説明

露光装置

【課題】 ライン状発光素子アレイとレンズアレイとからなる露光ヘッドを用いて感光材料を露光させる露光装置において、レンズアレイを通過した露光光の光量変動によって大きな濃度ムラが生じることを防止する。
【解決手段】 複数のライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′、6R′と、これらのライン状発光素子アレイから発せられた光2を集光する複数のレンズ7aが、千鳥配列しつつ発光素子並び方向と略平行に並ぶ状態に集合されてなる1つのレンズアレイ7とを備えた露光装置において、複数のライン状発光素子アレイのうちの少なくとも1対のライン状発光素子アレイ6Rと6R′(6Bと6B′)を、レンズアレイ7の隣合うレンズ列の中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面に関して略対称に配置し、それらの略対称に配置されたライン状発光素子アレイ6Rと6R′(6Bと6B′)により、感光材料3上の共通の画素を露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン状発光素子アレイとレンズアレイとからなる露光ヘッドを用いて感光材料を露光させる露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、それぞれが赤、緑および青等の互いに異なる波長領域の光を発する複数のライン状発光素子アレイからなる露光ヘッドを用いて、カラー感光材料を露光する装置が公知となっている。
【0003】
上記のライン状発光素子アレイは、同じ色の光を発する複数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)発光素子等の発光素子が1列に並設されてなるものである。また上記露光ヘッドは、互いに異なる色の光を発する複数のライン状発光素子アレイが互いに発光素子の並び方向と略直角な方向に並設されるとともに、各アレイから発せられた光をカラー感光材料上に集光させるレンズアレイが設けられてなるものである。なお上記レンズアレイは、ライン状発光素子アレイから発せられた光を集光する例えば屈折率分布型レンズ等のレンズを複数、ライン状発光素子アレイの発光素子並び方向と略平行に並設してなるレンズ列を1つ、あるいは複数設けて構成される。
【0004】
また特許文献2には、レンズアレイを構成する2つのレンズ列の中央位置と向き合う状態にライン状発光素子アレイを配置してなる露光ヘッドが記載されている。
【0005】
そしてこのような露光ヘッドを用いる上記露光装置は、露光ヘッドから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と、レンズアレイおよび複数のライン状発光素子アレイからなる露光ヘッドとを、複数のライン状発光素子アレイの並び方向に相対移動させる副走査手段をさらに設けて構成されている。
【0006】
以上、カラー感光材料を露光する装置について説明したが、ライン状発光素子アレイとして単色の光を発するものを用いて、モノクロ感光材料にモノクロ画像を露光することも勿論可能である。
【特許文献1】特開平5−92622号公報
【特許文献2】特開平8−220307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したレンズアレイは、屈折率分布型レンズやマイクロレンズ等のレンズが多数配設されてなるものであるので、この種のレンズアレイはかなり高価なものとなっている。特許文献1に示された露光装置は、このようなレンズアレイを3色のライン状発光素子アレイ毎に1つずつ合計3個設けているので、コストが高いものとなっている。
【0008】
そこで、3色のライン状発光素子アレイに共通の1つのレンズアレイを組み合わせて用いることも考えられる。しかしその場合には、レンズアレイを通過した露光光の光量が、該レンズアレイの長手方向に沿って大きく変動するという問題が生じる。以下、この点について詳しく説明する。
【0009】
上記のレンズアレイは、通常、屈折率分布型レンズ等の複数のレンズが一方向に並設されたレンズ列が複数、レンズ並び方向と直角な方向に並設されてなる。そして隣接するレンズ列どうしは、1つのレンズ列のレンズ間のスペースに別のレンズ列のレンズが入り込む状態に配置される。つまり全体で見ると、各レンズが千鳥配列した状態になっている。ライン状発光素子アレイから発せられた光をそのようなレンズアレイに通すと、通過した露光光の光量は、レンズアレイのレンズ並び方向に沿って、レンズ配置ピッチを周期として変動するようになる。
【0010】
このようにして露光量が変動すれば、当然、感光材料に露光された画像において濃度ムラが発生する。前述したように、感光材料と露光ヘッドとを、複数のライン状発光素子アレイの並び方向に相対移動させて副走査を行う露光装置において、このような濃度ムラが存在すると、それによって副走査方向に延びる筋ムラが発生し、露光画像の品質が大きく損なわれることになる。
【0011】
特許文献2に示される露光ヘッドのように、レンズアレイを構成する2つのレンズ列の中間位置と向き合う状態にライン状発光素子アレイを配置しておけば、該中間位置の両側の互いに千鳥配列しているレンズによって光量変動が相殺されるため、露光量の変動を抑えることができる。しかしそのような構成においては、設置するライン状発光素子アレイの数より少なくとも1つ多くレンズ列が設けられるので、レンズ列の多い高価なレンズアレイが必要になり、露光装置のコストアップにつながる。またその場合、ライン状発光素子アレイの配置ピッチは、レンズアレイのレンズ列配置ピッチと略同等となるので、ライン状発光素子アレイを密に配置できないという問題が生じる。そうであると、光量低下や濃度ムラの発生を防止するためにより多数のレンズ列が必要になり、この点からも露光装置のコストアップを招くことになる。
【0012】
以上、有機EL発光素子のアレイを用いた露光ヘッドにおける問題について説明したが、有機EL発光素子以外の自己発光型の発光素子や、さらには、液晶やPLZT等の調光素子と光源との組み合わせからなる素子のアレイを用いた露光ヘッドにおいても、当然、同様の問題が発生し得る。なお本明細書においては、上述の調光素子と光源との組み合わせからなる素子も、露光光を発する素子という意味で「発光素子」と称することとする。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みて、レンズアレイを通過した露光光の光量変動によって大きな濃度ムラを発生させることがなく、そして安価に形成可能な露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による露光装置は、複数のライン状発光素子アレイの配置状態を特別な状態に設定することにより、露光光の変動を防止するようにしたものであり、より具体的には、
前述したように、それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設されたM個(3≦M)のライン状発光素子アレイと、
これらのライン状発光素子アレイから発せられた光を集光する複数のレンズが、前記発光素子の並び方向と略平行に並ぶ状態に集合されてなるレンズ列がN個(2≦N<M)、隣合うレンズ列間でレンズが千鳥配列する状態にして、前記複数のライン状発光素子アレイの並び方向と略平行な方向に並設されてなる1つのレンズアレイと、
このレンズアレイによって集光された光が照射される位置に感光材料を保持し、該感光材料と前記レンズアレイおよび複数のライン状発光素子アレイとを、該複数のライン状発光素子アレイの並び方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
複数のライン状発光素子アレイのうちの少なくとも1対のライン状発光素子アレイが、レンズアレイの隣合うレンズ列の中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面に関して略対称に配置され、
それらの略対称に配置された複数のライン状発光素子アレイにより、前記感光材料上の共通の画素を露光するように構成されたことを特徴とするものである。
【0015】
なお、上記構成を有する本発明の露光装置においては、前記面と交差する位置にライン状発光素子アレイの1つが配置され、その両側に残りのライン状発光素子アレイが配置されていることが望ましい。そのような構成とする場合は、複数のライン状発光素子アレイのうち、素子寿命および/または発光効率が最も優れたライン状発光素子アレイが、上記面と交差する位置に配置されることが望ましい。
【0016】
また、上記面と交差する位置にはライン状発光素子が配置されず、該面の両側に全てのライン状発光素子アレイが配置されてもよい。
【0017】
また本発明の露光装置は、複数のライン状発光素子アレイとして、赤、緑および青の波長領域の光を発するものが用いられて、カラー感光材料にフルカラー画像を露光可能に形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の露光装置においては、複数のライン状発光素子アレイのうちの少なくとも1対のライン状発光素子アレイが、レンズアレイの隣合うレンズ列の中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面に関して略対称に配置されているので、それらの略対称に配置されたライン状発光素子アレイから発せられてレンズアレイを通過した光の、レンズアレイによる周期的光量変化は互いに逆位相となる。そこで、これらの略対称に配置された複数のライン状発光素子アレイにより、感光材料上の共通の画素を露光すれば、1つの画素に対する露光量の周期的変化が相殺されて、先に説明した濃度ムラの発生が抑えられるようになる。
【0019】
また本発明の露光装置は、レンズアレイのレンズ列数Nをライン状発光素子アレイの数Mよりも少なくしているので、レンズ列の比較的少ないレンズアレイを用いて、安価に形成可能となる。また、ライン状発光素子アレイの数Mがレンズ列数Nよりも多いので、ライン状発光素子アレイの副走査方向配置ピッチはレンズ列の配置ピッチよりも小さくなって、該ライン状発光素子アレイが密に配置されることになる。そうであれば、ライン状発光素子アレイの配置ピッチが大きいことに起因する光量低下や濃度ムラ発生を抑えるためにより多数のレンズ列を用いるようなことは不要となり、この点からも本発明の露光装置は安価に形成できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態による露光装置の一部破断正面形状を示すものであり、また図2は、この露光装置の一部破断側面形状を示している。図示の通りこの露光装置は、露光ヘッド1と、この露光ヘッド1から出射した露光光2の照射を受ける位置に保持したカラー感光材料3を、図2の矢印Y方向に定速で搬送する、例えばニップローラ等からなる副走査手段4とを備えている。
【0022】
上記露光ヘッド1は、有機ELパネル6と、該有機ELパネル6から出射した露光光2を受ける位置に配されて、この露光光2による像をカラー感光材料3の上に等倍で結像させる屈折率分布型レンズアレイ7と、このレンズアレイ7および有機ELパネル6を保持する保持手段8(図2では省略)とを備えている。
【0023】
等倍レンズアレイである屈折率分布型レンズアレイ7は、図3(1)に平面形状を示す通り、露光光2を集光する微小な屈折率分布型レンズ7aを副走査方向Yと直交する主走査方向(矢印X方向)に多数並設してなるレンズ列が、合計2列配設されてなるものである。この屈折率分布型レンズアレイ7においては、屈折率分布型レンズ7aが千鳥配列されている。つまり、一方のレンズ列を構成する複数の屈折率分布型レンズ7aは、他方のレンズ列を構成する複数の屈折率分布型レンズ7aの間に位置するように配されている。
【0024】
本実施形態の露光装置は、一例としてフルカラーポジ型銀塩写真感光材料であるカラー感光材料3にカラー画像を露光するもので、露光ヘッド1を構成する有機ELパネル6は、副走査方向Yに並べて配設された5個のライン状発光素子アレイすなわち、赤色ライン状発光素子アレイ6R、青色ライン状発光素子アレイ6B、緑色ライン状発光素子アレイ6G、青色ライン状発光素子アレイ6B′および赤色ライン状発光素子アレイ6R′を備えている。これらのライン状発光素子アレイ6R(6R′)、6B(6B′)および6Gはそれぞれ、主走査方向Xに多数の赤色有機EL発光素子、青色有機EL発光素子および緑色有機EL発光素子が並設されてなるものである。
【0025】
なお図1および図2では、上記発光素子の1つを代表的に有機EL発光素子20として示してある。各有機EL発光素子20は、ガラス等からなる透明基板10の上に、透明陽極21、発光層を含む有機化合物層22、および金属陰極23が順次蒸着により積層されてなるものである。そして、上記発光層として各々赤色光、青色光および緑色光を発するものが適用されることにより、それぞれ赤色有機EL発光素子、青色有機EL発光素子および緑色有機EL発光素子が形成されている。
【0026】
ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′は、図1に示す駆動回路30によって駆動される。すなわち駆動回路30は、走査電極となる金属陰極23を所定の周期で順次ON状態に設定する陰極ドライバと、信号電極となる透明陽極21をフルカラー画像を示す画像データDbに基づいてON状態に設定する陽極ドライバとを備えてなるものであり、ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′をいわゆるパッシブマトリクス(passive matrix)線順次選択駆動方式により駆動する。この駆動回路30の動作は、上記画像データDbを出力する制御部31によって制御される。
【0027】
各有機EL発光素子20を構成する要素は、例えばステンレス製の缶等からなる封止部材25内に配置されている。つまり、この封止部材25の縁部と透明基板10とが接着され、乾燥窒素ガスが充填された封止部材25内に有機EL発光素子20が封止されている。
【0028】
上記構成の有機EL発光素子20において、金属陰極23と、それを横切るように延びる透明陽極21との間に所定電圧が印加されると、電圧が印加された両電極の交差部分毎に有機化合物層22に電流が流れ、そこに含まれる発光層が発光する。この発光光は透明陽極21および透明基板10を透過して、露光光2として素子外に出射する。
【0029】
ここで透明陽極21は、400nm〜700nmの可視光の波長領域において、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上の光透過率を有するものが好ましい。透明陽極21の材料としては、酸化錫、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等、透明電極材料として従来公知の化合物を適宜用いることができるが、その他、金や白金など仕事関数が大きい金属からなる薄膜を用いてもよい。また、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体などの有機化合物を用いることもできる。なお、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー社刊(1999年)には、透明導電膜について詳細な記載があり、そこに示されているものを本発明に適用することも可能である。また透明陽極21は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって透明基板10上に形成することができる。
【0030】
一方、有機化合物層22は、発光層のみからなる単層構造であってもよいし、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層等のその他の層を適宜有する積層構造であってもよい。有機化合物層22および電極の具体的な層構成としては、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極とする構成や、陽極/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極とする構成等が挙げられる。また、発光層、ホール輸送層、ホール注入層、電子注入層は、それぞれ複数設けられてもよい。
【0031】
金属陰極23は、仕事関数の低いLi、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、およびこれらの金属とAgやAlなどとの合金や混合物等の金属材料から形成されるのが好ましい。陰極における保存安定性と電子注入性とを両立させるために、上記材料で形成した電極を、仕事関数が大きく導電性の高いAg、Al、Auなどで更に被覆してもよい。なお、金属陰極23も透明陽極21と同様に、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの公知の方法で形成することができる。
【0032】
以下、上記構成を有する露光装置の作動について説明する。なおここでは、ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′の主走査方向画素数、つまり透明陽極21の並設数をnとする。カラー感光材料3に画像露光する際、このカラー感光材料3は副走査手段4によって図2の矢印Y方向に定速で搬送される。またこのカラー感光材料3の搬送と同期させて、前述した駆動回路30の陰極ドライバにより、5本の金属陰極23の中の1つが順次ON状態に選択される。
【0033】
このようにして第1番目の金属陰極23、つまり赤色ライン状発光素子アレイ6Rを構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の赤色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22(図1参照)に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から赤色光が発せられる。なお上記の「画像データに対応した時間」とは、各画素においてその時間赤色光が照射されれば、画像データが示す所定の赤色濃度が得られるという時間ではない。この点については後に詳しく説明する。
【0034】
こうして赤色ライン状発光素子アレイ6Rから発せられた赤色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第1主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が赤色光で露光され、赤色に発色する。
【0035】
次に第2番目の金属陰極23、つまり青色ライン状発光素子アレイ6Bを構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の青色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から青色光が発せられる。なおここでも、上記の「画像データに対応した時間」とは、各画素においてその時間青色光が照射されれば、画像データが示す所定の青色濃度が得られるという時間ではない。この点についても後に詳しく説明する。
【0036】
こうして青色ライン状発光素子アレイ6Bから発せられた青色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第1主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が青色光で露光され、青色に発色する。なお、カラー感光材料3が前述のように定速搬送されているので、上記青色光は、該カラー感光材料3の既に赤色光で露光されている部分の上に照射される。
【0037】
次に第3番目の金属陰極23、つまり緑色ライン状発光素子アレイ6Gを構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の緑色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から緑色光が発せられる。
【0038】
こうして緑色ライン状発光素子アレイ6Gから発せられた緑色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第1主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が緑色光で露光され、緑色に発色する。なお、カラー感光材料3が前述のように定速搬送されているので、上記緑色光は、該カラー感光材料3の既に赤色光および青色光で露光されている部分の上に照射される。
【0039】
次に第4番目の金属陰極23、つまり青色ライン状発光素子アレイ6B′を構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の青色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から青色光が発せられる。
【0040】
こうして青色ライン状発光素子アレイ6B′から発せられた青色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第1主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が青色光で露光され、青色に発色する。なお、カラー感光材料3が前述のように定速搬送されているので、上記青色光は、該カラー感光材料3の既に赤色光、青色光および緑色光で露光されている部分の上に照射される。
【0041】
ここで、上記の「画像データに対応した時間」とは、その時間青色ライン状発光素子アレイ6B′から青色光がカラー感光材料3に照射されれば、前述したもう1つの青色ライン状発光素子アレイ6Bによる青色光照射と合わせて、各画素において画像データが示す所定の青色濃度が得られるという時間である。そのような時間は、例えば第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の青色濃度を示す画像データに基づいて、駆動回路30が所定のプログラムに従って青色ライン状発光素子アレイ6Bおよび6B′に対して割り振って決めるようにすればよい。あるいは、画像データと発光素子アレイの発光時間との関係は固定とする一方、画像データを青色ライン状発光素子アレイ6Bおよび6B′に対して割り振り、必要に応じて、それら割り振られた画像データに適宜の補正を加えるようにしてもよい。
【0042】
次に第5番目の金属陰極23、つまり赤色ライン状発光素子アレイ6R′を構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第1主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の赤色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22(図1参照)に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から赤色光が発せられる。
【0043】
こうして赤色ライン状発光素子アレイ6R′から発せられた赤色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第1主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が赤色光で露光され、赤色に発色する。なお、カラー感光材料3が前述のように定速搬送されているので、上記赤色光は、該カラー感光材料3の既に赤色光、青色光、緑色光および青色光で露光されている部分の上に照射される。
【0044】
ここで、上記の「画像データに対応した時間」とは、その時間赤色ライン状発光素子アレイ6R′から赤色光がカラー感光材料3に照射されれば、前述したもう1つの赤色ライン状発光素子アレイ6Rによる赤色光照射と合わせて、各画素において画像データが示す所定の赤色濃度が得られるという時間である。そのような時間を定める手法等については、上記青色光の場合と同様に行えばよい。
【0045】
以上の工程により、カラー感光材料3の上には、第1番目のフルカラーの主走査ラインが露光、記録される。
【0046】
次いで金属陰極の線順次選択は第1番目の金属陰極23に戻り、該第1番目の金属陰極23、つまり赤色ライン状発光素子アレイ6Rを構成する金属陰極23が選択されている期間内に、駆動回路30の陽極ドライバは第1,2,3・・・nの各透明陽極21を、第2主走査ラインの第1,2,3・・・n番目の画素の赤色濃度を示す画像データに対応した時間、定電流源に接続する。それにより該透明陽極21と金属陰極23との間の有機化合物層22に、画像データに対応したパルス幅の電流が流れ、該有機化合物層22から赤色光が発せられる。
【0047】
こうして赤色ライン状発光素子アレイ6Rから発せられた赤色光である露光光2は、レンズアレイ7によってカラー感光材料3上に集光され、それにより、カラー感光材料3上において第2主走査ラインを構成する第1,2,3・・・n番目の画素が赤色光で露光され、赤色に発色する。
【0048】
以下は同様の操作が繰り返されて第2番目のフルカラーの主走査ラインが露光され、さらにそのようなカラー主走査ラインが副走査方向Yに次々と並べて露光され、カラー感光材料3上に多数の主走査ラインからなる2次元カラー画像が露光される。なお本実施形態では、上述した通り各色露光光がパルス幅変調されて、それらの発光量が画像データに対応して制御され、それによりカラーの階調画像が露光される。
【0049】
次に、前述した露光光の光量変動による濃度ムラ発生を防止する点について詳しく説明する。図3(1)は、レンズアレイ7を構成する屈折率分布型レンズ7aの列と、ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′との平面的な位置関係を示すものであり、また同図(2)は上記レンズアレイ7を通過した後の露光光2の光量変動特性を、同図(1)と主走査方向の位置対応を取って示すものである。
【0050】
同図(1)に示される通り緑色ライン状発光素子アレイ6Gは、屈折率分布型レンズ7aの2つの列の中央位置と整合するように、つまり該中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面と交わる位置に配置されている。一方赤色ライン状発光素子アレイ6Rおよび6R′は上記の面に関して互いに対称に配置され、青色ライン状発光素子アレイ6Bおよび6B′も上記の面に関して互いに対称に配置されている。
【0051】
なお同図中では、ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′の配置面内で上記面が交わる線(ここが緑色ライン状発光素子アレイ6Gの配置軸となる)をOとして示し、そこから距離aだけ離れた赤色ライン状発光素子アレイ6Rおよび6R′の配置軸をそれぞれA、A′として示し、また上記軸Oから距離bだけ離れた青色ライン状発光素子アレイ6Bおよび6B′の配置軸をそれぞれB、B′として示してある。本例では、各屈折率分布型レンズ7aの直径は295μmであり、上記の距離a、bはそれぞれ例えば140μm、70μmとされる。
【0052】
先に述べた通り、ライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′から発せられた露光光2を屈折率分布型レンズアレイ7に通すと、通過した露光光2の光量は、屈折率分布型レンズアレイ7のレンズ並び方向に沿って、レンズ7aの配置ピッチを周期として変動するようになる。このような光量変動が有る露光光2をそのままカラー感光材料3に照射すれば、上述の濃度ムラを発生させる原因となる。
【0053】
同図(2)には、上記軸A、A′、B、B′上の各ライン状発光素子アレイから発せられた露光光2の光量変動の様子を示してある。なお、上記軸O上に配置されたライン状発光素子アレイ6Gから発せられた緑色の露光光2は、それぞれ2つのレンズ列を通過することにより光量が周期的に変動するものとなるが、2つのレンズ列間でレンズ7aが千鳥配列されていることから、この変動は2つのレンズ列において互いに逆位相となって打ち消し合う。そこで、カラー感光材料3に照射される緑色の露光光2は、ほとんど光量変動が無いものとなる。それに対して、上記軸Oから離れた軸A、A′上の赤色ライン状発光素子アレイ6R、6R′から発せられた赤色の露光光2と、同じく軸Oから離れた軸B、B′上の青色ライン状発光素子アレイ6B、6B′から発せられた青色の露光光2は、上述の通りの光量変動が残ったままカラー感光材料3に照射されることになる。
【0054】
しかしここで、同図(2)に示される通り、軸A、A′上の赤色ライン状発光素子アレイ6R、6R′から発せられて屈折率分布型レンズアレイ7を通過した光の周期的光量変動は互いに逆位相となっている。そこで、該赤色ライン状発光素子アレイ6R、6R′から発せられた光でカラー感光材料3上の同一画素を2回露光するようにしている本実施形態においては、各画素における光量変動が1回目の露光、2回目の露光で互いに打ち消し合って、濃度ムラの発生が抑えられる。この点は、軸B、B′上の青色ライン状発光素子アレイ6B、6B′から発せられた青色の露光光2に関しても同様である。
【0055】
そして本実施形態では、屈折率分布型レンズアレイ7の2つのレンズ列の副走査方向配置ピッチよりも小さいピッチで、該レンズ列の数よりも多い5つのライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′を配設しているので、これらのライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′を互いに十分密に配置可能となっている。そのため、先に詳しく説明した理由により、レンズ列の数が比較的少ない屈折率分布型レンズアレイ7を適用可能となって、露光装置を安価に形成できるようになる。
【0056】
なお本実施形態において、図3(1)に示した距離a、bはa=2bの関係となっているので、つまりライン状発光素子アレイ6R、6B、6G、6B′および6R′は全て副走査方向に互いに同じピッチで配置されているので、副走査速度は一定に設定することができる。
【0057】
また有機EL発光素子においては、赤色発光素子、緑色発光素子および青色発光素子のうち、緑色発光素子が一番寿命、発光効率の点で優れている。一方、中央位置のライン状発光素子アレイは1つだけ設置されているために、他の2つ設けられるライン状発光素子アレイよりも高出力駆動されて寿命が短くなりがちである。そこで、このような中央位置のライン状発光素子アレイとして、上述のような緑色発光素子からなる緑色ライン状発光素子アレイ6Gを配置すれば、他のライン状発光素子アレイ6R、6B、6B′および6R′と寿命を近づけることができる。
【0058】
以上説明したように、複数種類のライン状発光素子アレイを設ける場合、前述の軸Oの上に1つのライン状発光素子アレイを設けると、その他の種類のライン状発光素子アレイと設置数が異なることになる。複数種類のライン状発光素子アレイの設置数を互いに一致させたい場合は、図4に示すような構成を採用すればよい。すなわちこの場合は、軸Oの上にはライン状発光素子アレイを設けないで、その両側に互いに同じ距離を置いて設定された軸A、A′上に同種類のライン状発光素子アレイ、例えば赤色ライン状発光素子アレイ6R、6R′を、また同様の軸B、B′上に例えば青色ライン状発光素子アレイ6B、6B′を、さらに同様の軸C、C′上に例えば緑色ライン状発光素子アレイ6G、6G′を設置すればよい。
【0059】
このような場合も、6つのライン状発光素子アレイの副走査方向配置ピッチは、一定としておくことが好ましい。その理由は、先に述べた通りである。
【0060】
また、レンズアレイにおけるレンズ列の数や設置するライン状発光素子アレイの数は、以上説明した実施形態におけるものに限られるものではない。例えば図5に示すように、屈折率分布型レンズ7の列が4つ設けられてなるレンズアレイを用いることもできる。この例において、レンズ列の中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面は、軸O1,O2,O3の位置に合計3面存在することになる。その場合は、それら3面のうち例えば中央の面の両側において、該面から等距離の位置AとCに同種類のライン状発光素子アレイを配置するとともに、さらに上記面から等距離の位置BとDに上記と同種類のライン状発光素子アレイを配置し、それら4つの、つまり2対のライン状発光素子アレイで同一画素を露光するようにしてもよい。
【0061】
以上、露光ヘッドから赤色光、緑色光および青色光の3色の光を発生させ、それらの光により各々、カラー感光材料3の赤色発色層、緑色発色層および青色発色層を感光させる露光装置に適用された実施形態について説明したが、本発明は、その他の例えばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)等の発色層を有するカラー感光材料を対象とする露光装置にも適用可能であり、その場合にも同様の効果を奏するものである。
【0062】
また上記実施形態は、ライン状発光素子アレイを構成する発光素子として有機EL発光素子を用いるものであるが、本発明はその他の例えば発光ダイオード等の発光素子からライン状発光素子アレイを構成する場合にも適用可能であり、さらには、有機EL発光素子等の自己発光型の発光素子に限らず、液晶やPLZT等の調光素子と光源との組み合わせからなる素子を用いてライン状発光素子アレイを構成する場合にも適用可能であり、その場合にも同様の効果を奏するものである。
【0063】
さらに上記実施形態の露光装置は、フルカラーポジ型銀塩写真感光材料であるカラー感光材料3に画像露光するものであるが、本発明の露光装置は、それ以外のカラー感光材料に画像露光するものとして形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態による露光装置の一部破断正面図
【図2】上記露光装置の一部破断側面図
【図3】上記露光装置におけるライン状発光素子アレイおよびレンズアレイを示す部分平面図(1)と、露光光の周期的光量変動の様子を示すグラフ(2)
【図4】ライン状発光素子アレイとレンズアレイの配置関係の別の例を示す概略図
【図5】ライン状発光素子アレイとレンズアレイの配置関係のさらに別の例を示す概略図
【符号の説明】
【0065】
1 露光ヘッド
2 露光光
3 カラー感光材料
4 副走査手段
6 有機ELパネル
6R、6R′ 赤色ライン状発光素子アレイ
6G、6G′ 緑色ライン状発光素子アレイ
6B、6B′ 青色ライン状発光素子アレイ
7 屈折率分布型レンズアレイ
7a 屈折率分布型レンズ
20 有機EL発光素子
21 透明陽極
22 有機化合物層
23 金属陰極
30 駆動回路
31 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設されたM個(3≦M)のライン状発光素子アレイと、
これらのライン状発光素子アレイから発せられた光を集光する複数のレンズが、前記発光素子の並び方向と略平行に並ぶ状態に集合されてなるレンズ列がN個(2≦N<M)、隣合うレンズ列間でレンズが千鳥配列する状態にして、前記複数のライン状発光素子アレイの並び方向と略平行な方向に並設されてなる1つのレンズアレイと、
このレンズアレイによって集光された光が照射される位置に感光材料を保持し、該感光材料と前記レンズアレイおよび複数のライン状発光素子アレイとを、該複数のライン状発光素子アレイの並び方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
前記複数のライン状発光素子アレイのうちの少なくとも1対のライン状発光素子アレイが、前記レンズアレイの隣合うレンズ列の中央位置を通ってレンズ光軸と平行に延びる面に関して略対称に配置され、
それらの略対称に配置された複数のライン状発光素子アレイにより、前記感光材料上の共通の画素を露光するように構成されたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記面と交差する位置に前記ライン状発光素子アレイの1つが配置され、その両側に残りのライン状発光素子アレイが配置されていることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
素子寿命および/または発光効率が最も優れたライン状発光素子アレイが、前記面と交差する位置に配置されていることを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
前記面と交差する位置にはライン状発光素子が配置されず、該面の両側に全てのライン状発光素子アレイが配置されていることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項5】
前記複数のライン状発光素子アレイとして、赤、緑および青の波長領域の光を発するものが用いられて、カラー感光材料にフルカラー画像を露光可能に形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−15673(P2006−15673A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197668(P2004−197668)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】