説明

霧状スプレーによって材料を冷却するための方法及び装置

本発明は、材料を焼き戻すための方法及び装置に関する。
本発明によれば、1つ以上の液体が少なくとも1つの噴霧器によって液滴に霧化され、液滴の少なくとも一部が高温材料の表面と衝突して気化し、これによって熱エネルギーが高温材料の表面層から除去されるよう、これらの液滴が高温材料の表面に向かって誘導される。衝突部材を使用して、液滴のサイズをさらに小さくすることができる。液滴は、別個の誘導用ガス流によって表面に誘導することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、材料を焼き戻すための、請求項1の前文に記載の方法、及び材料を焼き戻すための、請求項16の前文に記載の装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]先行技術によれば、金属(例えば鋼)、ガラス、及び他の材料は、空冷によって焼き戻される。焼き戻そうとする高温のピースを水中に浸漬することによって、該ピースを焼き戻すことも知られている。空冷に基づいて焼き戻す際には、空気の強い流れを、焼き戻そうとする材料に、または製品の表面に向けて当てる。材料の温度を急速に下げるために空気の強い流れが使用され、これにより材料の構造及び/又は性質が、材料に所望の特性をもたらすような変化を受ける。例えば、鋼の焼き戻しは、鋼をオーステナイト形成温度より高い温度に加熱し、そしてオーステナイトの形成と均質化に必要な時間保持した後に、臨界冷却速度よりも速い速度で鋼を冷却することを意味している、と理解されている。焼き戻しの目的は、焼き戻しピースの微細構造中に、ある特定の所定のマルテンサイト含量を達成することである。ガラスの焼き戻しは、ガラスの表面層に圧縮張力を生じさせるように、そしてガラスの内部に引張応力を生じさせるように急速冷却を使用することを目的としている。
【0003】
[0003]空冷に基づいた上記先行技術の解決策に付きものの問題点は、焼き戻しに関連した空冷では、極めて大量の空気と、焼き戻そうとする材料もしくは製品の表面に向かう空気の効率的なブローとが必要になる、という点である。こうした大量の空気と効率的なブローは、極めて大量のエネルギーを消費する。さらに、多くの応用において、急速冷却や均一冷却の処理は、特に、薄いピース(例えば薄いガラス)を焼き戻すときには、制御・実施が困難である。したがって、空冷、および均一な冷却をもたらすためのその制御は、複雑な機械設備による解決策を必要とする。高温のピースを水中に浸漬するという水による焼き戻しは、良質の焼き戻し製品を得ようとする場合には、工業規模での制御が不可能である。
【発明の概要】
【0004】
[0004]したがって本発明の目的は、上記問題点を解決できる方法と装置を提供することである。本発明の目的は、少なくとも1つの液体を液滴に霧化し、形成された液滴を、該液滴の少なくとも一部が高温材料の表面と衝突し、該高温材料の表面層から熱エネルギーを受け取ると気化するよう、高温材料の表面に向かって誘導することを特徴とする、請求項1の特徴づけ部分に記載の方法によって達成される。本発明の目的はさらに、少なくとも1つの液体を液滴に霧化するための1つ以上の噴霧器;および、形成された液滴を、該液滴の少なくとも一部が高温材料の表面と衝突して気化し、これによって高温材料の表面層から熱エネルギーが除去されるよう、高温材料の表面に向かって誘導するための手段;を含むことを特徴とする、請求項16の特徴づけ部分に記載の装置によって達成される。
【0005】
[0005]本発明の好ましい実施態様が従属クレームに開示されている。
[0006]本発明は、1つ以上の噴霧器によって小さい液滴に霧化される少なくとも1つの液体を使用することにより、焼き戻し時において材料もしくは製品を冷却するという考え方をベースにしている。液滴はさらに、焼き戻そうとする高温材料の表面と衝突するよう、焼き戻そうとする高温材料の表面に移送される。液滴は、ガス流を使用することによって高温材料の表面に向けて誘導することができ、形成された液滴を含むエアロゾルによって高温材料の冷却が達成される。材料の高温表面と衝突する液滴は、高温材料から熱エネルギーを受け取り、速やかに気化する。言い換えると、液体は、液体の層もしくは複数の液滴からなるプールが材料表面上に形成されないよう、別々の液滴にて、及び別々の液滴から気化する。言い換えると、液滴が高温材料の表面と衝突すると、液滴は、衝突時に、もしくは衝突直後に気化する。これは、充分に小さな液滴を使用することによって達成される。液体は、30μm以下の平均直径を有する液滴に合体するのが好ましい。これらの極めて小さな液滴は、高温材料と衝突すると速やかに気化し、したがって高温材料から熱エネルギーが効率的に除去される。好ましいケースでは、高温材料の表面上の衝突力は、小さな液滴を、衝突と関連して実質的に気化させるのに充分に効率的である。
【0006】
[0007]本発明の方法と装置の利点は、焼き戻し工程において高温材料を冷却するのに小さな液滴を使用することで、高温材料を焼き戻すためのエネルギー効率の良い手段が得られるということである。小さな液滴により、高温ピースからの速やかで効率の良い熱伝達を達成することができる。均一で速やかな熱伝達は、大きな表面と薄い製品(例えば薄いガラス)を焼き戻そうとするときは特に重要である。小さな液滴を使用してもたらされる冷却は、先行技術の空冷と比較してエネルギー消費量がかなり少なく、さらに、小さな液滴滴の使用に基づいた焼き戻し装置は、造り出すのがより簡単な構造を有する。
【0007】
[0008]以下に、添付図面を参照しつつ、好ましい実施態様に関して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明による、材料を焼き戻すための装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明による、焼き戻しを行うための噴霧器の概略図である。
【図3】図3は、本発明による、焼き戻しを行うための第2の噴霧器の概略図である。
【図4】図4は、該噴霧器の第2の実施態様の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0009]図1には、本発明の方法を実施することができる本発明の装置の実施態様が開示されている。装置50は、移動しつつある高温材料ウェブ26を焼き戻すのに使用される。焼き戻そうとする材料は、例えば、鋼等の金属、ガラス、金属合金、またはセラミック材料であってよい。図1は、移動しつつある材料ウェブの焼き戻しを示しているけれども、本発明の方法と装置は、任意の方向に移動可能な任意の材料もしくは製品の焼き戻しにも適用することができる。これとは別に、焼き戻そうとする材料もしくは製品が静止していて、1つ以上の噴霧器が移動してもよい。本発明によれば、装置50は、1種以上の液体を小さな液滴に霧化することができる噴霧器22を含む。必要に応じて、装置50はさらに、2つ以上の噴霧器22を含んでよい。焼き戻しにおいて使用される、噴霧器22で霧化しようとする液体は、好ましくは水であるが、アルコール(例えば、エタノールと水とアルコールとの混合物)、あるいは幾つかの他の液体混合物、あるいは水及び/又はアルコールを含むエマルジョンであってもよい。これとは別に、冷却または焼き戻しに適した幾つかの他の液体、あるいは1種以上の液体の混合物を使用することもできる。霧化しようとする液体を、ライン2にて流量計27を介して噴霧器22に移送する。さらに、ガス流を、流路20にてフローレギュレーター18を介して噴霧器22に移送する。ここに示す噴霧器22はガス分散噴霧器であるが、充分に小さな液滴を造りだすことができる超音波噴霧器または他の幾つかの噴霧器も使用することができる。噴霧器22により、液体が小さな液滴7に霧化され、これらの液滴が、ガス流によって、例えば焼き戻そうとする材料ウェブ26の表面に向かって導かれる。
【0010】
[0010]噴霧器22はチャンバー14中に存在していて、チャンバー14によりその内部スペースが周囲雰囲気と実質的に隔離されている。例えば、不活性ガスは、ガス導管(好ましくは、液体を霧化するのに使用されるガス導管20)からチャンバー14中に供給することができる。これとは別に、ガスは、別のガスノズルからチャンバー14中に供給することもできる。チャンバー14にはさらに、気化した液滴7をチャンバー14から移すための吸引手段を取り付けることもできる。言い換えると、装置50は、噴霧器22を使用して形成された液滴7を高温材料26の表面に向けて誘導するための手段を含む。形成された液滴7を高温材料の表面に向けて誘導するためのこれらの手段は、少なくとも1つの液体を霧化する1つ以上のガス流路20、または1つ以上の別個のガスノズル(図示せず)を含んでよい。焼き戻そうとする材料の加熱は、例えば、噴霧器22の上流に位置している処理工程24において行うことができ、該加熱は、加熱工程、作用工程(working step)、または類似の処理工程からなってよい。好ましい実施態様では、本発明の焼き戻し装置50は、ある材料または製品の製造ラインもしくはプロセッシングライン(例えば、フラットガラス製造ライン、他の幾つかのガラス製品の製造ライン、または鋼の製造ライン)に、あるいは他の幾つかの製品または材料の製造ラインもしくはプロセッシングラインに連結される。フラットガラスの製造ラインでは、焼き戻し装置50を、例えば、フロートラインの錫浴の後に配置することができ、このとき錫浴から上がるガラスストリップ温度は、高くても650℃である。焼き戻し装置に到着する高温材料の温度は、例えば850℃〜450℃であってよい。しかしながら、温度は、焼き戻そうとする材料の種類及び所望する焼き戻し特性に依存する。
【0011】
[0011]開示されている本発明では、必要な急速冷却を行うために、小さな液滴を使用して高温材料を焼き戻し、このとき液滴7が高温材料26の表面と衝突するように誘導され、液滴7が、図1に示すように高温材料26の表面と衝突する。液滴7のサイズが充分に小さいことから、液滴は、充分な速度で高温材料26の表面との衝突を果たすことができる。衝突すると、液滴7は材料26から(特に、その表面層から)熱エネルギーを受け取り、気化する。効率的で急速な冷却を果たすためには、液滴7は、充分に小さい必要がある。充分に小さな液滴を得るためには、1つ以上の噴霧器22を、少なくとも1つの液体を30μm以下(好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下)の平均直径を有する液滴に霧化するように配置する。1つの実施態様によれば、噴霧器22の機能は、3μm未満の平均直径を有する液滴7を、さらに好ましくは1μm未満の平均直径を有する液滴7をもたらすことによって達成されている。液滴7が大きすぎると(例えば100μm以上)、液滴7は、高温材料26の表面と衝突したときに充分に速やかには気化せずに、高温材料26の表面上に液体皮膜を形成するか、あるいは高温材料26の表面上に浮遊したまま残る。このため冷却速度が低下し、液体皮膜が高温材料26の表面から沸騰して気化し、したがって表面上にガス層が形成され、このことが冷却速度をさらに低下させる。高温材料26の表面上に残留している液体はさらに、高温材料26の不均一な冷却及び不均一な残留応力を引き起こす。さらに、高温材料26の表面上に残った液体皮膜もしくは大きな液滴は、材料表面上に望ましくないむらを残すことが多い。さらに、大きな液滴の速度はあまりにも遅いことが多いので、高温材料26の表面上に、充分に効率的な衝突を達成することができない。例えば、ガス分散噴霧器22もしくは超音波噴霧器を使用して、小さな液滴7を生成させることができる。しかしながら、超音波噴霧器に付きものの欠点は、液滴の生成速度が遅いこと、及び液滴7を高温材料26の表面に向けて誘導するための別個の制御ガスが必要であることである。言い換えると、良好な冷却が達成されるためには、液滴は、速やかな気化のための充分に小さな質量を有するよう充分に小さくなければならず、そしてさらに液滴は、効率的な衝突が達成されるに足る速度で高温材料の表面に向かって誘導されなければならない。本発明においては、液滴7のサイズが小さいこと、及び液滴7の速度が充分に高いことにより、液滴7が実質的に別々の液滴として衝突し、これによって高温材料の表面上への液体皮膜やプールの形成が避けられる。液滴7の充分な速度は、例えば、液滴7のサイズ、及び冷却のために使用される、そして液滴7を形成させるのに使用される液体の種類に依存する。
【0012】
[0012]以下に、充分に小さな液滴7を生成することができる別の噴霧器22の例を、図2、3、及び4によって説明する。
[0013]図2は、噴霧器22の基本図を示す。焼き戻しにおいて使用する液体(例えば水)を、流路25から超小液滴を生じる噴霧器中に供給する。噴霧用ガス(例えば窒素N)をガス流路20に導く。分配用チャンバー30と流れ障害物(flow impediments)32により、液体流路25の周囲にて噴霧流が均一に分配され、これによって液体が噴霧ノズル34において液滴に霧化される。噴霧ノズル34(または噴霧ヘッド34)において霧化されるエアロゾルの液滴サイズは比較的大きい。エアロゾルが流れると、流れ障害物36によりエアロゾル流れの流体力学的軽質が変わり、これにより、予想外のことにエアロゾルの液滴サイズが超小液滴に変わる。このメカニズムは、流れ障害物36によって引き起こされる衝突エネルギーと衝突圧力の変化に基づいている。言い換えると、流れ障害物36は、噴霧ヘッド34から排出されるエアロゾルの液滴が、1つ以上の流れ障害物36及び/又は互いに衝突して、エアロゾルの液滴サイズを低下させるような態様にて配置されている。さらに、あるいはこれとは別に、流れ障害物36は、噴霧ヘッド34から排出されるエアロゾル流れ中に圧力変化及び/又は制約をもたらして、エアロゾルの液滴サイズを低下させるような態様にて配置されている。こうした配置により、超小液滴7がノズルから排出される。これらの超小液滴がさらに、高温材料26の表面に向けられる。液滴7は、高温材料26の表面と衝突すると気化し、これによって高温材料26から熱エネルギーが除去される。
【0013】
[0014]上記の説明によれば、図2の噴霧器22が、少なくとも1つの液体を、ガスによって噴霧器の噴霧ヘッドにおいてエアロゾルに霧化する。噴霧器22は、霧化しようとする少なくとも1つの液体を噴霧ヘッド34に供給するための少なくとも1つの液体流路25、及び少なくとも1つのガスを、液体を噴霧してエアロゾルにするための噴霧ヘッド34に供給するための少なくとも1つの流路20を有する。この噴霧用ガスにより、液体は、噴霧ヘッド34においてエアロゾルに霧化される(特に、噴霧用ガスと、噴霧ヘッド34から排出される液体との速度の差の結果として)。噴霧器22はさらに、噴霧ヘッド34から排出されるエアロゾル流れの流体力学的性質(例えば、速度と圧力)を変えるための1つ以上の流れ障害物36を、エアロゾルの液滴サイズが小さくなるような態様にて含む。噴霧器22に噴霧チャンバー35を、噴霧ヘッド34と流れ連結状態にて取り付けることができ、この噴霧チャンバーに流れ障害物36が設けられる。図2においては、噴霧チャンバー35は管状スペースであるが、他の形状のスペースであってもよい。1つ以上の流れ障害物36が存在してもよく、流れ障害物は、連続的に配置しても、並べて配置しても、あるいは互いに関連した他の幾つかの対応する態様にて配置してもよい。流れ障害物36は、エアロゾル流れを、例えば誘導したり、遅くしたり、あるいは制限したりしてよい。図2によれば、流れ障害物36は、内壁から噴霧チャンバー34の内部に向かって延びていくような態様で、噴霧チャンバー34の内壁上に設けられている。流れ障害物36は、噴霧ヘッド34から排出されるエアロゾル液滴が、1つ以上の流れ障害物36及び/又は互いに衝突して、液滴噴霧の液滴サイズを小さくするような態様にて配置されているのが好ましい。さらに、あるいはこれとは別に、流れ障害物36は、噴霧ヘッド34から排出されるエアロゾル流れの圧力変化及び/又は制約を起こさせて、液滴噴霧の液滴サイズを小さくするように配置される。流れ障害物36によって、噴霧器22から排出されるエアロゾル液滴の平均空気力学的直径は10μm(好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下)になる。
【0014】
[0015]図3は、小さな液滴を生成させるための他の噴霧器22を示す。実質的に互いに向き合った2つの噴霧器2が、噴霧器22の本体1に固定されている。噴霧器2は、図1に示すように、互いに直接向かい合ってデバイス中に配置されている。言い換えると、噴霧器2は、液滴噴霧4が実質的に互いに直接衝突するような態様にて、実質的に同軸上に、互いに相対して配置されるのが好ましい。デバイスは、2つ以上の噴霧器2を含んでよい。噴霧器2は、それぞれの噴霧器対の噴霧器2が、実質的に互いに直接向かい合い、そして好ましくは同軸上にて向かい合い、これにより液滴噴霧4またはそれぞれの噴霧器対が、互いに直接衝突するような態様にて1つ以上の噴霧器対を形成するよう、対になって配置されるのが好ましい。噴霧器対はさらに、デバイス中に、例えば、垂直方向もしくは水平方向に連続的または並列的に配置することもできる。
【0015】
[0016]噴霧しようとする液体3と噴霧用ガス8を、噴霧器2中に供給する。噴霧用ガス8と液体3は、噴霧器2中に異なる速度で供給するのが好ましく、これにより噴霧器2の出口での噴霧用ガス8と液体3との間の速度差が、液体3を、小さな液滴からなる液滴噴霧4に霧化する。液滴噴霧4が互いに衝突し、これにより、予想外のことに、極めて小さな液滴7からなるエアロゾルが形成される。液滴噴霧4は、それ自体で既にエアロゾルを形成することがある。実質的に互いに直接向けられた液滴噴霧が衝突すると、液滴噴霧4の運動量が実質的に等しいときには、実質的に動かないエアロゾルが生成される。デバイスはさらに、少なくとも2つの異なる液体を少なくとも2つの噴霧器に供給するための手段を含むよう配置することもできる。言い換えると、デバイスは、同一もしくは異なる液体を2つ以上の噴霧器2に供給することができるような態様にて造り上げることができる。言い換えると、同一もしくは異なる液体を、必要に応じて、それぞれの噴霧器対の噴霧器2に供給することができる。さらに、他の噴霧器対におけるのと同じ液体、あるいは他の噴霧器対におけるのとは異なる液体を、少なくとも2つの噴霧器対において使用することができる。このようなケースでは、それぞれの噴霧器対が、傍らの噴霧器対として、異なる噴霧を生成してもよいし、あるいは類似の噴霧を生成してもよい。デバイスの噴霧器2はさらに、液滴の平均液滴サイズが実質的に異なるか、あるいは同等である液滴噴霧4を生成するよう適合させることもできる。例えば、噴霧器2の形状、液体3と噴霧用ガスの速度、及び両者間の速度差の全てが、液滴のサイズに影響を及ぼすことがある。したがって、液滴のサイズが均一であるエアロゾルを生成させることもできるし、あるいは液滴のサイズが不均一であるエアロゾルを生成させることもできる。
【0016】
[0017]噴霧器22はさらに、ガス流を、少なくとも1つの方向から液滴噴霧4の衝突箇所に向けるための手段を含むのが好ましい。このことは、ガスを、少なくとも1つの方向から液滴噴霧4の衝突箇所に供給するためのガスノズル5を、デバイスに取り付けることによって行うのが好ましい。したがって、ガス流によって、液滴噴霧4の衝突箇所にて生成したエアロゾルを、高温材料26の表面に向かった必要な方向に移動させることができる。ガスノズル5においては、任意のガスを使用することができる。言い換えると、ガスは、窒素等の不活性ガスであっても、あるいは反応して噴霧もしくはエアロゾルとなるガスであってもよい。図3の実施態様においては、ガスノズル5は、ガス流が、液滴噴霧4に対して実質的に垂直に流れて衝突するような態様にてデバイス中に配置されている。
【0017】
[0018]図3の噴霧器22の別の実施態様を図4に示す。実質的に互いに向かい合った2つの噴霧器2が、噴霧器22の本体1に取り付けられている。噴霧しようとする液体3と噴霧用ガス8を噴霧器2に供給する。噴霧器2の出口における噴霧用ガス8と液体3との間の速度差により、液体3が、小さな液滴を含む液滴噴霧4に霧化される。液滴噴霧4が互いに衝突し、これにより、予想外のことに、極めて小さな液滴7で構成されるエアロゾルが形成される。さらに、噴霧器22の本体1に固定された噴霧器12から、液体10と霧化用ガス11(一緒になってエアロゾルとなる)を液滴噴霧4の衝突箇所に供給する。霧化用ガス11は、液体10に対する噴霧用ガスとして作用する。噴霧器12から排出されるエアロゾルが、形成された液滴を高温材料26の表面に向けて誘導する。
【0018】
[0019]当業者にとっては言うまでもないが、技術が進むにつれて、本発明の基本的な考え方は多くの異なる仕方で実施することができる。したがって、本発明とその実施態様は上記の例に限定されず、クレームの範囲内にて種々変わってよい。
【符号の説明】
【0019】
1 本体
2 噴霧器
3 液体
4 液滴噴霧
5 ガスノズル
7 液滴
8 噴霧用ガス
10 液体
11 霧化用ガス
12 噴霧器
14 チャンバー
18 フローレギュレーター
20 流路
22 噴霧器
24 処理工程
25 流路
26 高温材料
27 流量計
30 分配用チャンバー
32 流れ障害物
34 噴霧ノズル、噴霧ヘッド
35 噴霧チャンバー
36 流れ障害物
50 焼き戻し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液体を液滴に霧化することを含み、液滴の少なくとも一部が高温材料の表面と衝突するよう、形成された液滴を高温材料の表面に向けて誘導する、材料を焼き戻しするための方法であって、高温材料の表面と衝突する液滴が、高温材料の表面層から熱エネルギーを受け取ると気化するような態様で、液滴が形成され、高温材料の表面に誘導されることを特徴とする上記方法。
【請求項2】
霧化される少なくとも1つの液体を、平均直径が30μm以下である液滴に霧化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの液体を、平均直径が10μm以下である液滴に霧化させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの液体を、平均直径が5μm以下である液滴に霧化することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの液体を、ガス流または超音波によって霧化することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
液滴を高温材料の表面に向けて誘導するために霧化用ガス流を使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液滴を、別個の誘導用ガス流を使用して高温材料の表面に向けて誘導することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの液体を、液滴ジェットを互いに直接衝突させるよう、少なくとも2つの液滴ジェットを互いに向けて実質的に垂直に誘導することによって2つ以上の液滴ジェットに霧化することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エアロゾルを形成させるために、そして形成されたエアロゾルを、高温材料の表面に向けて誘導するために、ガス流を、少なくとも1つの方向から液滴ジェットの衝突箇所まで誘導することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの液体原材料を、少なくとも1つのガス分散用噴霧器によって、該噴霧器の噴霧端から放出されるエアロゾルに霧化する工程;噴霧器の噴霧端から放出されるエアロゾルの液滴サイズを、流れ障害物によりエアロゾル流れの流体力学的性質を変えることによって小さくする工程;及び、エアロゾル中の液滴の少なくとも一部が、高温材料の表面と衝突し、高温材料の表面層から熱エネルギーを受け取ると気化するように、エアロゾルを高温材料の表面上に誘導する工程;を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
噴霧端から放出されるエアロゾル液滴が1つ以上の流れ障害物及び/又はお互いと衝突してエアロゾルの液滴サイズが小さくなるよう、エアロゾルにおける平均液滴サイズを、流れ障害物によりエアロゾル流れの流体力学的性質を変えることによって小さくすることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
流れ障害物が圧力変化を引き起こすよう、及び/又は、流れ障害物が、液滴サイズを小さくするための、噴霧ヘッドから放出されるエアロゾル流れにおける絞り弁となるよう、流れ障害物によりエアロゾル流れの流体力学的性質を変えることによってエアロゾルにおける平均液滴サイズを小さくすることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
焼き戻し前の高温材料の温度が450℃〜850℃であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
高温材料が、ガラス、金属、金属合金、またはセラミック材料であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
水、アルコール、水とアルコールとの混合物、他の幾つかの液体混合物、または冷却に適したエマルジョンを常に使用することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの液体を液滴に霧化するための1つ以上の噴霧器;及び、液滴の少なくとも一部が高温材料の表面と衝突するよう、形成された液滴を高温材料の表面に向けて誘導するための手段;を含む、材料を焼き戻すための装置であって、液滴が液滴の形態にて高温材料の表面と衝突し、液滴が高温材料の表面層から熱エネルギーを受け取ると気化するように、液滴を生成し、生成された液滴を高温材料の表面に誘導するように装置が構成されていることを特徴とする上記装置。
【請求項17】
1つ以上の噴霧器が、少なくとも1つの液体を、30μm以下の平均直径を有する液滴に霧化するように構成されていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
1つ以上の噴霧器が、少なくとも1つの液体を、10μm以下の平均直径を有する液滴に霧化するように構成されていることを特徴とする、請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの液体が、5μm以下の平均空気動力学的直径を有する液滴に霧化されることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
装置が、少なくとも1つの液体流れを、ガス流もしくは超音波によって霧化するように構成されていることを特徴とする、請求項16〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
形成された液滴を高温材料の表面に向けて誘導するための手段が、少なくとも1つの液体を霧化する1つ以上のガス流を含むことを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
形成された液滴を高温材料の表面に向けて誘導するための手段が1つ以上のガスノズルを含むことを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも2つの噴霧器が、それらが形成する液滴ジェットが互いに垂直に衝突するように、互いに向かって実質的に垂直の方向に配置されていることを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
該装置が、ガスを少なくとも1つの方向から液滴ジェットが衝突する箇所に供給するための、そして液滴を高温材料の表面に向けて誘導するための、少なくとも1つのガスノズルを含むことを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
該装置が、噴霧器の噴霧器端での液体をガスに霧化するための少なくとも1つのガス分散用噴霧器を含み、該噴霧器がさらに、エアロゾルにおける平均液滴サイズが変わるよう、噴霧器端から放出されるエアロゾル流れの流体力学的性質を変えるための1つ以上の流れ障害物をさらに含むことを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
該噴霧器が、そこに形成されている流れ障害物を含んでいて、噴霧ヘッドと流れ連結状態にある噴霧チャンバーを含むことを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
流れ障害物が噴霧チャンバーの内壁から噴霧チャンバー中に突き出るよう、流れ障害物が噴霧チャンバーの内壁上に形成されていることを特徴とする、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
流れ障害物が、噴霧端から放出されるエアロゾル液滴が1つ以上の流れ障害物及び/又はお互いと衝突してエアロゾルにおける液滴サイズを小さくするよう配置されていることを特徴とする、請求項25〜27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
流れ障害物が、噴霧ヘッドから放出されるエアロゾル流れに対して圧力変化を引き起こして、及び/又は、噴霧ヘッドから放出されるエアロゾル流れにおける絞り弁となって、エアロゾルの液滴サイズを小さくするよう配置されていることを特徴とする、請求項25〜28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも1つの使用される霧化用液体が、水、アルコール、水とアルコールとの混合物、他の幾つかの液体混合物、あるいは水及び/又はアルコールを含むエマルジョンであることを特徴とする、請求項16〜29のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−530189(P2012−530189A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515529(P2012−515529)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050499
【国際公開番号】WO2011/004061
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506425734)ベネク・オサケユキテュア (24)
【Fターム(参考)】