静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム
【課題】低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層の剥がれを防止することができる透明電極層を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムを提供すること。
【解決手段】静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム1は、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された透明電極層2とを備えている。透明電極層2は、互いに平行に形成された複数の金属細線22と、複数の金属細線22のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層21とを有する。金属細線22の厚みは、20nm〜1μmである。
【解決手段】静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム1は、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された透明電極層2とを備えている。透明電極層2は、互いに平行に形成された複数の金属細線22と、複数の金属細線22のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層21とを有する。金属細線22の厚みは、20nm〜1μmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチパネルに用いられる透明導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載される静電容量式のタッチパネルには、例えば、透明の樹脂からなる基材フィルムの表面に透明電極層を備えた透明導電フィルムが用いられている。
このような静電容量式のタッチパネルにおいて、より高い位置検出精度を得るためには、静電容量を認識する上で、透明導電フィルムにおける透明電極層の低抵抗化が要求される。
【0003】
この透明電極層には、主に半導体材料が用いられており、低抵抗化を図ろうとすると必然的に厚みを大きくする必要がある。しかしながら、厚みを大きくすると透明性を十分に確保することができない。
そこで、特許文献1には、透明電極層の低抵抗と透明性とを両立させるものとして、ITO等からなる透明導電層(透明電極パターン)に低抵抗の金属細線を配設した透明電極層を有する透明導電フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−231533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている透明導電フィルムでは、金属細線の厚みが1〜20μmと大きい。そのため、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合には、そのエッチング時間が長くなってしまい、金属膜用のエッチング液が透明導電層とその下地との界面に浸み込み、透明導電層に剥がれが生じるといった問題がある。
【0006】
また、タッチパネルの画面サイズが大きくなると、さらなる問題が生じる。すなわち、画面サイズが大きくなると、金属膜をエッチングする面積も大きくなる。そのため、形成する金属細線の厚みが大きいと、エッチング時において、金属膜の中央部でエッチング液の濃度の低下及びそれに伴うエッチング速度の低下が生じる。これにより、全領域において均一にエッチングを行うことが困難となり、形成される金属細線の線幅が不均一となる等の問題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層の剥がれを防止することができる透明電極層を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明な樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された透明電極層とを備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにおいて、
上記透明電極層は、互いに平行に形成された複数の金属細線と、該複数の金属細線のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層とを有し、
上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmであることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記透明導電フィルムにおいて、上記透明電極層は、上記複数の金属細線と、該金属細線のいずれかと導通する上記透明導電層とを有する。そして、金属細線の厚みは1μm以下である。そのため、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合には、そのエッチング時間を短くすることができる。これにより、金属膜のエッチング時において、透明導電層とその下地との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電層の剥がれを防止することができる。
【0010】
また、上記金属細線の厚みは1μm以下と非常に薄く、エッチング時間を短くすることができるため、金属膜のエッチングを均一に行うことが容易となる。そのため、部分的なオーバーエッチ等を抑制することができ、金属膜(金属細線)の剥がれを防止することができる。また、エッチングの面積が大きくなっても、全領域において均一にエッチングを行うことができるため、画面サイズが大きいタッチパネル用の透明導電フィルムであっても、金属細線を精度良く形成することができる。
また、上記金属細線の厚みは1μm以下と非常に薄く、視認することができないため、透明電極層の透明性に影響を与えることはない。これにより、透明電極層の透明性を十分に確保することができる。
【0011】
また、上記金属細線の厚みは20nm以上である。そのため、金属細線の抵抗を十分に低いものとすることができる。これにより、金属細線を有する透明電極層の低抵抗化を十分に図ることができる。そして、このような低抵抗の透明電極層を備えた透明導電フィルムを静電容量式のタッチパネルに用いることにより、高い位置検出精度を得ることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層の剥がれを防止することができる透明電極層を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、透明導電フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図2】実施例1における、別パターンの透明導電フィルムの平面図。
【図3】実施例1における、(a)2枚の透明導電フィルムを重ねた状態を示す説明図、(b)金属細線及び透明導電層の重なり状態を示す平面図。
【図4】実施例1における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図5】実施例1における、中間フィルムを示す断面図。
【図6】実施例1における、レジストフィルムを貼り付けた中間フィルムを示す断面図。
【図7】実施例1における、レジストフィルムを金属細線用パターンに形成した状態の中間フィルムを示す断面図。
【図8】実施例1における、金属膜をエッチングした中間フィルムを示す説明図。
【図9】実施例1における、金属細線をパターン形成した中間フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図10】実施例1における、レジストフィルムを貼り付けた中間フィルムを示す断面図。
【図11】実施例1における、レジストフィルムを透明導電層用パターンに形成した中間フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図12】実施例1における、透明導電膜をエッチングした中間フィルムを示す説明図。
【図13】実施例2における、透明導電フィルムの断面図。
【図14】実施例2における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図15】実施例2における、中間フィルムを示す断面図。
【図16】実施例3における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図17】実験例2における、金属細線の線幅と端子間抵抗との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記透明導電フィルムにおいて、上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmである。
上記金属細線の厚みが20nm未満の場合には、金属細線の抵抗が高くなり、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。一方、厚みが1μmを超える場合には、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合に、そのエッチング時間が長くなり、エッチング液の浸み込みによる透明導電層の剥がれが生じるおそれがある。
【0015】
また、上記金属細線の線幅は、10〜40μmであることが好ましい。
上記金属細線の線幅が10μm未満の場合には、金属細線の抵抗が高くなり、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。一方、線幅が40μmを超える場合には、金属細線が視認され易くなり、透明電極層の透明性を十分に確保することができないおそれがある。
【0016】
また、上記透明導電層は、上記透明電極層の低抵抗化を図るため、その表面抵抗が100〜500Ω/□であることが好ましい。
上記透明導電層の表面抵抗が100Ω/□未満の場合には、この表面抵抗を実現するために透明導電層の厚みが大きくなり、透明電極層の透明性を十分に確保することができないおそれがある。また、金属細線の形成による効果が低減する場合がある。一方、表面抵抗が500Ω/□を超える場合には、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。
【0017】
また、上記基材フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロースフイルム)、PAN(ポリアクリロニトリルフイルム)、PES(ポリエーテルサルフォンフルム)、PPS(ポリフェニレンスルフィッドフイルム)等を用いることができる。
【0018】
また、上記透明導電層としては、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)等の金属酸化物を用いることができる。
また、上記金属細線としては、例えば、金属の中でも抵抗の低いCu(銅)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)等を用いることができる。
【0019】
また、上記金属細線と上記透明導電層との間には、Inからなる中間金属層が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、金属細線の密着性を高めることができる。この理由としては、両者の間に中間金属層を挟むことにより、その中間金属層によって透明導電層の表面の水分や汚染を低減する効果が得られるからであると考えられる。
【0020】
また、上記中間金属層の厚みは、金属細線の密着性を高めるという効果を十分に発揮するため、3〜20nmであることが好ましい。
上記中間金属層の厚みが3nm未満の場合には、金属細線の密着性を高めるという効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、厚みが20nmを超える場合には、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合に、その金属膜と共にエッチングを行って中間金属層を精度良く形成することが困難となるおそれがある。
【0021】
また、上記金属細線は、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、スパッタリングによって成膜することにより、金属細線の密着性を高めることができる。また、スパッタリングによる成膜は、他の成膜方法に比べて、金属の緻密性、密度が高く、また不純物が入り難いという利点があるため、金属細線の比抵抗、つまり抵抗をより低いものとすることができる。
【0022】
また、上記金属細線及び上記透明導電層は、金属膜及び透明導電膜をそれぞれスパッタリングによって連続的に成膜した後、それぞれをエッチングによってパターン形成してなることが好ましい。
この場合には、金属膜及び透明導電膜をスパッタリングによって連続的に成膜することにより、透明導電層に対する金属細線の密着性を高めることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる透明導電フィルムについて、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1は、図1(a)、(b)に示すごとく、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された透明電極層2とを備えている。
透明電極層2は、互いに平行に形成された複数の金属細線22と、複数の金属細線22のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層21とを有する。金属細線22の厚みは、20nm〜1μmである。
以下、これを詳説する。
【0024】
本例の透明導電フィルム1は、図1(b)に示すごとく、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された光学調整層12と、光学調整層12の表面に形成された金属酸化物層13とを有する。
ここで、光学調整層12は、透明導電フィルム1の光学特性を調整するものである。また、金属酸化物層13は、後述する透明導電層21よりも光屈折率が低い。また、金属酸化物層13の厚みは20〜50nmである。
【0025】
さらに、透明導電フィルム1は、金属酸化物層13の表面に形成された透明電極層2を有する。
透明電極層2は、金属酸化物層13の表面に所定のパターンで形成された透明導電層21と、透明導電層21の表面に所定のパターンで形成された複数の金属細線22とを有する。
【0026】
図1(a)に示すごとく、複数の金属細線22は、所定の間隔を設けて互いに平行な直線状のパターンで形成されている。金属細線22は、線幅が10〜40μmであり、厚みが20nm〜1μmである。
なお、金属細線22のパターンは、直線状だけでなく、曲線状等、様々なパターンを採用することができる。
【0027】
透明導電層21は、複数の金属細線22のうち、いずれかの金属細線22と電気的に接続されるように形成されている。本例では、各金属細線22において、正方形状(菱形状)のブロック211をその対角線が金属細線22に重なるように複数並べて配置したパターンで形成されている。また、透明導電層21は、厚みが20〜40nmであり、表面抵抗が100〜500Ω/□である。
【0028】
本例では、基材フィルム11はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、光学調整層12は樹脂コーティング層からなり、金属酸化物層13はSiO2(酸化珪素)からなる。また、透明電極層2において、透明導電層21は、ITO(インジウム−スズ酸化物)からなり、金属細線22はCu(銅)からなる。
なお、金属酸化物層13としては、SiO2(酸化珪素)以外にもMgF(フッ化マグネシウム)等を用いることができる。
【0029】
また、透明導電フィルム1は、静電容量式のタッチパネルに用いられる。
この場合、図2に示すごとく、上述した透明導電フィルム1(1a)(図1)に対して、金属細線22及び透明導電層21のパターン形成方向が90°異なるもう1枚の透明導電フィルム1(1b)を用意する。
そして、図3(a)に示すごとく、2枚の透明導電フィルム1(1a、1b)を、両者の間に絶縁層10を挟んで、互いの透明電極層2同士が向かい合わせとなるように重ね合わせ、これを液晶パネル等の上に配置して用いられる。
【0030】
本例では、図3(b)に示すごとく、重ねた2枚の透明導電フィルム1(1a、1b)は、互いの金属細線22(22a、22b)が直交するように配置され、互いの透明導電層21(21a、21b)が重ならないようにマトリックス状に配置されている。
なお、同図においては、一方の透明導電フィルム1aにおける透明導電層21aにハッチングを施し、他方の透明導電フィルム1bにおける透明導電層21bにはハッチングを施していない。
【0031】
次に、本例の透明導電フィルム1の製造方法について、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、まず、図5に示すごとく、光学調整層12が一方の面にコーティングされた基材フィルム11を準備する。
次いで、同図に示すごとく、光学調整層12の表面に、金属酸化物層13、透明導電層形成用の透明導電膜210、金属細線形成用の金属膜220を順にスパッタリングにより成膜する。
【0032】
本例では、図4に示すごとく、スパッタリング装置5を用いて、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220の成膜を行う。
スパッタリング装置5は、チャンバー内にSiO2(酸化珪素)のターゲット531、SnO2の割合を10重量%としたITO(インジウム−スズ酸化物)のターゲット532及びCu(銅)のターゲット533を備えている。これらのターゲット531〜533は、チャンバー内に複数設置されているカソードにそれぞれ配置されている。
【0033】
具体的な手順としては、まず、同図に示すごとく、スパッタリング装置5における2つのロール511、512に、光学調整層12が一方の面にコーティングされた基材フィルム11を取り付ける。このとき、基材フィルム11を台座ドラム52に沿わせるにようにして配置する。そして、チャンバー内を真空排気し、その真空度を8×10-4Pa以下にする。
【0034】
次いで、SiO2ターゲット531を備えたSiO2成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:500cc/分)と酸素ガス(流量:100cc/分)との混合ガスを導入する。そして、基材フィルム11を4m/分の速度でロール511からロール512(A方向)に送りながら、デュアル電源を用いて15kWの電力を供給することにより、光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図5)を成膜する。成膜した金属酸化物層13の厚みは20nmである。
【0035】
また、ITOのターゲット532を備えたITO成膜用の成膜室内にも、アルゴンガス(流量:450cc/分)と酸素ガス(流量:50cc/分)との混合ガスを導入する。そして、DCパルス電源を用いて16kWの電力を供給することにより、SiO2成膜用の成膜室から移動してきた基材フィルム11の金属酸化物層13の表面にITOからなる透明導電膜210(図5)を成膜する。成膜した透明導電膜210の厚みは25nmであり、表面抵抗は200Ω/□である。
その後、金属酸化物層13及び透明導電膜210が成膜された基材フィルム11を大気開放することなく、一旦、ロール512に巻き取る。
【0036】
次いで、Cuのターゲット533を備えたCu成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:450cc/分)を導入する。そして、基材フィルム11を6m/分の速度でロール512からロール511(B方向)に送りながら、DCパルス電源を用いて20kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にCuからなる金属膜220(図5)を成膜する。成膜した金属膜220の厚みは40nmである。
これにより、図5に示すごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
【0037】
次いで、図6に示すごとく、金属膜220の表面に、レジストフィルム31を貼り付ける。そして、レジストフィルム31上に、金属細線22のパターンを露光転写するための描画パターンを近接させ、露光を行う。その後、現像液に1分間浸して現像し、純水による洗浄を行う。
これにより、図7に示すごとく、金属膜220の表面に、レジストフィルム31からなる線幅10μm、線ピッチ5.5mmの金属細線用パターンを形成する。
【0038】
次いで、図8に示すごとく、アルカリ系のエッチング液を用いて、金属膜220におけるレジストフィルム31に覆われていない部分をエッチングする。その後、レジストフィルム31を除去する。
これにより、図9(a)、(b)に示すごとく、透明導電膜210の表面に、所望のパターンの金属細線22を形成する。
【0039】
次いで、図10に示すごとく、透明導電膜210の表面に、レジストフィルム32を貼り付ける。このとき、レジストフィルム32は、金属細線22を覆うように貼り付ける。そして、レジストフィルム32上に、透明導電層21のパターンを露光転写するための描画パターンを近接させ、露光を行う。その後、現像液に1分間浸して現像し、純水による洗浄を行う。
これにより、図11(a)、(b)に示すごとく、透明導電膜210の表面に、レジストフィルム32からなる幅4mmの正方形状(菱形状)の透明導電層用パターンを形成する。
【0040】
次いで、図12に示すごとく、酸系のエッチング液を用いて、透明導電膜210におけるレジストフィルム32に覆われていない部分をエッチングする。その後、レジストフィルム32を除去する。これにより、金属酸化物層13の表面に、所望のパターンの透明導電層21を形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図1)を得ることができる。
【0041】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1において、透明電極層2は、複数の金属細線22と、金属細線22のいずれかと導通する透明導電層21とを有する。そして、金属細線22の厚みは1μm以下である。そのため、本例のように金属膜220をエッチングして金属細線22をパターン形成する場合には、そのエッチング時間を短くすることができる。これにより、金属膜220のエッチング時において、透明導電層21を形成する透明導電膜210とその下地(本例では金属酸化物層13)との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電膜210(透明導電層21)の剥がれを防止することができる。
【0042】
また、金属細線22の厚みは1μm以下と非常に薄く、エッチング時間を短くすることができるため、金属膜220のエッチングを均一に行うことが容易となる。そのため、部分的なオーバーエッチ等を抑制することができ、金属膜220(金属細線22)の剥がれを防止することができる。また、エッチングの面積が大きくなっても、全領域において均一にエッチングを行うことができるため、画面サイズが大きいタッチパネル用の透明導電フィルム1であっても、金属細線22を精度良く形成することができる。
また、金属細線22の厚みは1μm以下と非常に薄く、視認することができないため、透明電極層2の透明性に影響を与えることはない。これにより、透明電極層2の透明性を十分に確保することができる。
【0043】
また、金属細線22の厚みは20nm以上である。そのため、金属細線22の抵抗を十分に低いものとすることができる。これにより、金属細線22を有する透明電極層2の低抵抗化を十分に図ることができる。そして、このような低抵抗の透明電極層2を備えた透明導電フィルム1を静電容量式のタッチパネルに用いることにより、高い位置検出精度を得ることができる。
【0044】
また、本例では、金属細線22は、金属膜220をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなる。そのため、金属細線22の密着性を高めることができる。また、スパッタリングによる成膜は、他の成膜方法に比べて、金属の緻密性が高く、不純物が入り難いという利点があるため、金属細線22の抵抗をより低いものとすることができる。
【0045】
また、金属細線22及び透明導電層21は、金属膜220及び透明導電膜210をそれぞれスパッタリングによって連続的に成膜した後、それぞれをエッチングによってパターン形成してなる。すなわち、本例のように、スパッタリング装置を用いて、途中で大気開放することなく、透明導電膜210及び金属膜220をスパッタリングによって順に連続的に成膜することにより、透明導電層21に対する金属細線22の密着性を高めることができる。
【0046】
このように、本例によれば、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層21の剥がれを防止することができる透明電極層2を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム1を提供することができる。
【0047】
(実施例2)
本例は、図13に示すごとく、金属細線22と透明導電層21との間に中間金属層23を形成した透明導電フィルム1の例である。
本例の透明導電フィルム1では、同図に示すごとく、透明導電層21の表面にInからなる中間金属層23が形成され、中間金属層23の表面に金属細線22が形成されている。中間金属層23は、金属細線22と同様のパターンで形成されている。また、金属中間層23の厚みは、3〜20nmである。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0048】
次に、本例の透明導電フィルム1の製造方法について、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、図14に示すごとく、実施例1と同様の構成のスパッタリング装置5を用いる。スパッタリング装置5は、チャンバー内にSiO2のターゲット531、ITOのターゲット532、Cu(銅)のターゲット533、さらにはIn(インジウム)のターゲット534を備えている。
【0049】
具体的な手順としては、実施例1と同様に、基材フィルム11の一方の面にコーティングされた光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図15)及びITOからなる透明導電膜210(図15)を順に成膜する。そして、基材フィルム11を一旦、ロール512に巻き取る。
【0050】
次いで、Inのターゲット534を備えたIn成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:450cc/分)を導入する。そして、基材フィルム11を6m/分の速度でロール512からロール511(B方向)に送りながら、DCパルス電源を用いて10kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にInからなる金属中間膜230(図15)を成膜する。成膜した金属中間膜230の厚みは10nmである。
次いで、実施例1と同様に、基材フィルム11の金属中間膜230の表面にCuからなる金属膜220(図15)の成膜を行う。
【0051】
これにより、図15に示すごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210、金属中間膜230及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
その後、実施例1と同様に、金属膜220を金属中間膜230と共にエッチングして金属細線22をパターン形成し、さらに透明導電膜210をエッチングして透明導電層21をパターン形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図13)を得ることができる。
【0052】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1は、金属細線22と透明導電層21との間にInからなる中間金属層23が形成されている。そのため、金属細線22の密着性を高めることができる。この理由としては、両者の間に中間金属層23を挟むことにより、その中間金属層23によって透明導電層21の表面の水分や汚染を低減する効果が得られるからであると考えられる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
また、本例では、製造した透明導電フィルム1に対して、さらに加熱処理(アニーリング)を施すことにより、金属細線22の密着性を高めることができる。加熱処理(アニーリング)は、例えば、赤外線ランプを用いて120〜180℃の範囲で加熱することによって行うことができる。
【0054】
(実施例3)
本例は、図16に示すごとく、さらに別のスパッタリング装置6を用いて透明導電フィルム1を製造した例である。
なお、本例において製造する透明導電フィルム1は、実施例1と同様の構成である(図1参照)。
【0055】
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、実施例1と同様の構成のスパッタリング装置5(図4参照)を用いて、基材フィルム11の一方の面にコーティングされた光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図5参照)及びITOからなる透明導電膜210(図5参照)を順に成膜する。そして、基材フィルム11を一旦、大気開放させる。
【0056】
次いで、図16に示すごとく、別のスパッタリング装置6における2つのロール611、612に、金属酸化物層13及び透明導電膜210を成膜した基材フィルム11を取り付ける。このとき、基材フィルム11を台座ドラム62に沿わせるにようにして配置する。そして、チャンバー内を真空排気し、その真空度を8×10-4Pa以下にする。
なお、スパッタリング装置6は、チャンバー内にCu(銅)のターゲット641を2つ備えており、さらに加熱装置63を備えている。
【0057】
次いで、基材フィルム11を7.5m/分の速度でロール611からロール612(A方向)に送りながら、基材フィルム11の表面温度、つまり透明導電膜210の表面温度が80℃となるように、加熱装置63によって透明導電膜210の表面の水分やハイドロカーボンを蒸発除去させる。
次いで、Cuのターゲット641を備えたCu成膜用のチャンバー内に、アルゴンガス(流量:350cc/分)を導入する。そして、DCパルス電源を用いて25kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にCuからなる金属膜22(図5参照)を成膜する。
【0058】
これにより、図5を参照のごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
その後、実施例1と同様に、金属膜220をエッチングして金属細線22をパターン形成し、さらに透明導電膜210をエッチングして透明導電層21をパターン形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図1)を得ることができる。
【0059】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1の製造方法において、金属膜220を成膜する前に、加熱装置63によって透明導電膜210の表面の水分やハイドロカーボンを蒸発除去させる。そのため、透明導電膜210に対する金属膜220の密着性を高めることができる。これにより、透明導電層21に対する金属細線22の密着性も高めることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実験例1)
本例は、透明導電膜(透明導電層)の剥がれについて調べた実験例である。
本例では、まず、実施例1の図5に示す中間フィルムから金属膜を除いた試験体A、すなわち基材フィルムの表面に、光学調整層、金属酸化物層、透明導電膜を順に形成し、金属膜を形成していない試験体Aを準備する。
次いで、透明導電膜の剥がれを評価し易くするために、実施例1と同様に、酸系のエッチング液を用いて透明導電膜をエッチングし、図1(a)と同様の形状、すなわち正方形状(菱形状)のブロックを複数並べて配置した形状のパターンとする。
【0061】
次いで、この試験体Aを金属膜(Cu)用のエッチング液に浸漬させる。そして、浸漬時間(60〜180秒)と透明導電膜(透明導電層)の剥がれとの関係を調べた。なお、金属膜用のエッチング液としては、アルカリ系のエッチング液を用い、その液温を30℃とした。
【0062】
透明導電膜(透明導電層)の剥がれの評価としては、試験体Aを金属膜用のエッチング液に所定時間浸漬させた後、パターン形成された透明導電膜の正方形状(菱形状)のブロックのうち、少なくとも一部に剥がれが生じて異形状となっているブロックの数を確認する。そして、すべてのブロックで異常が見られなかった場合には○、異形状のブロックが1〜3個見られた場合には△、異形状のブロックが4個以上見られた場合には×とした。
【0063】
【表1】
【0064】
次に、試験結果を表1に示す。
同表において、金属膜の厚み(nm)とは、表中に示された浸漬時間(秒)でエッチングすることのできる金属膜の厚みのことである。すなわち、表中に示された浸漬時間がその厚みの金属膜をエッチングするのに必要な時間ということである。
同表からわかるように、浸漬時間が60秒、90秒の場合には、透明導電膜の剥がれの評価は○であった。一方、浸漬時間が120秒、180秒の場合には、透明導電膜の剥がれの評価はそれぞれ△、×であった。
【0065】
以上の結果から、金属膜のエッチング時間が90秒以下であれば、つまり金属膜(最終的に形成する金属細線)の厚みが1000nm(1μm)以下であれば、金属膜のエッチング時において、透明導電膜(透明導電層)とその下地(金属酸化物層)との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電膜(透明導電層)の剥がれを防止することができることがわかる。
【0066】
(実験例2)
本例は、図17に示すごとく、金属細線の厚みを変化させた場合の金属細線の線幅と端子間抵抗との関係について調べた実験例である。
本例では、実施例1の図1に示す透明導電フィルムと同様の構成の透明導電フィルムについて、金属細線の厚みを10〜40nmに変化させ、このときの金属細線の線幅(10〜30μm)と金属細線が接続される一対の端子間の抵抗(端子間抵抗)との関係を調べた。なお、金属細線を構成するCuの比抵抗は1.7μΩ・cmである。また、端子間距離は23.2cmとした。
【0067】
次に、試験結果を図17に示す。同表において、横軸は金属細線の線幅(μm)、縦軸は端子間抵抗(kΩ)である。
同図からわかるように、金属細線の厚みが10nmの場合には、金属細線の厚みが20nm以上の場合に比べて急激に端子間抵抗が上昇する。
また、金属細線の厚みが10nmの場合には、その線幅が10μmの場合に例えば静電容量式のタッチパネルとして要求される端子間抵抗20kΩ以下の条件を満たすことができない。一方、金属細線の厚みが20nm以上の場合には、その線幅が10μmであっても、端子間抵抗20kΩ以下の条件を満たすことができる。
【0068】
以上の結果から、金属細線の厚みを20nm以上とすれば、金属細線の抵抗を十分に低いものとすることができ、透明電極層の低抵抗化を十分に図ることができることがわかる。そして、このような低抵抗の透明電極層を備えた透明導電フィルムを静電容量式のタッチパネルに用いることにより、大画面のタッチパネルであっても、高い位置検出精度が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 透明導電フィルム
11 基材フィルム
2 透明電極層
21 透明導電層
22 金属細線
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチパネルに用いられる透明導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等に搭載される静電容量式のタッチパネルには、例えば、透明の樹脂からなる基材フィルムの表面に透明電極層を備えた透明導電フィルムが用いられている。
このような静電容量式のタッチパネルにおいて、より高い位置検出精度を得るためには、静電容量を認識する上で、透明導電フィルムにおける透明電極層の低抵抗化が要求される。
【0003】
この透明電極層には、主に半導体材料が用いられており、低抵抗化を図ろうとすると必然的に厚みを大きくする必要がある。しかしながら、厚みを大きくすると透明性を十分に確保することができない。
そこで、特許文献1には、透明電極層の低抵抗と透明性とを両立させるものとして、ITO等からなる透明導電層(透明電極パターン)に低抵抗の金属細線を配設した透明電極層を有する透明導電フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−231533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に提案されている透明導電フィルムでは、金属細線の厚みが1〜20μmと大きい。そのため、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合には、そのエッチング時間が長くなってしまい、金属膜用のエッチング液が透明導電層とその下地との界面に浸み込み、透明導電層に剥がれが生じるといった問題がある。
【0006】
また、タッチパネルの画面サイズが大きくなると、さらなる問題が生じる。すなわち、画面サイズが大きくなると、金属膜をエッチングする面積も大きくなる。そのため、形成する金属細線の厚みが大きいと、エッチング時において、金属膜の中央部でエッチング液の濃度の低下及びそれに伴うエッチング速度の低下が生じる。これにより、全領域において均一にエッチングを行うことが困難となり、形成される金属細線の線幅が不均一となる等の問題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層の剥がれを防止することができる透明電極層を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明な樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された透明電極層とを備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにおいて、
上記透明電極層は、互いに平行に形成された複数の金属細線と、該複数の金属細線のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層とを有し、
上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmであることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
上記透明導電フィルムにおいて、上記透明電極層は、上記複数の金属細線と、該金属細線のいずれかと導通する上記透明導電層とを有する。そして、金属細線の厚みは1μm以下である。そのため、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合には、そのエッチング時間を短くすることができる。これにより、金属膜のエッチング時において、透明導電層とその下地との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電層の剥がれを防止することができる。
【0010】
また、上記金属細線の厚みは1μm以下と非常に薄く、エッチング時間を短くすることができるため、金属膜のエッチングを均一に行うことが容易となる。そのため、部分的なオーバーエッチ等を抑制することができ、金属膜(金属細線)の剥がれを防止することができる。また、エッチングの面積が大きくなっても、全領域において均一にエッチングを行うことができるため、画面サイズが大きいタッチパネル用の透明導電フィルムであっても、金属細線を精度良く形成することができる。
また、上記金属細線の厚みは1μm以下と非常に薄く、視認することができないため、透明電極層の透明性に影響を与えることはない。これにより、透明電極層の透明性を十分に確保することができる。
【0011】
また、上記金属細線の厚みは20nm以上である。そのため、金属細線の抵抗を十分に低いものとすることができる。これにより、金属細線を有する透明電極層の低抵抗化を十分に図ることができる。そして、このような低抵抗の透明電極層を備えた透明導電フィルムを静電容量式のタッチパネルに用いることにより、高い位置検出精度を得ることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層の剥がれを防止することができる透明電極層を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、透明導電フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図2】実施例1における、別パターンの透明導電フィルムの平面図。
【図3】実施例1における、(a)2枚の透明導電フィルムを重ねた状態を示す説明図、(b)金属細線及び透明導電層の重なり状態を示す平面図。
【図4】実施例1における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図5】実施例1における、中間フィルムを示す断面図。
【図6】実施例1における、レジストフィルムを貼り付けた中間フィルムを示す断面図。
【図7】実施例1における、レジストフィルムを金属細線用パターンに形成した状態の中間フィルムを示す断面図。
【図8】実施例1における、金属膜をエッチングした中間フィルムを示す説明図。
【図9】実施例1における、金属細線をパターン形成した中間フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図10】実施例1における、レジストフィルムを貼り付けた中間フィルムを示す断面図。
【図11】実施例1における、レジストフィルムを透明導電層用パターンに形成した中間フィルムの(a)平面図、(b)断面図。
【図12】実施例1における、透明導電膜をエッチングした中間フィルムを示す説明図。
【図13】実施例2における、透明導電フィルムの断面図。
【図14】実施例2における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図15】実施例2における、中間フィルムを示す断面図。
【図16】実施例3における、スパッタリング装置を示す説明図。
【図17】実験例2における、金属細線の線幅と端子間抵抗との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記透明導電フィルムにおいて、上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmである。
上記金属細線の厚みが20nm未満の場合には、金属細線の抵抗が高くなり、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。一方、厚みが1μmを超える場合には、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合に、そのエッチング時間が長くなり、エッチング液の浸み込みによる透明導電層の剥がれが生じるおそれがある。
【0015】
また、上記金属細線の線幅は、10〜40μmであることが好ましい。
上記金属細線の線幅が10μm未満の場合には、金属細線の抵抗が高くなり、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。一方、線幅が40μmを超える場合には、金属細線が視認され易くなり、透明電極層の透明性を十分に確保することができないおそれがある。
【0016】
また、上記透明導電層は、上記透明電極層の低抵抗化を図るため、その表面抵抗が100〜500Ω/□であることが好ましい。
上記透明導電層の表面抵抗が100Ω/□未満の場合には、この表面抵抗を実現するために透明導電層の厚みが大きくなり、透明電極層の透明性を十分に確保することができないおそれがある。また、金属細線の形成による効果が低減する場合がある。一方、表面抵抗が500Ω/□を超える場合には、透明電極層の低抵抗化を図ることが困難となるおそれがある。
【0017】
また、上記基材フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロースフイルム)、PAN(ポリアクリロニトリルフイルム)、PES(ポリエーテルサルフォンフルム)、PPS(ポリフェニレンスルフィッドフイルム)等を用いることができる。
【0018】
また、上記透明導電層としては、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)等の金属酸化物を用いることができる。
また、上記金属細線としては、例えば、金属の中でも抵抗の低いCu(銅)、Ag(銀)、Al(アルミニウム)等を用いることができる。
【0019】
また、上記金属細線と上記透明導電層との間には、Inからなる中間金属層が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、金属細線の密着性を高めることができる。この理由としては、両者の間に中間金属層を挟むことにより、その中間金属層によって透明導電層の表面の水分や汚染を低減する効果が得られるからであると考えられる。
【0020】
また、上記中間金属層の厚みは、金属細線の密着性を高めるという効果を十分に発揮するため、3〜20nmであることが好ましい。
上記中間金属層の厚みが3nm未満の場合には、金属細線の密着性を高めるという効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、厚みが20nmを超える場合には、例えば、金属膜をエッチングして金属細線を形成する場合に、その金属膜と共にエッチングを行って中間金属層を精度良く形成することが困難となるおそれがある。
【0021】
また、上記金属細線は、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、スパッタリングによって成膜することにより、金属細線の密着性を高めることができる。また、スパッタリングによる成膜は、他の成膜方法に比べて、金属の緻密性、密度が高く、また不純物が入り難いという利点があるため、金属細線の比抵抗、つまり抵抗をより低いものとすることができる。
【0022】
また、上記金属細線及び上記透明導電層は、金属膜及び透明導電膜をそれぞれスパッタリングによって連続的に成膜した後、それぞれをエッチングによってパターン形成してなることが好ましい。
この場合には、金属膜及び透明導電膜をスパッタリングによって連続的に成膜することにより、透明導電層に対する金属細線の密着性を高めることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる透明導電フィルムについて、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1は、図1(a)、(b)に示すごとく、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された透明電極層2とを備えている。
透明電極層2は、互いに平行に形成された複数の金属細線22と、複数の金属細線22のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層21とを有する。金属細線22の厚みは、20nm〜1μmである。
以下、これを詳説する。
【0024】
本例の透明導電フィルム1は、図1(b)に示すごとく、透明な樹脂からなる基材フィルム11と、基材フィルム11の表面に形成された光学調整層12と、光学調整層12の表面に形成された金属酸化物層13とを有する。
ここで、光学調整層12は、透明導電フィルム1の光学特性を調整するものである。また、金属酸化物層13は、後述する透明導電層21よりも光屈折率が低い。また、金属酸化物層13の厚みは20〜50nmである。
【0025】
さらに、透明導電フィルム1は、金属酸化物層13の表面に形成された透明電極層2を有する。
透明電極層2は、金属酸化物層13の表面に所定のパターンで形成された透明導電層21と、透明導電層21の表面に所定のパターンで形成された複数の金属細線22とを有する。
【0026】
図1(a)に示すごとく、複数の金属細線22は、所定の間隔を設けて互いに平行な直線状のパターンで形成されている。金属細線22は、線幅が10〜40μmであり、厚みが20nm〜1μmである。
なお、金属細線22のパターンは、直線状だけでなく、曲線状等、様々なパターンを採用することができる。
【0027】
透明導電層21は、複数の金属細線22のうち、いずれかの金属細線22と電気的に接続されるように形成されている。本例では、各金属細線22において、正方形状(菱形状)のブロック211をその対角線が金属細線22に重なるように複数並べて配置したパターンで形成されている。また、透明導電層21は、厚みが20〜40nmであり、表面抵抗が100〜500Ω/□である。
【0028】
本例では、基材フィルム11はPET(ポリエチレンテレフタレート)からなり、光学調整層12は樹脂コーティング層からなり、金属酸化物層13はSiO2(酸化珪素)からなる。また、透明電極層2において、透明導電層21は、ITO(インジウム−スズ酸化物)からなり、金属細線22はCu(銅)からなる。
なお、金属酸化物層13としては、SiO2(酸化珪素)以外にもMgF(フッ化マグネシウム)等を用いることができる。
【0029】
また、透明導電フィルム1は、静電容量式のタッチパネルに用いられる。
この場合、図2に示すごとく、上述した透明導電フィルム1(1a)(図1)に対して、金属細線22及び透明導電層21のパターン形成方向が90°異なるもう1枚の透明導電フィルム1(1b)を用意する。
そして、図3(a)に示すごとく、2枚の透明導電フィルム1(1a、1b)を、両者の間に絶縁層10を挟んで、互いの透明電極層2同士が向かい合わせとなるように重ね合わせ、これを液晶パネル等の上に配置して用いられる。
【0030】
本例では、図3(b)に示すごとく、重ねた2枚の透明導電フィルム1(1a、1b)は、互いの金属細線22(22a、22b)が直交するように配置され、互いの透明導電層21(21a、21b)が重ならないようにマトリックス状に配置されている。
なお、同図においては、一方の透明導電フィルム1aにおける透明導電層21aにハッチングを施し、他方の透明導電フィルム1bにおける透明導電層21bにはハッチングを施していない。
【0031】
次に、本例の透明導電フィルム1の製造方法について、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、まず、図5に示すごとく、光学調整層12が一方の面にコーティングされた基材フィルム11を準備する。
次いで、同図に示すごとく、光学調整層12の表面に、金属酸化物層13、透明導電層形成用の透明導電膜210、金属細線形成用の金属膜220を順にスパッタリングにより成膜する。
【0032】
本例では、図4に示すごとく、スパッタリング装置5を用いて、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220の成膜を行う。
スパッタリング装置5は、チャンバー内にSiO2(酸化珪素)のターゲット531、SnO2の割合を10重量%としたITO(インジウム−スズ酸化物)のターゲット532及びCu(銅)のターゲット533を備えている。これらのターゲット531〜533は、チャンバー内に複数設置されているカソードにそれぞれ配置されている。
【0033】
具体的な手順としては、まず、同図に示すごとく、スパッタリング装置5における2つのロール511、512に、光学調整層12が一方の面にコーティングされた基材フィルム11を取り付ける。このとき、基材フィルム11を台座ドラム52に沿わせるにようにして配置する。そして、チャンバー内を真空排気し、その真空度を8×10-4Pa以下にする。
【0034】
次いで、SiO2ターゲット531を備えたSiO2成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:500cc/分)と酸素ガス(流量:100cc/分)との混合ガスを導入する。そして、基材フィルム11を4m/分の速度でロール511からロール512(A方向)に送りながら、デュアル電源を用いて15kWの電力を供給することにより、光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図5)を成膜する。成膜した金属酸化物層13の厚みは20nmである。
【0035】
また、ITOのターゲット532を備えたITO成膜用の成膜室内にも、アルゴンガス(流量:450cc/分)と酸素ガス(流量:50cc/分)との混合ガスを導入する。そして、DCパルス電源を用いて16kWの電力を供給することにより、SiO2成膜用の成膜室から移動してきた基材フィルム11の金属酸化物層13の表面にITOからなる透明導電膜210(図5)を成膜する。成膜した透明導電膜210の厚みは25nmであり、表面抵抗は200Ω/□である。
その後、金属酸化物層13及び透明導電膜210が成膜された基材フィルム11を大気開放することなく、一旦、ロール512に巻き取る。
【0036】
次いで、Cuのターゲット533を備えたCu成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:450cc/分)を導入する。そして、基材フィルム11を6m/分の速度でロール512からロール511(B方向)に送りながら、DCパルス電源を用いて20kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にCuからなる金属膜220(図5)を成膜する。成膜した金属膜220の厚みは40nmである。
これにより、図5に示すごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
【0037】
次いで、図6に示すごとく、金属膜220の表面に、レジストフィルム31を貼り付ける。そして、レジストフィルム31上に、金属細線22のパターンを露光転写するための描画パターンを近接させ、露光を行う。その後、現像液に1分間浸して現像し、純水による洗浄を行う。
これにより、図7に示すごとく、金属膜220の表面に、レジストフィルム31からなる線幅10μm、線ピッチ5.5mmの金属細線用パターンを形成する。
【0038】
次いで、図8に示すごとく、アルカリ系のエッチング液を用いて、金属膜220におけるレジストフィルム31に覆われていない部分をエッチングする。その後、レジストフィルム31を除去する。
これにより、図9(a)、(b)に示すごとく、透明導電膜210の表面に、所望のパターンの金属細線22を形成する。
【0039】
次いで、図10に示すごとく、透明導電膜210の表面に、レジストフィルム32を貼り付ける。このとき、レジストフィルム32は、金属細線22を覆うように貼り付ける。そして、レジストフィルム32上に、透明導電層21のパターンを露光転写するための描画パターンを近接させ、露光を行う。その後、現像液に1分間浸して現像し、純水による洗浄を行う。
これにより、図11(a)、(b)に示すごとく、透明導電膜210の表面に、レジストフィルム32からなる幅4mmの正方形状(菱形状)の透明導電層用パターンを形成する。
【0040】
次いで、図12に示すごとく、酸系のエッチング液を用いて、透明導電膜210におけるレジストフィルム32に覆われていない部分をエッチングする。その後、レジストフィルム32を除去する。これにより、金属酸化物層13の表面に、所望のパターンの透明導電層21を形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図1)を得ることができる。
【0041】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1において、透明電極層2は、複数の金属細線22と、金属細線22のいずれかと導通する透明導電層21とを有する。そして、金属細線22の厚みは1μm以下である。そのため、本例のように金属膜220をエッチングして金属細線22をパターン形成する場合には、そのエッチング時間を短くすることができる。これにより、金属膜220のエッチング時において、透明導電層21を形成する透明導電膜210とその下地(本例では金属酸化物層13)との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電膜210(透明導電層21)の剥がれを防止することができる。
【0042】
また、金属細線22の厚みは1μm以下と非常に薄く、エッチング時間を短くすることができるため、金属膜220のエッチングを均一に行うことが容易となる。そのため、部分的なオーバーエッチ等を抑制することができ、金属膜220(金属細線22)の剥がれを防止することができる。また、エッチングの面積が大きくなっても、全領域において均一にエッチングを行うことができるため、画面サイズが大きいタッチパネル用の透明導電フィルム1であっても、金属細線22を精度良く形成することができる。
また、金属細線22の厚みは1μm以下と非常に薄く、視認することができないため、透明電極層2の透明性に影響を与えることはない。これにより、透明電極層2の透明性を十分に確保することができる。
【0043】
また、金属細線22の厚みは20nm以上である。そのため、金属細線22の抵抗を十分に低いものとすることができる。これにより、金属細線22を有する透明電極層2の低抵抗化を十分に図ることができる。そして、このような低抵抗の透明電極層2を備えた透明導電フィルム1を静電容量式のタッチパネルに用いることにより、高い位置検出精度を得ることができる。
【0044】
また、本例では、金属細線22は、金属膜220をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなる。そのため、金属細線22の密着性を高めることができる。また、スパッタリングによる成膜は、他の成膜方法に比べて、金属の緻密性が高く、不純物が入り難いという利点があるため、金属細線22の抵抗をより低いものとすることができる。
【0045】
また、金属細線22及び透明導電層21は、金属膜220及び透明導電膜210をそれぞれスパッタリングによって連続的に成膜した後、それぞれをエッチングによってパターン形成してなる。すなわち、本例のように、スパッタリング装置を用いて、途中で大気開放することなく、透明導電膜210及び金属膜220をスパッタリングによって順に連続的に成膜することにより、透明導電層21に対する金属細線22の密着性を高めることができる。
【0046】
このように、本例によれば、低抵抗と透明性とを両立させ、かつ、透明導電層21の剥がれを防止することができる透明電極層2を備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム1を提供することができる。
【0047】
(実施例2)
本例は、図13に示すごとく、金属細線22と透明導電層21との間に中間金属層23を形成した透明導電フィルム1の例である。
本例の透明導電フィルム1では、同図に示すごとく、透明導電層21の表面にInからなる中間金属層23が形成され、中間金属層23の表面に金属細線22が形成されている。中間金属層23は、金属細線22と同様のパターンで形成されている。また、金属中間層23の厚みは、3〜20nmである。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0048】
次に、本例の透明導電フィルム1の製造方法について、図を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、図14に示すごとく、実施例1と同様の構成のスパッタリング装置5を用いる。スパッタリング装置5は、チャンバー内にSiO2のターゲット531、ITOのターゲット532、Cu(銅)のターゲット533、さらにはIn(インジウム)のターゲット534を備えている。
【0049】
具体的な手順としては、実施例1と同様に、基材フィルム11の一方の面にコーティングされた光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図15)及びITOからなる透明導電膜210(図15)を順に成膜する。そして、基材フィルム11を一旦、ロール512に巻き取る。
【0050】
次いで、Inのターゲット534を備えたIn成膜用の成膜室内に、アルゴンガス(流量:450cc/分)を導入する。そして、基材フィルム11を6m/分の速度でロール512からロール511(B方向)に送りながら、DCパルス電源を用いて10kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にInからなる金属中間膜230(図15)を成膜する。成膜した金属中間膜230の厚みは10nmである。
次いで、実施例1と同様に、基材フィルム11の金属中間膜230の表面にCuからなる金属膜220(図15)の成膜を行う。
【0051】
これにより、図15に示すごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210、金属中間膜230及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
その後、実施例1と同様に、金属膜220を金属中間膜230と共にエッチングして金属細線22をパターン形成し、さらに透明導電膜210をエッチングして透明導電層21をパターン形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図13)を得ることができる。
【0052】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1は、金属細線22と透明導電層21との間にInからなる中間金属層23が形成されている。そのため、金属細線22の密着性を高めることができる。この理由としては、両者の間に中間金属層23を挟むことにより、その中間金属層23によって透明導電層21の表面の水分や汚染を低減する効果が得られるからであると考えられる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
また、本例では、製造した透明導電フィルム1に対して、さらに加熱処理(アニーリング)を施すことにより、金属細線22の密着性を高めることができる。加熱処理(アニーリング)は、例えば、赤外線ランプを用いて120〜180℃の範囲で加熱することによって行うことができる。
【0054】
(実施例3)
本例は、図16に示すごとく、さらに別のスパッタリング装置6を用いて透明導電フィルム1を製造した例である。
なお、本例において製造する透明導電フィルム1は、実施例1と同様の構成である(図1参照)。
【0055】
本例の透明導電フィルム1を製造するに当たっては、実施例1と同様の構成のスパッタリング装置5(図4参照)を用いて、基材フィルム11の一方の面にコーティングされた光学調整層12の表面にSiO2からなる金属酸化物層13(図5参照)及びITOからなる透明導電膜210(図5参照)を順に成膜する。そして、基材フィルム11を一旦、大気開放させる。
【0056】
次いで、図16に示すごとく、別のスパッタリング装置6における2つのロール611、612に、金属酸化物層13及び透明導電膜210を成膜した基材フィルム11を取り付ける。このとき、基材フィルム11を台座ドラム62に沿わせるにようにして配置する。そして、チャンバー内を真空排気し、その真空度を8×10-4Pa以下にする。
なお、スパッタリング装置6は、チャンバー内にCu(銅)のターゲット641を2つ備えており、さらに加熱装置63を備えている。
【0057】
次いで、基材フィルム11を7.5m/分の速度でロール611からロール612(A方向)に送りながら、基材フィルム11の表面温度、つまり透明導電膜210の表面温度が80℃となるように、加熱装置63によって透明導電膜210の表面の水分やハイドロカーボンを蒸発除去させる。
次いで、Cuのターゲット641を備えたCu成膜用のチャンバー内に、アルゴンガス(流量:350cc/分)を導入する。そして、DCパルス電源を用いて25kWの電力を供給することにより、基材フィルム11の透明導電膜210の表面にCuからなる金属膜22(図5参照)を成膜する。
【0058】
これにより、図5を参照のごとく、基材フィルム11の表面に、光学調整層12、金属酸化物層13、透明導電膜210及び金属膜220を順に形成した中間フィルム100を得ることができる。
その後、実施例1と同様に、金属膜220をエッチングして金属細線22をパターン形成し、さらに透明導電膜210をエッチングして透明導電層21をパターン形成する。
以上により、本例の透明導電フィルム1(図1)を得ることができる。
【0059】
次に、本例の透明導電フィルム1における作用効果について説明する。
本例の透明導電フィルム1の製造方法において、金属膜220を成膜する前に、加熱装置63によって透明導電膜210の表面の水分やハイドロカーボンを蒸発除去させる。そのため、透明導電膜210に対する金属膜220の密着性を高めることができる。これにより、透明導電層21に対する金属細線22の密着性も高めることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実験例1)
本例は、透明導電膜(透明導電層)の剥がれについて調べた実験例である。
本例では、まず、実施例1の図5に示す中間フィルムから金属膜を除いた試験体A、すなわち基材フィルムの表面に、光学調整層、金属酸化物層、透明導電膜を順に形成し、金属膜を形成していない試験体Aを準備する。
次いで、透明導電膜の剥がれを評価し易くするために、実施例1と同様に、酸系のエッチング液を用いて透明導電膜をエッチングし、図1(a)と同様の形状、すなわち正方形状(菱形状)のブロックを複数並べて配置した形状のパターンとする。
【0061】
次いで、この試験体Aを金属膜(Cu)用のエッチング液に浸漬させる。そして、浸漬時間(60〜180秒)と透明導電膜(透明導電層)の剥がれとの関係を調べた。なお、金属膜用のエッチング液としては、アルカリ系のエッチング液を用い、その液温を30℃とした。
【0062】
透明導電膜(透明導電層)の剥がれの評価としては、試験体Aを金属膜用のエッチング液に所定時間浸漬させた後、パターン形成された透明導電膜の正方形状(菱形状)のブロックのうち、少なくとも一部に剥がれが生じて異形状となっているブロックの数を確認する。そして、すべてのブロックで異常が見られなかった場合には○、異形状のブロックが1〜3個見られた場合には△、異形状のブロックが4個以上見られた場合には×とした。
【0063】
【表1】
【0064】
次に、試験結果を表1に示す。
同表において、金属膜の厚み(nm)とは、表中に示された浸漬時間(秒)でエッチングすることのできる金属膜の厚みのことである。すなわち、表中に示された浸漬時間がその厚みの金属膜をエッチングするのに必要な時間ということである。
同表からわかるように、浸漬時間が60秒、90秒の場合には、透明導電膜の剥がれの評価は○であった。一方、浸漬時間が120秒、180秒の場合には、透明導電膜の剥がれの評価はそれぞれ△、×であった。
【0065】
以上の結果から、金属膜のエッチング時間が90秒以下であれば、つまり金属膜(最終的に形成する金属細線)の厚みが1000nm(1μm)以下であれば、金属膜のエッチング時において、透明導電膜(透明導電層)とその下地(金属酸化物層)との界面に金属膜用のエッチング液が浸み込むことを抑制し、透明導電膜(透明導電層)の剥がれを防止することができることがわかる。
【0066】
(実験例2)
本例は、図17に示すごとく、金属細線の厚みを変化させた場合の金属細線の線幅と端子間抵抗との関係について調べた実験例である。
本例では、実施例1の図1に示す透明導電フィルムと同様の構成の透明導電フィルムについて、金属細線の厚みを10〜40nmに変化させ、このときの金属細線の線幅(10〜30μm)と金属細線が接続される一対の端子間の抵抗(端子間抵抗)との関係を調べた。なお、金属細線を構成するCuの比抵抗は1.7μΩ・cmである。また、端子間距離は23.2cmとした。
【0067】
次に、試験結果を図17に示す。同表において、横軸は金属細線の線幅(μm)、縦軸は端子間抵抗(kΩ)である。
同図からわかるように、金属細線の厚みが10nmの場合には、金属細線の厚みが20nm以上の場合に比べて急激に端子間抵抗が上昇する。
また、金属細線の厚みが10nmの場合には、その線幅が10μmの場合に例えば静電容量式のタッチパネルとして要求される端子間抵抗20kΩ以下の条件を満たすことができない。一方、金属細線の厚みが20nm以上の場合には、その線幅が10μmであっても、端子間抵抗20kΩ以下の条件を満たすことができる。
【0068】
以上の結果から、金属細線の厚みを20nm以上とすれば、金属細線の抵抗を十分に低いものとすることができ、透明電極層の低抵抗化を十分に図ることができることがわかる。そして、このような低抵抗の透明電極層を備えた透明導電フィルムを静電容量式のタッチパネルに用いることにより、大画面のタッチパネルであっても、高い位置検出精度が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 透明導電フィルム
11 基材フィルム
2 透明電極層
21 透明導電層
22 金属細線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された透明電極層とを備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにおいて、
上記透明電極層は、互いに平行に形成された複数の金属細線と、該複数の金属細線のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層とを有し、
上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmであることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電フィルムにおいて、上記金属細線と上記透明導電層との間には、Inからなる中間金属層が形成されていることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透明導電フィルムにおいて、上記金属細線は、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【請求項1】
透明な樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された透明電極層とを備えた静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルムにおいて、
上記透明電極層は、互いに平行に形成された複数の金属細線と、該複数の金属細線のいずれかと電気的に接続されるようにパターン形成された透明導電層とを有し、
上記金属細線の厚みは、20nm〜1μmであることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電フィルムにおいて、上記金属細線と上記透明導電層との間には、Inからなる中間金属層が形成されていることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の透明導電フィルムにおいて、上記金属細線は、金属膜をスパッタリングによって成膜した後、エッチングによってパターン形成してなることを特徴とする静電容量式タッチパネル用の透明導電フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−123454(P2012−123454A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271381(P2010−271381)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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