説明

静圧水軸受直動案内装置

【課題】 テーブル移動時のピッチングが極めて小さい静圧水軸受直動案内装置の提供。
【解決手段】 テーブル31底面の前後側の少なくとも一方にガイドウエイ2に設けたコイル24に対向して磁気バランサー300を非磁性体支持板を介して付属させた静圧水軸受直動案内装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に使用されるテーブル(スライドウエイ)を静圧水軸受リニアガイドウエイ上に往復移動させた際のピッチングの極めて小さい静圧水軸受直動案内装置に係る。
【背景技術】
【0002】
工作機械に使用されるテーブル(スライドウエイ)のピッチング・ヨーイングを小さくした直動案内装置は知られている。
【0003】
例えば、特開2002−1629号公報(特許文献1)は、機体の底部に、左右に一対の縦フレームとそれらに渡架する横フレームを有するフレームを前後方向に動くよう装架し、それの横フレームに、スピンドル組付台を左右方向に動くよう装架し、そのスピンドル組付台の上方に、ワーク組付テーブルを配位して上下方向にボールネジ駆動で動くよう機体に装架し、前記フレームには、スピンドル組付台の左右方向の動きに同調して逆方向に動くバランスウエイトを装架せしめてなるマシニングセンタにおける機体のゆれ防止装置を提案する。
【0004】
また、特開2002−321128号公報(特許文献2)は、ガイドに沿って移動する移動体の揺れを防止する装置であって、ガイド側案内面と、移動体側案内面のうちいずれか一方に電磁石が設けられ、同他方に強磁性体からなる被吸引部が設けられ、移動体の動作指令に基づいて磁力発生手段の磁力を制御する制御手段を備え、かつ、移動体の姿勢変化を検出する検出器の出力に基づいて、磁力発生手段の磁力を制御する制御手段を備えている移動体の揺れ防止装置を提案する。
できる。
【0005】
本願特許出願人は、特開2007−139021号公報(特許文献3)でセラミック製ガイドウエイ(A)上を断面L字状のセラミック製スライドウエイ(B)がリニアーモーター駆動により直動駆動する静圧水軸受スライドウエイシステムであり、このガイドウエイ(A)は一対のセラミック製長尺状直方体レールを上面高さを同一水平面にしてセラミック製長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に対向して設けたガイドウエイ(A)であり、スライドウエイ(B)はセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製小径パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの一方の長手方向側面には内側下部に一対のセラミック製パッドを離間して前記長尺状直方体レール側面に対向する位置に設けたキーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けたスライドウエイ(B)であることを特徴とする、静圧水軸受直動スライドウエイシステムを提案した。
【0006】
この静圧水軸受直動案内装置は、リニアーモーター駆動と水静圧軸受けを採用することにより前記特許文献1および特許文献2記載の直動案内装置よりテーブル(移動体)の往復反転移動時のヨーイング(浮き上がり)、ピッチング(横揺れ)がより小さい利点を有する。
【0007】
さらに、本願特許出願人は、特開2007−146868号公報(特許文献4)で上記
特許文献3記載の静圧水軸受直動スライドウエイシステムよりさらにピッチング・ヨーイングの小さい静圧水軸受直動案内装置を提案した。この静圧水軸受直動案内装置は、図4、図5および図6に示すように、一対のセラミック製レール21a,21bをセラミック製レールベース23上面に平行離間して設け、これらのレール21a,21b間に電磁石24を前記レールベース23上面に向けて設けたガイドウエイ2と、セラミック製ハニカム構造のキャリッジベース31の底面に二対のセラミック製パッド33a〜33dを前記レール21a,21bの上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置にモーターコイル34を設けるとともに、そのモーターコイル34とガイドウエイ2に設けた一方のレール21a間にキャリッジベース31の底面より下方に伸び長手方向側面下部であってレール21a,21bの長手方向内側面に対向する位置に一対のセラミック製パッド33e,33fを離間して設けたセラミック製キーパー32を設けたスライドウエイ3とから構成される静圧水軸受直動案内装置1である。
【0008】
上記特許文献4に記載の静圧水軸受直動案内装置1は、潤滑や駆動に鉱油を使用しないので環境に優しいものであり、テーブル(キャリッジベース31)のメンテナンス製と製造原価低減のために片側リセスタイプの静圧水軸受構造を採用し、この構造の弱点である静合成の不足を補うためテーブル駆動用リニアーモーターの磁気吸引力を利用して軸受にプリロードを与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−1629号公報
【特許文献2】特開2002−321128号公報
【特許文献3】特開2007−139021号公報
【特許文献4】特開2007−146868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献4に記載の静圧水軸受直動案内装置1のテーブル(キャリッジベース31)の運動精度を測定したところ、最大ピッチング角度(θmax=0.25”)の周期的(ピッチP=30mm)なピッチングが測定された(図8参照)。
【0011】
上記ピッチング測定値は、ISO規格の許容値と比較すると充分に小さい値である。しかし、工作機械による機械加工メーカーにおいては、より高品位な加工ワークを得るために更にピッチング値が小さい直動案内装置の出現を望む。本発明者らは、前記特許文献1の「バランスウエイトを付属させることによりピッチングを小さくする。」という記載に基づき、バランスウエイトの素材を磁性体と選択し、および、この磁性体バランサーを取り付ける位置を特定位置に定めることにより、よりピッチング値の小さい静圧水軸受直動案内装置を提供できると想到した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は、
セラミック製ガイドウエイ(A)上を断面逆凸字状のセラミック製スライドウエイ(B)がリニアーモーター駆動により直動駆動する静圧水軸受案内装置であって、
このガイドウエイ(A)は、一対のセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールを上面高さが同一水平面に位置するセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に向けて設けたガイドウエイ(A)であり、
前記断面逆凸字状のスライドウエイ(B)は、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製パッドを平行離間して前記長尺状直方体
レール上方に位置するよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの底面中央位置であって前記二対のセラミック製小径パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、そのモーターコイルとガイドウエイ(A)に設けた一方のハニカム構造のセラミック製長尺状直方体レール間に長尺状直方体キャリッジベースの底面より下方に伸び長手方向側面下部であって前記セラミック製長尺状直方体レールの長手方向内側面に対向する位置に一対のセラミック製パッドを離間して設けたセラミック製キーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた断面逆凸字状のセラミック製スライドウエイ(B)であり、
前記長尺状直方体キャリッジベースの底面の前後の少なくとも一方に設けた非磁性支持体の前方に磁気バランサーを設けたことを特徴とする、静圧水軸受直動案内装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
磁気バランサーの磁気吸引力を利用してモーターコイルとのモーメントバランスを採りピッチング値を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は静圧水軸受直動案内装置の一部を切り欠いた正面図である。
【図2】図2は静圧水軸受直動案内装置への磁気バランサー取り付け位置を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】図3は磁気バランサーのテーブル取り付け位置とピッチング角度の相関図である。
【図4】図4は磁気バランサーとモーターコイル間距離とピッチング角度の相関図である。
【図5】図5は特許文献4に開示される静圧水軸受直動案内装置の斜視図である。(公知)
【図6】図6は特許文献4に開示される静圧水軸受直動案内装置のスライドウエイでのパッドの配置を示す斜視図である。(公知)
【図7】図7は特許文献4に開示される静圧水軸受直動案内装置の側面図である。(公知)
【図8】図8は特許文献4に開示される静圧水軸受直動案内装置のスライドウエイの滑走位置とピッチング角度の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の静圧水軸受直動案内装置1は、特許文献4記載の静圧水軸受直動案内装置1に、非磁性支持体を介して磁気バランサーを設けた点に新規性、進歩性があり、その他の機械部材は特許文献4記載の静圧水軸受直動案内装置1と同じである。それゆえ、先に、図5、図6および図7を用いて特許文献4記載の静圧水軸受直動案内装置1を説明する。
【0016】
図5、図6および図7に示す静圧水軸受直動スライドシステム1は、ガイドウエイ2と断面逆凸字状のスライドウエイ3を有する。ガイドウエイ2は、一対のセラミック製ハニカム構造23bの長尺状直方体レール21a,21bの上面22a,22bの高さを同一水平面としてセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールベース23の上面23aに平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール21a,21b間に永久磁石または電磁石24を前記長尺状直方体レールベース上面23aに対して25〜35度傾斜して上面傾斜支持台25を介して設けたガイドウエイである。
【0017】
前記長尺状直方体レールベース23への長尺状直方体レール21a,21bの固定は、ボルト締めもしくはエポキシ樹脂接着剤を用いて行われる。また、スライドウエイシステム1のガイドウエイ2は、図7に示す研削装置の鋳鉄製あるいは花崗岩製フレ−ム9上に
搭載される。このガイドウエイの長尺状直方体レールベース23および長尺状直方体レール21a,21bは、ハニカム構造23bであっても、空洞のない忠実セラミックス製長尺状直方体であってもよい。
【0018】
スライドウエイ3は、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31の底面31aに二対のセラミック製パッド33a,33b,33c,33dを平行離間して前記長尺状直方体レール21a,21b上方に位置するよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの底面中央位置であって前記二対のセラミック製小径パッド間にモーターコイル34をその底面が前記永久磁石または電磁石24の上面に平行となるよう設けるとともに、そのモーターコイル34とガイドウエイ2に設けた一方のハニカム構造のセラミック製長尺状直方体レール21a間に長尺状直方体キャリッジベース31の底面より下方に伸び長手方向側面下部であって前記セラミック製長尺状直方体レール21aの長手方向内側面に対向する位置に一対のセラミック製パッド33e,33fを離間して設けたセラミック製キーパー32を設け、これらのセラミック製パッド33a,33b,33c,33d,33e,33f各々に水を供給する噴出孔35を設けたスライドウエイ(B)である。
【0019】
セラミック製パッドは、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジ製造時に一体に焼成して成型してもよいし、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31の溝部に市販のセラミック製パッドを接着させてもよい。セラミック製パッドの形状は、スライドウエイの寸法、ク−ラント水供給システムにより適宜選択される。図5に示すセラミック製パッドは、パッド中央部のポケット部41bに噴出孔35を設け、この噴出孔35を中心に左右対称に中央ランド部を2個有し、この中央ランド部42a,42bを囲綾するよう水受け入れポケット部(溝)41aを有し、更にこのポケット部(溝)41a,41bを囲繞するように外側ランド43を有する。噴出孔35の径は5〜10mmでよい。
【0020】
ポケット部(溝)41a,41bの深さは、5〜15mm、セラミック製パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fのランド部42a,42bとガイドウエイ2の長尺状直方体レール21a,21b表面間の距離(ギャップ)は、5〜20μm、好ましくは5〜10μmと極めて小さい。
【0021】
図6に示すように、水供給ポケット41aに設けられた噴出孔35は、水供給配管81に接続され、水供給配管81の先はギヤ−ポンプ83に接続されている。図6において84は圧力計、85はレリーフ弁、86は抗圧弁、Mはモーターである。セラミック製パッドに接続する水供給配管81の内径は、5〜8mm程度である。水供給配管81は、スライドウエイ3のハニカム空洞内に配管され、噴出孔35に接続される。水供給配管81のスライドウエイ3のハニカム壁への固定は、非磁性体である強化樹脂製またはセラミックス製固定バンド、ボルトを使用して行われる。塞板37は、スライドウエイ3のハニカム開放口33gを塞ぐと共に、分岐した水供給配管81を固定する。
【0022】
セラミック製ガイドウエイ2、セラミック製スライドウエイ3、セラミック製パッド33a,33b,33c,33d,33e,33f、塞板37のセラミック素材としては、例えば、アルミナ(Al23)セラミックス、ムライト(3Al23・2SiO2)セラ
ミックス、窒化アルミニウム(AlN)セラミックス、窒化珪素(Si34)セラミックス、窒化炭素(SiC)セラミックス、ジルコニアセラミックス、サーメット、サイアロン等が挙げられる。アルミナセラミックスは安価であり、ガイドウエイ2、スライドウエイ3、パッドの素材として適している。窒化炭素セラミックス、ジルコニアセラミックスは耐久性に富む。
【0023】
ガイドウエイ2、スライドウエイ3、パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fは、同一セラミック素材が好ましく、これらは、ノンポーラスセラミック製品が好ましい。
【0024】
セラミックス製品2,3の製造方法について説明する。最初に、ハウジングとなるハニカム構造のセラミック部材21a,21b,23,31、キーパー(側板)32および支持台24,36となるセラミック素材を用いて焼成し、成型する。例えば、アルミナ等のセラミックス粉末に所定量のバインダを加えて造粒処理し、これを一軸プレス成形し、さらにCIP成形して角板状または支持台用の傾斜構造のプレス成形体を作製する。次いで、角板状プレス成形体をハニカム状に加工して、その底面に所定パターンのパッド嵌合用溝部を形成し、さらにこの溝部に開口する噴出孔35を形成する。必要により、ガイドウエイ構成用部材のレール部材、レールベース部材、支持台を接合、スライドウエイ3構成部材の長尺状直方体キャリッジベース31とセラミック製パッド成型体、支持台を接合しておいてもよい。得られた加工体を必要に応じて脱脂処理した後、所定の雰囲気、温度、時間で焼成することによりハウジングとなるハニカム構造セラミック部材や支持台が得られる。なお、プレス成形体を800〜950℃で仮焼して得た仮焼体に溝部等を形成する加工を施し、その後に1,000〜1,250℃で焼成処理を行ってもよい。バインダとしては、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/イソプロピルメタクリレ−ト/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/t−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/イタコン酸共重合体等が焼成時の黒煙の発現がなく、強度の高いセラミック製品が得られる。
【0025】
次ぎに、スライドウエイ3のパッド用溝に市販のセラミック製パッドセラミック製パッド33a,33b,33c,33d,33e,33fをエポキシ樹脂接着剤で固定する。または、パッド形成セラミックススラリ−を溝部に塗布し、焼成してセラミック製パッドを形成させる。
【0026】
セラミック製パッドを形成する素材のセラミックススラリーの調製は、セラミックス粉末(例えば、アルミナ粉末や窒化珪素、炭化珪素粉末など、必要によりガラス粉末を添加)に、水またはアルコール等の溶剤を加えて、ボールミル、ミキサー等の公知の方法により混合することにより調製することができる。なお、水またはアルコール等の添加量は特に限定されるものではないが、セラミックス粉末の粒度を考慮して、所望の流動性が得られるように調節する。
【0027】
次に、前記で作製したハニカム構造のハウジング31、キーパー32(焼成後のセラミック部材)に形成されているパッド用溝部と噴出孔35に樹脂等の焼失材料を充填する。次いで、前記の調製したセラミックススラリーをハウジングの溝に充填して、後の焼成により多孔質セラミックパッドとなる部分を成形する。その際に必要に応じて、スラリー中の残留気泡を除去するための真空脱泡処理や充填率を高めるための振動を加えるとよい。
【0028】
こうしてスラリーが充填されたハウジング31,キーパー32を十分に乾燥させた後、多孔質パッド形成材を900℃以上の温度で焼成し、セラミック製パッドを形成する。この焼成時に、溝部と噴出孔35に充填された樹脂等は消失し、ポケット部41a,41b(空洞)が形成される。
【0029】
続いて、得られた焼成体の表面全体を研削し、必要に応じて研磨処理することにより、静圧軸受装置が得られる。パッドのランド面、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レール、スライドウエイのセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース表
面は、表面粗さ(R)0.05〜2.0μmに研削・研磨加工しておくのが好ましい。
【0030】
ハニカム構造長尺状直方体レールベース23と長尺状直方体レール21a,21bの一体化は、前記焼成時に接合し、一緒に焼成してもよいが、後工程の研削・研磨加工作業を容易とするため、後述する制振パッド接着剤27を用いて研削・研磨加工後に接着してもよい。
【0031】
スライドウエイ3のセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31およびキーパー32に設けるセラミック製パッドの個数および位置関係は、スライドウエイ3のサイズ、剛性による。但し、少なくともセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31の底面に二対のセラミック製パッド33a,33b,33c,33dを平行離間してガイドウエイ2の長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その底面中央位置であって前記二対のセラミック製パッド間にモーターコイル34をその底面が前記永久磁石または電磁石24の上面に平行となるよう25〜35度傾斜して設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベース31底面より下方にセラミック製キーパー32を伸長させ、そのキーパー32の長手方向側面下部であって前記セラミック製長尺状直方体レール21aの長手方向内側面に対向する位置に一対のセラミック製パッド33e,33fを離間して設ける。
【0032】
図7に示すように、スライドウエイシステム1はフレ−ム(機枠)9上に設置される。ガイドウエイ2の長尺状直方体レール21a,21bの長手方向側面上部には一対のシリコンカーバイド製基準バ−90,90がそのバー上面が長尺状直方体レール21a,21b上面に面一となるように取り付けられている。このバー90,90上方に、4個のギャップセンサー92をスライドウエイ3のセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベース31長手方向側面下部に取り付け、スライドウエイ底面とガイドウエイ2の長尺状直方体レール21a,21b上面間のギャップ(隙間)を測定できるようになっている。ギャップセンサー92としては、渦巻電流ギャップセンサー、超音波ギャップセンサーなどが使用できる。スライドウエイ3滑走中、基準バ−90上面には常時、水が供給されるようにしておくのが好ましい。セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールベース23の下部には樋93を設け、スライドウエイシステム1のセラミク製パッドに供給された水を集水し、フレ−ム9外へ排出する。
【0033】
スライドウエイシステム1のガイドウエイ2を支持するフレーム素材9は、セラミックでも、花崗岩でも鋳鉄でもよい。鋳鉄は安価であり、製造も容易である。花崗岩はセラミックと比較して防黴性に優れる。フレームへのガイドウエイ2の固定は、ボルトナットを用いてもよいが、制振パッド接着剤27を用いるのが好ましい。
【0034】
制振パッド接着剤27は、積層構造であってもよい。例えば、予め芯材となる高減衰ゴムの層を半加硫し、この高減衰ゴムの表裏面に制振接着剤組成物を塗布した後、フレーム上に置き、この上にガイドウエイ2を載せることにより型押しし、ついで、硬化させることにより高減衰ゴムの層とゴムの層とが一体化された制振パッドとすることができる。制振パッドの厚みは、1〜5mmで充分である。
【0035】
スライドウエイ3の駆動手段としては、コイル34と電磁磁石または永久磁石24とを用いるリニアーモーターが使用される。これらは、ファナック株式会社、独国ジーメンス社、米国アーノルド社等より市販されている。スライドウエイ3のサイズが小さいときは、図5、図6に示すようにハニカム構造の長尺状直方体レールベース23の上面に対し25〜35度傾斜するようにしてコイル34および磁石24を設けるのが好ましい。スライドウエイ3のサイズが大きいときは、コイル34および磁石24は25〜35度傾斜させても、傾斜させなくてもよい。
【実施例】
【0036】
図1および図2に示すように、上述した静圧水軸受直動案内装置1の長尺状直方体キャリッジベース31の底面の前後の少なくとも一方に設けた非磁性支持体301の前方に磁気バランサー300を設ける。非磁性支持体301の素材としてはアルミニウム、ガラス繊維補強エポキシ樹脂、セラミクスなどが使用できる。実施例では、Al5083を用いた。また、磁気バランサー300の素材としては圧延鋼材、磁性鉄、磁性スチールなどが使用できる。実施例では、縦15mm、横80mm、高さ30mmの圧延鋼材(SS400)を用いた。
【0037】
図1に示すように、スライドウエイ3の端部から磁性バランサー300中心までの距離δxを8〜248mm変化、および磁気バランサー300とコイル34との距離δyを1.0mm、2.0mm、5.0mmと変化させた際のθmaxを測定し、θmaxが最小となる条件を探す。θは、テーブル(長尺状直方体キャリッジベース)31両端に設置した2式の電機マイクロメータ(TESA社製GT31)の出力電圧差より求めた。
【0038】
測定条件は、テーブルストローク400mm、テーブル滑走幅480mm、テーブル移動速度1.6mm/秒または0.67mm/秒、各々の静圧水軸受への水供給量0.8ml/秒、磁石の吸引力(Fm)3,700ニュートンである。因みに、磁気バランサーを用いないときのピッチング角(θ)は0.25”であった。
【0039】
図3に磁気バランサーのテーブル取り付け位置とピッチング角度の相関を示す。δxは一定の条件でδyを1.0mm、2.0mm、5.0mmの条件でテーブル移動させるとθmaxはピッチP=30mmの周期で変化する。δyが小さいほどθmaxの変化量は大きくなる。言い換えれば、δyが小さいほどバランシング モーメント力が大きくなるためθmaxを広範囲に調整可能であることを示唆する。また、テーブルのピッチング モーメントと位相が反転する位置に適当な吸引力を有する磁性体(磁気バランサー)300を設置することにより周期的なピッチング運動を改善できることを示唆する。
【0040】
そこで、δy=0.7mmの位置に磁性バランサーを設け、δxを変化させたときのθmaxを測定した結果が図4に示されている。θmaxはピッチP=30mmで周期的に変化し、磁気バランサー300を設置しないときのθmax=0.25”を中心値として、ほぼ対称にそれよりも大きくなる場合と小さくなる場合があることが示されている。図4では、δxが236mmとしたときにピッチング振れ幅は、θmax=0.1”と最小値を示し、磁気バランサー300を設置しないときの約半分の値である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の磁気バランサー300を付属させた静圧水軸受直動案内装置1は、特許文献4記載の静圧水軸受直動案内装置1が示すリニアーモーター駆動・静圧水軸受テーブルの周期的ピッチング(θmax=0.25”)をθmax=0.10”まで改善できる。
【符号の説明】
【0042】
1 静圧水軸受直動案内装置
2 ガイドウエイ
21a,21b
24 モーターコイル
3 スライドウエイ
31 直方体キャリッジベース
32 キーパー
33 パッド
34 磁石
35水噴出孔
300 磁気バランサー
301 非磁性支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製ガイドウエイ(A)上を断面逆凸字状のセラミック製スライドウエイ(B)がリニアーモーター駆動により直動駆動する静圧水軸受案内装置であって、
このガイドウエイ(A)は、一対のセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールを上面高さが同一水平面に位置するセラミック製ハニカム構造の長尺状直方体レールベース上面に平行離間して設け、これらの長尺状直方体レール間に永久磁石または電磁石を前記長尺状直方体レールベース上面に向けて設けたガイドウエイ(A)であり、
前記断面逆凸字状のスライドウエイ(B)は、セラミック製ハニカム構造の長尺状直方体キャリッジベースの底面に二対のセラミック製パッドを平行離間して前記長尺状直方体レール上方に位置するよう設けるとともに、その長尺状直方体キャリッジベースの底面中央位置であって前記二対のセラミック製小径パッド間にモーターコイルをその底面が前記永久磁石または電磁石の上面に平行となるよう設けるとともに、そのモーターコイルとガイドウエイ(A)に設けた一方のハニカム構造のセラミック製長尺状直方体レール間に長尺状直方体キャリッジベースの底面より下方に伸び長手方向側面下部であって前記セラミック製長尺状直方体レールの長手方向内側面に対向する位置に一対のセラミック製パッドを離間して設けたセラミック製キーパーを設け、これらのセラミック製パッドに水を供給する噴出孔を設けた断面逆凸字状のセラミック製スライドウエイ(B)であり、
前記長尺状直方体キャリッジベースの底面の前後の少なくとも一方に設けた非磁性支持体の前方に磁気バランサーを設けたことを特徴とする、静圧水軸受直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177385(P2012−177385A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39141(P2011−39141)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】