露光装置、偏光変換部材及び露光方法
【課題】露光光をP偏光又はS偏光の直線偏光に変換する部材が複数本の棒状の偏光変換素子により構成されている場合に、露光パターン形成用領域に未露光の領域が残ることを防止できる露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法を提供する。
【解決手段】露光装置1は、露光光の照射位置に露光対象部材2を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する。露光装置1には、露光光を出射する光源11、露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材15、及びマスク部12が設けられている。偏光変換部材15は、特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の棒状の偏光変換素子がその幅方向に接触し境界面が露光対象部材2の移動方向に対して傾斜するように配置されたものである。
【解決手段】露光装置1は、露光光の照射位置に露光対象部材2を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する。露光装置1には、露光光を出射する光源11、露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材15、及びマスク部12が設けられている。偏光変換部材15は、特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の棒状の偏光変換素子がその幅方向に接触し境界面が露光対象部材2の移動方向に対して傾斜するように配置されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の偏光変換素子が複数本隣接するように配置され、P偏光又はS偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる偏光変換部材を有する露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法に関し、特に、偏光変換素子同士の境界が露光対象部材に投影されて未露光の領域が残存し、露光が不均一になることを防止する露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ等に使用されている液晶としては、複数個のベンゼン又はシクロヘキサン分子と両端部の修飾基からなる棒状の分子により構成されたものが使用されており、棒状の液晶分子を均一な方向に整列させることにより、液晶ディスプレイ等の視野角及びコントラスト等を調整することが行われている。
【0003】
液晶分子の整列には、従来、液晶を挟持するガラス基板の表面に例えばポリイミド等からなる配向膜を形成し、配向膜間に液晶を挟持することにより、配向膜の配向方向に合わせて液晶分子を所定の方向に整列させることが行われている。
【0004】
ガラス基板の表面に配向膜を形成する際には、例えばポリイミド溶液をガラス基板上に塗布・焼成して数十nm程度のポリイミド膜(配向材料膜)を形成した後、表面に布が巻き付けられたラビングローラにより、ポリイミド膜(配向材料膜)の表面を一方向に擦るという製造方法が採用されている。
【0005】
しかしながら、ガラス基板の表面に配向膜を形成して液晶分子を整列させる方法においては、配向膜の形成に上記のような製造方法を採用しているため、擦られてローラから離脱したラビング布及び削り取られたポリイミド膜等の塵により、配向膜が傷ついたり、塵そのものが配向膜の表面に付着してしまう。よって、液晶ディスプレイの表示ムラ及び表示不良につながりやすいという問題点がある。
【0006】
この問題点を解決するために、近時、配向材料膜の配向に紫外線を使用する光配向という技術が提案されている。即ち、直線偏光又は無偏光の紫外光をポリイミド又はアゾベンゼン等の配向材料膜に照射することにより、配向材料膜は、その光分解特性により、同一方向に配向する。従って、光による非接触方式により配向性のよい配向膜を形成することができ、液晶ディスプレイ等の表示ムラ及び表示不良を防止できる。
【0007】
ところで、近時、3D(Three Dimensional)ディスプレイ装置の開発がますます進んでいるが、この3Dディスプレイのガラス基板の表面に貼る偏光フィルムの製造においても、上記光配向の技術が採用されている(例えば特許文献1)。図14に示すように、従来の配向膜の形成に使用される露光装置10においては、光源11から出射された露光光は、例えば反射ミラー17により反射された後、フライアイレンズ(インテグレータ)13にてその強度を光軸に垂直な面内で均一化される。そして、フライアイレンズ13の透過光は、コンデンサレンズ14に入射され平行光として透過される。コンデンサレンズ14の透過光は、偏光ビームスプリッタ等により構成された偏光変換部材15に入射され、P偏光及びS偏光の一方の直線偏光の露光光のみが透過される。偏光変換部材15の透過光は、マスク部12に設けられた所定の光透過領域のパターンを透過した後、フィルム基材又はガラス基板上の配向材料膜に照射される。これらの露光対象部材2は、露光光の照射位置に連続的に供給され、表面の配向材料膜を連続的に露光することが行われている。
【0008】
図15(a)に示すように、マスク部12は、例えば枠体120とその中央のパターン形成部121により構成されており、パターン形成部121には、フィルム及びガラス基板等の露光対象部材のスキャン方向に長手方向を有するような光透過領域のパターン121aが、適長間隔で複数本設けられており、各光透過領域のパターン121aは、その幅が表示装置の1絵素分の長さ(又は1画素の半分の長さ)に対応するように構成されている。そして、このパターン121aに露光光を透過させ、露光対象部材に露光光を連続的に照射した状態で、露光対象部材をスキャン方向に移動させていくことにより、図15(b)に示すように、同一の方向に配向した配向膜21aをスキャン方向に延びるように帯状に形成する。その後、露光光を他方の直線偏光の露光光に変更し、配向膜21a間の未露光の領域を露光して、配向膜21aとは異なる方向に配向した配向膜21bを形成する。例えば、偏光ビームスプリッタ等の偏光変換部材15を他方の直線偏光の露光光のみを透過させるように調整し、偏光変換部材15を透過した露光光により配向膜21a間の未露光の領域を露光する。又は、他方の直線偏光の露光光のみを出射する他の露光装置を使用し、出射した露光光により配向膜21a間の未露光の領域を露光する。これにより、配向方向が異なる配向膜を相互に隣接するように形成することができ、隣接する配向膜間で配向方向が90°異なる配向膜を表示装置の1絵素分の長さ又は1画素の半分の長さに対応する幅で形成し、製造されたフィルムを3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして使用することができる。即ち、製造されたフィルムを3Dディスプレイ装置のガラス基板等の所定の位置に貼り付けることにより、各領域を透過する表示光は、2種類の偏光方向を有することになり、帯状に形成された各配向膜を例えば行方向に並ぶ絵素に対応させて配置することにより、各配向膜を透過した2種類の表示光を、夫々、例えば右目用及び左目用の表示光として使用することができる。また、各配向膜を1絵素(若しくは1画素の半分)の長さ又は1絵素の半分の長さに対応する幅で形成すれば、2種類のプレチルト角を有する配向膜の透過光により、表示装置の視野角を広げることもできる。
【0009】
図16は、他のマスクを一例として示す図である。この図16に示すマスク部12のパターン形成部121には、露光対象部材のスキャン方向の上流側及び下流側に、夫々複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられて、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。第1及び第2の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が重ならないように、相互に離隔するように設けられている。また、第1の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域と第2の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域とが、露光対象部材のスキャン方向に沿って互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に設けられている。このようなマスク部12を使用して、3Dディスプレイ用の偏光フィルムに使用される配向膜21a,21bを形成する際には、例えば第1の光透過領域群を透過させる露光光をP偏光の直線偏光の露光光とし、第2の光透過領域群を透過させる露光光をS偏光の直線偏光の露光光とする。よって、第1及び第2の光透過領域群に夫々対応するように偏光変換素子を設け、夫々、異なる偏光方向の露光光を透過させるように構成すれば、1台の露光装置により、配向方向が異なる配向膜21a,21bを同時に製造することができる。
【0010】
図17は、従来の露光装置に偏光変換素子として使用されている偏光ビームスプリッタを示す図である。図17(a)に示すように、偏光ビームスプリッタ151a(152a)は、例えば柱状の直角プリズムを2個オプティカルコンタクト(光学溶着)により貼り合わせたものであり、接合面には、例えば誘電体多層膜又は金属薄膜からなるコーティングが施されている。そして、この棒状の偏光ビームスプリッタ151a(152a)が、その長手方向が互いに平行になるように、複数個がオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されて、1個の偏光変換素子が構成されている。偏光ビームスプリッタ151a(152a)のコーティング膜部分は、P偏光及びS偏光のうちのいずれか一方を透過させ、他方を反射する反射透過面として構成されており、図17(b)に示すように、直角プリズム同士の接合面(反射透過面)を例えば入射光の光軸に対して45°傾斜するように配置することにより、P偏光とS偏光とが混在した無偏光の露光光を入射させた場合に、一方(図17(b)においてはP偏光)の直線偏光の露光光のみを透過する。また、この図17(b)に示す状態から、各偏光ビームスプリッタの長手方向を露光光の光軸を回転中心として90°回転させることにより、偏光ビームスプリッタの反射透過面は、他方の直線偏光の露光光のみを透過させる。よって、このような偏光変換素子を、上記マスクの第1及び第2の光透過領域群のパターンに対応させて設けることにより、光源から無偏光の露光光を出射すれば、各偏光変換素子により、各パターンに夫々対応する直線偏光の露光光のみが透過される。従来の露光装置においては、各偏光ビームスプリッタ151(152)は、その長手方向が露光対象部材のスキャン方向に対して平行又は垂直となるように配置されている。
【0011】
上記特許文献1に開示された露光装置は、偏光変換部材が露光光の光路上におけるマスクの直前に配置されたものであるが、例えば特許文献2及び3には、光源内に上記のような偏光変換部材を設けることにより、光源からP偏光又はS偏光の直線偏光のみを出射可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−25623号公報
【特許文献2】特開2001−343611号公報
【特許文献3】特開2009−216754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題点がある。上述の如く、露光装置には、偏光変換部材として、複数個の偏光ビームスプリッタがオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されたものが使用されている。このオプティカルコンタクトによる接合は、強固で密着性も高く、接合面は露光光の照射方向に対して平行となる。しかしながら、この接合面は、極めて小さい幅ではあるが、つなぎ目となり、露光光を入射させた際に、所定の直線偏光を透過させることができなかったり、露光光を透過させることができない。これにより、露光対象部材に偏光ビームスプリッタ同士の境界面が投影されて、露光光の照射が不均一となったり、形成される配向膜21a又は配向膜21bに露光されない領域が残ってしまい、この未露光の領域により、表示装置の輝度が低下するという問題点がある。
【0014】
この問題点を解決するためには、偏光変換部材を複数個の素子ではなく、1個の偏光変換素子で構成すれば、素子同士の境界をなくすことができる。しかし、複数個の偏光変換素子に代えてこれらを一体化した大きさの偏光変換素子を製造することは難しく、製造コストも上昇するという問題点がある。
【0015】
また、特許文献2及び3の技術は、偏光変換素子同士の境界面が投影されることにより未露光の領域が発生することを想定したものではない。よって、図14に示す従来の露光装置における未露光領域の発生を防止できない。なお、特許文献2及び3においては、光源内に偏光変換部材を設けているため、1台の露光装置により、P偏光及びS偏光のいずれかの露光光のみによる露光しかできず、偏光フィルムの製造の際には、少なくとも2回の露光を行う必要があり、生産性が低い。また、2回目以降の露光時には、露光位置の重なり又は未露光領域の発生を防止するために、既に露光された領域に対して、位置合わせを精度良く行う必要がある。従って、露光装置に、露光位置を調整するための制御装置を設ける必要があり、露光装置が大型化し、生産性も低下する。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、露光光をP偏光又はS偏光の直線偏光に変換する部材が複数本の棒状の偏光変換素子により構成されている場合に、露光パターン形成用領域に未露光の領域が残ることを防止できる露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る露光装置は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置において、露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る露光装置において、例えば前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されている。
【0019】
この場合に、前記マスク部は、例えば前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有する。又は、前記マスク部は、例えば前記第1の光透過領域と前記第2の光透過領域とが一体に設けられたものである。
【0020】
前記マスク部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光により前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に照射して露光するように構成することができる。
【0021】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第2のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンに前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する。
【0022】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第1のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンを透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2のマスクの開口部に前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する。
【0023】
上述の露光装置において、例えば前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子は、前記マスク部に固定されている。
【0024】
本発明に係る露光装置は、更に、前記マスク部と前記露光対象部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光対象部材における前記露光光の照射領域の大きさを調節可能なズームレンズを有するように構成することができる。
【0025】
本発明に係る露光装置は、更に、前記光源と前記偏光変換部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズと、このフライアイレンズの透過光が入射され前記露光光を平行光にするコンデンサレンズと、を有し、このコンデンサレンズの透過光が前記偏光変換部材に入射されることが好ましい。
【0026】
本発明に係る偏光変換部材は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置に使用される偏光変換部材において、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されて使用されることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る偏光部材において、前記偏光変換素子は、例えばP偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる。
【0028】
本発明に係る露光方法は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光方法において、露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子がその幅方向に接触している露光装置を使用し、前記複数個の偏光変換素子の境界面を前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置して露光することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る露光方法において、例えば前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されている。この場合に、例えば前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光を照射して前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させる工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記マスク部のパターンに透過させて、前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して露光する工程と、を有する。
【0030】
又は、前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有する。この場合に、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクから前記第1のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第1のマスクのパターンに透過させて、前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する工程と、を有する。
【0031】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第1のマスクのパターンを透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクから前記第2のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第2のマスクの開口部に透過させて、前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る露光装置は、光源からの露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材が、特定の直線偏光の露光光を透過させる複数本の棒状の偏光変換素子がその幅方向に接触するように配置されたものである。そして、本発明においては、偏光変換素子が接触している境界面は、露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されている。よって、偏光変換素子同士の境界面は、マスクの光透過領域を介して露光対象部材上に投影されるが、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して露光材料を連続的に露光することにより、偏光変換素子同士の境界面が投影された領域には、移動により露光光が照射されるため、未露光の領域はなくなる。よって、本発明の露光装置により偏光フィルム等を製造すれば、配向膜に投影された偏光変換素子の境界面による表示装置の輝度の低下を防止できる。
【0033】
よって、本発明に係る露光方法によれば、露光パターン形成用領域に未露光の領域が残ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図1(a)に示す偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る露光装置において、偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図であって、図1(b)の後の工程を示す図である。
【図3】(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、(b),(c)は第1実施形態の露光装置における第1及び第2の偏光変換素子を示す図である。
【図4】(a)乃至(c)は3D表示機能を有する表示装置における絵素及び画素の配列を一例として示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る露光装置によって形成される配向膜の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る露光装置において、マスクの変形例を説明する図である。
【図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図7(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る露光装置において、第1及び第2の偏光変換素子の変形例を示す図である。
【図9】(a)は本発明の第3実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図9(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る露光装置において、カメラによる露光光の照射領域の大きさの検出を示す模式図である。
【図11】生産計画用制御装置が設けられた露光装置を示す模式図である。
【図12】(a)及び(b)は本発明の第4実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の第5実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。
【図14】従来の光配向方式の露光装置の一例を示す図である。
【図15】(a)は従来の露光装置におけるマスクを示す模式図、(b)は連続露光により形成される配向膜を一例として示す図である。
【図16】従来の露光装置における他のマスクを示す模式図である。
【図17】(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、(b),(c)は偏光変換素子を示す図である。
【図18】(a)及び(b)は、形成する配向膜の幅によるマスクの相違を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、第1実施形態の露光装置の構成について説明する。図1(a)は本発明の第1実施形態に係る露光装置を示す模式図、図1(b)は図1(a)に示す偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図であり、図2は図1(b)の後の工程を示す図である。また、図3(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、図3(b),図3(c)は第1実施形態における第1及び第2の偏光変換素子を示す図である。図1に示すように、露光装置1は、露光光を出射する光源11と、露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズ13と、フライアイレンズ13の透過光を平行光にして透過させるコンデンサレンズ14と、コンデンサレンズ14を透過した露光光が入射され特定の直線偏光の露光光を透過させる偏光変換部材15と、偏光変換部材15の透過光を透過させる光透過領域が設けられたマスク12aと、を有している。本発明においては、偏光変換部材15はP偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる第1の偏光変換素子151とS偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる第2の偏光変換素子152により構成されており、マスク12aには、複数本の光透過領域のパターン121aが露光対象部材2のスキャン方向に延びるように設けられている。そして、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光をマスク12aのパターン121aに透過させて露光対象部材2の表面の配向材料膜21を露光して、配向膜21aを形成した後、マスク12aを1パターン幅ずらして、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光をパターン121aに透過させて、配向膜21aに隣接する領域の配向材料膜21をS偏光の露光光により露光して配向膜21bを形成する。なお、本実施形態においては、露光対象部材2がフィルムであり、フィルム基材20の表面に形成された配向材料膜21を露光して所定の方向に配向させた配向膜21a,21bを形成し、3Dディスプレイ用の偏光フィルムを製造する場合について説明する。
【0036】
光源11は、例えば紫外光を出射する光源であり、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ及び紫外LED等であって、連続光又はパルスレーザ光を出射する光源が使用される。本実施形態においては、光源11から出射したレーザ光等の露光光は、フライアイレンズ13に入射される。なお、露光光の光路上には、図14に示す従来の露光装置と同様に、例えば全反射ミラー17等が配置され、光源11から出射された露光光が全反射ミラー17により反射されてからフライアイレンズ13に入射されるように構成されていてもよい。
【0037】
フライアイレンズ13は、例えば同一形状及び焦点距離等を有する複数個の凸レンズが幅方向及び長さ方向に碁盤の目状に配列されて全体として略平板状に形成されたものである。そして、フライアイレンズ13の各凸レンズに入射した露光光は、夫々、焦点に集光された後、拡散し、複数本に分割された露光光が重畳的に次の光学系部材へと入射される。これにより、フライアイレンズ13への入射光が例えば光軸に垂直な面内にて不均一な強度分布を有する場合においても、この強度分布を均一化することができる。例えば光源から出射される露光光は、その強度が光軸に垂直な面内にてガウス分布を有していたり、例えば全反射ミラー17等による反射により、照度ムラが発生する場合があるが、フライアイレンズ13を設置することにより、これらを解消することができる。しかし、露光光の強度分布が、十分に均一化されている場合においては、フライアイレンズ13は設けなくてもよい。
【0038】
コンデンサレンズ14は、例えばフライアイレンズ13とf値が同一となるように設けられた集束レンズである。即ち、本実施形態においては、フライアイレンズ13の焦点とコンデンサレンズ14の焦点とが同一の位置となるように、コンデンサレンズ14が配置されている。これにより、フライアイレンズ13からコンデンサレンズ14に入射した露光光は、平行光の透過光となるように構成されている。なお、フライアイレンズ13が設けられていない場合においては、コンデンサレンズ14は、光源11(光路上の全反射ミラー17等も含む)とf値が同一となるように配置されている。
【0039】
偏光変換部材15を構成する第1及び第2の偏光変換素子151,152は、夫々図3(a)に示すような棒状の偏光ビームスプリッタ151a,152aが複数個接合されたものであり、各偏光ビームスプリッタ151a,152aは、その長手方向が互いに平行になるように配置され、相互間が例えばオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されている。偏光ビームスプリッタ151a,152aは、直角プリズム同士の接合面(反射透過面)が、露光光の光軸に対して例えば45°の角度をなすように配置されており、P偏光とS偏光とが混在した無偏光の露光光を入射させた場合に、一方の直線偏光の露光光のみを透過させ、他方の直線偏光の露光光は反射させる。図3(b)に示すように、本実施形態においては、第1の偏光変換素子151を構成する偏光ビームスプリッタ151aは、無偏光の露光光を入射させると、P偏光の直線偏光の露光光のみを透過し、S偏光の直線偏光の露光光は反射するように構成されており、図3(c)に示すように、第2の偏光変換素子152を構成する偏光ビームスプリッタ152aは、無偏光の露光光を入射させると、S偏光の直線偏光の露光光のみを透過し、P偏光の直線偏光の露光光は反射するように構成されている。これらの偏光変換素子151,152は、各偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の接合面に、極めて小さい幅ではあるが、つなぎ目があり、露光光を入射させた際に、所定の直線偏光を透過させることができなかったり、露光光を透過させることができない。本発明においては、この問題点を解決するために、図1(b)及び図2に示すように、各偏光ビームスプリッタ151a,152aは、その長手方向が露光対象部材2の移動方向(スキャン方向)に対して傾斜するように配置されており、偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面は露光対象部材の移動方向に対して所定の角度を有している。第1及び第2の偏光変換素子151,152は、夫々、例えば枠体150に固定されている。この傾斜方向は、スキャン方向に対して平行とならないような角度を有していればよいが、露光光を露光対象部材に均一に照射するためには、偏光ビームスプリッタの傾斜方向を以下のように構成する。即ち、第1及び第2の偏光変換素子151,152を透過した露光光は、後述するパターン121aに対応して露光対象部材2上の配向材料膜21に照射される。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されるように、偏光ビームスプリッタの傾斜方向を定める。例えば露光装置には、偏光変換部材15を駆動する駆動装置及び制御装置が設けられており、制御装置は、所定の偏光変換素子151,152が露光光の光路上に位置するように駆動装置を制御するように構成されている。
【0040】
従来の露光装置においては、各偏光ビームスプリッタ151(152)は、その長手方向が露光対象部材2のスキャン方向に対して平行となるように配置された場合に、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が露光対象部材に投影されることにより、露光光の照射が不均一となったり、形成される配向膜21a,配向膜21bに未露光の領域が残ってしまい、表示装置の輝度の低下を招く等の問題があった。しかし、本実施形態のように、各偏光ビームスプリッタの長手方向を露光対象部材2の移動方向(スキャン方向)に対して傾斜するように配置し偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面を露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように投影させ、露光対象部材2を露光光の照射位置に連続的に供給することにより、露光光が照射されない領域はなくなる。よって、上記のような表示装置の輝度の低下を防止することができる。
【0041】
図1(b)に示すように、マスク12aは、例えば枠体120とその中央のパターン形成部121により構成されており、パターン形成部121には、フィルム及びガラス基板等の露光対象部材2のスキャン方向に長手方向を有するような光透過領域のパターン121aが、適長間隔で複数本設けられており、各光透過領域のパターン121aは、その幅が表示装置の1絵素分の長さ(又は1画素の半分の長さ)に対応するように構成されている。
【0042】
このように構成されたマスク12aによる露光領域と表示装置の画素又は絵素との対応について、図4を参照して説明する。図4は、3D表示機能を有する液晶ディスプレイパネル等の表示装置における絵素及び画素の配列を一例として示す図である。3D表示機能を有しない表示装置の場合、通常、1画素は、R(赤),G(緑),B(青)の3個の絵素により構成されているが、3D表示機能を有する表示装置においては、1画素内に右目用及び左目用の各絵素を設ける必要があることから、図4に示すように、1画素は、2個のR(赤),2個のG(緑),2個のB(青)の6個の絵素により構成されている。図4(a)に示す配列は、ストライプ配列と称されており、行方向にR(赤),G(緑),B(青)の絵素が交互に配列され、列方向に並ぶ絵素は、同色となるように配置されている。図4(b)に示す配列は、ダイアゴナル配列と称されており、行方向及び列方向に3原色の絵素が交互に配列され、行方向に並ぶ3原色の絵素からなる絵素群が列方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。又は、列方向に並ぶ3原色の絵素が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。図4(c)に示す配列は、デルタ配列と称されており、行方向に3原色の絵素が交互に配列され、行方向の絵素同士の境界は、列方向に隣接する絵素群同士で、絵素の半分の長さだけずれている。そして、デルタ形状に配列された3原色の絵素が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。
【0043】
画素及び絵素の配列が、図4(a)に示すようなストライプ配列の場合には、各光透過領域のパターン121aを透過した露光光の照射領域の幅を1絵素の列方向の長さ(又は1画素の列方向の半分の長さ)に対応させると共に、各パターン121aの長手方向を表示装置の画素行に対応する領域と平行にする。これにより、表示装置の行方向に配向方向が揃った配向膜を、隣接する配向膜間で配向方向が異なるように形成し、各配向膜の透過光により、表示装置の視野角を広げたり、各透過光を3Dディスプレイ装置の右目用及び左目用の表示光として使用することができる。
【0044】
なお、画素及び絵素の配列が図4(b)に示すようなダイアゴナル配列の場合においては、各パターン121aを透過した露光光により形成される配向膜の幅を1絵素の行方向又は列方向の長さ(1画素の行方向又は列方向の半分の長さ)に対応するように調節する。そして、行方向に並ぶ絵素に対応するように配向膜を形成するか、又は列方向に並ぶ絵素に対応するように配向膜を形成する。画素及び絵素の配列が図4(c)に示すようなデルタ配列であって、デルタ形状に配列された3つの絵素からなる絵素群が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている場合には、各パターン121aを透過した露光光により形成される配向膜の幅を1絵素の列方向の長さ(又は1画素の列方向の半分の長さ)に対応するように調整すると共に、各パターン121aの長手方向を行方向に並ぶ絵素に対応する領域と平行になるように、マスク12aの向きを調節する。
【0045】
以上のように構成された露光装置1により、露光対象部材2を露光する際には、露光対象部材2に対する露光光の照射方向は、例えば図14に示すように、マスク部12のパターン形成面に対して傾斜させて照射してもよく、マスク部12のパターン形成面に対して垂直に照射してもよい。即ち、本発明においては、所定の露光光をマスク部12のパターン121aに透過させることができればよく、本発明は、パターン形成面に対する露光光の照射角度により限定されるものではない。
【0046】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。本実施形態においては、先ず、制御装置は、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151が位置するように、駆動装置を制御する。そして、光源11から露光光を出射させる。光源11から出射される露光光は、例えば無偏光の光であり、そのP偏光成分及びS偏光成分は大凡半分ずつである。光源11から出射された無偏光の露光光は、例えば全反射ミラーにより反射された後、フライアイレンズ13に入射する。フライアイレンズ13は複数個の凸レンズが碁盤の目状に配列されており、入射光は、各凸レンズへの入射光として分割され、各凸レンズを透過した後、各凸レンズごとに、夫々、焦点に集光され、拡散していく。そして、複数本に分割された露光光は、重畳的にコンデンサレンズ14に照射される。これにより、フライアイレンズ13を透過し、コンデンサレンズ14に入射する露光光は、光軸に垂直な面内にて強度分布が均一化されており、照度ムラが解消される。
【0047】
そして、露光光は、コンデンサレンズ14を透過する。コンデンサレンズ14は、フライアイレンズ13とf値が同一となるように設けられているため、コンデンサレンズ14の透過光は、平行光として、偏光変換部材15へと向かう。本実施形態においては、第1の偏光変換素子151が露光光の光路上に配置されている。
【0048】
コンデンサレンズ14を透過し、第1の偏光変換素子151に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ151aにより振り分けられ、P偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、S偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。このとき、偏光ビームスプリッタ151a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面を除いて、P偏光の直線偏光の露光光が透過され、マスク12aへと向かう。
【0049】
本実施形態においては、マスク12aには、そのパターン形成部121に、複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、表面に配向材料膜21が形成されたフィルムを露光光の照射位置に供給すると、パターン121aを透過したP偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図1(b)に示すように、パターン121aの形状に対応する配向膜21aが形成される。このとき、前記偏光ビームスプリッタ151a同士のつなぎ目は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が残される。
【0050】
この状態で、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給する。本実施形態においては、前記境界面は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影されるため、フィルムを連続的に供給することにより、未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0051】
以上のように形成された配向膜21aは、パターン121aの形状により、夫々例えば1絵素に対応する領域、又は1画素に対応する領域を、その幅方向(パターン121aが延びる方向に垂直の方向)に2分割した領域に形成される。これにより、フィルムのスキャン方向に沿って、配向膜21aが帯状に形成されていく。
【0052】
所定の領域に配向膜21aが形成されたら、光源11からの露光光の出射を停止する。そして、露光光の光路上に第2の偏光変換素子152を配置すると共に、マスク12aを1パターン幅ずらした後、光源11からの露光光の出射を再開する。これにより、配向膜21aに隣接する未露光の領域には、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光が光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、フィルムを露光光の照射位置に供給すると、パターン121aを透過したS偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図2に示すように、パターン121aの形状に対応する配向膜21bが形成される。このとき、偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が残される。
【0053】
この状態で、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給すると、P偏光の露光光による露光の場合と同様に、偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面が投影されて未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0054】
以上のように形成された各配向膜21a,21bはパターン121aの形状により、夫々例えば1絵素に対応する領域、又は1画素に対応する領域を、その幅方向(パターン121aが延びる方向に垂直の方向)に2分割した領域に形成される。これにより、フィルムのスキャン方向に沿って、配向膜21aと配向膜21bとが互いに隣接するように帯状に形成されたフィルムが製造される。そして、所定の露光パターン形成用領域の全面を露光したら、フィルムを露光装置から排出する。
【0055】
以上のような工程で形成される配向膜21a,21bは、幅方向に隣接する帯状の領域間で、位相が相互に90°異なる配向膜となる。例えば、図1(b)に示すように、第1の偏光変換素子151の透過光により形成された配向膜21aの配向方向を90°とした場合、第2の偏光変換素子152の透過光により形成された配向膜21bの配向方向は0°となる。なお、図面において、配向膜21a,21bの符号の横に記載した矢印は、各配向膜の配向方向を示す。よって、これらの各領域の幅を例えば1絵素の長さと等しくすることにより、製造されたフィルムを3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして使用することができる。即ち、このフィルムは、1/4λ板と同様の機能を有するものとなり、直線偏光の画像表示用の光をこの偏光フィルムに透過させれば、複数個の画素により構成されフィルムの幅方向に並ぶ絵素列ごとに、相互に回転方向が逆の円偏光の透過光が出射される。この円偏光の2つの透過光を、夫々例えば3Dディスプレイの右目用及び左目用の表示光として使用することができる。なお、本実施形態により製造される偏光フィルムは、VA(Vertical Alignment)方式の3Dディスプレイ用偏光フィルムとして好適に使用される。
【0056】
なお、本実施形態においては、図17に示すように第1の偏光変換素子151を構成する各偏光ビームスプリッタ151aは、露光光の光軸に対して90°回転させることにより、反射透過面にてS偏光の露光光を透過し、P偏光の露光光を反射するように構成することができる。この場合とは逆に、第2の偏光変換素子152を構成する各偏光ビームスプリッタ152aも、露光光の光軸に対して90°回転させることにより、反射透過面にてP偏光の露光光を透過し、S偏光の露光光を反射するように構成することができる。これにより、第1の偏光変換素子151と第2の偏光変換素子152との間で、同一の偏光ビームスプリッタを使用することができ、露光装置の製造コストを低減することもできる。
【0057】
また、本実施形態においては、VA方式の3Dディスプレイ用偏光フィルムを製造する場合について説明したが、例えば、P偏光及びS偏光の各露光光の照射角度を変更することにより、図5に示すように、偏光方向が夫々+45°の配向膜21a及び偏光方向が−45°の配向膜21bを形成することもできる。このように形成した偏光フィルムは、IPS(In Plane Switching)方式の3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして好適に使用することができる。
【0058】
更に、本実施形態においては、マスク部12は、1個のマスク12aにより構成されているが、図6に示すように、マスク部12を第1の光透過領域のパターン121aが設けられた第1のマスク12aと、第2の光透過領域のパターン121aが設けられた第2のマスク12bとにより構成してもよい。更に、各偏光変換素子151,152は、マスク部12に固定されていてもよい。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態に係る露光装置について説明する。図7(a)は本発明の第2実施形態に係る露光装置を示す模式図、図7(b)は図7(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。本実施形態の露光装置は、偏光変換部材15及びマスク部12の構成が第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と同一である。即ち、図7(b)に示すように、本実施形態においては、偏光変換部材15を構成する第1の偏光変換素子151及び第2の偏光変換素子152は、枠体150に固定されて一体的に設けられている。また、マスク部12には、第1及び第2の偏光変換素子151,152の夫々に対応するように、第1及び第2の光透過領域が設けられている。そして、各偏光変換素子151,152を透過した露光光を、夫々対応する光透過領域のパターンに透過させて、露光対象部材2を露光する。即ち、本実施形態におけるマスク部12は、露光対象部材2のスキャン方向の上流側及び下流側に、夫々複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。第1及び第2の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が重ならないように、相互に離隔するように設けられており、第1の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域と第2の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域とが、露光対象部材のスキャン方向に沿って互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に設けられている。
【0060】
よって、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、上流側の第1の光透過領域を介してフィルム基材20上の配向材料膜21に照射され、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光は、下流側の第2の光透過領域を介してフィルム基材20上の配向材料膜21に照射される。この状態でフィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、図7(b)に示すように、配向材料膜21上には、連続的に露光光が照射され、所定の方向に光配向する。即ち、P偏光の露光光の照射により配向膜21aが形成され、配向膜21aが形成される領域に隣接する領域の配向材料膜21には、S偏光の露光光が照射され、配向膜21aとは異なる方向に光配向した配向膜21bが形成されていく。これにより、本実施形態においては、マスクを移動させることなく、1個のマスク部12により、P偏光及びS偏光の直線偏光の露光光による露光を同時に行うことができる。
【0061】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。なお、光源11から出射した露光光がコンデンサレンズ14を透過するまでの工程については、第1実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略する。本実施形態においては、コンデンサレンズ14を透過した無偏光の露光光が偏光変換部材15に入射すると、第1の偏光変換素子151に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ151aにより振り分けられ、P偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、S偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。一方、第2の偏光変換素子152に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ152aにより振り分けられ、S偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、P偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。このとき、偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面を除いて、各直線偏光の露光光はマスク部12へと向かう。
【0062】
本実施形態においては、マスク部12には、そのパターン形成部121に、第1及び第2の偏光変換素子151,152の夫々に対応して複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。よって、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、第1の光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。一方、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光は、第2の光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、表面に配向材料膜21が形成されたフィルムを露光光の照射位置に供給すると、第1の光透過領域を透過したP偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図7(b)に示すように、第1の光透過領域のパターン121aの形状に対応する配向膜21aが形成される。一方、配向膜21aに隣接する領域には、第2の光透過領域を透過したS偏光の露光光が照射され、配向膜21aとは異なる方向に配向方向を有する配向膜21bが第2の光透過領域のパターン121aの形状に対応するように形成される。このとき、前記偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が一時的に残される。しかし、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影された境界面に対応する未露光の領域にも露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。
【0063】
このように、本実施形態においては、P偏光の露光光による露光とS偏光の露光光による露光とを同時に行うことができ、高い生産性で偏光フィルムを製造することができる。また、第1実施形態の露光装置においては、互いに配向方向が異なる配向膜21a,21bを形成する場合には、露光工程を分ける必要があり、2回目の露光による露光位置を、1回目の露光により露光された領域に対して精度よく位置合わせする必要がある。これに対して、本実施形態においては、P偏光の露光光による露光とS偏光の露光光による露光とを同時に行うことができるため、上記のような位置合わせを行う必要がなく、従って、例えば露光位置を調整するための制御装置等を露光装置に設ける必要がない。よって、本実施形態のように、第1及び第2の偏光変換素子151,152と、これらに対応する光透過領域群を有するマスク部12を使用することにより、露光装置の構成を簡略化することもできる。
【0064】
なお、本実施形態においても、第1の偏光変換素子151と第2の偏光変換素子152との間で、同一の偏光ビームスプリッタを使用することができる。即ち、図8に示すように、第1の偏光変換素子151を構成する偏光ビームスプリッタ151aと同一のものを、露光光の光軸に対して90°回転させ、複数個の偏光ビームスプリッタ151aを並置して第2の偏光変換素子152とすることにより、反射透過面にてS偏光の露光光を透過し、P偏光の露光光を反射するように構成することができる。その他の変形例についても、第1実施形態と同様である。例えば第1の偏光変換素子151及び第2の偏光変換素子152の夫々に対応させて、図6に示すように、本実施形態のマスク部12を2分割してもよい。
【0065】
次に、本発明の第3実施形態に係る露光装置について説明する。図9(a)は本発明の第3実施形態に係る露光装置を示す模式図、図9(b)は図9(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。本実施形態においては、図9(a)に示すように、露光装置1には、マスク部12と露光対象部材2としての例えばフィルム又はガラス基板との間に、ズームレンズ16が設けられており、マスク部12を透過した露光光をズームレンズ16を介して露光対象部材2に照射して露光対象部材2を露光する。これにより、本実施形態においては、露光対象部材2に照射される露光光の照射領域の大きさをズームレンズ16により拡大又は縮小できるため、露光光の照射面積を、露光パターン形成用領域の大きさに合わせて調節可能に構成されている。また、露光装置1にはカメラ18が設けられており、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。カメラ18は、例えば図示しない制御装置に接続されており、例えば検出した配向膜21aの幅を制御装置に送信する。そして、制御装置は、露光光の照射領域が所定の倍率で拡大又は縮小されているかを判定し、所定の倍率からずれている場合には、例えばズームレンズ16の各レンズ群の位置を調節することにより、倍率を補正できるように構成されている。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0066】
例えばフルHD(High Definition)方式の表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合、1,920×1,080(横×縦)の画素数に対応したものを製造する必要がある。この画素数は、表示装置の大きさが異なる場合においても、フルHD方式であれば同一である。従って、例えば、表示装置の絵素配列が図4(a)に示すようなストライプ配列であって、同色の絵素が表示装置の縦方向(列方向)に並んでいる場合、各絵素の列方向の幅は、例えば50インチサイズの表示装置において577μm、32インチサイズの表示装置において369μmである。よって、従来の露光装置においては、異なる幅の画素に対応する偏光フィルムを製造する場合には、図18に示すように、各絵素(又は各画素)の幅に対応したマスクを使用することが行われている。
【0067】
また、大きさは異なるが画素数が同一の表示装置に使用される例えば偏光フィルム等を製造する場合、上記のように、表示装置の大きさ及び画素数に対応するマスクを設ける必要があり、露光装置の導入コストが増大する。また、この場合、製造するフィルムごとにマスクを取り換える必要があり、生産性が低い。本実施形態の露光装置は、これらの問題点も解消できるものである。
【0068】
ズームレンズ16は、複数枚の凸レンズ及び凹レンズを組み合わせたものであり、焦点距離を所定の範囲で変化させることができ、且つピントがずれないように構成されたレンズである。図9に示すように、ズームレンズ16は、例えば2枚の凸レンズ又は平凸レンズ(16a,16b)と、その間に配置された凹レンズ16cとが組み合わされたものであり、例えばマスク部12側の凸レンズ16aの位置が固定された状態で露光対象部材2側の凸レンズ16b及び凹レンズ16cが移動可能に構成されている。又は、ズームレンズ16は、露光対象部材2側の凸レンズ16bの位置が固定された状態でマスク部12側の凸レンズ16a及び凹レンズ16cが移動可能に構成されている。なお、ズームレンズ16におけるピントのずれの補正は、機械補正式、光学補正式及び電子補正式のいずれによって行ってもよく、複数の方式の補正を組み合わせてもよい。
【0069】
本実施形態においては、マスク部12を透過した露光光は、図9に示すように、例えば平行光としてズームレンズ16に入射され、ズームレンズ16にて、露光光の光軸に垂直な面における照射面積を拡大又は縮小された後、平行光としてズームレンズ16から出射される。即ち、露光装置1は、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を、ズームレンズ16による拡大又は縮小により、調整可能に構成されている。よって、例えば大きさは異なるが画素数が同一の表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合においては、マスク部12を取り換えずに、ズームレンズ16によるズーム倍率を調整するだけで、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を広げたり、狭く調整することができる。
【0070】
これにより、本実施形態の露光装置は、例えばマスク部12の各パターン121aの幅が形成予定の配向膜の幅に比して小さい場合においても、ズームレンズ16により、各露光光の照射領域の幅を拡大することができる。マスク部12の各パターン121aの幅は例えば10乃至1000μmであり、例えば50インチの表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合、形成する配向膜21a,21bの幅は例えば400乃至500μmである。よって、例えば幅が50μmのパターン121aの透過光により、500μm幅の配向膜を形成する場合には、ズームレンズ16により、露光光の照射領域の幅を10倍に拡大する。
【0071】
カメラ18は、例えばCCDカメラであり、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。又は、カメラ18は、例えば露光対象部材2における露光光の照射領域側(ズームレンズ16側)からその大きさを検出するように構成されていてもよい。図10に示すように、カメラ18は、例えばP偏光(又はS偏光)の露光光によって形成された配向膜21a(21b)の幅を検出することができる。又は、形成された配向膜21a(21b)間の距離を検出することができる。これにより、例えば、ズームレンズ16による拡大により、配向膜21aの幅が大きくなった場合には、その幅を検出することにより、ズームレンズ16による拡大倍率を確認することができる。カメラ18は、例えば露光対象部材2のパターン形成用領域のうち、特定の領域のみを観察できるものであってもよく、パターン形成用領域の全体を観察できるものであってもよい。
【0072】
露光装置1には、例えば露光光の照射領域の調整を自動的に行える制御装置が設けられている。図11は、この生産計画用制御装置が設けられた露光装置を示す模式図である。露光対象部材2には、例えばパターン形成用領域の大きさを示すバーコード等の指標が付されている。図11に示すように、露光装置には、露光光の照射位置よりも上流側にセンサ31が設けられており、露光対象部材2に付された前記バーコード等の指標を検出する。センサ31は、生産計画用の制御装置30に接続されており、生産計画用制御装置30には、パターン形成用領域の大きさの信号がセンサ31から送信される。生産計画用制御装置30は、この信号に基づいて、ズームレンズ16の倍率を決定し、例えば図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調整する。このように、露光装置1に生産計画用の制御装置30を設けることにより、複数種類の露光対象部材2に対して、順次、露光を行うことができ、生産性を高めることができる。
【0073】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。なお、露光光をマスク部12に透過させるまでの工程については、第1実施形態と同様のため、詳細な説明は省略する。
【0074】
本実施形態においては、マスク部12の透過光は、第1の及び第2の光透過領域のパターン121aの形状に対応するように、夫々P偏光及びS偏光の露光光として、ズームレンズ16に入射する。ズームレンズ16は、露光対象部材2の露光対象領域の大きさに合わせて各レンズの位置が調整されている。例えば、大きさは異なるが、画素数が同一のフィルムを露光する場合においては、1画素の幅が異なっており、露光対象領域が狭い場合においては、画素の幅は狭く(図10(a))、露光対象領域が広い場合においては、画素の幅も広い(図10(b))。よって、画素の幅を広げるためには、例えばズームレンズ16の3つのレンズのうち、マスク部12側の平凸レンズ16aの位置を固定した状態で、露光対象部材2側の平凸レンズ16bを露光対象部材2側に移動させ、平凸レンズ間の凹レンズ16bをマスク部12側へと移動させる。これにより、複数枚の凸レンズ及び凹レンズが組み合わされて構成されたズームレンズ16の透過光は、その光軸に垂直な照射領域の面積が相似的に拡大される。そして、ズームレンズ16の透過光は、第1及び第2の光透過領域のパターン121aに対応する形状で、大きさのみが拡大されて露光対象部材2に照射される(図9(b))。このように、本実施形態の露光装置は、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を、ズームレンズ16による拡大又は縮小により、調整可能に構成されており、マスク部12を取り換えずに、ズームレンズ16によるズーム倍率を調整するだけで、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を広く調整したり、狭く調整することができる。
【0075】
ズームレンズ16によりその照射領域が拡大されたP偏光の露光光の照射により、フィルム(露光対象部材2)の表面の配向材料膜21は、所定の方向に光配向し、第1の光透過領域のパターン121aに対応する形状の配向膜21aが形成される。一方、配向膜21aに隣接する領域には、S偏光の露光光が照射され、第2の光透過領域のパターン121aに対応する形状の配向膜21bが形成される。このとき、第1及び第2の偏光変換素子151,152における各偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面は配向材料膜21上に投影されるため、未露光の領域が一時的に残される。
【0076】
しかし、本実施形態においても、つなぎ目は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影されるため、フィルムを連続的に供給することにより、未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されていれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0077】
本実施形態においては、露光装置1にはカメラ18が設けられており、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。カメラ18は、例えば配向膜21aの幅を検出し、検出結果を図示しない制御装置に送信する。そして、制御装置は、露光光の照射領域が所定の倍率で拡大又は縮小されているかを判定し、所定の倍率からずれている場合には、例えば図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調節することにより、倍率を補正する。
【0078】
そして、露光光の照射を継続した状態で、フィルム(露光対象部材2)をスキャン方向に移動させ、露光光の照射領域に連続的に供給する。これにより、フィルム(露光対象部材2)は、露光光の照射領域に連続的に供給されて、その表面の配向材料膜21は、露光光の照射により、順次、光配向していき、P偏光及びS偏光の露光光により配向膜21a,21bが夫々スキャン方向に沿って帯状に延びるように形成されていく。
【0079】
以上のような露光装置の動作において、図11に示すように、露光装置1に生産計画用の制御装置30が設けられている場合には、露光対象部材2が露光光の照射位置に供給される前に、センサ31により、露光対象部材2に付された前記バーコード等の指標を検出させる。センサ31は、パターン形成用領域の大きさの信号を生産計画用制御装置30に送信し、生産計画用制御装置30は、この信号に基づいて、ズームレンズ16の倍率を決定し、図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調整する。また、生産計画用制御装置30は、図示しない駆動装置により、アライメントマーク検出用カメラの位置を、決定したズームレンズ16の倍率に応じて調節する。これにより、パターン形成用領域の大きさがバーコード等の指標により、露光光の照射領域の調整を自動的に行えるように構成することにより、複数種類の露光対象部材2に対して、順次、露光を行うことができ、露光装置による生産性を高めることができる。
【0080】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。これに加えて、本実施形態の露光装置1には、マスク部12とフィルム(露光対象部材2)との間にズームレンズ16が設けられており、パターン121aにより配向膜の形状が決定した後に、その照射領域の大きさを調節可能に構成されている。よって、画素数又は絵素数が等しいが、露光パターン形成用領域の大きさが異なる複数の露光対象部材を、マスク部12を取り換えることなく露光することができ、生産性が高い。また、本実施形態の露光装置は、ズームレンズ16を設けただけのものであり、その構成も単純であるため、露光装置の導入コストが増大することもない。
【0081】
なお、マスク部12に設けられたパターン数以下の画素数の露光対象部材2を露光する場合においても、本実施形態の露光装置を使用して、上記の効果を得ることができる。即ち、この場合、露光光の照射領域は、露光対象部材2の露光パターン形成用領域の大きさよりも大きくなるため、例えばマスク部12の透過光は、配向材料膜の露光に使用されない。しかし、少なくとも、露光パターン形成用領域には、その全体に露光光が照射されるため、マスク部12を変更することなく所定の配向膜を形成することができる。また、マスク部12に設けられたパターン121aの数よりも多い画素数又は絵素数に対応した偏光フィルムを製造する場合には、1回の露光が終わったら、例えばマスク部12又は露光対象部材2をスキャン方向に垂直な方向に移動させて、複数回の露光を繰り返すことにより、本実施形態と同様の配向膜を形成できる。
【0082】
次に、本発明の第4実施形態に係る露光装置について説明する。図12(a)及び図12(b)は本発明の第4実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。本実施形態においては、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されたものである。また、露光装置は、第1実施形態と同様に、互いに平行に伸びる複数本のパターン121aを備えた(第1の)マスク12aが設けられているが、本実施形態においては、露光装置には、露光対象部材2の露光パターン形成用領域(配向材料膜の塗布領域)の全域に透過光が照射されるパターンを備えた第2のマスク12bも設けられている。即ち、第2のマスク12bは、パターン形成用領域121に所定の大きさの開口部121bが設けられている。そして、露光装置には、露光光の光路上に配置するマスクを第1のマスクと第2のマスクとの間で入れ換える駆動装置(図示せず)と駆動装置を制御する制御装置が設けられている。また、本実施形態においても、第3実施形態と同様に、マスク部12と露光対象部材2としての例えばフィルム又はガラス基板との間に、ズームレンズ16が設けられている。その他の構成については、第1実施形態と同一である。
【0083】
本実施形態においては、制御装置は、以下のように駆動装置を制御する。即ち、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151を配置し、第1の偏光変換素子151によりP偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、P偏光の直線偏光の露光光が第2のマスク12bの開口部121bに透過される。また、第2の偏光変換素子152によりS偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、S偏光の直線偏光の露光光が第1のマスク12aのパターン121aに透過される。
【0084】
次に、本第4実施形態に係る露光装置の動作について説明する。本実施形態においては、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されている。本実施形態においては、先ず、P偏光の直線偏光の露光光により、フィルム基材20の表面に形成された配向材料膜の全域を所定の第1の硬化量となるまで露光した後、S偏光の露光光を第1のマスク12aのパターン121aに対応させて配向材料膜に照射して第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する。これにより、第1乃至第3実施形態と同様の配向膜を形成する。例えば配向膜が所定の配向方向で形成され、露光光を更に照射しても配向方向が変化しないときの硬化量を100%とした場合に、P偏光の露光光による露光により、配向材料膜を硬化量が50%になるまで硬化させる。そして、S偏光の露光光による露光により、配向材料膜を第1のマスク12aのパターン121aに対応させて、硬化量が100%になるまで硬化させる。このとき、S偏光の露光光が照射されない領域は、硬化量が50%のままであるが、例えば露光後にポストベークを施す(材料塗布後の乾燥(プリベーク)温度よりも高い温度で熱硬化させる)ことにより、硬化量が100%となるまで硬化させて配向方向を固定する。
【0085】
よって、先ず、露光光の光路上に、P偏光の露光光を透過しS偏光の露光光を反射させる第1の偏光変換素子151を配置する。そして、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。
【0086】
次に、光源11から露光光を出射させると、露光光は、フライアイレンズ13、コンデンサレンズ14及び第1の偏光変換素子151を透過することにより、P偏光の直線偏光の平行光として、第2のマスク12bへと向かう。図12(a)に示すように、第2のマスク12bには、パターン形成用領域121に所定の大きさの開口部121bが設けられており、開口部121bを透過した光は、ズームレンズ16に入射する。このズームレンズ16の動作は、第3実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
ズームレンズ16を透過したP偏光の露光光は、配向材料膜21の全域に照射される。これにより、配向材料膜21は、全域で光配向し、配向方向が同一の配向膜21aがフィルム基材20上に形成される。このとき、第1の偏光変換素子151の各偏光ビームスプリッタ151a同士の境界は、露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が一時的に残される。しかし、この未露光の領域は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように残されているため、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、境界面に対応する未露光の領域にも露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。そして、P偏光の露光光の照射による配向材料膜21の硬化量は例えば50%である。図12(a)に示す状態で配向膜21aが所定の領域に形成されたら、例えばフライアイレンズ13とコンデンサレンズ14との間に配置されたシャッタ(図示せず)を閉じることにより、P偏光の露光光による露光を停止する。
【0088】
P偏光の露光光による露光が終了したら、露光光の光路上にS偏光の露光光を透過しP偏光の露光光を反射させる第2の偏光変換素子152を配置する。また、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。
【0089】
従って、露光光の光路上に第2の偏光変換素子152を配置した後、シャッタを開け、光源11からの露光光の出射を再開すると、露光光は、フライアイレンズ13、コンデンサレンズ14及び第2の偏光変換素子152を透過することにより、S偏光の直線偏光の平行光として、第1のマスク12aへと向かう。図12(b)に示すように、第1のマスク12aには、パターン形成用領域121に、互いに平行に伸びる複数本のパターン121aが設けられており、パターン121aを透過した光は、ズームレンズ16に入射する。このズームレンズ16の動作は、第3実施形態と同様であるため、省略する。
【0090】
ズームレンズ16を透過したS偏光の露光光は、P偏光の露光光により形成された硬化量が50%の配向膜21a上に照射される。露光光は、複数本のパターン121aを透過することにより、1画素に対応する幅ずつ離隔するように、複数の照射領域が並ぶように照射される。この露光光の照射領域は、例えば2列×3行の6個の絵素により1画素が構成され、行方向に1方向に並ぶ複数個の画素に対応する領域がその幅方向(列方向)に2分割された一方の領域であり、各照射領域の幅は、1絵素の列方向の長さに対応している。
【0091】
本実施形態においては、フィルム基材20上に形成された配向材料膜21は、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料から形成されている。よって、P偏光の露光光の照射により硬化量が50%となるまで硬化した配向膜21aは、S偏光の露光光の照射領域において、再度、配向方向が変化し、S偏光の露光光の照射により特定される配向方向を有する配向膜21bが形成される。このとき、第2の偏光変換素子152の各偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面は、露光光を透過しないため、配向膜21a上には、境界面が投影され、配向方向が変化しない領域が一時的に残される。しかし、この領域は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように残されているため、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、境界面に対応する領域にもS偏光の露光光が照射されて配向方向が変化し、配向膜21bをスキャン方向に沿って均一に形成することができる。そして、第1のマスク12aのパターン121aを透過したS偏光の露光光による露光により、配向材料膜を硬化量が例えば100%になるまで硬化させて、配向膜21aとは配向方向が異なる配向膜21bを形成する。このとき、S偏光の露光光が照射されない領域は、硬化量が50%のままであるが、この領域については、露光が終了した後、例えばポストベークを施す。これにより、図12(b)に示すように、第3実施形態と同様の配向膜が形成される。
【0092】
本実施形態においても、マスク部12(12a,12b)と露光対象部材2との間にズームレンズ16を設けているので、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
次に、本発明の第5実施形態に係る露光装置について説明する。図13(a)及び図13(b)は本発明の第5実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。本実施形態においても、第4実施形態と同様に、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されたものである。また、マスク部12についても、第4実施形態と同様に第1のマスク12a及び第2のマスク12bが設けられている。
【0094】
本実施形態においては、制御装置は、マスク用の駆動装置を以下のように制御する。即ち、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151を配置し、第1の偏光変換素子151によりP偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、P偏光の直線偏光の露光光が第1のマスク12aのパターン121aに透過される。また、第2の偏光変換素子152によりS偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、S偏光の直線偏光の露光光が第2のマスク12bの開口部121bに透過される。その他の構成は、第4実施形態と同様である。
【0095】
本実施形態においては、図13(a)に示すように、先ず、P偏光の露光光による露光を行うことにより、露光対象部材2には、第1実施形態と同様に、第1のマスク12aのパターン121aに対応した配向膜21aが形成され、配向膜21a間の領域には、未露光の部分が残される。なお、配向膜21a上についても、第1の偏光変換素子151の各偏光ビームスプリッタ151a同士の境界面が投影されることによる未露光の領域が、一時的には残るが、フィルムの移動方向に傾斜するように残されるため、連続露光によって露光光が照射され、境界面が投影された未露光の領域はなくなる。本実施形態においては、P偏光の露光光による露光により、配向材料膜21を硬化量が100%となるまで硬化させ、形成される配向膜21aの配向方向をP偏光の露光光により特定される配向方向に固定する。従って、形成された配向膜21aに更に他の露光光を照射しても、その配向方向は変わることがない。
【0096】
従って、配向材料膜21の全域に第2のマスク12bの開口部121bを透過したS偏光の露光光を照射すると、P偏光の露光光が照射されず未露光であった領域にはS偏光の露光光の照射により、配向膜21aとは配向方向が異なる配向膜21bが形成される。このS偏光の露光光の照射の際にも、第2の偏光変換素子152の各偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面が投影されることによる未露光の領域が、一時的には残るが、フィルムの移動方向に傾斜するように残るため、連続露光によって露光光が照射され、境界面が投影された未露光の領域はなくなる。S偏光の露光光の照射の際には、P偏光の露光光の照射により形成された配向膜21aは、S偏光の露光光を照射されても配向方向が変化しない。これにより、第1乃至第4実施形態と同様の配向膜21a,21bが形成される。なお、S偏光の露光光により形成される配向膜21bの硬化量は100%未満であってもよいが、配向方向を固定するためには、露光が終了した後、例えばポストベークを施す。
【0097】
本実施形態においても、マスク部12(12a,12b)と露光対象部材2との間にズームレンズ16を設けているので、第3及び第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上説明した実施形態においては、露光対象部材としてフィルム基材の表面に配向膜材料が形成されたフィルムを使用し、配向膜材料を光配向させて3Dディスプレイ用の偏光フィルムを製造する場合について述べたが、表面に配向材料膜が形成されたガラス基板を露光対象部材として使用した場合においても、本発明の露光装置を使用することにより、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1,10:露光装置、11:光源、12:マスク部、12a,12b:マスク、120:枠体、121:パターン形成用領域、121a:パターン、13:フライアイレンズ、14:コンデンサレンズ、15:偏光変換部材、150:枠体、151:第1の偏光変換素子、152:第2の偏光変換素子、151a,152a:偏光ビームスプリッタ、16:ズームレンズ、16a,16b:平凸レンズ、16c:凹レンズ、17:反射ミラー、18:カメラ、2:露光対象部材、20:フィルム基材、21:配向材料膜、21a,21b:配向膜、30:生産計画用制御装置、31:センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の偏光変換素子が複数本隣接するように配置され、P偏光又はS偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる偏光変換部材を有する露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法に関し、特に、偏光変換素子同士の境界が露光対象部材に投影されて未露光の領域が残存し、露光が不均一になることを防止する露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶ディスプレイ等に使用されている液晶としては、複数個のベンゼン又はシクロヘキサン分子と両端部の修飾基からなる棒状の分子により構成されたものが使用されており、棒状の液晶分子を均一な方向に整列させることにより、液晶ディスプレイ等の視野角及びコントラスト等を調整することが行われている。
【0003】
液晶分子の整列には、従来、液晶を挟持するガラス基板の表面に例えばポリイミド等からなる配向膜を形成し、配向膜間に液晶を挟持することにより、配向膜の配向方向に合わせて液晶分子を所定の方向に整列させることが行われている。
【0004】
ガラス基板の表面に配向膜を形成する際には、例えばポリイミド溶液をガラス基板上に塗布・焼成して数十nm程度のポリイミド膜(配向材料膜)を形成した後、表面に布が巻き付けられたラビングローラにより、ポリイミド膜(配向材料膜)の表面を一方向に擦るという製造方法が採用されている。
【0005】
しかしながら、ガラス基板の表面に配向膜を形成して液晶分子を整列させる方法においては、配向膜の形成に上記のような製造方法を採用しているため、擦られてローラから離脱したラビング布及び削り取られたポリイミド膜等の塵により、配向膜が傷ついたり、塵そのものが配向膜の表面に付着してしまう。よって、液晶ディスプレイの表示ムラ及び表示不良につながりやすいという問題点がある。
【0006】
この問題点を解決するために、近時、配向材料膜の配向に紫外線を使用する光配向という技術が提案されている。即ち、直線偏光又は無偏光の紫外光をポリイミド又はアゾベンゼン等の配向材料膜に照射することにより、配向材料膜は、その光分解特性により、同一方向に配向する。従って、光による非接触方式により配向性のよい配向膜を形成することができ、液晶ディスプレイ等の表示ムラ及び表示不良を防止できる。
【0007】
ところで、近時、3D(Three Dimensional)ディスプレイ装置の開発がますます進んでいるが、この3Dディスプレイのガラス基板の表面に貼る偏光フィルムの製造においても、上記光配向の技術が採用されている(例えば特許文献1)。図14に示すように、従来の配向膜の形成に使用される露光装置10においては、光源11から出射された露光光は、例えば反射ミラー17により反射された後、フライアイレンズ(インテグレータ)13にてその強度を光軸に垂直な面内で均一化される。そして、フライアイレンズ13の透過光は、コンデンサレンズ14に入射され平行光として透過される。コンデンサレンズ14の透過光は、偏光ビームスプリッタ等により構成された偏光変換部材15に入射され、P偏光及びS偏光の一方の直線偏光の露光光のみが透過される。偏光変換部材15の透過光は、マスク部12に設けられた所定の光透過領域のパターンを透過した後、フィルム基材又はガラス基板上の配向材料膜に照射される。これらの露光対象部材2は、露光光の照射位置に連続的に供給され、表面の配向材料膜を連続的に露光することが行われている。
【0008】
図15(a)に示すように、マスク部12は、例えば枠体120とその中央のパターン形成部121により構成されており、パターン形成部121には、フィルム及びガラス基板等の露光対象部材のスキャン方向に長手方向を有するような光透過領域のパターン121aが、適長間隔で複数本設けられており、各光透過領域のパターン121aは、その幅が表示装置の1絵素分の長さ(又は1画素の半分の長さ)に対応するように構成されている。そして、このパターン121aに露光光を透過させ、露光対象部材に露光光を連続的に照射した状態で、露光対象部材をスキャン方向に移動させていくことにより、図15(b)に示すように、同一の方向に配向した配向膜21aをスキャン方向に延びるように帯状に形成する。その後、露光光を他方の直線偏光の露光光に変更し、配向膜21a間の未露光の領域を露光して、配向膜21aとは異なる方向に配向した配向膜21bを形成する。例えば、偏光ビームスプリッタ等の偏光変換部材15を他方の直線偏光の露光光のみを透過させるように調整し、偏光変換部材15を透過した露光光により配向膜21a間の未露光の領域を露光する。又は、他方の直線偏光の露光光のみを出射する他の露光装置を使用し、出射した露光光により配向膜21a間の未露光の領域を露光する。これにより、配向方向が異なる配向膜を相互に隣接するように形成することができ、隣接する配向膜間で配向方向が90°異なる配向膜を表示装置の1絵素分の長さ又は1画素の半分の長さに対応する幅で形成し、製造されたフィルムを3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして使用することができる。即ち、製造されたフィルムを3Dディスプレイ装置のガラス基板等の所定の位置に貼り付けることにより、各領域を透過する表示光は、2種類の偏光方向を有することになり、帯状に形成された各配向膜を例えば行方向に並ぶ絵素に対応させて配置することにより、各配向膜を透過した2種類の表示光を、夫々、例えば右目用及び左目用の表示光として使用することができる。また、各配向膜を1絵素(若しくは1画素の半分)の長さ又は1絵素の半分の長さに対応する幅で形成すれば、2種類のプレチルト角を有する配向膜の透過光により、表示装置の視野角を広げることもできる。
【0009】
図16は、他のマスクを一例として示す図である。この図16に示すマスク部12のパターン形成部121には、露光対象部材のスキャン方向の上流側及び下流側に、夫々複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられて、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。第1及び第2の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が重ならないように、相互に離隔するように設けられている。また、第1の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域と第2の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域とが、露光対象部材のスキャン方向に沿って互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に設けられている。このようなマスク部12を使用して、3Dディスプレイ用の偏光フィルムに使用される配向膜21a,21bを形成する際には、例えば第1の光透過領域群を透過させる露光光をP偏光の直線偏光の露光光とし、第2の光透過領域群を透過させる露光光をS偏光の直線偏光の露光光とする。よって、第1及び第2の光透過領域群に夫々対応するように偏光変換素子を設け、夫々、異なる偏光方向の露光光を透過させるように構成すれば、1台の露光装置により、配向方向が異なる配向膜21a,21bを同時に製造することができる。
【0010】
図17は、従来の露光装置に偏光変換素子として使用されている偏光ビームスプリッタを示す図である。図17(a)に示すように、偏光ビームスプリッタ151a(152a)は、例えば柱状の直角プリズムを2個オプティカルコンタクト(光学溶着)により貼り合わせたものであり、接合面には、例えば誘電体多層膜又は金属薄膜からなるコーティングが施されている。そして、この棒状の偏光ビームスプリッタ151a(152a)が、その長手方向が互いに平行になるように、複数個がオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されて、1個の偏光変換素子が構成されている。偏光ビームスプリッタ151a(152a)のコーティング膜部分は、P偏光及びS偏光のうちのいずれか一方を透過させ、他方を反射する反射透過面として構成されており、図17(b)に示すように、直角プリズム同士の接合面(反射透過面)を例えば入射光の光軸に対して45°傾斜するように配置することにより、P偏光とS偏光とが混在した無偏光の露光光を入射させた場合に、一方(図17(b)においてはP偏光)の直線偏光の露光光のみを透過する。また、この図17(b)に示す状態から、各偏光ビームスプリッタの長手方向を露光光の光軸を回転中心として90°回転させることにより、偏光ビームスプリッタの反射透過面は、他方の直線偏光の露光光のみを透過させる。よって、このような偏光変換素子を、上記マスクの第1及び第2の光透過領域群のパターンに対応させて設けることにより、光源から無偏光の露光光を出射すれば、各偏光変換素子により、各パターンに夫々対応する直線偏光の露光光のみが透過される。従来の露光装置においては、各偏光ビームスプリッタ151(152)は、その長手方向が露光対象部材のスキャン方向に対して平行又は垂直となるように配置されている。
【0011】
上記特許文献1に開示された露光装置は、偏光変換部材が露光光の光路上におけるマスクの直前に配置されたものであるが、例えば特許文献2及び3には、光源内に上記のような偏光変換部材を設けることにより、光源からP偏光又はS偏光の直線偏光のみを出射可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−25623号公報
【特許文献2】特開2001−343611号公報
【特許文献3】特開2009−216754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題点がある。上述の如く、露光装置には、偏光変換部材として、複数個の偏光ビームスプリッタがオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されたものが使用されている。このオプティカルコンタクトによる接合は、強固で密着性も高く、接合面は露光光の照射方向に対して平行となる。しかしながら、この接合面は、極めて小さい幅ではあるが、つなぎ目となり、露光光を入射させた際に、所定の直線偏光を透過させることができなかったり、露光光を透過させることができない。これにより、露光対象部材に偏光ビームスプリッタ同士の境界面が投影されて、露光光の照射が不均一となったり、形成される配向膜21a又は配向膜21bに露光されない領域が残ってしまい、この未露光の領域により、表示装置の輝度が低下するという問題点がある。
【0014】
この問題点を解決するためには、偏光変換部材を複数個の素子ではなく、1個の偏光変換素子で構成すれば、素子同士の境界をなくすことができる。しかし、複数個の偏光変換素子に代えてこれらを一体化した大きさの偏光変換素子を製造することは難しく、製造コストも上昇するという問題点がある。
【0015】
また、特許文献2及び3の技術は、偏光変換素子同士の境界面が投影されることにより未露光の領域が発生することを想定したものではない。よって、図14に示す従来の露光装置における未露光領域の発生を防止できない。なお、特許文献2及び3においては、光源内に偏光変換部材を設けているため、1台の露光装置により、P偏光及びS偏光のいずれかの露光光のみによる露光しかできず、偏光フィルムの製造の際には、少なくとも2回の露光を行う必要があり、生産性が低い。また、2回目以降の露光時には、露光位置の重なり又は未露光領域の発生を防止するために、既に露光された領域に対して、位置合わせを精度良く行う必要がある。従って、露光装置に、露光位置を調整するための制御装置を設ける必要があり、露光装置が大型化し、生産性も低下する。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、露光光をP偏光又はS偏光の直線偏光に変換する部材が複数本の棒状の偏光変換素子により構成されている場合に、露光パターン形成用領域に未露光の領域が残ることを防止できる露光装置、偏光変換部材及びこれらを使用した露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る露光装置は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置において、露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る露光装置において、例えば前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されている。
【0019】
この場合に、前記マスク部は、例えば前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有する。又は、前記マスク部は、例えば前記第1の光透過領域と前記第2の光透過領域とが一体に設けられたものである。
【0020】
前記マスク部は、例えば前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光により前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に照射して露光するように構成することができる。
【0021】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第2のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンに前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する。
【0022】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第1のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンを透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2のマスクの開口部に前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する。
【0023】
上述の露光装置において、例えば前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子は、前記マスク部に固定されている。
【0024】
本発明に係る露光装置は、更に、前記マスク部と前記露光対象部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光対象部材における前記露光光の照射領域の大きさを調節可能なズームレンズを有するように構成することができる。
【0025】
本発明に係る露光装置は、更に、前記光源と前記偏光変換部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズと、このフライアイレンズの透過光が入射され前記露光光を平行光にするコンデンサレンズと、を有し、このコンデンサレンズの透過光が前記偏光変換部材に入射されることが好ましい。
【0026】
本発明に係る偏光変換部材は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置に使用される偏光変換部材において、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されて使用されることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る偏光部材において、前記偏光変換素子は、例えばP偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる。
【0028】
本発明に係る露光方法は、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光方法において、露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子がその幅方向に接触している露光装置を使用し、前記複数個の偏光変換素子の境界面を前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置して露光することを特徴とする。
【0029】
本発明に係る露光方法において、例えば前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されている。この場合に、例えば前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光を照射して前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させる工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記マスク部のパターンに透過させて、前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して露光する工程と、を有する。
【0030】
又は、前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有する。この場合に、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクから前記第1のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第1のマスクのパターンに透過させて、前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する工程と、を有する。
【0031】
又は、例えば前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第1のマスクのパターンを透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクから前記第2のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第2のマスクの開口部に透過させて、前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る露光装置は、光源からの露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材が、特定の直線偏光の露光光を透過させる複数本の棒状の偏光変換素子がその幅方向に接触するように配置されたものである。そして、本発明においては、偏光変換素子が接触している境界面は、露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されている。よって、偏光変換素子同士の境界面は、マスクの光透過領域を介して露光対象部材上に投影されるが、露光光の照射位置に露光対象部材を供給して露光材料を連続的に露光することにより、偏光変換素子同士の境界面が投影された領域には、移動により露光光が照射されるため、未露光の領域はなくなる。よって、本発明の露光装置により偏光フィルム等を製造すれば、配向膜に投影された偏光変換素子の境界面による表示装置の輝度の低下を防止できる。
【0033】
よって、本発明に係る露光方法によれば、露光パターン形成用領域に未露光の領域が残ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図1(a)に示す偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る露光装置において、偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図であって、図1(b)の後の工程を示す図である。
【図3】(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、(b),(c)は第1実施形態の露光装置における第1及び第2の偏光変換素子を示す図である。
【図4】(a)乃至(c)は3D表示機能を有する表示装置における絵素及び画素の配列を一例として示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る露光装置によって形成される配向膜の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る露光装置において、マスクの変形例を説明する図である。
【図7】(a)は本発明の第2実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図7(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る露光装置において、第1及び第2の偏光変換素子の変形例を示す図である。
【図9】(a)は本発明の第3実施形態に係る露光装置を示す模式図、(b)は図9(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る露光装置において、カメラによる露光光の照射領域の大きさの検出を示す模式図である。
【図11】生産計画用制御装置が設けられた露光装置を示す模式図である。
【図12】(a)及び(b)は本発明の第4実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。
【図13】(a)及び(b)は本発明の第5実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。
【図14】従来の光配向方式の露光装置の一例を示す図である。
【図15】(a)は従来の露光装置におけるマスクを示す模式図、(b)は連続露光により形成される配向膜を一例として示す図である。
【図16】従来の露光装置における他のマスクを示す模式図である。
【図17】(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、(b),(c)は偏光変換素子を示す図である。
【図18】(a)及び(b)は、形成する配向膜の幅によるマスクの相違を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、第1実施形態の露光装置の構成について説明する。図1(a)は本発明の第1実施形態に係る露光装置を示す模式図、図1(b)は図1(a)に示す偏光変換部材、マスク及びそれにより形成される配向膜を示す模式図であり、図2は図1(b)の後の工程を示す図である。また、図3(a)は偏光ビームスプリッタを示す図、図3(b),図3(c)は第1実施形態における第1及び第2の偏光変換素子を示す図である。図1に示すように、露光装置1は、露光光を出射する光源11と、露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズ13と、フライアイレンズ13の透過光を平行光にして透過させるコンデンサレンズ14と、コンデンサレンズ14を透過した露光光が入射され特定の直線偏光の露光光を透過させる偏光変換部材15と、偏光変換部材15の透過光を透過させる光透過領域が設けられたマスク12aと、を有している。本発明においては、偏光変換部材15はP偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる第1の偏光変換素子151とS偏光の直線偏光の露光光のみを透過させる第2の偏光変換素子152により構成されており、マスク12aには、複数本の光透過領域のパターン121aが露光対象部材2のスキャン方向に延びるように設けられている。そして、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光をマスク12aのパターン121aに透過させて露光対象部材2の表面の配向材料膜21を露光して、配向膜21aを形成した後、マスク12aを1パターン幅ずらして、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光をパターン121aに透過させて、配向膜21aに隣接する領域の配向材料膜21をS偏光の露光光により露光して配向膜21bを形成する。なお、本実施形態においては、露光対象部材2がフィルムであり、フィルム基材20の表面に形成された配向材料膜21を露光して所定の方向に配向させた配向膜21a,21bを形成し、3Dディスプレイ用の偏光フィルムを製造する場合について説明する。
【0036】
光源11は、例えば紫外光を出射する光源であり、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ及び紫外LED等であって、連続光又はパルスレーザ光を出射する光源が使用される。本実施形態においては、光源11から出射したレーザ光等の露光光は、フライアイレンズ13に入射される。なお、露光光の光路上には、図14に示す従来の露光装置と同様に、例えば全反射ミラー17等が配置され、光源11から出射された露光光が全反射ミラー17により反射されてからフライアイレンズ13に入射されるように構成されていてもよい。
【0037】
フライアイレンズ13は、例えば同一形状及び焦点距離等を有する複数個の凸レンズが幅方向及び長さ方向に碁盤の目状に配列されて全体として略平板状に形成されたものである。そして、フライアイレンズ13の各凸レンズに入射した露光光は、夫々、焦点に集光された後、拡散し、複数本に分割された露光光が重畳的に次の光学系部材へと入射される。これにより、フライアイレンズ13への入射光が例えば光軸に垂直な面内にて不均一な強度分布を有する場合においても、この強度分布を均一化することができる。例えば光源から出射される露光光は、その強度が光軸に垂直な面内にてガウス分布を有していたり、例えば全反射ミラー17等による反射により、照度ムラが発生する場合があるが、フライアイレンズ13を設置することにより、これらを解消することができる。しかし、露光光の強度分布が、十分に均一化されている場合においては、フライアイレンズ13は設けなくてもよい。
【0038】
コンデンサレンズ14は、例えばフライアイレンズ13とf値が同一となるように設けられた集束レンズである。即ち、本実施形態においては、フライアイレンズ13の焦点とコンデンサレンズ14の焦点とが同一の位置となるように、コンデンサレンズ14が配置されている。これにより、フライアイレンズ13からコンデンサレンズ14に入射した露光光は、平行光の透過光となるように構成されている。なお、フライアイレンズ13が設けられていない場合においては、コンデンサレンズ14は、光源11(光路上の全反射ミラー17等も含む)とf値が同一となるように配置されている。
【0039】
偏光変換部材15を構成する第1及び第2の偏光変換素子151,152は、夫々図3(a)に示すような棒状の偏光ビームスプリッタ151a,152aが複数個接合されたものであり、各偏光ビームスプリッタ151a,152aは、その長手方向が互いに平行になるように配置され、相互間が例えばオプティカルコンタクト(光学溶着)により接合されている。偏光ビームスプリッタ151a,152aは、直角プリズム同士の接合面(反射透過面)が、露光光の光軸に対して例えば45°の角度をなすように配置されており、P偏光とS偏光とが混在した無偏光の露光光を入射させた場合に、一方の直線偏光の露光光のみを透過させ、他方の直線偏光の露光光は反射させる。図3(b)に示すように、本実施形態においては、第1の偏光変換素子151を構成する偏光ビームスプリッタ151aは、無偏光の露光光を入射させると、P偏光の直線偏光の露光光のみを透過し、S偏光の直線偏光の露光光は反射するように構成されており、図3(c)に示すように、第2の偏光変換素子152を構成する偏光ビームスプリッタ152aは、無偏光の露光光を入射させると、S偏光の直線偏光の露光光のみを透過し、P偏光の直線偏光の露光光は反射するように構成されている。これらの偏光変換素子151,152は、各偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の接合面に、極めて小さい幅ではあるが、つなぎ目があり、露光光を入射させた際に、所定の直線偏光を透過させることができなかったり、露光光を透過させることができない。本発明においては、この問題点を解決するために、図1(b)及び図2に示すように、各偏光ビームスプリッタ151a,152aは、その長手方向が露光対象部材2の移動方向(スキャン方向)に対して傾斜するように配置されており、偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面は露光対象部材の移動方向に対して所定の角度を有している。第1及び第2の偏光変換素子151,152は、夫々、例えば枠体150に固定されている。この傾斜方向は、スキャン方向に対して平行とならないような角度を有していればよいが、露光光を露光対象部材に均一に照射するためには、偏光ビームスプリッタの傾斜方向を以下のように構成する。即ち、第1及び第2の偏光変換素子151,152を透過した露光光は、後述するパターン121aに対応して露光対象部材2上の配向材料膜21に照射される。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されるように、偏光ビームスプリッタの傾斜方向を定める。例えば露光装置には、偏光変換部材15を駆動する駆動装置及び制御装置が設けられており、制御装置は、所定の偏光変換素子151,152が露光光の光路上に位置するように駆動装置を制御するように構成されている。
【0040】
従来の露光装置においては、各偏光ビームスプリッタ151(152)は、その長手方向が露光対象部材2のスキャン方向に対して平行となるように配置された場合に、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が露光対象部材に投影されることにより、露光光の照射が不均一となったり、形成される配向膜21a,配向膜21bに未露光の領域が残ってしまい、表示装置の輝度の低下を招く等の問題があった。しかし、本実施形態のように、各偏光ビームスプリッタの長手方向を露光対象部材2の移動方向(スキャン方向)に対して傾斜するように配置し偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面を露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように投影させ、露光対象部材2を露光光の照射位置に連続的に供給することにより、露光光が照射されない領域はなくなる。よって、上記のような表示装置の輝度の低下を防止することができる。
【0041】
図1(b)に示すように、マスク12aは、例えば枠体120とその中央のパターン形成部121により構成されており、パターン形成部121には、フィルム及びガラス基板等の露光対象部材2のスキャン方向に長手方向を有するような光透過領域のパターン121aが、適長間隔で複数本設けられており、各光透過領域のパターン121aは、その幅が表示装置の1絵素分の長さ(又は1画素の半分の長さ)に対応するように構成されている。
【0042】
このように構成されたマスク12aによる露光領域と表示装置の画素又は絵素との対応について、図4を参照して説明する。図4は、3D表示機能を有する液晶ディスプレイパネル等の表示装置における絵素及び画素の配列を一例として示す図である。3D表示機能を有しない表示装置の場合、通常、1画素は、R(赤),G(緑),B(青)の3個の絵素により構成されているが、3D表示機能を有する表示装置においては、1画素内に右目用及び左目用の各絵素を設ける必要があることから、図4に示すように、1画素は、2個のR(赤),2個のG(緑),2個のB(青)の6個の絵素により構成されている。図4(a)に示す配列は、ストライプ配列と称されており、行方向にR(赤),G(緑),B(青)の絵素が交互に配列され、列方向に並ぶ絵素は、同色となるように配置されている。図4(b)に示す配列は、ダイアゴナル配列と称されており、行方向及び列方向に3原色の絵素が交互に配列され、行方向に並ぶ3原色の絵素からなる絵素群が列方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。又は、列方向に並ぶ3原色の絵素が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。図4(c)に示す配列は、デルタ配列と称されており、行方向に3原色の絵素が交互に配列され、行方向の絵素同士の境界は、列方向に隣接する絵素群同士で、絵素の半分の長さだけずれている。そして、デルタ形状に配列された3原色の絵素が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている。
【0043】
画素及び絵素の配列が、図4(a)に示すようなストライプ配列の場合には、各光透過領域のパターン121aを透過した露光光の照射領域の幅を1絵素の列方向の長さ(又は1画素の列方向の半分の長さ)に対応させると共に、各パターン121aの長手方向を表示装置の画素行に対応する領域と平行にする。これにより、表示装置の行方向に配向方向が揃った配向膜を、隣接する配向膜間で配向方向が異なるように形成し、各配向膜の透過光により、表示装置の視野角を広げたり、各透過光を3Dディスプレイ装置の右目用及び左目用の表示光として使用することができる。
【0044】
なお、画素及び絵素の配列が図4(b)に示すようなダイアゴナル配列の場合においては、各パターン121aを透過した露光光により形成される配向膜の幅を1絵素の行方向又は列方向の長さ(1画素の行方向又は列方向の半分の長さ)に対応するように調節する。そして、行方向に並ぶ絵素に対応するように配向膜を形成するか、又は列方向に並ぶ絵素に対応するように配向膜を形成する。画素及び絵素の配列が図4(c)に示すようなデルタ配列であって、デルタ形状に配列された3つの絵素からなる絵素群が行方向に対をなして、6個の絵素により1画素が構成されている場合には、各パターン121aを透過した露光光により形成される配向膜の幅を1絵素の列方向の長さ(又は1画素の列方向の半分の長さ)に対応するように調整すると共に、各パターン121aの長手方向を行方向に並ぶ絵素に対応する領域と平行になるように、マスク12aの向きを調節する。
【0045】
以上のように構成された露光装置1により、露光対象部材2を露光する際には、露光対象部材2に対する露光光の照射方向は、例えば図14に示すように、マスク部12のパターン形成面に対して傾斜させて照射してもよく、マスク部12のパターン形成面に対して垂直に照射してもよい。即ち、本発明においては、所定の露光光をマスク部12のパターン121aに透過させることができればよく、本発明は、パターン形成面に対する露光光の照射角度により限定されるものではない。
【0046】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。本実施形態においては、先ず、制御装置は、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151が位置するように、駆動装置を制御する。そして、光源11から露光光を出射させる。光源11から出射される露光光は、例えば無偏光の光であり、そのP偏光成分及びS偏光成分は大凡半分ずつである。光源11から出射された無偏光の露光光は、例えば全反射ミラーにより反射された後、フライアイレンズ13に入射する。フライアイレンズ13は複数個の凸レンズが碁盤の目状に配列されており、入射光は、各凸レンズへの入射光として分割され、各凸レンズを透過した後、各凸レンズごとに、夫々、焦点に集光され、拡散していく。そして、複数本に分割された露光光は、重畳的にコンデンサレンズ14に照射される。これにより、フライアイレンズ13を透過し、コンデンサレンズ14に入射する露光光は、光軸に垂直な面内にて強度分布が均一化されており、照度ムラが解消される。
【0047】
そして、露光光は、コンデンサレンズ14を透過する。コンデンサレンズ14は、フライアイレンズ13とf値が同一となるように設けられているため、コンデンサレンズ14の透過光は、平行光として、偏光変換部材15へと向かう。本実施形態においては、第1の偏光変換素子151が露光光の光路上に配置されている。
【0048】
コンデンサレンズ14を透過し、第1の偏光変換素子151に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ151aにより振り分けられ、P偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、S偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。このとき、偏光ビームスプリッタ151a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面を除いて、P偏光の直線偏光の露光光が透過され、マスク12aへと向かう。
【0049】
本実施形態においては、マスク12aには、そのパターン形成部121に、複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、表面に配向材料膜21が形成されたフィルムを露光光の照射位置に供給すると、パターン121aを透過したP偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図1(b)に示すように、パターン121aの形状に対応する配向膜21aが形成される。このとき、前記偏光ビームスプリッタ151a同士のつなぎ目は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が残される。
【0050】
この状態で、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給する。本実施形態においては、前記境界面は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影されるため、フィルムを連続的に供給することにより、未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0051】
以上のように形成された配向膜21aは、パターン121aの形状により、夫々例えば1絵素に対応する領域、又は1画素に対応する領域を、その幅方向(パターン121aが延びる方向に垂直の方向)に2分割した領域に形成される。これにより、フィルムのスキャン方向に沿って、配向膜21aが帯状に形成されていく。
【0052】
所定の領域に配向膜21aが形成されたら、光源11からの露光光の出射を停止する。そして、露光光の光路上に第2の偏光変換素子152を配置すると共に、マスク12aを1パターン幅ずらした後、光源11からの露光光の出射を再開する。これにより、配向膜21aに隣接する未露光の領域には、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光が光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、フィルムを露光光の照射位置に供給すると、パターン121aを透過したS偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図2に示すように、パターン121aの形状に対応する配向膜21bが形成される。このとき、偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が残される。
【0053】
この状態で、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給すると、P偏光の露光光による露光の場合と同様に、偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面が投影されて未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0054】
以上のように形成された各配向膜21a,21bはパターン121aの形状により、夫々例えば1絵素に対応する領域、又は1画素に対応する領域を、その幅方向(パターン121aが延びる方向に垂直の方向)に2分割した領域に形成される。これにより、フィルムのスキャン方向に沿って、配向膜21aと配向膜21bとが互いに隣接するように帯状に形成されたフィルムが製造される。そして、所定の露光パターン形成用領域の全面を露光したら、フィルムを露光装置から排出する。
【0055】
以上のような工程で形成される配向膜21a,21bは、幅方向に隣接する帯状の領域間で、位相が相互に90°異なる配向膜となる。例えば、図1(b)に示すように、第1の偏光変換素子151の透過光により形成された配向膜21aの配向方向を90°とした場合、第2の偏光変換素子152の透過光により形成された配向膜21bの配向方向は0°となる。なお、図面において、配向膜21a,21bの符号の横に記載した矢印は、各配向膜の配向方向を示す。よって、これらの各領域の幅を例えば1絵素の長さと等しくすることにより、製造されたフィルムを3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして使用することができる。即ち、このフィルムは、1/4λ板と同様の機能を有するものとなり、直線偏光の画像表示用の光をこの偏光フィルムに透過させれば、複数個の画素により構成されフィルムの幅方向に並ぶ絵素列ごとに、相互に回転方向が逆の円偏光の透過光が出射される。この円偏光の2つの透過光を、夫々例えば3Dディスプレイの右目用及び左目用の表示光として使用することができる。なお、本実施形態により製造される偏光フィルムは、VA(Vertical Alignment)方式の3Dディスプレイ用偏光フィルムとして好適に使用される。
【0056】
なお、本実施形態においては、図17に示すように第1の偏光変換素子151を構成する各偏光ビームスプリッタ151aは、露光光の光軸に対して90°回転させることにより、反射透過面にてS偏光の露光光を透過し、P偏光の露光光を反射するように構成することができる。この場合とは逆に、第2の偏光変換素子152を構成する各偏光ビームスプリッタ152aも、露光光の光軸に対して90°回転させることにより、反射透過面にてP偏光の露光光を透過し、S偏光の露光光を反射するように構成することができる。これにより、第1の偏光変換素子151と第2の偏光変換素子152との間で、同一の偏光ビームスプリッタを使用することができ、露光装置の製造コストを低減することもできる。
【0057】
また、本実施形態においては、VA方式の3Dディスプレイ用偏光フィルムを製造する場合について説明したが、例えば、P偏光及びS偏光の各露光光の照射角度を変更することにより、図5に示すように、偏光方向が夫々+45°の配向膜21a及び偏光方向が−45°の配向膜21bを形成することもできる。このように形成した偏光フィルムは、IPS(In Plane Switching)方式の3Dディスプレイ用の偏光フィルムとして好適に使用することができる。
【0058】
更に、本実施形態においては、マスク部12は、1個のマスク12aにより構成されているが、図6に示すように、マスク部12を第1の光透過領域のパターン121aが設けられた第1のマスク12aと、第2の光透過領域のパターン121aが設けられた第2のマスク12bとにより構成してもよい。更に、各偏光変換素子151,152は、マスク部12に固定されていてもよい。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態に係る露光装置について説明する。図7(a)は本発明の第2実施形態に係る露光装置を示す模式図、図7(b)は図7(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。本実施形態の露光装置は、偏光変換部材15及びマスク部12の構成が第1実施形態と異なっており、それ以外の構成については、第1実施形態と同一である。即ち、図7(b)に示すように、本実施形態においては、偏光変換部材15を構成する第1の偏光変換素子151及び第2の偏光変換素子152は、枠体150に固定されて一体的に設けられている。また、マスク部12には、第1及び第2の偏光変換素子151,152の夫々に対応するように、第1及び第2の光透過領域が設けられている。そして、各偏光変換素子151,152を透過した露光光を、夫々対応する光透過領域のパターンに透過させて、露光対象部材2を露光する。即ち、本実施形態におけるマスク部12は、露光対象部材2のスキャン方向の上流側及び下流側に、夫々複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。第1及び第2の光透過領域群は、露光光の照射領域同士が重ならないように、相互に離隔するように設けられており、第1の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域と第2の光透過領域群の各パターン121aを透過した露光光の照射領域とが、露光対象部材のスキャン方向に沿って互いに隣接するように、上流側パターンと下流側パターンとは、その幅方向に沿って千鳥状に設けられている。
【0060】
よって、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、上流側の第1の光透過領域を介してフィルム基材20上の配向材料膜21に照射され、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光は、下流側の第2の光透過領域を介してフィルム基材20上の配向材料膜21に照射される。この状態でフィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、図7(b)に示すように、配向材料膜21上には、連続的に露光光が照射され、所定の方向に光配向する。即ち、P偏光の露光光の照射により配向膜21aが形成され、配向膜21aが形成される領域に隣接する領域の配向材料膜21には、S偏光の露光光が照射され、配向膜21aとは異なる方向に光配向した配向膜21bが形成されていく。これにより、本実施形態においては、マスクを移動させることなく、1個のマスク部12により、P偏光及びS偏光の直線偏光の露光光による露光を同時に行うことができる。
【0061】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。なお、光源11から出射した露光光がコンデンサレンズ14を透過するまでの工程については、第1実施形態と同一であるので、詳細な説明は省略する。本実施形態においては、コンデンサレンズ14を透過した無偏光の露光光が偏光変換部材15に入射すると、第1の偏光変換素子151に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ151aにより振り分けられ、P偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、S偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。一方、第2の偏光変換素子152に入射した露光光は、各偏光ビームスプリッタ152aにより振り分けられ、S偏光の直線偏光の露光光は反射透過面を透過し、P偏光の直線偏光の露光光は、反射透過面に反射される。このとき、偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面を除いて、各直線偏光の露光光はマスク部12へと向かう。
【0062】
本実施形態においては、マスク部12には、そのパターン形成部121に、第1及び第2の偏光変換素子151,152の夫々に対応して複数本のパターン121aが1列に並ぶように設けられており、上流側の第1の光透過領域群及び下流側の第2の光透過領域群が形成されている。よって、第1の偏光変換素子151を透過したP偏光の露光光は、第1の光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。一方、第2の偏光変換素子152を透過したS偏光の露光光は、第2の光透過領域の各パターン121aの形状に対応して透過される。この状態で、表面に配向材料膜21が形成されたフィルムを露光光の照射位置に供給すると、第1の光透過領域を透過したP偏光の露光光の照射により、配向材料膜21は特定の方向に光配向し、図7(b)に示すように、第1の光透過領域のパターン121aの形状に対応する配向膜21aが形成される。一方、配向膜21aに隣接する領域には、第2の光透過領域を透過したS偏光の露光光が照射され、配向膜21aとは異なる方向に配向方向を有する配向膜21bが第2の光透過領域のパターン121aの形状に対応するように形成される。このとき、前記偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界面は露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が一時的に残される。しかし、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影された境界面に対応する未露光の領域にも露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。
【0063】
このように、本実施形態においては、P偏光の露光光による露光とS偏光の露光光による露光とを同時に行うことができ、高い生産性で偏光フィルムを製造することができる。また、第1実施形態の露光装置においては、互いに配向方向が異なる配向膜21a,21bを形成する場合には、露光工程を分ける必要があり、2回目の露光による露光位置を、1回目の露光により露光された領域に対して精度よく位置合わせする必要がある。これに対して、本実施形態においては、P偏光の露光光による露光とS偏光の露光光による露光とを同時に行うことができるため、上記のような位置合わせを行う必要がなく、従って、例えば露光位置を調整するための制御装置等を露光装置に設ける必要がない。よって、本実施形態のように、第1及び第2の偏光変換素子151,152と、これらに対応する光透過領域群を有するマスク部12を使用することにより、露光装置の構成を簡略化することもできる。
【0064】
なお、本実施形態においても、第1の偏光変換素子151と第2の偏光変換素子152との間で、同一の偏光ビームスプリッタを使用することができる。即ち、図8に示すように、第1の偏光変換素子151を構成する偏光ビームスプリッタ151aと同一のものを、露光光の光軸に対して90°回転させ、複数個の偏光ビームスプリッタ151aを並置して第2の偏光変換素子152とすることにより、反射透過面にてS偏光の露光光を透過し、P偏光の露光光を反射するように構成することができる。その他の変形例についても、第1実施形態と同様である。例えば第1の偏光変換素子151及び第2の偏光変換素子152の夫々に対応させて、図6に示すように、本実施形態のマスク部12を2分割してもよい。
【0065】
次に、本発明の第3実施形態に係る露光装置について説明する。図9(a)は本発明の第3実施形態に係る露光装置を示す模式図、図9(b)は図9(a)に示す偏光変換部材、マスク及びズームレンズとこれにより形成される配向膜を示す模式図である。本実施形態においては、図9(a)に示すように、露光装置1には、マスク部12と露光対象部材2としての例えばフィルム又はガラス基板との間に、ズームレンズ16が設けられており、マスク部12を透過した露光光をズームレンズ16を介して露光対象部材2に照射して露光対象部材2を露光する。これにより、本実施形態においては、露光対象部材2に照射される露光光の照射領域の大きさをズームレンズ16により拡大又は縮小できるため、露光光の照射面積を、露光パターン形成用領域の大きさに合わせて調節可能に構成されている。また、露光装置1にはカメラ18が設けられており、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。カメラ18は、例えば図示しない制御装置に接続されており、例えば検出した配向膜21aの幅を制御装置に送信する。そして、制御装置は、露光光の照射領域が所定の倍率で拡大又は縮小されているかを判定し、所定の倍率からずれている場合には、例えばズームレンズ16の各レンズ群の位置を調節することにより、倍率を補正できるように構成されている。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0066】
例えばフルHD(High Definition)方式の表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合、1,920×1,080(横×縦)の画素数に対応したものを製造する必要がある。この画素数は、表示装置の大きさが異なる場合においても、フルHD方式であれば同一である。従って、例えば、表示装置の絵素配列が図4(a)に示すようなストライプ配列であって、同色の絵素が表示装置の縦方向(列方向)に並んでいる場合、各絵素の列方向の幅は、例えば50インチサイズの表示装置において577μm、32インチサイズの表示装置において369μmである。よって、従来の露光装置においては、異なる幅の画素に対応する偏光フィルムを製造する場合には、図18に示すように、各絵素(又は各画素)の幅に対応したマスクを使用することが行われている。
【0067】
また、大きさは異なるが画素数が同一の表示装置に使用される例えば偏光フィルム等を製造する場合、上記のように、表示装置の大きさ及び画素数に対応するマスクを設ける必要があり、露光装置の導入コストが増大する。また、この場合、製造するフィルムごとにマスクを取り換える必要があり、生産性が低い。本実施形態の露光装置は、これらの問題点も解消できるものである。
【0068】
ズームレンズ16は、複数枚の凸レンズ及び凹レンズを組み合わせたものであり、焦点距離を所定の範囲で変化させることができ、且つピントがずれないように構成されたレンズである。図9に示すように、ズームレンズ16は、例えば2枚の凸レンズ又は平凸レンズ(16a,16b)と、その間に配置された凹レンズ16cとが組み合わされたものであり、例えばマスク部12側の凸レンズ16aの位置が固定された状態で露光対象部材2側の凸レンズ16b及び凹レンズ16cが移動可能に構成されている。又は、ズームレンズ16は、露光対象部材2側の凸レンズ16bの位置が固定された状態でマスク部12側の凸レンズ16a及び凹レンズ16cが移動可能に構成されている。なお、ズームレンズ16におけるピントのずれの補正は、機械補正式、光学補正式及び電子補正式のいずれによって行ってもよく、複数の方式の補正を組み合わせてもよい。
【0069】
本実施形態においては、マスク部12を透過した露光光は、図9に示すように、例えば平行光としてズームレンズ16に入射され、ズームレンズ16にて、露光光の光軸に垂直な面における照射面積を拡大又は縮小された後、平行光としてズームレンズ16から出射される。即ち、露光装置1は、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を、ズームレンズ16による拡大又は縮小により、調整可能に構成されている。よって、例えば大きさは異なるが画素数が同一の表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合においては、マスク部12を取り換えずに、ズームレンズ16によるズーム倍率を調整するだけで、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を広げたり、狭く調整することができる。
【0070】
これにより、本実施形態の露光装置は、例えばマスク部12の各パターン121aの幅が形成予定の配向膜の幅に比して小さい場合においても、ズームレンズ16により、各露光光の照射領域の幅を拡大することができる。マスク部12の各パターン121aの幅は例えば10乃至1000μmであり、例えば50インチの表示装置に使用される偏光フィルムを製造する場合、形成する配向膜21a,21bの幅は例えば400乃至500μmである。よって、例えば幅が50μmのパターン121aの透過光により、500μm幅の配向膜を形成する場合には、ズームレンズ16により、露光光の照射領域の幅を10倍に拡大する。
【0071】
カメラ18は、例えばCCDカメラであり、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。又は、カメラ18は、例えば露光対象部材2における露光光の照射領域側(ズームレンズ16側)からその大きさを検出するように構成されていてもよい。図10に示すように、カメラ18は、例えばP偏光(又はS偏光)の露光光によって形成された配向膜21a(21b)の幅を検出することができる。又は、形成された配向膜21a(21b)間の距離を検出することができる。これにより、例えば、ズームレンズ16による拡大により、配向膜21aの幅が大きくなった場合には、その幅を検出することにより、ズームレンズ16による拡大倍率を確認することができる。カメラ18は、例えば露光対象部材2のパターン形成用領域のうち、特定の領域のみを観察できるものであってもよく、パターン形成用領域の全体を観察できるものであってもよい。
【0072】
露光装置1には、例えば露光光の照射領域の調整を自動的に行える制御装置が設けられている。図11は、この生産計画用制御装置が設けられた露光装置を示す模式図である。露光対象部材2には、例えばパターン形成用領域の大きさを示すバーコード等の指標が付されている。図11に示すように、露光装置には、露光光の照射位置よりも上流側にセンサ31が設けられており、露光対象部材2に付された前記バーコード等の指標を検出する。センサ31は、生産計画用の制御装置30に接続されており、生産計画用制御装置30には、パターン形成用領域の大きさの信号がセンサ31から送信される。生産計画用制御装置30は、この信号に基づいて、ズームレンズ16の倍率を決定し、例えば図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調整する。このように、露光装置1に生産計画用の制御装置30を設けることにより、複数種類の露光対象部材2に対して、順次、露光を行うことができ、生産性を高めることができる。
【0073】
次に、本実施形態の露光装置の動作について説明する。なお、露光光をマスク部12に透過させるまでの工程については、第1実施形態と同様のため、詳細な説明は省略する。
【0074】
本実施形態においては、マスク部12の透過光は、第1の及び第2の光透過領域のパターン121aの形状に対応するように、夫々P偏光及びS偏光の露光光として、ズームレンズ16に入射する。ズームレンズ16は、露光対象部材2の露光対象領域の大きさに合わせて各レンズの位置が調整されている。例えば、大きさは異なるが、画素数が同一のフィルムを露光する場合においては、1画素の幅が異なっており、露光対象領域が狭い場合においては、画素の幅は狭く(図10(a))、露光対象領域が広い場合においては、画素の幅も広い(図10(b))。よって、画素の幅を広げるためには、例えばズームレンズ16の3つのレンズのうち、マスク部12側の平凸レンズ16aの位置を固定した状態で、露光対象部材2側の平凸レンズ16bを露光対象部材2側に移動させ、平凸レンズ間の凹レンズ16bをマスク部12側へと移動させる。これにより、複数枚の凸レンズ及び凹レンズが組み合わされて構成されたズームレンズ16の透過光は、その光軸に垂直な照射領域の面積が相似的に拡大される。そして、ズームレンズ16の透過光は、第1及び第2の光透過領域のパターン121aに対応する形状で、大きさのみが拡大されて露光対象部材2に照射される(図9(b))。このように、本実施形態の露光装置は、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を、ズームレンズ16による拡大又は縮小により、調整可能に構成されており、マスク部12を取り換えずに、ズームレンズ16によるズーム倍率を調整するだけで、露光対象部材2に対する露光光の照射面積を広く調整したり、狭く調整することができる。
【0075】
ズームレンズ16によりその照射領域が拡大されたP偏光の露光光の照射により、フィルム(露光対象部材2)の表面の配向材料膜21は、所定の方向に光配向し、第1の光透過領域のパターン121aに対応する形状の配向膜21aが形成される。一方、配向膜21aに隣接する領域には、S偏光の露光光が照射され、第2の光透過領域のパターン121aに対応する形状の配向膜21bが形成される。このとき、第1及び第2の偏光変換素子151,152における各偏光ビームスプリッタ151a,152a同士の境界には、露光光を透過できないつなぎ目があるが、この境界面は配向材料膜21上に投影されるため、未露光の領域が一時的に残される。
【0076】
しかし、本実施形態においても、つなぎ目は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように投影されるため、フィルムを連続的に供給することにより、未露光だった領域にも、やがて露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。このとき、偏光ビームスプリッタ同士の境界面が各パターンを透過した露光光の照射領域において、その幅方向の全体に延びて投影されていれば、露光光の照射がより均一になり好ましい。
【0077】
本実施形態においては、露光装置1にはカメラ18が設けられており、露光対象部材2の裏側から、ズームレンズ16によって調節された露光対象部材2上の露光光の照射領域の大きさを検出する。カメラ18は、例えば配向膜21aの幅を検出し、検出結果を図示しない制御装置に送信する。そして、制御装置は、露光光の照射領域が所定の倍率で拡大又は縮小されているかを判定し、所定の倍率からずれている場合には、例えば図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調節することにより、倍率を補正する。
【0078】
そして、露光光の照射を継続した状態で、フィルム(露光対象部材2)をスキャン方向に移動させ、露光光の照射領域に連続的に供給する。これにより、フィルム(露光対象部材2)は、露光光の照射領域に連続的に供給されて、その表面の配向材料膜21は、露光光の照射により、順次、光配向していき、P偏光及びS偏光の露光光により配向膜21a,21bが夫々スキャン方向に沿って帯状に延びるように形成されていく。
【0079】
以上のような露光装置の動作において、図11に示すように、露光装置1に生産計画用の制御装置30が設けられている場合には、露光対象部材2が露光光の照射位置に供給される前に、センサ31により、露光対象部材2に付された前記バーコード等の指標を検出させる。センサ31は、パターン形成用領域の大きさの信号を生産計画用制御装置30に送信し、生産計画用制御装置30は、この信号に基づいて、ズームレンズ16の倍率を決定し、図示しない駆動装置により、ズームレンズ16の各レンズ群の位置を調整する。また、生産計画用制御装置30は、図示しない駆動装置により、アライメントマーク検出用カメラの位置を、決定したズームレンズ16の倍率に応じて調節する。これにより、パターン形成用領域の大きさがバーコード等の指標により、露光光の照射領域の調整を自動的に行えるように構成することにより、複数種類の露光対象部材2に対して、順次、露光を行うことができ、露光装置による生産性を高めることができる。
【0080】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。これに加えて、本実施形態の露光装置1には、マスク部12とフィルム(露光対象部材2)との間にズームレンズ16が設けられており、パターン121aにより配向膜の形状が決定した後に、その照射領域の大きさを調節可能に構成されている。よって、画素数又は絵素数が等しいが、露光パターン形成用領域の大きさが異なる複数の露光対象部材を、マスク部12を取り換えることなく露光することができ、生産性が高い。また、本実施形態の露光装置は、ズームレンズ16を設けただけのものであり、その構成も単純であるため、露光装置の導入コストが増大することもない。
【0081】
なお、マスク部12に設けられたパターン数以下の画素数の露光対象部材2を露光する場合においても、本実施形態の露光装置を使用して、上記の効果を得ることができる。即ち、この場合、露光光の照射領域は、露光対象部材2の露光パターン形成用領域の大きさよりも大きくなるため、例えばマスク部12の透過光は、配向材料膜の露光に使用されない。しかし、少なくとも、露光パターン形成用領域には、その全体に露光光が照射されるため、マスク部12を変更することなく所定の配向膜を形成することができる。また、マスク部12に設けられたパターン121aの数よりも多い画素数又は絵素数に対応した偏光フィルムを製造する場合には、1回の露光が終わったら、例えばマスク部12又は露光対象部材2をスキャン方向に垂直な方向に移動させて、複数回の露光を繰り返すことにより、本実施形態と同様の配向膜を形成できる。
【0082】
次に、本発明の第4実施形態に係る露光装置について説明する。図12(a)及び図12(b)は本発明の第4実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。本実施形態においては、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されたものである。また、露光装置は、第1実施形態と同様に、互いに平行に伸びる複数本のパターン121aを備えた(第1の)マスク12aが設けられているが、本実施形態においては、露光装置には、露光対象部材2の露光パターン形成用領域(配向材料膜の塗布領域)の全域に透過光が照射されるパターンを備えた第2のマスク12bも設けられている。即ち、第2のマスク12bは、パターン形成用領域121に所定の大きさの開口部121bが設けられている。そして、露光装置には、露光光の光路上に配置するマスクを第1のマスクと第2のマスクとの間で入れ換える駆動装置(図示せず)と駆動装置を制御する制御装置が設けられている。また、本実施形態においても、第3実施形態と同様に、マスク部12と露光対象部材2としての例えばフィルム又はガラス基板との間に、ズームレンズ16が設けられている。その他の構成については、第1実施形態と同一である。
【0083】
本実施形態においては、制御装置は、以下のように駆動装置を制御する。即ち、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151を配置し、第1の偏光変換素子151によりP偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、P偏光の直線偏光の露光光が第2のマスク12bの開口部121bに透過される。また、第2の偏光変換素子152によりS偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、S偏光の直線偏光の露光光が第1のマスク12aのパターン121aに透過される。
【0084】
次に、本第4実施形態に係る露光装置の動作について説明する。本実施形態においては、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されている。本実施形態においては、先ず、P偏光の直線偏光の露光光により、フィルム基材20の表面に形成された配向材料膜の全域を所定の第1の硬化量となるまで露光した後、S偏光の露光光を第1のマスク12aのパターン121aに対応させて配向材料膜に照射して第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する。これにより、第1乃至第3実施形態と同様の配向膜を形成する。例えば配向膜が所定の配向方向で形成され、露光光を更に照射しても配向方向が変化しないときの硬化量を100%とした場合に、P偏光の露光光による露光により、配向材料膜を硬化量が50%になるまで硬化させる。そして、S偏光の露光光による露光により、配向材料膜を第1のマスク12aのパターン121aに対応させて、硬化量が100%になるまで硬化させる。このとき、S偏光の露光光が照射されない領域は、硬化量が50%のままであるが、例えば露光後にポストベークを施す(材料塗布後の乾燥(プリベーク)温度よりも高い温度で熱硬化させる)ことにより、硬化量が100%となるまで硬化させて配向方向を固定する。
【0085】
よって、先ず、露光光の光路上に、P偏光の露光光を透過しS偏光の露光光を反射させる第1の偏光変換素子151を配置する。そして、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。
【0086】
次に、光源11から露光光を出射させると、露光光は、フライアイレンズ13、コンデンサレンズ14及び第1の偏光変換素子151を透過することにより、P偏光の直線偏光の平行光として、第2のマスク12bへと向かう。図12(a)に示すように、第2のマスク12bには、パターン形成用領域121に所定の大きさの開口部121bが設けられており、開口部121bを透過した光は、ズームレンズ16に入射する。このズームレンズ16の動作は、第3実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
ズームレンズ16を透過したP偏光の露光光は、配向材料膜21の全域に照射される。これにより、配向材料膜21は、全域で光配向し、配向方向が同一の配向膜21aがフィルム基材20上に形成される。このとき、第1の偏光変換素子151の各偏光ビームスプリッタ151a同士の境界は、露光光を透過しないため、配向材料膜21上には、境界面が投影され、未露光の領域が一時的に残される。しかし、この未露光の領域は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように残されているため、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、境界面に対応する未露光の領域にも露光光が照射され、配向膜をスキャン方向に沿って均一に形成することができる。そして、P偏光の露光光の照射による配向材料膜21の硬化量は例えば50%である。図12(a)に示す状態で配向膜21aが所定の領域に形成されたら、例えばフライアイレンズ13とコンデンサレンズ14との間に配置されたシャッタ(図示せず)を閉じることにより、P偏光の露光光による露光を停止する。
【0088】
P偏光の露光光による露光が終了したら、露光光の光路上にS偏光の露光光を透過しP偏光の露光光を反射させる第2の偏光変換素子152を配置する。また、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。
【0089】
従って、露光光の光路上に第2の偏光変換素子152を配置した後、シャッタを開け、光源11からの露光光の出射を再開すると、露光光は、フライアイレンズ13、コンデンサレンズ14及び第2の偏光変換素子152を透過することにより、S偏光の直線偏光の平行光として、第1のマスク12aへと向かう。図12(b)に示すように、第1のマスク12aには、パターン形成用領域121に、互いに平行に伸びる複数本のパターン121aが設けられており、パターン121aを透過した光は、ズームレンズ16に入射する。このズームレンズ16の動作は、第3実施形態と同様であるため、省略する。
【0090】
ズームレンズ16を透過したS偏光の露光光は、P偏光の露光光により形成された硬化量が50%の配向膜21a上に照射される。露光光は、複数本のパターン121aを透過することにより、1画素に対応する幅ずつ離隔するように、複数の照射領域が並ぶように照射される。この露光光の照射領域は、例えば2列×3行の6個の絵素により1画素が構成され、行方向に1方向に並ぶ複数個の画素に対応する領域がその幅方向(列方向)に2分割された一方の領域であり、各照射領域の幅は、1絵素の列方向の長さに対応している。
【0091】
本実施形態においては、フィルム基材20上に形成された配向材料膜21は、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料から形成されている。よって、P偏光の露光光の照射により硬化量が50%となるまで硬化した配向膜21aは、S偏光の露光光の照射領域において、再度、配向方向が変化し、S偏光の露光光の照射により特定される配向方向を有する配向膜21bが形成される。このとき、第2の偏光変換素子152の各偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面は、露光光を透過しないため、配向膜21a上には、境界面が投影され、配向方向が変化しない領域が一時的に残される。しかし、この領域は、フィルムのスキャン方向に対して傾斜するように残されているため、フィルムを露光光の照射位置に連続的に供給することにより、境界面に対応する領域にもS偏光の露光光が照射されて配向方向が変化し、配向膜21bをスキャン方向に沿って均一に形成することができる。そして、第1のマスク12aのパターン121aを透過したS偏光の露光光による露光により、配向材料膜を硬化量が例えば100%になるまで硬化させて、配向膜21aとは配向方向が異なる配向膜21bを形成する。このとき、S偏光の露光光が照射されない領域は、硬化量が50%のままであるが、この領域については、露光が終了した後、例えばポストベークを施す。これにより、図12(b)に示すように、第3実施形態と同様の配向膜が形成される。
【0092】
本実施形態においても、マスク部12(12a,12b)と露光対象部材2との間にズームレンズ16を設けているので、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
次に、本発明の第5実施形態に係る露光装置について説明する。図13(a)及び図13(b)は本発明の第5実施形態に係る露光装置による露光工程を示す図である。本実施形態においても、第4実施形態と同様に、露光対象部材2は、フィルム基材20の表面上に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料からなる配向材料膜21が形成されたものである。また、マスク部12についても、第4実施形態と同様に第1のマスク12a及び第2のマスク12bが設けられている。
【0094】
本実施形態においては、制御装置は、マスク用の駆動装置を以下のように制御する。即ち、露光光の光路上に第1の偏光変換素子151を配置し、第1の偏光変換素子151によりP偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第1のマスク12aが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、P偏光の直線偏光の露光光が第1のマスク12aのパターン121aに透過される。また、第2の偏光変換素子152によりS偏光の直線偏光の露光光を透過させる際には、制御装置は、第2のマスク12bが露光光の光路上に配置されるように、駆動装置を制御する。そして、S偏光の直線偏光の露光光が第2のマスク12bの開口部121bに透過される。その他の構成は、第4実施形態と同様である。
【0095】
本実施形態においては、図13(a)に示すように、先ず、P偏光の露光光による露光を行うことにより、露光対象部材2には、第1実施形態と同様に、第1のマスク12aのパターン121aに対応した配向膜21aが形成され、配向膜21a間の領域には、未露光の部分が残される。なお、配向膜21a上についても、第1の偏光変換素子151の各偏光ビームスプリッタ151a同士の境界面が投影されることによる未露光の領域が、一時的には残るが、フィルムの移動方向に傾斜するように残されるため、連続露光によって露光光が照射され、境界面が投影された未露光の領域はなくなる。本実施形態においては、P偏光の露光光による露光により、配向材料膜21を硬化量が100%となるまで硬化させ、形成される配向膜21aの配向方向をP偏光の露光光により特定される配向方向に固定する。従って、形成された配向膜21aに更に他の露光光を照射しても、その配向方向は変わることがない。
【0096】
従って、配向材料膜21の全域に第2のマスク12bの開口部121bを透過したS偏光の露光光を照射すると、P偏光の露光光が照射されず未露光であった領域にはS偏光の露光光の照射により、配向膜21aとは配向方向が異なる配向膜21bが形成される。このS偏光の露光光の照射の際にも、第2の偏光変換素子152の各偏光ビームスプリッタ152a同士の境界面が投影されることによる未露光の領域が、一時的には残るが、フィルムの移動方向に傾斜するように残るため、連続露光によって露光光が照射され、境界面が投影された未露光の領域はなくなる。S偏光の露光光の照射の際には、P偏光の露光光の照射により形成された配向膜21aは、S偏光の露光光を照射されても配向方向が変化しない。これにより、第1乃至第4実施形態と同様の配向膜21a,21bが形成される。なお、S偏光の露光光により形成される配向膜21bの硬化量は100%未満であってもよいが、配向方向を固定するためには、露光が終了した後、例えばポストベークを施す。
【0097】
本実施形態においても、マスク部12(12a,12b)と露光対象部材2との間にズームレンズ16を設けているので、第3及び第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
以上説明した実施形態においては、露光対象部材としてフィルム基材の表面に配向膜材料が形成されたフィルムを使用し、配向膜材料を光配向させて3Dディスプレイ用の偏光フィルムを製造する場合について述べたが、表面に配向材料膜が形成されたガラス基板を露光対象部材として使用した場合においても、本発明の露光装置を使用することにより、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1,10:露光装置、11:光源、12:マスク部、12a,12b:マスク、120:枠体、121:パターン形成用領域、121a:パターン、13:フライアイレンズ、14:コンデンサレンズ、15:偏光変換部材、150:枠体、151:第1の偏光変換素子、152:第2の偏光変換素子、151a,152a:偏光ビームスプリッタ、16:ズームレンズ、16a,16b:平凸レンズ、16c:凹レンズ、17:反射ミラー、18:カメラ、2:露光対象部材、20:フィルム基材、21:配向材料膜、21a,21b:配向膜、30:生産計画用制御装置、31:センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、
前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域と前記第2の光透過領域とが一体に設けられたものであることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光により前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に照射して露光することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第2のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンに前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第1のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンを透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2のマスクの開口部に前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子は、前記マスク部に固定されていることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
更に、前記マスク部と前記露光対象部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光対象部材における前記露光光の照射領域の大きさを調節可能なズームレンズを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
更に、前記光源と前記偏光変換部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズと、このフライアイレンズの透過光が入射され前記露光光を平行光にするコンデンサレンズと、を有し、このコンデンサレンズの透過光が前記偏光変換部材に入射されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項11】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置に使用される偏光変換部材において、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されて使用されることを特徴とする偏光変換部材。
【請求項12】
前記偏光変換素子は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させることを特徴とする請求項11に記載の偏光変換部材。
【請求項13】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光方法において、
露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子がその幅方向に接触している露光装置を使用し、
前記複数個の偏光変換素子の境界面を前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置して露光することを特徴とする露光方法。
【請求項14】
前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されていることを特徴とする請求項13に記載の露光方法。
【請求項15】
前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光を照射して前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させる工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記マスク部のパターンに透過させて、前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して露光する工程と、を有することを特徴とする請求項14に記載の露光方法。
【請求項16】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有することを特徴とする請求項14に記載の露光方法。
【請求項17】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクから前記第1のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第1のマスクのパターンに透過させて、前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する工程と、を有することを特徴とする請求項16に記載の露光方法。
【請求項18】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第1のマスクのパターンを透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクから前記第2のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第2のマスクの開口部に透過させて、前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する工程と、を有することを特徴とする請求項16に記載の露光方法。
【請求項1】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、
前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されていることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域と前記第2の光透過領域とが一体に設けられたものであることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光により前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に照射して露光することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第2のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンに前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記露光対象部材の露光パターン形成用領域に露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成されている場合に、前記制御装置は、前記第1の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記第1のマスクが前記露光光の光路上に配置されるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第1のマスクのパターンを透過させた前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光した後、前記第2の偏光変換素子が前記露光光の光路上に配置されるように前記第1の駆動装置を制御すると共に、前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクに入れ換えるように前記第2の駆動装置を制御し、前記第2のマスクの開口部に前記他方の直線偏光の露光光を透過させることにより前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子は、前記マスク部に固定されていることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
更に、前記マスク部と前記露光対象部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光対象部材における前記露光光の照射領域の大きさを調節可能なズームレンズを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
更に、前記光源と前記偏光変換部材との間における前記露光光の光路上に、前記露光光の強度を光軸に垂直な面内で均一化するフライアイレンズと、このフライアイレンズの透過光が入射され前記露光光を平行光にするコンデンサレンズと、を有し、このコンデンサレンズの透過光が前記偏光変換部材に入射されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項11】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光装置に使用される偏光変換部材において、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子を有し、これらの偏光変換素子がその幅方向に接触しその境界面が前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置されて使用されることを特徴とする偏光変換部材。
【請求項12】
前記偏光変換素子は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させることを特徴とする請求項11に記載の偏光変換部材。
【請求項13】
露光光の照射位置に露光対象部材を供給して前記露光対象部材上に形成された露光材料を連続的に露光する露光方法において、
露光光を出射する光源と、前記露光光を直線偏光させて透過させる偏光変換部材と、この偏光変換部材を透過した露光光を透過させる光透過領域が設けられたマスク部と、を有し、前記偏光変換部材は、棒状をなし前記露光光の特定の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の偏光変換素子がその幅方向に接触している露光装置を使用し、
前記複数個の偏光変換素子の境界面を前記露光対象部材の移動方向に対して傾斜するように配置して露光することを特徴とする露光方法。
【請求項14】
前記偏光変換部材は、P偏光及びS偏光のいずれか一方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第1の偏光変換素子と他方の直線偏光の露光光のみを透過させる複数個の第2の偏光変換素子とが、前記マスク部の異なる第1及び第2の光透過領域に対応させて配置されていることを特徴とする請求項13に記載の露光方法。
【請求項15】
前記マスク部は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びる複数本のパターンを有し、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させるように駆動する第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、前記第1の偏光変換素子に透過され前記マスク部のパターンに透過された前記一方の直線偏光の露光光を照射して前記パターンに対応する前記露光対象部材の第1の光照射領域を露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記マスク部を前記パターンに垂直な方向に移動させる工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記マスク部のパターンに透過させて、前記露光対象部材の前記第1の光照射領域とは異なる第2の光照射領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して露光する工程と、を有することを特徴とする請求項14に記載の露光方法。
【請求項16】
前記マスク部は、前記第1の光透過領域が設けられた第1のマスクと、前記第2の光透過領域が設けられた第2のマスクと、を有することを特徴とする請求項14に記載の露光方法。
【請求項17】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第2のマスクの開口部を透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の全域を第1の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第2のマスクから前記第1のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第1のマスクのパターンに透過させて、前記一方の直線偏光の露光光により露光された領域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して前記第1の硬化量より大きい第2の硬化量となるまで露光する工程と、を有することを特徴とする請求項16に記載の露光方法。
【請求項18】
前記第1のマスクの第1の光透過領域は、前記露光対象部材の移動方向に平行に延びるように設けられた複数本のパターンであり、前記第2のマスクの第2の光透過領域は、前記露光対象部材の露光パターン形成用領域の全域に透過光が形成される開口部であり、
前記露光装置は、更に、前記第1の偏光変換素子及び前記第2の偏光変換素子のいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように前記偏光変換部材を移動させる第1の駆動装置と、前記第1のマスク及び前記第2のマスクのいずれかが前記露光光の光路上に配置されるように、前記第1のマスク及び前記第2のマスクを入れ換える第2の駆動装置と、前記第1及び第2の駆動装置を制御する制御装置と、を有し、
前記第1の駆動装置により前記第1の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置する工程と、露光光の照射により硬化量が変化する露光材料が形成された露光対象部材に対して、前記第1の偏光変換素子に透過され前記第1のマスクのパターンを透過した前記一方の直線偏光の露光光により前記露光パターン形成用領域の第1の光照射領域を第3の硬化量となるまで露光する工程と、前記露光光の出射を停止した後、前記第1の駆動装置により前記第2の偏光変換素子を前記露光光の光路上に配置すると共に、前記第2の駆動装置により前記露光光の光路上に配置されるマスクを前記第1のマスクから前記第2のマスクに入れ換える工程と、前記露光光の出射を再開して前記第2の偏光変換素子に透過された前記他方の直線偏光の露光光を前記第2のマスクの開口部に透過させて、前記露光パターン形成用領域の全域に前記他方の直線偏光の露光光を照射して第3の硬化量となるまで露光する工程と、を有することを特徴とする請求項16に記載の露光方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−141367(P2012−141367A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292624(P2010−292624)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】
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