される電解重合されたポリマー被覆を形成させることができる。
【0217】
被覆に封入されたモノマーの重合は、過酸化ベンゾイルをラジカルに解裂させる熱または光のいずれかによって重合を開始させる過酸化ベンゾイルなどのラジカル源による開始によって行うことができる。代替として、モノマーが、開始剤を伴うことなく電解重合ポリマーに負荷され、重合が、モノマー負荷された被覆を、重合を水−被膜の境界で開始させるレドックスラジカルシステムを含有する水溶液に浸けたときに生じる。相互貫入ポリマーの量が、溶液におけるモノマー濃度、使用された溶媒、および、重合プロセスによって制御される。被覆の特性が、モノマー組成、電解重合されたマトリックスにおける負荷、および、架橋の程度によって制御される。例えば、ヒドロキシルエチルメタクリラート(HEMA)またはポリエチレングリコールアクリラート(PEG−アクリラート)をモノマー組成において増大する量で含むことにより、被覆の親水性が増大し、また、水に浸けたときには、滑りやすい滑らかな被覆さえもたらされる。他方で、被覆の疎水的性質を、ポリマー組成におけるラウリルメタクリラート(LMA)または他のアルキルアクリラートの量が増大するときには得ることができる。ジアクリラートまたはメタクリラートの量を増大させることにより、被覆の剛直性および剛性が増大する。架橋剤は、アクリラートの生体ポリマー化において一般に使用されるエチレングリコールジメタクリラート、PEG−ジアクリラート、エチレンビス−アクリルアミド、ジビニルベンゼンおよび他の架橋剤が可能である。
【0218】
アミン基またはヒドロキシル基を有する電解重合ポリマーはさらに、ラクチド、グリコリドまたはカプロラクトンに基づく生分解性ポリマーをこれらのラクトンの開環重合によって形成させるために使用することができる(この場合、ヒドロキシルまたはアミンは重合開始基として働く)。
【0219】
長期にわたる放出期間を達成するように薬物をより良好に封入するためには、疎水性ポリマーが好ましい。しかしながら、組織とのより良好な適合性のためには、親水性の表面が好ましい。従って、様々な操作を、外側の被覆が親水性のポリマー被覆であり、従って、親水性のポリマー被覆が、活性剤が負荷された疎水性の電解重合ポリマーに適用されるように行うことができる。
【0220】
電解重合ポリマーへの活性物質の共有結合による結合が、下記の実施例に、また、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号に広範囲にわたって記載される。
【0221】
生物活性剤を共有結合により結合するために、共有結合により結合した生物活性剤を含む電解重合可能なモノマーを使用することができる。そのような目的のための特に有用なモノマーには、官能基(例えば、カルボン酸およびその誘導体(例えば、アシルハリド、エステル)、アミン、ヒドロキシル、ビニル、アセチレンおよびチオールなど)を有するN−アルキルピロール誘導体が含まれる。これらの基は、小さい分子および大きい分子(例えば、PEG鎖、脂肪酸鎖、ポリマー鎖および蛍光マーカーなど)を被覆に結合するために使用することができる。
【0222】
特に注目されるのが、活性物質および電解重合ポリマーの一方がヒドロキシルまたはアミンを含み、従って、他方がカルボン酸またはその誘導体を含むように、脂肪酸、アルコールおよびポリマーを、カルボン酸のアミド化またはエステル化を介して結合することである。
【0223】
上記に記載された方法論が下記の実施例の節において例示される。下記の実施例の節において明らかにされるように、厚さが約0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲(好ましくは、0.1ミクロン〜5ミクロンの範囲)にある被覆が得られた。例示的な被覆からの生物活性剤の制御された放出もまた明らかにされている。
【0224】
これらの方法論を実行するために、従って、被覆の性質、および、その中に埋め込まれる活性物質の放出プロフィルを制御するために、特別な特性を有する新規な電解重合可能なモノマーが設計されている。
【0225】
従って、本発明の別の態様によれば、下記の官能基の1つ以上を有する電解重合可能なモノマーが提供される:
(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;
(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;
(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;
(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;
(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;
(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基;および
(vii)活性物質を共有結合により結合することができる官能基。
【0226】
同様に、結晶を機器の表面に成長させるための核化中心として働くことができる官能基もまた含まれる。
【0227】
従って、例えば、官能基(例えば、ω−カルボキシアルキル基(アルキル基は少なくとも3個の炭素原子を有する)など)が電解重合可能なモノマーに存在することにより、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への高められた接着、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の高められた吸収、膨潤または埋め込みがもたらされ、活性物質を共有結合により結合することが可能になり、および/または、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する電解重合ポリマーがもたらされる。
【0228】
ポリアルキレングリコール残基によって置換および/または中断される電解重合可能なモノマーは、被覆の向上した柔軟性および均一性をもたらす。
【0229】
形成された電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基のさらなる例には、限定されないが、アルキレングリコール、非線状アルキレン鎖、ならびに、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルボキシ結合(−C(=O)−O−)およびスルフィド結合(−S−S−)を含有する残基が含まれる。
【0230】
形成された電解重合ポリマーの内部における吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基のさらなる例には、限定されないが、アミン、カルボキシラート、ヒドロキサム酸、スルホネート、サルフェート、エポキシド、チオールおよびビニルが含まれる。
【0231】
化学的重合ポリマーを形成することができる官能基には、例えば、本明細書中に詳しく記載されるように、また、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、アリル基およびビニル基が含まれる。
【0232】
化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基には、例えば、本明細書中に詳しく記載されるように、また、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、光活性化可能な基、および、重合開始基が含まれる。
【0233】
従って、本発明のさらなる態様によれば、新規な電解重合可能なモノマーが提供される。
【0234】
1つの実施形態において、互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0235】
本明細書中で使用される表現「電解重合可能な部分」により、電解重合可能なモノマーの残基が記載される。当該分野では広く知られている用語「残基」により、別の化学的部分(例えば、別の電解重合可能な部分またはスペーサー)に連結される分子の主要な部分が記載される。
【0236】
2つ以上の電解重合可能な部分は同じまたは異なることが可能であり、例えば、その1つ以上の位置において場合によりそれぞれが置換されるピロール、チエニル、フラニル、チオフェンから選択することができる。置換されるとき、電解重合可能な部分は、例えば、1つ以上の置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ポリアルキレングリコール、シクロアルキルなど、ただし、これらはそれぞれが、1つ以上の基(例えば、アリール、ハロ、アミン、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、カルボキシ(C(=O)OR、式中、Rは、水素、ハロおよびアルキルなどである)など)によってさらに置換される)を含むことができる。
【0237】
電解重合可能なモノマーにおける電解重合可能な部分は、共有結合性の結合を介して直接に連結することができ、または、スペーサーを介して間接的に互いに連結することができる。3つ以上の電解重合可能な部分がモノマーに存在するときには、上記の組合せを、例えば、2つの部分が互いに直接に連結され、2つの部分がスペーサーを介して連結されるように行うことができる。
【0238】
スペーサーは好ましくは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)によって場合により中断される、置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素鎖を含む。例には、限定されないが、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールが含まれる。置換されるとき、1つ以上の置換基は、例えば、ハロ、アルキル、アミン、ヒドロキシ、カルボキシが可能である。炭化水素鎖は、直接に(例えば、σ結合)、または、結合するメンバー(例えば、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合など)を介して、そのいずれかで、電解重合可能な部分のそれぞれに結合することができる。
【0239】
従って、この実施形態による例示的な電解重合可能なモノマーは、PEG鎖を介して互いに連結された2つのピロール部分を含む。そのようなモノマーは、ビス−ピロールPEGおよびPEGジピロールと本明細書中では交換可能に呼ばれる。PEG鎖は好ましくは、分子量を約100Da〜約600Daの範囲に有する。
【0240】
この実施形態によるさらなる例示的な電解重合可能なモノマーは、直接に、または、短いスペーサー(例えば、エタン、エテンなど)を介して互いに結合した1つ以上のピロール部分および1つ以上のチエニル部分を含む。
【0241】
上記で記載された部分、基および置換基のすべてが、本明細書中に記載されるようにさらに置換され得る。
【0242】
この実施形態による電解重合可能なモノマーの代表的な例には、限定されないが、1,2,6−トリ(N−プロパノイルピロール)−ヘキサン、1,1’,1’’,1’’’−テトラ(N−プロパノイルピロール)−メタン、ビス−ピロール−PEG、1,1’−ジ(2−チエニル)エチレン、3−ジメチルアミノ−1−(2−チエニル)−プロパノン、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールおよび1,2−ジ(2−ピロリル)−エテンが含まれる。
【0243】
別の実施形態において、電解重合可能なモノマーは、本明細書中に記載されるような少なくとも1つ電解重合可能な部分と、電解重合可能な部分(1つ以上)に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む。
【0244】
本明細書中を通して使用される表現「化学的重合ポリマーを形成することができる官能基」により、適切な化学的条件に供されたとき、重合することができる重合可能な基が記載される。適切な化学的条件には、例えば、ラジカル連鎖重合の触媒的開始、ラジカル連鎖重合の光開始、開環重合の触媒的開始、架橋(架橋剤の存在下)、および、共重合(コポリマー、および、場合により、重合触媒または架橋剤の存在)が含まれる。
【0245】
例示的なそのような官能基には、限定されないが、ビニル基およびアリル基(これらは、触媒により開始されたとき、ポリアルカンまたはポリアルケンを形成することができる)、アクリル酸またはアクリルアミド、ラクトン(これは開環重合を受けることができる)、および、ホスファート(これは二価金属原子の存在下で架橋することができる)などが含まれる。
【0246】
別の実施形態において、電解重合可能なモノマーは、本明細書中に記載されるような少なくとも1つ電解重合可能な部分と、電解重合可能な部分(1つ以上)に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む。
【0247】
本明細書中を通して使用される表現「化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基」により、化学的重合可能なモノマーの重合を触媒または誘導することができる基が記載される。そのような官能基は、例えば、本明細書中に記載されるように、光活性化可能な基(これは、照射されたとき、重合プロセス(例えば、ラジカル連鎖重合または開環重合など)を開始することができる反応基になる)が含まれる。あるいは、そのような官能基は架橋基が可能であり、従って、これは架橋剤として作用することができる。
【0248】
光活性化可能な基の代表的な例には、限定されないが、ベンゾフェノン誘導体が含まれる。
【0249】
架橋基の代表的な例には、限定されないが、アクリラート、アクリルアミドおよびジビニルベンゼンが含まれる。
【0250】
本明細書中に記載される実施形態のそれぞれにおいて、官能基は、電解重合可能な部分に、(例えば、σ結合を介して)直接に、または、結合するメンバー(例えば、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合など)を介して間接的に結合することができる。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態による電解重合可能なモノマーの代表的な例が下記の実施例の節に示される。
【0251】
本明細書中に記載される電解重合可能なモノマー、ならびに、本明細書中上記において詳しく記載される方法論は、本明細書中に記載される製造物を得るために有益に利用することができる。
【0252】
本明細書中上記に記載される方法論に基づいて、本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載される製造物を調製するためのプロセスが提供される。このプロセスは、導電性表面を有する物体を提供すること;第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;活性物質を提供すること;電解重合可能なモノマーを電解重合して、それにより、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体を得ること;および、活性物質を電解重合ポリマーに結合することによって行われる。
【0253】
活性物質を電解重合ポリマーに結合することは、本明細書中上記で記載された相互作用のいずれかを介して達成される。
【0254】
本発明のこの態様の1つの実施形態において、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤、吸収、埋め込まれ、および/または、封入される。
【0255】
活性物質をこの実施形態に従って結合することは、活性物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーがその表面に結合している物体をこの溶液と接触させることによって行うことができる。
【0256】
別の実施形態において、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを含み、プロセスはさらなるポリマーを電解重合ポリマーに結合させ、それにより、電解重合ポリマーをその表面の少なくとも一部分に有し、かつ、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供することを含む。
【0257】
別の実施形態において、さらなるポリマーは電解重合ポリマーであり、プロセスはさらに、第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、第2の電解重合可能なモノマーを、電解重合ポリマーをその表面の少なくとも一部分に有する物体に電解重合することによって行われる。
【0258】
第2のモノマーを電解重合することは、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0259】
さらに別の実施形態において、さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体を溶液と接触させることによって行われる。
【0260】
接触は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0261】
代替として、プロセスは、化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している電解重合ポリマーをこの溶液と接触させながら、モノマーを重合することによって行われる。
【0262】
重合は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0263】
さらに別の実施形態において、さらなるポリマーは、電解重合ポリマーの一部を形成する化学的重合ポリマーであり、また、第1の電解重合可能なモノマーを提供することは、さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0264】
さらなるポリマーを形成することができる官能基が選択される場合、プロセスはさらに、電解重合ポリマーが結合している物体を官能基の化学的重合に供することを含む。
【0265】
化学的重合は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0266】
さらなるポリマーの形成に関与することができる官能基が選択される場合、プロセスはさらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0267】
接触は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0268】
この場合における官能基は、例えば、本明細書中上記において詳しく記載されるように、光活性化可能な基、架橋基、および/または、重合開始基が可能である。
【0269】
さらなる実施形態において、活性物質は電解重合ポリマーに共有結合により結合し、電解重合可能なモノマーは、それに結合した活性物質を有しており、かつ、活性物質を電解重合ポリマーに結合することが、そのモノマーを電解重合することによって行われる。
【0270】
代替として、第1の電解重合可能なモノマーは、活性物質を共有結合により結合することができる反応基を有しており、かつ、活性物質を結合することが、活性物質を含有する溶液を、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体と反応させることによって行われる。
【0271】
本発明者らはさらに、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように、導電性表面を電解重合ポリマーの形成に先だって前処理するための新規な方法を設計している。従って、本明細書中に記載されるプロセスはさらに、表面のそのような前処理を含むことができる。本発明によるこれらの前処理方法は、表面を下記手順の1つ以上に供することによって行われる:
表面を、好ましくはグリットペーパーを使用して手作業により研磨すること;および、表面を有機溶媒によりすすぎ洗浄すること;
表面を酸(例えば、硝酸、スルホン酸、あるいは、任意の他の無機酸または有機酸など)と接触させること;表面を水性溶媒によりすすぎ洗浄すること;および、表面を超音波処理に供すること;および
表面を超音波処理に供すること;および、表面を、有機溶媒、水性溶媒またはその組合せによりすすぎ洗浄すること。好ましくは、超音波処理はカーボランダムの存在下および/または有機溶媒中で行われる。
【0272】
表面を本発明の実施形態に従って表面での電解重合の前に処理するための好ましい方法の代表的な例が下記の実施例の節において広範囲に記載される。
【0273】
従って、本発明は、様々な有益な活性物質によって被覆された物体をもたらす、制御されているが、多目的なプロセスによって調製することができる製造物を提供し、従って、その被覆は、現在既知の被覆と比較した場合、高められた接着、活性物質の高められた密度、および、改善された表面特性によって特徴づけられる。本明細書中に記載されるプロセスは、本明細書中に詳しく記載されるように、被覆の様々な特徴(これらには、例えば、その疎水性/親水性、その柔軟性、活性物質の放出速度、および、負荷された活性物質の量などが含まれる)を細かく制御することを可能にする。
【0274】
本明細書中に記載される製造物が、被覆された埋め込み可能な機器であるとき、このような製造物は、医療機器、具体的には、生物活性剤が負荷されたそのような機器を埋め込むことが有益である状態の治療において有益に使用することができる。
【0275】
かかる状態には、例えば、心臓血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化、血栓症、狭窄、再狭窄およびステント内再狭窄など、これらに限定されない)、心臓学的疾患、末梢血管疾患、整形外科状態、増殖性疾患、感染性疾患、移植関連疾患、変性疾患、脳血管疾患、胃腸疾患、肝臓疾患、神経学的疾患、自己免疫疾患、および、インプラント関連疾患が含まれる。
【0276】
機器に結合させられる活性物質は、疾患を治療するために好適であるように選択される。
【0277】
本発明者らはさらに、本明細書中に記載される方法論を使用して、活性物質によって被覆されるか、または、活性物質が負荷される様々な医療機器の効率的な調製を可能にする機器、カートリッジおよびシステムを設計している。
【0278】
従って、本発明のさらなる態様によれば、医療機器を、その表面への電解重合に供されている間、保持するための機器が提供され、この場合、この機器は、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が前記有孔被包体とかみ合い、従って、電場を有孔被包体の内部に生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップとを含む。
【0279】
有孔被包体はさらに、好ましくは、流体および化学物質がその中を流れることを可能にするために設計および構築される。
【0280】
本発明の別の態様によれば、複数の本明細書中上記に記載される保持機器と、これらの複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジが提供される。好ましくは、カートリッジは4つ以上の保持機器を含む。
【0281】
本発明の別の態様によれば、医療機器を被覆するためのシステムが提供され、この場合、このシステムは、稼動可能な配置で、本明細書中上記に記載されるような少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、ただし、搬送装置は、保持機器を、保持機器が、所定の時間、所定の順序で処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築される。
【0282】
このシステムはさらに、好ましくは、保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体を有するカートリッジを含む。
【0283】
このシステムにおける複数の処理浴は、使用された被覆方法論および負荷方法論に依存して、例えば、前処理浴、洗浄浴、電解重合浴、すすぎ洗浄浴、化学的重合浴および活性物質溶液浴の1つ以上を含む。好ましくは、これらの浴のうちの少なくとも2つが電気化学的重合浴および活性物質溶液浴である。
【0284】
電気化学的重合浴は好ましくは、電気化学的重合浴の基部に取り付けられ、かつ、外部の電源につながれる少なくとも1つの電極構造物を含む。
【0285】
さらに好ましくは、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を少なくとも1つの電極構造物に取り付け、それにより、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第1の側面とかみ合わせるために作動可能である。
【0286】
このシステムはさらに、好ましくは、少なくとも1つの電極構造物を運び、かつ、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第2の側面とかみ合わせるために作動可能であるアームを含む。
【0287】
次に図面を参照して、図14には、医療機器12を、本発明の好ましい実施形態に従って、被覆されている間、保持するための機器10が例示される。医療機器12は、この図に例示されるように、好ましくはステントである。保持機器10は、医療機器12を収容する有孔被包体14を含む。アセンブリ12が、例えば、医療機器がステントアセンブリであるときに使用することができる拡張可能な管状の支持エレメント16として図14に示される。必須ではないが、好ましくは、被包体14は管状(例えば、円筒状)の形状を有する。機器10は、好ましくは、アセンブリ12の全処理を通して医療機器12を保持する。従って、機器10は、例えば、化学的処理浴、電気化学的処理浴、超音波浴、乾燥域および薬物負荷浴などにおいて処理されている間、アセンブリ12を保持することができる。
【0288】
有孔被包体14は、様々な化学物質溶液30がそれぞれの処理浴から壁26を通って被包体14の内部体積部28の中に流れ、それにより、医療機器12および/または支持エレメント16と相互作用することを可能にするように、その壁26に形成された複数の穴24を含む。加えて、穴24は好ましくは、化学物質の溶液が、例えば、機器10がそれぞれの処理浴から引き出されるとき、内部体積部28から流れることを可能にする。
【0289】
機器10はさらに、被包体14の第1の端部20および第2の端部22を覆う2つ以上のキャップ18を含む。キャップ18は、例えば、ステンレス鋼から作製することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、キャップ18は、31および32の数字によって図14に示される様々な電極構造物が被包体14とかみ合うことを可能にするために適合化される。この実施形態は、アセンブリ12が電気化学的重合に供されるときには特に有用である。従って、参照電極を一方の側から挿入することができ、対向電極を反対側から挿入することができる。加えて、作用電極を近くに、例えば、キャップ18から数ミリメートル離して設置することができ、その結果、これらの電極が、例えば、連絡線36を介して電源(示されず)につながれたとき、電場が生じ、レドックス反応が作用電極40上で進められるようにすることができる。従って、重合プロセスが体積部28の内部で開始され、部材16がポリマー薄膜によって被覆される。
【0290】
数個(好ましくは、3個以上)の保持機器を、数個の医療機器を同時に被覆するために用いることができる。図15は保持機器のカートリッジ50の概略図である。カートリッジ50における保持機器のそれぞれの原理および働きは、本明細書中上記においてさらに詳しく記載されるような機器10の原理および働きと類似する。カートリッジ50は、数個の保持機器を一緒に処理浴に入れるために役立つ。図15の例示された形態において、カートリッジ50は10個の機器を保持する。しかし、このことは必ずしも当てはまる必要はなく、任意の数の保持機器をカートリッジ50の本体52に取り付けることができる。カートリッジ50の本体は、好ましくは、カートリッジ50を、本明細書中下記においてさらに詳しく記載されるような処理浴に入れる搬送装置に取り付けられるように設計される。
【0291】
次に図16を参照する。図16は、1つ以上の医療機器を本発明の好ましい実施形態に従って被覆するためのシステム60の概略図である。システム60は、好ましくは、稼動可能な配置で、少なくとも1つの保持機器(例えば、機器10)を含む。数個の保持機器が使用されるとき、これらの機器は好ましくは、カートリッジに、例えば、カートリッジ50に取り付けられる。
【0292】
システム60はさらに、搬送装置62、および、搬送装置62に沿って配置された複数の処理浴を含む。図16に示される代表的な例において、システム60は、64、65、66、67および68として示される5つの処理浴を含む。従って、例えば、浴64を、均一な接着性の被覆のために医療機器を調製するように、医療機器が化学的および機械的な処理に供される前処理浴として使用することができる。浴65を洗浄のために使用することができ、浴66を電気化学的重合のために使用することができ、浴67を清浄化のために使用することができ、浴68を、例えば、薬物負荷のための活性物質溶液浴とすることができる。他の浴または処理域もまた意図される。
【0293】
搬送装置62は、機器が所定の順序でそれぞれの処理浴の中に入れられるように保持機器を運搬する。従って、例えば、図16の例示された実施形態において、搬送装置62は機器を最初に浴64に入れ、次いで浴65に入れ、次いで、その後の浴に順次入れる。加えて、搬送装置62は、機器がそれぞれの浴において費やす期間を制御する。これは、機器を所定の時間の後でそれぞれの浴から引き出し、並んでいる次の浴に入れるために搬送装置62を設計することによって達成することができる。搬送装置62は、好ましくは、機器を処理前に浴に入れ、その後で引き出すためのレバー72または任意の他の機構とともに製造される。
【0294】
本発明の好ましい実施形態によれば、電気化学的重合浴は、基部70に取り付けられ、従って、下部の電気化学的重合ユニットを形成する電極構造物(例えば、対向電極32および作用電極40)を含む。これらの電極構造物は、好ましくは、隔離材74(図14もまた参照のこと)から突き出ており、電源(示されず)につながれる。作動中において、搬送装置62により、保持機器が電極構造物に取り付けられ、その後、電極構造物は機器の一方の側とかみ合う。システム60はまた、隔離材78から好ましくは突き出る1つ以上の電極構造物(例えば、参照電極構造物31)を運ぶアーム76を含むことができる。従って、アーム76および電極31は上部の電気化学的重合ユニットを形成する。
【0295】
保持機器が電極32および/または電極40に取り付けられると、アーム76により、電極31は保持機器の反対側(この実施形態では上部)とかみ合わされる。電極と電気的に連絡すると、保持機器内の医療機器は、当該分野で既知の電気化学的重合に供することができる。
【0296】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0297】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0298】
材料および装置方法
化学物質は一般に、別途示されない限り、既知の供給者(例えば、Sigma、Fluka、AldrichおよびMerckなど)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0299】
316Lステンレス鋼製プレートをMashaf社(イスラエル、Jerusalem)から購入した。
316Lステンレス鋼製ステント(12mm長、3mmの直径に膨張可能)をSTI(イスラエル、Cesaria)から購入した。すべての水溶液を脱イオン水(Mili−Q、Milipore)から調製した。
【0300】
NMR測定。1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、19F−NMRスペクトルおよび31P−NMRスペクトルを、Bruker AC−200分光計、DPX−300分光計およびDMX−600分光計で得た。CDCl3溶液およびアセトン−d6溶液については、化学シフトが、内部標準として使用されたMe4Siからの低磁場側にppm単位で表される。D2O溶液については、HODのピークがδ=4.79(1H−NMRペクトル)として選ばれたか、または、少量の添加されたMeOHのピークがδ=49.50(13C−NMRペクトル)として選ばれた。
【0301】
MS測定。質量スペクトルをMALDI分光計で得た(CI=化学的イオン化、DCI=脱着化学的イオン化、EI=電子イオン化)。
【0302】
SEM測定
被覆された電極の表面形態を、10kVの加速電圧でのショットキー型電界放射源を備えたsirion走査顕微鏡(オランダ、FEI Company)を使用して高分解能走査電子顕微鏡観察(HR SEM)によって測定した。サンプルは、分析に供される前に金被覆された。
【0303】
HPLC分析
高速液体クロマトグラフィーを、C18逆相カラム(LichroCart(登録商標)250−4、Lichrospher(登録商標)100、5μm)を使用する、HP1100ポンプ、HP1050UV検出器およびHP ChemStationデータ分析プログラムから構成されるHewlett Packared(ドイツ、Waldbronn)システムを使用して行った。すべての測定を230nmで行った。
【0304】
(実施例1)
ピロール誘導体の調製
下記には、本発明の関連における使用のために好適である、官能基によって誘導体化された様々な電解重合可能なピロールモノマーの調製が記載される。
【0305】
カルボン酸含有ピロール誘導体またはアミノ含有ピロール誘導体の調製−一般的手順:
カルボン酸含有ピロールアナログまたはアミノ含有ピロールアナログの調製を、別途示されない限り、Yon−Hin他[Anal.Chem.、1993、65、2067〜2071]による知られているプロトコルに基づいて行った。
【0306】
N−(3−アミノプロピル)ピロール(APP)の調製−経路A:N−(2−シアノエチル)ピロールを、N−(2−シアノエチル)ピロール(Aldrich Chemicalsから入手可能)を出発物質として使用する上記の一般的手順を使用して乾燥ジエチルエーテル中でLiAlH4により還元した。N−(3−アミノプロピル)ピロールを乾燥ジエチルエーテルにおけるLiAlH4によるN−(2−シアノエチル)ピロールの還元によって90%の収率で合成し、H−NMRおよびIRによって同定した(データは示さず)。
【0307】
N−(3−アミノプロピル)ピロール(APP)の調製−経路B:代わりの合成経路では、APPを下記スキーム1に描かれるように調製した。
50mlのメタノールに溶解された2−シアノエチルピロール(10グラム、83.3mmol)に、1グラムの10%Pd−Cを加え、容器を70PSIで4日間、水素化システムに接続した。固体を沈殿させて除き、ろ液を集め、揮発分を減圧下で除いた。得られたアミンを、CHCl3における20%〜50%のメタノールを溶出液として使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、N−(3−アミノプロピル)ピロールを90%の収率で得た。褐色がかった粘稠性オイルをNMR(データは示さず)およびESI−MSによって特徴づけた。
ES−MS:m/z=122、126、153、132、339。
【0308】
N−(2−カルボキシエチル)ピロール(PPA)の調製:N−(2−シアノエチル)ピロールをスキーム2に描かれるように上記の一般的手順に従ってKOH水溶液において加水分解した。
N−(2−シアノエチル)ピロール(10ml、83.23mmol)を、50mlのDDWにおける20グラムのKOHの溶液と10mlのエタノールとの混合物において4日間還流した。アンモニアの発生が止むと、反応混合物を室温に冷却し、溶液を、約4〜5のpHに達するまで濃塩酸を使用して酸性化した。酸を、100mlのCH2Cl2により4回、反応混合物から抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下で除いて乾固した。黄色がかったガム状生成物のN−(2−カルボキシエチル)ピロールが冷却後に固化し、80%の収率で得られた(融点、58〜59℃):
【0309】
N−(2−カルボキシエチル)ピロール−NHS(PPA−NHS)の調製:
上記スキーム3に描かれるように、2−カルボキシエチルピロール(5グラム、36mmol)を塩化カルシウム管のもとで70mlの酢酸エチルに溶解した。撹拌された溶液に、1.1当量のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)を加え、撹拌を続けた。しばらくして、DCUの白色沈殿が形成した。混合物を室温で一晩放置し、沈殿物をろ過し、50mlの酢酸エチルで2回洗浄した。酢酸エチル画分を集め、溶媒を乾固するまで減圧下で除いた。白色の着色した残渣を集め、−5℃で使用まで貯蔵した。生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0310】
PPA−O−PEG−Oの調製:
スキーム4に描かれるように、HO−PEG−OHのピロール化を、p−トリエンスルホン酸(PTSA)触媒との等方的還流を使用するトルエン中でのエステル化プロセスにより確立した。
上記手順を使用して、等モル量のPPAおよびPEG(MW=400)をPTSAの存在下でトルエンに溶解し、混合物を、形成された共沸物を留去しながら4日間還流した。TLCにより、1つの主生成物の形成および残存量の出発物質が確認された。主生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0311】
PPA−JEFAMINE2000−NH2の調製:
PPA−JEFAMINE2000−NH2をスキーム5に描かれるように調製した。
JEFFAMINE2000(O−(2−アミノプロピル)−O’−(2−メトキシエチル)−O’−(2’−メトキシエチル)プロピレングリコール2000、10グラム、5mmol)を150mlの酢酸エチルに溶解した。撹拌しながら、PPA(0.7グラム、5mmol)およびDDC(1グラム、7mmol)を溶液に加えた。混合物を室温で72時間撹拌した。この期間中を通して、白色のDCUの沈殿物が形成した。沈殿物をろ過し、20mlの酢酸エチルで2回洗浄した。酢酸エチル画分を集め、エバポレーションして乾固した。得られた黄色がかったガムを室温に冷却し、しばらくして固化した。その後、生成物をゲルろ過によって精製し、1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0312】
ビス−ピロール−PEG220の調製:
ビス−ピロール−PEG220をスキーム6に描かれるように調製した。
H2N−PEG220−NH2(1グラム、4.54mmol)を50mlのDMFに溶解した。その後、20mlのDMFに溶解されたPPA−NHS(2.14グラム、9mmol)を滴下して加えた。混合物を室温で48時間撹拌した。反応が完了したとき、溶媒を減圧下で除いて乾固した。ビスピロール化残渣を50mlの2回蒸留水(DDW)とCH2Cl2との間で分離し、70mlのCH2Cl2に3回抽出した。有機画分を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除いた。その後、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、最終生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0313】
N−アルキル化ピロールの調製−一般的手順:
典型的な反応において、ピロールを最初に、NaH、Kまたはブチルリチウムと反応して、アルカリピロール誘導体を得た。アルカリピロール誘導体を、以前に記載されたように(E.P.PapandopoulosおよびN.F.Haidar、Tetrahedron Lett.、14、1721〜23、1968;T.Schalkhammer他、Sensors and Actuators B、4、273〜281;S.Cosneir、Electroanalysis、1997、9:894〜902およびそれらにおける参考文献)、等モル量のアシルハロゲン化物またはハロアルキルと反応させた。最後に、ピロールアルカリ塩を、様々な長さのモノブロモメトキシポリエチレングリコール(PEG)(MW=200グラム/mol、1000グラム/mol、4,000グラム/mol)とコンジュゲート化した(それぞれ、化合物1、化合物2および化合物3)。
【0314】
代わりの一般的手順では、水素化ナトリウムを、下記スキーム7に描かれるように、ピロリドアニオンのインシトゥー調製のために使用した。
従って、新たに蒸留されたピロール(1ml、15mmol)を塩化カルシウム管のもとで30mlの乾燥DMFに溶解し、溶液を氷浴で0℃に冷却した。1当量の水素化ナトリウムを、撹拌された溶液にオイル分散物として少量ずつ加えた。直ちに、ガスの発生が認められ、混合物を60分間穏やかに撹拌した。冷却している黄色がかったフォームに、20mlの乾燥DMFに溶解されたアルキルハロゲン化物(1当量、例えば、ヨウ化オクチル、ヨウ化ドシル、C14−ブロミド)を滴下して加え、混合物を0℃でさらに4時間撹拌した。その後、混合物を室温に加温し、48時間放置した。DMFを減圧下で除いて乾固し、生成物を100mlのDDWから4回の100mlのCH2Cl2に抽出した。有機画分を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、有機溶媒を除いて、褐色のオイルを得た。精製を180℃での真空蒸留によって行った。
【0315】
1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類の誘導体およびアナログの調製−一般的手順:
1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類および関連化合物をスキーム8に描かれるようにHinz他[Synthesis、620〜623(1986)]に従って調製した。
従って、1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類および関連化合物を、トルエン中における、市販の2−チオフェンカルボキシアルデヒドまたは2−(N−アルキルピロール)カルボキシアルデヒドと、対応するメチルホスホニウム塩(これは非置換ピロールのMannich反応によって調製される)との間でのWittig反応(アルゴン雰囲気下での10時間の還流)によって調製した。全体的な収率は約70%であった。
【0316】
1,1’−ジ−(2−チエニルまたはピロリル)−2−アルキルエチレンの調製−一般的手順:
表題の化合物をスキーム9に描かれるように調製した。
1,1’−ジ−(2−チエニル)エチレンを、2−アセチルチオフェンを乾燥THF中で2−ブロモチオフェンのgranger試薬と反応することによって調製した。生成物を1H−NMRおよびEI−MSによって同定した(データは示さず)。
【0317】
ピロールアナログを、TMEDAによる室温での乾燥ヘキサンまたは乾燥THFにおけるN−アルキルピロールのリチウム化、その後の対応するエステルの二置換によって、Ramanthan他[J.org.chem.、27、1216〜9(1962)]およびHeathcock他[J Heterocyclic chem.、6(1)、141〜2(1969)]に基づく類似した様式で調製した。
【0318】
コンジュゲート化生成物が希塩酸において容易に得られた。
【0319】
さらなる誘導体化を、既知の方法を使用して様々なカルボン酸によるヒドロキシルのエステル化によって達成することができる。
【0320】
チエニル誘導体、フラニル誘導体およびN−アルキルピロール誘導体のカップリング−一般的手順:
チエニル誘導体およびフラニル誘導体の両方の2−リチウム誘導体と、N−アルキルピロールとのカップリングをスキーム10に描かれるように行った。様々なカップリング生成物が、CuCl2を使用して比較的良好な収率(約70%)で容易に得られた。だが、文献[chem.Ber.、114、3674(1981)]において提案されるように、他の試薬(例えば、NiCl2など)もまた使用することができる。
【0321】
電解重合可能なチエニルモノマーおよびピロリルモノマーの調製:
1,4−ジ(2−チエニル)1,4−ブタンジオールを、Wynberg[Wynberg他、synthetic comm、1 14(1)(1984)]に従ってStretter反応[Stretter、H;Angew chem、88、694〜704(1976)]を使用して75%〜80%の収率で調製した。
その後、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールを、スキーム11に描かれるように、対応するアミンと反応させて、2,5−ジ(2−チエニル)N−アルキルピロールをPaal−Knore反応[Cava他、Adv materials、5、547(1993)]によって調製した。N−アルキルヒドロキシ誘導体を重合前にエステル化によって様々なカルボン酸にコンジュゲート化した。
【0322】
3−アルキル−(N−メチルピロール)誘導体の調製:
3−アルキル−(N−メチルピロール)誘導体の調製はスキーム12に描かれる。
アルキルピロールを、Dvorikova他[Dvorikova他、Synlett、7、1152〜4(2002)]に従ってTHFにおいてN−ブロモスクシンイミドおよびPBr3により選択的に臭素化し、その後、−78℃でTHFにおいてBuLiと反応させた。生成物をアルキルハロゲン化物との反応によって得た。
【0323】
ジリチウム化によるチエニルおよびN−アルキルピロールの調製:
2,5−ジ−(2−チエニル)−N−アルキル)−ピロリル)の調製はスキーム13に描かれる。
N−アルキル改変ピロールをリチウム化し、得られた2−リチウムピロール誘導体を2,5−ジブロモチオフェンとさらに反応させた。
【0324】
チエニルおよびジ(N−アルキル)ピロリルジメタノールのオリゴマーの調製:
チエニルおよびジ(N−アルキル)ピロールジメタノールのオリゴマーの調製はスキーム14に描かれる。
ビスピロール化合物(これは上記スキーム10に記載されるように得られる)をリチウム化し、得られたリチウム化ビスピロールを等モル量の対応するアルデヒドと反応させる。反応を、不活性な条件のもとでの、THFにおけるリチウム誘導体とアルデヒドおよびケトンとの反応について文献に記載される手順[Cava他、Adv materials、5、547(1993)]に従って行った。
【0325】
類似するフラニル、ピロリルおよびジ(N−アルキル)ピロールジメタノールのオリゴマーもまた、同じプロセスを使用して調製した。
【0326】
2−アルキルピロール誘導体の調製−一般的手順:
アルキル基およびアリール基をα位に有する末端N−アルキルピロールを、電気化学的重合のための停止剤およびポリマーの分子量分布(MWD)のコントロールとして設計した。これらの化合物を、Synthetic comm、12(3)、231〜48(1982)に記載される手順に基づいてスキーム15に描かれるように調製した。
N−アルキルピロール(例えば、N−メチルピロールなど)の2−リチウム誘導体をヘキサンまたはTHFにおいてヨウ化アルキルまたはヨウ化アリールと反応させ、その後、加水分解した。
【0327】
N−アルキルピロール−2−カルボン酸誘導体の調製−一般的手順:
N−アルキルピロール−2−カルボン酸誘導体の調製はスキーム16に描かれる。
CO2粉末を種々のN−アルキルピロール(例えば、Me、ブチル、ヘキシル、オクチルなど)の2−リチウム誘導体に−40℃〜−30℃で加え、その後、水を加えた[Jorgensen、org reaction、18、1(1970)]。2−(N−アルキルピロール)カルボン酸の反応生成物を、THFにおけるLiAlH4によって、対応するアルコールに還元した。生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0328】
このアルコールをポリアクリル酸またはポリ乳酸にエステル化によって結合して、ピロール改変モノマーを形成した。
【0329】
2−(N−アルキルピロール)カルボン酸を様々なPEG分子と反応させて、対応するPEG−ジピロールを形成した。
【0330】
N−(3−ヒドロキシプロピル)ピロール誘導体の調製−一般的手順:
N−(2−カルボキシエチル)ピロール(これは上記のように調製される)を、既知の手順を使用して乾燥THFにおいてLiAlH4によって80%の収率で還元した。生成物を蒸留によって精製し、1H−NMRおよびEI−MSによって同定した(データは示さず)。
【0331】
ヒドロキシピロール誘導体をポリアクリル酸およびポリ乳酸にエステル化によって結合して、ピロール改変モノマーを形成した。
【0332】
アミノ基を含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
アミノ含有活性剤によって改変されたカルボン酸の、アミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、グルタルアルデヒドのスペーサーを使用した。
【0333】
典型的な反応において、N−(3−アミノプロピル)ピロールを最初に、過剰なグルタルアルデヒドと反応させて、イミンを形成させ、その後、このイミンを、アミノ基を含有する改変されたカルボン酸と反応させて、第2のイミン結合を形成させる。イミン結合をNaBH4によって還元することにより、安定なアミン結合がもたらされる。イミン−アルデヒド−アミンの反応を使用することの利点は、この反応が水溶液中において高収率で行われるということである。
【0334】
サッカリドまたはオリゴサッカリドを含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
サッカリド含有剤またはオリゴサッカリド含有剤により改変されたカルボン酸のアミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、サッカリドを最初に酸化して、アルデヒド骨格を形成し、その後、アルデヒド骨格をアミノプロピルピロールと反応させて、重合可能なピロールサッカリド誘導体を形成させる。
【0335】
ヒドロキシ基を含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
ヒドロキシを含有する活性な薬剤により改変されたカルボン酸のアミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、アミノピロールを最初に、一般的な活性化剤(例えば、カルボジイミドなど)を使用してエステル化する。
【0336】
あるいは、活性な薬剤におけるヒドロキシル基を最初にアミノ酸または短いペプチドにエステル結合によってコンジュゲート化し、これにより、そのアミノ誘導体またはイミノ誘導体を得て、その後、これを、カルボジイミドをカップリング剤として使用するアミド化反応によって、または、アルデヒド含有ピロールを使用するときにはイミン結合によって、ピロールにコンジュゲート化する。
【0337】
典型的な反応において、アミノ末端を有するPEG2000を、DCCをカップリング剤として使用して室温で3日間、DMF中で1.3当量のカルボキシエチルピロールと反応させた。生成物を、DMFをエバポレーションして乾固し、残渣をジエチルエーテル中で粉砕することによって単離した。コンジュゲート化収率は、質量分析および1H−NMR分析によって決定されたとき、90%を超えていた。
【0338】
長鎖脂肪酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
より長い脂肪族鎖を有するω−カルボキシピロール誘導体をSchuhmann(Diagnostic Biosensor Polymers、AM UsmaniおよびN.Akmal編、ACS Symposium Series、1994、226、110、Electroanalysis、1998、10、546〜552)に従って合成する。
【0339】
(実施例2)
ナノ粒子の調製
様々な方法が、親水性表面(例えば、PEG鎖または多糖鎖など)を表面に有するナノ粒子および微粒子の配合のために文献に記載されている(例えば、R.Gref他、ポリ(エチレングリコール)被覆ナノスフェア、Advanced Drug Delivery Reviews、16:215〜233、1995を参照のこと)。
【0340】
好ましい方法において、官能基を親水性側鎖の一部として有する親水性−疎水性の分子は、その分子が有機溶媒−水性溶媒の混合物における粒子の調製のために使用されるとき、親水性側鎖が水性媒体に向かって表面に留まるように調製される。例えば、アミノ基をPEG末端鎖に有するPLA−PEGブロックコポリマーを、水溶液に分散された有機溶媒におけるPLAおよび場合により薬物の溶液を使用する溶媒蒸発法によって粒子に組み立てることができ、従って、さらなる反応または相互作用のために利用可能なアミノ官能基を有するPEG鎖を粒子表面に有する粒子を形成させることができる。
【0341】
代表的な一例において、PLA−PEG−アミンコポリマー(PLA鎖のMWが約3000Dで、PEG鎖のMWが約1000Dである)を、様々な分子量(3000D〜50000D)のPLAのジクロロメタン溶液(10%w/v)に、溶液中のPLAについて1:10の比率で加えた。得られた透明な溶液を高速度での均質化とともに0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)に滴下により加えて、乳白色の分散物を形成させた。混合を、すべての溶媒が蒸発するまで室温で数時間続けた。得られた分散物は、重水に分散された粒子の1H−NMRスペクトル(データは示されず)によって明らかにされたように、PEG鎖が表面に存在する、粒子サイズがミクロン範囲にある球状粒子を含有した。表面アミノ基の存在が、FITC(粒子を蛍光性にする試薬)との粒子の反応によって明らかにされた。上記手順を使用して、様々な薬物(例えば、パクリタキセルなど)を、粒子調製のための水性媒体へのその添加の前に薬物をPLA溶液に加えることによって粒子に取り込むことができる。粒子に取り込まれた薬物の量はポリマー重量の約1%(w/w)〜約50%が可能である。
【0342】
ピロール誘導体が表面に結合し、電解重合のために利用可能であるナノ粒子を下記のように調製した:ブロモ−PEG2000−ヒドロキシルをピロールと反応させて、N−ピロール−PEG2000−OHを得て、その後、これを、オクタン酸第一スズを触媒として使用してラクチドとともに重合した。その後、このブロックコポリマーをポリ(ラクチド)およびPEG−PLAとクロロホルム溶液において混合した。この溶液を、撹拌された緩衝液(0.01Mリン酸塩、pH7.4)に滴下により加えて、電解重合のために利用可能なPEG−ピロールを表面に有するナノ粒子を形成させた。
【0343】
(実施例3)
電解重合
ステンレス鋼(SS)表面の前処理。SS表面を、その表面性状を改善し、表面へのポリマーのより良好な接着をもたらすために、表面での電解重合の前に前処理した。
【0344】
SSプレートにおける接着係数を、SSについてのD−3359−02ASTM標準試験に従ってクロスカット接着テープにより測定した。
【0345】
新しい前処理法を開発した。その手順が下記の表1に示される。
【0346】
典型的な実験において、SS316プレートを、プレートが鏡のように輝いて見えるまで、4000番のグリットサンドペーパーを使用して手作業により研磨した。その後、プレートをアセトニトリルによりすすぎ洗浄し、ピロール誘導体との電解重合に供した。ポリマーとSS表面との間での最も良い接着が、より低いCr/Fe比を伴って、また、より滑らかな表面形状を伴って得られた。全体的なCr/Fe比は0.3前後であるが、金属合金の表面は1.65ほどの高い比率を含有する場合があり、このために、表面が腐食から保護される。SS316プレートが、上記の表1に記載されるように手作業により研磨されたとき、Cr/Fe比は1.09から0.38に低下した。結果として、8つの異なる被覆の平均接着係数が0.2から0.8に増大した。
【0347】
ステントにおいて、上記の表1に記載されるようなカーボランダム処理法はポリマーの最も良い接着を与えた。この処理の後でのCr/Fe比は0.67から0.38に低下した。ステントを用いて行われた1つの典型的な実験において、ステントが、エタノール中で40分間、220番、500番および1000番のカーボランダム粉末の1:1:1混合物とともに超音波処理され、温度が約65℃に上げられた。その後、ステントを、すべての粉末をその表面から除くために高圧DDWによりすすぎ洗浄した。ステントを最後に、DDWから乾燥するためにアセトンですすぎ洗浄した。
【0348】
異なる粒径のカーボランダムを含有する種々の混合物を、ステントを重合前に清浄化するために使用した。混合物を、ボルテックスを使用して撹拌し、その後、DDW、次いでアセトンにより洗浄した。ステントの被覆をアセトニトリル/0.1M TBATFBにおけるBuOPy:PPA(10:1)において行った。結果が下記の表2に示される。
【0349】
これらの結果は、カーボランダム(メッシュ220)が、ステントへのポリマーの接着を促進させることにおいて、それ以外の試験された前処理のすべてよりも優れていることを示している。この技術において使用された超音波処理法は、この前処理法を非常に多数で行うことを可能にしている(1つの容器において10個)。
【0350】
様々なN−置換ピロールによるステントの電解重合:
上記で記載されたカーボランダム(メッシュ220)前処理を使用して、BuOPy:PPAの10:1混合物に加えて、様々なN−置換ピロールの存在下で電解重合によって形成された電解重合ポリマーの性能を調べた。ステントを、電解重合の前に、カーボランダム(メッシュ220)とともにアセトニトリル(AN)中で15分間超音波処理し、その後、DDWおよびアセトンにより洗浄し、窒素流で乾燥した。ステントを、その被覆の接着を検査するために手作業により磨き、DDW中でバルーンにより3mmのODに広げた。
【0351】
ステントの電解重合を、下記に記載されるように、0.1MのTBATFBとともにアセトニトリル中で、N−アルキルピロールおよび2−アセチルピロールの混合物において行った。混合物は、0.07MのBuOPy(ブチルエステルピロール)、0.01MのPPAおよび0.02MのピロールまたはN−アルキルピロールからなった。結果が下記の表3に示される。
【0352】
これらの実験では、ステントが2.7mm〜2.95mmに広げられたことに留意しなければならない。ステントはすべてが対称的に広げられた。従って、2−アセチルピロールおよび両方の2−アルキルピロールの存在下で形成されたポリマーは、BuOPy:PPAの10:1混合物から調製されたポリマーよりも柔軟であることが示唆される。
【0353】
電解重合:
SSプレートでの電解重合:
電気化学的測定を、一区画三電極ガラスセルを使用して630B電気化学分析装置(CH Instruments)を用いて行った。参照電極は、有機媒体中で使用されたAg|AgBr線であった。後者はフェロセン−フェロセニウム(Fc/Fc+)に対して0.448Vの電位を有する。直径6mmのグラファイト棒を補助電極として使用した。典型的な電解重合セル構成が図1に示される。
【0354】
典型的な実験において、ピロールを、サイクリックボルタンメトリーを使用して、0.1Mの蒸留されたピロール誘導体モノマーおよび0.1Mのテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBATFB)を含有するアセトニトリル溶液においてステンレス鋼プレート(40x9mm2)に電解重合した。Ag|AgBrに対して−0.8V〜1.2Vの間での電位掃引を典型的に加えた(別途言及されない限り、10サイクル)。図8には、典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムが示される。グラファイト棒を補助電極として使用し、一方で、Ag|AgBrを参照電極として使用した。後者(これはフェロセン−フェロセニウム(Fc/Fc+)に対して0.448Vの電位を有する(14))は、一般に使用されるAg|AgCl線よりもはるかに安定した電位を有機媒体中で有することが見出された。
【0355】
非改変ピロールの溶液に加えて、他のモノマー溶液を調製し、使用した:電解重合溶液:100%ピロールプロパン酸、100%ピロールブチルエステル、100%PEG400ジピロール、および、50:50のピロールプロパン酸:ピロールブチルエステルの混合物。電気化学的条件は、−0.4Vの初期電位、1.6Vの最大電位、−0.4Vの最終電位であった。溶液は、10mlのアセトニトリルにおいて0.1MのTBATFBを伴って0.1Mのモノマー濃度を有した。それぞれの溶液について、5CV、10CV、15CV、20CVおよび30CVをサンプリングした。
【0356】
電位掃引範囲、モノマー濃度およびサイクル数のようなパラメーターにおける変化が、ピロールの異なる誘導体とともに変化する。
【0357】
図9には、CV数の関数としての、試験された溶液のそれぞれを用いて得られた厚さが示される。結果から、ポリ(ピロールプロパン酸)およびポリ(ピロールブチルエステル)は直線性を20CVまで保ち、一方で、30CVでは直線性を失うことが示される。ピロールプロパン酸およびピロールブチルエステルの混合溶液は、20CVでは厚さが0.7μmであるような、PPAの薄膜厚さ値と、PBuOPyの薄膜厚さ値との間である薄膜厚さ値を有する。
【0358】
図9に示される結果は、重合速度および最終的なポリマー厚さが、ピロールのN位置に結合した鎖の長さがより大きくなるにつれ、劇的に減少することを明瞭に示す。
【0359】
図10には、様々なモノマーの存在下で電解重合されたステンレス鋼表面のSEM測定が示され、金属表面が均一に全面被覆されていることが明瞭に示される。
【0360】
ステントにおける電解重合:
一般的手順I:電解重合によるステントの被覆を、ステントが、316Lステンレス鋼ネジにより電気回路に接続された場合、作用電極として作用した三電極セルにおいて行った。補助電極は白金線またはガラス状炭素棒からなり、参照電極は、臭化銀が被覆された銀線(フェロセンに対して0.448ボルト)であった。
【0361】
作用電極は、240番、600番および2000番のグリットエメリーペーパー(Buehler)により最初に研磨され、続いて、ミクロクロス研磨パッドでのアルミナペースト(1umおよび0.05um)によって精密研磨された。その後、電極をアセトニトリルで洗浄し、アセトニトリル中で15分間にわたって超音波処理し、室温で乾燥し、その後、電気化学的重合を行った。
【0362】
ポリマーを、陰極電圧または陽極電圧のいずれかを加えることによってステント上に堆積させる。被覆は、下記方法の1つでの電着によって形成されるポリマーからなった:
(i)電流法、この場合、電位が所定量の時間にわたって一定に保たれる。典型的な実験は、20マイクロアンペアを3分間加えることからなる;
(ii)定電流法、この場合、電流が所定量の時間にわたって一定に保たれる。典型的な実験は、Ag/AgBrに対して1.6Vを3分間加えることからなる;および
(iii)サイクリックボルタンメトリーまたはパルスボルタンメトリー法、これらは、電位を2つの値の間で繰り返すか、または、パルスで加えることが可能である。典型的な実験は、5サイクル〜20サイクルをAg|AgBrに対して−0.4Vから1.6Vまで100mV/秒の速度で加えることからなる。パルス法の一例は、陽極パルスおよび陰極パルスを異なる期間にわたって交互にすることである。この方法では、2つのモノマーの混合物(一方が酸化的重合を受け、他方が陰極での重合を受ける)を同じ電極表面に堆積させることができる。
【0363】
正確な電流値または電位値は、使用されたそれぞれのモノマーの性質に従って選ばれる。
【0364】
直流(dc)サイクリックボルタンメトリー実験および時間電流法実験が、PCに接続されたEG&G Princeton Applied Research 定電圧/定電流を用いて行われる。
【0365】
一般的手順II:25℃で保たれた単一のガラス区画を使用した。参照電極は飽和カロメル電極(SCE)であり、対向電極は白金線であった。作用電極を典型的なステント物質に接続した。これらの実験で使用された電解質溶液は、0.1MのNaClをpH=7.0で含有するか、または、CH3CN溶液中に0.1MのBu4NBF4を含有する0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液であった。ピロールポリマーを、0.1Mの新たに蒸留されたピロールと、既知量のピロール誘導体とを含有する電解質溶液を電気化学的に酸化することによってステントワイヤに堆積させた。酸化電位は、通過した電荷量が10mCとなるまでは、SCEに対して0.7Vで行われた。得られた被覆ポリマー電極を蒸留水で徹底的にすすぎ洗浄した。典型的なピロール組成物はヘパリン−ピロール誘導体:PEG−ピロール誘導体:ピロールの混合物を1:1:8のモル比で含んでいた。
【0366】
例示的手順:上記で記載された一般的手順Iを使用して、電解重合を、下記の基質を使用して、0.1MのTBATFBとともにアセトニトリル中またはDMF中で行った:
下記の表4に列挙される1つだけのモノマー;
様々な比率の下記の表4に列挙されるモノマーの2つ以上の混合物;
1つ以上のモノマーと、下記の表5に列挙される界面活性剤または添加剤の1つ以上との混合物;
本明細書中下記において詳しく記載されるような2層被覆のためのモノマーの混合物。第1の層が、ステントの電位を1つのモノマー溶液において反復することによって形成され、その後、ステントを溶液から取り出し、ステントを異なるモノマーの新しい溶液に浸けて、次の層を形成する;
2工程重合のためのモノマーの混合物:本明細書中下記において詳しく記載されるように、ピロール誘導体を電解重合し、その後、化学的重合を、第2のモノマーを重合するために行う;
2工程重合のための1つだけのモノマー:ピロール誘導体を電解重合し、その後、化学的重合を、ピロールの機能的置換基を重合するために行う;
【0367】
後者の一例が、本明細書中下記に示されるピロール−Et−COO−CH2−CH=CH2である。このモノマーはそのピロール基によって陽極で電解重合させられ、これにより、アリル性の末端基によって覆われた表面が後に残る。このようなアリル性の基は、開始剤(例えば、AIBNなど)を使用してさらに重合させることができ、これにより、高度に架橋されたポリマーがもたらされ、「スリーブ」をステント表面に形成する。
【0368】
開始剤を使用するラジカル重合を、50℃〜60℃でアセトニトリルまたはTHFにおいて0.5%〜1%(w/w)で開始剤を含有する溶液に電気被覆されたプレートを一晩浸けることによって行った。
【0369】
(実施例4)
活性剤が共有結合により結合している電解重合ポリマー
生物活性剤(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を、ピロールモノマーに、アミノピロールを介するか(上記の実施例1を参照のこと)、または、カルボキシエチルピロールを介するか(上記の実施例1を参照のこと)のいずれかでコンンジュゲート化した。コンジュゲートをゲルろ過クロマトグラフィーまたは透析によって単離した。
【0370】
典型的な反応において、生物活性剤(例えば、ヘパリン)を、DECをNa−HEPES緩衝液(pH7.4)において使用してアミドカップリングによってカルボキシエチルピロールにコンジュゲート化した。得られたコンジュゲートをゲルろ過クロマトグラフィーによって反応混合物から分離した。
【0371】
ステント上での電解重合のための上記で記載された一般的手順IIを使用して、ヘパリンが共有結合により結合している電気被覆を調製した。
【0372】
さらに別の典型的な反応において、PPAを、下記手順のいずれかによって、カルボン酸含有薬物、他の生物活性剤、または、親水性もしくは疎水性の残基(例えば、脂肪酸)と反応させた:
(i)ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をカップリング剤として使用するDMF中での直接の反応;または
(ii)カルボン酸の反応性誘導体(すなわち、酸塩化物、無水物、N−スクシンイミドまたはカルボン酸)との反応。
【0373】
アミノ−PEG−ピロールをアルデヒド含有活性剤と反応させたとき、イミン(シッフ塩基結合)が得られた。この生分解性イミンコンジュゲート生成物を、ピロール被覆からの活性剤の制御された放出を設計するときに使用した(この場合、放出速度はイミン結合の分解の関数である)。しかしながら、安定な非分解性の結合が所望されたときには、ピロール−イミン−薬物コンジュゲートを、NaBH4を還元剤として使用して、対応するアミン結合にさらに還元した。
【0374】
代替として、制御された放出可能な活性剤を、上記(実施例2を参照のこと)で記載されるように調製され、さらに活性剤を被包化するピロール置換ナノ粒子を重合溶液に加えることによって、電解重合された薄膜にその形成時に取り込むことができる。活性剤が、粒子マトリックスを通過し、その後、電解重合被覆を通過する拡散によって、得られたポリマー被覆からゆっくり放出される。ヘパリン、ステロイドまたはペプチドもしくはタンパク質のような活性剤を、切断可能な結合または非切断性の結合を介して結合するためのコンジュゲート化方法が、Bioconjugate Techniques(編者:G.T.Hermanson、Academic Press、San Diego、1996)に記載される手順から採用される。
【0375】
さらなる代替として、アミノピロール誘導体またはカルボン酸ピロール誘導体による被覆をステント上で調製し、活性剤を、既に調製されたピロール薄膜にコンジュゲート化した。ポリ(ω−カルボキシアルキルピロール)の堆積を、100mMの(Bu)4NPF6を電解質塩として含有するアセトニトリル溶液における10mMのモノマー溶液からポテンシオスタットパルス法で行った。950mVの1秒間のパルス、それに続く、5秒間の休止期からなるパルスプロフィルを加えて、薄い官能基化されたポリピロール層を形成させた。一般には、5回のパルスが、電極表面をアミノ含有薬剤の共有結合性の結合のための薄いポリマー薄膜により覆うために十分であった。被覆されたステントを、30mMのN(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩を、ポリマーのカルボン酸基を活性化するために含有する3mMのヘパリン溶液に少なくとも10時間浸けた。電極をエタノールによりすすぎ洗浄した後、第2の層をポリピロールおよびPEG誘導体化ピロールの電気化学的堆積によってヘパリン結合層の上に形成させた。この二重層により、親水性PEG鎖によるステント上での受動的保護、および、結合したヘパリンの放出を数週間にわたって引き延ばす能動保護がもたらされる。
【0376】
(実施例5)
活性剤が負荷されている電気被覆された金属表面の調製
薬物負荷:
ステントを、電解重合されたポリブチルエステルピロールおよびポリ(ブチルエステル−co−プロパン酸)ピロール(10:1のBuOPy:PPA)により電気被覆した。電解重合を、5CVまたは10CV(サイクリックボルタンモグラム)を加えることによって行った。5CVによって得られたサンプルの被覆厚さは0.4μmであり、10CVによって得られたサンプルの被覆厚さは0.6μmであった。
【0377】
被覆されたステントにおける薬物負荷を膨潤によって行った:ポリピロール被覆ステントをアセトニトリルにおけるパクリタキセルの20mg/ml溶液に0.5時間浸け、その後、空気乾燥した。場合により、空気乾燥後、ステントを、0.01Mのポリ乳酸(PLA、1300)を含有するアセトニトリルの20mg/ml溶液に5分間浸けた。あるいは、この膨潤法を、パクリタキセルの様々な濃度(例えば、30mg/mlおよび40mg/ml)を使用して、他の溶液(例えば、エタノール溶液またはクロロホルム溶液など)において行った。
【0378】
薬物の負荷は、超音波浴を使用して薬物をステントまたはプレートから2ミリリットルのアセトニトリル溶液に取り出すこと;
この溶液の100μlを1ミリリットルの緩衝液(リン酸塩溶液、0.1M、pH7.4)(0.3%SDS)で希釈すること;および
負荷された薬物の濃度を求めるために、最終溶液をHPLCによって分析すること
によって測定された。
【0379】
下記の表6には、薬物を様々な電気被覆ステントに負荷しているときに得られた結果が示される。
【0380】
薬物放出:
負荷された薬剤の放出のインビトロ測定を、下記のように、水性溶媒(例えば、リン酸塩緩衝液など)への薬物の受動的拡散を測定することによって行った:
薬物が負荷されたステントを37℃で1ミリリットルの緩衝液(リン酸塩溶液、0.1M、pH7.4)(0.3%SDS)に入れ、振とうを、設定された時点で行った。吸収されたパクリタキセルを最初の30分間の間に除いた。それぞれの時点で、薬物放出濃度をHPLCによって測定した。
【0381】
パクリタキセルについての得られた保持時間は、移動相としてのDDW:ACN(45:55)の1ml/分の流速で7.9分〜8.4分であった。
【0382】
例示的な実験において、ポリ(ブチルエステル)ピロールにより被覆されたステントをアセトニトリルにおけるパクリタキセルの20mg/ml溶液に0.5時間浸け、その後、空気乾燥した。他のステントを同様に処理し、空気乾燥後、0.01Mのポリ乳酸(PLA、1300)を含有するアセトニトリルの20mg/ml溶液に5分間浸けた。
【0383】
薬物放出を上記のように測定した。結果が図11に示される。図11において認められ得るように、両方のタイプのステントに関して、薬物が、30日を越える期間にわたって徐々に放出され、従って、PLAによりさらに処理されたステントに関しては、放出がわずかに遅くなっていた。
【0384】
(実施例6)
多層化被覆
本実施例では、二官能性モノマーを使用することによって、および/または電解重合ポリマーの中または上にポリマーを含浸することによって調製され、その中に薬物を負荷することができるように設計される、多層化被覆の調製が記載される。
【0385】
その目的のために、3つの一般的な方法が下記のように設計され、実施された:
(i)電解重合可能な成分および化学重合可能な基を有する二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合、それに続く化学重合(例えば、触媒の存在下でのフリーラジカル重合)に供した;
(ii)光反応基(PAG)を有する電解重合可能な二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合(これは活性化ポリマーをもたらした)、それに続く化学重合(これは、放射線照射によって触媒され、かつ、活性化ポリマーによって誘導され、別のモノマーおよび/または薬物の存在下で行われる)に供した;および
(iii)反応基を有する電解重合可能な二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合(これは活性化ポリマーをもたらした)、それに続く、反応基が関与する、触媒ならびに他のモノマーおよび/または薬物の存在下での化学重合に供した。
【0386】
上記に加えて、多層化被覆はまた、簡便な多段階重合プロセスによって得られた。このプロセスは、1つまたは複数の連続した電気化学的重合プロセスを含み、場合により、その後、本明細書中上記に記載されるような、さらなる非電解重合可能なポリマーの注入を含んでいた。
【0387】
上記手順のそれぞれにおいて、最終的な多層化ステントを薬物負荷のために薬物溶液に浸漬することができる。あるいは、薬物を、薬物を重合溶液に加えることによって1つまたは複数の化学重合プロセスの期間中に負荷することができる。
【0388】
ピロール誘導体の化学的活性基を介した2段階の重合経路:
ピロールのビニル誘導体を、N−(2−カルボキシエチル)ピロールをアリルアルコールと反応させて、対応するアリルエステルを60%の収率で得ることによって、または、[Min Shi他、molecules、7(2002)に記載されるように]N−(2−カルボキシエチル)ピロールをジクロロメタン中およびトリエチルアミンの存在下でアクリロイルクロリドと反応することによって調製した。ビニルピロール誘導体を、ピロールユニットの2位および5位を介して電気化学的に重合し、これにより、フリーのビニル基が結合しているポリマーを得た。このポリマーを、このモノマーのフリーラジカル重合のための開始剤としてのAIBNまたは過酸化ベンゾイルの存在下でさらに重合した。
【0389】
この一般的な方法が、例えば、AIBNによるN−ビニルピロールのフリーラジカル重合、それに続く、FeCl3による第2の重合について記載されていた[例えば、Ruggeri他、Pure and appl chem、69(1)、143〜149(1997)を参照のこと]。
【0390】
光反応基が結合している電解重合ポリマーの調製:
例示的な光反応基としてベンゾフェノン誘導体を有する電解重合可能なピロールモノマーを、パラ−トルエンスルホン酸を触媒として、また、Na2SO4およびMgSO4を吸水剤として使用するトルエン中でのN−(2−カルボキシエチル)ピロールおよびベンゾフェノン反応性誘導体(例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)との間でのエステル化反応によって調製した。電気化学的重合の後、ベンゾフェノン基が結合しているポリピロールを得た。このポリマーを、活性化された基によって誘導されるさらなる化学重合を可能にするために放射線照射によって活性化した。
【0391】
ポリアクリラートを含有する多層化被覆:
ステントにおける二重層化された薬物負荷のポリアクリラート含有被覆を、ポリピロール被覆の機械的特性を改善し、および/または、全体的な負荷を改善し、かつ、ポリピロール誘導体により被覆されたステントからの放出プロフィルを最適化するために調製した。
【0392】
そのような二重層化された被覆ステントを、下記のような2つの方法を使用して調製した:
方法1:ポリピロール被覆ステントを、1:7:2(モル当量)のPPA、PPAブチルエステルおよびPPAヘキシルエステルの混合物を電解重合溶液として使用して上記で記載されるように得て、その後、クロロホルムにおける40mg/mlのパクリタキセルおよび1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートの溶液に1分間浸漬した。その後、ステントを乾燥し、同じ溶液に再び1分間浸漬し、最後に再び乾燥した。その後、乾燥ステントを、シクロヘキサンにおける1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートの溶液に20秒間浸漬した。
総薬物負荷は各ステントにおいて85μg〜100μgであった。
被覆の厚さは約0.8μmであった。
方法2:ポリピロール被覆ステントを、1:7:2(モル当量)のPPA、PPAブチルエステルおよびPPAヘキシルエステルの混合物を電解重合溶液として使用して上記で記載されるように得て、その後、エタノールにおける30mg/mlのパクリタキセルを含有する溶液に30分間浸漬した。その後、ステントを、クロロホルムにおける40mg/mlのパクリタキセルおよび1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートを含有する溶液に1分間浸漬し、乾燥した。その後、乾燥ステントを、シクロヘキサンにおける1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートを含有する溶液に20秒間浸漬した。
総薬物負荷は各ステントにおいて85μg〜110μgであった。
被覆の厚さは約0.8μmであった。
【0393】
図12および図13は、方法1(図12)および方法2(図13)によって調製されたステントからの薬物放出プロフィルを示す。図12および図13においてみられるように、両方のステントを使用して、薬物は100日より長い期間にわたってゆっくりと放出された。より遅い放出が方法2によって調製されたステントにおいて観察された。
【0394】
ステントにおけるラウリルメタクリラートおよびPETMAによるポリ(アリルエステル)ピロール被覆改変:
二官能性モノマー(例えば、ピロールユニットを含有する本明細書中上記に記載されるピロールのアリルエステル誘導体など)を、ポリ(アリルエステル)ピロールにより被覆されたステントを得るために使用した。被覆の厚さは0.4μmであった。アクリラートモノマーの別の重合によるステント表面の改変を、その後、下記のように行った:
【0395】
ラウリルメタクリラートの重合(開始剤としての過酸化ベンゾイル(BP)):
ラウリルメタクリラート(LM)モノマー溶液(そのまま、または、DCMにおける50%LMのいずれか)にモノマーあたり1%(w/v)のBPを加えた。アリルエステルポリピロール被覆ステントをこの溶液に5秒間浸漬した。その後、ステントを乾燥して、過剰なLM溶液を除き、窒素流下で数分間、空の小さいガラス製バイアルに入れた。バイアルを閉じ、70℃に5時間加熱した。反応が完了した後、ステントをメタノールにより洗浄し、拡げた。一様な被覆が得られた。
【0396】
PETMA(ペンタエリトリトールテトラメタクリラート)によるラウリルメタクリラートの架橋重合(開始剤としてのBP):上記と同じ手順を使用して、架橋ポリアクリラート被覆を、アクリラートモノマー溶液に1%(w/w)のPETMAを架橋剤として加えることによって得た。
【0397】
PETMAの重合(開始剤としてのBP):上記と同じ手順を使用して、架橋ポリマー被覆を、DCMにおける50%のPETMAの溶液をモノマー溶液として使用することによって得た。
【0398】
水性媒体における重合:上記で記載された手順のそれぞれを、ステントをモノマー溶液に浸漬し、ステントを乾燥し、得られたステントを窒素流下で水に浸漬することによって行った。その後、0.25%のNa2S2O5、0.25%のFeH8N2O8S2およびNa2S2O8を加え、混合物を5時間撹拌した。その後、ステントを水により洗浄し、拡げた。
【0399】
本明細書中上記(例えば、実施例3〜実施例5)に記載される電解重合プロセスのそれぞれを、ステントまたは他の埋め込み可能な機器において、ならびに、機器の特定部分において行うことができる。例えば、金属ステントの内側部分を、ステントを膨張したバルーンに、あるいは、柔らかいロッドまたは堅いロッドに差し込み、従って、電解重合溶液がステントの内側に入ることを制限することによって電解重合被覆から保護することができる。同様に、内側部分は、外側部分をバルーンまたは柔らかい覆いにより覆うことによって、表面を被覆することなく電気化学的に被覆することができる。機器を、所望する性質を可能にするために様々な被覆層によって被覆することができる。例えば、最初の重合層はピロールモノマーおよびN−PEG200−ピロールモノマーから9:1の比率で構成されることが可能であり、第2の層は、比率が6:4であるピロール:N−アルキルパクリタキセル−ピロールの混合物であることが可能であり、第3の層は、比率が9:1であるピロール:N−PEG200−ピロールの混合物であることが可能である。このタイプの多層被覆は、ポリマー内のピロールユニットからの薬剤の切断によって、また、組織および体液からの受動的保護としても役立つ外側層を通過する拡散によって制御される長期間にわたるパクリタキセルの放出をもたらす。
【0400】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0401】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0402】
【図1】金属性表面における被覆が、電流を加えることによって、所望のモノマー(1つ以上)および緩衝剤を含む溶液において行われ、金属性表面(ステント)が陽極として作用する、本発明の好ましい実施形態による電解重合装置の概略図である。
【図2】モノマーが最初に、活性なラジカルを得るために電流によって活性化され、その後、このラジカルがカップリング反応で他のピロールラジカルと反応する、ピロールの段階的電解重合プロセスの概略図である。
【図3】保護用の官能基がその表面に結合しているステントの概略図である。
【図4】薬物、および/または、その表面に結合したポリ乳酸粒子(PLA)に封入された薬物を有するステントの概略図である。
【図5】薬物(D)が結合しているステントの概略図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による、反応性の側鎖を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造を示す(RおよびR’は有機残基を表し、Yは分解性または非分解性の化学結合を表す)。
【図7】薬物、または、共有結合により結合した薬物を包み込むナノ粒子を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造(図7A)、および、そのようなモノマーから得られる例示的な電解重合ポリマーの化学構造(図7B)を示す。
【図8】本発明の好ましい実施形態によるピロール誘導体の電解重合の典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムである。
【図9】本発明の実施形態による電解重合ピロール誘導体の厚さに対するCV数の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図10A−D】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図10E−H】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図10I−J】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図11】PLAを伴う電解重合ポリ(ブチルエステル)(A)、および、PLAを伴わない電解重合ポリ(ブチルエステル)(B)に取り込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図12】本発明の実施形態による例示的な電解重合ピロール被覆ステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図13】本発明の実施形態による例示的な、電解重合ピロールおよびPLAにより被覆されたステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図14】本発明の実施形態による例示的な保持機器の概略図である。
【図15】本発明の実施形態による例示的なカートリッジの概略図である。
【図16】本発明の実施形態による例示的なシステムの概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質が表面に結合している、電解重合ポリマーにより被覆された導電性表面、そのような導電性表面を得るために設計および使用される電解重合可能なモノマー、ならびに、電解重合ポリマーを導電性表面に結合させるためのプロセス、機器および方法に関連する。本明細書中に示されるポリマー、プロセスおよび機器は、埋め込み可能な医療機器の調製において有益に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、金属構造物が様々な目的のために生体に埋め込まれることが多い。そのような金属構造物には、例えば、ペースメーカー、グラフト、ステント、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、および、心臓弁が挙げられる。埋め込み可能な金属構造物は本来、生体適合性によって、より具体的には、血液適合性および組織適合性の両方によって特徴づけられなければならない。インプラントは典型的には、インプラントが凝固因子(例えば、タンパク質および血小板)の活性化をほんの少ししか誘導しないとき、血液に対して生体適合性があると見なされ、また、インプラントが過度な細胞増殖および慢性的な炎症を誘導しないとき、組織に対して生体適合性があると見なされる。
【0003】
しかしながら、大部分の金属表面の本来の親水的性質は多くの場合、埋め込み可能な金蔵構造物の生体適合性に悪影響を及ぼす。従って、多くの適用において、埋め込みの際、金属表面は最終的には、周囲の組織および体液に由来する吸着された生物学的物質(特に、タンパク質)の層により覆われる。生物学的物質の吸着した層は、血栓症および炎症をはじめとする様々な望まない生体反応に関わっている。加えて、病原性細菌は、金属表面に直接に付着するか、かかる吸着した層によって引き寄せられるかにしても、かかる機器の表面にコロニーを形成する傾向があり、これによって機器を様々な感染の中心地にしている。従って、金属表面の親水的性質は、インプラントが失敗することの直接の原因である。インプラントの失敗は医学的に有害であり、潜在的には致死的であり、大抵の場合、不快で、危険な、費用のかかるさらなる手術を必要とする。
【0004】
数多くの方策が、これらの問題を克服するために開発されており、その主要かつ共通する目標は、金属表面の親水性的性質を改変することである。これらの方策の詳細な説明が、例えば、米国特許第5069899号、同第6617142号、同第4979959号、同第3959078号、同第4007089号、同第5024742号および同第5024742号に見出される。
【0005】
最も一般的に使用されている埋め込み可能な金属構造物の1つがステントである。ステントは、再狭窄の急性合併症を防止または治療するために末梢動脈または冠状動脈に設置される血管内補綴物である。
【0006】
血液適合性および組織適合性を達成するためのステントの改変を、ステント材料を変えることによって行うことができる。しかしながら、これは、ステントを堅くしすぎるか、または、ステントを脆くしすぎるかのいずれかであるので、ステントの機械的挙動に影響を及ぼすことが多い。ステントの外側層のみが血液および周囲の組織と直接に相互作用するだけであるので、所望される生体適合性をステント表面にもたらすことができる物質の薄い被覆を適用することが、有望な方策であると見なされる。
【0007】
金属インプラント(例えば、ステント)に関連する望ましくない生物学的反応を最小限に抑えるための1つの方策が、金属表面を、保護的な細胞層の成長のための下地となる生体分子により被覆することである。このような生体分子には、例えば、増殖因子、細胞付着タンパク質および細胞付着ペプチドが含まれる。1つの関連した方策では、望ましくない生物学的反応を低下させる活性な医薬的な薬剤(例えば、血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗炎症剤および抗菌剤など)の金属表面への結合が伴う。
【0008】
数多くの方法が、生体分子および他の有益な物質(以降、これらはまとめて「活性物質」と呼ばれる)を例えばステントの金属表面に結合し、その結果、金属の生体適合性を増大させるために提供されている。
【0009】
1つの方法では、連結成分を金属表面に共有結合的に結合し、その後、所望する活性な成分を連結成分に共有結合的に結合することが伴う。リンカーを介した共有結合性の結合によって金属表面に結合している1つの活性な成分が抗凝固剤のヘパリンである。HepacoatTMステント(Cordis、Johnson and Johnson社)では、ヘパリンがステント表面に共有結合的に結合している。ヘパリンは、埋め込み後もステントに結合したままであり、所望の効果が血流における相互作用によって生じる。
【0010】
別の方法では、金属表面を、活性な成分とのイオン結合を形成するように構成された層により被覆することが伴う。例えば、米国特許第4442133号は、抗生物剤とのイオン結合を形成するトリドデシルメチルアンモニウムクロリド層を教示する。米国特許第5069899号は、アニオン性ヘパリンがイオン結合により結合する層によって被覆された金属表面を教示する。
【0011】
別の方法では、金属表面をポリマーにより被覆し、活性な医薬成分をポリマー内に閉じ込めることが伴う。埋め込まれると、活性な医薬成分がポリマー被覆から拡散し、これにより所望の効果を生じさせる。例えば、CypherTMステント(Cordis、Johnson and Johnson社)では、細胞増殖抑制剤のSirolimus(Wyeth Pharmaceuticals)が、ステントを被覆するポリマー層に閉じ込められている。埋め込まれると、活性な医薬成分がポリマー層から拡散し、これにより、ステント上での組織の成長を制限する。そのようなインプラントの欠点は、ポリマー被覆からの活性な医薬成分の拡散速度が制御不能または予測不能であることである。さらに、この方策は、ポリマーに効率的に捕捉され得るが、それにもかかわらず、生理学的条件下において妥当な速度で溶出することが可能である活性な医薬成分に限定される。
【0012】
しかしながら、上記の技術は、金属構造物への被覆物の接着が不良であることによって、また、それにより得られる粗い不均一な表面によって、また、金属構造物の埋め込み手順および埋め込み作業を複雑にし得る、被膜の比較的大きい制御できない厚さによって、また、比較的低い柔軟性によって制限される。後者は、典型的には展開可能な機器として設計されるステントに関して特に重要である。加えて、様々な活性物質を金属表面に結合することを伴う現在の技術には、ほとんどの場合、体内における活性物質の制御されない放出が伴う。
【0013】
上記の制限は電解重合によって克服することができる。
【0014】
導電性表面(例えば、金属表面など)を、電解重合可能なモノマーを使用して被覆することは、これにより、被覆された金属表面の物理的特性および化学的特性が、電気化学的重合プロセスのパラメーター(例えば、電解質または溶媒の性質、電流密度および電極電位など)を単に制御することによって制御されることが可能となるので、非常に好都合である。さらに、電気被覆は、残留応力が低い結晶性の高い堆積物の形成、および、多孔性表面を堆積させる能力を可能する低いプロセス処理温度によって特徴づけられる。様々な電解重合可能なモノマーが当該分野では既知であり、これらには、例えば、アニリン系化合物、インドール系化合物、ナフタレン系化合物、ピロール系化合物およびチオフェン系化合物が含まれる。電解重合条件下において表面の近くで酸化されたとき、そのような化合物は重合して、約15ミクロンまでの厚さのポリマー薄膜を形成する。そのようなポリマー薄膜は、表面に共有結合により結合していないが、典型的には、表面に存在する裂け目、すき間および割れ目を充填することによって表面に結合する。そのような薄膜は、例えば、米国特許第4548696号に教示されるように、バイオセンサーのための保護層として当該分野では広く使用されている。
【0015】
電解重合薄膜によって活性物質が負荷された埋め込み可能な医療機器が教示されている。例えば、国際特許出願公開WO99/03517(これは、本明細書中に全体が示されるかのように参考として組み込まれる)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを金属表面にイオン結合することを教示する。Journal of Biomedical Materials Research、第44巻、1999、121頁〜129頁には、ヘパリンを金属表面に陽イオン結合することが教示される。活性物質のこのような静電的結合はまた、生物系と接触してからの活性物質の制御できない放出によって制限される。
【0016】
従って、医療用金属構造体の表面を改変すること、その結果、そのような構造体の生体的適合性を高め、かつ、さらなる治療特性をそのような構造体に与えるようにすることは非常に有利であることが広く認識されている。先行技術では、様々な方策が、金属の埋め込み可能な機器に関連する制限を克服するために教示されるが、これらは、典型的には、活性物質を直接的または間接的のいずれかで金属表面に結合することを伴う。後者には、活性物質を様々な化学的相互作用(例えば、共有結合性の結合またはイオン結合の形成、封入など)によってリンカー分子またはポリマーに結合することが含まれる。しかしながら、現在知られている方策は、不均一な被覆;被覆の制御できない厚み;比較的低い柔軟性;および活性物質の制御できない放出によって、活性物質が結合するリンカーまたはポリマーの、金属表面への不良な付着によって制限される。
【0017】
従って、上記制限を有しない、具体的には、薄く、滑らかで、均一で、かつ、柔軟であり、また、体内における活性物質の制御された放出を可能にし、従って、埋め込み可能な金属構造物を構築するために使用することができる、活性物質が結合している金属表面が必要であることが広く認識されており、また、そのような金属表面を有することは非常に好都合である。
【発明の開示】
【0018】
本発明の1つの態様によれば、導電性表面を有する物体と、その表面に結合している電解重合ポリマーと、その電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物が提供され、ただし、活性物質は静電的相互作用以外の相互作用を介してポリマーに結合する。本発明の範囲からはまた、活性物質が、国際特許出願公開WO01/39813に記載されるように、共有結合性の相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する製造物(具体的には、医療機器)が除かれる。
【0019】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、物体は埋め込み可能な機器である。埋め込み可能な機器は、ペースメーカー、グラフト、ステント、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、注入口および心臓弁が可能である。好ましくは、埋め込み可能な機器はステントである。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、導電性表面はステンレス鋼を含む。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも1つの活性物質は、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合している複数の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せが可能である。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、保護剤は、疎水性ポリマー、両親媒性ポリマー、複数の疎水性の微粒子および/またはナノ粒子、複数の両親媒性の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せが可能である。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、生物活性剤は、治療活性な薬剤、標識薬剤、および、それらの任意の組合せが可能である。治療活性な薬剤は、抗血栓剤、抗血小板剤、抗凝固剤、増殖因子、スタチン、トキシン、抗菌剤、鎮痛剤、代謝拮抗剤、血管作用性薬剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、ホルモン、トロンビン阻害剤、オリゴヌクレオチド、核酸、アンチセンス、タンパク質、抗体、抗原、ビタミン、免疫グロブリン、サイトカイン、心臓血管薬剤、内皮細胞、抗炎症性薬剤、抗生物質、化学療法剤、抗酸化剤、リン脂質、抗増殖剤、コルチコステロイド、ヘパリン、ヘパリノイド、アルブミン、ガンマ−グロブリン、パクリタキセル、ヒアルロン酸、および、それらの任意の組合せが可能である。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤し、吸収され、埋め込まれ、および/または封入される。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、電解重合ポリマーは、ポリピロール、ポリチエニル、ポリフラニル、それらの誘導体、および、それらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含む。さらなるポリマーは電解重合ポリマーおよび化学的重合ポリマーが可能である。好ましくは、化学的重合ポリマーは、電解重合されたモノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる。同様に好ましくは、化学的重合ポリマーは電解重合ポリマーに共有結合により結合する。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、さらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質はさらなるポリマーに結合する。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質はさらなるポリマーを介して電解重合ポリマーに結合する。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質が結合している少なくとも1つのさらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0032】
活性物質もまた、さらなるポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入され得る。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、さらなるポリマーは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、活性物質が可溶性であるポリマー、柔軟なポリマー、および、それらの任意の組合せが可能である。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物は、活性物質を体内において制御可能に放出することができるように設計される。放出することが、約1日〜約200日間にわたって達成される。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、電解重合ポリマーは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合する。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質の量はポリマーの総重量の約0.1重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲である。1つの好ましい実施形態において、活性物質の量はポリマーの総重量の約50重量パーセントである。
【0038】
本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載される製造物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、導電性表面を有する物体を提供すること;第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;活性物質を提供すること;電解重合可能なモノマーを電解重合し、それにより、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体を得ること;および、活性物質を電解重合ポリマーに結合することを含む。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用および表面相互作用からなる群から選択される相互作用を介して電解重合ポリマーに結合する。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入される。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、活性物質を結合することが、活性物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している物体をこの溶液と接触させることによって行われる。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含み、かつ、プロセスはさらなるポリマーを電解重合ポリマーに結合し、それにより、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有し、かつ、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供することを含む。
【0043】
さらなるポリマーは電解重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、第2の電解重合可能なモノマーを、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有する物体に電解重合することを含む。
【0044】
好ましくは、第2のモノマーを電解重合することが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0045】
さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0046】
好ましくは、接触させることが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0047】
さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させながら、モノマーを重合することを含む。
【0048】
好ましくは、重合することが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。同様に好ましくは、化学的重合が、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。
【0049】
さらなるポリマーは、電解重合ポリマーの一部分を形成する化学的重合ポリマーが可能であり、かつ、第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0050】
好ましくは、さらなるポリマーを形成することができる官能基が選択され、かつ、プロセスはさらに、電解重合ポリマーが結合している物体をそのような官能基の化学的重合に供することを含む。
【0051】
同様に好ましくは、さらなるポリマーの形成に関与することができる官能基が選択され、かつ、プロセスはさらに、さらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0052】
好ましくは、接触させることが、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行われる。同様に好ましくは、官能基は、光活性化可能な基、架橋基および重合開始基からなる群から選択される。
【0053】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーおよび/または電解重合することは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する電解重合ポリマーを提供するように選択される。電解重合可能なモノマーは、アルキルが少なくとも3個の炭素原子を有するN−アルキルピロール誘導体が可能である。
【0054】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合し、電解重合可能なモノマーは、それに共有結合により結合した活性物質を有しており、かつ、活性物質を電解重合ポリマーに結合することが、モノマーを電解重合することによって達成される。
【0055】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、活性物質は電解重合ポリマーの少なくとも一部分に共有結合により結合し、第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、活性物質を共有結合により結合することができる反応基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0056】
活性物質を結合することは、活性物質を含有する溶液を、電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している物体と反応させることを含むことができる。
【0057】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、プロセスはさらに、電解重合する前に、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように物体の表面を処理することを含む。
【0058】
処理には、表面を手作業により研磨すること、および、表面を有機溶媒によりすすぎ洗浄することを含むことができる。
【0059】
代替として、処理にはまた、表面を酸(例えば、硝酸)と接触させること;表面を水性溶媒によりすすぎ洗浄すること;および、表面を超音波処理に供することを含むことができる。
【0060】
さらなる代替として、処理にはまた、表面を超音波処理に供すること;および、表面を、有機溶媒、水性溶媒またはそれらの組合せでよりすすぎ洗浄することを含むことができる。
【0061】
好ましくは、超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる。
【0062】
同様に好ましくは、超音波処理は有機溶媒中で行われる。
【0063】
本発明のさらに別の態様によれば、下記の官能基の1つ以上を有する電解重合可能なモノマーが提供される:(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基;および(vii)活性物質を共有結合により結合することができる官能基。
【0064】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基、活性物質を共有結合により結合することができる官能基、および/または、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基は、ω−カルボキシルアルキルである。
【0065】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーは、そのような官能基が結合しているピロール系化合物が可能である。
【0066】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、アルキルは少なくとも3個の炭素原子を有する。
【0067】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基は、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体である。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0069】
少なくとも2つの電解重合可能な部分は同じまたは異なることが可能である。電解重合可能な部分のそれぞれが好ましくは独立して、置換または非置換のピロール、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される。
【0070】
少なくとも2つの電解重合可能な部分は、共有結合性の結合、スペーサーまたはそれらの組合せを介して互いに連結することができる。
【0071】
スペーサーは好ましくは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールからなる群から選択される。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つの電解重合可能な部分と、そのような電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0073】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも1つの電解重合可能な部分と、そのような電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマーが提供される。官能基は、例えば、光活性化可能な基および架橋基が可能である。
【0074】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的重合ポリマーを形成することができる官能基は、アリル基およびビニル基が可能である。
【0075】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基は、光活性化可能な基および架橋基が可能である。
【0076】
本発明のなおさらに別の態様によれば、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように導電性表面を処理する方法が提供され、この場合、この方法は、電解重合ポリマーを表面に形成する前に、表面を、表面を手作業により研磨すること、表面を硝酸と接触させること、表面を超音波処理に供すること、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの手法に供することを含む。
【0077】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、医療機器を、その表面への電解重合に供している間、保持するための機器が提供され、この場合、この機器は、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が有孔被包体とかみ合い、従って、電場を有孔被包体の内部において生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップ(cups)とを含む。
【0079】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有孔被包体は、流体および化学物質がその中を通って流れることを可能にするために設計および構築される。
【0080】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの医療機器は少なくとも1つのステントアセンブリを含む。
【0081】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書中に記載されるような複数の保持機器と、これらの複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジが提供される。
【0082】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、カートリッジは少なくとも3つの保持機器を含む。
【0083】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも1つの医療機器を被覆するためのシステムが提供され、この場合、このシステムは、稼動可能な配置で、本明細書中に記載されるような少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、ただし、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を、この少なくとも1つの保持機器が、所定の時間、所定の順序で複数の処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築される。
【0084】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、システムはさらに、少なくとも1つの保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体を有するカートリッジを含む。
【0085】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有孔被包体は、流体および化学物質がその中を通って流れることを可能にするために設計および構築される。
【0086】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数の処理浴は、少なくとも1つの電解重合浴と、少なくとも1つの活性物質溶液浴とを含む。複数の処理浴のうちの少なくとも1つを、前処理浴、洗浄浴、すすぎ洗浄浴および化学的重合浴にすることができる。
【0087】
好ましくは、電解重合浴は、電解重合浴の基部に取り付けられ、かつ、外部の電源につながれる少なくとも1つの電極構造物を含む。
【0088】
加えて、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を少なくとも1つの電極構造物に取り付け、それにより、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第1の側面とかみ合わせるために作動可能である。
【0089】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、システムはさらに、少なくとも1つの電極構造物を運び、かつ、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第2の側面とかみ合わせるために作動可能であるアームを含む。
【0090】
本発明は、安定で、均一な接着性の被覆をもたらし、さらには、それに結合する活性物質を制御可能に放出するように設計することができる、金属表面を被覆するための新規なプロセスを提供することによって、現在既知の形態の欠点に対処することに成功している。
【0091】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0093】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0094】
用語「方法(method)」又は「プロセス(process)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0095】
本明細書中で使用される用語「アミン」は−NR’R’’基および−NR’−基の両方を記載し、ここでR’およびR’’はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールである。これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0096】
従って、アミン基は、R’およびR’’の両方が水素であるとき第1級アミンであり、R’が水素でありR’’がアルキル、シクロアルキルまたはアリールであるとき第2級アミンであり、またはR’およびR’’がそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたはアリールであるとき第3級アミンであることができる。
【0097】
用語「アルキル」および「アルキレン」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は置換または非置換であり得る。
【0098】
用語「アルケニル」および「アルケニレン」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの二重結合を有する本明細書中に定義されるアルキルを記載する。
【0099】
用語「ビニル」は−HC=CH2基を記載する。
【0100】
用語「アリル」は−CH2CH=CH2基を記載する。
【0101】
用語「アルキニル」および「アルキニレン」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの三重結合を有する本明細書中に定義されるアルキルを記載する。1つの例はアセチレン−CH≡CHである。
【0102】
用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有さない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。シクロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されたシクロアルキルは、1つまたは複数の置換基を有し得る。
【0103】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は置換または非置換であり得る。置換されたアリールは、1つまたは複数の置換基を有し得る。
【0104】
本明細書中で「ハロ」と交換可能にも示される用語「ハロゲン化物」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を記載する。
【0105】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハロゲン化物によってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0106】
用語「スルファート」は−O−S(=O)2OR’基または−O−S(=O)2−O−基を記載し、ここでR’は本明細書中上記に定義される通りである。
【0107】
用語「スルホナート」は−S(=O)2−R’基または−S(=O)2−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0108】
用語「ジスルフィド」は−S−SR’基または−S−S−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0109】
用語「ホスファート」は、−P(=O)(OR’)(OR’’)基または−P(=O)(OR’)(O)−基を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りである。
【0110】
本明細書中で使用される用語「カルボニル」または「カーボネート」は、−C(=O)−R’基または−C(=O)−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0111】
用語「ヒドロキシル」は−OH基を記載する。
【0112】
用語「アルコキシ」は、本明細書中に定義される−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を記載する。
【0113】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中に定義される−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0114】
用語「チオヒドロキシ」または「チオール」は−SH基を記載する。
【0115】
用語「ハロゲン化アシル」は、−(C=O)R’’’’基を記載し、ここでR’’’’は本明細書中に定義されるハロゲン化物である。
【0116】
用語「カルボキシレート」または「カルボキシ」は、−C(=O)−OR’基または−C(=O)−O−基を記載し、ここでR’は本明細書中に定義される通りである。
【0117】
用語「アクリレート」はCH2=CR’’−C(=O)R’を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りである。用語「アクリルアミド」はCH2=CR’’−C(=O)NR’R’’’を記載し、ここでR’およびR’’は本明細書中に定義される通りであり、R’’’はR’について定義されるとおりである。
【0118】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0119】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0120】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0121】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、金属性表面における被覆が、電流を加えることによって、所望のモノマー(1つ以上)および緩衝剤を含む溶液において行われ、金属性表面(ステント)が陽極として作用する、本発明の好ましい実施形態による電解重合装置の概略図である。
図2は、モノマーが最初に、活性なラジカルを得るために電流によって活性化され、その後、このラジカルがカップリング反応で他のピロールラジカルと反応する、ピロールの段階的電解重合プロセスの概略図である。
図3は、保護用の官能基がその表面に結合しているステントの概略図である。
図4は、薬物、および/または、その表面に結合したポリ乳酸粒子(PLA)に封入された薬物を有するステントの概略図であり、この場合、薬物がステントから制御可能に放出され得る。
図5は、薬物(D)が結合しているステントの概略図であり、この場合、薬物は、ステントに結合している間も活性がある。
図6は、本発明の好ましい実施形態による、反応性の側鎖を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造を示す(RおよびR’は有機残基を表し、Yは分解性または非分解性の化学結合を表す)。
図7(A〜B)は、薬物、または、共有結合により結合した薬物を包み込むナノ粒子を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造(図7A)、および、そのようなモノマーから得られる例示的な電解重合ポリマーの化学構造(図7B)を示す。
図8は、本発明の好ましい実施形態によるピロール誘導体の電解重合の典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムである。
図9は、本発明の実施形態による電解重合ピロール誘導体の厚さに対するCV数の影響を明らかにする比較プロットを示す。
図10(A〜J)は、様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
図11は、PLAを伴う電解重合ポリ(ブチルエステル)(A)、および、PLAを伴わない電解重合ポリ(ブチルエステル)(B)に取り込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図12は、本発明の実施形態による例示的な電解重合ピロール被覆ステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図13は、本発明の実施形態による例示的な、電解重合ピロールおよびPLAにより被覆されたステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
図14は、本発明の実施形態による例示的な保持機器の概略図である。
図15は、本発明の実施形態による例示的なカートリッジの概略図である。
図16は、本発明の実施形態による例示的なシステムの概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0122】
本発明は、付加された治療的価値および/または向上した生体適合性を表面にもたらすことができる様々な活性物質をその中に効率的に取り込むことができる、導電性表面の新規な被覆に関する。従って、本明細書中に記載される新規な被覆は、医療機器の被覆として、具体的には、埋め込み可能な機器の被覆として有益に使用することができる。
【0123】
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0124】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0125】
本明細書中上記において議論されるように、金属表面を有する医療機器の使用は、望まない反応(例えば、血栓症および炎症)をもたらし、また、機器の生体適合性に悪影響を及ぼすその親水的性質によって制限されることが多い。そのような機器の生物学的性能を改善するために開発された方策には、金属表面を、生物活性剤(例えば、薬物)を場合によりさらに含むことがある疎水性の層によって被覆することが含まれる。先行技術では、疎水性部分を金属表面に結合させる様々な方法が教示される一方で、これらの方法は典型的には、被覆の接着が不良であること、および/または、被覆からの生物活性剤の制御されない放出によって制限される。
【0126】
金属の中でも、ステンレス鋼は、その耐腐食性および優れた機械的特性に基づいた、整形外科用インプラントおよび他の埋め込み可能な医療機器におけるその幅広い使用の理由から特に重要である。ステンレス鋼製インプラントの生体適合性は、その表面を有機分子または有機ポリマーにより改変することによって著しく改善させることができる。一般には、薬物溶出性の医療機器、具体的には、金属性表面が薬物負荷ポリマーにより被覆されるステントにおける増大した関心とともに、接着性の均一な薄い被覆(1μm〜2μm)が望まれる。
【0127】
しかしながら、現在使用されている技術、および、特に、ポリマー溶液に浸すか、または、ポリマー溶液を噴霧することによって機器を被覆するための方法は、金属構造物への被覆物の接着が不良であることによって、また、それにより得られる粗い不均一な表面によって、また、金属構造物の埋め込み手順および埋め込み作業を複雑にし得る、被膜の比較的大きい制御不能な厚さ(約15μm〜20μm)によって、また、比較的低い柔軟性によって制限される。後者は、典型的には展開可能な機器として設計されるステントに関して特に重要である。さらに、医療機器を被覆するために使用される既知のバイオポリマーのいくつか、例えば、ポリウレタン、ポリアクリラート、ならびに、様々な脂質およびリン脂質誘導体などは、多くの場合、インプラント環境、血液成分および組織との適合性を有していない。加えて、金属表面への活性物質の結合を伴う現在の技術には、ほとんどの場合、体内における活性物質の制御されない放出が伴う。
【0128】
本明細書中上記においてさらに議論されるように、上記の制限は電解重合によって克服することができる。安定な、接着性で、丈夫な電気伝導性被覆をもたらす電気化学的重合を使用して導電性ポリマーを金属表面に被覆することは、バイオセンサーの分野では広範囲に使用されている。上記で記載されたように、様々な活性な酵素が、ピロール、カルバゾールおよびチオフェンをはじめとする様々な導電性モノマーの電気化学的重合によってバイオセンサーの先端にコンジュゲート化されている。この被膜は実際に、金属性の先端に十分に接着し、また、活性化されたときには、ポリマーに結合する酵素によって生じた電流シグナルを伝えることができる導電性ポリマーとして使用される。
【0129】
重要な研究が、バイオセンサーにおける使用のための様々な導電性ポリマーの合成に関して行われたが、医療機器のための好適な電解重合可能な反応性被覆の使用については報告がほとんどなされなかった。
【0130】
本発明は、金属性表面を被覆するための様々な新規な方法論を提供することによって、現在既知の金属性医療機器に関連する制限を克服する。これらの方法論は、患者の体内にある間もそのコンシステンシーおよび接着性を保持し、従って、埋め込み可能な機器の被覆についての安全性および有効性の要件を満足する電解重合されたポリマー薄膜を堆積させることを伴う。これらの方法論はさらに、改善された生体適合性に加えて、その治療的効果ならびに/あるいは機器の機械的特徴および/または物理的特徴に関して機器性能に対する付加された価値を提供することができる、ポリマー被覆における活性物質の取り込みを伴う。治療活性な物質が被覆に取り込まれるとき、本明細書中に記載される方法論では、そのような物質の制御された様式でのゆっくりした放出を可能にする被覆を設計することができる。活性物質は、その放出の所望される速度および性質に依存して、様々な相互作用(例えば、共有結合的、水素結合、膨潤および吸収など)によってポリマー被覆に取り込むことができる。
【0131】
従って、本発明は、活性物質を負荷することができ、かつ、その活性物質を、所望されるならば、1日〜数ヶ月の期間の間、制御された様式で放出する接着性の被覆を金属性表面に形成することに関する。このような接着性の、金属構造物に十分に合った、丈夫で、安定な被覆は、酸化可能なモノマーを電解重合により金属表面に重合することによって調製される(例示的な電解重合については図1を参照のこと)。好ましい酸化可能なモノマーは、金属表面への電解重合のとき、金属表面に対する親和性を有するピロール誘導体およびピロールオリゴマーである。ピロール系モノマーの電解重合をもたらす化学的連鎖反応が図2に示される。このような被覆は、図3〜図5に概略的に例示されるように、薬物の負荷および経時的な放出のためにそのまま使用することができ、あるいは、電解重合被覆に吸収された反応性モノマーユニットの二次的な重合、または、化学的な結合もしくは特異的な相互作用を介して被覆に結合した反応性モノマーユニットの二次的な重合のいずれかにより別のポリマーの被覆層を被覆内または被覆表面に埋め込むためのプラットホームとして使用される場合がある。
【0132】
本発明を実施に移しているとき、例えば、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号(これらは、全体が本明細書中に示されたかのように参考として組み込まれる)に記載されるように、様々な新しく合成された電気化学的に重合可能なモノマー(これらはまた、電解重合可能なモノマーと呼ばれる)が設計され、首尾よく調製されている。これらの電解重合可能なモノマーは、生物活性剤および他の物質を電解重合の前または後のいずれでモノマーに結合することができるように設計された。具体的には、活性物質を、それ自体で、または、キャリア実体(例えば、ポリマーおよび微粒子およびナノ粒子)の一部としてのいずれかでモノマーに共有結合により結合することを可能にする官能基を有するそのような電解重合可能なモノマーが調製されている。そのような電解重合可能なモノマーは、活性物質のゆっくりした放出が、制御された様式で可能となるように、活性物質が共有結合性の相互作用(これは生分解性または非分解性のいずれかである)を介してモノマーに結合するように設計された。
【0133】
従って、下記の電解重合可能なモノマーが調製されている:(i)生物活性剤が切断可能な生分解性の結合(例えば、エステル、アミド、イミンなど)を介して共有結合により結合する電解重合可能なモノマー;(ii)生物活性剤がスペーサーを介して共有結合により結合する電解重合可能なモノマー;(iii)活性剤を取り込み、かつ、電解重合可能な基をさらに含有する微粒子およびナノ粒子;(iv)被覆された表面の受動的保護を提供し、かつ、さらには、それにおける活性剤の取り込みを可能にするポリマーが結合している電解重合可能なモノマー。
【0134】
これらの様々な電解重合可能なモノマーは、生体適合性かつ生体安定性がある安定なポリマー被覆を提供するために使用された。これらの様々な電解重合可能なモノマーはさらに、薄い接着性の均一な被覆を提供するために使用された。これらの様々な電解重合可能なモノマーはさらに、活性剤を局所的な送達および作用のために周囲の組織に制御された様式で放出するように設計された。
【0135】
従って、これらの電解重合可能なモノマーは、体腔における埋め込み可能な機器(例えば、ステントなど)の改善された短期および長期の性能を提供する、所定の特徴を有するポリマー被覆を得ることができるように設計された。
【0136】
さらに本発明を実施に移しているとき、活性剤を埋め込むことができるポリマー薄膜がその電解重合のときに得られるように設計された電解重合可能なモノマーが調製されている。従って、非共有結合的に結合した活性物質を、例えば、薄膜形態での不溶性の、三次元の架橋されたマトリックスに取り込むことができ、かつ、そのようなマトリックスから制御可能に放出させることができる。
【0137】
従って、下記の実施例の節において明らかにされるように、電解重合可能なモノマーの様々な誘導体が、金属表面に堆積させられるポリマー被覆を調製するために設計、調製および使用されている。そのような電解重合可能なモノマーは、活性物質(例えば、薬物および保護剤)が、得られたポリマー被覆に取り込まれ、かつ、所望されるならば、経時的に制御可能に放出され得るように設計された。そのような電解重合可能なモノマーはさらに、活性物質が、得られたポリマー被覆に共有結合性の相互作用または非共有結合性の相互作用のいずかれかを介して取り込まれるように設計された。
【0138】
本発明のこれらの新しく設計された電解重合ポリマーは、例えば、
(i)金属表面に対する特異的な親和性を示し、かつ、拡張可能なステントの場合などでの拡張の後でも、依然として無傷のままである、ある種のN−アルキルピロールモノマーのポリマー;
(ii)目的のポリマーまたは分子にさらに結合することができるか、あるいは、反応性モノマーの重合を開始させることができる反応性の側鎖基(例えば、ビニル、アミノ、アルコールまたはカルボン酸など)を有するピロール誘導体のポリマー;
(iii)相互貫入システムを形成するために別のポリマーを埋め込むことのために好適である多孔性の薄い被覆を形成するピロール誘導体のポリマー。そのような第2のポリマーを下塗りの多孔性ポリピロール被覆に負荷することができ、または、活性化されたとき、相互貫入ポリマーシステムに重合するモノマーを負荷することができる。
【0139】
従って、本発明の1つの態様によれば、導電性表面を有する物体と、その表面に結合している電解重合ポリマーと、その電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物が提供される。活性物質が非共有結合性の相互作用を介してポリマーに結合し、従って、活性物質が静電的相互作用を介してポリマー被覆に結合する製造物は本発明の範囲から除外される。本発明の範囲からはさらに、活性物質が共有結合性の相互作用を介してポリマー被覆に結合する製造物、具体的には、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号に記載される電解重合可能なモノマー、そのようなモノマーから調製されるポリマー、および、このようなポリマーを含有する機器が除外される。
【0140】
本明細書中で使用される表現「静電的相互作用」は、逆の電荷を有する2つの物質(すなわち、正に荷電した物質および負に荷電した物質)の間で形成される相互作用を示す。そのような相互作用は、典型的には、イオン結合を伴う。
【0141】
本明細書中上記において詳しく議論されたように、静電的相互作用による、埋め込み可能な機器への活性物質の結合は、その制御できない放出によって制限される。
【0142】
本明細書中上記で議論されるように、物体の親水性金属表面を改変することは医療機器(具体的には、埋め込み可能な医療機器)において非常に有益であると同時に、そのような物体は好ましくは医療機器である。医療機器は、金属表面を含み、かつ、例えば、体外機器(例えば、アフェレーシス機材、血液取り扱い機材、血液酸素供給器、血液ポンプ、血液センサーおよび流体輸送配管など)を包含する任意の医療機器が可能である。しかしながら、親水性金属表面を改変することは、医療機器が体内機器(例えば、大動脈グラフト、動脈管類、人工関節、血液酸素供給器膜、血液酸素供給器管類、身体インプラント、カテーテル、透析膜、薬物送達システム、体内プロテーゼ、気管内チューブ、ガイドワイヤ、心臓弁、大動脈内バルーン、医療用インプラント、ペースメーカー、ペースメーカーリード線、ステント、限外ろ過膜、血管グラフト、血管管類、静脈管類、ワイヤ、整形外科用インプラント、埋め込み可能な拡散ポンプ、および、注入口など、これらに限定されない)であり得るような埋め込み可能な医療バイスにおいて特に有用である。
【0143】
本発明による特に好ましい医療機器はステントであり、より具体的には、拡張可能なステントである。そのようなステントは、様々なタイプ、形状、用途および金属組成のものが可能であり、任意の知られているステントを包含し得る。代表的な例には、Zステント、Palmazステント、Mediventステント、Streckerステント、TantalumステントおよびNitinolステントが含まれる。
【0144】
表現「埋め込み可能な機器」は、長期間にわたって体腔内に置かれる任意の医療機器を記載するために本明細書中では使用される。
【0145】
本発明の関連で使用される好適な導電性表面には、限定されないが、1つまたは複数の金属あるいは金属合金から作製された表面が含まれる。金属は、例えば、鉄、スチール、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タンタル、白金、金、銀、銅、これらの任意の合金、および、これらの任意の組合せが可能であり得る。他の好適な導電性表面には、例えば、形状記憶合金、超弾性合金、酸化アルミニウム、MP35N、エルギロイ(elgiloy)、ハイネス(haynes)25、ステライト(stellite)、熱分解炭素および銀炭素が含まれる。
【0146】
特に有用な物体は埋め込み可能な医療機器であるので、また、さらに、そのような機器は典型的にはステンレス鋼から作製されるので、導電性表面は、好ましくは、ステンレス鋼を含む。
【0147】
本明細書中上記で詳しく議論されるように、一般には金属表面を有し、具体的にはステンレス鋼表面を有する医療機器は、ほとんどがそのような表面の不良な血液生体適合性および/または組織生体適合性に起因する多くの欠点を受ける。本明細書中上記でさらに議論されるように、不良な血液生体適合性は、典型的には、凝固タンパク質および血小板の活性化をもたらし、不良な組織生体適合性は、典型的には、過度な細胞増殖および炎症をもたらす。その生体適合性を高めるように表面を改変することは、電荷、濡れ性およびトポグラフィーに関して表面特性を改善することを目指す化学的手段および/または物理的手段によって行うことができる。これらは、ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)、Teflonおよびポリウレタン)などの物質の薄い層(薄膜)を表面に結合することによって達成することができる。あるいは、表面を改変することは、不良な生体適合性に関連する有害な作用を低下させることができるか、または、さらなる有益な効果を誘導することができる生物活性剤を表面に結合することによって行うことができる。
【0148】
従って、導電性表面は、本発明によれば、電解重合ポリマーに結合している1つまたは複数の活性物質を有する。
【0149】
表現「活性物質」は、物体の表面の特性(例えば、表面の生物学的特性、治療特性、化学的特性および/または物理的特性)に有益な影響を及ぼし得る任意の物質を記載するために本明細書中では使用され、これには、例えば、表面の電荷、濡れ性およびトポグラフィーに影響を及ぼす物質、表面によって誘導される有害な副作用を低下させる物質、ならびに/または、さらなる治療効果を物体に提供し得る医薬的に活性な成分が含まれる。
【0150】
従って、好ましい活性物質には、本発明によれば、限定されないが、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合しているマイクロ粒子および/またはナノ粒子、ならびに、これらの任意の組合せが含まれる。
【0151】
本明細書中で使用される表現「保護剤」により、被覆された表面を、望まない反応を受けないように保護することができ、従って、その環境との望まない相互作用に関して、物体を比較的不活性にすることができる薬剤が記載される。従って、物体が埋め込み可能な機器であるとき、保護剤は、血栓症および炎症を引き起こし得る、周囲の組織および体液からの生物学的物質(例えば、タンパク質など)の望まない吸収を防止または低下させることができる。
【0152】
本明細書中上記で記載されたように、埋め込み可能な機器に関連する望まない相互作用の大部分が金属表面の親水的性質から生じるので、本発明の関連における使用のために好適である好ましい保護剤は疎水性物質または両親媒性物質であり、より具体的には、ポリマー、微粒子およびナノ粒子などの疎水性物質または両親媒性物質である。
【0153】
本発明の関連における保護剤としての使用のために好適である例示的なポリマーには、限定されないが、非分解性のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG、MWを100〜4000の範囲に有するもの)、ならびに、置換されたポリエチレングリコールおよびそのアナログ(例えば、Jeffamine)など、同様にまた、アルキル化された電解重合可能なモノマーの電解重合によって形成されるポリマー(この場合、アルキルは5個を超える(好ましくは10個を超える)炭素原子を有する)が含まれる。
【0154】
本発明の関連における使用のために好適である例示的な粒子には、様々な物質から、また、当該分野で広く知られている様々な合成経路によって形成され得る非分解性の微粒子および/またはナノ粒子が含まれる。
【0155】
従って、様々なポリマーおよび粒子(例えば、ナノ粒子および微粒子など)を、本明細書中上記で記載されるように、その特性に影響を及ぼすようにそれ自体で表面に適用することができる。様々な生物活性剤が、表面の生物学的特性、具体的には、その治療的活性に影響を及ぼすように適用される。生物活性剤が結合しているポリマーおよび粒子は典型的には、その物理的特性および化学的特性に影響を及ぼすように、また、同時に、1つ以上の生物活性剤のキャリアとして作用するように表面に適用される。
【0156】
生物活性剤のキャリアとして役立つポリマーおよび粒子は、適用されたとき、安定または生分解性(生分解可能)のいずれかが可能である。用語「生分解性(生分解可能)」は、例えば、酵素(ヒドロラーゼおよびアミダーゼなど)と反応したときに分解することができるそのような物質を記載するために使用され、従って、用語「安定な」は、少なくともある長い期間にわたって、適用されたときに無傷であり続けるそのような物質を記載するために使用される。安定なキャリアからの生物活性剤の放出は、典型的には、薬剤の拡散によって行われる。
【0157】
表現「生物活性剤が結合している」は、本明細書中で言及されるポリマー、粒子および任意の他の部分に関しては、生物活性剤がそのような部分に結合する任意の形態を記載するために使用され、従って、生分解性の結合または安定な結合のいずれかによる共有結合性の結合、被包化、膨潤、吸収、および、任意の他の許容され得る結合形態を含む。
【0158】
表現「生物活性剤」は、対象において有益な活性を発揮することができる薬剤を記載するために本明細書中では使用される。そのような有益な活性には、本明細書中上記で議論されるように、物体の所望される用途に依存して、表面によって誘導される有害な副作用を低下させること、および/または、任意の他の治療的活性が含まれる。
【0159】
従って、生物活性剤は、治療活性な薬剤(これはまた、医薬的に活性な薬剤、活性な医薬的薬剤、または単に活性な薬剤として本明細書中では交換可能に示される)であり得る。
【0160】
生物活性剤はさらに標識薬剤が可能であり、標識薬剤は、生物活性剤が結合する物質を体内で検出するために、および/または、生物活性剤が結合する物質の所在を体内で突き止めるために役立つ場合があり、また、例えば、診断目的および追跡調査目的のために使用される場合がある。
【0161】
従って、表現「標識薬剤」は、検出可能な成分またはプローブを記載するために本明細書中では使用され、これには、例えば、発色団、蛍光性化合物、リン光性化合物、重金属クラスターおよび放射性標識化化合物、ならびに、任意の他の知られている検出可能な成分が含まれる。
【0162】
一部の場合において、治療活性な薬剤は標識される場合があり、従って、標識薬剤としてさらに役立ち得る。同様に、一部の標識薬剤(例えば、放射性同位体など)もまた、治療活性な薬剤として役立つ。
【0163】
生物活性剤は、物体の所望される適用に従って選択することができる。物体が医療機器である場合、生物活性剤は、医療機器によって治療されている状態、および、機器が埋め込まれる体腔に依存して選択される。
【0164】
本発明の関連における使用に適した、すなわちポリマー被覆中に組み込まれるのに適した生物活性剤の代表的な例には、限定されないが、血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗凝固剤、スタチン、毒素、増殖因子、抗菌剤、鎮痛剤、代謝拮抗剤、血管作用剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、ホルモン、トロンビン阻害剤、オリゴヌクレオチド、核酸、アンチセンス、タンパク質(例えば、血漿タンパク質、アルブミン、細胞付着タンパク質およびビオチンなど)、抗体、抗原、ビタミン、免疫グロブリン、サイトカイン、心臓血管剤、内皮細胞、抗炎症剤(これには、ステロイド系および非ステロイド系が含まれる)、抗生物質(これには、抗ウイルス剤および抗真菌剤などが含まれる)、化学療法剤、抗酸化剤、リン脂質、抗増殖剤、コルチコステロイド、ヘパリン、ヘパリノイド、アルブミン、ガンマ−グロブリン、パクリタキセル、ヒアルロン酸、および、これらの任意の組合せが含まれる。
【0165】
血栓形成防止剤、抗血小板剤、抗凝固剤、スタチン、血管作用剤、血管拡張剤、プロスタグランジン、トロンビン阻害剤、血漿タンパク質、心臓血管剤、内皮細胞、抗炎症剤、抗生物質、抗酸化剤、リン脂質、ヘパリンおよびヘパリノイドなどの生物活性剤は、物体がステントであるときには特に有用である。鎮痛剤、代謝拮抗剤、抗生物質および増殖因子などの生物活性剤は、物体が整形外科用インプラントであるときには特に有用である。
【0166】
一般に処方されるスタチンの非限定的な例には、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンが含まれる。
【0167】
非ステロイド系抗炎症薬物の非限定的な例には、オキシカム系、例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムおよびCP−14,304など;サリチル酸系、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサールなど;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラクなど;フェナム酸系、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸など;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニクなど;ピロゾール系、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンなどが含まれる。
【0168】
ステロイド系抗炎症薬物の非限定的な例には、限定されないが、コルチコステロイド系、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルアンドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアンドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、および、これらの混合物が含まれる。
【0169】
鎮痛剤(鎮痛薬)の非限定的な例には、アスピリンおよび他のサリチル酸系薬剤(例えば、サリチル酸コリンまたはサリチル酸マグネシウムなど)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンナトリウムおよびアセトアミノフェンが含まれる。
【0170】
増殖因子は、数多くの機能(これには、接着分子産生の調節、細胞増殖を変化させること、血管化を増大させること、コラーゲン合成を高めること、骨代謝を調節すること、および、所与の領域への細胞の遊走を変化させることが含まれる)を有するホルモンである。増殖因子の非限定的な例には、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)および骨形態形成タンパク質(BMP)などが含まれる。
【0171】
毒素の非限定的な例には、アジュバントとしてもまた役立つコレラ毒素が含まれる。
【0172】
抗増殖剤の非限定的な例には、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミンおよびメチルメラミン、アルキルスルホナート、ニトロソウレアおよびトリアゼンなど;代謝拮抗剤、例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログおよびプリンアナログなど;天然物、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、タキサンおよび生物学的応答改変剤など;その他の薬剤、例えば、白金配位錯体、アントラセンジオン系薬剤、アントラサイクリン系薬剤、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体または副腎皮質抑制剤など;あるいは、ホルモンまたはアンタゴニスト、例えば、アドレノコルチコステロイド、プロゲスチン類、エストロゲン類、抗エストロゲン類、アンドロゲン類、抗アンドロゲン類または性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログなどが含まれる。化学療法剤の具体的な例には、例えば、ナイトロジェンマスタード、エピポドフィロトキシン、抗生物質、白金配位錯体、ブレオマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、エトポシド、4−OHシクロホスファミドおよびシス白金が含まれる。
【0173】
本明細書中上記で議論されたように、本明細書中に記載される電解重合ポリマーは好ましくは、活性物質のそれへの結合またはそれにおける取り込みを可能にするように設計される。用語「結合(attachment)」、用語「取り込み(incorporation)」、用語「負荷(loading)」、および、それらの任意の文法的変化形は、活性物質と、ポリマーとの間における相互作用を一般的に記載するために本明細書中では交換可能に使用される。
【0174】
好ましくは、活性物質が電解重合ポリマーに結合する相互作用には、共有結合性の結合、非共有結合性の結合、生分解性の結合、非生分解性の結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、物理的相互作用およびそれらの任意の組合せのいずれかが含まれる。
【0175】
表現「共有結合性の結合」は、活性物質がポリマーに共有結合により結合する相互作用を記載するために本明細書中では使用される。共有結合性の結合は、典型的には、活性物質およびポリマーを、そのような結合の形成を可能にするような条件で反応したときに形成される。
【0176】
共有結合性の結合は分解性または非分解性のいずれかが可能である。
【0177】
用語「分解性」は、用語「生分解性」と交換可能に本明細書中では使用され、生物学的プロセスの結果として、例えば、酵素プロセス(ヒドロラーゼおよびアミダーゼなどによるプロセス)の結果として体内で分解され得る結合を記載する。
【0178】
用語「非分解性」は、用語「非生分解性」および用語「安定な」と交換可能に本明細書中では使用され、生物学的プロセスを受けにくく、従って、体内において長期間にわたって無傷のままである結合を記載する。
【0179】
「非共有結合性の結合」は、活性物質と、ポリマーとの間における共有結合性の結合を伴わない相互作用を記載し、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、物理的相互作用および表面相互作用を含む。そのような結合は、典型的には、反応する物質(例えば、ポリマーおよび活性物質)を、そのような相互作用がこれらの物質のそれぞれの性質および特性の結果として形成されるように、特定の化学的操作を伴うことなく非常に近づけること(例えば、接触させること)によって形成される。
【0180】
従って、例えば、疎水性相互作用が、2つの疎水性反応物を接触させることの結果として形成される。水素結合が、少なくとも1つが1つ以上の電気的陰性原子を有する物質を接触させることの結果として形成される。表面相互作用が、例えば、ポリマーが多孔性であり、活性物質を細孔内に封入することを可能にするときに形成される。物理的相互作用には、本明細書中に記載されるような表面相互作用、ならびに、膨潤および被包化などの相互作用が含まれる。
【0181】
非共有結合性の相互作用は、典型的には、活性物質が膨潤し、吸収され、埋め込まれ、および/または封入され得る電解重合ポリマーをもたらす。
【0182】
電解重合ポリマーへの活性物質の結合はポリマーの性質に依存することができ、この場合、ポリマーの性質は、電解重合プロセスで使用された電解重合可能なモノマーの性質によって決定される。
【0183】
表現「電解重合ポリマー」は、その対応するモノマー(1つ以上)の溶液に電位を加えることによって形成させることができるポリマーを記載するために本明細書中では使用される。そのようなモノマーは「電解重合可能なモノマー」と呼ばれる。
【0184】
本発明の関連において使用可能である電解重合ポリマーの代表的な例には、限定されないが、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラニル、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリアニリン、ポリ(2,5−チエニレン)、フルオロアルミニウム、フルオロガリウム、フタロシアニン、および、それらの任意の組合せが含まれ、従って、これらのポリマーはそのまま使用することができ、または、骨格ユニットが、所望される特性を表面にもたらすことができる様々な物質(例えば、ポリマー、炭化水素、カルボキシラートおよびアミンなど)によって置換されるその誘導体として使用することができる。
【0185】
本発明の好ましい実施形態において、電解重合ポリマーは、ピロール化合物、チオフェン化合物、および、その誘導体(1つ以上のピロール残基および1つ以上のチオフェン残基から構成されるオリゴマーを含む)を電解重合することによって形成される。そのようなオリゴマーは、得られるポリマーが、柔軟性、安定性、および、金属性表面に対する大きい接着によって特徴づけられるので有益である。
【0186】
本発明の別の好ましい実施形態において、電解重合ポリマーは、1つ以上のピロール化合物(好ましくは、ピロール誘導体)、1つ以上のチエニル化合物(好ましくは、チエニル誘導体)、および、その組合せを電解重合することによって形成される。
【0187】
本明細書中を通して使用される用語「誘導体」は、ある種の物質または部分(例えば、ピロール)に関しては、好ましくは、その主要な化学的特徴および/または機能的特徴を維持しながら、化学的操作を受けている物質または部分を記載する。そのような化学的操作には、好ましくは、置換およびコンジュゲート化などが含まれる。
【0188】
本明細書中上記で議論されたように、本発明者らは今回、様々なピロール誘導体および/またはチエニル誘導体を設計し、首尾よく調製し、合成している。これらの誘導体は、製造物の意図された使用、活性物質の所望される放出特性、および、物体の所望される表面性状などに依存して、様々な相互作用を介して活性物質を結合することを可能にする電解重合ポリマーをもたらすように設計された。
【0189】
様々なピロール誘導体および/またはチエニル誘導体の調製および使用が下記の実施例の節において例示され、また、詳しく記載される。
【0190】
実施例の節において明らかにされるように、ピロールおよび/またはチエニルの種々の誘導体により、機械的性質、化学的性質に関して、また、活性物質をその中に埋め込む効率に関して、形成された電解重合ポリマーの種々の性質がもたらされることが見出された。
【0191】
従って、例えば、ピロールのN−アルキル誘導体の電解重合では、金属表面(具体的には、ステンレス鋼)に驚くほど十分に接着する薄い均一な多孔性の被覆が形成されることが見出された。被覆の厚さは、加えられたサイクル数によって十分に制御される。例えば、N−ピロールプロパン酸と、N−ピロールプロパン酸のブチルエステルおよびヘキシルエステルとの混合物は、50%拡張したときでも破れない冠状動脈ステント上の柔軟な薄い多孔性被覆を形成する。0.1ミクロン〜2ミクロンの厚さを有する被覆が、1回〜20回のエレクトロサイクルをそれぞれ加えることによって達成された。さらに、これらのN−アルキルポリピロール多孔性被覆は、被覆されたエレメントを薬物の有機溶液に浸け、溶媒を蒸発させることによって多量の薬物(パクリタキセル、エストラジオール、セロリムン(serolimun)、デキサメタゾン)を吸収する。そのような負荷された被覆は、バースト作用をほとんど伴うことなく、数週間の期間中、吸収された薬物を放出する。
【0192】
さらなるピロール誘導体および/またはチエニル誘導体がさらに、電解重合ポリマーを導電性表面に堆積させ、様々な活性物質をそれに結合させるためのモノマーとして使用することのために有益であることが見出されている。
【0193】
従って、例えば、互いに連結されている2つ以上(例えば、3つ、4つ、および、6つまで)の電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが、本明細書中下記において詳しく記載されるように、設計された。選択された部分、ならびに、間を連結する部分(スペーサー)の存在および性質に依存して、得られたポリマーの様々な化学的性質および機械的性質(例えば、柔軟性)を達成することができる。
【0194】
電解重合ポリマーの性質を操作することによって、さらなるポリマーの結合を、本発明の1つの実施形態によれば、製造物が、電解重合ポリマーに結合する少なくとも1つのさらなるポリマーをさらに含むように行うことができる。
【0195】
さらなるポリマーは、例えば、さらなる電解重合ポリマーおよび/または化学的重合ポリマーが可能である。
【0196】
さらなるポリマーは、好ましくは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、活性物質が可溶性であるポリマー、および/または、柔軟なポリマーであり、また、さらなるポリマーは、(i)被覆の機械的特性、物理的特性および/または化学的特性(例えば、電荷、湿潤性、柔軟性および安定性など)、および/または(ii)活性物質の放出プロフィルに影響を及ぼすように選択することができる。
【0197】
1つの実施形態において、さらなるポリマーは電解重合ポリマーである。従って、例えば、多層のポリマー被覆を、同じまたは異なるモノマーを毎回使用して、電解重合プロセスを繰り返し行うことによって達成することができる。
【0198】
別の実施形態において、さらなるポリマーは化学的重合ポリマーである。そのようなポリマーは、非共有結合性の相互作用によって電解重合ポリマーに結合させることができ、従って、電解重合モノマーの内部において膨潤、吸収または埋め込まれ得る。代替として、ポリマーは電解重合モノマーに共有結合により結合することができる。
【0199】
さらなる代替として、さらなるポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。下記の実施例の節において例示されるように、電解重合可能なモノマーは、それに結合した化学的重合可能な基を有するように設計することができ、その結果、電解重合したとき、化学的重合可能な基は化学的重合ポリマーの形成に関与することができるようになる。従って、形成された化学的重合ポリマーは電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0200】
別の代替において、さらなるポリマーは、対応するモノマーを電解重合ポリマー上に化学的に重合することによって形成される。このようにして形成されたポリマーは、例えば、架橋によって電解重合ポリマーとの相互貫入システムを形成することができ、従って、電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0201】
さらに別の代替において、電解重合可能なモノマーは、さらなるポリマーの化学的重合に関与し得る反応基を含むように設計することができる。そのような反応基は、例えば、放射線照射したときに重合を開始させることができる光活性化可能な基、または、重合プロセスを触媒の存在下で開始させることができる重合開始基が可能である。後者の例には、ビニル基およびアリル基などが含まれるが、これらに限定されない。
【0202】
これらの代替のそれぞれにおいて、多層の被覆が得られる。そのような多層被覆は、活性物質の逆戻り特性を制御するために使用することができる。活性物質を、本明細書中下記において例示されるように、電解重合ポリマーおよび/またはさらなるポリマーのいずれかに結合することができ、あるいは、その間に封入することができる。
【0203】
従って、例えば、活性物質を、さらなるポリマーによってさらに被覆される電解重合ポリマーに(共有結合的または非共有結合的のいずれかで)結合することができる。場合により、活性物質をさらなるポリマーに(共有結合的または非共有結合的のいずれかで)結合することができ、それにより、さらなるポリマーが電解重合ポリマーの中に埋め込まれ、従って、活性物質はさらなるポリマーを介して電解重合ポリマーに結合する。
【0204】
従って、多層のポリマー被覆を、同じまたは異なるモノマーを毎回使用して、電解重合プロセスを繰り返し行うことによって達成することができる。
【0205】
代替として、多層被覆を、電解重合ポリマーをさらなるポリマーと相互作用させ、その結果、後者が疎水性相互作用のために電解重合ポリマーに埋め込まれるようにすることによって達成することができる。
【0206】
さらなる代替として、多層被覆を、化学的に調製されたポリマーを電解重合ポリマーに共有結合により結合することによって達成することができる。これは、電解重合プロセスにおいて、ポリマーが置き換えられるモノマーを利用することによって、あるいは、反応して、化学的重合ポリマーを電解重合ポリマーの形成と同時に、または、電解重合ポリマーの形成の後で形成することができる重合可能な基を有するモノマーを利用することによって達成することができる。このように形成されたさらなるポリマーは最終的には電解重合ポリマーの一部を形成する。
【0207】
さらなる代替として、化学的重合ポリマーは、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる反応基を有する電解重合可能なモノマーを利用することによって形成させることができる。そのような反応基は、例えば、光活性化可能な基が可能である。従って、形成された電解重合ポリマーは、照射したとき、様々なモノマーと反応し、電解重合ポリマー上でのその重合を活性化することができるそのような光活性化可能な基を有する。そのような反応基はまた、例えば、重合開始基が可能である。従って、形成された電解重合ポリマーは、様々なモノマーと接触させたとき、架橋された相互貫入システムが形成されるようにその重合を開始させるような基を有する。
【0208】
さらなるポリマー、または、その調製のために使用されるモノマーは、分解性の結合または非分解性の結合のいずれかを提供するように選択される。
【0209】
本発明の実施形態の関連において使用される好適な非分解性ポリマーは、血液適合性および生体適合性があり、非剛直性(拡張可能なステントに適用されたとき、その拡張を可能にするように)であり、および/または、被覆された表面へのその負荷を可能にするように、一般的な有機溶媒(例えば、塩素化炭化水素、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、N−メチルピロリドンおよび乳酸エステル)に可溶性であるそのようなポリマーである。代表的な例には、医療機器において一般に使用されるポリウレタン、シリコーン、ポリアクリラートおよびメタクリラート(特に、ラウリルメタクリラートのコポリマー)が含まれる。ブタジエンおよびイソプレンを含有するポリマーもまた好適である。
【0210】
本発明の実施形態の関連において使用される好適な生分解性ポリマーには、限定されないが、乳酸、グリコール酸およびカプロラクトンに基づくポリマーが含まれる。これらのポリマーは、被覆された表面を、ポリマーの薄い溶液に、あるいは、生物活性剤と、生物活性剤の負荷および放出を容易し、および/または制御するために使用される他の添加剤とを伴うポリマーの薄い溶液に浸けることによって、電解重合された被覆の表面および内部に適用することができる。特に注目されるのが、乳酸のホモポリマー、グリコール酸との乳酸のコポリマー、および、カプロラクトンを含有するコポリマーである。
【0211】
電解重合ポリマーに結合させるとき、ポリマーは、ポリマーが電解重合ポリマーの内部および/または表面に十分かつ均一に分布するようにポリマーの薄い溶液に浸けるか、または、ポリマーの薄い溶液を噴霧することによって負荷することができる。ポリマーの負荷を増大させるために、数回の連続した浸漬を適用することができる。ポリマー溶液の浸漬または噴霧は、インプラントの特定部分におけるポリマーの何らかの堆積を有しない均一な被覆をもたらす様々な温度条件および環境条件のもとで行うことができる。
【0212】
利用されたポリマーおよび電解重合可能なモノマーの性質、ならびに、活性物質が負荷される条件および段階を操作することによって、活性物質の放出プロフィルを制御することができる。
【0213】
従って、例えば、ポリマー溶液は、ポリマー溶液に溶解または分散された生物活性剤、または、生物活性剤が負荷された粒子を含有することができる。種々の浸漬被覆または噴霧被覆が適用される。
【0214】
一例において、上記で記載されたように得られる多孔性のポリピロール被覆には、負荷された電解重合ポリマーが、被覆からの生物活性剤の放出をより良好に制御するために、および/または、血液適合性および生体適合性、ならびに、機器への被覆の接着、結合および安定性を改善するために、非分解性ポリマーの薄い層により目張りされるように、生物活性剤が負荷され、その後、非分解性ポリマーが適用される。
【0215】
別の例において、化学的重合溶液は、電解重合ポリマーに適用されたとき、生物活性剤が負荷され、かつ、その放出を長期間通して可能にする、化学的ポリマーおよび電解重合ポリマーのポリマーマトリックスが形成されるように、生物活性剤をポリマー含有量の50%もの高い量で含有することができる。生物活性剤の放出速度をさらに制御するために、さらなるポリマーを以前に負荷されたポリマー−生物活性剤マトリックスに適用することができる。そのような技術は、ポリマーマトリックス内における(50重量パーセントもの高い)活性物質の大きい負荷量をもたらす。
【0216】
代替として、電解重合ポリマーは、開始させたとき、重合して、電解重合ポリマーとの相互貫入ネットワークを形成する化学的重合可能なモノマーと接触させることができる。そのような化学的重合可能なモノマーが電解重合溶液に加えられるとき、これらのモノマーが封入される電解重合されたポリマー被覆を形成させることができる。
【0217】
被覆に封入されたモノマーの重合は、過酸化ベンゾイルをラジカルに解裂させる熱または光のいずれかによって重合を開始させる過酸化ベンゾイルなどのラジカル源による開始によって行うことができる。代替として、モノマーが、開始剤を伴うことなく電解重合ポリマーに負荷され、重合が、モノマー負荷された被覆を、重合を水−被膜の境界で開始させるレドックスラジカルシステムを含有する水溶液に浸けたときに生じる。相互貫入ポリマーの量が、溶液におけるモノマー濃度、使用された溶媒、および、重合プロセスによって制御される。被覆の特性が、モノマー組成、電解重合されたマトリックスにおける負荷、および、架橋の程度によって制御される。例えば、ヒドロキシルエチルメタクリラート(HEMA)またはポリエチレングリコールアクリラート(PEG−アクリラート)をモノマー組成において増大する量で含むことにより、被覆の親水性が増大し、また、水に浸けたときには、滑りやすい滑らかな被覆さえもたらされる。他方で、被覆の疎水的性質を、ポリマー組成におけるラウリルメタクリラート(LMA)または他のアルキルアクリラートの量が増大するときには得ることができる。ジアクリラートまたはメタクリラートの量を増大させることにより、被覆の剛直性および剛性が増大する。架橋剤は、アクリラートの生体ポリマー化において一般に使用されるエチレングリコールジメタクリラート、PEG−ジアクリラート、エチレンビス−アクリルアミド、ジビニルベンゼンおよび他の架橋剤が可能である。
【0218】
アミン基またはヒドロキシル基を有する電解重合ポリマーはさらに、ラクチド、グリコリドまたはカプロラクトンに基づく生分解性ポリマーをこれらのラクトンの開環重合によって形成させるために使用することができる(この場合、ヒドロキシルまたはアミンは重合開始基として働く)。
【0219】
長期にわたる放出期間を達成するように薬物をより良好に封入するためには、疎水性ポリマーが好ましい。しかしながら、組織とのより良好な適合性のためには、親水性の表面が好ましい。従って、様々な操作を、外側の被覆が親水性のポリマー被覆であり、従って、親水性のポリマー被覆が、活性剤が負荷された疎水性の電解重合ポリマーに適用されるように行うことができる。
【0220】
電解重合ポリマーへの活性物質の共有結合による結合が、下記の実施例に、また、国際特許出願公開WO01/39813および米国特許出願第10/148665号に広範囲にわたって記載される。
【0221】
生物活性剤を共有結合により結合するために、共有結合により結合した生物活性剤を含む電解重合可能なモノマーを使用することができる。そのような目的のための特に有用なモノマーには、官能基(例えば、カルボン酸およびその誘導体(例えば、アシルハリド、エステル)、アミン、ヒドロキシル、ビニル、アセチレンおよびチオールなど)を有するN−アルキルピロール誘導体が含まれる。これらの基は、小さい分子および大きい分子(例えば、PEG鎖、脂肪酸鎖、ポリマー鎖および蛍光マーカーなど)を被覆に結合するために使用することができる。
【0222】
特に注目されるのが、活性物質および電解重合ポリマーの一方がヒドロキシルまたはアミンを含み、従って、他方がカルボン酸またはその誘導体を含むように、脂肪酸、アルコールおよびポリマーを、カルボン酸のアミド化またはエステル化を介して結合することである。
【0223】
上記に記載された方法論が下記の実施例の節において例示される。下記の実施例の節において明らかにされるように、厚さが約0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲(好ましくは、0.1ミクロン〜5ミクロンの範囲)にある被覆が得られた。例示的な被覆からの生物活性剤の制御された放出もまた明らかにされている。
【0224】
これらの方法論を実行するために、従って、被覆の性質、および、その中に埋め込まれる活性物質の放出プロフィルを制御するために、特別な特性を有する新規な電解重合可能なモノマーが設計されている。
【0225】
従って、本発明の別の態様によれば、下記の官能基の1つ以上を有する電解重合可能なモノマーが提供される:
(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;
(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;
(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;
(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;
(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;
(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基;および
(vii)活性物質を共有結合により結合することができる官能基。
【0226】
同様に、結晶を機器の表面に成長させるための核化中心として働くことができる官能基もまた含まれる。
【0227】
従って、例えば、官能基(例えば、ω−カルボキシアルキル基(アルキル基は少なくとも3個の炭素原子を有する)など)が電解重合可能なモノマーに存在することにより、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への高められた接着、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の高められた吸収、膨潤または埋め込みがもたらされ、活性物質を共有結合により結合することが可能になり、および/または、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する電解重合ポリマーがもたらされる。
【0228】
ポリアルキレングリコール残基によって置換および/または中断される電解重合可能なモノマーは、被覆の向上した柔軟性および均一性をもたらす。
【0229】
形成された電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基のさらなる例には、限定されないが、アルキレングリコール、非線状アルキレン鎖、ならびに、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルボキシ結合(−C(=O)−O−)およびスルフィド結合(−S−S−)を含有する残基が含まれる。
【0230】
形成された電解重合ポリマーの内部における吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基のさらなる例には、限定されないが、アミン、カルボキシラート、ヒドロキサム酸、スルホネート、サルフェート、エポキシド、チオールおよびビニルが含まれる。
【0231】
化学的重合ポリマーを形成することができる官能基には、例えば、本明細書中に詳しく記載されるように、また、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、アリル基およびビニル基が含まれる。
【0232】
化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基には、例えば、本明細書中に詳しく記載されるように、また、下記の実施例の節においてさらに例示されるように、光活性化可能な基、および、重合開始基が含まれる。
【0233】
従って、本発明のさらなる態様によれば、新規な電解重合可能なモノマーが提供される。
【0234】
1つの実施形態において、互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む電解重合可能なモノマーが提供される。
【0235】
本明細書中で使用される表現「電解重合可能な部分」により、電解重合可能なモノマーの残基が記載される。当該分野では広く知られている用語「残基」により、別の化学的部分(例えば、別の電解重合可能な部分またはスペーサー)に連結される分子の主要な部分が記載される。
【0236】
2つ以上の電解重合可能な部分は同じまたは異なることが可能であり、例えば、その1つ以上の位置において場合によりそれぞれが置換されるピロール、チエニル、フラニル、チオフェンから選択することができる。置換されるとき、電解重合可能な部分は、例えば、1つ以上の置換基(例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ポリアルキレングリコール、シクロアルキルなど、ただし、これらはそれぞれが、1つ以上の基(例えば、アリール、ハロ、アミン、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、カルボキシ(C(=O)OR、式中、Rは、水素、ハロおよびアルキルなどである)など)によってさらに置換される)を含むことができる。
【0237】
電解重合可能なモノマーにおける電解重合可能な部分は、共有結合性の結合を介して直接に連結することができ、または、スペーサーを介して間接的に互いに連結することができる。3つ以上の電解重合可能な部分がモノマーに存在するときには、上記の組合せを、例えば、2つの部分が互いに直接に連結され、2つの部分がスペーサーを介して連結されるように行うことができる。
【0238】
スペーサーは好ましくは、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、NまたはS)によって場合により中断される、置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素鎖を含む。例には、限定されないが、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールが含まれる。置換されるとき、1つ以上の置換基は、例えば、ハロ、アルキル、アミン、ヒドロキシ、カルボキシが可能である。炭化水素鎖は、直接に(例えば、σ結合)、または、結合するメンバー(例えば、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合など)を介して、そのいずれかで、電解重合可能な部分のそれぞれに結合することができる。
【0239】
従って、この実施形態による例示的な電解重合可能なモノマーは、PEG鎖を介して互いに連結された2つのピロール部分を含む。そのようなモノマーは、ビス−ピロールPEGおよびPEGジピロールと本明細書中では交換可能に呼ばれる。PEG鎖は好ましくは、分子量を約100Da〜約600Daの範囲に有する。
【0240】
この実施形態によるさらなる例示的な電解重合可能なモノマーは、直接に、または、短いスペーサー(例えば、エタン、エテンなど)を介して互いに結合した1つ以上のピロール部分および1つ以上のチエニル部分を含む。
【0241】
上記で記載された部分、基および置換基のすべてが、本明細書中に記載されるようにさらに置換され得る。
【0242】
この実施形態による電解重合可能なモノマーの代表的な例には、限定されないが、1,2,6−トリ(N−プロパノイルピロール)−ヘキサン、1,1’,1’’,1’’’−テトラ(N−プロパノイルピロール)−メタン、ビス−ピロール−PEG、1,1’−ジ(2−チエニル)エチレン、3−ジメチルアミノ−1−(2−チエニル)−プロパノン、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールおよび1,2−ジ(2−ピロリル)−エテンが含まれる。
【0243】
別の実施形態において、電解重合可能なモノマーは、本明細書中に記載されるような少なくとも1つ電解重合可能な部分と、電解重合可能な部分(1つ以上)に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む。
【0244】
本明細書中を通して使用される表現「化学的重合ポリマーを形成することができる官能基」により、適切な化学的条件に供されたとき、重合することができる重合可能な基が記載される。適切な化学的条件には、例えば、ラジカル連鎖重合の触媒的開始、ラジカル連鎖重合の光開始、開環重合の触媒的開始、架橋(架橋剤の存在下)、および、共重合(コポリマー、および、場合により、重合触媒または架橋剤の存在)が含まれる。
【0245】
例示的なそのような官能基には、限定されないが、ビニル基およびアリル基(これらは、触媒により開始されたとき、ポリアルカンまたはポリアルケンを形成することができる)、アクリル酸またはアクリルアミド、ラクトン(これは開環重合を受けることができる)、および、ホスファート(これは二価金属原子の存在下で架橋することができる)などが含まれる。
【0246】
別の実施形態において、電解重合可能なモノマーは、本明細書中に記載されるような少なくとも1つ電解重合可能な部分と、電解重合可能な部分(1つ以上)に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む。
【0247】
本明細書中を通して使用される表現「化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基」により、化学的重合可能なモノマーの重合を触媒または誘導することができる基が記載される。そのような官能基は、例えば、本明細書中に記載されるように、光活性化可能な基(これは、照射されたとき、重合プロセス(例えば、ラジカル連鎖重合または開環重合など)を開始することができる反応基になる)が含まれる。あるいは、そのような官能基は架橋基が可能であり、従って、これは架橋剤として作用することができる。
【0248】
光活性化可能な基の代表的な例には、限定されないが、ベンゾフェノン誘導体が含まれる。
【0249】
架橋基の代表的な例には、限定されないが、アクリラート、アクリルアミドおよびジビニルベンゼンが含まれる。
【0250】
本明細書中に記載される実施形態のそれぞれにおいて、官能基は、電解重合可能な部分に、(例えば、σ結合を介して)直接に、または、結合するメンバー(例えば、アミド結合、エステル結合およびエーテル結合など)を介して間接的に結合することができる。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態による電解重合可能なモノマーの代表的な例が下記の実施例の節に示される。
【0251】
本明細書中に記載される電解重合可能なモノマー、ならびに、本明細書中上記において詳しく記載される方法論は、本明細書中に記載される製造物を得るために有益に利用することができる。
【0252】
本明細書中上記に記載される方法論に基づいて、本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載される製造物を調製するためのプロセスが提供される。このプロセスは、導電性表面を有する物体を提供すること;第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;活性物質を提供すること;電解重合可能なモノマーを電解重合して、それにより、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体を得ること;および、活性物質を電解重合ポリマーに結合することによって行われる。
【0253】
活性物質を電解重合ポリマーに結合することは、本明細書中上記で記載された相互作用のいずれかを介して達成される。
【0254】
本発明のこの態様の1つの実施形態において、活性物質は、電解重合ポリマーの内部において膨潤、吸収、埋め込まれ、および/または、封入される。
【0255】
活性物質をこの実施形態に従って結合することは、活性物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーがその表面に結合している物体をこの溶液と接触させることによって行うことができる。
【0256】
別の実施形態において、製造物はさらに、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを含み、プロセスはさらなるポリマーを電解重合ポリマーに結合させ、それにより、電解重合ポリマーをその表面の少なくとも一部分に有し、かつ、電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供することを含む。
【0257】
別の実施形態において、さらなるポリマーは電解重合ポリマーであり、プロセスはさらに、第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、第2の電解重合可能なモノマーを、電解重合ポリマーをその表面の少なくとも一部分に有する物体に電解重合することによって行われる。
【0258】
第2のモノマーを電解重合することは、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0259】
さらに別の実施形態において、さらなるポリマーは、電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、プロセスはさらに、化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体を溶液と接触させることによって行われる。
【0260】
接触は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0261】
代替として、プロセスは、化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している電解重合ポリマーをこの溶液と接触させながら、モノマーを重合することによって行われる。
【0262】
重合は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0263】
さらに別の実施形態において、さらなるポリマーは、電解重合ポリマーの一部を形成する化学的重合ポリマーであり、また、第1の電解重合可能なモノマーを提供することは、さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する電解重合可能なモノマーを提供することを含む。
【0264】
さらなるポリマーを形成することができる官能基が選択される場合、プロセスはさらに、電解重合ポリマーが結合している物体を官能基の化学的重合に供することを含む。
【0265】
化学的重合は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0266】
さらなるポリマーの形成に関与することができる官能基が選択される場合、プロセスはさらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、電解重合ポリマーが表面に結合している物体をこの溶液と接触させることを含む。
【0267】
接触は、活性物質を結合する前に、および/または、活性物質を結合するのと同時に、および/または、活性物質を結合した後で行うことができる。
【0268】
この場合における官能基は、例えば、本明細書中上記において詳しく記載されるように、光活性化可能な基、架橋基、および/または、重合開始基が可能である。
【0269】
さらなる実施形態において、活性物質は電解重合ポリマーに共有結合により結合し、電解重合可能なモノマーは、それに結合した活性物質を有しており、かつ、活性物質を電解重合ポリマーに結合することが、そのモノマーを電解重合することによって行われる。
【0270】
代替として、第1の電解重合可能なモノマーは、活性物質を共有結合により結合することができる反応基を有しており、かつ、活性物質を結合することが、活性物質を含有する溶液を、電解重合ポリマーがその表面の少なくとも一部分に結合している物体と反応させることによって行われる。
【0271】
本発明者らはさらに、表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように、導電性表面を電解重合ポリマーの形成に先だって前処理するための新規な方法を設計している。従って、本明細書中に記載されるプロセスはさらに、表面のそのような前処理を含むことができる。本発明によるこれらの前処理方法は、表面を下記手順の1つ以上に供することによって行われる:
表面を、好ましくはグリットペーパーを使用して手作業により研磨すること;および、表面を有機溶媒によりすすぎ洗浄すること;
表面を酸(例えば、硝酸、スルホン酸、あるいは、任意の他の無機酸または有機酸など)と接触させること;表面を水性溶媒によりすすぎ洗浄すること;および、表面を超音波処理に供すること;および
表面を超音波処理に供すること;および、表面を、有機溶媒、水性溶媒またはその組合せによりすすぎ洗浄すること。好ましくは、超音波処理はカーボランダムの存在下および/または有機溶媒中で行われる。
【0272】
表面を本発明の実施形態に従って表面での電解重合の前に処理するための好ましい方法の代表的な例が下記の実施例の節において広範囲に記載される。
【0273】
従って、本発明は、様々な有益な活性物質によって被覆された物体をもたらす、制御されているが、多目的なプロセスによって調製することができる製造物を提供し、従って、その被覆は、現在既知の被覆と比較した場合、高められた接着、活性物質の高められた密度、および、改善された表面特性によって特徴づけられる。本明細書中に記載されるプロセスは、本明細書中に詳しく記載されるように、被覆の様々な特徴(これらには、例えば、その疎水性/親水性、その柔軟性、活性物質の放出速度、および、負荷された活性物質の量などが含まれる)を細かく制御することを可能にする。
【0274】
本明細書中に記載される製造物が、被覆された埋め込み可能な機器であるとき、このような製造物は、医療機器、具体的には、生物活性剤が負荷されたそのような機器を埋め込むことが有益である状態の治療において有益に使用することができる。
【0275】
かかる状態には、例えば、心臓血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化、血栓症、狭窄、再狭窄およびステント内再狭窄など、これらに限定されない)、心臓学的疾患、末梢血管疾患、整形外科状態、増殖性疾患、感染性疾患、移植関連疾患、変性疾患、脳血管疾患、胃腸疾患、肝臓疾患、神経学的疾患、自己免疫疾患、および、インプラント関連疾患が含まれる。
【0276】
機器に結合させられる活性物質は、疾患を治療するために好適であるように選択される。
【0277】
本発明者らはさらに、本明細書中に記載される方法論を使用して、活性物質によって被覆されるか、または、活性物質が負荷される様々な医療機器の効率的な調製を可能にする機器、カートリッジおよびシステムを設計している。
【0278】
従って、本発明のさらなる態様によれば、医療機器を、その表面への電解重合に供されている間、保持するための機器が提供され、この場合、この機器は、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が前記有孔被包体とかみ合い、従って、電場を有孔被包体の内部に生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップとを含む。
【0279】
有孔被包体はさらに、好ましくは、流体および化学物質がその中を流れることを可能にするために設計および構築される。
【0280】
本発明の別の態様によれば、複数の本明細書中上記に記載される保持機器と、これらの複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジが提供される。好ましくは、カートリッジは4つ以上の保持機器を含む。
【0281】
本発明の別の態様によれば、医療機器を被覆するためのシステムが提供され、この場合、このシステムは、稼動可能な配置で、本明細書中上記に記載されるような少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、ただし、搬送装置は、保持機器を、保持機器が、所定の時間、所定の順序で処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築される。
【0282】
このシステムはさらに、好ましくは、保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体を有するカートリッジを含む。
【0283】
このシステムにおける複数の処理浴は、使用された被覆方法論および負荷方法論に依存して、例えば、前処理浴、洗浄浴、電解重合浴、すすぎ洗浄浴、化学的重合浴および活性物質溶液浴の1つ以上を含む。好ましくは、これらの浴のうちの少なくとも2つが電気化学的重合浴および活性物質溶液浴である。
【0284】
電気化学的重合浴は好ましくは、電気化学的重合浴の基部に取り付けられ、かつ、外部の電源につながれる少なくとも1つの電極構造物を含む。
【0285】
さらに好ましくは、搬送装置は、少なくとも1つの保持機器を少なくとも1つの電極構造物に取り付け、それにより、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第1の側面とかみ合わせるために作動可能である。
【0286】
このシステムはさらに、好ましくは、少なくとも1つの電極構造物を運び、かつ、この少なくとも1つの電極構造物を有孔被包体の第2の側面とかみ合わせるために作動可能であるアームを含む。
【0287】
次に図面を参照して、図14には、医療機器12を、本発明の好ましい実施形態に従って、被覆されている間、保持するための機器10が例示される。医療機器12は、この図に例示されるように、好ましくはステントである。保持機器10は、医療機器12を収容する有孔被包体14を含む。アセンブリ12が、例えば、医療機器がステントアセンブリであるときに使用することができる拡張可能な管状の支持エレメント16として図14に示される。必須ではないが、好ましくは、被包体14は管状(例えば、円筒状)の形状を有する。機器10は、好ましくは、アセンブリ12の全処理を通して医療機器12を保持する。従って、機器10は、例えば、化学的処理浴、電気化学的処理浴、超音波浴、乾燥域および薬物負荷浴などにおいて処理されている間、アセンブリ12を保持することができる。
【0288】
有孔被包体14は、様々な化学物質溶液30がそれぞれの処理浴から壁26を通って被包体14の内部体積部28の中に流れ、それにより、医療機器12および/または支持エレメント16と相互作用することを可能にするように、その壁26に形成された複数の穴24を含む。加えて、穴24は好ましくは、化学物質の溶液が、例えば、機器10がそれぞれの処理浴から引き出されるとき、内部体積部28から流れることを可能にする。
【0289】
機器10はさらに、被包体14の第1の端部20および第2の端部22を覆う2つ以上のキャップ18を含む。キャップ18は、例えば、ステンレス鋼から作製することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、キャップ18は、31および32の数字によって図14に示される様々な電極構造物が被包体14とかみ合うことを可能にするために適合化される。この実施形態は、アセンブリ12が電気化学的重合に供されるときには特に有用である。従って、参照電極を一方の側から挿入することができ、対向電極を反対側から挿入することができる。加えて、作用電極を近くに、例えば、キャップ18から数ミリメートル離して設置することができ、その結果、これらの電極が、例えば、連絡線36を介して電源(示されず)につながれたとき、電場が生じ、レドックス反応が作用電極40上で進められるようにすることができる。従って、重合プロセスが体積部28の内部で開始され、部材16がポリマー薄膜によって被覆される。
【0290】
数個(好ましくは、3個以上)の保持機器を、数個の医療機器を同時に被覆するために用いることができる。図15は保持機器のカートリッジ50の概略図である。カートリッジ50における保持機器のそれぞれの原理および働きは、本明細書中上記においてさらに詳しく記載されるような機器10の原理および働きと類似する。カートリッジ50は、数個の保持機器を一緒に処理浴に入れるために役立つ。図15の例示された形態において、カートリッジ50は10個の機器を保持する。しかし、このことは必ずしも当てはまる必要はなく、任意の数の保持機器をカートリッジ50の本体52に取り付けることができる。カートリッジ50の本体は、好ましくは、カートリッジ50を、本明細書中下記においてさらに詳しく記載されるような処理浴に入れる搬送装置に取り付けられるように設計される。
【0291】
次に図16を参照する。図16は、1つ以上の医療機器を本発明の好ましい実施形態に従って被覆するためのシステム60の概略図である。システム60は、好ましくは、稼動可能な配置で、少なくとも1つの保持機器(例えば、機器10)を含む。数個の保持機器が使用されるとき、これらの機器は好ましくは、カートリッジに、例えば、カートリッジ50に取り付けられる。
【0292】
システム60はさらに、搬送装置62、および、搬送装置62に沿って配置された複数の処理浴を含む。図16に示される代表的な例において、システム60は、64、65、66、67および68として示される5つの処理浴を含む。従って、例えば、浴64を、均一な接着性の被覆のために医療機器を調製するように、医療機器が化学的および機械的な処理に供される前処理浴として使用することができる。浴65を洗浄のために使用することができ、浴66を電気化学的重合のために使用することができ、浴67を清浄化のために使用することができ、浴68を、例えば、薬物負荷のための活性物質溶液浴とすることができる。他の浴または処理域もまた意図される。
【0293】
搬送装置62は、機器が所定の順序でそれぞれの処理浴の中に入れられるように保持機器を運搬する。従って、例えば、図16の例示された実施形態において、搬送装置62は機器を最初に浴64に入れ、次いで浴65に入れ、次いで、その後の浴に順次入れる。加えて、搬送装置62は、機器がそれぞれの浴において費やす期間を制御する。これは、機器を所定の時間の後でそれぞれの浴から引き出し、並んでいる次の浴に入れるために搬送装置62を設計することによって達成することができる。搬送装置62は、好ましくは、機器を処理前に浴に入れ、その後で引き出すためのレバー72または任意の他の機構とともに製造される。
【0294】
本発明の好ましい実施形態によれば、電気化学的重合浴は、基部70に取り付けられ、従って、下部の電気化学的重合ユニットを形成する電極構造物(例えば、対向電極32および作用電極40)を含む。これらの電極構造物は、好ましくは、隔離材74(図14もまた参照のこと)から突き出ており、電源(示されず)につながれる。作動中において、搬送装置62により、保持機器が電極構造物に取り付けられ、その後、電極構造物は機器の一方の側とかみ合う。システム60はまた、隔離材78から好ましくは突き出る1つ以上の電極構造物(例えば、参照電極構造物31)を運ぶアーム76を含むことができる。従って、アーム76および電極31は上部の電気化学的重合ユニットを形成する。
【0295】
保持機器が電極32および/または電極40に取り付けられると、アーム76により、電極31は保持機器の反対側(この実施形態では上部)とかみ合わされる。電極と電気的に連絡すると、保持機器内の医療機器は、当該分野で既知の電気化学的重合に供することができる。
【0296】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0297】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0298】
材料および装置方法
化学物質は一般に、別途示されない限り、既知の供給者(例えば、Sigma、Fluka、AldrichおよびMerckなど)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0299】
316Lステンレス鋼製プレートをMashaf社(イスラエル、Jerusalem)から購入した。
316Lステンレス鋼製ステント(12mm長、3mmの直径に膨張可能)をSTI(イスラエル、Cesaria)から購入した。すべての水溶液を脱イオン水(Mili−Q、Milipore)から調製した。
【0300】
NMR測定。1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、19F−NMRスペクトルおよび31P−NMRスペクトルを、Bruker AC−200分光計、DPX−300分光計およびDMX−600分光計で得た。CDCl3溶液およびアセトン−d6溶液については、化学シフトが、内部標準として使用されたMe4Siからの低磁場側にppm単位で表される。D2O溶液については、HODのピークがδ=4.79(1H−NMRペクトル)として選ばれたか、または、少量の添加されたMeOHのピークがδ=49.50(13C−NMRペクトル)として選ばれた。
【0301】
MS測定。質量スペクトルをMALDI分光計で得た(CI=化学的イオン化、DCI=脱着化学的イオン化、EI=電子イオン化)。
【0302】
SEM測定
被覆された電極の表面形態を、10kVの加速電圧でのショットキー型電界放射源を備えたsirion走査顕微鏡(オランダ、FEI Company)を使用して高分解能走査電子顕微鏡観察(HR SEM)によって測定した。サンプルは、分析に供される前に金被覆された。
【0303】
HPLC分析
高速液体クロマトグラフィーを、C18逆相カラム(LichroCart(登録商標)250−4、Lichrospher(登録商標)100、5μm)を使用する、HP1100ポンプ、HP1050UV検出器およびHP ChemStationデータ分析プログラムから構成されるHewlett Packared(ドイツ、Waldbronn)システムを使用して行った。すべての測定を230nmで行った。
【0304】
(実施例1)
ピロール誘導体の調製
下記には、本発明の関連における使用のために好適である、官能基によって誘導体化された様々な電解重合可能なピロールモノマーの調製が記載される。
【0305】
カルボン酸含有ピロール誘導体またはアミノ含有ピロール誘導体の調製−一般的手順:
カルボン酸含有ピロールアナログまたはアミノ含有ピロールアナログの調製を、別途示されない限り、Yon−Hin他[Anal.Chem.、1993、65、2067〜2071]による知られているプロトコルに基づいて行った。
【0306】
N−(3−アミノプロピル)ピロール(APP)の調製−経路A:N−(2−シアノエチル)ピロールを、N−(2−シアノエチル)ピロール(Aldrich Chemicalsから入手可能)を出発物質として使用する上記の一般的手順を使用して乾燥ジエチルエーテル中でLiAlH4により還元した。N−(3−アミノプロピル)ピロールを乾燥ジエチルエーテルにおけるLiAlH4によるN−(2−シアノエチル)ピロールの還元によって90%の収率で合成し、H−NMRおよびIRによって同定した(データは示さず)。
【0307】
N−(3−アミノプロピル)ピロール(APP)の調製−経路B:代わりの合成経路では、APPを下記スキーム1に描かれるように調製した。
50mlのメタノールに溶解された2−シアノエチルピロール(10グラム、83.3mmol)に、1グラムの10%Pd−Cを加え、容器を70PSIで4日間、水素化システムに接続した。固体を沈殿させて除き、ろ液を集め、揮発分を減圧下で除いた。得られたアミンを、CHCl3における20%〜50%のメタノールを溶出液として使用するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、N−(3−アミノプロピル)ピロールを90%の収率で得た。褐色がかった粘稠性オイルをNMR(データは示さず)およびESI−MSによって特徴づけた。
ES−MS:m/z=122、126、153、132、339。
【0308】
N−(2−カルボキシエチル)ピロール(PPA)の調製:N−(2−シアノエチル)ピロールをスキーム2に描かれるように上記の一般的手順に従ってKOH水溶液において加水分解した。
N−(2−シアノエチル)ピロール(10ml、83.23mmol)を、50mlのDDWにおける20グラムのKOHの溶液と10mlのエタノールとの混合物において4日間還流した。アンモニアの発生が止むと、反応混合物を室温に冷却し、溶液を、約4〜5のpHに達するまで濃塩酸を使用して酸性化した。酸を、100mlのCH2Cl2により4回、反応混合物から抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機溶媒を減圧下で除いて乾固した。黄色がかったガム状生成物のN−(2−カルボキシエチル)ピロールが冷却後に固化し、80%の収率で得られた(融点、58〜59℃):
【0309】
N−(2−カルボキシエチル)ピロール−NHS(PPA−NHS)の調製:
上記スキーム3に描かれるように、2−カルボキシエチルピロール(5グラム、36mmol)を塩化カルシウム管のもとで70mlの酢酸エチルに溶解した。撹拌された溶液に、1.1当量のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)を加え、撹拌を続けた。しばらくして、DCUの白色沈殿が形成した。混合物を室温で一晩放置し、沈殿物をろ過し、50mlの酢酸エチルで2回洗浄した。酢酸エチル画分を集め、溶媒を乾固するまで減圧下で除いた。白色の着色した残渣を集め、−5℃で使用まで貯蔵した。生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0310】
PPA−O−PEG−Oの調製:
スキーム4に描かれるように、HO−PEG−OHのピロール化を、p−トリエンスルホン酸(PTSA)触媒との等方的還流を使用するトルエン中でのエステル化プロセスにより確立した。
上記手順を使用して、等モル量のPPAおよびPEG(MW=400)をPTSAの存在下でトルエンに溶解し、混合物を、形成された共沸物を留去しながら4日間還流した。TLCにより、1つの主生成物の形成および残存量の出発物質が確認された。主生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0311】
PPA−JEFAMINE2000−NH2の調製:
PPA−JEFAMINE2000−NH2をスキーム5に描かれるように調製した。
JEFFAMINE2000(O−(2−アミノプロピル)−O’−(2−メトキシエチル)−O’−(2’−メトキシエチル)プロピレングリコール2000、10グラム、5mmol)を150mlの酢酸エチルに溶解した。撹拌しながら、PPA(0.7グラム、5mmol)およびDDC(1グラム、7mmol)を溶液に加えた。混合物を室温で72時間撹拌した。この期間中を通して、白色のDCUの沈殿物が形成した。沈殿物をろ過し、20mlの酢酸エチルで2回洗浄した。酢酸エチル画分を集め、エバポレーションして乾固した。得られた黄色がかったガムを室温に冷却し、しばらくして固化した。その後、生成物をゲルろ過によって精製し、1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0312】
ビス−ピロール−PEG220の調製:
ビス−ピロール−PEG220をスキーム6に描かれるように調製した。
H2N−PEG220−NH2(1グラム、4.54mmol)を50mlのDMFに溶解した。その後、20mlのDMFに溶解されたPPA−NHS(2.14グラム、9mmol)を滴下して加えた。混合物を室温で48時間撹拌した。反応が完了したとき、溶媒を減圧下で除いて乾固した。ビスピロール化残渣を50mlの2回蒸留水(DDW)とCH2Cl2との間で分離し、70mlのCH2Cl2に3回抽出した。有機画分を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除いた。その後、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、最終生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0313】
N−アルキル化ピロールの調製−一般的手順:
典型的な反応において、ピロールを最初に、NaH、Kまたはブチルリチウムと反応して、アルカリピロール誘導体を得た。アルカリピロール誘導体を、以前に記載されたように(E.P.PapandopoulosおよびN.F.Haidar、Tetrahedron Lett.、14、1721〜23、1968;T.Schalkhammer他、Sensors and Actuators B、4、273〜281;S.Cosneir、Electroanalysis、1997、9:894〜902およびそれらにおける参考文献)、等モル量のアシルハロゲン化物またはハロアルキルと反応させた。最後に、ピロールアルカリ塩を、様々な長さのモノブロモメトキシポリエチレングリコール(PEG)(MW=200グラム/mol、1000グラム/mol、4,000グラム/mol)とコンジュゲート化した(それぞれ、化合物1、化合物2および化合物3)。
【0314】
代わりの一般的手順では、水素化ナトリウムを、下記スキーム7に描かれるように、ピロリドアニオンのインシトゥー調製のために使用した。
従って、新たに蒸留されたピロール(1ml、15mmol)を塩化カルシウム管のもとで30mlの乾燥DMFに溶解し、溶液を氷浴で0℃に冷却した。1当量の水素化ナトリウムを、撹拌された溶液にオイル分散物として少量ずつ加えた。直ちに、ガスの発生が認められ、混合物を60分間穏やかに撹拌した。冷却している黄色がかったフォームに、20mlの乾燥DMFに溶解されたアルキルハロゲン化物(1当量、例えば、ヨウ化オクチル、ヨウ化ドシル、C14−ブロミド)を滴下して加え、混合物を0℃でさらに4時間撹拌した。その後、混合物を室温に加温し、48時間放置した。DMFを減圧下で除いて乾固し、生成物を100mlのDDWから4回の100mlのCH2Cl2に抽出した。有機画分を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、有機溶媒を除いて、褐色のオイルを得た。精製を180℃での真空蒸留によって行った。
【0315】
1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類の誘導体およびアナログの調製−一般的手順:
1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類および関連化合物をスキーム8に描かれるようにHinz他[Synthesis、620〜623(1986)]に従って調製した。
従って、1,2−ジ(2−ピロリル)エテン類および関連化合物を、トルエン中における、市販の2−チオフェンカルボキシアルデヒドまたは2−(N−アルキルピロール)カルボキシアルデヒドと、対応するメチルホスホニウム塩(これは非置換ピロールのMannich反応によって調製される)との間でのWittig反応(アルゴン雰囲気下での10時間の還流)によって調製した。全体的な収率は約70%であった。
【0316】
1,1’−ジ−(2−チエニルまたはピロリル)−2−アルキルエチレンの調製−一般的手順:
表題の化合物をスキーム9に描かれるように調製した。
1,1’−ジ−(2−チエニル)エチレンを、2−アセチルチオフェンを乾燥THF中で2−ブロモチオフェンのgranger試薬と反応することによって調製した。生成物を1H−NMRおよびEI−MSによって同定した(データは示さず)。
【0317】
ピロールアナログを、TMEDAによる室温での乾燥ヘキサンまたは乾燥THFにおけるN−アルキルピロールのリチウム化、その後の対応するエステルの二置換によって、Ramanthan他[J.org.chem.、27、1216〜9(1962)]およびHeathcock他[J Heterocyclic chem.、6(1)、141〜2(1969)]に基づく類似した様式で調製した。
【0318】
コンジュゲート化生成物が希塩酸において容易に得られた。
【0319】
さらなる誘導体化を、既知の方法を使用して様々なカルボン酸によるヒドロキシルのエステル化によって達成することができる。
【0320】
チエニル誘導体、フラニル誘導体およびN−アルキルピロール誘導体のカップリング−一般的手順:
チエニル誘導体およびフラニル誘導体の両方の2−リチウム誘導体と、N−アルキルピロールとのカップリングをスキーム10に描かれるように行った。様々なカップリング生成物が、CuCl2を使用して比較的良好な収率(約70%)で容易に得られた。だが、文献[chem.Ber.、114、3674(1981)]において提案されるように、他の試薬(例えば、NiCl2など)もまた使用することができる。
【0321】
電解重合可能なチエニルモノマーおよびピロリルモノマーの調製:
1,4−ジ(2−チエニル)1,4−ブタンジオールを、Wynberg[Wynberg他、synthetic comm、1 14(1)(1984)]に従ってStretter反応[Stretter、H;Angew chem、88、694〜704(1976)]を使用して75%〜80%の収率で調製した。
その後、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールを、スキーム11に描かれるように、対応するアミンと反応させて、2,5−ジ(2−チエニル)N−アルキルピロールをPaal−Knore反応[Cava他、Adv materials、5、547(1993)]によって調製した。N−アルキルヒドロキシ誘導体を重合前にエステル化によって様々なカルボン酸にコンジュゲート化した。
【0322】
3−アルキル−(N−メチルピロール)誘導体の調製:
3−アルキル−(N−メチルピロール)誘導体の調製はスキーム12に描かれる。
アルキルピロールを、Dvorikova他[Dvorikova他、Synlett、7、1152〜4(2002)]に従ってTHFにおいてN−ブロモスクシンイミドおよびPBr3により選択的に臭素化し、その後、−78℃でTHFにおいてBuLiと反応させた。生成物をアルキルハロゲン化物との反応によって得た。
【0323】
ジリチウム化によるチエニルおよびN−アルキルピロールの調製:
2,5−ジ−(2−チエニル)−N−アルキル)−ピロリル)の調製はスキーム13に描かれる。
N−アルキル改変ピロールをリチウム化し、得られた2−リチウムピロール誘導体を2,5−ジブロモチオフェンとさらに反応させた。
【0324】
チエニルおよびジ(N−アルキル)ピロリルジメタノールのオリゴマーの調製:
チエニルおよびジ(N−アルキル)ピロールジメタノールのオリゴマーの調製はスキーム14に描かれる。
ビスピロール化合物(これは上記スキーム10に記載されるように得られる)をリチウム化し、得られたリチウム化ビスピロールを等モル量の対応するアルデヒドと反応させる。反応を、不活性な条件のもとでの、THFにおけるリチウム誘導体とアルデヒドおよびケトンとの反応について文献に記載される手順[Cava他、Adv materials、5、547(1993)]に従って行った。
【0325】
類似するフラニル、ピロリルおよびジ(N−アルキル)ピロールジメタノールのオリゴマーもまた、同じプロセスを使用して調製した。
【0326】
2−アルキルピロール誘導体の調製−一般的手順:
アルキル基およびアリール基をα位に有する末端N−アルキルピロールを、電気化学的重合のための停止剤およびポリマーの分子量分布(MWD)のコントロールとして設計した。これらの化合物を、Synthetic comm、12(3)、231〜48(1982)に記載される手順に基づいてスキーム15に描かれるように調製した。
N−アルキルピロール(例えば、N−メチルピロールなど)の2−リチウム誘導体をヘキサンまたはTHFにおいてヨウ化アルキルまたはヨウ化アリールと反応させ、その後、加水分解した。
【0327】
N−アルキルピロール−2−カルボン酸誘導体の調製−一般的手順:
N−アルキルピロール−2−カルボン酸誘導体の調製はスキーム16に描かれる。
CO2粉末を種々のN−アルキルピロール(例えば、Me、ブチル、ヘキシル、オクチルなど)の2−リチウム誘導体に−40℃〜−30℃で加え、その後、水を加えた[Jorgensen、org reaction、18、1(1970)]。2−(N−アルキルピロール)カルボン酸の反応生成物を、THFにおけるLiAlH4によって、対応するアルコールに還元した。生成物を1H−NMRによって同定した(データは示さず)。
【0328】
このアルコールをポリアクリル酸またはポリ乳酸にエステル化によって結合して、ピロール改変モノマーを形成した。
【0329】
2−(N−アルキルピロール)カルボン酸を様々なPEG分子と反応させて、対応するPEG−ジピロールを形成した。
【0330】
N−(3−ヒドロキシプロピル)ピロール誘導体の調製−一般的手順:
N−(2−カルボキシエチル)ピロール(これは上記のように調製される)を、既知の手順を使用して乾燥THFにおいてLiAlH4によって80%の収率で還元した。生成物を蒸留によって精製し、1H−NMRおよびEI−MSによって同定した(データは示さず)。
【0331】
ヒドロキシピロール誘導体をポリアクリル酸およびポリ乳酸にエステル化によって結合して、ピロール改変モノマーを形成した。
【0332】
アミノ基を含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
アミノ含有活性剤によって改変されたカルボン酸の、アミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、グルタルアルデヒドのスペーサーを使用した。
【0333】
典型的な反応において、N−(3−アミノプロピル)ピロールを最初に、過剰なグルタルアルデヒドと反応させて、イミンを形成させ、その後、このイミンを、アミノ基を含有する改変されたカルボン酸と反応させて、第2のイミン結合を形成させる。イミン結合をNaBH4によって還元することにより、安定なアミン結合がもたらされる。イミン−アルデヒド−アミンの反応を使用することの利点は、この反応が水溶液中において高収率で行われるということである。
【0334】
サッカリドまたはオリゴサッカリドを含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
サッカリド含有剤またはオリゴサッカリド含有剤により改変されたカルボン酸のアミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、サッカリドを最初に酸化して、アルデヒド骨格を形成し、その後、アルデヒド骨格をアミノプロピルピロールと反応させて、重合可能なピロールサッカリド誘導体を形成させる。
【0335】
ヒドロキシ基を含有する改変されたカルボン酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
ヒドロキシを含有する活性な薬剤により改変されたカルボン酸のアミノピロールへのコンジュゲート化を可能にするために、アミノピロールを最初に、一般的な活性化剤(例えば、カルボジイミドなど)を使用してエステル化する。
【0336】
あるいは、活性な薬剤におけるヒドロキシル基を最初にアミノ酸または短いペプチドにエステル結合によってコンジュゲート化し、これにより、そのアミノ誘導体またはイミノ誘導体を得て、その後、これを、カルボジイミドをカップリング剤として使用するアミド化反応によって、または、アルデヒド含有ピロールを使用するときにはイミン結合によって、ピロールにコンジュゲート化する。
【0337】
典型的な反応において、アミノ末端を有するPEG2000を、DCCをカップリング剤として使用して室温で3日間、DMF中で1.3当量のカルボキシエチルピロールと反応させた。生成物を、DMFをエバポレーションして乾固し、残渣をジエチルエーテル中で粉砕することによって単離した。コンジュゲート化収率は、質量分析および1H−NMR分析によって決定されたとき、90%を超えていた。
【0338】
長鎖脂肪酸のピロールコンジュゲートの調製−一般的手順:
より長い脂肪族鎖を有するω−カルボキシピロール誘導体をSchuhmann(Diagnostic Biosensor Polymers、AM UsmaniおよびN.Akmal編、ACS Symposium Series、1994、226、110、Electroanalysis、1998、10、546〜552)に従って合成する。
【0339】
(実施例2)
ナノ粒子の調製
様々な方法が、親水性表面(例えば、PEG鎖または多糖鎖など)を表面に有するナノ粒子および微粒子の配合のために文献に記載されている(例えば、R.Gref他、ポリ(エチレングリコール)被覆ナノスフェア、Advanced Drug Delivery Reviews、16:215〜233、1995を参照のこと)。
【0340】
好ましい方法において、官能基を親水性側鎖の一部として有する親水性−疎水性の分子は、その分子が有機溶媒−水性溶媒の混合物における粒子の調製のために使用されるとき、親水性側鎖が水性媒体に向かって表面に留まるように調製される。例えば、アミノ基をPEG末端鎖に有するPLA−PEGブロックコポリマーを、水溶液に分散された有機溶媒におけるPLAおよび場合により薬物の溶液を使用する溶媒蒸発法によって粒子に組み立てることができ、従って、さらなる反応または相互作用のために利用可能なアミノ官能基を有するPEG鎖を粒子表面に有する粒子を形成させることができる。
【0341】
代表的な一例において、PLA−PEG−アミンコポリマー(PLA鎖のMWが約3000Dで、PEG鎖のMWが約1000Dである)を、様々な分子量(3000D〜50000D)のPLAのジクロロメタン溶液(10%w/v)に、溶液中のPLAについて1:10の比率で加えた。得られた透明な溶液を高速度での均質化とともに0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)に滴下により加えて、乳白色の分散物を形成させた。混合を、すべての溶媒が蒸発するまで室温で数時間続けた。得られた分散物は、重水に分散された粒子の1H−NMRスペクトル(データは示されず)によって明らかにされたように、PEG鎖が表面に存在する、粒子サイズがミクロン範囲にある球状粒子を含有した。表面アミノ基の存在が、FITC(粒子を蛍光性にする試薬)との粒子の反応によって明らかにされた。上記手順を使用して、様々な薬物(例えば、パクリタキセルなど)を、粒子調製のための水性媒体へのその添加の前に薬物をPLA溶液に加えることによって粒子に取り込むことができる。粒子に取り込まれた薬物の量はポリマー重量の約1%(w/w)〜約50%が可能である。
【0342】
ピロール誘導体が表面に結合し、電解重合のために利用可能であるナノ粒子を下記のように調製した:ブロモ−PEG2000−ヒドロキシルをピロールと反応させて、N−ピロール−PEG2000−OHを得て、その後、これを、オクタン酸第一スズを触媒として使用してラクチドとともに重合した。その後、このブロックコポリマーをポリ(ラクチド)およびPEG−PLAとクロロホルム溶液において混合した。この溶液を、撹拌された緩衝液(0.01Mリン酸塩、pH7.4)に滴下により加えて、電解重合のために利用可能なPEG−ピロールを表面に有するナノ粒子を形成させた。
【0343】
(実施例3)
電解重合
ステンレス鋼(SS)表面の前処理。SS表面を、その表面性状を改善し、表面へのポリマーのより良好な接着をもたらすために、表面での電解重合の前に前処理した。
【0344】
SSプレートにおける接着係数を、SSについてのD−3359−02ASTM標準試験に従ってクロスカット接着テープにより測定した。
【0345】
新しい前処理法を開発した。その手順が下記の表1に示される。
【0346】
典型的な実験において、SS316プレートを、プレートが鏡のように輝いて見えるまで、4000番のグリットサンドペーパーを使用して手作業により研磨した。その後、プレートをアセトニトリルによりすすぎ洗浄し、ピロール誘導体との電解重合に供した。ポリマーとSS表面との間での最も良い接着が、より低いCr/Fe比を伴って、また、より滑らかな表面形状を伴って得られた。全体的なCr/Fe比は0.3前後であるが、金属合金の表面は1.65ほどの高い比率を含有する場合があり、このために、表面が腐食から保護される。SS316プレートが、上記の表1に記載されるように手作業により研磨されたとき、Cr/Fe比は1.09から0.38に低下した。結果として、8つの異なる被覆の平均接着係数が0.2から0.8に増大した。
【0347】
ステントにおいて、上記の表1に記載されるようなカーボランダム処理法はポリマーの最も良い接着を与えた。この処理の後でのCr/Fe比は0.67から0.38に低下した。ステントを用いて行われた1つの典型的な実験において、ステントが、エタノール中で40分間、220番、500番および1000番のカーボランダム粉末の1:1:1混合物とともに超音波処理され、温度が約65℃に上げられた。その後、ステントを、すべての粉末をその表面から除くために高圧DDWによりすすぎ洗浄した。ステントを最後に、DDWから乾燥するためにアセトンですすぎ洗浄した。
【0348】
異なる粒径のカーボランダムを含有する種々の混合物を、ステントを重合前に清浄化するために使用した。混合物を、ボルテックスを使用して撹拌し、その後、DDW、次いでアセトンにより洗浄した。ステントの被覆をアセトニトリル/0.1M TBATFBにおけるBuOPy:PPA(10:1)において行った。結果が下記の表2に示される。
【0349】
これらの結果は、カーボランダム(メッシュ220)が、ステントへのポリマーの接着を促進させることにおいて、それ以外の試験された前処理のすべてよりも優れていることを示している。この技術において使用された超音波処理法は、この前処理法を非常に多数で行うことを可能にしている(1つの容器において10個)。
【0350】
様々なN−置換ピロールによるステントの電解重合:
上記で記載されたカーボランダム(メッシュ220)前処理を使用して、BuOPy:PPAの10:1混合物に加えて、様々なN−置換ピロールの存在下で電解重合によって形成された電解重合ポリマーの性能を調べた。ステントを、電解重合の前に、カーボランダム(メッシュ220)とともにアセトニトリル(AN)中で15分間超音波処理し、その後、DDWおよびアセトンにより洗浄し、窒素流で乾燥した。ステントを、その被覆の接着を検査するために手作業により磨き、DDW中でバルーンにより3mmのODに広げた。
【0351】
ステントの電解重合を、下記に記載されるように、0.1MのTBATFBとともにアセトニトリル中で、N−アルキルピロールおよび2−アセチルピロールの混合物において行った。混合物は、0.07MのBuOPy(ブチルエステルピロール)、0.01MのPPAおよび0.02MのピロールまたはN−アルキルピロールからなった。結果が下記の表3に示される。
【0352】
これらの実験では、ステントが2.7mm〜2.95mmに広げられたことに留意しなければならない。ステントはすべてが対称的に広げられた。従って、2−アセチルピロールおよび両方の2−アルキルピロールの存在下で形成されたポリマーは、BuOPy:PPAの10:1混合物から調製されたポリマーよりも柔軟であることが示唆される。
【0353】
電解重合:
SSプレートでの電解重合:
電気化学的測定を、一区画三電極ガラスセルを使用して630B電気化学分析装置(CH Instruments)を用いて行った。参照電極は、有機媒体中で使用されたAg|AgBr線であった。後者はフェロセン−フェロセニウム(Fc/Fc+)に対して0.448Vの電位を有する。直径6mmのグラファイト棒を補助電極として使用した。典型的な電解重合セル構成が図1に示される。
【0354】
典型的な実験において、ピロールを、サイクリックボルタンメトリーを使用して、0.1Mの蒸留されたピロール誘導体モノマーおよび0.1Mのテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(TBATFB)を含有するアセトニトリル溶液においてステンレス鋼プレート(40x9mm2)に電解重合した。Ag|AgBrに対して−0.8V〜1.2Vの間での電位掃引を典型的に加えた(別途言及されない限り、10サイクル)。図8には、典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムが示される。グラファイト棒を補助電極として使用し、一方で、Ag|AgBrを参照電極として使用した。後者(これはフェロセン−フェロセニウム(Fc/Fc+)に対して0.448Vの電位を有する(14))は、一般に使用されるAg|AgCl線よりもはるかに安定した電位を有機媒体中で有することが見出された。
【0355】
非改変ピロールの溶液に加えて、他のモノマー溶液を調製し、使用した:電解重合溶液:100%ピロールプロパン酸、100%ピロールブチルエステル、100%PEG400ジピロール、および、50:50のピロールプロパン酸:ピロールブチルエステルの混合物。電気化学的条件は、−0.4Vの初期電位、1.6Vの最大電位、−0.4Vの最終電位であった。溶液は、10mlのアセトニトリルにおいて0.1MのTBATFBを伴って0.1Mのモノマー濃度を有した。それぞれの溶液について、5CV、10CV、15CV、20CVおよび30CVをサンプリングした。
【0356】
電位掃引範囲、モノマー濃度およびサイクル数のようなパラメーターにおける変化が、ピロールの異なる誘導体とともに変化する。
【0357】
図9には、CV数の関数としての、試験された溶液のそれぞれを用いて得られた厚さが示される。結果から、ポリ(ピロールプロパン酸)およびポリ(ピロールブチルエステル)は直線性を20CVまで保ち、一方で、30CVでは直線性を失うことが示される。ピロールプロパン酸およびピロールブチルエステルの混合溶液は、20CVでは厚さが0.7μmであるような、PPAの薄膜厚さ値と、PBuOPyの薄膜厚さ値との間である薄膜厚さ値を有する。
【0358】
図9に示される結果は、重合速度および最終的なポリマー厚さが、ピロールのN位置に結合した鎖の長さがより大きくなるにつれ、劇的に減少することを明瞭に示す。
【0359】
図10には、様々なモノマーの存在下で電解重合されたステンレス鋼表面のSEM測定が示され、金属表面が均一に全面被覆されていることが明瞭に示される。
【0360】
ステントにおける電解重合:
一般的手順I:電解重合によるステントの被覆を、ステントが、316Lステンレス鋼ネジにより電気回路に接続された場合、作用電極として作用した三電極セルにおいて行った。補助電極は白金線またはガラス状炭素棒からなり、参照電極は、臭化銀が被覆された銀線(フェロセンに対して0.448ボルト)であった。
【0361】
作用電極は、240番、600番および2000番のグリットエメリーペーパー(Buehler)により最初に研磨され、続いて、ミクロクロス研磨パッドでのアルミナペースト(1umおよび0.05um)によって精密研磨された。その後、電極をアセトニトリルで洗浄し、アセトニトリル中で15分間にわたって超音波処理し、室温で乾燥し、その後、電気化学的重合を行った。
【0362】
ポリマーを、陰極電圧または陽極電圧のいずれかを加えることによってステント上に堆積させる。被覆は、下記方法の1つでの電着によって形成されるポリマーからなった:
(i)電流法、この場合、電位が所定量の時間にわたって一定に保たれる。典型的な実験は、20マイクロアンペアを3分間加えることからなる;
(ii)定電流法、この場合、電流が所定量の時間にわたって一定に保たれる。典型的な実験は、Ag/AgBrに対して1.6Vを3分間加えることからなる;および
(iii)サイクリックボルタンメトリーまたはパルスボルタンメトリー法、これらは、電位を2つの値の間で繰り返すか、または、パルスで加えることが可能である。典型的な実験は、5サイクル〜20サイクルをAg|AgBrに対して−0.4Vから1.6Vまで100mV/秒の速度で加えることからなる。パルス法の一例は、陽極パルスおよび陰極パルスを異なる期間にわたって交互にすることである。この方法では、2つのモノマーの混合物(一方が酸化的重合を受け、他方が陰極での重合を受ける)を同じ電極表面に堆積させることができる。
【0363】
正確な電流値または電位値は、使用されたそれぞれのモノマーの性質に従って選ばれる。
【0364】
直流(dc)サイクリックボルタンメトリー実験および時間電流法実験が、PCに接続されたEG&G Princeton Applied Research 定電圧/定電流を用いて行われる。
【0365】
一般的手順II:25℃で保たれた単一のガラス区画を使用した。参照電極は飽和カロメル電極(SCE)であり、対向電極は白金線であった。作用電極を典型的なステント物質に接続した。これらの実験で使用された電解質溶液は、0.1MのNaClをpH=7.0で含有するか、または、CH3CN溶液中に0.1MのBu4NBF4を含有する0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液であった。ピロールポリマーを、0.1Mの新たに蒸留されたピロールと、既知量のピロール誘導体とを含有する電解質溶液を電気化学的に酸化することによってステントワイヤに堆積させた。酸化電位は、通過した電荷量が10mCとなるまでは、SCEに対して0.7Vで行われた。得られた被覆ポリマー電極を蒸留水で徹底的にすすぎ洗浄した。典型的なピロール組成物はヘパリン−ピロール誘導体:PEG−ピロール誘導体:ピロールの混合物を1:1:8のモル比で含んでいた。
【0366】
例示的手順:上記で記載された一般的手順Iを使用して、電解重合を、下記の基質を使用して、0.1MのTBATFBとともにアセトニトリル中またはDMF中で行った:
下記の表4に列挙される1つだけのモノマー;
様々な比率の下記の表4に列挙されるモノマーの2つ以上の混合物;
1つ以上のモノマーと、下記の表5に列挙される界面活性剤または添加剤の1つ以上との混合物;
本明細書中下記において詳しく記載されるような2層被覆のためのモノマーの混合物。第1の層が、ステントの電位を1つのモノマー溶液において反復することによって形成され、その後、ステントを溶液から取り出し、ステントを異なるモノマーの新しい溶液に浸けて、次の層を形成する;
2工程重合のためのモノマーの混合物:本明細書中下記において詳しく記載されるように、ピロール誘導体を電解重合し、その後、化学的重合を、第2のモノマーを重合するために行う;
2工程重合のための1つだけのモノマー:ピロール誘導体を電解重合し、その後、化学的重合を、ピロールの機能的置換基を重合するために行う;
【0367】
後者の一例が、本明細書中下記に示されるピロール−Et−COO−CH2−CH=CH2である。このモノマーはそのピロール基によって陽極で電解重合させられ、これにより、アリル性の末端基によって覆われた表面が後に残る。このようなアリル性の基は、開始剤(例えば、AIBNなど)を使用してさらに重合させることができ、これにより、高度に架橋されたポリマーがもたらされ、「スリーブ」をステント表面に形成する。
【0368】
開始剤を使用するラジカル重合を、50℃〜60℃でアセトニトリルまたはTHFにおいて0.5%〜1%(w/w)で開始剤を含有する溶液に電気被覆されたプレートを一晩浸けることによって行った。
【0369】
(実施例4)
活性剤が共有結合により結合している電解重合ポリマー
生物活性剤(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を、ピロールモノマーに、アミノピロールを介するか(上記の実施例1を参照のこと)、または、カルボキシエチルピロールを介するか(上記の実施例1を参照のこと)のいずれかでコンンジュゲート化した。コンジュゲートをゲルろ過クロマトグラフィーまたは透析によって単離した。
【0370】
典型的な反応において、生物活性剤(例えば、ヘパリン)を、DECをNa−HEPES緩衝液(pH7.4)において使用してアミドカップリングによってカルボキシエチルピロールにコンジュゲート化した。得られたコンジュゲートをゲルろ過クロマトグラフィーによって反応混合物から分離した。
【0371】
ステント上での電解重合のための上記で記載された一般的手順IIを使用して、ヘパリンが共有結合により結合している電気被覆を調製した。
【0372】
さらに別の典型的な反応において、PPAを、下記手順のいずれかによって、カルボン酸含有薬物、他の生物活性剤、または、親水性もしくは疎水性の残基(例えば、脂肪酸)と反応させた:
(i)ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をカップリング剤として使用するDMF中での直接の反応;または
(ii)カルボン酸の反応性誘導体(すなわち、酸塩化物、無水物、N−スクシンイミドまたはカルボン酸)との反応。
【0373】
アミノ−PEG−ピロールをアルデヒド含有活性剤と反応させたとき、イミン(シッフ塩基結合)が得られた。この生分解性イミンコンジュゲート生成物を、ピロール被覆からの活性剤の制御された放出を設計するときに使用した(この場合、放出速度はイミン結合の分解の関数である)。しかしながら、安定な非分解性の結合が所望されたときには、ピロール−イミン−薬物コンジュゲートを、NaBH4を還元剤として使用して、対応するアミン結合にさらに還元した。
【0374】
代替として、制御された放出可能な活性剤を、上記(実施例2を参照のこと)で記載されるように調製され、さらに活性剤を被包化するピロール置換ナノ粒子を重合溶液に加えることによって、電解重合された薄膜にその形成時に取り込むことができる。活性剤が、粒子マトリックスを通過し、その後、電解重合被覆を通過する拡散によって、得られたポリマー被覆からゆっくり放出される。ヘパリン、ステロイドまたはペプチドもしくはタンパク質のような活性剤を、切断可能な結合または非切断性の結合を介して結合するためのコンジュゲート化方法が、Bioconjugate Techniques(編者:G.T.Hermanson、Academic Press、San Diego、1996)に記載される手順から採用される。
【0375】
さらなる代替として、アミノピロール誘導体またはカルボン酸ピロール誘導体による被覆をステント上で調製し、活性剤を、既に調製されたピロール薄膜にコンジュゲート化した。ポリ(ω−カルボキシアルキルピロール)の堆積を、100mMの(Bu)4NPF6を電解質塩として含有するアセトニトリル溶液における10mMのモノマー溶液からポテンシオスタットパルス法で行った。950mVの1秒間のパルス、それに続く、5秒間の休止期からなるパルスプロフィルを加えて、薄い官能基化されたポリピロール層を形成させた。一般には、5回のパルスが、電極表面をアミノ含有薬剤の共有結合性の結合のための薄いポリマー薄膜により覆うために十分であった。被覆されたステントを、30mMのN(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩を、ポリマーのカルボン酸基を活性化するために含有する3mMのヘパリン溶液に少なくとも10時間浸けた。電極をエタノールによりすすぎ洗浄した後、第2の層をポリピロールおよびPEG誘導体化ピロールの電気化学的堆積によってヘパリン結合層の上に形成させた。この二重層により、親水性PEG鎖によるステント上での受動的保護、および、結合したヘパリンの放出を数週間にわたって引き延ばす能動保護がもたらされる。
【0376】
(実施例5)
活性剤が負荷されている電気被覆された金属表面の調製
薬物負荷:
ステントを、電解重合されたポリブチルエステルピロールおよびポリ(ブチルエステル−co−プロパン酸)ピロール(10:1のBuOPy:PPA)により電気被覆した。電解重合を、5CVまたは10CV(サイクリックボルタンモグラム)を加えることによって行った。5CVによって得られたサンプルの被覆厚さは0.4μmであり、10CVによって得られたサンプルの被覆厚さは0.6μmであった。
【0377】
被覆されたステントにおける薬物負荷を膨潤によって行った:ポリピロール被覆ステントをアセトニトリルにおけるパクリタキセルの20mg/ml溶液に0.5時間浸け、その後、空気乾燥した。場合により、空気乾燥後、ステントを、0.01Mのポリ乳酸(PLA、1300)を含有するアセトニトリルの20mg/ml溶液に5分間浸けた。あるいは、この膨潤法を、パクリタキセルの様々な濃度(例えば、30mg/mlおよび40mg/ml)を使用して、他の溶液(例えば、エタノール溶液またはクロロホルム溶液など)において行った。
【0378】
薬物の負荷は、超音波浴を使用して薬物をステントまたはプレートから2ミリリットルのアセトニトリル溶液に取り出すこと;
この溶液の100μlを1ミリリットルの緩衝液(リン酸塩溶液、0.1M、pH7.4)(0.3%SDS)で希釈すること;および
負荷された薬物の濃度を求めるために、最終溶液をHPLCによって分析すること
によって測定された。
【0379】
下記の表6には、薬物を様々な電気被覆ステントに負荷しているときに得られた結果が示される。
【0380】
薬物放出:
負荷された薬剤の放出のインビトロ測定を、下記のように、水性溶媒(例えば、リン酸塩緩衝液など)への薬物の受動的拡散を測定することによって行った:
薬物が負荷されたステントを37℃で1ミリリットルの緩衝液(リン酸塩溶液、0.1M、pH7.4)(0.3%SDS)に入れ、振とうを、設定された時点で行った。吸収されたパクリタキセルを最初の30分間の間に除いた。それぞれの時点で、薬物放出濃度をHPLCによって測定した。
【0381】
パクリタキセルについての得られた保持時間は、移動相としてのDDW:ACN(45:55)の1ml/分の流速で7.9分〜8.4分であった。
【0382】
例示的な実験において、ポリ(ブチルエステル)ピロールにより被覆されたステントをアセトニトリルにおけるパクリタキセルの20mg/ml溶液に0.5時間浸け、その後、空気乾燥した。他のステントを同様に処理し、空気乾燥後、0.01Mのポリ乳酸(PLA、1300)を含有するアセトニトリルの20mg/ml溶液に5分間浸けた。
【0383】
薬物放出を上記のように測定した。結果が図11に示される。図11において認められ得るように、両方のタイプのステントに関して、薬物が、30日を越える期間にわたって徐々に放出され、従って、PLAによりさらに処理されたステントに関しては、放出がわずかに遅くなっていた。
【0384】
(実施例6)
多層化被覆
本実施例では、二官能性モノマーを使用することによって、および/または電解重合ポリマーの中または上にポリマーを含浸することによって調製され、その中に薬物を負荷することができるように設計される、多層化被覆の調製が記載される。
【0385】
その目的のために、3つの一般的な方法が下記のように設計され、実施された:
(i)電解重合可能な成分および化学重合可能な基を有する二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合、それに続く化学重合(例えば、触媒の存在下でのフリーラジカル重合)に供した;
(ii)光反応基(PAG)を有する電解重合可能な二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合(これは活性化ポリマーをもたらした)、それに続く化学重合(これは、放射線照射によって触媒され、かつ、活性化ポリマーによって誘導され、別のモノマーおよび/または薬物の存在下で行われる)に供した;および
(iii)反応基を有する電解重合可能な二官能性モノマーを調製し、2段階の重合プロセス、すなわち、電気化学的重合(これは活性化ポリマーをもたらした)、それに続く、反応基が関与する、触媒ならびに他のモノマーおよび/または薬物の存在下での化学重合に供した。
【0386】
上記に加えて、多層化被覆はまた、簡便な多段階重合プロセスによって得られた。このプロセスは、1つまたは複数の連続した電気化学的重合プロセスを含み、場合により、その後、本明細書中上記に記載されるような、さらなる非電解重合可能なポリマーの注入を含んでいた。
【0387】
上記手順のそれぞれにおいて、最終的な多層化ステントを薬物負荷のために薬物溶液に浸漬することができる。あるいは、薬物を、薬物を重合溶液に加えることによって1つまたは複数の化学重合プロセスの期間中に負荷することができる。
【0388】
ピロール誘導体の化学的活性基を介した2段階の重合経路:
ピロールのビニル誘導体を、N−(2−カルボキシエチル)ピロールをアリルアルコールと反応させて、対応するアリルエステルを60%の収率で得ることによって、または、[Min Shi他、molecules、7(2002)に記載されるように]N−(2−カルボキシエチル)ピロールをジクロロメタン中およびトリエチルアミンの存在下でアクリロイルクロリドと反応することによって調製した。ビニルピロール誘導体を、ピロールユニットの2位および5位を介して電気化学的に重合し、これにより、フリーのビニル基が結合しているポリマーを得た。このポリマーを、このモノマーのフリーラジカル重合のための開始剤としてのAIBNまたは過酸化ベンゾイルの存在下でさらに重合した。
【0389】
この一般的な方法が、例えば、AIBNによるN−ビニルピロールのフリーラジカル重合、それに続く、FeCl3による第2の重合について記載されていた[例えば、Ruggeri他、Pure and appl chem、69(1)、143〜149(1997)を参照のこと]。
【0390】
光反応基が結合している電解重合ポリマーの調製:
例示的な光反応基としてベンゾフェノン誘導体を有する電解重合可能なピロールモノマーを、パラ−トルエンスルホン酸を触媒として、また、Na2SO4およびMgSO4を吸水剤として使用するトルエン中でのN−(2−カルボキシエチル)ピロールおよびベンゾフェノン反応性誘導体(例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)との間でのエステル化反応によって調製した。電気化学的重合の後、ベンゾフェノン基が結合しているポリピロールを得た。このポリマーを、活性化された基によって誘導されるさらなる化学重合を可能にするために放射線照射によって活性化した。
【0391】
ポリアクリラートを含有する多層化被覆:
ステントにおける二重層化された薬物負荷のポリアクリラート含有被覆を、ポリピロール被覆の機械的特性を改善し、および/または、全体的な負荷を改善し、かつ、ポリピロール誘導体により被覆されたステントからの放出プロフィルを最適化するために調製した。
【0392】
そのような二重層化された被覆ステントを、下記のような2つの方法を使用して調製した:
方法1:ポリピロール被覆ステントを、1:7:2(モル当量)のPPA、PPAブチルエステルおよびPPAヘキシルエステルの混合物を電解重合溶液として使用して上記で記載されるように得て、その後、クロロホルムにおける40mg/mlのパクリタキセルおよび1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートの溶液に1分間浸漬した。その後、ステントを乾燥し、同じ溶液に再び1分間浸漬し、最後に再び乾燥した。その後、乾燥ステントを、シクロヘキサンにおける1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートの溶液に20秒間浸漬した。
総薬物負荷は各ステントにおいて85μg〜100μgであった。
被覆の厚さは約0.8μmであった。
方法2:ポリピロール被覆ステントを、1:7:2(モル当量)のPPA、PPAブチルエステルおよびPPAヘキシルエステルの混合物を電解重合溶液として使用して上記で記載されるように得て、その後、エタノールにおける30mg/mlのパクリタキセルを含有する溶液に30分間浸漬した。その後、ステントを、クロロホルムにおける40mg/mlのパクリタキセルおよび1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートを含有する溶液に1分間浸漬し、乾燥した。その後、乾燥ステントを、シクロヘキサンにおける1%のポリメチルラウリル(2:3)メタクリラートを含有する溶液に20秒間浸漬した。
総薬物負荷は各ステントにおいて85μg〜110μgであった。
被覆の厚さは約0.8μmであった。
【0393】
図12および図13は、方法1(図12)および方法2(図13)によって調製されたステントからの薬物放出プロフィルを示す。図12および図13においてみられるように、両方のステントを使用して、薬物は100日より長い期間にわたってゆっくりと放出された。より遅い放出が方法2によって調製されたステントにおいて観察された。
【0394】
ステントにおけるラウリルメタクリラートおよびPETMAによるポリ(アリルエステル)ピロール被覆改変:
二官能性モノマー(例えば、ピロールユニットを含有する本明細書中上記に記載されるピロールのアリルエステル誘導体など)を、ポリ(アリルエステル)ピロールにより被覆されたステントを得るために使用した。被覆の厚さは0.4μmであった。アクリラートモノマーの別の重合によるステント表面の改変を、その後、下記のように行った:
【0395】
ラウリルメタクリラートの重合(開始剤としての過酸化ベンゾイル(BP)):
ラウリルメタクリラート(LM)モノマー溶液(そのまま、または、DCMにおける50%LMのいずれか)にモノマーあたり1%(w/v)のBPを加えた。アリルエステルポリピロール被覆ステントをこの溶液に5秒間浸漬した。その後、ステントを乾燥して、過剰なLM溶液を除き、窒素流下で数分間、空の小さいガラス製バイアルに入れた。バイアルを閉じ、70℃に5時間加熱した。反応が完了した後、ステントをメタノールにより洗浄し、拡げた。一様な被覆が得られた。
【0396】
PETMA(ペンタエリトリトールテトラメタクリラート)によるラウリルメタクリラートの架橋重合(開始剤としてのBP):上記と同じ手順を使用して、架橋ポリアクリラート被覆を、アクリラートモノマー溶液に1%(w/w)のPETMAを架橋剤として加えることによって得た。
【0397】
PETMAの重合(開始剤としてのBP):上記と同じ手順を使用して、架橋ポリマー被覆を、DCMにおける50%のPETMAの溶液をモノマー溶液として使用することによって得た。
【0398】
水性媒体における重合:上記で記載された手順のそれぞれを、ステントをモノマー溶液に浸漬し、ステントを乾燥し、得られたステントを窒素流下で水に浸漬することによって行った。その後、0.25%のNa2S2O5、0.25%のFeH8N2O8S2およびNa2S2O8を加え、混合物を5時間撹拌した。その後、ステントを水により洗浄し、拡げた。
【0399】
本明細書中上記(例えば、実施例3〜実施例5)に記載される電解重合プロセスのそれぞれを、ステントまたは他の埋め込み可能な機器において、ならびに、機器の特定部分において行うことができる。例えば、金属ステントの内側部分を、ステントを膨張したバルーンに、あるいは、柔らかいロッドまたは堅いロッドに差し込み、従って、電解重合溶液がステントの内側に入ることを制限することによって電解重合被覆から保護することができる。同様に、内側部分は、外側部分をバルーンまたは柔らかい覆いにより覆うことによって、表面を被覆することなく電気化学的に被覆することができる。機器を、所望する性質を可能にするために様々な被覆層によって被覆することができる。例えば、最初の重合層はピロールモノマーおよびN−PEG200−ピロールモノマーから9:1の比率で構成されることが可能であり、第2の層は、比率が6:4であるピロール:N−アルキルパクリタキセル−ピロールの混合物であることが可能であり、第3の層は、比率が9:1であるピロール:N−PEG200−ピロールの混合物であることが可能である。このタイプの多層被覆は、ポリマー内のピロールユニットからの薬剤の切断によって、また、組織および体液からの受動的保護としても役立つ外側層を通過する拡散によって制御される長期間にわたるパクリタキセルの放出をもたらす。
【0400】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0401】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0402】
【図1】金属性表面における被覆が、電流を加えることによって、所望のモノマー(1つ以上)および緩衝剤を含む溶液において行われ、金属性表面(ステント)が陽極として作用する、本発明の好ましい実施形態による電解重合装置の概略図である。
【図2】モノマーが最初に、活性なラジカルを得るために電流によって活性化され、その後、このラジカルがカップリング反応で他のピロールラジカルと反応する、ピロールの段階的電解重合プロセスの概略図である。
【図3】保護用の官能基がその表面に結合しているステントの概略図である。
【図4】薬物、および/または、その表面に結合したポリ乳酸粒子(PLA)に封入された薬物を有するステントの概略図である。
【図5】薬物(D)が結合しているステントの概略図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による、反応性の側鎖を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造を示す(RおよびR’は有機残基を表し、Yは分解性または非分解性の化学結合を表す)。
【図7】薬物、または、共有結合により結合した薬物を包み込むナノ粒子を有する例示的な電解重合可能なモノマーの化学構造(図7A)、および、そのようなモノマーから得られる例示的な電解重合ポリマーの化学構造(図7B)を示す。
【図8】本発明の好ましい実施形態によるピロール誘導体の電解重合の典型的なサイクリックボルタンメトリーダイアグラムである。
【図9】本発明の実施形態による電解重合ピロール誘導体の厚さに対するCV数の影響を明らかにする比較プロットを示す。
【図10A−D】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図10E−H】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図10I−J】様々な電解重合ピロール誘導体により被覆されたステンレス鋼プレートの表面のSEM顕微鏡写真である。
【図11】PLAを伴う電解重合ポリ(ブチルエステル)(A)、および、PLAを伴わない電解重合ポリ(ブチルエステル)(B)に取り込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図12】本発明の実施形態による例示的な電解重合ピロール被覆ステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図13】本発明の実施形態による例示的な、電解重合ピロールおよびPLAにより被覆されたステントに埋め込まれたパクリタキセルの放出プロフィルを明らかにするプロットを示す。
【図14】本発明の実施形態による例示的な保持機器の概略図である。
【図15】本発明の実施形態による例示的なカートリッジの概略図である。
【図16】本発明の実施形態による例示的なシステムの概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する物体と;
前記表面に結合している電解重合ポリマーと;
前記電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物であって、前記活性物質が静電的相互作用または共有結合性の相互作用以外の相互作用を介して前記ポリマーに結合されている製造物。
【請求項2】
前記物体は埋め込み可能な機器である、請求項1に記載の製造物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性物質は、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合している複数の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の製造物。
【請求項4】
前記保護剤は、疎水性ポリマー、両親媒性ポリマー、複数の疎水性の微粒子および/またはナノ粒子、複数の両親媒性の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の製造物。
【請求項5】
前記生物活性剤は、治療活性な薬剤、標識薬剤、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の製造物。
【請求項6】
前記活性物質は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、物理的相互作用、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される相互作用を介して前記電解重合ポリマーに結合されている、請求項1に記載の製造物。
【請求項7】
前記活性物質は、前記電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項1に記載の製造物。
【請求項8】
前記電解重合ポリマーは、ポリピロール、ポリチエニル、ポリフラニル、それらの誘導体、および、それらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の製造物。
【請求項9】
前記電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーをさらに含む、請求項1に記載の製造物。
【請求項10】
前記さらなるポリマーは電解重合ポリマーおよび化学的重合ポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の製造物。
【請求項11】
前記化学的重合ポリマーは、前記電解重合されたモノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれている、請求項10に記載の製造物。
【請求項12】
前記さらなるポリマーは前記電解重合ポリマーの一部を形成する、請求項10に記載の製造物。
【請求項13】
前記活性物質は前記さらなるポリマーにさらに結合されている、請求項9に記載の製造物。
【請求項14】
前記活性物質は前記さらなるポリマーを介して前記電解重合ポリマーに結合されている、請求項9に記載の製造物。
【請求項15】
前記さらなるポリマーは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、前記活性物質が可溶性であるポリマー、柔軟なポリマー、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の製造物。
【請求項16】
前記活性物質が結合している前記少なくとも1つのさらなるポリマーは前記電解重合ポリマーの一部を形成する、請求項14に記載の製造物。
【請求項17】
前記活性物質は、前記さらなるポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項14に記載の製造物。
【請求項18】
前記活性物質を体内において制御可能に放出することができるように設計される、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項19】
前記放出することが、約1日〜約200日間にわたって達成される、請求項18に記載の製造物。
【請求項20】
前記電解重合ポリマーは、0.1ミクロン〜10ミクロンの間の範囲にある厚さを有する、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項21】
前記活性物質の量はポリマーの総重量の約0.1重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲である、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項22】
前記活性物質の量はポリマーの総重量の約50重量パーセントである、請求項21に記載の製造物。
【請求項23】
請求項1に記載の製造物を調製するプロセスであって、
前記導電性表面を有する前記物体を提供すること;
第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;
前記活性物質を提供すること;
前記電解重合可能なモノマーを電解重合し、それにより、前記電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している前記物体を得ること;および、
前記活性物質を前記電解重合ポリマーに結合すること
を含むプロセス。
【請求項24】
前記活性物質は、前記電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記活性物質を結合することが、
前記活性物質を含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
によって行われる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記製造物はさらに、前記電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含み、前記プロセスは
前記さらなるポリマーを前記電解重合ポリマーに結合し、それにより、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有し、かつ、前記電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供すること
を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記さらなるポリマーは電解重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、
前記第2の電解重合可能なモノマーを、前記電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有する前記物体に電解重合すること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
前記化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
前記化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させながら、前記モノマーを重合すること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合ポリマーの一部分を形成する化学的重合ポリマーであり、かつ、前記第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、前記さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、前記さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項31】
前記さらなるポリマーを形成することができる前記官能基が選択され、かつ、前記プロセスはさらに、前記電解重合ポリマーが結合している前記物体を前記官能基の化学的重合に供することを含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記さらなるポリマーの形成に関与することができる前記官能基が選択され、かつ、前記プロセスはさらに、
前記さらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
を含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記官能基は、光活性化可能な基、架橋基および重合開始基からなる群から選択される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記電解重合可能なモノマーおよび/または前記電解重合することは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する電解重合ポリマーを提供するように選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項35】
前記電解重合可能なモノマーは、アルキルが少なくとも3個の炭素原子を有するN−アルキルピロール誘導体である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記電解重合する前に、前記表面への前記電解重合ポリマーの接着を高めるように前記物体の前記表面を処理することをさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項37】
下記の官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する電解重合可能なモノマー:
(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;
(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;
(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;
(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;
(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;および
(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基。
【請求項38】
互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む、電解重合可能なモノマー。
【請求項39】
前記少なくとも2つの電解重合可能な部分は、共有結合性の結合、スペーサーまたはそれらの組合せを介して互いに連結されている、請求項38に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項40】
前記スペーサーは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールからなる群から選択される、請求項39に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項41】
前記電解重合可能な部分のそれぞれが独立して、置換または非置換のピロール、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される、請求項38〜40のいずれかに記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項42】
1,2,6−トリ(N−プロパノイルピロール)−ヘキサン、1,1’,1’’,1’’’−テトラ(N−プロパノイルピロール)−メタン、ビス−ピロール−PEG、1,1’−ジ(2−チエニル)エチレン、3−ジメチルアミノ−1−(2−チエニル)−プロパノン、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールおよび1,2−ジ(2−ピロリル)−エテンからなる群から選択される、請求項38に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項43】
少なくとも1つの電解重合可能な部分と、前記電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマー。
【請求項44】
少なくとも1つの電解重合可能な部分と、前記電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマー。
【請求項45】
表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように導電性表面を処理する方法であって、この方法は、前記電解重合ポリマーを表面に形成する前に、表面を手作業により研磨すること、表面を酸と接触させること、表面を超音波処理に供すること、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの手法に表面を供することを含む方法。
【請求項46】
前記超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
医療機器を、その表面への電解重合に供している間、保持するための機器であって、この機器が、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が前記有孔被包体とかみ合い、従って、電場を前記有孔被包体の内部において生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップとを含む機器。
【請求項48】
請求項47に記載の複数の保持機器と、前記複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジ。
【請求項49】
少なくとも1つの医療機器を被覆するためのシステムであって、このシステムは、稼動可能な配置で、請求項47に記載の少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、前記搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、前記搬送装置は、前記少なくとも1つの保持機器を、前記少なくとも1つの保持機器が、所定の時間、所定の順序で前記複数の処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築されている、システム。
【請求項1】
導電性表面を有する物体と;
前記表面に結合している電解重合ポリマーと;
前記電解重合ポリマーに結合している少なくとも1つの活性物質とを含む製造物であって、前記活性物質が静電的相互作用または共有結合性の相互作用以外の相互作用を介して前記ポリマーに結合されている製造物。
【請求項2】
前記物体は埋め込み可能な機器である、請求項1に記載の製造物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性物質は、生物活性剤、保護剤、生物活性剤が結合しているポリマー、生物活性剤が結合している複数の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の製造物。
【請求項4】
前記保護剤は、疎水性ポリマー、両親媒性ポリマー、複数の疎水性の微粒子および/またはナノ粒子、複数の両親媒性の微粒子および/またはナノ粒子、ならびに、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の製造物。
【請求項5】
前記生物活性剤は、治療活性な薬剤、標識薬剤、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の製造物。
【請求項6】
前記活性物質は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、表面相互作用、物理的相互作用、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される相互作用を介して前記電解重合ポリマーに結合されている、請求項1に記載の製造物。
【請求項7】
前記活性物質は、前記電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項1に記載の製造物。
【請求項8】
前記電解重合ポリマーは、ポリピロール、ポリチエニル、ポリフラニル、それらの誘導体、および、それらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の製造物。
【請求項9】
前記電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーをさらに含む、請求項1に記載の製造物。
【請求項10】
前記さらなるポリマーは電解重合ポリマーおよび化学的重合ポリマーからなる群から選択される、請求項9に記載の製造物。
【請求項11】
前記化学的重合ポリマーは、前記電解重合されたモノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれている、請求項10に記載の製造物。
【請求項12】
前記さらなるポリマーは前記電解重合ポリマーの一部を形成する、請求項10に記載の製造物。
【請求項13】
前記活性物質は前記さらなるポリマーにさらに結合されている、請求項9に記載の製造物。
【請求項14】
前記活性物質は前記さらなるポリマーを介して前記電解重合ポリマーに結合されている、請求項9に記載の製造物。
【請求項15】
前記さらなるポリマーは、疎水性ポリマー、生分解性ポリマー、非分解性ポリマー、血液適合性ポリマー、生体適合性ポリマー、前記活性物質が可溶性であるポリマー、柔軟なポリマー、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の製造物。
【請求項16】
前記活性物質が結合している前記少なくとも1つのさらなるポリマーは前記電解重合ポリマーの一部を形成する、請求項14に記載の製造物。
【請求項17】
前記活性物質は、前記さらなるポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項14に記載の製造物。
【請求項18】
前記活性物質を体内において制御可能に放出することができるように設計される、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項19】
前記放出することが、約1日〜約200日間にわたって達成される、請求項18に記載の製造物。
【請求項20】
前記電解重合ポリマーは、0.1ミクロン〜10ミクロンの間の範囲にある厚さを有する、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項21】
前記活性物質の量はポリマーの総重量の約0.1重量パーセント〜約50重量パーセントの範囲である、請求項1〜17のいずれかに記載の製造物。
【請求項22】
前記活性物質の量はポリマーの総重量の約50重量パーセントである、請求項21に記載の製造物。
【請求項23】
請求項1に記載の製造物を調製するプロセスであって、
前記導電性表面を有する前記物体を提供すること;
第1の電解重合可能なモノマーを提供すること;
前記活性物質を提供すること;
前記電解重合可能なモノマーを電解重合し、それにより、前記電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している前記物体を得ること;および、
前記活性物質を前記電解重合ポリマーに結合すること
を含むプロセス。
【請求項24】
前記活性物質は、前記電解重合ポリマーの内部において膨潤され、吸収され、埋め込まれ、および/または封入されている、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記活性物質を結合することが、
前記活性物質を含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが表面の少なくとも一部分に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
によって行われる、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記製造物はさらに、前記電解重合ポリマーに結合した少なくとも1つのさらなるポリマーを含み、前記プロセスは
前記さらなるポリマーを前記電解重合ポリマーに結合し、それにより、電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有し、かつ、前記電解重合ポリマーに結合したさらなるポリマーを有する物体を提供すること
を含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記さらなるポリマーは電解重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
第2の電解重合可能なモノマーを提供すること;および、
前記第2の電解重合可能なモノマーを、前記電解重合ポリマーを表面の少なくとも一部分に有する前記物体に電解重合すること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
前記化学的重合ポリマーを含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合モノマーの内部において膨潤され、吸収され、または埋め込まれる化学的重合ポリマーであり、かつ、前記プロセスはさらに、
前記化学的重合ポリマーのモノマーを含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させながら、前記モノマーを重合すること
を含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
前記さらなるポリマーは、前記電解重合ポリマーの一部分を形成する化学的重合ポリマーであり、かつ、前記第1の電解重合可能なモノマーを提供することが、前記さらなるポリマーと相互作用することができる官能基、または、前記さらなるポリマーを形成することができる官能基を有する第1の電解重合可能なモノマーを提供することを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項31】
前記さらなるポリマーを形成することができる前記官能基が選択され、かつ、前記プロセスはさらに、前記電解重合ポリマーが結合している前記物体を前記官能基の化学的重合に供することを含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記さらなるポリマーの形成に関与することができる前記官能基が選択され、かつ、前記プロセスはさらに、
前記さらなるポリマーを形成することができる物質を含有する溶液を提供すること;および、
前記電解重合ポリマーが前記表面に結合している前記物体を前記溶液と接触させること
を含む、請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記官能基は、光活性化可能な基、架橋基および重合開始基からなる群から選択される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記電解重合可能なモノマーおよび/または前記電解重合することは、0.1ミクロン〜10ミクロンの範囲にある厚さを有する電解重合ポリマーを提供するように選択される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項35】
前記電解重合可能なモノマーは、アルキルが少なくとも3個の炭素原子を有するN−アルキルピロール誘導体である、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記電解重合する前に、前記表面への前記電解重合ポリマーの接着を高めるように前記物体の前記表面を処理することをさらに含む、請求項23に記載のプロセス。
【請求項37】
下記の官能基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する電解重合可能なモノマー:
(i)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの、導電性表面への接着を高めることができる官能基;
(ii)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの内部における活性物質の吸収、膨潤または埋め込みを高めることができる官能基;
(iii)化学的重合ポリマーを形成することができる官能基;
(iv)化学的重合ポリマーの形成に関与することができる官能基;
(v)約0.1ミクロン〜約10ミクロンの範囲の厚さを有する、電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーを提供することができる官能基;および
(vi)電解重合可能なモノマーから形成される電解重合ポリマーの柔軟性を高めることができる官能基。
【請求項38】
互いに連結されている少なくとも2つの電解重合可能な部分を含む、電解重合可能なモノマー。
【請求項39】
前記少なくとも2つの電解重合可能な部分は、共有結合性の結合、スペーサーまたはそれらの組合せを介して互いに連結されている、請求項38に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項40】
前記スペーサーは、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のシクロアルキル、および、置換または非置換のポリアルキレングリコールからなる群から選択される、請求項39に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項41】
前記電解重合可能な部分のそれぞれが独立して、置換または非置換のピロール、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される、請求項38〜40のいずれかに記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項42】
1,2,6−トリ(N−プロパノイルピロール)−ヘキサン、1,1’,1’’,1’’’−テトラ(N−プロパノイルピロール)−メタン、ビス−ピロール−PEG、1,1’−ジ(2−チエニル)エチレン、3−ジメチルアミノ−1−(2−チエニル)−プロパノン、1,4−ジ(2−チエニル)−1,4−ブタンジオールおよび1,2−ジ(2−ピロリル)−エテンからなる群から選択される、請求項38に記載の電解重合可能なモノマー。
【請求項43】
少なくとも1つの電解重合可能な部分と、前記電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーを形成することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマー。
【請求項44】
少なくとも1つの電解重合可能な部分と、前記電解重合可能な部分に結合している、化学的重合ポリマーの形成に関与することができる少なくとも1つの官能基とを含む電解重合可能なモノマー。
【請求項45】
表面への電解重合ポリマーの接着を高めるように導電性表面を処理する方法であって、この方法は、前記電解重合ポリマーを表面に形成する前に、表面を手作業により研磨すること、表面を酸と接触させること、表面を超音波処理に供すること、および、それらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの手法に表面を供することを含む方法。
【請求項46】
前記超音波処理はカーボランダムの存在下で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
医療機器を、その表面への電解重合に供している間、保持するための機器であって、この機器が、医療機器を収容するために適合化された有孔被包体と、電極構造物が前記有孔被包体とかみ合い、従って、電場を前記有孔被包体の内部において生じさせることができるために適合化された少なくとも2つのキャップとを含む機器。
【請求項48】
請求項47に記載の複数の保持機器と、前記複数の保持機器がカートリッジ本体に取り付けられることを可能にするために適合化されたカートリッジ本体とを含むカートリッジ。
【請求項49】
少なくとも1つの医療機器を被覆するためのシステムであって、このシステムは、稼動可能な配置で、請求項47に記載の少なくとも1つの保持機器と、搬送装置と、前記搬送装置に沿って配置された複数の処理浴とを含み、前記搬送装置は、前記少なくとも1つの保持機器を、前記少なくとも1つの保持機器が、所定の時間、所定の順序で前記複数の処理浴のそれぞれの内部に入れられるように運ぶために設計および構築されている、システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10A−D】
【図10E−H】
【図10I−J】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10A−D】
【図10E−H】
【図10I−J】
【公表番号】特表2009−501828(P2009−501828A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522174(P2008−522174)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000839
【国際公開番号】WO2007/010536
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507020314)エルテックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000839
【国際公開番号】WO2007/010536
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(507020314)エルテックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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