説明

静電容量式スイッチ装置

【課題】 簡素な回路、電極構成でノイズ対策を達成可能な静電容量式スイッチ装置を提供する。
【解決手段】 隣接する静電容量式スイッチを交互に差動アンプ10の入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続することにより、各静電容量式スイッチが外来ノイズの影響によってノイズ信号を出力したとしても、差動アンプ10によってノイズ信号を除去することができ、検出を行う静電容量式スイッチから出力された検出信号のみを検出することができる。よって、静電容量式スイッチの検出精度が向上するので、電子鍵盤楽器の鍵の正確なストローク位置を検出することができる。このように、外来ノイズに起因して発生したノイズを差動アンプ10を設けるだけで除去できるので、ノイズの除去装置を簡素な構成とすることができ、安価にノイズ対策を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばキーボードや電子鍵盤楽器等の入力装置の打鍵などを検出するための静電容量式スイッチであって、外来ノイズの影響を除去する静電容量式スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キーボードや電子鍵盤楽器等の入力装置の打鍵を検出するものとして、例えば特開平9−204846号公報に記載されているように静電容量式スイッチを用いたものがある。この静電容量式スイッチは、基板上にドライブ側固定電極およびセンス側固定電極とが設けられ、ドライブ側固定電極とセンス側固定電極上で接続された可動電極(鍵の押下に応じて可動する電極)を固定電極側へ押下することにより、可動電極とセンス側固定電極との間に可動電極の押下のストロークに応じた静電容量が形成されるものである。この静電容量にもとづいて、鍵が押されたことを検出していた。
また、静電容量式スイッチのドライブ側固定電極およびセンス側固定電極(以下、単に固定電極と呼ぶ)は、基板上に形成された所定の大きさを持つ面状の電極であり、外来ノイズの影響を受けやすい。このためシールド板によって静電容量式スイッチを覆い、外来ノイズの影響を防止しようとしていた。
【特許文献1】特開平9−204846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の静電容量式スイッチのノイズ対策においては、静電容量式スイッチの上にシールド板を設ける必要があるなど、ノイズ対策のための構造が複雑になってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで本発明はこのような問題点に鑑み、簡素な回路、電極構成でノイズ対策を達成可能な静電容量式スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、それぞれ押し込み量に応じて静電容量が変化する複数の静電容量式スイッチに、トリガ信号出力部から順次トリガ信号を入力して静電容量を検出する静電容量式スイッチ装置において、入力側プラス端子と入力側マイナス端子とを有し、該入力側プラス端子と入力側マイナス端子に入力された入力信号の差分を出力する差動アンプを備え、隣接する静電容量式スイッチを交互に差動アンプの入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続し、差動アンプの出力をトリガ信号の入力された静電容量式スイッチの出力とするものとした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、隣接する静電容量式スイッチを交互に差動アンプの入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続したので、外来ノイズの影響によって検出対象の静電容量式スイッチからノイズ信号が出力された場合でも、隣接する静電容量式スイッチからもまた外来ノイズの影響によって同様のノイズ信号が出力されているため、差動アンプによってこれらの静電容量式スイッチから出力された信号の差分を取ることによって、ノイズ信号のみが除去され、静電容量検出回路はノイズ信号を含まない検出信号にもとづいて当該静電容量式スイッチの静電容量を検出することができる。
このように差動アンプを用いて外来ノイズに起因するノイズ信号を除去することができるので、簡素な回路、電極構成でノイズ対策を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明の実施の形態を実施例により説明する。
なお本実施例は、静電容量式スイッチ装置を電子鍵盤楽器の打鍵を検出するスイッチに適用した例である。
まず、静電容量式スイッチについて説明する。
図1に、静電容量式スイッチの断面を示し、図2の(a)に、静電容量式スイッチの固定電極のみを示す。
基板2上に、センス側固定電極4およびドライブ側固定電極5(以下、固定電極4、5と呼ぶ)が形成される。固定電極4、5は、図2の(a)に示すように半円形状に形成され、該2つの固定電極4、5は、それぞれの弦を向かい合わせて、若干の隙間を設けて基板2上に配置されている。
固定電極4、5は絶縁体3によって覆われている。
【0008】
絶縁体3の上面において、固定電極4、5と対応する位置にバネで構成された可動電極6が備えられる。また可動電極6はラバー7によって覆われている。
ラバー7の図中上方には図示しない電子鍵盤楽器の鍵が位置し、鍵が押下されるとラバー7の頂部が可動電極6を圧縮しながら基板2側に近づく。
基板2、絶縁体3、固定電極4、5、可動電極6、ラバー7より、静電容量式スイッチ1が構成される。
【0009】
ドライブ側固定電極5と可動電極6との間、およびセンス側固定電極4と可動電極6との間には、所定の静電容量が形成されている。
ラバー7を押下すると静電容量が変化するので、該静電容量を検出することによって、鍵のストロークを検出することができる。
なお、静電容量式スイッチ1の静電容量の検出方法については、特開平9−204846号公報に記載されているものと同様であり、説明を省略する。
【0010】
次に、電子鍵盤楽器の打鍵を検出する静電容量式スイッチの回路構成について説明する。
図3に、静電容量式スイッチの回路構成を示す。
静電容量式スイッチ1(1A〜1F)は、電子鍵盤楽器の鍵毎に設けられている。なお本実施例においては、電子鍵盤楽器の鍵の数を6鍵とし、鍵毎に静電容量式スイッチ1A〜1Fが設けられているものとする。
1列に配列された静電容量式スイッチ1A〜1Fのうち、静電容量式スイッチ1A、1C、1Eのセンス側固定電極が、差動アンプ10の入力側プラス端子に接続され、静電容量式スイッチ1B、1D、1Fのセンス側固定電極が、差動アンプ10の入力側マイナス端子に接続される。
このように、1列に配置された静電容量式スイッチ1A〜1Fは、交互に差動アンプ10の入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続される。
【0011】
静電容量式スイッチ1A〜1Fのドライブ側固定電極には、後述のトリガ出力部14よりトリガ信号が各スイッチごとに順次入力される。静電容量式スイッチ1A〜1Fから出力された検出信号は差動アンプ10を通過することによって外来ノイズの影響によるノイズ信号が除去され、ノイズのない検出信号が静電容量検出回路11へ入力される。なお、ノイズ信号除去の詳細については後述する。
【0012】
静電容量検出回路11によって検出信号より静電容量が検出され、該検出された静電容量はADコンバータ12によってアナログ−デジタル変換が行われた後、CPU13へ入力される。
CPU13では、入力された静電容量の値より、鍵のストローク位置を演算し、演算結果を音源15へ出力する。
音源15は、入力された鍵のストローク位置に応じた音を出力する。
【0013】
またCPU13は、トリガ出力部14を備える。
トリガ出力部14は、静電容量の検出を行う静電容量式スイッチに対してトリガ信号を出力するものであり、静電容量式スイッチ1A〜1Fに対して順次トリガ信号を出力する。
ここでトリガ出力部14は、差動アンプ10の入力側プラス端子に接続された静電容量式スイッチ1A、1C、1Eに対しては、トリガAを出力し、差動アンプ10の入力側マイナス端子に接続された静電容量式スイッチ1B、1D、1Fに対してはトリガBを出力する。なおトリガBは、トリガAの信号レベルが反転したものである。
【0014】
次に、静電容量式スイッチより出力された検出信号に混入したノイズ信号の除去動作について説明する。
まず、トリガ出力部14からトリガ信号が出力されていない状態において、静電容量式スイッチ1A〜1Fの周囲に外来ノイズがあると、各静電容量式スイッチ1A〜1Fから外来ノイズの影響によるノイズ信号が出力される。
差動アンプ10の入力側プラス端子には静電容量式スイッチ1A、1C、1Eから出力されたノイズ信号の集まりであるノイズ信号Yが入力され、入力側マイナス端子には、静電容量式スイッチ1B、1D、1Fから出力されたノイズ信号の集まりであるノイズ信号Yが入力される。
【0015】
ここで、静電容量式スイッチ1Aと静電容量式スイッチ1Bとは隣接しているため、外来ノイズの影響を同程度に受け、静電容量式スイッチ1Aおよび静電容量式スイッチ1Bから出力されるノイズ信号は同じとみなすことができる。
同様に、静電容量式スイッチ1C、1Dから出力されるノイズ信号は同じとみなすことができ、静電容量式スイッチ1E、1Fから出力されるノイズ信号も同じとみなすことができる。
したがって、静電容量式スイッチ1A、1C、1Eから出力されたノイズYと、静電容量式スイッチ1B、1D、1Fから出力されたノイズ信号Yは同じである。
このように、差動アンプ10の入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続する静電容量式スイッチの数を同数とし、静電容量式スイッチを交互に入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続することにより、差動アンプ10の入力側プラス端子と入力側マイナス端子に入力されるノイズ信号を同じとすることができる。
【0016】
静電容量式スイッチ1A〜1Fの周囲に外来ノイズがある状態において、トリガ出力部14が静電容量式スイッチ1Aに対してトリガAを出力すると、静電容量式スイッチ1Aからは検出信号Xが出力され、該検出信号Xが差動アンプ10の入力側プラス端子に入力される。また同時に、差動アンプ10の入力側プラス端子および入力側マイナス端子には、外来ノイズの影響によるノイズ信号Yがそれぞれ入力される。
差動アンプ10は、入力側プラス端子と入力側マイナス端子間での信号の差分を出力するため、差動アンプ10からはノイズ信号Yが除去された検出信号Xのみが出力される。
【0017】
また、差動アンプ10の入力側マイナス端子に接続された静電容量式スイッチ1B、1D、1Fには、トリガAとレベルが反転したトリガBを入力することにより、静電容量式スイッチ1A、1C、1Eと静電容量式スイッチ1B、1D、1Fとで差動アンプ10から出力される検出信号の極性を整合させることができる。
【0018】
本実施例は以上のように構成され、隣接する静電容量式スイッチを交互に差動アンプ10の入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続することにより、各静電容量式スイッチが外来ノイズの影響によってノイズ信号を出力したとしても、差動アンプ10によってノイズ信号を除去することができ、検出を行う静電容量式スイッチから出力された検出信号のみを検出することができる。よって、静電容量式スイッチの検出精度が向上するので、電子鍵盤楽器の鍵の正確なストローク位置を検出することができる。
【0019】
またトリガ出力部14は、差動アンプ10の入力側マイナス端子に接続される静電容量式スイッチに入力するトリガ信号を、差動アンプ10の入力側プラス端子に接続される静電容量式スイッチに入力するトリガ信号のレベルが反転した信号とすることにより、差動アンプ10から出力された検出信号の極性をすべての静電容量式スイッチについて整合させることができる。
【0020】
また、外来ノイズに起因して発生したノイズ信号を差動アンプ10を設けるだけで除去できるので、ノイズ信号の除去装置を簡素な構成とすることができ、安価にノイズ対策を行うことができる。
さらに、差動アンプ10より出力された検出信号に外来ノイズによる影響がないため、検出信号にノイズ信号によるゆれがない。したがって、静電容量式スイッチ1の検出結果をアナログ的に用いる場合に(たとえば本実施例のように鍵の1ストローク中において複数のストローク位置を検出する場合など)、正確にストローク位置を検出できるといった効果が特に高い。
【0021】
なお本実施例において、電子鍵盤楽器の鍵の数が奇数であったり、偶数でも位置的に離れている場合には、鍵が備えられていないダミーの静電容量式スイッチを1つ追加し、差動アンプ10の入力側プラス端子と入力側マイナス端子とに接続される静電容量式スイッチを同数とすることもできる。
また図2の(a)に示したように、固定電極4、5の形状を半円形状としたが、これに限定されず、たとえば図2の(b)に示すようにセンス側固定電極4Aを円形とし、センス側固定電極4Aの周囲に一部切りかかれたドーナツ形状のドライブ側固定電極5Aを設けてもよい。
【0022】
次に応用例として、静電容量式スイッチ装置をパソコン等のキーボードに適用した場合について説明する。
図4は、静電容量式スイッチをキーボードに適用した場合の回路構成を示す図である。
なお図では、静電容量検出回路やADコンバータ等は省略し静電容量式スイッチの周辺部のみを示してある。
キーボードの各キーに対応させて設けるため静電容量式スイッチ1の数が多くなった場合、まず図に示すように各静電容量式スイッチ1(1Aa、1Ba・・・)をA列、B列、C列の順で縦の列ごとに分け、アナログ切り替えスイッチ22によって差動アンプ10の入力側プラス端子にA列、C列の順で1列置きに接続切り替え可能とし、同様にアナログ切り替えスイッチ23によって差動アンプ10の入力側マイナス端子にB列、D列の順で1列置きに接続切り替え可能とする。
なお、アナログ切り替えスイッチ22、23の切り替えは、たとえばアナログ切り替えスイッチ22がA列を選択している場合には、アナログ切り替えスイッチ23はB列を選択するなど、アナログ切り替えスイッチ22、23は常に隣接した列を選択するものとする。
【0023】
次に図に示すように各静電容量式スイッチ1をa行、b行、c行の順で横の行ごとに分け、トリガ出力部14Aから出力されるトリガAの入力先静電容量式スイッチをアナログ切り替えスイッチ20によって各行ごとに順次切り替え可能とし、同様にトリガBの入力先静電容量式スイッチをアナログ切り替えスイッチ21によって各行ごとに順次切り替え可能とする。
なお、トリガAは差動アンプ10の入力側プラス端子に接続される静電容量式スイッチ1Aa、1Ca、1Ea、1Ab・・・にのみ入力され、トリガBは差動アンプ10の入力側マイナス端子に接続される静電容量式スイッチ1Ba、1Da、1Fa・・・にのみ入力されるようになっている。
【0024】
この様な構成とすることで、たとえばA列にある静電容量式スイッチ1Aaの静電容量を検出する場合には、アナログ切り替えスイッチ22はA列を、アナログ切り替えスイッチ23はB列を選択し、アナログ切り替えスイッチ20がトリガAを入力する行を切り替える。これにより差動アンプ10によってA列の静電容量式スイッチより出力されたノイズ信号と、B列の静電容量式スイッチより出力されたノイズ信号とが相殺され、上記と同様にノイズ信号が除去された検出信号のみを得ることができる。
なお、アナログ切り替えスイッチ20〜23以外でも、信号の入出力先を切り替え可能なものであれば、他の切り替え装置を用いることもできる。
【0025】
また上記で挙げた電子鍵盤楽器やキーボードに限らず、静電容量式スイッチ装置を他のポインティングディバイスのスイッチに用いるなど、スイッチを備えた種々の装置に適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】静電容量式スイッチの断面を示す図である。
【図2】静電容量式スイッチの固定電極のみを示す図である。
【図3】静電容量式スイッチの回路構成を示す図である。
【図4】静電容量式スイッチをキーボードに適用した場合の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 静電容量式スイッチ
2 基板
3 絶縁体
4、4A センス側固定電極
5、5A ドライブ側固定電極
6 可動電極
7 ラバー
10 差動アンプ
11 静電容量検出回路
12 ADコンバータ
13 CPU
14 トリガ出力部
15 音源
20〜23 アナログ切り替えスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ押し込み量に応じて静電容量が変化する複数の静電容量式スイッチに、トリガ信号出力部から順次トリガ信号を入力して静電容量を検出する静電容量式スイッチ装置において、
入力側プラス端子と入力側マイナス端子とを有し、該入力側プラス端子と入力側マイナス端子に入力された入力信号の差分を出力する差動アンプを備え、
隣接する前記静電容量式スイッチを交互に差動アンプの入力側プラス端子および入力側マイナス端子に接続し、前記差動アンプの出力をトリガ信号の入力された静電容量式スイッチの出力とすることを特徴とする静電容量式スイッチ装置。
【請求項2】
前記トリガ出力部は、前記差動アンプの入力側プラス端子に接続された前記静電容量式スイッチと、前記差動アンプの入力側マイナス端子に接続された前記静電容量式スイッチとで信号レベルが反転したトリガ信号を入力することを特徴とする請求項1に記載の静電容量式スイッチ装置。
【請求項3】
前記差動アンプの入力側プラス端子に接続される前記静電容量式スイッチの数と、前記差動アンプの入力側マイナス端子に接続される前記静電容量式スイッチの数とを同数とすることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式スイッチ装置。
【請求項4】
前記静電容量式スイッチは、電子鍵盤楽器の打鍵、キーボードの打鍵およびポインティングディバイスのスイッチ操作のうちのいずれかを検出するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の静電容量式スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−222022(P2006−222022A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36141(P2005−36141)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000219233)東プレ株式会社 (91)
【Fターム(参考)】