説明

静電チャックおよび静電チャックを搭載した装置

【課題】 被吸着体が静電チャック誘電体と接触する面積を極限にまで小さくし、かつ十分な吸着力および非常に高速な応答特性を発揮する新しい類型の静電チャックを提供する。
【解決手段】 電気的接続手段と、複数の凸部が形成され被吸着体を該凸部上面に載置する平滑な表面を有する誘電体とから構成され誘電体の厚みd(m)、被吸着体を吸着する環境の温度における体積抵抗率ρ(Ωm)、比誘電率εrおよび凸部の高さh(m)とした場合、これらは以下の数式を満足する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置部品およびフラットパネルディスプレー(FPD)製造装置に搭載される静電チャックおよび該静電チャックを搭載した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電チャックはその吸着原理により以下の類型があった。
1つは電極上に体積抵抗率の非常に大きい誘電層を設け、誘電層の厚みを薄くしかつ吸着電圧を非常に大きくして電極と被吸着体で構成される平行平板コンデンサモデルによって説明されるいわゆるクーロン力タイプと、誘電体の体積抵抗率、誘電層厚み、表面粗さを一定の範囲に調整することによってジョンセンラーベック効果を生じさせ強い吸着力を発現するジョンセンラーベック型静電チャックである(特許文献1参照)。
【0003】
また、誘電体の体積抵抗率が大きい場合の静電チャックが開示されている(特許文献2参照、特許文献3参照)。この場合、吸着力は静電チャックの電極とウェハ間の静電容量と、印加される電圧によって決まるが、一般に吸着力は弱く、非常に高い電圧が必要とされている。そのため、表面に凹凸の加工を設けるには、被吸着体を十分吸着できる力を確保するための制限があり被吸着体と静電チャック表面の接触面積は大きくせざるを得なかった。
【0004】
特許文献3に見られるものを詳述すると、以下の通りである。
静電チャックは、電極と誘電体と、電極と外部電源との電気的接続手段から構成され、誘電体と被吸着体であるシリコンウェハは物理的に接触させ、外部の電源から高電圧を付加する。このとき誘電体とウェハ間には、接触抵抗が形成され電流が流れる。その電流が接触界面間に電圧降下を発生させ、その電位差により接触界面に電荷が誘起され、その結果クーロン引力を生じさせている。すなわち静電チャックと被吸着体が物理的に接触している領域は微小なギャップが存在しその静電容量は大きな値になり蓄積される電荷も多いため強い吸着力が発現する。
【0005】
この場合は、静電チャック表面に凸部状の突起加工等を施すことが可能であった(特許文献4参照)。
【0006】
特許文献5に見られるものを詳述すると、以下の通りである。
静電チャック表面に凹凸を設け、被吸着体との接触面積を吸着部面積の10%未満とし、被吸着体と非接触部の間隔(隙間)を0.35〜9.0μmとしたものである。間隔(隙間)を狭くすることにって非接触部でもクーロン力による吸着力を発現させるものである。
【特許文献1】特許第3275901号公報
【特許文献2】特開平5−8140号公報
【特許文献3】特開平6−291175号公報
【特許文献4】特開平7−153825号公報
【特許文献5】特開平10−233434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の特許文献4に記載の静電チャックでも、静電チャック吸着面に凸部状の突起を設けることはできたが、凸部状の突起と被吸着体の接触する面積比率(接触面積比率)は1〜10%に限られていた。半導体やFPDのプロセスはシリコンウェハやガラス基板に対するパーティクル発塵やコンタミネーションを嫌うためなるべく被吸着体と静電チャックの物理的な接触面積を低減することが求められている。
【0008】
クーロン力型静電チャックは吸着力の電圧印加に対する応答性はよいものの高電圧を使用し、かつ吸着力も弱く上記の課題を克服することはできなかった。
【0009】
ジョンセンラーベック型静電チャックは吸着力の大きさは主に静電チャックと被吸着体が物理的に接触する領域の双方の表面粗さで決まる。よって静電チャックの表面を平滑にしても被吸着体側の表面粗さはコントロールできないため吸着力でも接触面積比率を1%以下にするには困難であった。また吸着力の応答性は主に誘電層の体積抵抗率によって決まるため、使用温度や素材の選択によっては電源を切ってもシリコンウェハが外れにくいなど残留吸着が生じやすかった。
【0010】
文献5では、被吸着体と誘電体の間隔(隙間)をせまくして吸着力を大きくすることを開示しているが、吸着の過渡応答特性についてはなんら触れられていない。また接触面積を小さくすると良いことが開示されているものの具体的な方法、実施例の記載はない。
【0011】
本発明は、上記のような問題を解決すべく、静電チャックと被吸着体の物理的な接触面積を極限にまで小さくすることができ、かつ十分大きな吸着力と電圧印加に対する吸着力の応答特性に優れた静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明によれば電気的接続手段と、複数の凸部が形成され被吸着体を該凸部上面に載置する平滑な表面を有する誘電体とから構成され前記誘電体の厚みd(m)、被吸着体を吸着する環境の温度における体積抵抗率ρ(Ωm)、比誘電率εrおよび凸部の高さh(m)とした場合、これらは以下の〔数1〕を満足する構成とした。
【0013】
【数1】

【0014】
上記構成とすることにより、吸着力が十分大きくかつ電圧印加および除荷に対する吸着力の過渡応答性が非常によくなり被吸着体のハンドリングが非常に良好となる。その結果、残留吸着力の減衰が速く、被吸着体の着脱が良好に行える静電チャックが得られる。
【0015】
これを詳述すると以下のようになる。
まず本発明の静電チャックの構成および等価回路を図1に示す。
すなわち、本発明にかかる静電チャックの吸着力の絶対値は凸部高さhに支配され、吸着力の電圧印加、除荷に対する応答特性は、静電チャックの誘電層の体積抵抗率ρ、凸部の高さh(ドットの高さ)、誘電層の厚さdによって〔数3〕〜〔数7〕によって与えられる過渡応答特性を示す。このとき時定数がτであり〔数8〕で表せる。
ここで、C1は凸部の高さによって形成される静電チャック表面の底と被吸着体の間隔(隙間)で構成される静電容量成分である。G1は静電チャック表面の底と被吸着体の間隔(隙間)に流れる制限電流に対して等価な抵抗成分のコンダクタンスである。C1は静電チャック誘電層の静電容量成分である。G2は静電チャック誘電層の抵抗成分のコンダクタンスである。
【0016】
【数2】

【0017】
(1) t<(電圧印可時間T)の場合
【0018】
【数3】

【0019】
(2) T<t(電圧印可時間T)の場合
【0020】
【数4】

【0021】
時間Tが十分経てば
【0022】
【数5】

【0023】
は0に漸近するため、整理すると
【0024】
【数6】

【0025】
【数7】

【0026】
今、実用上の指標として初期の吸着力を100%としてそれが2%まで崩壊するまでの時間(秒)をtsとすると〔数9〕のようになる。
【0027】
【数8】

【0028】
ここで、G1は凸部の間隔(隙間)の抵抗成分で電流はほとんど流れないためG1=0の近似すると、更に簡単になり、〔数9〕になる。
【0029】
【数9】

【0030】
ここで全てのパラメータが静電チャックの誘電層の物性値および形状から算出できるためこのパラメータを代入すると〔数11〕になる。
【0031】
【数10】

【0032】
よって、吸着力の応答性をよくするためにはtsを小さくするようなパラメータに基づいて静電チャックを設計製作すれば良いことに帰結する。
【0033】
〔数1〕の連立不等式の内、tsが0.6(秒)以上ではすきまに電荷が蓄積される時間が非常に長く実質的に使いにくくなる。tsが0.001(秒)以下では被吸着体に流れ込む電流が非常に大きくなりそのため外部電源の容量を相当大きくしなければならないなど不具合が生じ易い。ここで体積抵抗率は静電チャックが使用される温度における体積抵抗率である。一般的には例えば露光機や検査機では室温付近、エッチング装置では−50〜100℃程度、プラズマCVD装置では50〜300℃程度、スパッタリング装置では100〜400℃程度となりこれらの用途の中から実際に静電チャックが使用される温度を選択しその温度での体積抵抗率を考慮して設計する。
【0034】
また請求項2記載の発明によれば、〔数2〕の連立不等式が成立するパラメータを選択することにより更に応答性が改善されただけでなく裏面に絶縁膜が形成されているような半導体ウェハであっても吸着、離脱が著しく良好になる。
【0035】
【数11】

【0036】
上限値をこのようにすれば、さらにの被吸着体の離脱性が確保でき、ほぼ電源のon/off(双極の場合は電極間ショート、単極の場合はウェハと電極間のショート)とともに半導体ウェハが吸着、離脱させることができる。また特に裏面に酸化物等の絶縁性膜が裏面に形成されているようなウェハであっても離脱が瞬時に行える。
【0037】
また、請求項3に記載の発明によればの前記静電チャック表面の凸部の面積が吸着面積に対して0.001%から0.5%未満であることを特徴とする。本発明にかかる吸着力は凸部の面積にはほとんど影響を受けないため被吸着体に対するパーティクル汚染を考えた場合なるべく小さいほうがよい。複数の散点状凸部の面積の合計は約0.001%程度まで小さくすることは可能である。その場合は凸部の直径を0.05mm、凸部間の距離を15mm程度にする必要がある。また凸部の直径をφ0.25mm、距離を8mmとすれば上記比率は0.089%となる。φ0.5mm、距離を8mmとすれば0.35%となる。
【0038】
凸部の大きさはφ0.5mm以下更に好ましくはφ0.25mm以下が望ましい。
0.001%より小さくすることは原理的には可能であるが製作上の問題及び吸着力による被吸着体のたわみにより凸部の底面に底付きする場合が生じる。接触面積比率は0.5%より大きくすると凸部の頂点で発生するジョンセンラーベック力が無視できなくなるほか、被吸着体に対するパーティクル汚染の懸念が増大してくる。したがって好ましい範囲は0.001%から0.5%未満となる。また更に好ましくは0.001%から0.1%未満とすることである。このようにすれば被吸着体に対するパーティクル汚染はきわめて少なくすることができる。本発明に係る静電チャックは吸着力および吸着力の応答性を十分確保しかつ被吸着体物に対する物理的な接触を従来になく少なくすることができる。
【0039】
凸部の間隔距離は15mm以下、好ましくは12mm、更に好ましくは8mm以下がよい。
15mmより大きくなると凸部の高さによっては吸着力によるたわみで被吸着体が非接触部の底面に接触してしまう恐れがある。12mm以下では底つきはしないものの電圧2000V印加で4μm程度のたわみが発生し平面度が要求される用途には適当でない場合がある。8mm以下であると被吸着体のたわみは1μm以下となり種々のプロセスにおいて十分許容できるレベルである。
【0040】
本発明にかかる静電チャックの吸着力は〔数3〕、〔数4〕で表せ、電圧印加時間が十分に長い場合はexp項の係数で決定される。
すなわち〔数12〕のようになる。
【0041】
【数12】

【0042】
よって、C1が大きければ吸着力は大きくなる。すなわち凸部の高さhは低いほど吸着力は大きくなる。ただし、5μm未満では高電界による電界放射を伴うと思われる放電現象が凸部によって構成される静電チャック底面と被吸着体の裏面間に著しく発現する。そのためG/(G1+G2)が小さくなりCの増大する効果を減殺し吸着力が小さくなる。特に印加電圧が2000V以上で顕著になる。従って電界強度が2000V/5μm(=4×10V/m)以下になるように使用することが望ましい。また凸部の高さが15μm以上になるとCが小さくなりすぎ吸着力は電圧を1500V(1×10V/m)以上にしないと実用上の吸着力が得られない。凸部高さが10μmであれば500V(5×10V/m)〜4000V(4×10V/m)の範囲で十分な吸着力が得られる。すなわち、5×10V/mから4×10V/mの範囲であれば凸部高さが5から15μmの間で使用できる。
【0043】
また請求項4記載の発明によれば、前記静電チャック表面で凸部以外の領域は絶縁性膜で覆われていることを特徴とする。
上記構成とすることにより、本発明のうち凸部の底面から被吸着体に流れる放電による電流を抑えることができる。また、底面からの誘電層を構成する物質のパティクル混入も防止できる。
【0044】
また請求項5記載の発明によれば、前記静電チャック表面で凸部以外の領域は導電性膜で覆われていることを特徴とする。
上記構成とすることにより、放電によって発生する誘電体表面上の表面電荷(体積電荷を含む)の蓄積を防ぐことができる。
【0045】
また請求項6記載の発明によれば、前記電極は、誘電層に直接ボンディングされた導電性基盤であることを特徴とする。
上記構成とすることにより、静電チャックの構成が簡素化でき装置への搭載が容易になる。
【0046】
また請求項7記載の発明によれば、上記静電チャックを半導体またはフラットパネルディスプレー用製造装置に搭載すると、パーティクル汚染および吸着シーケンスのスループットが向上した優れた装置が提供できる。
【0047】
また請求項8記載の発明によれば、上記記載の静電チャックが十分な吸着力を発揮できる使用方法を開示した。
【発明の効果】
【0048】
本発明によって、静電チャックと被吸着体の物理的な接触が非常に小さくても実用的な十分大きな吸着力が発現しかつ吸着力の応答性が非常によい静電チャックが得られる。また、コンタミネーションやパーティクルの付着を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の好適な実施の例を以下に示す。
図2は、代表的な第1の実施例で、図3のように凸部の直径をφ0.25mmとし、これを一辺8mmの正三角形の各頂点にあたる位置に連続的に配置した。このとき静電チャック表面の面積に対する凸部の合計の面積の比率(接触面積比率)は約0.089%である。凸部の高さ、体積抵抗率は表1に記載の水準とした。凸部の高さは電気マイクロメーターで測定し、体積抵抗率は室温で測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
前記静電チャック表面の外周には前記複数の凸部と同じ高さのリング状凸部及び、He、Ar等の不活性ガスまたはN2ガスを供給するためのガス供給孔を設けた。
上記構成とすることにより、被吸着体をガス冷却するために静電チャック表面にリング状凸部(シールリング)を設けた。その結果、被吸着体と静電チャックのガス封入面積が従来の静電チャックより著しく広くなり被吸着体の面内温度分布が均一となる。尚、シールリングの幅は0.5mmとした。シールリング幅は一般に0.2〜4mmで冷却ガスの許容されるリーク量より設計される。
【0052】
更にガスを拡散させる溝を設けてある。溝は供給孔を通過するように配置される。上記構成とすることにより、ガスの充満時間を短縮できる。その結果、被吸着体の温度制御性に大きく影響するガスの圧力制御性が改善される。更に好ましい態様として、前記誘電体表面に前記ガス供給孔を通過する溝形状の凹部形成し、該凹部の深さが100μm以下であることがのぞましい。100μm以下であれば、ガスの充満時間を短縮するとともに溝部での放電による電流も小さく抑制することができる。
尚、図4は概略断面図である。
【0053】
静電チャックの誘電層は主に酸化アルミに遷移金属酸化物を添加して、還元雰囲気で焼成し体積抵抗率を調整したセラミックス製誘電体を作製し、その中に平面上の電極を形成した。この材料の比誘電率は10であった。誘電体表面と内包される電極までの厚さは500〜2000μmの範囲で作製した。
また比誘電率300、誘電層厚さ2mm、体積抵抗率10ΩmのSiCおよび比誘電率4、誘電層厚さ20μm、体積抵抗率1013Ωmのポリイミド樹脂からなる静電チャックを比較対象物とした。
【0054】
上記静電チャックの上に被吸着体としてシリコンウェハを載せ、静電チャック誘電体の電極に導通している電気的接続手段に外部電源を接続する。本実施例の静電チャックは、電極が2ケのいわゆる双極構造をとっているので被吸着体は接地する必要がない。電極が1ケの単極構造にする場合は、被吸着体は接地する必要がある。
【0055】
上記の構成を真空チャンバー内(約1Pa)に設置し、真空下でウェハがはがれる際のガスの圧力値を吸着力としtorr表示とした。電圧は1.5KVとした。その結果、凸部高さhは高くても15μmであれば印加電圧が1.5KVで70torr程度の吸着力があった。この値は実際の半導体製造プロセスで被吸着体をガス冷却する場合に封入するガス圧力に比較して十分であり、十分実用に供することができる。
【0056】
残留時間は静電チャックと被吸着体との間隔(隙間)のガス圧力が設定値からほとんどゼロになるまでの時間を残留時間として測定した。このとき予め被吸着体は電圧1.5KVで1分間吸着後、電源を切り、静電チャックの端子間を短絡した。その結果、被吸着体がベアシリコンウェハであって残留時間がおおよそ1秒以内であったものは〔数1〕の不等式を満足していることが確認された。また被吸着体がその裏面に絶縁膜が形成されているシリコンウェハである場合で残留時間が1秒以内であったものは〔数2〕の不等式を満足していることが確認できた。また、比較のために評価したSiCならびにポリイミド樹脂は吸着力は十分なものの残留時間が長く被吸着体の離脱特性が十分ではなかった。
【0057】
尚、本実施例は、被吸着体としてシリコンウェハを用いたが導電性を有するものであれば何にでも適用できる。例えばガラス基板に薄膜電極が形成されているようなフラットパネルディスプレー用ガラス基板であっても同様に吸着できる。
【0058】
凸部の直径を0.25mmから0.1mmへ、凸部間距離を8mmから15mmと変更しても吸着力は変化しなかった。このときの接触面積比率は約0.025%となる。また凸部の直径を0.5mm、凸部間を8mmとした場合も同様に吸着力が大きかった。このときの接触面積比率は約0.35%となる。凸部形状は円形以外でも良いがコーナーでの応力集中によるパーティクル発塵をより抑える観点から他の多角形形状より円のほうがよい。
【0059】
本発明の好適な第2の実施の例を以下に示す。
図5は、本発明に係る静電チャックの表面(凸部の底面)に絶縁性膜で覆ったものである。このとき、被吸着体に流れ込む電流を抑制することができ、デバイスの損傷を防止することができる。絶縁性膜はポリイミド樹脂等のセラミック誘電体より体積抵抗率の高いものであれば良い。ポリイミド樹脂を3μmコーティングしたときの電流値は約1/10に抑えることができた。その結果電界強度が4×10V/mであっても吸着力は100torr以上保たれた。
【0060】
本発明の好適な第3の実施の例を以下に示す。
本発明に係る静電チャックの表面(凸部の底面)に導電性膜であるTiCで1μm覆ったものである。このとき、電荷自体は導電性膜と被吸着体に相対し存在するため吸着することができる。また、導電性膜がないときと比較し誘電体に体積電荷の蓄積が生じにくく残留吸着力が発生しにくい。導電性膜の種類はTiCに限らず金属単体や金属炭化物、金属ほう化物であってもよい。
【0061】
本発明の好適な第4の実施の例を以下に示す。
本発明の実施例1〜3の静電チャックは基盤にボンディングされて使用される。その基盤には冷媒流路、ガス流路等設けられるのが一般である。また基盤自体が電極となる場合がありその場合は図6に示したように誘電体層のみが基盤にボンディングされる。ボンディングにはInのような比較的融点の低い金属や、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂がよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の静電チャックの等価回路と模式図
【図2】本発明の代表の平面図
【図3】本発明の代表の平面拡大図
【図4】本発明の代表の断面図
【図5】実施例2の静電チャックの概略図
【図6】実施例4の静電チャックの概略図
【符号の説明】
【0063】
1…凸部
2…凸部底面
3…ガス供給孔
4…リング状凸部(シールリング)
5…凹部(ガス拡散用溝)
6…電極
7…誘電層
8…被吸着体
9…外部電源
10…間隔(隙間、凸部高さ)
12…電気的接続手段
16…基盤
17…冷媒流路
18…冷媒出入り口
19…ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と該電極に対する電気的接続手段と、複数の凸部が形成され被吸着体を該凸部上面に載置する平滑な表面を有する誘電体とから構成され前記誘電体の厚みd(m)、被吸着体を吸着する環境の温度における体積抵抗率ρ(Ωm)、誘電体を構成する材料の比誘電率εおよび凸部の高さh(m)とした場合、これらは以下の〔数1〕を満足することを特徴とする静電チャック。
【数1】

【請求項2】
電極と該電極に対する電気的接続手段と、複数の凸部が形成され被吸着体を該凸部上面に載置する平滑な表面を有する誘電体とから構成され前記誘電体の厚みd(m)、被吸着体を吸着する環境の温度における体積抵抗率ρ(Ωm)、誘電体を構成する材料の比誘電率εおよび凸部の高さh(m)とした場合、これらは以下の〔数2〕を満足することを特徴とする静電チャック。
【数2】

【請求項3】
前記複数の凸部(凸部と同じ高さであるガスリークを防ぐ目的で設けられた閉じた領域であるシールリングを除く)上面の合計の面積と前記誘電体表面の面積との比率が0.001%以上〜0.5%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記静電チャック表面で凸部以外の領域は絶縁性薄膜で覆われていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静電チャック。
【請求項5】
前記静電チャック表面で凸部以外の領域は導電性膜で覆われていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記電極は、誘電層に直接ボンディングされた導電性基盤であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の静電チャック。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載された静電チャックを搭載する半導体またはフラットパネルディスプレー用製造装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載された静電チャックであって静電チャックに印加される電圧と凸部の高さから計算される電界が5×10〜4×10V/mで使用されることを特徴とする静電吸着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−49357(P2006−49357A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224106(P2004−224106)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】