説明

静電型アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、及び画像形成装置、並びに静電型アクチュエータの製造方法

【課題】 振動板表面に均一な保護膜を備え、作動特性の優れた静電型アクチュエータの提供。
【解決手段】 振動板電極22を含み表面に保護膜26を形成した振動板20と、この振動板20に空隙14aを介して対向配置された固定電極12とを備え、前記空隙14aに連通する連通路56と、前記連通路56を大気中に開放する第一の開放孔55a及び第二の開放孔55bと、第一の開放孔55aを封止する第一の封止部材58aと、第二の開放孔55bを封止する第一の封止部材58aとは異なった材質の第二の封止部材58bとを備えたことを特徴とする静電型アクチュエータ2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、及び画像形成装置、並びに静電型アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンに連動したプリンタやファクシミリ装置には、文字や画像の形成にインクジェットヘッドと呼ばれる液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置が多く用いられている。液滴吐出ヘッドのうち、液滴吐出用のアクチュエータとして静電力を利用した静電型アクチュエータがある。静電型アクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドにおいては、振動板と電極との間の空隙(ギャップ)の寸法(ギャップ長)精度がその吐出特性に大きく影響を及ぼし、特に、インクジェットヘッドの場合、各アクチュエータの吐出特性のバラツキが大きければ、印字精度、画質の再現性が著しく低下することとなる。また、作動電圧の低電圧化を図るためには、空隙間隔を0.1〜0.5μm程度にしなければならず、より高い寸法精度が求められる。
【0003】
静電型アクチュエータにおいては、前記空隙内の圧力と大気圧の差圧の解消や、空隙内の湿潤化を防止しアクチュエータの信頼性を保つ目的として、空隙内への空気やガス導入のために各空隙と連通する連通路を設けることがある。例えば、特許文献1に開示されているように、振動板と固定電極との間の振動室(空隙)内部に疎水膜を形成するために、アクチュエータ外部と各振動室を連通させる連通路を設け、この連通路を介して振動室に疎水膜形成の原料ガスを導入して疎水膜を形成した後、連通路を封止材にて封止した構造の静電型アクチュエータが知られている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、振動室(空隙)内の疎水化処理を短時間で行い、振動室ごとの処理条件のバラツキを小さくするため、それぞれ振動室となる複数の電極用凹部を、1つの処理剤注入穴と溝部を介して連通し、この処理剤注入穴を対称中心として、個々のアクチュエータユニットを左右対称に配列して形成する静電型アクチュエータが知られている。
【0005】
また、特許文献3に開示されているように、犠牲層プロセスを用いて空隙を高精度に形成した静電型アクチュエータにおいて、疎水膜を形成するガスを効率的に振動室に導入するために、個々のアクチュエータユニットの電極形成層をパターニングするときに共通連通路を配置するための部分を形成し、電極形成層上の絶縁膜の共通連通路を形成する場所の絶縁膜に開口を形成し、その上に堆積された犠牲層に共通連通路形成部分を形成する。そして、電極形成層と犠牲層で形成された共通連通路形成部分を犠牲層エッチングで除去して、空隙よりも高さの高い(断面積の広い)共通連通路を形成する静電型アクチュエータが知られている。
【0006】
また、特許文献4に開示されているように、空隙の連通路の大気開放孔を封止剤によって封止するとき、毛細管現象によって、封止剤が連通路を通じて空隙内にまで達し、正常な動作ができなくなることを防止するため、大気開放孔を封止する封止剤の共通連通路内への流入に対して抵抗となる蛇行通路を形成した静電型アクチュエータが知られている。
【0007】
特許文献3、特許文献4に示された例のように、静電型アクチュエータを液滴吐出ヘッドの作動圧力発生手段として用いる場合、振動板成分の吐出液への溶出防止や振動板と吐出液との濡れ性の確保のため、振動板表面に保護膜(接液膜ともいう。)を形成する場合が多い。接液膜の種類、成膜手法はいろいろであるが、有力なもののひとつにポリイミドやポリベンゾオキサゾール等の樹脂膜を塗布法により形成する方法がある。材料的には、吐出液に対しての耐久性、濡れ性が高いことはもちろんであるが、樹脂膜であることからヤング率が小さく、比較的厚く成膜することができ、そのため、振動板表面の多少の凹凸や極小さなパーティクルであれば、それによってピンホールが発生することが無いというメリットがある。(ヤング率の大きな膜を厚く成膜してしまうと、振動板の剛性が高くなりすぎ、低電圧駆動ができなくなる。)成膜方法としては、塗布法であれば、低コストで成膜が可能であるというメリットがある。
【特許文献1】特開平11−263012号公報
【特許文献2】特開2007−038583号公報
【特許文献3】特開2006−115624号公報
【特許文献4】特開2007−077864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に開示された静電型アクチュエータのように、2枚の基板を貼り合わせて空隙形成する場合は、減圧下や高温で貼り合わせを行うと、完成した静電型アクチュエータを通常の環境下に戻すと空隙内が減圧になる。このように、空隙内圧が外圧(大気圧)と異なると、内外の圧力差により振動板が空隙側に撓んだ状態となる。振動板が撓んだ状態で振動板表面に保護膜などを塗布成膜すると、接液膜厚が不均一になり易い。また、その後、空隙を外界と連通させ、空隙内を外圧(大気圧)と同じにしたとしても、接液膜厚の不均一性と膜の応力のために振動板の撓みが完全には戻らないことが多い。原理的には撓みの分を考慮してあらかじめ空隙高さを設定すれば良いが、実際にはバラツキが大きくなってしまうので、このような状況は避ける必要がある。
【0009】
また、静電型アクチュエータの製造工程中に空隙内圧が外圧(大気圧)と異なる状態になる場合もある。例えば、特許文献3、4に示す静電型アクチュエータ製造方法では、空隙を犠牲層プロセスで形成し、その後、犠牲層除去孔をCVD等で成膜した封止膜により封止することにより、その状態では空隙内は減圧になっている。(減圧プロセスで成膜した場合はむろんのこと、常圧プロセスであっても高温プロセスで成膜した場合には、その後常温に戻すと減圧になる。)
そこで、特許文献4に開示されているように、空隙と連通路により連通した大気開放孔を開口し、空隙内圧が外圧(大気圧)と同じにし、振動板が撓んでいない状態で接液膜を塗布することが望ましい。また、大気開放孔を接液膜形成と同時に接液膜で封止することも可能である。しかし、接液膜材料は、振動板の吐出液への溶出防止や吐出液との塗れ性確保の点に主眼を置いて選定されており、塗布条件も均一に所望の膜厚になる様に設定されるため、このような方法では封止性が十分に得られない場合がある。さらに、接液膜の材料(溶媒)が空隙内に封入されることで、疎水性の阻害や異物発生の原因となる場合もある。
【0010】
これに対しては、特許文献4に開示された別の方法のように、接液膜形成前に別の封止剤であらかじめ封止してから接液膜を形成することで問題を回避できるが、封止剤が基板面から盛り上がる様に形成されると、接液膜塗布時に塗布膜厚の不均一性の原因になる。また、空隙内を疎水化処理した後に接液膜を形成するので、接液膜、疎水剤、封止材の組合せに制約が生じる。例えば、前述したポリイミドやポリベンゾオキサゾールを塗布法で形成する場合、その前駆体を塗布した後、300℃以上の温度でベークすることで前駆体を重合させる必要があるので、その温度に耐えられる疎水剤や、封止材としなければならないという制約が生じる。
【0011】
静電型アクチュエータを液滴吐出ヘッドの吐出圧力発生手段として用い、振動板表面に接液膜を形成する場合について説明したが、静電型アクチュエータを他の用途に用いる場合であっても、振動板表面に何らかの保護膜である塗布膜を成膜する場合には同様な問題が生じる。
【0012】
このように、振動板表面に均一な保護膜を形成し、所定の印加電圧に対して所定の作動能力を発揮する静電型アクチュエータを提供することは容易ではなかった。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑み、振動板表面に均一な保護膜を備え、作動特性の優れた静電型アクチュエータ、及びこの静電型アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッド、画像形成装置、並びに静電型アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、振動板電極を含み表面に保護膜を形成した振動板と、この振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、前記空隙に連通する連通路と、前記連通路を大気中に開放する第一の開放孔及び第二の開放孔と、第一の開放孔を封止する第一の封止部材と、第二の開放孔を封止する第一の封止部材とは異なった材質の第二の封止部材とを備えたことを特徴とする静電型アクチュエータである。
【0015】
好ましい本発明は、基板上に空隙を介して対向配置された前記振動板と固定電極とを備えた静電型アクチュエータ素子が複数あり、それぞれの静電型アクチュエータ素子の空隙が前記連通路によって連通されていることを特徴とする前記静電型アクチュエータである。
【0016】
好ましい本発明は、第一の封止部材は、前記保護膜と同一の材料で形成されていることを特徴とする前記静電型アクチュエータである。
【0017】
好ましい本発明は、第二の開放孔は、前記連通路中の第一の開放孔と前記空隙との連通部の間に形成されていることを特徴とする前記静電型アクチュエータである。
【0018】
本発明は、前記本発明の静電型アクチュエータを備え、前記静電型アクチュエータを作動させることによりノズルから液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出ヘッドである。
【0019】
本発明は、前記本発明の液滴吐出ヘッドを搭載し、前記液滴吐出ヘッドにより記録材料に液滴を噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【0020】
本発明は、基板上に固定電極と、空隙を介して前記固定電極に対向する振動板電極を含む振動板と、前記空隙に連通する連通路とを形成する静電型アクチュエータ素子形成行程と、前記連通路を大気中に連通させる第一の開放孔を設ける第一の開放孔形成行程と、前記振動板表面に保護膜を形成する保護膜形成行程と、第一の開放孔を第一の封止材で封止する第一の開放孔封止行程と、連通路を外部に連通させる第二の開放孔を設ける第二の開放孔形成行程と、第二の開放孔から前記連通路を介して前記空隙に疎水剤を導入する疎水剤導入行程と、第二の開放孔を、第一の封止材とは材質の異なる第二の封止材で封止する第二の開放孔封止行程と、を含むことを特徴とする静電型アクチュエータの製造方法である。
【0021】
好ましい本発明は、第二の開放孔形成行程より前に、吐出流体を流通させる吐出流体通孔を形成する吐出流体通孔形成行程を含むことを特徴とする前記静電型アクチュエータの製造方法である。
【0022】
好ましい本発明は、第一の封止材は前記保護膜と同じ材料で形成され、保護膜形成行程と第一の開放孔封止行程とを同時に実施することを特徴とする前記静電型アクチュエータの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、振動板表面に均一な保護膜を備え、作動特性の優れた静電型アクチュエータ、及びこの静電型アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッド、画像形成装置、並びに静電型アクチュエータの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の静電型アクチュエータは、振動板電極を含む振動板と、この振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備えており、この振動板は、振動圧力を伝達する表面に保護膜が形成されている。そして、前記空隙に連通する連通路が形成されており、この連通路は、第一の開放孔及び第二の開放孔を備え、第一の開放孔は第一の封止部材により封止されており、第二の開放孔は第一の封止部材とは異なった材質の第二の封止部材により封止されている。なお、第一の開放孔は、第一の封止部材により封止されていない状態では、連通路が大気中に開放されるように形成されている。
【0025】
図1には、本発明の静電型アクチュエータの部分断面図を示している。図1に従って本発明の静電型アクチュエータを説明する。本発明の静電型アクチュエータ2は、静電型アクチュエータ基板10上に形成されており、静電型アクチュエータ基板10上の図の中央部には、固定電極12、空隙14a、振動板電極22、引っ張り応力膜、24保護膜26を含む振動板が形成されている。この部分が、静電型アクチュエータとして機能する。空隙14aを形成するために、空隙14aの両側の固定電極12と振動板電極22との間には、スペーサ14b(犠牲層ともいう。)が配置されている。そして、このスペーサ14bの部分には、連通路56が形成されている。
【0026】
連通路56は、空隙14aを挟んで対向する固定電極12と振動板電極22の対(この対を静電型アクチュエータ素子という。)が、基板10上に複数あるときは、これらの静電型アクチュエータ素子中の各空隙14aを連通する。さらに、連通路56は、第一の開放孔55a及び第二の開放孔55bとも連通している。しかし、完成品としての静電型アクチュエータ2においては、第一の開放孔55a及び第二の開放孔55bはそれぞれ第一の封止部材58a及び第二の封止部材58bにより封止されている。特に、第二の封止部材58bは、連通路56をも遮断している。なお、第一の開放孔55aは、連通路56上の第二の開放孔55bの配置されている位置より空隙14aから遠い位置に配置されている。すなわち、第一の開放孔55aと空隙14aとを結ぶ連通路56は、第二の封止部材58bにより遮断されている。
【0027】
このような形態にすると、第二の封止部材58bを気密性の高い材質の封止部材で形成すれば、第一の開放孔55aの気密性に関わらず、空隙14aの密閉性は十分保たれる。このため、第一の封止部材58aは、保護膜26を振動板に塗布する工程で同時に形成することができる。
【0028】
次に、図2を参照にして、静電型アクチュエータ素子を複数備えた本発明の静電型アクチュエータについて説明する。図2は、基板上10に空隙を介して対向配置された前記振動板と固定電極とを備えた静電型アクチュエータ素子3が複数あり、それぞれの静電型アクチュエータ素子3の空隙が前記連通路56によって連通されている、本発明の静電型アクチュエータ2を示した平面図に近い模式図である。
【0029】
この静電型アクチュエータ2は、複数の静電型アクチュエータ素子を備えた静電型アクチュエータであって、複数の静電型アクチュエータ素子3は、アクチュエータ基板10上に平行に並ぶように配列されており、静電型アクチュエータ素子3の列に直交するように配置された連通路56に、それぞれの静電型アクチュエータ素子3の空隙14a(図2においては、静電型アクチュエータ素子3と空隙14aとは重なっている。)の端部が連通している。そして、アクチュエータ基板10上の端部に延在している連通路56に、連通路56の末端側から第一の開放孔55a、第二の開放孔55bの順に並んで配置されている。
【0030】
第一の開放孔55a、及び第二の開放孔55bは、静電型アクチュエータ2を製造する際に、空隙14a内に空気を導入して気圧を調整したり、撥水性の材料を導入したりするためのものであり、各静電型アクチュエータ素子3毎に形成する必要はなく、静電型アクチュエータ2製造後は、封止しておくべきものなので、このように連通路56の端部にあることが好ましい。
【0031】
また、第一の封止部材58aとして、保護膜26と同一の材料で形成すれば、静電型アクチュエータ2の製造工程が容易になる。
【0032】
さらに、第二の開放孔55bを連通路56中の第一の開放孔55aと空隙14aとの連通部の間に形成すれば、第一の封止部材58a及び第二の封止部材58bの選択の幅が広がり、静電型アクチュエータ2の製造方法が容易になる。
【0033】
(実施形態1)
実施形態1は本発明の液滴吐出ヘッドであり、本発明の静電型アクチュエータを圧力発生手段として使用している。図3には、実施形態1の液滴吐出ヘッドの分解斜視図を示した。図4には、この液滴吐出ヘッドの一部の平面図を示した。但し、この平面図は、内部を透視して記載している。図5〜8は、それぞれ図4におけるX−X'、Y1−Y1'、Y2−Y2'、Y3−Y3'断面の断面図である。図3〜8を参照にして実施形態1の液滴吐出ヘッド1、及びこれに組み込まれている本発明の静電型アクチュエータについて説明する。
【0034】
この液滴吐出ヘッド1は、ノズル板40、液室基板30、アクチュエータ基板10及び図示されていないフレーム、フレキシブルプリント基板(FPC)、ドライバーICを含んで構成されている。ノズル板40、液室基板30、及びアクチュエータ基板10は、組み立てられた状態では、積層されて接着剤により接着されている。
【0035】
ノズル板40は、表面側に(図2の上側表面)に撥水膜をコーティングしたポリイミドフィルムであり、ノズル孔41はノズル板40を液室基板30に接着したのち、レーザ加工にて開口したものである。
【0036】
液室基板30には、X線回折における結晶軸が[110]のシリコン基板を用い、ノズル板40と反対側の面に加圧液室33・流低抵抗部32・共通液室31が形成されている。また、ノズル孔41と加圧液室33を連通させるための連通管34が、加圧液室33からノズル板40側に液室基板30を貫通させて形成されている。このような構成とすることにより、液室基板30の厚さよりも加圧液室高さを低くすることができ、製作時のハンドリングの容易な厚さのある液室基板30を用いたまま、加圧液室33の高さを最適な吐出特性を得られるようにすることができる。
【0037】
結晶軸が[110]のシリコン基板を用いているので、公知のごとく、加圧液室等を異方性エッチングにて高精度に加工することが可能となっている。また、加圧液室33等を形成後、熱酸化により表面に酸化膜を形成し、濡れ性の向上と吐出液(インク)による基板材料のシリコンの腐食防止を図っている。このとき、図示は省略したが、液室基板30のノズル接着面側には、ダミーパターンを設けておくことで、熱酸化後に酸化膜の内部応力により基板が反ることを防止している。
【0038】
アクチュエータ基板10には、結晶軸が[100]のシリコン基板を用い、加圧液室33に対応するように、振動板20、空隙14a、固定電極12からなる静電型アクチュエータが形成されている。この静電型アクチュエータは、MEMS加工技術を用いて低消費電力で高集積加工して形成することができる。また、アクチュエータ基板10にはノズル並び方向に、各空隙を相互に連通する連通路56が形成されていて、連通路56の端部は連通路を大気に開放するための大気開放部55a,55bに連通されている。この大気開放部55a,55bは、アクチュエータ基板10を形成し終わった後は封止材によって封止される。
【0039】
この静電型アクチュエータでは、アクチュエータ基板10の外部側(液室基板と反対側)から吐出液を供給するため、液供給路57がアクチュエータ基板10を貫通して形成されている。
【0040】
振動板20は積層膜で形成されていて、空隙14a側から、以下の5層からなっている。
・振動板側絶縁膜21(酸化シリコン膜):振動板と対向電極が当接したときの短絡防止
・振動板電極22(ヒ素ドープポリシリコン膜):対向電極との間に電圧印可し静電力を発生させるための電極
・引っ張り応力膜24(窒化シリコン膜):振動板を全体として引っ張り応力とすることで、撓まず張った状態にすることおよび駆動時の反発力確保
・犠牲層除去孔封止膜25(酸化シリコン膜):犠牲層除去孔の封止(引っ張り応力膜24(窒化シリコン膜)の割れ防止も兼ねている。)
・振動板接液膜26(PBO膜):インクによる振動板腐食防止の保護膜(PBO;Polybenzoxazole(ポリベンゾオキサゾール))
その他に、振動板電極22と引っ張り応力膜24の間に、振動板20の撓み防止膜として酸化シリコン膜を設けてもよい。
【0041】
固定電極12にはリンドープのポリシリコンを用い、その空隙側には絶縁膜として酸化シリコン膜を形成している。また、固定電極12とアクチュエータ基板10の間にも基板絶縁膜11として酸化シリコン膜が形成され、固定電極12とアクチュエータ基板10の間の絶縁性を確保している。
【0042】
空隙14aおよび連通路56は、ポリシリコンを犠牲層に用いた犠牲層プロセスによって形成した(犠牲層除去孔やその周囲の詳細構造については図示していないが、特許文献3、4に記載のような周知技術を参考にできる。)。連通路56については、固定電極のポリシリコンも連通路形成の犠牲層14bとして利用することで、連通路56のコンダクタンス増加を図っている。なお、振動板電極22や固定電極12は犠牲層14bと同じくポリシリコンにて形成されているが、先に述べたように、空隙(となる部分)に面している部分は絶縁膜として設けたシリコン酸化膜で覆われているので、ポリシリコンとシリコン酸化膜で十分な選択性を有するエッチャント、例えばTMAH(Tetramethylammoniumhydroxide(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド))水溶液、を用いて犠牲層除去を行うことにより、犠牲層除去時にエッチングされることは無い。
【0043】
また、振動板電極22と固定電極12のどちらか一方を、ノズル(チャネル)毎に分離した個別電極、他方を複数ノズル(チャネル)、例えば全ノズル(チャネル)、で共通の共通電極とすることで、吐出させるノズル(チャネル)の選択が可能である。ここでは、振動板電極22を共通電極、固定電極12を個別電極とした。
【0044】
この実施形態の静電型アクチュエータにおいては、連通路56の空隙14aから離れた端部付近に直列に配置された第一の開放孔55aと第二の開放孔55bがあり、第一の開放孔55aは振動板接液膜26の形成材料であるPBO膜と同じ材料からなる第一の封止材58aで封止され、第二の開放孔55bは紫外線硬化型のエポキシ樹脂からなる第二の封止材58bで封止されている。
【0045】
(実施形態2)
本発明の静電型アクチュエータの製造方法について実施形態2として説明する。図9は、実施形態2の静電型アクチュエータの製造方法のフローチャートである。図10は、本発明の静電型アクチュエータの製造行程を断面図により表している。図9,10を参照にしながら説明する。
【0046】
ステップ1(図9(S1)):主要部形成
周知の静電型アクチュエータの製造方法と同様に犠牲層プロセスを用いて、アクチュエータ基板10上に固定電極12を形成し、その上に犠牲層を形成し、振動板20(但し、振動板接液膜26は積層されていない。)を配置し、空隙14a、連通路56を形成して静電型アクチュエータの主要部を形成する。この場合、犠牲層除去孔を減圧CVD法による酸化シリコン膜にて封止したので、空隙14a内は減圧に保持され、常温、常圧の環境下では振動板は大気圧に押され空隙14a側に撓んでいる。
【0047】
ステップ2(図9(S2)):第一の開放孔開口(図10(a))
第一の開放孔55aを開口する。これにより、空隙14a内の圧力を外部圧力と同一にすることができ、振動板20の撓みが解消される。第一の開放孔55aの開口方法はフォトリソ・エッチングにより行った。
【0048】
ステップ3(図9(S3)):振動板接液膜形成/第一の開放孔封止(図10(b))
保護膜であるPBO製の振動板接液膜26を塗布法にて形成した。感光性材料であるPBOとなる前駆体を用い、以下(1)〜(5)の順に実行することで、容易に所望の部分にのみPBO膜を形成することができる。
(1)PBOとなる前駆体を含んだ溶液をスピンコートにてアクチュエータ基板10表面に塗布する。
(2)ソフトベークを行い、溶媒を揮発させる。このとき、例えば、最初に60℃/3min程度ベークした後、120℃/4minベーク(いずれもホットプレートにてベーク)と段階的に温度を上げることで、第一の開放孔55a付近で発生し易い、溶媒の揮発に伴う発泡を抑えることができる。
(3)PBO不要部をマスク露光にて前駆体膜に露光する。
(4)アルカリ溶液に浸漬し露光したPBO前駆体膜部分を除去する。
(5)320℃程度の温度でハードベークを行い、残った前駆体膜部分を完全にPBO化する。
【0049】
このとき、第一の開放孔55aは、振動板接液膜26形成と同時にPBO膜により封止される。このような方法で第一の封止材58aを形成した場合、第一の開放孔55aの寸法や開放孔付近の材料の状態により、第一の封止材58aは、図10(b)に示したように、表面にのみ形成され内部には入り込まない場合と、図示は省略したが連通路56内部に入り込む場合がある。図示は省略したが、連通路56を蛇行形状としておけば、連通路56内部に深く入り込むことを抑制できる。
【0050】
PBO膜は透気性があり、特に、図示したように、第一の封止材58aが表面にのみ形成された場合には、透気性は大きいが、液体は透過しないので、後工程でアクチュエータ基板10表面が液体(例えば、レジスト溶液・エッチング液・剥離液・純水等)にさらされても、連通路56や空隙14a等にそれらの液体が入り込むことは無い。
【0051】
ステップ4(図9(S4)):液供給路形成/液供給路接液膜形成(図10(c))
この実施形態の静電型アクチュエータは、アクチュエータ基板10を貫通する液供給路57を備えており、アクチュエータ基板10側から吐出液を吐出するタイプである。液供給路57は、フォトリソ・エッチング工程により形成した。
【0052】
液供給路57の形成される部分が開口したレジストをマスクに、アクチュエータ基板10表面の酸化膜・窒化膜積層膜は通常のドライエッチャーで、シリコンからなるアクチュエータ基板10はシリコンディープドライエッチャーにてエッチングを行った。他に、ウォータレーザやサンドブラスト等で形成する方法を利用してもよい。
【0053】
液供給路接液膜61は、アクチュエータ基板10の裏面側より、PBO前駆体を含んだ溶液をスプレーコートにて液供給路57内壁に付着させ、その後ベークすることでPBO化することができる。
【0054】
ステップ5(図9(S5)):第二の開放孔開口(図10(d))
第二の開放孔55bを、所定の位置に、レーザ等により開口する。
【0055】
ステップ6(図9(S6)):疎水化処理
第二の開放孔55bから連通路56を通じ空隙14aへHMDS(ヘキサメチルジシラザン)などの疎水膜となるガスを導入し、空隙14a内部表面、特に振動板側絶縁膜22および固定電極側絶縁膜13の空隙14aに面した部分の疎水化処理を行う。このとき、前処理(乾燥)工程として、空隙14a内部の表面に付着している水分や、振動板接液膜形成/第一の開放孔封止工程で、空隙14a内に入り込み、一部が表面に付着しているPBO前駆体を溶解していた溶媒等を除去、あるいは可能な限り低減することが望ましい。
【0056】
具体的前処理工程としては、例えば、ドライエアーを供給した処理槽内にアクチュエータ基板10を放置して乾燥させる工程、処理槽内を真空にして加熱し、アクチュエータ基板10を真空加熱する工程、アクチュエータ基板10を配置した処理槽内を真空雰囲気および窒素雰囲気に交互に切り換える工程、及びこれらの工程を組合せて採用することができる。
【0057】
疎水膜形成工程は、アクチュエータ基板10と液相のHMDSを入れた容器を処理槽内に置き、常温、常圧、の状態で、HMDS蒸気が拡散により十分空隙14a内に侵入するまで放置する。または、減圧にした処理槽内で液相のHMDSを入れた容器中にアクチュエータ基板10を浸漬させて液相のHMDSを空隙14a内に導入し、その後別の処理槽にてアクチュエータ基板10を加熱し、液相のHMDSを空隙内14a内から蒸発させ除去しても良い。このとき、所望の濃度のHMDS蒸気が空隙14a内に残るよう、加熱処理槽内には適度なHMDS蒸気を導入しておく。
【0058】
ステップ7(図9(S7)):第二の開放孔封止(図10(e))
疎水化処理槽内からアクチュエータ基板10を取り出し、速やかに第二の開放孔55bを封止材58bにて気密封止する。封止材58bとしては、前述したように紫外線硬化型のエポキシ樹脂を用いた。
【0059】
以上の製造工程にて、アクチュエータ基板10を製造すれば、上記ステップ3の振動板接液膜形成工程では、振動板20が撓んでいない状態で振動板接液膜26となる材料(PBO前駆体)を塗布するので、塗布法を用いて均一な膜厚の振動板接液膜26を形成することが可能となる。
【0060】
また、振動板接液膜26および液供給路接液膜61の形成工程後に疎水化処理を行っているので、疎水膜やその蒸気成分(ここではHMDS)が、接液膜となるPBOのハードベーク時の高温にさらされることにより、それらが脱離、分解することは無い。
【0061】
さらに、第二の開放孔55bを封止する封止材58bを、封止の点からのみ選定できるので、確実な気密封止が可能となる。このとき、第二の開放孔55bを第一の開放孔55aよりも連通路56上の空隙14a側に形成しておけば、第二の開放孔55bが連通路56を遮断することができ、第一の開放孔55aの封止性が不完全であっても空隙14aの封止性の影響をなくすることができる。
【0062】
(実施形態3〜6)
本発明の静電型アクチュエータの実施形態3〜6は、複数の静電型アクチュエータ素子を備えた静電型アクチュエータであって、連通路56及び第一の開放孔55aと第二の開放孔55bの配置が、それぞれ異なった形態である。これらの静電型アクチュエータにおいては、複数の静電型アクチュエータ素子3がアクチュエータ基板10上に平行に並ぶように配列されており、それぞれの静電型アクチュエータ素子3の空隙14aの端部が、静電型アクチュエータ素子3の列(空隙14aの列でもある。)に沿うように配置された連通路56に連通している。
【0063】
実施形態3の静電型アクチュエータは、図2に示したように、アクチュエータ基板10上の端部に延在している連通路56に、連通路56の末端側から第一の開放孔55a、第二の開放孔55bの順に並んで形成されている。この実施形態は、すでに図2を参照にして説明したので詳細は省く。
【0064】
実施形態4の静電型アクチュエータは、図11に示すように、静電型アクチュエータ素子3がアクチュエータ基板10上に整列して配列されており、各静電型アクチュエータ素子3の空隙14aを連通するように、アクチュエータ基板10の端部に静電型アクチュエータ素子3の列に沿って連通路56が形成されている。連通路56の両端部に第二の大気開放孔55bを設け、各静電型アクチュエータ素子3の空隙14a内に疎水材前駆体のガスをより短時間で導入できるようにしたものである。ここで、第一の大気開放孔55aは、連通路56の一方の末端に1箇所のみとしている。第一の大気開放孔55aは、各静電型アクチュエータ素子3の空隙14a内を外界の圧力と等しくするためのものであり、一方の連通路56の1箇所にあれば十分であるが、勿論、両側の連通路56の端部に2箇所以上設けてもよい。このとき、第一の大気開放孔55aよりも第二の大気開放孔55bを、連通路56上の空隙14aに近い側に形成することが好ましい。
【0065】
図12は、実施形態4の静電型アクチュエータを示しており、実施形態3の静電型アクチュエータとの違いは、各静電型アクチュエータ素子3の空隙14aの両端部に連通路56があり、空隙14aの両端部がそれぞれの連通路56に連通している。そして、2本の連通路56の両端部には、それぞれ第二の大気開放孔55bが配置されている。このようにすれば、各静電型アクチュエータ素子3の空隙14a内に疎水材前駆体のガスをさらに短時間で導入することができる。実施形態3の配置例同様、第一の大気開放孔55aは連通路56中の1箇所のみとしているが、2箇所以上に配置しても良い。こととき、上述したように、第一の大気開放孔55aよりも第二の大気開放孔55bを空隙14aに近い側に形成することが好ましい。
【0066】
図13は、実施形態5の静電型アクチュエータを示しており、実施形態4の静電型アクチュエータとの違いは、実施形態4における2本の連通路56の端部同士を連通し、そこから延長して連通路56上に第二の大気開放孔55b及び第一の大気開放孔55aを配置している。この実施形態は、大気開放孔を両側の連通路56で共通として、第二の大気開放孔55bの数を減らしたものである。この実施形態においては、疎水剤の導入時間は短時間でできるようにしたまま、実施形態4の静電型アクチュエータに比べ封止が必要な箇所である第二の大気開放孔55bを減らすことで、封止に要する時間を短縮することが可能となる。ここでも、第一の大気開放孔55aは片側のみの配置としているが、両側に配置しても良い。
【0067】
さらに、その他の配置形態として、各空隙14aをそれぞれ所定数毎にグループ化し、空隙群毎に連通路56にサブ共通連通路を枝分かれさせて、このサブ共通連通路に第二の大気開放孔55bを配置することで、各空隙14aへの疎水剤前駆体ガスの導入を均一に迅速に行えるようにしても良い。
【0068】
(実施形態7)
実施形態7は、上述の本発明に係る静電アクチュエータを吐出液の吐出圧力発生手段とした液滴吐出ヘッドを搭載した画像形成装置である。図14は実施形態6の斜視図であり、図15はこの画像形成装置の機構部を説明する側面説明図である。図14及び図15を参照にして実施形態6の画像形成装置について説明する。通常、この画像形成装置はインクジェット記録装置、インクジェットプリンタとも呼ばれている。このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載された本発明の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド95、記録ヘッド95へ記録液を供給する液カートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納している。装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙される。
【0069】
このような画像形成装置においては、記録ヘッド95の性能や信頼性が、直接画像形成装置の性能、信頼性つながる。この画像形成装置において、液滴吐出圧力発生手段として低消費電力、高精度、高信頼性の本発明の静電アクチュエータを備えた液滴吐出ヘッドを用いることで、低消費電力、高画質、高信頼な画像形成装置を提供することができる。
【0070】
以上のように、本発明を実施形態を中心にして説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、本発明の趣旨と当業者の技術常識を踏まえて、これらの実施形態を変更、変形してもよい。
【0071】
本発明の静電型アクチュエータは、空隙に連通する連通路と、前記連通路端付近に直列に配置された第一の開放孔と第二の開放孔とを備え、第一の開放孔と第二の開放孔が異なる材料で封止される構成とすることで、静電型アクチュエータ表面(振動板表面)に、保護膜を形成する場合に、その膜厚が均一になるよう塗布することが容易であり、かつ、空隙内の最適な疎水化処理および空隙の気密性の確保を可能とすることができるので、高精度、高信頼性の静電型アクチュエータを得ることができる。
【0072】
本発明の静電型アクチュエータは、第一の開放孔を封止する材料を振動板表面に形成された材料と同一のものとすることで、製造工程の簡略化が可能となり、低コストの静電型アクチュエータを得ることができる。
【0073】
本発明の静電型アクチュエータの製造方法によれば、第一の開放孔を開口した後、振動板表面に振動板保護膜等の機能性膜を形成することから、振動板が撓んでいない状態で振動板表面に振動板保護膜等の機能性膜を成膜することができる。この為、保護膜を塗布法等で均一に成膜することが可能となり、また、その後、第二の開放孔を開口し、そこから疎水材前駆体ガスを空隙内に導入し、その後、第二の開放孔を封止するので、空隙内の最適な疎水化処理および空隙の気密性の確保が可能となり、高精度、高信頼性の静電型アクチュエータを得ることができる。
【0074】
本発明の液滴吐出ヘッドは、液滴吐出圧力発生手段として本発明の静電型アクチュエータを用いていることで、高精度、高信頼性の静電型液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0075】
本発明の画像形成装置は、画像形成部に本発明の液滴吐出ヘッドを用いているので、高画質、高信頼の画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の静電型アクチュエータの断面図
【図2】複数の静電型アクチュエータ素子を備えた静電型アクチュエータの模式図
【図3】本発明の液滴吐出ヘッドの分解斜視図
【図4】本発明の液滴吐出ヘッドの部分平面透視図
【図5】図4におけるX−X'断面図
【図6】図4におけるY1−Y1'断面図
【図7】図4におけるY2−Y2'断面図
【図8】図4におけるY3−Y3'断面図
【図9】本発明の静電型アクチュエータの製造工程フローチャート
【図10】本発明の静電型アクチュエータの製造工程図
【図11】本発明の静電型アクチュエータの開放孔の配置例(2)
【図12】本発明の静電型アクチュエータの開放孔の配置例(3)
【図13】本発明の静電型アクチュエータの開放孔の配置例(4)
【図14】本発明の画像形成装置の斜視図
【図15】本発明の画像形成装置の側面説明図
【符号の説明】
【0077】
1: 液滴吐出ヘッド
2: 静電型アクチュエータ
3: 静電型アクチュエータ素子
10: 基板(アクチュエータ基板)
11: 基板絶縁膜
12: 固定電極
12b: 固定電極 (引き出し部)
12c: 固定電極ダミー(スペーサ)
13: 固定電極側絶縁膜
14a: 空隙
14b: 残存犠牲層(スペーサ)
20: 振動板(積層振動板)
21: 振動板側絶縁膜
22: 振動板電極
22b: 振動板電極(引き出し部)
22c: 振動板電極ダミー(スペーサ)
24: 引っ張り応力膜
25: 犠牲層除去孔封止膜
26: 振動板接液膜(保護膜)
30: 液室基板
31: 共通液室
32: 流体抵抗部
33: 加圧液室
34: 連通管
35: 流路基板接液膜
40: ノズル板
41: ノズル孔
52: 電極−配線接続孔
53a: 固定電極配線
53b: 振動板電極配線
54: 外部との電気的接続部
55a: 第一の大気開放孔
55b: 第二の大気開放孔(HMDS導入孔)
56: 連通路
57: 液供給路
58a: 第一の封止部材
58b: 第二の封止部材(封止材)
60: 接着材層
61: 吐出液流通孔
61: 吐出液供給路接液膜
81: 画像形成装置(装置本体)
82: 印字機構部
83: 用紙
84: 給紙カセット
85: 手差しトレイ
86: 排紙トレイ
93: キャリッジ
95: 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板電極を含み表面に保護膜を形成した振動板と、この振動板に空隙を介して対向配置された固定電極とを備え、
前記空隙に連通する連通路と、
前記連通路を大気中に開放する第一の開放孔及び第二の開放孔と、第一の開放孔を封止する第一の封止部材と、
第二の開放孔を封止する第一の封止部材とは異なった材質の第二の封止部材とを備えたことを特徴とする静電型アクチュエータ。
【請求項2】
基板上に空隙を介して対向配置された前記振動板と固定電極とを備えた静電型アクチュエータ素子が複数あり、それぞれの静電型アクチュエータ素子の空隙が前記連通路によって連通されていることを特徴とする請求項1に記載の静電型アクチュエータ。
【請求項3】
第一の封止部材は、前記保護膜と同一の材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電型アクチュエータ。
【請求項4】
第二の開放孔は、前記連通路中の第一の開放孔と前記空隙との連通部の間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の静電型アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電型アクチュエータを備え、前記静電型アクチュエータを作動させることによりノズルから液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドを搭載し、前記液滴吐出ヘッドにより記録材料に液滴を噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
基板上に固定電極と、空隙を介して前記固定電極に対向する振動板電極を含む振動板と、前記空隙に連通する連通路とを形成する静電型アクチュエータ素子形成行程と、
前記連通路を大気中に連通させる第一の開放孔を設ける第一の開放孔形成行程と、
前記振動板表面に保護膜を形成する保護膜形成行程と、
第一の開放孔を第一の封止材で封止する第一の開放孔封止行程と、
連通路を外部に連通させる第二の開放孔を設ける第二の開放孔形成行程と、
第二の開放孔から前記連通路を介して前記空隙に疎水剤を導入する疎水剤導入行程と、
第二の開放孔を、第一の封止材とは材質の異なる第二の封止材で封止する第二の開放孔封止行程と、
を含むことを特徴とする静電型アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
第二の開放孔形成行程より前に、
吐出流体を流通させる吐出流体通孔を形成する吐出流体通孔形成行程を含むことを特徴とする請求項7に記載の静電型アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
第一の封止材は前記保護膜と同じ材料で形成され、保護膜形成行程と第一の開放孔封止行程とを同時に実施することを特徴とする請求項7又は8に記載の静電型アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−184111(P2009−184111A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23045(P2008−23045)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】