説明

露光方法、パターン形成方法、及びデバイス製造方法

【課題】周期的パターンを露光又は形成する際にスペース部の幅の均一性を高める。
【解決手段】ウエハWにパターンを形成するパターン形成方法において、ウエハWの表面に複数のラインパターン40Aを含むL&Sパターン54Aを形成することと、ウエハWの表面の複数のラインパターン40Aの間に配置される複数のライン状のレジストパターン42NAを含むL&Sパターン56Aを、ラインパターン40Aの線幅とレジストパターン42NAの線幅とが負の相関を持つように形成することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にパターンを露光する露光方法、基板にパターンを形成するパターン形成方法、並びにその露光方法又はパターン形成方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィー工程で使用される露光装置においては、解像度を高めるために、露光波長の短波長化、照明条件の最適化、及び投影光学系の開口数をさらに増大するための液浸法の適用等が行われてきた。最近では、露光装置の解像限界よりも微細なピッチの回路パターンを形成するためにダブルパターニング法が使用されている。
【0003】
ダブルパターニング法としては、ライン・アンド・スペースパターン(以下、L&Sパターンという。)の露光及び現像等によってウエハ等の基板の表面に、最終的に形成されるパターンのピッチに比べて線幅が1/2で、ピッチが例えば2倍の複数のラインパターンを形成する工程を、基板と露光されるパターンとの相対位置をその最終的に形成されるパターンのピッチ分だけずらして2回行うピッチ分割法(Pitch Splitting Method)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Andrew J. Hazelton et al. "Double-patterning requirements for optical lithography and prospects for optical extension without double patterning", J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS, (米国)Vol.8(1), 011003, Jan-Mar (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピッチ分割法においては、最終的に形成されるL&Sパターンの複数のラインパターンの線幅の均一性を高めるとともに、複数のラインパターンの間のスペース部の幅の均一性を高めることも求められている。
本発明はこのような事情に鑑み、周期的パターンを露光又は形成する際にスペース部の幅の均一性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、基板にパターンを露光する露光方法が提供される。この露光方法は、その基板の表面に複数の第1のラインパターンを含む第1の周期的パターンを露光することと、その基板の表面のその第1の周期的パターンの複数の第1のラインパターンの間に配置される複数の第2のラインパターンを含む第2の周期的パターンを、その第1のラインパターンの線幅とその第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように露光することと、を含むものである。
【0007】
また、本発明の第2の態様によれば、本発明の露光方法を用いて、基板にデバイス用パターンを露光することと、そのデバイス用パターンが露光されたその基板をそのデバイス用パターンに基づいて加工することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、基板にパターンを形成するパターン形成方法が提供される。このパターン形成方法は、その基板の表面に複数の第1のラインパターンを含む第1の周期的パターンを形成することと、その基板の表面のその第1の周期的パターンの複数の第1のラインパターンの間に配置される複数の第2のラインパターンを含む第2の周期的パターンを、その第1のラインパターンの線幅とその第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように形成することと、を含むものである。
【0008】
また、本発明の第4の態様によれば、本発明のパターン形成方法を用いて、基板にデバイス用パターンを形成することを含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の第2のラインパターンを含む第2の周期的パターンが、複数の第1のラインパターンの線幅と複数の第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように露光又は形成される。従って、複数の第1のラインパターンの線幅と複数の第2のラインパターンの線幅との平均値が目標とする線幅に近づくため、複数の第1のラインパターンと複数の第2のラインパターンとの間のスペース部の幅も目標とする幅に近づいて、スペース部の幅の均一性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)は実施形態で使用されるパターン形成システムの要部を示すブロック図、図1(B)は図1(A)中の露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】L&Sパターンの一部を示す拡大断面図である。
【図3】正の相関を持つ第1及び第2のラインパターンの線幅の分布の一例を示す図である。
【図4】図4(A)、図4(B)、及び図4(C)はそれぞれ正の相関を持つ第1及び第2のラインパターンの線幅の変化の一例を示す図である。
【図5】図5(A)、図5(B)、及び図5(C)はそれぞれ第1の実施形態の負の相関を持つ第1及び第2のラインパターンの線幅の変化の一例を示す図である。
【図6】第1の実施形態のパターン形成方法を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態におけるウエハ表面のパターンの変化を示す拡大断面図であり、図7(A)はポジレジストが塗布されたウエハを示す図、図7(B)は現像後に形成されるレジストパターンを示す図、図7(C)はエッチング後に形成されるパターンを示す図、図7(D)はネガレジストが塗布されたウエハを示す図である。
【図8】図7(D)に続くウエハの表面のパターンの変化を示す拡大平面図であり、図8(A)はウエハに露光されるL&Sパターンの像を示す図、図8(B)は現像後に形成されるレジストパターンを示す図、図8(C)はエッチング後に形成されるパターンを示す図、図8(D)はハードマスク及びレジストが剥離された後のL&Sパターンを示す図である。
【図9】第2の実施形態のパターン形成方法を示すフローチャートである。
【図10】図10(A)はウエハのショット領域単位のL&Sパターンの線幅分布の一例を示す平面図、図10(B)は一つのショット領域内のL&Sパターンの線幅分布の一例を示す拡大図である。
【図11】第2の実施形態におけるウエハ表面のパターンの変化を示す拡大平面図であり、図11(A)はポジレジストに露光されるL&Sパターンの像を示す図、図11(B)は現像後に形成されるレジストパターンを示す図、図11(C)はエッチング後に形成されるパターンを示す図、図11(D)はハードマスク及びレジストが剥離された後のL&Sパターンを示す図である。
【図12】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態につき図1〜図8を参照して説明する。
図1(A)は、本実施形態のパターン形成システムの要部を示すブロック図、図1(B)は、図1(A)中のスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査型の露光装置(投影露光装置)100の概略構成を示す図である。図1(A)において、パターン形成システムは、露光装置100、ウエハ(基板)に対するフォトレジスト(感光材料)の塗布及び現像を行うコータ・デベロッパ200、ウエハのエッチングを行うエッチング装置300、薄膜形成装置(不図示)、及びこれらの装置間でウエハの搬送を行う搬送機構(不図示)等を含んでいる。
【0012】
図1(B)において、露光装置100は、照明系10と、照明系10からの露光用の照明光(露光光)ILにより照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRSTと、レチクルRから射出された照明光ILをウエハWの表面に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPUと、ウエハWを保持するウエハステージWSTとを備えている。露光装置100は、装置全体の動作を統括的に制御するコンピュータよりなる主制御装置(不図示)、及びウエハWの表面に形成されるパターンのピッチ及び線幅等を計測する例えばスキャタロメトリ(Scatterometry) 方式の線幅計測装置22等も備えている。以下、投影光学系PLの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向にY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向にX軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸の回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0013】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されるように、光源と、照明光学系とを含み、照明光学系は、オプティカルインテグレータ(フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、回折光学素子など)等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド(可変視野絞り)等(いずれも不図示)を有する。照明系10は、レチクルブラインドで規定されたレチクルRのパターン面(下面)のX方向に細長いスリット状の照明領域IARを照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。
【0014】
照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。なお、照明光としては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波、又は水銀ランプの輝線(i線等)なども使用できる。
照明系10は、露光中にウエハWに対する露光量を計測するために、照明光から分岐した光束の光量を計測する光電検出器よりなるインテグレータセンサISも備えている。このインテグレータセンサISの計測値と、ウエハW上の照明光ILの照度(パルスエネルギー)との関係は予め計測して記憶されている。露光量制御系(不図示)は、露光中にウエハWの各点に対する積算露光量が目標露光量となるように、インテグレータセンサISの計測値に基づいて照明光ILのパルスエネルギー等を制御する。
【0015】
レチクルRを真空吸着等により保持するレチクルステージRSTは、レチクルベース(不図示)のXY平面に平行な上面に、Y方向に一定速度で移動可能に、かつX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角が調整可能に載置されている。レチクルステージRSTの位置情報は、複数軸のレーザ干渉計を含むレチクル干渉計18によって、移動鏡15(又はステージの鏡面加工された側面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計18の計測値に基づいてリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系(不図示)を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度が制御される。
【0016】
また、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒24と、該鏡筒24内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。レチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してレチクルRの照明領域IAR内の回路パターンの像が、ウエハWの一つのショット領域内の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。本実施形態のウエハW(基板)は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等からなる直径が200mm、300mm、又は450mm程度の円板状の基材の表面にパターン形成用の薄膜(金属膜、ポリシリコン膜等)を形成したものを含む。さらに、露光対象のウエハWの表面には、フォトレジスト(感光材料)が所定の厚さ(例えば40nm〜200nm程度)で塗布される。
【0017】
また、露光装置100は、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ26を保持する鏡筒24の下端部周囲を取り囲むように、先端レンズ26とウエハWとの間に液体Lqを供給するための局所液浸装置30の一部を構成するノズルユニット32が設けられている。ノズルユニット32の液体Lqの供給口は、供給流路及び供給管31Aを介して液体供給装置(不図示)に接続されている。ノズルユニット32の液体Lqの回収口は、回収流路及び回収管31Bを介して液体回収装置(不図示)に接続されている。局所液浸装置30の詳細な構成は、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書等に開示されている。
【0018】
また、ウエハステージWSTは、ベース盤12のXY平面に平行な上面12aに、X方向、Y方向に移動可能に載置されている。ウエハステージWSTは、ステージ本体20と、ステージ本体20の上面に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体20内に設けられて、ステージ本体20に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx方向、θy方向のチルト角を相対的に駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBには、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。ウエハテーブルWTBの上面のウエハホルダ(ウエハW)の周囲には、ウエハ表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面を有する平板状のプレート(撥液板)28が設けられている。
【0019】
また、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成で、ウエハWの表面の複数の計測点のZ方向の位置を計測する斜入射方式のオートフォーカスセンサ(不図示)が設けられている。露光中に、このオートフォーカスセンサの計測値に基づいて、ウエハWの表面が投影光学系PLの像面に合焦されるように、ウエハステージWSTのZ・レベリング機構が駆動される。
【0020】
また、ウエハテーブルWTBのY方向及びX方向の端面には、それぞれ鏡面加工によって反射面が形成されている。ウエハ干渉計16を構成する複数軸のレーザ干渉計からその反射面(移動鏡でもよい)にそれぞれ干渉計ビームを投射することで、ウエハステージWSTの位置情報(少なくともX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角を含む)が例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で計測されている。この計測値に基づいてリニアモータ等を含むウエハステージ駆動系(不図示)を制御することで、ウエハステージWSTの位置及び速度が制御される。なお、ウエハステージWSTの位置情報は、回折格子状のスケールと検出ヘッドとを有するエンコーダ方式の検出装置で計測してもよい。
【0021】
また、露光装置100は、ウエハWの所定のアライメントマークの位置を計測するアライメント系AL、及びレチクルRのアライメントマークの投影光学系PLによる像の位置を計測するために、ウエハステージWSTに内蔵された空間像計測系(不図示)を備えている。これらの空間像計測系及びアライメント系ALを用いて、レチクルRとウエハWの各ショット領域とのアライメントが行われる。
【0022】
ウエハWの露光時には、ウエハステージWSTをX方向、Y方向にステップ移動することで、ウエハWの露光対象のショット領域が露光領域IAの手前に移動する。また、局所液浸装置30から投影光学系PLとウエハWとの間に液体Lqが供給される。そして、レチクルRのパターンの一部の投影光学系PLによる像をウエハWの一つのショット領域に投影しつつ、レチクルステージRST及びウエハステージWSTを介してレチクルR及びウエハWをY方向に同期して移動することで、当該ショット領域にレチクルRのパターンの像が走査露光される。そのステップ移動と走査露光とを繰り返すことによって、ステップ・アンド・スキャン方式及び液浸方式で、ウエハWの各ショット領域にそれぞれレチクルRのパターンの像が露光される。
【0023】
次に、本実施形態においてダブルパターニング法の一つであるピッチ分割法(Pitch Splitting Method)を用いて形成するL&Sパターン(ライン・アンド・スペースパターン)の構成例につき説明する。
図2は、本実施形態で形成するL&Sパターン52の一部を示す拡大断面図である。図2において、基材36の表面のデバイス層に、図2の紙面に平行な周期方向(これをX方向とする)に交互に形成された、それぞれ図2の紙面に垂直な方向(Y方向)に細長い複数の第1のラインパターン38A及び複数の第2のラインパターン38BからL&Sパターン52が構成されている。一例として、ピッチ分割法の1回目のパターン形成工程で形成される複数のラインパターンをマスクとして複数の第1のラインパターン38Aが形成され、ピッチ分割法の2回目のパターン形成工程で形成される複数のラインパターンをマスクとして複数の第2のラインパターン38Bが形成されるものとする。また、第1のラインパターン38A及び第2のラインパターン38BのそれぞれのX方向の線幅をL1及びL2とする。
【0024】
ラインパターン38AのX方向のピッチ(周期)をPとすると、ラインパターン38BのX方向のピッチもPに等しい。ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2の目標値はそれぞれP/4である。この場合、L&Sパターン52にとっては、ラインパターン38A及び38Bは互いに等価であり、L&Sパターン52のX方向のピッチはP/2である。なお、第1のラインパターン38Aを基準にすると、第2のラインパターン38Bの−X方向のエッジは、目標とする位置PB(ラインパターン38Aの−X方向のエッジからP/2だけずれた位置)に対して重ね合わせ誤差に相当する位置オフセットOLだけX方向にずれている。
【0025】
また、+X方向に向かってラインパターン38Aとラインパターン38Bとの間の空間を第1のスペース部50A、ラインパターン38Bとラインパターン38Aとの間の空間を第2のスペース部50Bと呼ぶ。そして、スペース部50A及び50BのそれぞれのX方向の幅をS1及びS2とする。スペース部50A,50Bの幅S1,S2の目標値はそれぞれP/4である。一例として、第1のラインパターン38AのピッチPを128nmとすると、L&Sパターン52のX方向のピッチは露光装置100の解像限界をほぼ超える64nmであり、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2の目標値は32nm、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の目標値も32nmである。
【0026】
また、従来のピッチ分割法では、1回目及び2回目のパターン形成工程で使用される露光装置100の露光条件はほぼ同じであるため、L&Sパターン52中の第1のラインパターン38Aの線幅L1と第2のラインパターン38Bの線幅L2との間には正の相関がある。実際に多数のL&Sパターン52について線幅L1及びL2を計測した結果、図3に示すように、線幅L1と線幅L2との間には相関係数Rがほぼ0.509(R2=0.2589)の正の相関があった。なお、図3において、横軸xは線幅L2[nm]であり、縦軸yは線幅L1[nm]である。
【0027】
図4(A)〜図4(C)は、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2間に正の相関があるときのスペース部50A,50Bの幅S1,S2の変化の一例を示す。図4(A)に示すように、線幅L1,L2が目標値L0(=P/4)であり、幅S1,S2も目標値S0(=P/4)である状態を基準とする。このとき、図4(B)に示すように、ラインパターン38Aの線幅L1が狭くなると、正の相関によって、ラインパターン38Bの線幅L2も狭くなりやすい。従って、スペース部50A,50Bの幅S1,S2はともに目標値S0よりも広くなりやすい。一方、図4(C)に示すように、ラインパターン38Aの線幅L1が広くなると、正の相関によって、ラインパターン38Bの線幅L2も広くなりやすい。従って、スペース部50A,50Bの幅S1,S2はともに目標値S0よりも狭くなりやすい。従って、線幅L1,L2間に正の相関があると、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の線幅のばらつきが大きくなり、幅S1,S2の均一性が低下する。
【0028】
これに対して、図5(A)〜図5(C)は、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2間に負の相関があるときのスペース部50A,50Bの幅S1,S2の変化の一例を示す。図5(A)に示すように、線幅L1,L2が目標値L0(=P/4)であり、幅S1,S2も目標値S0(=P/4)である状態を基準とする。このとき、図5(B)に示すように、ラインパターン38Aの線幅L1が狭くなると、負の相関によって、ラインパターン38Bの線幅L2は広くなりやすい。従って、スペース部50A,50Bの幅S1,S2はともに目標値S0付近にある。一方、図5(C)に示すように、ラインパターン38Aの線幅L1が広くなると、負の相関によって、ラインパターン38Bの線幅L2は狭くなりやすい。従って、スペース部50A,50Bの幅S1,S2はともに目標値S0付近にある。従って、線幅L1,L2間に負の相関があると、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の線幅のばらつきが小さくなり、幅S1,S2の均一性が向上する。さらに、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2間に負の相関があっても、線幅L1,L2の均一性は変化しない。
【0029】
ここで、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の均一性を線幅L1,L2間の相関係数c(L1,L2)を用いて評価する。図2において、スペース部50A,50Bの幅S1,S2はそれぞれ次のように表される。
S1=P/2−(L1+L2)/2+OL …(1)
S2=P/2−(L1+L2)/2−OL …(2)
また、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2の標準偏差の3倍(3σ)をそれぞれΔCD1,ΔCD2として、位置オフセットOLの平均値を<mOL>、位置オフセットOLの標準偏差の3倍をΔOLとする。このとき、相関係数c(L1,L2)を用いると、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の個々の標準偏差の3倍の合成値ΔCDspace は次のようになる。この合成値ΔCDspace は、幅S1,S2の均一性を定量的に表している。
【0030】

式(3)より、相関係数c(L1,L2)が正の場合には、線幅L1,L2の相関を考慮しない場合に比べて合成値ΔCDspace が大きくなり、幅S1,S2の均一性が低下することが分かる。一方、相関係数c(L1,L2)が負の場合には、線幅L1,L2の相関を考慮しない場合に比べて合成値ΔCDspace が小さくなり、幅S1,S2の均一性が向上することが分かる。そこで、本実施形態では、ピッチ分割法を適用する際に、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2が負の相関を持つようにする。図3の相関係数はほぼ0.5であるため、一例として相関係数c(L1,L2)は次のように−0.5以下であることが好ましい。
【0031】
−0.5≧c(L1,L2)≧−1 …(4)
これによって、スペース部50A,50Bの幅S1,S2の均一性を表す式(3)の合成値ΔCDspace の2乗は2(ΔCD1/2)(ΔCD2/2)以上低減(改善)される。線幅L1,L2の分布が図3の場合には、(ΔCD1/2)及び(ΔCD2/2)はほぼ0.9nmであり、合成値ΔCDspace の改善量はほぼ0.25nm以上である。
【0032】
また、本実施形態では、ラインパターン38A,38Bの線幅L1,L2が負の相関を持つように、ラインパターン38Aを形成するためのマスクパターンを形成する際に使用するフォトレジストと、ラインパターン38Bを形成するためのマスクパターンを形成する際に使用するフォトレジストとのポジ・ネガの特性を逆にする。
以下、本実施形態のパターン形成システムを用いるパターン形成方法の一例につき図6のフローチャートを参照して説明する。この場合、最終的に形成されるL&Sパターンの各ラインパターンの線幅をdとして、ピッチ(図2のP/2に相当する)を2dとする。一例として、ピッチ2dは64nm(線幅dは32nm)である。
【0033】
まず、図6のステップ102において、不図示の薄膜形成装置を用いて、図7(A)に示すように、シリコン又はSOI等の基材36の表面にデバイス層38、ハードマスク層40を形成してウエハWを作製する。次のステップ104において、ウエハWを図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送して、図7(A)に示すように、ウエハWのハードマスク層40の表面にポジ型のフォトレジスト(ポジレジスト)42Pを塗布する。
【0034】
次のステップ106において、ポジレジスト42Pが塗布されたウエハWを図1(B)の露光装置100のウエハステージWSTにロードする。露光装置100のレチクルステージRSTにロードされたレチクルRには、遮光膜よりなり線幅が2d×(1/β)(βは投影倍率)の複数のラインパターンをピッチ4d×(1/β)でX方向に配列してなるL&Sパターンが形成されている。レチクルRには複数のアライメントマーク(不図示)も形成されている。アライメントの後、露光装置100を用いて、ウエハWの各ショット領域のポジレジスト42PにレチクルRのL&Sパターンの像を露光する。図7(A)に示すように、ウエハWのポジレジスト42Pは、X方向にピッチ4dの正弦波状の実線の光量分布44で表されるL&Sパターンの像54で露光される。像54の露光量は、1ピッチ内で感光される部分(現像後に溶解する部分)46の幅が3dで、感光されない部分(以下、ラインパターン部と呼ぶ)46Lの幅がdとなるように設定される。
【0035】
次のステップ108において、露光後のウエハWを露光装置100から図1(A)のコータ・デベロッパ200に搬送し、ウエハWのポジレジスト42Pの現像を行う。ウエハWにおいて、像54の周期方向をX方向とする。これによって、図7(B)に示すように、ウエハWのハードマスク層40の表面に、幅dの多数のライン状のレジストパターン42PAをX方向にピッチ4dで配列したL&Sパターンが形成される。
【0036】
次のステップ110において、ウエハWを図1(A)のエッチング装置300に搬送し、ウエハWのレジストパターン42PAをマスクとしてハードマスク層40のエッチングを行う。これにより、図7(C)に示すように、ウエハWのデバイス層38の表面に、レジストパターン42PAと同じ位置に同じ線幅dで形成された多数のハードマスクのラインパターン40AをX方向にピッチ4dで配列したL&Sパターン54Aが形成される。次のステップ112において、ウエハWのL&Sパターン54Aの上部のレジストパターン42PAが剥離される。
【0037】
次のステップ114において、コータ・デベロッパ200において、ウエハWのハードマスクの多数のラインパターン40Aを覆うように、ネガ型のフォトレジスト(ネガレジスト)42Nを塗布する。次のステップ116において、ネガレジスト42Nが塗布されたウエハWを露光装置100のウエハステージWSTにロードして、レチクルRとウエハWとのアライメントを行う。そして、露光装置100を用いて、ウエハWの各ショット領域のネガレジスト42NにレチクルRのL&Sパターンの像を露光する。図8(A)に示すように、ウエハWのネガレジスト42Nは、図7(A)の場合と同じ実線の光量分布44で表されるL&Sパターンの像56で露光される。像56の露光量は、1ピッチ内で感光される部分(以下、ラインパターン部と呼ぶ)48Lの幅がdで、感光されない部分(現像後に溶解される部分)の幅が3dとなるように設定される。さらに、各ラインパターン部48Lがハードマスクの2つの隣接するラインパターン40Aの中央に位置するようにアライメントが行われている。
【0038】
次のステップ118において、露光後のウエハWを露光装置100からコータ・デベロッパ200に搬送し、ウエハWのネガレジスト42Nの現像を行う。これによって、図8(B)に示すように、ウエハWのデバイス層38の表面のX方向にピッチ4dで配列されたハードマスクの多数のラインパターン40Aの間にそれぞれ位置するように、幅dの多数のライン状のレジストパターン42NAをX方向にピッチ4dで配列したL&Sパターン56Aが形成される。
【0039】
次のステップ120において、ウエハWをエッチング装置300に搬送し、ウエハWのハードマスクのラインパターン40A及びレジストパターン42NA(レジストのラインパターン)をマスクとしてデバイス層38のエッチングを行う。これにより、図8(C)に示すように、ラインパターン40A及びレジストパターン42NAと同じ位置に同じ線幅dで形成された多数のデバイス用の第1及び第2のラインパターン38A及び38Bを、X方向に間隔dで配列したL&Sパターン52が形成される。次のステップ122において、ウエハWのL&Sパターン52の上部のレジストパターン42NA及びハードマスクのラインパターン40Aが剥離されて、L&Sパターン52が完成する。L&Sパターン52は、ピッチ2d(図2のピッチP/2に相当する)のパターンであり、+X方向に向かって第1のラインパターン38Aと第2のラインパターン38Bとの間が幅dの第1のスペース部50A、第2のラインパターン38Bと第1のラインパターン38Aとの間が幅dの第2のスペース部50Bである。
【0040】
L&Sパターン52のラインパターンの線幅に影響する要因の一つは露光装置100における露光量むら(積算露光量の目標値に対する誤差の分布)であると考えられる。また、図6のパターン製造工程において、ステップ106及びステップ116では同じ露光装置100において、互いに同じレチクルRのパターンの像が互いに同じ露光条件でウエハWの各ショット領域に露光される。従って、ステップ106における露光量むらとステップ116における露光量むらとはほぼ同じ傾向を持つと考えられる。
【0041】
そこで、ステップ106において、ウエハWの或るショット領域の或る部分を露光しているときに、図7(A)の点線の光量分布44Oで示すように露光量が増大する場合、図7(B)に示すように、現像後に形成されるポジ型のレジストパターン42POの線幅は(d−δ)に狭くなる。
この場合、ステップ116においても、ウエハWの同じショット領域の同じ部分を露光しているときに、図8(A)の点線の光量分布44Oで示すように露光量は増大する傾向がある。ところが、露光対象がネガレジスト42Nであるため、図8(B)に示すように現像後に形成される点線のレジストパターン42NOの線幅はほぼ(d+δ)に太くなる。また、図7(B)のレジストパターン42PAの線幅は、最終的に形成されるL&Sパターン52の第1のラインパターン38Aの線幅とほぼ同じであり、図8(B)のレジストパターン42NAの線幅は、最終的に形成されるL&Sパターン52の第2のラインパターン38Bの線幅とほぼ同じである。従って、第1のラインパターン38Aの線幅と第2のラインパターン38Bの線幅とは負の相関を持つようになるため、図5(A)〜図5(C)を参照して説明したように、ラインパターン38A,38B間のスペース部50A,50Bの幅の均一性が向上する。
【0042】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態のパターン形成方法中で露光装置100を用いる露光方法が使用されている。本実施形態の露光方法は、ウエハW(基板)に最終的にL&Sパターン52を形成するためのパターンを露光する露光方法である。この露光方法は、ウエハWの表面に複数のラインパターン部46L(第1のラインパターン)を含むL&Sパターンの像54(第1の周期的パターン)を露光するステップ104,106と、ウエハWの表面の複数のラインパターン部46L(ラインパターン40A)の間に配置される複数のラインパターン部48L(第2のラインパターン)を含むL&Sパターンの像56(第2の周期的パターン)を、ラインパターン部46Lの線幅とラインパターン部48Lの線幅とが負の相関を持つように露光するステップ114,116とを含んでいる。
【0043】
また、本実施形態のパターン形成システムを用いるパターン形成方法は、ウエハW(基板)にL&Sパターン52を形成するためのパターンを形成するパターン形成方法である。このパターン形成方法は、ウエハWの表面に複数のラインパターン40A(第1のラインパターン)を含むL&Sパターン54A(第1の周期的パターン)を形成するステップ102〜112と、ウエハWの表面の複数のラインパターン40Aの間に配置される複数のライン状のレジストパターン42NA(第2のラインパターン)を含むL&Sパターン56A(第2の周期的パターン)を、ラインパターン40Aの線幅とレジストパターン42NAの線幅とが負の相関を持つように形成するステップ114〜118とを含んでいる。
【0044】
本実施形態の露光方法によれば、複数のラインパターン部48Lを含むL&Sパターンの像56が、複数のラインパターン部46Lの線幅と複数のラインパターン部48Lの線幅とが負の相関を持つように露光される。そして、最終的にラインパターン部46L及び48Lに基づいてそれぞれL&Sパターン52のラインパターン38A及び38Bが形成される。また、本実施形態のパターン形成方法によれば、複数のレジストパターン42NAを含むL&Sパターン56Aが、複数のラインパターン40Aの線幅と複数のレジストパターン42NAの線幅とが負の相関を持つように形成される。そして、最終的にラインパターン40A及びレジストパターン42NAに基づいてそれぞれL&Sパターン52のラインパターン38A及び38Bが形成される。
【0045】
従って、最終的にウエハWに形成されるL&Sパターン52の第1のラインパターン38Aの線幅と第2のラインパターン38Bの線幅との平均値が目標値に近づくため、ラインパターン38A,38Bの間のスペース部50A,50Bの幅も目標値に近づいて、スペース部50A,50Bの幅の均一性が向上する。
(2)また、ラインパターン部46Lの線幅とラインパターン部48Lの線幅とが負の相関を持つように、ひいてはラインパターン40Aの線幅とレジストパターン42NAの線幅とが負の相関を持つようにするために、ラインパターン部46L(ラインパターン40A)を形成するときにポジレジスト42Pを使用し、ラインパターン部48L(ラインパターン40NA)を形成するときにネガレジスト42Nを使用している。従って、露光装置100の露光条件を同一にしたままで、容易に2つのパターン部(パターン)の線幅の相関を逆にできる。
【0046】
なお、ラインパターン部46L(ラインパターン40A)を形成するときにネガレジストを使用し、ラインパターン部48L(ラインパターン40NA)を形成するときにポジレジストを使用しても、同様に2つのパターン部(パターン)の線幅の相関を逆にできる。
また、本実施形態において、ポジレジスト42P及び/又はネガレジスト42Nは、それぞれ多層レジスト膜であってもよい。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態につき図9〜図11を参照して説明する。図9において図6に対応する工程には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、図11(A)〜図11(D)において、図8(A)〜図8(D)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態においても、図1(A)のパターン形成システム及び図1(B)の露光装置100を使用する。
【0048】
以下、本実施形態のパターン形成方法の一例につき図9のフローチャートを参照して説明する。図9のステップ102〜112の動作は図6のステップ102〜112の動作と同じである。これによって、図11(A)に示すように、ウエハ(W1とする)の基材36の上面のデバイス層38の表面に、ハードマスクよりなる線幅d(目標値)の多数のラインパターン40A(L&Sパターン54A)がX方向にピッチ4dで形成される。
【0049】
図9のステップ112に続くステップ130において、L&Sパターン54Aが形成されたウエハW1(この段階ではフォトレジストは塗布されていない)を図1(B)の露光装置100のウエハステージWSTにロードし、線幅計測装置22によってウエハW1のショット領域毎に所定位置にある複数のラインパターン40Aの線幅を計測し、その線幅の平均値dmを求める。
【0050】
図10(A)は、ウエハW1のショット領域SAi(i=1〜I:Iは数10のオーダの整数)毎の、複数のラインパターン40Aの線幅の計測値の平均値dmの分布を示す。図10(A)において、ショット領域SAiに付された斜線又は濃度に対応する数値(d0+k・δ1)(k=−3〜3)は、当該ショット領域SAiの線幅の平均値dmを表している。より正確には、線幅の平均値dmは以下の範囲にある。
【0051】
d0+(k−0.5)δ1≦dm<d0+(k+0.5)δ1 …(5)
最終的にウエハW1に形成されるL&Sパターンのピッチ(2d)を64nmとした場合、一例として、式(5)中の線幅の中央値d0は32nm程度であり、線幅の変化量δ1は0.3nm程度である。
さらに、露光装置100の主制御装置(不図示)は、計測された線幅の平均値dmからウエハW1のショット領域SAi毎の実際の露光量(露光量むら)を求める。本実施形態では、ラインパターン40Aを形成するためにステップ104でポジレジスト42Pが使用されており、図7(A)及び図7(B)を参照して説明したように、露光量が目標露光量よりも大きいと、ラインパターン40Aの線幅は狭くなり、露光量が目標露光量より小さいと、ラインパターン40Aの線幅は広くなる。また、簡単のために、或るショット領域SAiの線幅の平均値dmがほぼ以下の値であるとする。なお、k‘は例えば整数である。
【0052】
dm=d0+k‘・δ1 …(6A)
このとき、ステップ106におけるショット領域SAiの実際の露光量(平均積算露光量)Emは、ほぼ次の値であったと推定する。なお、E0は目標露光量、δE1は線幅がδ1だけ狭くなったときの露光量の増加分である。
Em=E0−k‘・δE1 …(7A)
次に、図9のステップ132において、露光装置100の主制御装置(不図示)は、ウエハW1のショット領域SAi毎の目標露光量の補正値を計算する。本実施形態においても、1回目の露光で形成されるラインパターンの線幅と2回目の露光で形成されるラインパターンの線幅との相関を負にするものとする。このためには、当該ショット領域SAiで2回目に形成されるラインパターンの線幅の平均値dm‘を次のように設定すればよい。
【0053】
dm‘=d0−k’・δ1 …(6B)
さらに、本実施形態では、後述のように2回目の露光時にもポジレジストを使用するため、ショット領域SAiに対する目標露光量Em‘は、式(7A)に対応して次のように設定すればよい。
Em‘=E0+k’・δE1 …(7B)
従って、ショット領域SAiにおける2回目の露光時の露光量の補正値はk‘・δE1となる。これは、1回目の露光時の露光量むらに対して、2回目の露光時の露光量むらを逆の分布に設定することを意味する。
【0054】
次のステップ134において、コータ・デベロッパ200において、ウエハW1のハードマスクの多数のラインパターン40Aを覆うように、ポジ型のフォトレジスト(ポジレジスト)43Pを塗布する。次のステップ136において、ポジレジスト43Pが塗布されたウエハW1を露光装置100のウエハステージWSTにロードして、レチクルRとウエハW1とのアライメントを行う。そして、露光装置100を用いて、ウエハW1の各ショット領域のポジレジスト43PにレチクルRのL&Sパターンの像を露光する。図11(A)に示すように、ウエハW1のポジレジスト43Pは、図7(A)の場合と同じ光量分布で相対位置がずれた実線の光量分布44Sで表されるL&Sパターンの像54Sで露光される。像54Sの露光量は、1ピッチ内で感光される部分(現像後に溶解される部分)46Sの幅が3dで、感光されない部分(以下、ラインパターン部と呼ぶ)46SLの幅がdとなるように設定されている。より正確には、各ショット領域SAiの露光量の目標値は式(7B)に応じて補正されている。さらに、各ラインパターン部46SLがハードマスクの2つの隣接するラインパターン40Aの中央に位置するようにアライメントが行われている。
【0055】
次のステップ138において、露光後のウエハW1を露光装置100からコータ・デベロッパ200に搬送し、ウエハW1のポジレジスト43Pの現像を行う。これによって、図11(B)に示すように、ウエハW1のデバイス層38の表面のX方向にピッチ4dで配列された多数のラインパターン40A(ハードマスク)の間に位置するように、幅dの多数のライン状のレジストパターン43PAをX方向にピッチ4dで配列したL&Sパターン54SAが形成される。
【0056】
次のステップ140において、ウエハW1をエッチング装置300に搬送し、ウエハW1のハードマスクのラインパターン40A及びレジストパターン43PA(レジストのラインパターン)をマスクとしてデバイス層38のエッチングを行う。これにより、図11(C)に示すように、ラインパターン40A及びレジストパターン43PAと同じ位置に同じ線幅dで形成された多数のデバイス用の第1及び第2のラインパターン38A及び38Bを、X方向に間隔dで配列したL&Sパターン52が形成される。次のステップ142において、ウエハWのL&Sパターン52の上部のレジストパターン43PA及びハードマスクのラインパターン40Aが剥離されて、図11(D)のL&Sパターン52が完成する。
【0057】
本実施形態のステップ106において、ウエハW1の或るショット領域を露光しているときに、図7(A)の点線の光量分布44Oで示すように露光量が増大する場合、図7(B)に示すように、現像後に形成されるポジ型のレジストパターン42POの線幅は(d−δ)まで狭くなる。
この場合、本実施形態では、ステップ134でウエハW1の同じショット領域を露光するときの露光量は、図11(A)の点線の光量分布44SUで示すように減少する。従って、図11(B)に示すように現像後に形成されるレジストパターン43PUの線幅はほぼ(d+δ)まで太くなる。従って、最終的に形成されるL&Sパターン52の第1のラインパターン38Aの線幅と第2のラインパターン38Bの線幅とは負の相関を持つため、第1の実施形態と同様に、図11(D)のラインパターン38A,38B間のスペース部50A,50Bの幅の均一性が向上する。
【0058】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光方法を含むパターン形成方法では、複数のラインパターン部46Lの線幅と複数のラインパターン部46SLの線幅とに負の相関を持たせるために、さらに複数のラインパターン40Aの線幅と複数のラインパターン43PUの線幅とに負の相関を持たせるために、L&Sパターンの像54(第1の周期的パターン)を露光するステップ106と、L&Sパターンの像54S(第2の周期的パターン)を露光するときとで、ウエハW1の露光量むらの分布をほぼ逆にしている。
【0059】
従って、2回の露光で同じ種類のフォトレジスト(ポジレジスト)を使用しても、最終的に形成されるL&Sパターン52のラインパターン38A,38Bの線幅に負の相関を持たせることができ、スペース部50A,50Bの幅の均一性を向上できる。
なお、1回目の露光と2回目の露光とで、ネガレジストを使用することも可能である。
(2)また、本実施形態では、1回目の露光後に、線幅計測装置22を用いてウエハW1のショット領域SAi毎の所定の複数のラインパターン40Aの線幅を計測し、この計測結果から露光量むらを求め(ステップ130)、その露光量むらに基づいて2回目の露光時のショット領域SAi毎の露光量の補正量を求めている(ステップ132)。従って、ラインパターン40Aの線幅の計測値から正確に露光量むらを求めることができ、最終的に形成されるラインパターン38A,38Bの線幅に高精度に負の相関を持たせることができる。
【0060】
なお、本実施形態では以下のような変形が可能である。本実施形態では、ウエハW1のショット領域SAi毎に露光量むらを求めている。しかしながら、図9のステップ130に対応する工程において、図10(B)に示すように、ウエハW1の所定のショット領域SAi内の例えば10行×10列程度に設定された計測点付近で、それぞれ図11(A)の複数のラインパターン40Aの線幅を計測してもよい。図10(B)には、各計測点付近で計測された線幅の平均値dmの分布の一例が表示されている。この場合、ショット領域SAi内の第1領域SAi1、第2領域SAi2、及び第3領域SAi3の平均値dmはそれぞれ近似的にd0+j・δ1+δ2,d0+j・δ1,d0+j・δ1―δ2である。なお、jは所定の整数であり、ウエハW1に形成されるL&Sパターン52のピッチ(2d)を64nmとした場合、一例として、線幅の中央値d0は32nm程度、線幅の変化量δ1は0.3nm程度、線幅の変化量δ2は0.15nm程度である。さらに、その線幅に対応させて、領域SAi1,SAi2,SAi3毎の平均的な露光量E0+δE11,E0+δE12,E0+δE12を求める。なお、E0は目標露光量である。
【0061】
この場合には、図9のステップ132に対応する工程において、ショット領域SAiを露光する際に、領域SAi1,SAi2,SAi3毎の露光量の補正値(E0に対する増減量)を−δE11,−δE12,−δE12に設定する。なお、露光装置100でショット領域SAiを露光する際に、ショット領域SAi内で部分的に露光量を制御するためには、一例として照明系10内のレチクルブラインドの走査方向の幅を部分的に制御して、ウエハの表面の露光領域IAのY方向(走査方向)の幅を部分的に変化させればよい。これによって、ショット領域SAi内で、最終的に形成されるL&Sパターン52のラインパターン38A,38Bの線幅の負の相関性を高めることができ、スペース部50A,50Bの幅の均一性が向上する。
【0062】
また、上記の実施形態は、本発明をピッチ分割法を用いる場合に適用したものである。しかしながら、本発明は二重露光法を用いて露光装置100の解像限界を超える微細なL&Sパターンを形成する場合にも適用可能である。二重露光法に本発明を適用する場合には、1回目のL&Sパターンの像の露光時に、例えば図1(B)の露光装置100のインテグレータセンサISを用いてショット領域毎の露光量の誤差(露光量むら)を計測し、2回目のL&Sパターンの像の露光時に、露光量の補正値を、その露光量の誤差の符号を反転した値に設定すればよい。
【0063】
また、上記の実施形態の露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図12に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材に薄膜を形成して基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光方法によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0064】
また、この製造工程中で、上記の実施形態のパターン形成方法も使用されている。この場合、上記の実施形態の露光方法又はパターン形成方法によれば、露光装置の解像限界を超える微細な周期的パターンのスペース部の幅の均一性を向上できるため、露光装置の解像度を超える微細なパターンを有する電子デバイスを高精度に製造できる。
なお、本発明は、走査露光型の投影露光装置のみならず、一括露光型(ステッパー型)の投影露光装置を用いて露光する場合にも適用することが可能である。また、本発明は、液浸型の露光装置で露光を行う場合の他に、ドライ型の露光装置で露光する場合にも適用できる。さらに、本発明は、波長数nm〜100nm程度の極端紫外光(EUV光)を露光ビームとして用いる投影露光装置で露光を行う場合にも適用できる。
【0065】
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置の製造プロセスや、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスの製造プロセスにも広く適用できる。
【0066】
このように、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
R…レチクル、W…ウエハ(基板)、36…基材、38…デバイス層、38A…第1のラインパターン、38B…第2のラインパターン、40…ハードマスク層、40A…ラインパターン、42P…ポジ型のフォトレジスト、42N…ネガ型のフォトレジスト、42NA…レジストパターン、50A…第1のスペース部、50B…第2のスペース部、52…L&Sパターン、100…露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にパターンを露光する露光方法において、
前記基板の表面に複数の第1のラインパターンを含む第1の周期的パターンを露光することと、
前記基板の表面の前記第1の周期的パターンの前記複数の第1のラインパターンの間に配置される複数の第2のラインパターンを含む第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように露光することと、
を含む露光方法。
【請求項2】
前記第2の周期的パターンを露光するときの前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅との相関が−0.5以下である請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように露光することは、
前記第1の周期的パターンを露光するときに対して、前記基板の感光材料のポジ・ネガの特性を逆にして前記第2の周期的パターンを露光することである請求項1又は2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように露光することは、
前記第1の周期的パターンを露光するときに対して、前記基板の露光量むらの分布をほぼ逆にして前記第2の周期的パターンを露光することである請求項1又は2に記載の露光方法。
【請求項5】
前記第1の周期的パターンを露光するときに対して、前記基板の露光量むらの分布をほぼ逆にして前記第2の周期的パターンを露光することは、
前記基板の表面の複数の区画領域に前記第1の周期的パターンを露光した後で、前記基板の少なくとも一つの前記区画領域内に形成された前記複数の第1のラインパターンの線幅の分布を計測して、前記区画領域内の露光量むらを求めることと、
前記区画領域内の前記第1の周期的パターンの露光量むらとほぼ逆の分布になるように、前記第2の周期的パターンを前記基板の前記複数の区画領域に露光するときの露光量分布を設定することと、
を含む請求項4に記載の露光方法。
【請求項6】
前記第1の周期的パターンを露光するときに対して、前記基板の露光量むらの分布をほぼ逆にして前記第2の周期的パターンを露光することは、
前記基板の表面の複数の区画領域に前記第1の周期的パターンを露光した後で、前記基板の表面の前記複数の第1のラインパターンの線幅の分布を計測して、前記基板の表面の露光量むらを求めることと、
前記基板の表面の前記第1の周期的パターンの露光量むらとほぼ逆の分布になるように、前記第2の周期的パターンを前記基板の前記複数の区画領域に露光するときの前記区画領域毎の露光量分布を設定することと、
を含む請求項4に記載の露光方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光方法を用いて、基板にデバイス用パターンを露光することと、
前記デバイス用パターンが露光された前記基板を前記デバイス用パターンに基づいて加工することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項8】
基板にパターンを形成するパターン形成方法において、
前記基板の表面に複数の第1のラインパターンを含む第1の周期的パターンを形成することと、
前記基板の表面の前記第1の周期的パターンの前記複数の第1のラインパターンの間に配置される複数の第2のラインパターンを含む第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように形成することと、
を含むパターン形成方法。
【請求項9】
前記第2の周期的パターンを形成するときの前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅との相関が−0.5以下である請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように形成することは、
前記第1の周期的パターンを形成するときに対してポジ・ネガの特性が逆の感光材料を前記基板に塗布することを含む請求項8又は9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように形成することは、
前記第1の周期的パターンを形成するときに対して、前記基板の露光量むらの分布がほぼ逆になるように前記第2の周期的パターンに対応するパターンを前記基板に露光することを含む請求項8又は9に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記第2の周期的パターンを、前記第1のラインパターンの線幅と前記第2のラインパターンの線幅とが負の相関を持つように形成することは、
前記基板の表面の前記第1の周期的パターンの前記複数の第1のラインパターンの少なくとも一部の線幅を計測することと、
前記線幅の計測結果に基づいて、前記基板の表面に形成する前記第2の周期的パターンの前記複数の第2のラインパターンの線幅の目標値を設定することと、
を含む請求項8〜11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載のパターン形成方法を用いて、基板にデバイス用パターンを形成することを含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−249631(P2011−249631A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122321(P2010−122321)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】