説明

静電容量式位置検出装置

【課題】静電容量式位置検出装置の小型化を実現する。
【解決手段】検知電極2は、紙面左側Lの検知電極2Lと紙面右方向Rの検知電極2Rとを備えて構成されている。検知電極2Lは、右方向Rが櫛歯状に形成されており、櫛歯は右方向Rにいくに従って次第に細くなる。一方の検知電極2Rは、左側Lが櫛歯状に形成されており、櫛歯は左側Lにいくに従って次第に細くなる。検知電極2L及び検知電極2Rは、互いの櫛歯の隙間を介するよう歯合するように配されており、互いの電圧が独立するようにわずかな隙間が介されている。検知電極2L、2Rは、それぞれ静電容量検知回路に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指などの近接又は接触した位置を検出する静電容量式位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、指などの被検知物体の近接を検知電極によって検出し、この検知電極の静電容量変化から被検知物体の近接を検知することができる非接触又は接触型の静電容量式位置検出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような静電容量式位置検出装置では、被検知物体を検出する方法として、直接検知電極のインピーダンスを測定し静電容量を検出することで検知する方法や、検知電極で検出した静電容量を電圧に変換して入力する発信回路を構成し、その発信周波数を測定する方法、RC充放電回路を構成してその放電時間を計測する方法、既知電圧で充電された静電容量を既知容量のコンデンサに移動させて、該既知容量のコンデンサが所定電圧まで充電される時間を測定する方法、または、該既知容量のコンデンサに充放電を繰り返しその回数をカウントする方法などが知られている。
【特許文献1】特開平8−64364、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような静電容量式位置検出装置では、検出したい位置の数と同数の検知電極を配し、各検知電極にそれぞれ接続された検知回路を設置しなければならないため多数の検出位置を設定するには小型化が困難である。
【0005】
また、これを解決するために複数の検知電極を切り替え装置を介して検知回路に接続し、切り替え装置を時間的にずらして切り替えて測定することができる。この切り替え装置は、機械的なスイッチ(例えばリレー)でも良いし、電気的なスイッチ(トランジスタ)でもよい。しかしながら、このような静電容量式位置検出装置は、切り替え装置を配さなければならないため高価であり、また、配線が複雑になるという問題点を有する。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で被検知物体の位置を検出することができる静電容量式位置検出装置の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電容量式位置検出装置は、被検知物体の近接を検知する2以上の検知電極と、前記検知電極の静電容量の変化を電圧などの検出値に変換する静電容量検知回路と、前記検出値に従って被検知物体の所定方向における位置を出力する制御回路とを備えた静電容量式位置検出装置であって、前記2以上の検知電極は、単位面積当たりに占める面積比が前記所定の方向に沿って変化するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の静電容量式位置検出装置によれば、2以上の検知電極の単位面積当たりに占める面積比をある方向の一方の側に沿って変化させ、制御回路が2以上の検知電極から検知される静電容量を比較することで、被検知物体の位置を検出することができる。これにより簡易な構成で静電容量式位置検出装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る静電容量式位置検出装置の構成を示す平面図である。
【0011】
この静電容量式位置検出装置100は、被覆材としての意匠板1と、この意匠板1の裏側に配された検知電極2と、これら検知電極2が接続された制御装置3とを備えて構成されている。
【0012】
意匠板1は、例えば、樹脂やガラス等の材料により形成され、その上面1aに文字や図形など4が形成されていてもよい。検知電極2は、配線基板5上に配置され、すべて制御装置3に接続されている。制御装置3は、検知電極2が接続されると共に、図示しない外部電気回路に接続されている。なお、配線基板5は、フレキシブルプリント基板、リジットプリント基板や、PET上或いはPEN上の銀回路(又は銅回路)によって構成することができる。
【0013】
図2は、同静電容量式位置検出装置100の検知電極2を示す平面図である。
【0014】
検知電極2は、紙面左側Lの検知電極2Lと紙面右方向Rの検知電極2Rとを備えて構成されている。検知電極2Lは、右方向Rが櫛歯状に形成されており、この櫛歯は右方向Rに近づくにつれて次第に細くなる。一方の検知電極2Rは、左側Lが櫛歯状に形成されており、櫛歯は左側Lに近づくにつれて次第に細くなる。検知電極2L及び検知電極2Rは、所定の隙間を介して互いの櫛歯部が歯合するように配されている。このように、検知電極2Lの単位面積当たりの面積比は右方向Rに近づくにつれて小さくなる一方、検知電極2Rの単位面積当たりの面積比は左側Lに近づくにつれて小さくなるように構成されている。
【0015】
図3は、同静電容量式位置検出装置100の電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
検知電極2L、2Rは、それぞれ静電容量検知回路6L、6Rに接続されている。静電容量検知回路6L、6Rは、検知電極2L、2Rと接地との間の静電容量Cx、Cxに応じた検出値V、Vを出力する。静電容量検知回路6L、6Rは、いずれも制御回路7に接続されている。制御回路7は、図示しない外部電気回路に接続され、静電容量検知回路6L、6Rから入力される検出値V、Vに応じて被検知物体の検出位置を出力するよう構成されている。ここで、静電容量検知回路6L、6Rは、例えば発振回路を内蔵し、静電容量Cx、Cxに応じて発振周波数又はデューティ比が変化する信号を生成するように構成することができる。
【0017】
次に、このように構成された静電容量式位置検出装置100の動作について説明する。
【0018】
操作者が指を意匠板1に近接させると、検知電極2L、2Rの静電容量Cx、Cxが増加する。検知回路6R、6Lは、この静電容量Cx、Cxを電圧などの検出値V、Vに変換して制御回路7に出力する。制御回路7は、入力した検出値V、Vに応じて被検知物体の検出位置を出力する。以下に、制御回路7が被検知物体の検出位置を出力する動作を説明する。
【0019】
図4は、指の位置と指が覆う検知電極2の面積の関係を示す図である。
【0020】
ここで、S2L:指が覆う検知電極2Lの面積、S2R:指が覆う検知電極2Lの面積をS2R、L:検知電極2Lの左端から検知電極2Rの右端までの長さ、x:検知電極2Lの左端からの指までの距離とする。指が覆う検知電極2Lの面積S2Lは、距離xが大きくなるに従い小さくなる一方、指が覆う検知電極2Rの面積S2Rは、距離xが大きくなるに従い大きくなる。この関係より、指が覆う検知電極2の全体の面積Sに対する指が覆う検知電極2Lの面積S2L、及び指が覆う検知電極2の全体の面積Sに対する指が覆う検知電極2Rの面積S2Rは、以下のように表すことができる。
式(1)S2L/S=x/L
式(2)S2R/S=1−x/L
次に、指と検知電極2とを平行平板として模擬すると、検知電極2Rの静電容量Cxに対する検知電極2Lの静電容量Cxは以下のようになる。ここで、ε:誘電率、d:指と検知電極2との距離とする。
式(3)Cx/Cx=(εS2L/d)/(εS2R/d)
以上の式(1)〜式(3)より次式が得られる。
式(4)Cx/Cx=x/(L−x)
式(4)より、静電容量Cx、Cxの比から指の位置xを検出することができる。制御回路7は、静電容量Cx、Cxを変換した検出値V、Vの比を判定することで、被検知物体がどこに位置しているのかを検知しそれに応じた検出位置を出力する。
【0021】
このように、2つの検知電極2L、2Rを位置によって電極面積S2L、S2Rの単位面積当たりの面積比を変化するように構成することで、簡易な構成で被検知物体の位置を的確に検出することができる。また、従来のように検出する位置毎に検知電極を配置しなくてよいため、静電容量式位置検出装置の小型化を実現することができる。
【0022】
本実施形態では、検知電極2L、2Rの一部を櫛歯形状としたが、これは形状を限定するものではなく被検知物体の位置によって2以上の検知電極の面積比が変化するように構成されていればよい。以下に、他の検知電極の構成を示す。
【0023】
図5は、他の検知電極の構成を示す平面図である。
【0024】
第1の実施形態では、検知電極2は櫛歯形状を有していたが、この検知電極8L、8Rは、櫛歯がそれぞれ独立した検知電極によって構成されている。検知電極8Lは、X方向に近づくに従い電極面積が小さくなる一方、検知電極8Rは、X方向に近づくに従い極面積が大きくなる。複数の検知電極8L、8Rは、Y方向に交互に並べて配されている。左側Lの検知電極8Lは、それぞれ別の静電容量回路に接続されるように構成してもよい。または、2以上の検知電極8Lが切り替え器を介して同一の静電容量検知回路に接続され、この切り替え器を切り替えることで静電容量検知回路をスキャンするように構成してもよい。同様に、右方向Rの検知電極8Rは、各静電容量検知回路に接続されていてもよく、また、2以上の検知電極8Rが切り替え器を介して同一の静電容量検知回路に接続されていてもよい。
【0025】
このように検知電極8L、8RをY方向にも複数配することでY方向における指の位置を検出することができる。これにより、指の位置をX方向及びY方向の二次元的に検出することができる。
【0026】
図6は、更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【0027】
この検知電極9は、左右方向の指の位置を検出する検知電極9L,9Rと、上下方向の指の位置を検出する検知電極9A、9Bとを備えて構成されている。第1の実施形態と同様に、検知電極9Lは右方向Rに近づくに従い電極面積S9Lが小さくなる一方、検知電極9Rは、左方向Lに近づくに従い電極面積S9Rが小さくなる。また、左右方向の指の位置を検出する検知電極9L,9Rの電極領域内には、検知電極9L,9Rから電気的に独立し、微小な検知領域に分割された検知電極9A、9Bが形成されている。検知電極9Aは、A方向に近づく従って電極の分布数が増える一方、検知電極9Bは、B方向に近づくに従って電極の分布数が増える。これにより単位面積当たりに占める検知電極9Aの電極面積S9Aと検知電極9Bの電極面積S9Bは相対的に増減する。これら検知電極9L、9R、9A、9Bは、電極パターンとして同一面に形成され各電極間は絶縁加工が施されている。ここで、左右方向を検出する検知電極9L、9Rは、上下方向を検出する検知電極9A、9Bと同様に、複数の電極領域に分割して構成してもよい。
【0028】
図7は、更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【0029】
この検知電極10は、2つの検知電極10L、10Rが円弧を描くように配されており、検知電極10Lは円弧の左側Lから右方向Rにかけて電極面積が小さくなる一方、検知電極10Rは円弧の右方向Rから左側にかけて電極面積が小さくなるように構成されている。
【0030】
図8は、更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【0031】
第1の実施形態では検知電極2は、一部が左右方向RLに伸びる櫛歯形状をしていたが、この検知電極11L、11Rでは、櫛歯部が紙面上下方向ABに形成されている。検知電極11Lは、右方向Rにいくに従い櫛歯の電極面積が小さくなる一方、検知電極11Rは、右側Lにいくに従い櫛歯の電極面積が小さくなるように構成されている。
【0032】
図9は、更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【0033】
この検知電極は、第1の実施形態における検知電極2L、2Rを、微小な検知電極12L、12Rによって構成したものである。検知電極12Lは、右方向Rにいくに従い電極面積が小さくなる一方、検知電極12Rは、左側Lにいくに従い電極面積が小さくなるように配されている。
【0034】
以上の実施形態は検知電極の形状を限定するものではなく、検知したい被検知物体の位置に従って電極面積が変化すれば、任意の形状として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る静電容量式位置検出装置の構成を示す分解斜視図である。
【図2】同静電容量式位置検出装置の検知電極を示す平面図である。
【図3】同静電容量式位置検出装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】同静電容量式位置検出装置における指の位置と電極面積比との関係を示す図である。
【図5】他の検知電極の構成を示す平面図である。
【図6】更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【図7】更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【図8】更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【図9】更に他の検知電極の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…意匠板、2、8〜…検知電極、3…制御装置、4…インジケータ、5…配線基板、6…静電容量検知回路、7…制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物体の近接を検知する2以上の検知電極と、
前記検知電極の静電容量の変化を電圧などの検出値に変換する静電容量検知回路と、
前記検出値に従って被検知物体の所定方向における位置を出力する制御回路とを備えた静電容量式位置検出装置であって、
前記2以上の検知電極は、単位面積当たりに占める面積比が前記所定の方向に沿って変化するように形成されていることを特徴とする静電容量式位置検出装置。
【請求項2】
前記検知電極は、第1の検知電極と第2の検知電極を有し、前記第1の検知電極の単位面積当たりに占める面積比は第1の方向の一方の側に近づくほど減少し、前記第2の検知電極の単位面積当たりに占める面積比は前記第1の方向の前記一方の側に近づくほど増加することを特徴とする請求項1記載の静電容量式位置検出装置。
【請求項3】
前記検知回路は、前記第1及び第2の検知電極を、前記第1の方向と直交する第2の方向に複数組配置してなることを特徴とする請求項2記載の静電容量式位置検出装置。
【請求項4】
前記検知電極は、単位面積当たりに占める面積比が第1の方向の一方の側に近づくほど減少する第1の検知電極及び前記第1の方向の一方の側に近づくほど増加する第2の検知電極と、単位面積当たりに占める面積比が前記第1の方向と直交する第2の方向の一方の側に近づくほど減少する第3の検知電極及び前記第2の方向の一方の側に近づくほど増加する第4の検知電極とを有することを特徴とする請求項1記載の静電容量式位置検出装置。
【請求項5】
前記検知電極は、複数の領域に分割された電極により構成されていることを特徴とする請求項1〜4記載の静電容量式位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−240479(P2007−240479A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67004(P2006−67004)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】