説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】 特にレンズアレイ等からなる光学結像系の波長分散に起因して、感光体ドラム上に形成される潜像がボケてしまうのを防止した、露光装置とこの露光装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】
複数のEL素子を整列配置したラインヘッド1と、波長分散を有し、ラインヘッドからの光を結像させる光学結像系31と、光学結像系31を透過した前記ラインヘッド1からの光によって露光される感光体9と、を備えた露光装置である。EL素子の発光スペクトル強度が最大となるピーク波長より所定波長ずれた基準波長における、EL素子の発光スペクトル強度が、基準波長における感光体9の感度よりも低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置における露光手段としての露光装置と、この露光装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタとして、ラインプリンタ(画像形成装置)が知られている。このラインプリンタは、被露光部となる感光体ドラムの周面上に、帯電器、ライン状のプリンタヘッド(ラインヘッド)、現像器、転写器などの装置を近接配置したものである。すなわち、帯電器によって帯電された感光体ドラムの周面上に、プリンタヘッドに設けられた発光素子の選択的な発光動作で露光を行なうことにより、静電潜像を形成し、この潜像を現像器から供給されるトナーで現像して、そのトナー像を転写器で用紙に転写するようにしたものである。
【0003】
ところで、前記のようなプリンタヘッドの発光素子としては、一般に発光ダイオードなどが用いられている。しかし、これは数千個の発光点を精度良く配列することが極めて困難であるという課題がある。そこで、近年では、発光点を精度良く作り込める有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)を発光素子とする発光素子アレイを、プリンタヘッドとして備えた画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、このような有機EL素子からなる発光素子アレイをプリンタヘッドとして用いたものでは、有機EL素子に微小共振器を設け、有機EL素子で発光される光における発光スペクトルの半値幅を狭めることにより、発光した光を効率良く利用できるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
なお、前述したような電子写真方式のラインプリンタでは、通常、プリンタヘッド(ラインヘッド)からの放射光を、セルフォック(登録商標)レンズアレイ(日本板硝子社の商品名;以下、セルフォック(登録商標)レンズをSL、セルフォック(登録商標)レンズアレイをSLアレイと記す)等のレンズアレイからなる光学結像系を通過させることで感光体ドラム上に結像し、露光する方式が採られている。ここで、SLアレイは、円柱状のレンズ素子であり、正立等倍結像させるSL素子を多数配列したことにより、広範囲の画像の結像を可能にしたものである。
【特許文献1】特開平11−198433号公報
【特許文献2】特開2000−77184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SLアレイのようなレンズアレイを用いて感光体ドラムに結像させると、このレンズアレイの波長分散により、感光体ドラム上に到達する光が、その波長毎に焦点がずれてしまうことで感光体ドラム上に形成される潜像がボケてしまい、結果として、この潜像を介して得られる用紙上での画像もボケてしまうといった課題がある。有機EL素子は、一般にその発光スペクトルにおける発光波長域が広く、したがってレンズアレイが許容する範囲を越えた波長の光がレンズアレイに入射してしまい、前述したようにこのレンズアレイを透過した光がその波長分散によって波長毎に焦点がずれてしまうことで、感光体ドラム上に形成される潜像がボケてしまうのである。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特にレンズアレイ等からなる光学結像系の波長分散に起因して、感光体ドラム上に形成される潜像がボケてしまうのを防止した、露光装置とこの露光装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、以下の知見を得た。
前記の潜像がボケる現象は、もちろんレンズアレイ等からなる光学結像系の波長分散に起因するものであるが、実際にこの現象が起こることの要因の一つに、用いる感光体ドラムの感度が影響することが分かった。すなわち、一般の画像形成装置に用いられる感光体ドラムとしては、プリンタヘッドの発光素子となる発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)の波長に合わせて、緑色光から赤外光の領域に亘る、非常に幅広い領域に感度を有するものが主に用いられており、これが、潜像がボケる現象の一因になっている。
そして、このような知見に基づき、本発明者は本発明を完成させたのである。
【0009】
本発明の露光装置は、複数のEL素子を整列配置したラインヘッドと、波長分散を有し、前記ラインヘッドからの光を結像させる光学結像系と、前記光学結像系を透過した前記ラインヘッドからの光によって露光される感光体と、を備えた露光装置であって、前記EL素子の発光スペクトル強度が最大となるピーク波長より所定波長ずれた基準波長における、前記EL素子の発光スペクトル強度が、前記基準波長における前記感光体の感度よりも低いことを特徴としている。
【0010】
ラインヘッドから光学結像系を通って感光体上に到達し結像する光は、予め帯電器によって帯電させられた感光体(例えば感光体ドラム)が、これを感じる、すなわち感光することにより、静電潜像となる。このとき、感光体が受ける(感じる)光の発光スペクトル強度は、前記静電潜像を介して用紙上に印刷される階調に対応するようになっている。そして、通常はこの感光体が感じる光の発光スペクトル強度の下限値が、用紙上に印刷する際の階調における、一番薄い(低い)階調に対応するように設計される。つまり、感光体が受けた光の発光スペクトル強度が前記下限値未満である場合には、感光体は、実効的な静電潜像を形成せず、したがって用紙上にも実質的に印刷されないようになっているのである。
【0011】
そこで、本発明の露光装置では、特に光学結像系の波長分散に起因する潜像のボケを、感光体の感度を適宜にすることで防止している。
すなわち、例えば光学結像系の波長分散によって感光体上で得られる潜像にボケが生じ始める波長を基準波長とすると、この基準波長での発光スペクトル強度が、感光体が感じうる発光スペクトル強度の下限値未満となるような感度特性を有した感光体を用いることにより、結果的に感光体上で得られる潜像にボケが生ぜず、したがって用紙上に印刷される画像にもボケが生じないようになる。
【0012】
また、前記露光装置においては、前記基準波長が、前記ピーク波長に対して長波長側であるのが好ましい。
EL素子として特に有機EL素子に用いられる発光材料は、一般にその発光スペクトルが、長波長側で裾が拡がるようになっている。したがって、波長分散によって感光体上で得られる潜像にボケを生じさせる波長域は、短波長側に比べ長波長側の方が多くなる。よって、前記基準波長を前記ピーク波長に対して長波長側とすることで、短波長側とする場合に比べ、光学結像系の波長分散に起因する潜像のボケをより良好に防止することが可能になる。
【0013】
また、前記露光装置においては、前記ラインヘッドには、前記EL素子の光出射側に配置された透明電極の外側に、共振器が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、EL素子で発光される光における発光スペクトルの半値幅を狭めることにより、発光した光を効率良く利用することができる。
【0014】
また、前記露光装置においては、前記光学結像系が正立等倍結像系であるのが好ましい。
このようにすれば、例えばこの正立等倍結像系であるレンズ素子を多数配列してなるレンズアレイを用いた場合に、隣り合うレンズ素子が作る像が互いに重なり合わないので、原稿サイズのような大面積の露光が可能になる。
【0015】
なお、この露光装置においては、前記基準波長が、前記ピーク波長から50nmずれた波長であるのが好ましい。
例えば正立等倍結像系として前記のSLアレイを用いた場合、このSLアレイはその波長分散での許容範囲が、設定された中心波長に対して通常は±50nmとなっている。すなわち、この範囲内であれば、SLアレイではその波長分散による影響がほとんど出ず、したがって感光体上に照射した光の焦点深度にほとんど差(ずれ)がなくなる。よって、前記ピーク波長を中心波長として設定すれば、基準波長を前記ピーク波長から50nmずれた波長とすることにより、実際に感光体上で結像し潜像を形成する光の波長域が、SLアレイの許容範囲内となり、これにより潜像のボケがより確実に防止される。
【0016】
本発明の画像形成装置は、露光手段として、前記の露光装置を備えたことを特徴としている。
この画像形成装置によれば、前述したように露光装置として、感光体上で得られる潜像にボケが生じるのが防止されたものを備えているので、用紙上に印刷する画像にもボケが生じないようになり、したがってシャープな印刷を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で参照する各図面においては、図面を見易くするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
【0018】
(露光装置)
まず、本発明の露光装置について説明する。
図1は、本発明の露光装置の一実施形態を示す図であり、図1中符号100は露光装置である。この露光装置100は、後述する画像形成装置において露光手段として用いられるもので、ラインヘッド1と、このラインヘッド1からの光を結像させるレンズアレイ(光学結像系)31と、前記レンズアレイ31を透過した前記ラインヘッド1からの光によって露光される感光体ドラム(感光体)9と、を備えて構成されたものである。
【0019】
(ラインヘッドモジュール)
前記ラインヘッド1とレンズアレイ31とは、互いにアライメントされた状態でヘッドケース52に一体的に保持され、これによってラインヘッドモジュール101となっている。図2は、このラインヘッドモジュール101の斜視断面図であり、図2に示すようにラインヘッドモジュール101は、複数の有機EL素子を整列配置したラインヘッド1と、ラインヘッド1からの光を結像させるレンズ素子を整列配置したレンズアレイ31と、ラインヘッド1およびレンズアレイ31の外周部を保持するヘッドケース52と、を備えて構成されたものである。ここで、本実施形態においては、レンズアレイ31として、特に正立等倍結像系であるSLアレイが用いられている。このような構成のもとにラインヘッドモジュール101は、ラインヘッド1で発光し出射した光を、感光体ドラム9に正立等倍結像させるようになっている。
【0020】
(ラインヘッド)
図3は、ラインヘッド1を模式的に示した図である。このラインヘッド1は、長細い矩形の素子基板2上に、複数の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子3を配列してなる発光素子列(発光部ライン)3Aと、有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、これら駆動素子4(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成したものである。なお、図3では発光素子列3Aを1列の有機EL素子3で形成したが、例えば有機EL素子3を2列にしてこれらを千鳥状に配してもよい。その場合には、ラインヘッド1の長手方向における有機EL素子3のピッチを小さくすることができ、したがって後述する画像形成装置の解像度を向上させることができる。
【0021】
有機EL素子3は、一対の電極間に少なくとも有機発光層を備えたもので、その一対の電極から発光層に電流を供給することにより、発光するようになっている。有機EL素子3における一方の電極には電源線8が接続され、他方の電極には駆動素子4を介して電源線7が接続されている。この駆動素子4は、薄膜トランジスタ(TFT)や薄膜ダイオード(TFD)等のスイッチング素子で構成されている。駆動素子4にTFTを採用した場合には、そのソース領域に電源線8が接続され、ゲート電極に制御回路群5が接続される。そして、制御回路群5により駆動素子4の動作が制御され、駆動素子4により有機EL素子3への通電が制御されるようになっている。
なお、有機EL素子3および駆動素子4の詳細な構造については後述する。また、このラインヘッド1では、EL素子として有機EL素子3を用いているが、これに代えて無機EL素子を用いることもできる。
【0022】
(SLアレイ)
図4は、レンズアレイ31としてのSLアレイの斜視図である。このレンズアレイ(SLアレイ)31は、SL素子31aを千鳥状に2列配列(配置)したものである。そして、千鳥状に配置された各SL素子31aの隙間には黒色のシリコーン樹脂32が充填されており、さらにその周囲にはフレーム34が配置されている。
【0023】
前記SL素子31aは、その中心から周辺にかけて放物線上の屈折率分布を有している。そのため、SL素子31aに入射した光は、その内部を一定周期で蛇行しながら進む。よって、このSL素子31aの長さを調整すれば、画像を正立等倍結像させることができる。そして、このように正立等倍結像するSL素子31aにあっては、隣接するSL素子31aどうしが作る像を重ね合わせることが可能になり、広範囲の画像を得ることができる。したがって、図4に示したSLアレイ31は、ラインヘッド1全体からの光を精度よく結像させることができるようになっている。
【0024】
しかし、SLアレイからなるレンズアレイ31は、通常の球面レンズと同様に色収差を有している。この色収差は、各SL素子31aの光軸上での屈折率n0と、屈折率分布定数(√A)の波長分散とに起因している。すなわち、各波長によって少しずつ異なる屈折率分布が与えられることにより、レンズアレイ31(SL素子31a)に入射した光は、波長によって異なる蛇行周期を持つようになるのである。
【0025】
この色収差のため、すなわち波長分散のため、入射する光の波長によって物体像面間距離が異なるようになり、結果として、レンズアレイ31は画像伝送を行う際の解像力が低下してしまう。つまり、感光体ドラム9への露光精度が低下し、感光体ドラム9上で得られる潜像にボケを生じさせてしまうのである。例えば、発光源が、本実施形態のごとく有機EL素子3である場合には、前述したように有機EL素子3は一般にその発光スペクトルにおける発光波長域が広いことから、レンズアレイ31が許容する範囲を越えた波長の光が多くレンズアレイ31に入射してしまい、これによって、感光体ドラム9上に形成される潜像がボケてしまうのである。すなわち、感光体ドラム9として、例えば緑色光から赤外光の領域に亘る、非常に幅広い領域に感度を有するものを用いた場合、レンズアレイ31が許容する範囲を越えた波長の光についてもこれに感光してしまうことで、得られる潜像にボケを生じさせてしまうのである。
【0026】
ここで、SL素子31aからなるSLアレイ(レンズアレイ31)は、予め設定された中心波長に対し、波長分散を実質的に起こさせない、許容範囲が設けられている。具体的には、中心波長に対し、通常は±50nm以内の範囲が、波長分散が実質的に起きない許容範囲となっている。したがって、この範囲内の波長の光のみが入射した場合には、SLアレイ(レンズアレイ31)ではその波長分散による影響がほとんど出ず、これにより透過して感光体ドラム9上に照射した光の焦点深度に、ほとんど差(ずれ)が生じなくなるのである。
【0027】
(感光体ドラム)
このような背景のもとに、本発明では、感光体ドラム9として、特にその感度が適宜なものを用いることにより、レンズアレイ31の波長分散に起因する潜像のボケを防止している。すなわち、感光体ドラム9として、ラインヘッド1の有機EL素子3で発光される光における発光スペクトルの、ピーク波長より所定波長ずれた基準波長での発光スペクトル強度が、該感光体ドラム9が感じうる発光スペクトル強度の下限値未満となるように、前記ピーク波長に対して前記基準波長以上に離れた波長域において、その感度が低いものを用いている。
【0028】
具体的には、本実施形態では図5中のBで示す特性を有した感光体ドラムが用いられている。なお、このような特性を有する感光体ドラムとしては、例えば富士電機画像デバイス株式会社製のタイプ9Eを挙げることができる。このタイプ9Eは、可視領域でのコピー用の画像形成装置に用いられるもので、通常は露光源となる光源にハロゲンランプが用いられるものである。
【0029】
図6は、有機EL素子の発光スペクトル強度と、前述した、緑色光から赤外光の領域に亘る、非常に幅広い領域に感度を有する感光体ドラムの感度とを、波長についての横軸を共通にして示した図である。この図6を用いて、有機EL素子の発光スペクトル強度と感光体ドラムの感度との関係について説明する。
まず、有機EL素子は、図6に示すようにその発光スペクトルにおける発光波長域が広く、したがってレンズアレイ31の前記許容範囲a(波長分散を実質的に起こさせない許容範囲)を越えた波長の光が多く含まれている。特に、有機EL素子では、一般に用いられる発光材料の発光スペクトルが、長波長側で裾が拡がるようになっている。
【0030】
また、前述した非常に幅広い領域に感度を有する感光体ドラムでは、その感度が、長波長側になるに連れて漸次高くなり、ある波長でほぼ一定となる。
すると、前記したように有機EL素子の発光スペクトルにおいて、特にその長波長側で前記許容範囲aを越える波長の光に対する感度が高くなっていることから、この許容範囲aを越える波長の光による露光の度合いが高くなり、この光によって比較的高い階調で潜像が形成されてしまうのである。
しかしながら、このように許容範囲aを越える波長の光は、前述したように波長分散によって許容範囲a内の波長の光とは感光体ドラム9上での焦点深度に差(ずれ)が生じてしまい、結果的に得られる潜像にボケを生じさせてしまう。
【0031】
一方、本実施形態の感光体ドラム9、すなわち図5中のBで示す特性を有した感光体ドラム9を用いると、図7に示すようにこの感光体ドラム9は前記許容範囲aを越える波長の光に対する感度が十分に低くなっていることから、この許容範囲aを越える波長の光によっては感光体ドラム9は実質的に感光せず、したがって実効的な静電潜像を形成しない。つまり、感光体ドラム9で形成される潜像の階調(強度)は、光の強度(発光スペクトル強度)とその波長での感光体ドラム9の感度との積による、見掛け上の強度で決定される。すなわち、図7に示した例では、実際に感光体ドラム9が前記有機EL素子の発光光の見掛け上の強度に対して感光する度合いは、図8に示されるように、特に長波長側において図7に比べ低くなる。
【0032】
ここで、感光体ドラム9は、後述するように予め帯電器によって帯電させられ、その状態で有機EL素子3(ラインヘッド1)からレンズアレイ31を通って照射された光を受けてこれを感じる、すなわち感光することにより、静電潜像を形成する。レンズアレイ31を介して受ける(感じる)光の発光スペクトル強度(実際には、図8に示した見掛け上の強度)は、前記静電潜像を介して用紙上に印刷される階調に対応するようになっている。そして、通常はこの感光体ドラム9が感じる光の発光スペクトル強度の下限値が、用紙上に印刷する際の階調における、一番薄い(低い)階調に対応するように設計される。つまり、感光体ドラム9が受けた光の発光スペクトル強度が前記下限値未満である場合には、感光体ドラム9は、実効的な静電潜像を形成せず、したがって用紙上にも実質的に印刷ないようになっているのである。
【0033】
感光体ドラム9が感じる光の発光スペクトル強度の下限値bは、前述したように最低の階調に対応して設計される。例えば図8に示すように、有機EL素子3で発光する光における発光スペクトルの、ピーク波長での感度を100%とした場合、これに対して5%とされる。つまり、図6に示した発光スペクトル強度では、特に前記の許容範囲aを越えた波長域(特に長波長側)で、この下限値bとしての5%を上回る波長域が多く存在し、結果的にこの波長域の光が感光体ドラム9上に得られる潜像にボケを生じさせるものとなっている。これは、発光スペクトル強度については共通である、図7においても、同様である。
【0034】
しかし、本実施形態では、感光体ドラム9の感度を前述したように適宜にしたことにより、図8に示すように、見掛け上の強度が、前記の許容範囲aを越えた波長域(長波長側)において、前記の下限値b(5%)を下回るようになる。したがって、本実施形態では、前記構成のラインヘッドモジュール101から光を受け、露光した際、感光体ドラム9は、前記許容範囲aを越えた波長域(長波長側)の光に対しては実質的に感光せず、したがって感光体ドラム9上で得られる潜像にボケが生じないことから、後述するように用紙上に印刷される画像にもボケが生じることなく、シャープな印刷を行うことができるようになるのである。
【0035】
(ヘッドケース)
図2に戻り、前記ラインヘッドモジュール101の細部を説明する。このラインヘッドモジュール101は、ラインヘッド1およびレンズアレイ31の外周部を支持するヘッドケース52を備えている。このヘッドケース52は、Al等の剛性材料によってスリット状に形成されている。ヘッドケース52の長手方向に垂直な断面は、上下両端部が開口した形状となっており、その上半部の側壁52a,52aは相互に平行に配置され、下半部の側壁52b,52bはそれぞれ下端中央部に向かって傾斜配置されている。なお図示しないが、ヘッドケース52の長手方向における両端部の側壁も、相互に平行に配置されている。
【0036】
そして、ヘッドケース52の上半部側壁52aの内側には、上述したラインヘッド1が配置されている。
図9は、ラインヘッドの結合部分(図2のA部)における拡大図である。図9に示すように、ヘッドケース52の側壁52aの内面には、全周にわたって階段状の台座53が形成されている。その台座53の上面にラインヘッド1の下面を当接させて、ラインヘッド1が水平に配置されている。詳細は後述するが、ラインヘッド1はボトムエミッション方式であり、素子基板2を下側に向け、封止基板30を上側に向けて配置されている。
【0037】
また、ヘッドケース52の側壁52aとラインヘッド1とによって形成される角部には、全周にわたって封止材54a、54bが配設されている。なお、ヘッドケース52の側壁52aの内面とラインヘッド1の側面との隙間にも、封止材が配設されている。これにより、ヘッドケース52に対してラインヘッド1が気密接合されている。そのうち、ラインヘッド1の上側に配設された封止材54bは、アクリル等の紫外線硬化性樹脂で構成されている。また、ラインヘッド1の下側に配設された封止材54aは、エポキシ等の熱硬化性樹脂で構成されている。
【0038】
なお、これらの封止材54a、54bには、ゲッター剤が含有されていてもよい。ゲッター剤とは、乾燥剤や脱酸素剤を意味しており、水分や酸素を吸着するものである。この構成によれば、封止材54a、54bによって水分や酸素の透過を確実に遮断することができる。したがって、ラインヘッドに形成された有機EL素子の吸湿や酸化を抑制することが可能になり、有機EL素子の耐久性の低下および寿命の短命化を阻止することができる。
【0039】
図2に戻り、ヘッドケース52の下端部に形成されたスリット状の開口部には、レンズアレイ31が配置されている。そして、ヘッドケース52の側壁52bとレンズアレイ31とによって形成される角部には、全周にわたって封止材55a、55bが配設されている。なお、ヘッドケース52の側壁52aの内面とラインヘッド1の側面との隙間にも、封止材が配設されている。これにより、ヘッドケース52に対してレンズアレイ31が気密接合されている。そのうち、レンズアレイ31の上側に配設された封止材55aは、エポキシ等の熱硬化性樹脂で構成されている。また、レンズアレイ31の下側に配設された封止材55bは、アクリル等の紫外線硬化性樹脂で構成されている。さらに、これらの封止材55a,55bには、ゲッター剤が含有されていてもよい。
【0040】
そして、ヘッドケース52の内側におけるラインヘッド1とレンズアレイ31との間には、チャンバ56が形成されている。前述したように、ヘッドケース52に対してラインヘッド1およびレンズアレイ31が気密接合されているので、チャンバ56は密閉封止されている。そして、チャンバ56の内部は、窒素ガス等の不活性ガスによって満たされるか、または真空に保持されている。
【0041】
(有機EL素子および駆動素子)
次に、ラインヘッドにおける有機EL素子や駆動素子等の詳細な構成について、図10(a)、(b)を参照して説明する。
発光層60で発光した光を画素電極23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型である場合には、素子基板2側から発光光を取り出す構成であるので、素子基板2としては透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0042】
また、発光層60で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成となるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
本実施形態では、ボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0043】
素子基板2上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。
【0044】
ここで、有機EL素子3および駆動用TFT123(駆動素子4)を図3に対応した模式図で示すと、図10(b)に示すようになる。図10(b)において、電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続し、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続している。
そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、図10(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0045】
陽極として機能する画素電極23は、ボトムエミッション型である本実施形態では、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられている。
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0046】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。この場合、用いる感光体は、その発光領域に感度を持つものを採用する。
【0047】
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0048】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
また、この陰極50上には接着層を介して封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0049】
また、このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は素子基板2上に形成されたものである。すなわち、素子基板2の表面にはSiOを主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0050】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiOを主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0051】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0052】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0053】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0054】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面には、画素電極23と、前述した無機隔壁25とが形成されており、さらに無機隔壁25上には、有機隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上には、無機隔壁25に形成された前記開口25aと、有機隔壁221に形成された開口221aとの内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、これによって機能層が形成されている。
なお、この例では、EL素子を駆動する素子として、素子基板2上にTFTなどの駆動素子4を作り込んだ例を挙げたが、駆動素子4を素子基板2上に作り込まず、駆動素子4を外付けにする、具体的にはEL素子基板の端子領域にドライバICをCOG実装する、またはドライバICを実装したフレキシブル回路基板をEL素子基板に実装するようにしても良い。
【0055】
このような構成からなるラインヘッドモジュール101は、図1に示したように被露光部となる感光体ドラム9に光を照射し結像して、露光するようになっている。このとき、ラインヘッド1とSLアレイ31とは互いにアライメントされた状態でヘッドケース52に一体的に保持されているので、使用に際しては、単にラインヘッドモジュール101を感光体ドラム9にアライメントするだけでよい。
したがって、このラインヘッドモジュール101を備えた露光装置100にあっては、ラインヘッド1とSLアレイ31とを別に用意する場合に比べ、感光体ドラム9に対するアライメントが容易になり、アライメント不良に起因する露光むらが確実に防止されるようになる。
【0056】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、ラインヘッド1の有機EL素子については、共振器を備えた構造としてもよい。図11は、共振器を備えた有機EL素子を模式的に示した図であり、図11中符号120はラインヘッド中の有機EL素子部である。この有機EL素子部120は、図10に示した有機EL素子3と基本的には同様の構成からなるもので、異なるところは、微小共振器(共振器)121を備えた点である。
【0057】
すなわち、この有機EL素子部120は、透明の素子基板2上に駆動素子等を含む回路部(図示せず)を形成し、その上(図11中では下側)に平坦化層を介して微小共振器121を形成し、さらにITOからなる陽極(画素電極)23、正孔輸送層70、発光層60、陰極50をこの順に形成してなるものである。微小共振器121は、例えばSiN膜121aとSiO膜121bとを交互に、それぞれ3層ずつ積層してなるもので、SiN膜121aとSiO膜121bとの屈折率差により、発光層60で発光した光における発光スペクトルの半値幅を狭めることができる。
【0058】
図12は、微小共振器121を備えた有機EL素子部121による、発光光の発光スペクトルと、微小共振器121を備えていない点以外はこの有機EL素子部121と基本的に同じ有機EL素子部による、発光光の発光スペクトルとを示すグラフである。図12中において、Dは微小共振器121を備えていない有機EL素子部の発光スペクトル、Eは微小共振器121を備えた有機EL素子部121の発光スペクトルである。この図に示すように、微小共振器121を備えたことで、有機EL素子部121は、発光した光における発光スペクトルの半値幅を十分に狭めている。したがって、発光する光のうち、多くの波長域を実質的に露光に供することができ、これにより発光した光を効率良く利用することができる。
【0059】
図11に示した有機EL素子部120を備えたラインヘッドと、図5中のBに示す特性を有した感光体ドラムとを用いて図1に示した露光装置100を構成した。この露光装置100における感光体ドラム上での感光特性を調べたところ、感光体ドラム上での実際的な長波長側の感度(見掛け上の強度)は700nmまでとなり、スペクトルピークに対して5%以上の感度を持つ波長幅は70nmとなった。そして、ラインヘッド内の有機EL素子3からなる直径50μmの発光画素は、感光体上で直径70μmの潜像となった。この構成の露光装置100を用いて後述する画像形成装置で印刷を行ったところ、その線幅は70μmとなり、ボケがないシャープな画像が得られた。
【0060】
なお、図11に示した有機EL素子部120は、ボトムエミッションタイプのものとしたが、本発明の有機EL素子(有機EL素子部)はトップエミッションタイプのものでもよい。その場合も、微小共振器については、図11に示した例と同様に、有機EL素子の光出射側に配置された透明電極の外側に、微小共振器を設けるようにすればよい。
【0061】
また、前記実施形態では、前記の基準波長が、前記ピーク波長に対して長波長側である場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、前記ピーク波長に対して短波長側としてもよい。その場合には、感光体ドラム9として、例えば図5中のCで示す特性を有した感光体ドラムが好適に用いられている。なお、このような特性を有する感光体ドラムとしては、例えば富士電機画像デバイス株式会社製のタイプ4Dを挙げることができる。このタイプ4Dは、通常は露光源となる光源にLDやLEDが用いられるものである。
【0062】
次に、本発明の露光装置が露光手段として備えられている画像形成装置について説明する。
(タンデム方式の画像形成装置)
図13は本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す図であり、図13中符号80はタンデム方式の画像形成装置である。この画像形成装置80は、有機ELアレイラインヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム41K、41C、41M、41Yにそれぞれ配置したことにより、露光装置を構成した、タンデム方式のものである。
【0063】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図13中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっており、前記有機ELアレイラインヘッド101K、101C、101M、101Yに対して、前述したように予め設定された所定の感度を有したものである。
【0064】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図13中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0065】
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)とが設けられている。
ここで、有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、前述したようにヘッドケースによってSLアレイ(図示せず)とともに互いにアライメントされた状態で一体的に保持され、ラインヘッドモジュールとして用いられている。
【0066】
また、この有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)(ラインヘッドモジュール)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0067】
ここで、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、それぞれのアレイ方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0068】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0069】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0070】
なお、図13中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
【0071】
(4サイクル方式の画像形成装置)
次に、本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態について説明する。図14は4サイクル方式の画像形成装置の縦断側面図である。図14において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、前記ラインヘッドモジュールからなる像書込手段167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0072】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢印A方向に回転するよう構成されたものである。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢印B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢印C方向に回転するトナー供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0073】
図14中符号165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器、167は像書込手段であり、前記のラインヘッドモジュールからなるものである。そして、感光体ドラム165と像書込手段(ラインヘッドモジュール)167とから、本発明の露光装置が構成されている。なお、この露光装置における感光体ドラム165は、像書込手段167に対して、前述したように予め設定された所定の感度を有したものである。
感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより、現像ローラ162aとは逆の方向となる矢印D方向に回転駆動されるようになっている。なお、像書込手段167を構成するラインヘッドモジュールは、これと感光ドラム165との間で位置合わせ(光軸合わせ)がなされた状態に配設されている。
【0074】
中間転写ベルト169は、駆動ローラ170aと従動ローラ170bとの間に張架されたものである。駆動ローラ170aは、前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されたもので、中間転写ベルト169に動力を伝達するようになっている。すなわち、該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆の方向となる矢印E方向に回動するようになっている。
【0075】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙が搬送されるようになっている。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写されるようになっている。二次転写ローラ171は、クラッチによって中間転写ベルト169に離当接されるようになっており、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接され、用紙に画像が転写されるようになっている。
【0076】
前記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢印G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0077】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータとしては、例えば低速のブラシレスモータが用いられている。また、中間転写ベルト169については、色ずれ補正などが必要となるためステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略した制御手段からの信号によって制御されるようになっている。
【0078】
図14に示した状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ162aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢印A方向に90度回転する。
【0079】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次に、シアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0080】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後さらに回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0081】
このような図13、図14に示した画像形成装置80、160においては、図1に示したような本発明の露光装置が露光手段として備えられている。
したがって、これら画像形成装置80、160にあっては、前述したように感光体ドラム上で得られる潜像にボケが生じるのが防止されているので、用紙上に印刷する画像にもボケが生じないようになり、したがってシャープな印刷を行うことができる。
なお、本発明の露光装置を備えた画像形成装置は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の露光装置の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】実施形態に係るラインヘッドモジュールの斜視断面図である。
【図3】ラインヘッドを模式的に示した図である。
【図4】SLアレイの斜視図である。
【図5】感光体ドラムの感度特性を示すグラフである。
【図6】波長と発光スペクトル強度及び感光体感度との関係を示すグラフである。
【図7】波長と発光スペクトル強度及び感光体感度との関係を示すグラフである。
【図8】波長と発光スペクトルの見掛け上の強度との関係を示すグラフである。
【図9】ラインヘッドの結合部分における拡大図である。
【図10】(a)はラインヘッドの要部側断面図、(b)は模式図である。
【図11】共振器を備えた有機EL素子を模式的に示した図である。
【図12】微小共振器の有無による発光スペクトルの変化を示すグラフである。
【図13】本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図14】本発明の画像形成装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
1…ラインヘッド、2…素子基板(基板)、3…有機EL素子(EL素子)、
3A…発光素子列、9…感光体ドラム(感光体)、
31…レンズアレイ(光学結像系)、31a…SL素子(レンズ素子)、
52…ヘッドケース、60…発光層、70…正孔輸送層、
80、160…画像形成装置、100…露光装置、101…ラインヘッドモジュール、
120…有機EL素子部、121…微小共振器(共振器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のEL素子を整列配置したラインヘッドと、波長分散を有し、前記ラインヘッドからの光を結像させる光学結像系と、前記光学結像系を透過した前記ラインヘッドからの光によって露光される感光体と、を備えた露光装置であって、
前記EL素子の発光スペクトル強度が最大となるピーク波長より所定波長ずれた基準波長における、前記EL素子の発光スペクトル強度が、
前記基準波長における前記感光体の感度よりも低いことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記基準波長は、前記ピーク波長に対して長波長側であることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記ラインヘッドには、前記EL素子の光出射側に配置された透明電極の外側に、共振器が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の露光装置。
【請求項4】
前記光学結像系が正立等倍結像系であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記基準波長が、前記ピーク波長から50nmずれた波長であることをことを特徴とする請求項4記載の露光装置。
【請求項6】
露光手段として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−130712(P2006−130712A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320151(P2004−320151)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】