非化学量論比を有するSiOXNY光学フィルター
【課題】非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターを提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルターは、基板および基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム(ここで、X1+Y1<2であり、Y1>0)から構成されている。上記薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。ここで、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。また、上記薄層フィルムは、1〜10nmの大きさのナノ粒子を有している。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム(第2の薄層フィルム)は、上記薄層フィルムを覆うように形成されていてもよい。上記Y1≠Y2である。また、上記薄層フィルムおよび第2薄層フィルムは、ドープされていなくとも、されていてもよい。
【解決手段】本発明の光学フィルターは、基板および基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム(ここで、X1+Y1<2であり、Y1>0)から構成されている。上記薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。ここで、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。また、上記薄層フィルムは、1〜10nmの大きさのナノ粒子を有している。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム(第2の薄層フィルム)は、上記薄層フィルムを覆うように形成されていてもよい。上記Y1≠Y2である。また、上記薄層フィルムおよび第2薄層フィルムは、ドープされていなくとも、されていてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光学フィルムの製造に関するものであり、特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有し、酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する薄層(薄膜)光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
集積された光学デバイスを製造する方法は、吸収率、透過率およびスペクトル感度のような光学特性備える材料を蒸着する工程を含んでいる。薄層(薄膜)フィルムの製造技術によって、高い生産性および収率にて、種々のデバイスの製造に適した様々な薄層フィルムを製造することができる。重要な光学特性としては、屈折率および光学バンドギャップが含まれる。これらは、薄層フィルムの透過特性および反射特性に影響を与える。
【0003】
一般的に、2層または複数層の積層された薄層フィルムは、所望の光学的効果を備える光学デバイスの製造のために必要とされる。上記所望の光学的効果を備える多層フィルムを形成するために、様々な金属層、誘電体層および/または半導体層の組み合わせを用いることができる。材質の選定は、目的とする反射率、透過率および吸収率の特性によって決定される。単層のデバイスでは、明確により好ましいと言えるが、単層でない薄層フィルム材料は、光学分散特性を広範囲で提供することができる。上記光学分散特性は、紫外線領域から遠赤外線周波数領域への広い光学範囲に亘る、所望の光学的な吸収率、バンドギャップ、屈折率、反射率または透過率を得るために必要とされる特性である。
【0004】
ケイ素は、製造技術が十分に開発されているため、光電子デバイスの製造において一般的に好ましく用いられる材料である。しかしながら、間接バンドギャップによっては、光電子デバイスの製造する効果を伴わない材料を生じさせる。長年の研究開発によって、ケイ素を基礎とした光電子を実現させるために、ケイ素の光学機能を調整することに注目が集まってきた。結晶性ケイ素からの効率的な室温光の放射によって、完全にケイ素を基礎とした光電子工学の達成にとって大きな一歩が踏み出されている。
【0005】
安定性および信頼性を備えた光電子デバイスの製造方法では、高い光学ルミネセンス(PL)および電子ルミネセンス(EL)の量子光率を有するケイ素のナノ結晶が必要とされている。集積された光電子デバイスの製造を積極的に進めるためのあるアプローチとしては、包埋されたケイ素のナノ結晶を含むSiOX(X≦2)の薄層フィルムの製造が挙げられる。ケイ素のナノ結晶中に拘束された正孔対を再結合するためには、発光はナノ結晶のサイズに大きく左右されることとなる。
【0006】
SiOXの薄層フィルムに包埋されたナノ結晶性のケイ素の電子的および光学的な特性は、ケイ素のナノ結晶のサイズ、密度および分布に依存する。種々の薄層フィルムの蒸着技術、例えば、容量結合プラズマを用いる、スパッタリングおよびプラズマ化学気相成長法(PECVD)などは、安定性および信頼性のあるナノ結晶性のケイ素薄層フィルムを製造する目的のため、これまで研究がなされている。
【0007】
しかしながら、従来のPECVDおよびスパッタリング技術においては、低いプラズマ密度、プラズマと結合するには不十分なパワー、低いイオン/中性物質の比率(ion/neutral ratio)および制御できない量に係る限界を有している。また、高いイオン衝撃エネルギー(bombardment energy)のため界面に損傷が生じることが挙げられる。そのため、プラズマが生じさせた、従来の容量結合プラズマ(CCP)から形成された酸化膜には、イオン種に影響を及ぼす高い衝撃エネルギーのため、信頼性の問題が伴い得る。プラズマ誘導される量または界面の損傷を制御または最小化させることは重要である。プラズマを生じさせるCCPの高周波(RF)を用いるイオンエネルギーを制御することはできない。供給される電力が増加されることによって、反応速度が増加される結果、蒸着フィルムに対する衝撃が増加する。上記蒸着フィルムによっては、多くの欠陥を含む低品質なフィルムを与えることしかできない。さらに、これらのプラズマ源(〜1×108−109cm−3)による低密度のプラズマは、プラズマ中およびフィルム表面における反応の自由度、処理速度を向上させる活性ラジカルの発生の効果、酸化の効果、低い熱量による不純物の還元に制限を招くこととなる。これらによって、低温での電子デバイスの製造における実用性が制限される。
【0008】
蒸着工程では、デバイスの進歩に基づくPLおよび電子ルミネセンス(EL)に係る粒子を生じさせ、また、粒子の大きさを制御することが必要とされる。上記蒸着工程は、従来のプラズマを用いる技術、例えば、スパッタリング、PECVDなどよりも、処理範囲およびプラズマの特性を向上させるものである。プラズマ密度を向上させ、プラズマの衝撃を最小化させる工程によれば、プラズマによる微細構造に関する損傷を生じさせることなく、高品質なフィルムの成長を確保することができる。フィルムの界面およびバルク(bulk)の品質をそれぞれ制御する可能性を提供することができる工程によれば、高い性能および高い信頼性を有する電子デバイスの製造を可能とすることができる。活性プラズマ種、ラジカルおよびイオンを十分に発生させることができるプラズマ工程によれば、制御された工程および特性の制御を伴う高品質な薄層フィルムを開発することが可能となる。
【0009】
高品質のSiOX薄層フィルムを製造するためには、成長したフィルムの酸化も、結晶性のケイ素粒子を含む高品質フィルムを得る上で重要な要素である。また、高濃度にて活性酸素ラジカルを発生させ得る工程によれば、ケイ素ナノ粒子を取り巻く酸化物マトリックス中において、ケイ素粒子ナノ粒子の効果的な不動態化を確保することができる。さらに、プラズマによって生じる損傷を最小化し得る工程によれば、高品質の界面の形成を実現することができる。上記界面の形成は、高品質のデバイスを製造するために不可欠である。低い熱量による十分な酸化および水素化工程は、光電子デバイスの製造工程において、不可欠であり、重要である。高温での熱処理工程では、他のデバイス層に干渉することとなり、上記他のデバイス層は、熱活性種の低い反応性のため、効率および熱量の観点から適切ではない。さらに、新規フィルムの構造に係る成長/蒸着、酸化、水素化、粒子サイズの成長、および制御に関する、より完全な解決策および可能性を提供できるプラズマ工程、および、プラズマ密度、イオンエネルギーおよび広範囲での処理をそれぞれ制御することは高性能な光電子デバイスの発展の点から望まれる。
【0010】
薄層フィルムの特性に影響する種々のプラズマの物性として、付随するプラズマ工程を薄層フィルムの特性に対し、相互に関連付けることは重要である。また、所望のフィルムの品質は、目的となる用途に応じて左右される。目的となる用途に応じる、重要となるプラズマおよび薄層フィルムの特性は、蒸着率、温度、熱量、密度、微細構造、界面特性、不純物、プラズマにより生じる損傷、プラズマによって生じる活性種(ラジカル/イオン)の状態、プラズマの電位、工程およびシステムの規模、電気特性および信頼性が挙げられる。物性値の補正は、目的に応じた用途によるフィルムの品質に影響を及ぼす工程図(process map)のように、フィルムの品質を評価するために不可欠である。プラズマエネルギー、組成物(ラジカルからイオンへ)、プラズマ電位、電子の温度および温度状態が、工程図に依存して別個に関連があるように、低密度のプラズマまたは他の高密度プラズマ系において、単に上述した工程を展開させるだけでは、薄層フィルムについて知見を深め、発展がなされる可能性は低い。
【0011】
低温条件は、大規模なデバイスを透明ガラス、石英またはプラスチック基板に形成する、液晶ディスプレイ(LCD)の製造において概して好ましい。透明基板は、650℃を越える温度に晒されると損傷を受け得る。この温度問題を解決するためには、低温でのケイ素の酸化工程が改良される必要がある。上記の工程では、誘導結合プラズマ(ICP)源のような高密度のプラズマ源が用いられ、1200℃で行われる化学酸化法に匹敵する品質でケイ素酸化物を形成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
仮に高密度のプラズマを実現することができれば、ケイ素を含有するフィルムを光学フィルムの製造に用いることが可能となる。
【0013】
本発明では、光学フィルターの製造に利用できる光学フィルムを提供する。本発明では、特に、化学蒸着工程をなす高密度プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、種々の電子的な応用のために適した広範囲の屈折率を有するケイ素に富んだSiOX薄層フィルムの製造方法に係る。例えば、1.46〜3の範囲の屈折率値を有するSiOX薄層フィルムは、HDPの工程条件を調節することによって製造され得る。また、高密度のプラズマによって、SiOX薄層フィルムは可視領域において、強いPL強度を示すよう処理される。上記強度は、蒸着後のアニール処理がなされ、高濃度のケイ素ナノ結晶の凝集体が形成されると著しく向上する。
【0015】
また、高周波(RF:radio frequency)の電力および蒸着温度を調節することによって、屈折率を制御することが可能となる。HDP処理されたSiOX薄層フィルムにおいて観測される光応答性は、種々の光電気的な用途を目的とし、HDP処理されたSiに富むSiOX薄層フィルムの電位として示される。
【0016】
これによって、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターを提供することができる。上記フィルターは、基板と、基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとから構成されており、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、そのままであっても(すなわち、ドープされていない状態であっても)、ドープされていてもよい。
【0017】
また、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいることが好ましい。
【0018】
また、他の実施形態として、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記Y1≠Y2である実施形態を挙げることができる。この場合においても、上記第2の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。さらに他の実施形態として、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムは、ドープされていなくとも、ドープされていてもよく、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを覆っていてもよい。
【0019】
また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、段階的な屈折率(n1)を有している。上記屈折率の段階的な関数は、連続的、段階的または周期的な関数となっている。第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムは、基板からフィルムまでの距離に従って変化する、Y1値を有する段階的な屈折率を有している。
【0020】
すなわち、本発明の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターは、基板と、上記基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとを含んでおり、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおいて、X1+Y1<2、かつ、Y>0であり、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であることを特徴としている。
【0021】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0022】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記Y1≠Y2であり、上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0024】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムが、ドープされていない化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム、およびドープされた化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0025】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、段階的な第1の屈折率(n1)を有していてもよい。
【0026】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが段階的な屈折率を有しており、上記屈折率は、連続的な屈折率、段階的な屈折率、および周期的な屈折率からなる群から選ばれるものであってもよい。
【0027】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、Y1値を有する段階的な屈折率を有しており、上記Y1値は、上記基板からフィルムまでの距離に従って変化してもよい。
【0028】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の屈折率(n2)を有する第2のフィルム層によって覆われていてもよい。
【0029】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムと上記第2のフィルム層との積層体が、全体として、第3の屈折率(n3)を有していてもよい。
【0030】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、複数のフィルムによって覆われており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよび上記複数のフィルムの積層体が、全体として、第4の屈折率(n4)を有していてもよい。
【0031】
本発明の光学フィルターは、第2のフィルムが、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を覆っておらず、第3のフィルムが、上記第2のフィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第2のフィルムにおける第2の領域を覆っておらず、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域、上記第2のフィルムにおける第1の領域および第3のフィルムを通過する部分の屈折率として第4の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域および上記第2のフィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であってもよい。
【0032】
本発明の光学フィルターは、上記第2のフィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第2の領域を覆っておらず、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域および上記第2のフィルムを通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であってもよい。
【0033】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムに入射された入射光を制御するための回折特性および反射特性を有する回折格子によって覆われていてもよい。
【0034】
本発明の光学フィルターは、上記回折格子が蛍光体材料を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の光学フィルターは、上記基板が、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料、および半導体材料からなる群から選ばれる材料によって形成されていてもよい。
【0036】
本発明の光学フィルターは、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、および単結晶Si1−XGeXからなる群から選ばれる材料によって形成されたフィルムによって覆われていてもよい。
【0037】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、3族元素、4族元素、5族元素、および希土類元素からなる群から選ばれるドーパントを有する非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでいてもよい。
【0038】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、可変な屈折率を有していてもよい。
【0039】
本発明の光学フィルターにおいて、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、温度、電界、光および圧力からなる群から選ばれる外部的な環境条件に応じて、その屈折率が変化する構成を有していてもよい。
【0040】
本発明の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターは、基板と、上記基板を覆う多層フィルム構造体とを含んでいる非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターであって、上記多層フィルム構造体が、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびフィルムを含んでおり、上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、X1+Y1<2、および、Y1>0であり、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であり、上記フィルムは、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有しており、回折格子および蛍光体フィルムからなる群から選ばれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、光学フィルムの製造に利用できる光学フィルターを提供することができる。特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
上述した光学フィルターのさらなる詳細については、以下に示される通りである。
【0043】
本発明は、新規な光学デバイスのための化学量論比を有し、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2、かつ、Y>0)薄層フィルムの製造に用いられる高密プラズマ法に関する。SiOX薄層フィルムに包埋されたnc-ケイ素を処理するHDPプラズマ工程は、工程条件に応じて広範囲の光学分散を実現できる。具体的には、フィルムの屈折率および吸光定数をそれぞれ約1.46〜3(1.46〜3)、0〜0.5の範囲内で変更することができる。上記屈折率および吸光定数は、光学デバイスの製造において、従来用いられている公知の誘電体および半導体材料の光学特性と重複するものである。さらに、HDPプラズマ工程によれば、nおよびkの値を独立して制御することができ、デバイスの製造において工程の限界、工程の複雑さおよびコストを大きく低減させることができる。
【0044】
nc-ケイ素を含むフィルムから導かれる新たな基本的な方針としては、波長を変換するものである。nc-ケイ素粒子の大きさは、波長同調に影響を与える。また、媒体に含まれるnc-ケイ素粒子は、新規な光電子デバイスにおける、光強度上昇(導光に対する活性媒体)、波長変換(PL/ELの応答性)および入射した広帯域のスペクトルを狭周波数帯のスペクトルに変換するために用いられる。
【0045】
図1Aから図1Fは、基本的な光学特性を示している。図1B、図1C、図1Eでは、ローパス、ハイパス、狭帯域フィルターのそれぞれを示す光波長(λ)の関数として透過率(T)がプロットされている。図1Aおよび図1Dでは、光波長の関数として屈折率がプロットされている。図1Aでは、一般的な反射防止コーティングの特性が示されている。一方、図1Dでは、フィルムは入射光を部分的に反射し、部分的に透過することが示されている。光学デバイスは、その用途に基づいて、二つの主要なカテゴリーに分類される。一方の光学デバイスでは、導波路として作用するフィルムを有する基板に水平な方向に対し光が平行に移動する。他方の光学デバイスでは、反射防止コーティング、フィルター、ミラー、ビームスプリッターなどとして用いられるフィルム面に対し光が垂直に移動する。
【0046】
薄層フィルムの材料の選定は、所望の光学的効果に応じて変更される。単層または多層の薄層フィルム構造に対しては、所望の光学特性を有していることが要求される。光学的な用途のために不可欠な薄層フィルムの特性として、重要な特性としては、反射率、透過率、吸収率およびスペクトル感度が挙げられる。製造技術、蒸着工程および処理温度の選定は、薄層フィルムの光学特性に強い影響を及ぼすこととなる。さらに、多層構造における多層のバルク(bulk)特性および界面特性は、光デバイスの全体的な性能に影響を与える。
【0047】
図2Aから図2Iまでは、一般的な導波路の構成を示している。波長の成分を誘導することは、半導体素子上に光学信号を配列させることや、方向性の結合、選別および調整の機能のために有用である。また、ソース、検知器、モジュレータなどの動的機器と光学的な導波路とを集積することは、高品質の光学通信デバイスを実現する上で有用である。
【0048】
図3Aおよび図3Bは、一般的な導波路の構成を示しており、導光を制御し、波長を変換する単層または多層の構成が示されている。図3Aでは、強度比率であるIout/Iinがシステム損失に依存していることが示されている。図3Bでは、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを用いることによって、強度比率を、システム損失だけでなく、種々の要素、例えば、ソースによるnc-ケイ素の励起、ソースまたはドーパントによるnc-ケイ素の励起、およびソースまたはnc−ケイ素の放射によるドーパントの励起に依存させることが可能であることが示されている。
【0049】
このようなnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを用いることによって、単一の材料システムおよび粒子サイズの制御が行われ、広範囲に亘る光学分散の制御が可能となる。例えば、nc−ケイ素粒子サイズを制御することによって、波長を変換および増幅することが可能となる。また、フィルムに不純物を添加することによって、誘導された波長および信号の増幅を制御することができる。上述したnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムは、種々の金属性、誘電性および半導体性の材料を用いることによって得られる。
【0050】
光電子的な用途に用いられる薄層フィルムの選定は、光学的、電気的、機械的および化学的な特性に応じて適宜異なる。製造技術および蒸着工程の選定は、高品質の薄層フィルムの製造において等しく重要である。様々な薄層フィルムの特性、例えば、微細構造、粒子の大きさ、組成、密度、欠陥および不純物、構造の均質性および界面の特性は蒸着技術および工程条件によって強く影響される。
【0051】
本発明は、新規な光学デバイスのための化学量論比を有し、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムの製造に用いられる高密プラズマ法に関する。ここで、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムとも呼ばれ、X+Y<2、かつ、Y>0である。非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムは、以下、ナノ結晶性(nc)のケイ素粒子を含んでいるものとする。また、ケイ素に富んだSiOXNY薄層フィルムであるとする。「非化学量論比を有する」とは、以下、当業者が有する知識に基づいて、明確な自然数の比率で化合物を表すことができないことを示す。そのため、明確な比率で示すことができないことを示す。
【0052】
従来、非化学量論比を有する化合物は、ランダム欠陥を含む固体物質であるとされ、結果としてある元素を欠いているとされる。上記化合物は、全体として中性の電荷を有しているため、原子チャージを損失したことで、酸化状態を変動させるか、または、上記化合物を異なるチャージを有する異なる元素の原子に置換することによって、化合物中の他の原子へチャージを補填する必要が生じる。さらに詳細には、非化学量論比を有するSiOXNYにおける「欠陥」は、ナノ結晶性の粒子を含む。
【0053】
HDP技術によれば、高いプラズマ密度、低いプラズマ電位、および、プラズマエネルギーと密度とをそれぞれ独立に制御できるため、高品質な薄層フィルムを製造する上で適している。HDP技術は、高品質なフィルムを製造する上で、不純物含有量を導入する工程またはシステムをごく小さく抑えることができるため好ましい。HDP処理されたフィルムは、構造的な損傷を生じさせ、不純物を工程中に導入することとなるプラズマの量が最少量であるため、優れたバルク特性および界面特性を示す。上記プラズマ量は、従来公知の蒸着技術によるプラズマ量と比較したものであり、蒸着技術としては、スパッタリング、イオンビーム蒸着、PECVDによる容量結合プラズマ(CCP)源および熱線CVDを挙げることができる。
【0054】
本発明は、蒸着状態のSiOXフィルムにおいてナノ−ケイ素粒子を生じさせる新規なHDP工程に関する。nc−ケイ素粒子の濃度は、蒸着後のアニール処理および欠陥の不動態化処理によってさらに高くすることができる。光電子デバイスの製造において、HDP処理された、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムは、HDP処理されることによって性能が向上されており、光学分散特性を調整することができる。
【0055】
nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムの他の重要な面としては、可視スペクトル範囲における大きなPL放射が挙げられる。上記PL放射は、信号ゲインおよび波長同調を示す、アクティブ光デバイスの製造において用いられる。HDP処理された薄層フィルムの光学特性は、光学的応答性を可視スペクトル、例えば、遠紫外線から遠赤外線までの一方へ拡張するよう制御するために、適切な不純物をドープすることによって大きく変更することができる。HDP技術では、電気的および光学的応答性を向上させるために、フィルムを不動態化させるための低温および低熱量の条件が望ましい。
【0056】
図4は、誘導結合プラズマ源を備える高密プラズマ(HDP)システムの計画図である。頂部(上部)電極1は、高周波(RF)の電源2によって駆動される。一方、底部(株)電極3は、より低周波の電源4によって駆動される。高密誘導結合プラズマ(ICP)の電源2から、マッチング回路5およびハイパスフィルター7までのRF出力は頂部電極1に結合されている。ローパスフィルター9および整合変成器11を介した底部電極3への出力は、頂部電極1と独立して変更され得る。頂部電極の電力周波数は、13.56から約300メガヘルツ(MHz)の範囲で変更することができ、ICPの設計に依存する。底部電極の電力周波数は、イオンエネルギーを制御するために、約50キロヘルツ(KHz)から約13.56MHzまでの範囲で変更することができる。圧力は上限500mTorrにまで変更することができる。頂部電極の出力は、約10ワット/平方センチメートル(W/cm2)の出力とでき、一方、底部電極の出力は、約3W/cm2の出力とすることができる。
【0057】
HDPシステムの興味深い特徴としては、プラズマに晒される誘導コイルが存在しないことである。すなわち、不純物を生じさせる源を排除することができる。頂部電極および底部電極の出力はそれぞれ独立に制御され得る。これらの電極はプラズマに晒されないため、可変コンデンサーを用いてシステムの本体(body)電位を調整する必要がない。このため、頂部電極および底部電極の間には、クロストークが生じず、プラズマ電位は該して20V未満と、低い値になる。システムの本体(body)電位は、システム設計および電力結合の性質に応じて、変動する電位となる。
【0058】
HDPツールは、電子が1×1011cm−3以上の濃度および電子温度が10eV未満である、真の高密プラズマ工程である。また、多量の高密プラズマシステムおよび容量結合プラズマツールのような公知の設計がなされているため、頂部電極に結合されたコンデンサーおよびシステムボディ(システム本体)の間のバイアス差を維持する必要がない。頂部電極および底部電極がRFおよび低周波(LF)の出力を受けることによって、相互に状態が変化する。
【0059】
高品質な化学量論比を有するSiOXNY(X+Y=2)およびnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムは、400℃以下の処理温度にて、HDP技術によって処理され得る。集積された光学デバイスに適した基板としては、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガラス、石英、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、SiXGe1−Xが挙げられる。HDP処理されたフィルムは、その位置で(in situ)、高密PECVDを備えるチャンバー内にてドーパント源となるガスの添加または物理スパッタリング源を組み込むことによってドープされ得る。
【0060】
HDP処理されたフィルムの光学特性は、添加されるドーパントの種類によって変更することができる。HD−PECVD技術による、化学量論比を有するSiOXNY(X+Y=2)およびnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムの製造における一般的な処理条件を表1に示す。
【0061】
【表1】
図5Aおよび図5Bは、nc-ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示している。屈折率および減衰係数はフィルムごとに調節されることができる。新規な光学および光電気デバイスを設計する上で、n値およびk値を独立して制御することによって、より光学的な透過率、反射率および吸収率の特性をより制御し易くすることができる。フィルムの光吸収限界は、薄層フィルムの構成およびnc-ケイ素粒子の大きさを調整することによって、効果的に制御することができる。また、光応答特性が制御された新規な光学および光電気デバイスを製造する上で、n、k分散、吸収限界、およびPL/EL放射特性が相互に成り立つよう開発され得る。
【0062】
図6Aから図6Cまでは、可視スペクトル領域に亘るHDP処理された、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムのPLスペクトルを示している。放射された波長は、粒子の大きさに強く依存する。全可視スペクトル領域に亘り、粒子サイズを制御することによって、HDPプラズマ工程を効率的とすることができる。また、HDP工程では、相当量のPL信号が明確に検知されるように、300℃の低い処理温度において、nc-ケイ素粒子の生成が効率良くなされる。PL放射の強度は、蒸着後の高温でのアニール処理によって、非常に高められる。上記アニール処理は、相分離および量子閉じ込め効果のためになされるものである。さらに、HDP技術は、欠陥を不動態化させるために、低温および低い熱量にてなされることが好ましい。
【0063】
すなわち、フィルムの構成、アニール処理、不動態化およびnc−粒子サイズの制御に関して、n、k、および波長透過率に亘り制御がなされた、上述したnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムを用いることによって、単層または多層構造が形成され得る。導波路は、波長変換および波長スペクトルを減衰させることができるよう形成される。第4類の希土類元素のドーパントは、波長を制御するためにフィルムに添加される。光学利得および複屈折は、光電気的な用途のために利用され得る。放射された波長の光学制御は、上記のようにドーパントを添加することによってなすことができる。
【0064】
nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムは、他の様々な材料と共に用いられる。例えば、光導波路は、PINダイオード検知器と共に一体化される。また、nc−ケイ素を包埋したフィルムは、広バンドギャップ半導体または蛍光体(リン光体)に含まれるよう構成されてもよい。上記製造工程についてのさらなる詳細については、発明の名称 HIGH DENSITY PLASMA STOICHIOMETRIC SiOXNY FILMS、発明者 Pooran Jochiら、出願番号11/698,623、出願日2007年1月26日、代理人整理番号SLA8117の出願書類を参考にすることができる。
【0065】
図7は、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの部分断面図を示している。ここで、光学フィルターとは、少なくとも1種類の入射光の特性を変化させるデバイスを示すこととする。また、フィルターは透過性、反射性があり、導波路として作用することができるものであってよい。フィルター700は、基板(基材)702および基板702上に、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704によって構成されている。ここで、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。
【0066】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。上記の複素屈折率において、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。基板702の材料としては、例えば、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料または半導体材料を挙げることができる。しかし、上記フィルターの基板の原料は、上述した材料に必ずしも限定されるものではない。
【0067】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。例えば、ドーパントは、3族元素、4族元素、5族元素、または希土類元素であってもよい。また、フィルム704は、上述した元素を併用してドープされていてもよく、上述した元素以外の元素によってドープされていてもよい。
【0068】
また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、ナノ粒子のケイ素706を含んでおり、このナノ粒子のケイ素706は、約1〜10ナノメータ(nm)の大きさ(例えば直径)を有している。
【0069】
図8は、図7に示す非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの第1の実施形態を示す部分断面図である。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム800は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の上に積層されている。ここで、Y1≠Y2である。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムは、フィルム704について上述したように、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。
【0070】
図9は、図7に示す非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの第2の実施形態を示す部分断面図である。化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム900は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704上に積層されている。化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム900は、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。ドーパントの例としては、フィルム704について上述したドーパントと同様である。
【0071】
図10Aから図10Cまでは、図7に示す第1の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムの第3の実施形態を示す部分断面図を示している。上記薄層フィルムは、段階的な屈折率(n1)を有している。
【0072】
一例として、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704は、基板表面1000からフィルムの距離によって変化する段階的な屈折率を有している。この段階的な屈折率は、Y1値を有している。図10Aにおいて、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704は、連続関数を有する段階的な屈折率を有している。図示するように、n1値は、基板表面1000から遠ざかるに従って増加する。また、図示しないが、n1値は、基板表面1000から遠ざかるに従って減少してもよい。
【0073】
図10Bは、段階的な屈折率を有する非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704を示している。上記薄層フィルム704では、段階的な屈折率は、一方向に変動し、例えば、n1a>n1b>n1cである。
【0074】
図10Cは、段階的な屈折率を周期的に有する非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704を示している。上記薄層フィルム704では、段階的な屈折率は、変動した後に元の屈折率に戻る。例えば、n1a>n1bであり、反復して繰り返される。薄層フィルム704では、2段階の屈折率を2回繰り返すサイクルが示されている。しかし、薄層フィルム704では、このような特定の反復部分当たりの段階数、または、特定の反復回数に制限されるものではない。
【0075】
図11は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターに係る第4の実施形態を示す部分断面図である。また、薄層フィルム1100には、SiOXNY以外の材料から得られた第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが積層されていてもよい。例えば、薄層フィルム1100は、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeXまたは単結晶Si1−XGeXなどの例を挙げることができる。
【0076】
図12は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターに係る第5の実施形態を示す部分断面図である。第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている第2のフィルム層1200は、フィルムの材料に関わらず、第2の屈折率(n2)を有している。第2の屈折率(n2)は、第1の屈折率(n1)とは異なる値である。ある観点から考えると、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704および第2のフィルム1200の積層体は、全体として第3の屈折率(n3)を有している。
【0077】
図13は、図12に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。第2のフィルム1200は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第1の領域1202を覆っている。また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第2の領域1204を覆っていない。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域1202を通過し、第2のフィルム層1200を覆う部分の屈折率は、第3の屈折率である。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第2の領域1204を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率である。
【0078】
図14は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第6の実施形態を示す部分断面図である。複数層のフィルム1300aから1300jまでが、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704および積層されたフィルム1300aから1300jまでは、全体として第4の屈折率(n4)を有する。なお、フィルム1300の枚数であるjは、この枚数に限定されるものではない。
【0079】
図15は、図14に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。図15の例ではj=2である。第2のフィルム1400は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704の第1の領域1402を覆っている、また、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704の第2の領域1404を覆っていない。さらに、第3のフィルム1406は、第2のフィルム1400における第1の領域1408を覆っており、第2のフィルムにおける第2の領域1410を覆っていない。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域1402、第2のフィルにおける第1の領域1408および第3のフィルム1406を通る部分の屈折率は、第4の屈折率である。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域1402および第2のフィルム1400の第2の領域1410を通過する部分の屈折率は、第3の屈折率である。
【0080】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域1404を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率である。このように3層構造の例を示したが、フィルター700は3層構造に限定されるものではなく、層数は適宜変更されることができる。
【0081】
図16は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第7の実施形態を示す部分断面図である。回折格子1600は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている。回折格子1600は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に入射する入射光1602を制御するための回折特性および反射特性を有している。また、回折格子1600は、蛍光体材料を含んでいる。
【0082】
蛍光体材料は、粒子または光が帯電されることによって、励起した際に発光する材料である。放射光スペクトルは、その材料の組成によって特性が左右される。フィルター700は、入射光の透過、吸収および反射特性を制御する一般的な機能を果たすことができるため、上記フィルターに蛍光体層を組み合わせることによって、フィルター特性を制御する機能を加えることができる。蛍光体材料は、ディスプレイ関連の用途に広く用いられており、当業者に広く知られているものである。ここで使用されるあらゆる光ルミネセンス材料は蛍光体材料である。
【0083】
回折格子1600は、入射光の特性を制御できる構成となっている。そのため、下地となるフィルム704に届く光は、回折格子1600の回折特性に左右される。一般的にフィルター700においては、回折格子1600は、種々の方法および種々の薄層フィルムの材料群から構成されることが可能である。一般的に、回折特性および反射特性によって回折格子が定義される。図16においては、回折格子1600の構成はフィルム704を覆うように示されているが、回折格子1600が、フィルム704および基板702の間に位置するよう配置を変更してもよいし、フィルム704を覆う多層フィルム中に配置させる構成に変更してもよい(図示していない)。
【0084】
また、回折格子は、反射要素および透明な要素を有しており、これらは周期的に調整される。回折格子1600は、材料表面に、非常に平行および均等に配置された溝または線形状が施されることによって、形成されている。光が回折格子に入射すると、回折および相互干渉効果が生じる。そして、回折次数で称されるように、光は様々な方向に反射または透過される。
【0085】
図17は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第8の実施形態を示す部分断面図である。ここで、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、可変な屈折率を有している。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、参照番号1700で示す外部的な環境条件によって屈折率を変更することができる。外部的な環境条件としては、例えば、温度、電界、光または圧力などが挙げられる。
【0086】
図18Aから図18Cまでは、図16に示す光学フィルターを回折格子とした各実施形態の構成を示す部分断面図である。非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター1800は、基板1802および基板1802を覆う多層フィルム構造体1804から構成されている。多層フィルム構造体1804は、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでおり、ここで、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806は、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。ここで、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。
【0087】
また、多層フィルム構造体1804は、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有するフィルム1808を含んでいる。フィルム1808は回折格子、蛍光体材料フィルムまたは蛍光体を含んだ回折格子であってもよい。
【0088】
図18Aにおいて、フィルム1808は、多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、さらに、これらのフィルムが非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806上に形成されている。
【0089】
図18Bにおいて、フィルム1808は、多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、さらに、これらのフィルムが非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806の下方(基板側)に形成されている。
【0090】
図18Cにおいて、フィルム1808およびフィルム1806は、共に多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、フィルム1808は、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806上に形成されている。多層フィルム構造体としては、他の組み合わせとすることも可能である。多層フィルム構造体1804における他のフィルムとしては、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、単結晶Si1−XGeX、化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムおよび他の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムを含む構成とすることができる。
【0091】
以上のように、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが提案される。具体的な材料およびフィルム層のパターンについては本発明について上述した通りである。なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、光学フィルムの製造に利用できる光学フィルターを提供することができる。特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1A】基本的な光学特性を示す図である。
【図1B】基本的な光学特性を示す図である。
【図1C】基本的な光学特性を示す図である。
【図1D】基本的な光学特性を示す図である。
【図1E】基本的な光学特性を示す図である。
【図1F】基本的な光学特性を示す図である。
【図2A】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2B】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2C】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2D】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2E】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2F】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2G】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2H】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2I】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図3A】導光を制御および波長を変換するための単層または多層構造である一般的な導波路の構成を示す図である。
【図3B】導光を制御および波長を変換するための単層または多層構造である一般的な導波路の構成を示す図である。
【図4】誘導結合プラズマ源を備える高密プラズマ(HDP)システムの計画図である。
【図5A】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示す図である。
【図5B】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示す図である。
【図6A】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図6B】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図6C】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図7】非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターを示す部分断面図である。
【図8】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第1の実施形態を示す部分断面図である。
【図9】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第2の実施形態を示す部分断面図である。
【図10A】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図10B】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図10C】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図11】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第4の実施形態を示す部分断面図である。
【図12】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第5の実施形態を示す部分断面図である。
【図13】図12に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図14】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第6の実施形態を示す部分断面図である。
【図15】図14に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図16】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第7の実施形態を示す部分断面図である。
【図17】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第8の実施形態を示す部分断面図である。
【図18A】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図18B】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図18C】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0094】
704 第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム
1000 基板表面
1402・1408 第1の領域
1404・1410 第2の領域
1800 非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター
1802 基板(基材)
1804 多層フィルム構造体
1808 フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光学フィルムの製造に関するものであり、特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有し、酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する薄層(薄膜)光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
集積された光学デバイスを製造する方法は、吸収率、透過率およびスペクトル感度のような光学特性備える材料を蒸着する工程を含んでいる。薄層(薄膜)フィルムの製造技術によって、高い生産性および収率にて、種々のデバイスの製造に適した様々な薄層フィルムを製造することができる。重要な光学特性としては、屈折率および光学バンドギャップが含まれる。これらは、薄層フィルムの透過特性および反射特性に影響を与える。
【0003】
一般的に、2層または複数層の積層された薄層フィルムは、所望の光学的効果を備える光学デバイスの製造のために必要とされる。上記所望の光学的効果を備える多層フィルムを形成するために、様々な金属層、誘電体層および/または半導体層の組み合わせを用いることができる。材質の選定は、目的とする反射率、透過率および吸収率の特性によって決定される。単層のデバイスでは、明確により好ましいと言えるが、単層でない薄層フィルム材料は、光学分散特性を広範囲で提供することができる。上記光学分散特性は、紫外線領域から遠赤外線周波数領域への広い光学範囲に亘る、所望の光学的な吸収率、バンドギャップ、屈折率、反射率または透過率を得るために必要とされる特性である。
【0004】
ケイ素は、製造技術が十分に開発されているため、光電子デバイスの製造において一般的に好ましく用いられる材料である。しかしながら、間接バンドギャップによっては、光電子デバイスの製造する効果を伴わない材料を生じさせる。長年の研究開発によって、ケイ素を基礎とした光電子を実現させるために、ケイ素の光学機能を調整することに注目が集まってきた。結晶性ケイ素からの効率的な室温光の放射によって、完全にケイ素を基礎とした光電子工学の達成にとって大きな一歩が踏み出されている。
【0005】
安定性および信頼性を備えた光電子デバイスの製造方法では、高い光学ルミネセンス(PL)および電子ルミネセンス(EL)の量子光率を有するケイ素のナノ結晶が必要とされている。集積された光電子デバイスの製造を積極的に進めるためのあるアプローチとしては、包埋されたケイ素のナノ結晶を含むSiOX(X≦2)の薄層フィルムの製造が挙げられる。ケイ素のナノ結晶中に拘束された正孔対を再結合するためには、発光はナノ結晶のサイズに大きく左右されることとなる。
【0006】
SiOXの薄層フィルムに包埋されたナノ結晶性のケイ素の電子的および光学的な特性は、ケイ素のナノ結晶のサイズ、密度および分布に依存する。種々の薄層フィルムの蒸着技術、例えば、容量結合プラズマを用いる、スパッタリングおよびプラズマ化学気相成長法(PECVD)などは、安定性および信頼性のあるナノ結晶性のケイ素薄層フィルムを製造する目的のため、これまで研究がなされている。
【0007】
しかしながら、従来のPECVDおよびスパッタリング技術においては、低いプラズマ密度、プラズマと結合するには不十分なパワー、低いイオン/中性物質の比率(ion/neutral ratio)および制御できない量に係る限界を有している。また、高いイオン衝撃エネルギー(bombardment energy)のため界面に損傷が生じることが挙げられる。そのため、プラズマが生じさせた、従来の容量結合プラズマ(CCP)から形成された酸化膜には、イオン種に影響を及ぼす高い衝撃エネルギーのため、信頼性の問題が伴い得る。プラズマ誘導される量または界面の損傷を制御または最小化させることは重要である。プラズマを生じさせるCCPの高周波(RF)を用いるイオンエネルギーを制御することはできない。供給される電力が増加されることによって、反応速度が増加される結果、蒸着フィルムに対する衝撃が増加する。上記蒸着フィルムによっては、多くの欠陥を含む低品質なフィルムを与えることしかできない。さらに、これらのプラズマ源(〜1×108−109cm−3)による低密度のプラズマは、プラズマ中およびフィルム表面における反応の自由度、処理速度を向上させる活性ラジカルの発生の効果、酸化の効果、低い熱量による不純物の還元に制限を招くこととなる。これらによって、低温での電子デバイスの製造における実用性が制限される。
【0008】
蒸着工程では、デバイスの進歩に基づくPLおよび電子ルミネセンス(EL)に係る粒子を生じさせ、また、粒子の大きさを制御することが必要とされる。上記蒸着工程は、従来のプラズマを用いる技術、例えば、スパッタリング、PECVDなどよりも、処理範囲およびプラズマの特性を向上させるものである。プラズマ密度を向上させ、プラズマの衝撃を最小化させる工程によれば、プラズマによる微細構造に関する損傷を生じさせることなく、高品質なフィルムの成長を確保することができる。フィルムの界面およびバルク(bulk)の品質をそれぞれ制御する可能性を提供することができる工程によれば、高い性能および高い信頼性を有する電子デバイスの製造を可能とすることができる。活性プラズマ種、ラジカルおよびイオンを十分に発生させることができるプラズマ工程によれば、制御された工程および特性の制御を伴う高品質な薄層フィルムを開発することが可能となる。
【0009】
高品質のSiOX薄層フィルムを製造するためには、成長したフィルムの酸化も、結晶性のケイ素粒子を含む高品質フィルムを得る上で重要な要素である。また、高濃度にて活性酸素ラジカルを発生させ得る工程によれば、ケイ素ナノ粒子を取り巻く酸化物マトリックス中において、ケイ素粒子ナノ粒子の効果的な不動態化を確保することができる。さらに、プラズマによって生じる損傷を最小化し得る工程によれば、高品質の界面の形成を実現することができる。上記界面の形成は、高品質のデバイスを製造するために不可欠である。低い熱量による十分な酸化および水素化工程は、光電子デバイスの製造工程において、不可欠であり、重要である。高温での熱処理工程では、他のデバイス層に干渉することとなり、上記他のデバイス層は、熱活性種の低い反応性のため、効率および熱量の観点から適切ではない。さらに、新規フィルムの構造に係る成長/蒸着、酸化、水素化、粒子サイズの成長、および制御に関する、より完全な解決策および可能性を提供できるプラズマ工程、および、プラズマ密度、イオンエネルギーおよび広範囲での処理をそれぞれ制御することは高性能な光電子デバイスの発展の点から望まれる。
【0010】
薄層フィルムの特性に影響する種々のプラズマの物性として、付随するプラズマ工程を薄層フィルムの特性に対し、相互に関連付けることは重要である。また、所望のフィルムの品質は、目的となる用途に応じて左右される。目的となる用途に応じる、重要となるプラズマおよび薄層フィルムの特性は、蒸着率、温度、熱量、密度、微細構造、界面特性、不純物、プラズマにより生じる損傷、プラズマによって生じる活性種(ラジカル/イオン)の状態、プラズマの電位、工程およびシステムの規模、電気特性および信頼性が挙げられる。物性値の補正は、目的に応じた用途によるフィルムの品質に影響を及ぼす工程図(process map)のように、フィルムの品質を評価するために不可欠である。プラズマエネルギー、組成物(ラジカルからイオンへ)、プラズマ電位、電子の温度および温度状態が、工程図に依存して別個に関連があるように、低密度のプラズマまたは他の高密度プラズマ系において、単に上述した工程を展開させるだけでは、薄層フィルムについて知見を深め、発展がなされる可能性は低い。
【0011】
低温条件は、大規模なデバイスを透明ガラス、石英またはプラスチック基板に形成する、液晶ディスプレイ(LCD)の製造において概して好ましい。透明基板は、650℃を越える温度に晒されると損傷を受け得る。この温度問題を解決するためには、低温でのケイ素の酸化工程が改良される必要がある。上記の工程では、誘導結合プラズマ(ICP)源のような高密度のプラズマ源が用いられ、1200℃で行われる化学酸化法に匹敵する品質でケイ素酸化物を形成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
仮に高密度のプラズマを実現することができれば、ケイ素を含有するフィルムを光学フィルムの製造に用いることが可能となる。
【0013】
本発明では、光学フィルターの製造に利用できる光学フィルムを提供する。本発明では、特に、化学蒸着工程をなす高密度プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、種々の電子的な応用のために適した広範囲の屈折率を有するケイ素に富んだSiOX薄層フィルムの製造方法に係る。例えば、1.46〜3の範囲の屈折率値を有するSiOX薄層フィルムは、HDPの工程条件を調節することによって製造され得る。また、高密度のプラズマによって、SiOX薄層フィルムは可視領域において、強いPL強度を示すよう処理される。上記強度は、蒸着後のアニール処理がなされ、高濃度のケイ素ナノ結晶の凝集体が形成されると著しく向上する。
【0015】
また、高周波(RF:radio frequency)の電力および蒸着温度を調節することによって、屈折率を制御することが可能となる。HDP処理されたSiOX薄層フィルムにおいて観測される光応答性は、種々の光電気的な用途を目的とし、HDP処理されたSiに富むSiOX薄層フィルムの電位として示される。
【0016】
これによって、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターを提供することができる。上記フィルターは、基板と、基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとから構成されており、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、そのままであっても(すなわち、ドープされていない状態であっても)、ドープされていてもよい。
【0017】
また、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいることが好ましい。
【0018】
また、他の実施形態として、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記Y1≠Y2である実施形態を挙げることができる。この場合においても、上記第2の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。さらに他の実施形態として、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムは、ドープされていなくとも、ドープされていてもよく、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを覆っていてもよい。
【0019】
また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、段階的な屈折率(n1)を有している。上記屈折率の段階的な関数は、連続的、段階的または周期的な関数となっている。第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムは、基板からフィルムまでの距離に従って変化する、Y1値を有する段階的な屈折率を有している。
【0020】
すなわち、本発明の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターは、基板と、上記基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとを含んでおり、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおいて、X1+Y1<2、かつ、Y>0であり、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であることを特徴としている。
【0021】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0022】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記Y1≠Y2であり、上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0024】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、上記化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムが、ドープされていない化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム、およびドープされた化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであってもよい。
【0025】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、段階的な第1の屈折率(n1)を有していてもよい。
【0026】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが段階的な屈折率を有しており、上記屈折率は、連続的な屈折率、段階的な屈折率、および周期的な屈折率からなる群から選ばれるものであってもよい。
【0027】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、Y1値を有する段階的な屈折率を有しており、上記Y1値は、上記基板からフィルムまでの距離に従って変化してもよい。
【0028】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の屈折率(n2)を有する第2のフィルム層によって覆われていてもよい。
【0029】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムと上記第2のフィルム層との積層体が、全体として、第3の屈折率(n3)を有していてもよい。
【0030】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、複数のフィルムによって覆われており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよび上記複数のフィルムの積層体が、全体として、第4の屈折率(n4)を有していてもよい。
【0031】
本発明の光学フィルターは、第2のフィルムが、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を覆っておらず、第3のフィルムが、上記第2のフィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第2のフィルムにおける第2の領域を覆っておらず、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域、上記第2のフィルムにおける第1の領域および第3のフィルムを通過する部分の屈折率として第4の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域および上記第2のフィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であってもよい。
【0032】
本発明の光学フィルターは、上記第2のフィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第2の領域を覆っておらず、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域および上記第2のフィルムを通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であってもよい。
【0033】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムに入射された入射光を制御するための回折特性および反射特性を有する回折格子によって覆われていてもよい。
【0034】
本発明の光学フィルターは、上記回折格子が蛍光体材料を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の光学フィルターは、上記基板が、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料、および半導体材料からなる群から選ばれる材料によって形成されていてもよい。
【0036】
本発明の光学フィルターは、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、および単結晶Si1−XGeXからなる群から選ばれる材料によって形成されたフィルムによって覆われていてもよい。
【0037】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、3族元素、4族元素、5族元素、および希土類元素からなる群から選ばれるドーパントを有する非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでいてもよい。
【0038】
本発明の光学フィルターは、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、可変な屈折率を有していてもよい。
【0039】
本発明の光学フィルターにおいて、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、温度、電界、光および圧力からなる群から選ばれる外部的な環境条件に応じて、その屈折率が変化する構成を有していてもよい。
【0040】
本発明の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターは、基板と、上記基板を覆う多層フィルム構造体とを含んでいる非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターであって、上記多層フィルム構造体が、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびフィルムを含んでおり、上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、X1+Y1<2、および、Y1>0であり、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であり、上記フィルムは、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有しており、回折格子および蛍光体フィルムからなる群から選ばれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、光学フィルムの製造に利用できる光学フィルターを提供することができる。特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
上述した光学フィルターのさらなる詳細については、以下に示される通りである。
【0043】
本発明は、新規な光学デバイスのための化学量論比を有し、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2、かつ、Y>0)薄層フィルムの製造に用いられる高密プラズマ法に関する。SiOX薄層フィルムに包埋されたnc-ケイ素を処理するHDPプラズマ工程は、工程条件に応じて広範囲の光学分散を実現できる。具体的には、フィルムの屈折率および吸光定数をそれぞれ約1.46〜3(1.46〜3)、0〜0.5の範囲内で変更することができる。上記屈折率および吸光定数は、光学デバイスの製造において、従来用いられている公知の誘電体および半導体材料の光学特性と重複するものである。さらに、HDPプラズマ工程によれば、nおよびkの値を独立して制御することができ、デバイスの製造において工程の限界、工程の複雑さおよびコストを大きく低減させることができる。
【0044】
nc-ケイ素を含むフィルムから導かれる新たな基本的な方針としては、波長を変換するものである。nc-ケイ素粒子の大きさは、波長同調に影響を与える。また、媒体に含まれるnc-ケイ素粒子は、新規な光電子デバイスにおける、光強度上昇(導光に対する活性媒体)、波長変換(PL/ELの応答性)および入射した広帯域のスペクトルを狭周波数帯のスペクトルに変換するために用いられる。
【0045】
図1Aから図1Fは、基本的な光学特性を示している。図1B、図1C、図1Eでは、ローパス、ハイパス、狭帯域フィルターのそれぞれを示す光波長(λ)の関数として透過率(T)がプロットされている。図1Aおよび図1Dでは、光波長の関数として屈折率がプロットされている。図1Aでは、一般的な反射防止コーティングの特性が示されている。一方、図1Dでは、フィルムは入射光を部分的に反射し、部分的に透過することが示されている。光学デバイスは、その用途に基づいて、二つの主要なカテゴリーに分類される。一方の光学デバイスでは、導波路として作用するフィルムを有する基板に水平な方向に対し光が平行に移動する。他方の光学デバイスでは、反射防止コーティング、フィルター、ミラー、ビームスプリッターなどとして用いられるフィルム面に対し光が垂直に移動する。
【0046】
薄層フィルムの材料の選定は、所望の光学的効果に応じて変更される。単層または多層の薄層フィルム構造に対しては、所望の光学特性を有していることが要求される。光学的な用途のために不可欠な薄層フィルムの特性として、重要な特性としては、反射率、透過率、吸収率およびスペクトル感度が挙げられる。製造技術、蒸着工程および処理温度の選定は、薄層フィルムの光学特性に強い影響を及ぼすこととなる。さらに、多層構造における多層のバルク(bulk)特性および界面特性は、光デバイスの全体的な性能に影響を与える。
【0047】
図2Aから図2Iまでは、一般的な導波路の構成を示している。波長の成分を誘導することは、半導体素子上に光学信号を配列させることや、方向性の結合、選別および調整の機能のために有用である。また、ソース、検知器、モジュレータなどの動的機器と光学的な導波路とを集積することは、高品質の光学通信デバイスを実現する上で有用である。
【0048】
図3Aおよび図3Bは、一般的な導波路の構成を示しており、導光を制御し、波長を変換する単層または多層の構成が示されている。図3Aでは、強度比率であるIout/Iinがシステム損失に依存していることが示されている。図3Bでは、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを用いることによって、強度比率を、システム損失だけでなく、種々の要素、例えば、ソースによるnc-ケイ素の励起、ソースまたはドーパントによるnc-ケイ素の励起、およびソースまたはnc−ケイ素の放射によるドーパントの励起に依存させることが可能であることが示されている。
【0049】
このようなnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを用いることによって、単一の材料システムおよび粒子サイズの制御が行われ、広範囲に亘る光学分散の制御が可能となる。例えば、nc−ケイ素粒子サイズを制御することによって、波長を変換および増幅することが可能となる。また、フィルムに不純物を添加することによって、誘導された波長および信号の増幅を制御することができる。上述したnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムは、種々の金属性、誘電性および半導体性の材料を用いることによって得られる。
【0050】
光電子的な用途に用いられる薄層フィルムの選定は、光学的、電気的、機械的および化学的な特性に応じて適宜異なる。製造技術および蒸着工程の選定は、高品質の薄層フィルムの製造において等しく重要である。様々な薄層フィルムの特性、例えば、微細構造、粒子の大きさ、組成、密度、欠陥および不純物、構造の均質性および界面の特性は蒸着技術および工程条件によって強く影響される。
【0051】
本発明は、新規な光学デバイスのための化学量論比を有し、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムの製造に用いられる高密プラズマ法に関する。ここで、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y≦2)薄層フィルムを、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムとも呼ばれ、X+Y<2、かつ、Y>0である。非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムは、以下、ナノ結晶性(nc)のケイ素粒子を含んでいるものとする。また、ケイ素に富んだSiOXNY薄層フィルムであるとする。「非化学量論比を有する」とは、以下、当業者が有する知識に基づいて、明確な自然数の比率で化合物を表すことができないことを示す。そのため、明確な比率で示すことができないことを示す。
【0052】
従来、非化学量論比を有する化合物は、ランダム欠陥を含む固体物質であるとされ、結果としてある元素を欠いているとされる。上記化合物は、全体として中性の電荷を有しているため、原子チャージを損失したことで、酸化状態を変動させるか、または、上記化合物を異なるチャージを有する異なる元素の原子に置換することによって、化合物中の他の原子へチャージを補填する必要が生じる。さらに詳細には、非化学量論比を有するSiOXNYにおける「欠陥」は、ナノ結晶性の粒子を含む。
【0053】
HDP技術によれば、高いプラズマ密度、低いプラズマ電位、および、プラズマエネルギーと密度とをそれぞれ独立に制御できるため、高品質な薄層フィルムを製造する上で適している。HDP技術は、高品質なフィルムを製造する上で、不純物含有量を導入する工程またはシステムをごく小さく抑えることができるため好ましい。HDP処理されたフィルムは、構造的な損傷を生じさせ、不純物を工程中に導入することとなるプラズマの量が最少量であるため、優れたバルク特性および界面特性を示す。上記プラズマ量は、従来公知の蒸着技術によるプラズマ量と比較したものであり、蒸着技術としては、スパッタリング、イオンビーム蒸着、PECVDによる容量結合プラズマ(CCP)源および熱線CVDを挙げることができる。
【0054】
本発明は、蒸着状態のSiOXフィルムにおいてナノ−ケイ素粒子を生じさせる新規なHDP工程に関する。nc−ケイ素粒子の濃度は、蒸着後のアニール処理および欠陥の不動態化処理によってさらに高くすることができる。光電子デバイスの製造において、HDP処理された、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムは、HDP処理されることによって性能が向上されており、光学分散特性を調整することができる。
【0055】
nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムの他の重要な面としては、可視スペクトル範囲における大きなPL放射が挙げられる。上記PL放射は、信号ゲインおよび波長同調を示す、アクティブ光デバイスの製造において用いられる。HDP処理された薄層フィルムの光学特性は、光学的応答性を可視スペクトル、例えば、遠紫外線から遠赤外線までの一方へ拡張するよう制御するために、適切な不純物をドープすることによって大きく変更することができる。HDP技術では、電気的および光学的応答性を向上させるために、フィルムを不動態化させるための低温および低熱量の条件が望ましい。
【0056】
図4は、誘導結合プラズマ源を備える高密プラズマ(HDP)システムの計画図である。頂部(上部)電極1は、高周波(RF)の電源2によって駆動される。一方、底部(株)電極3は、より低周波の電源4によって駆動される。高密誘導結合プラズマ(ICP)の電源2から、マッチング回路5およびハイパスフィルター7までのRF出力は頂部電極1に結合されている。ローパスフィルター9および整合変成器11を介した底部電極3への出力は、頂部電極1と独立して変更され得る。頂部電極の電力周波数は、13.56から約300メガヘルツ(MHz)の範囲で変更することができ、ICPの設計に依存する。底部電極の電力周波数は、イオンエネルギーを制御するために、約50キロヘルツ(KHz)から約13.56MHzまでの範囲で変更することができる。圧力は上限500mTorrにまで変更することができる。頂部電極の出力は、約10ワット/平方センチメートル(W/cm2)の出力とでき、一方、底部電極の出力は、約3W/cm2の出力とすることができる。
【0057】
HDPシステムの興味深い特徴としては、プラズマに晒される誘導コイルが存在しないことである。すなわち、不純物を生じさせる源を排除することができる。頂部電極および底部電極の出力はそれぞれ独立に制御され得る。これらの電極はプラズマに晒されないため、可変コンデンサーを用いてシステムの本体(body)電位を調整する必要がない。このため、頂部電極および底部電極の間には、クロストークが生じず、プラズマ電位は該して20V未満と、低い値になる。システムの本体(body)電位は、システム設計および電力結合の性質に応じて、変動する電位となる。
【0058】
HDPツールは、電子が1×1011cm−3以上の濃度および電子温度が10eV未満である、真の高密プラズマ工程である。また、多量の高密プラズマシステムおよび容量結合プラズマツールのような公知の設計がなされているため、頂部電極に結合されたコンデンサーおよびシステムボディ(システム本体)の間のバイアス差を維持する必要がない。頂部電極および底部電極がRFおよび低周波(LF)の出力を受けることによって、相互に状態が変化する。
【0059】
高品質な化学量論比を有するSiOXNY(X+Y=2)およびnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムは、400℃以下の処理温度にて、HDP技術によって処理され得る。集積された光学デバイスに適した基板としては、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ガラス、石英、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、SiXGe1−Xが挙げられる。HDP処理されたフィルムは、その位置で(in situ)、高密PECVDを備えるチャンバー内にてドーパント源となるガスの添加または物理スパッタリング源を組み込むことによってドープされ得る。
【0060】
HDP処理されたフィルムの光学特性は、添加されるドーパントの種類によって変更することができる。HD−PECVD技術による、化学量論比を有するSiOXNY(X+Y=2)およびnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムの製造における一般的な処理条件を表1に示す。
【0061】
【表1】
図5Aおよび図5Bは、nc-ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示している。屈折率および減衰係数はフィルムごとに調節されることができる。新規な光学および光電気デバイスを設計する上で、n値およびk値を独立して制御することによって、より光学的な透過率、反射率および吸収率の特性をより制御し易くすることができる。フィルムの光吸収限界は、薄層フィルムの構成およびnc-ケイ素粒子の大きさを調整することによって、効果的に制御することができる。また、光応答特性が制御された新規な光学および光電気デバイスを製造する上で、n、k分散、吸収限界、およびPL/EL放射特性が相互に成り立つよう開発され得る。
【0062】
図6Aから図6Cまでは、可視スペクトル領域に亘るHDP処理された、nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY薄層フィルムのPLスペクトルを示している。放射された波長は、粒子の大きさに強く依存する。全可視スペクトル領域に亘り、粒子サイズを制御することによって、HDPプラズマ工程を効率的とすることができる。また、HDP工程では、相当量のPL信号が明確に検知されるように、300℃の低い処理温度において、nc-ケイ素粒子の生成が効率良くなされる。PL放射の強度は、蒸着後の高温でのアニール処理によって、非常に高められる。上記アニール処理は、相分離および量子閉じ込め効果のためになされるものである。さらに、HDP技術は、欠陥を不動態化させるために、低温および低い熱量にてなされることが好ましい。
【0063】
すなわち、フィルムの構成、アニール処理、不動態化およびnc−粒子サイズの制御に関して、n、k、および波長透過率に亘り制御がなされた、上述したnc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムを用いることによって、単層または多層構造が形成され得る。導波路は、波長変換および波長スペクトルを減衰させることができるよう形成される。第4類の希土類元素のドーパントは、波長を制御するためにフィルムに添加される。光学利得および複屈折は、光電気的な用途のために利用され得る。放射された波長の光学制御は、上記のようにドーパントを添加することによってなすことができる。
【0064】
nc-ケイ素が包埋されたSiOXNY(X+Y<2)薄層フィルムは、他の様々な材料と共に用いられる。例えば、光導波路は、PINダイオード検知器と共に一体化される。また、nc−ケイ素を包埋したフィルムは、広バンドギャップ半導体または蛍光体(リン光体)に含まれるよう構成されてもよい。上記製造工程についてのさらなる詳細については、発明の名称 HIGH DENSITY PLASMA STOICHIOMETRIC SiOXNY FILMS、発明者 Pooran Jochiら、出願番号11/698,623、出願日2007年1月26日、代理人整理番号SLA8117の出願書類を参考にすることができる。
【0065】
図7は、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの部分断面図を示している。ここで、光学フィルターとは、少なくとも1種類の入射光の特性を変化させるデバイスを示すこととする。また、フィルターは透過性、反射性があり、導波路として作用することができるものであってよい。フィルター700は、基板(基材)702および基板702上に、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704によって構成されている。ここで、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。
【0066】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。上記の複素屈折率において、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。基板702の材料としては、例えば、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料または半導体材料を挙げることができる。しかし、上記フィルターの基板の原料は、上述した材料に必ずしも限定されるものではない。
【0067】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。例えば、ドーパントは、3族元素、4族元素、5族元素、または希土類元素であってもよい。また、フィルム704は、上述した元素を併用してドープされていてもよく、上述した元素以外の元素によってドープされていてもよい。
【0068】
また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、ナノ粒子のケイ素706を含んでおり、このナノ粒子のケイ素706は、約1〜10ナノメータ(nm)の大きさ(例えば直径)を有している。
【0069】
図8は、図7に示す非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの第1の実施形態を示す部分断面図である。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム800は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の上に積層されている。ここで、Y1≠Y2である。第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムは、フィルム704について上述したように、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。
【0070】
図9は、図7に示す非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターの第2の実施形態を示す部分断面図である。化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム900は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704上に積層されている。化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム900は、ドープされていなくとも、ドープされていてもよい。ドーパントの例としては、フィルム704について上述したドーパントと同様である。
【0071】
図10Aから図10Cまでは、図7に示す第1の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムの第3の実施形態を示す部分断面図を示している。上記薄層フィルムは、段階的な屈折率(n1)を有している。
【0072】
一例として、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704は、基板表面1000からフィルムの距離によって変化する段階的な屈折率を有している。この段階的な屈折率は、Y1値を有している。図10Aにおいて、非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704は、連続関数を有する段階的な屈折率を有している。図示するように、n1値は、基板表面1000から遠ざかるに従って増加する。また、図示しないが、n1値は、基板表面1000から遠ざかるに従って減少してもよい。
【0073】
図10Bは、段階的な屈折率を有する非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704を示している。上記薄層フィルム704では、段階的な屈折率は、一方向に変動し、例えば、n1a>n1b>n1cである。
【0074】
図10Cは、段階的な屈折率を周期的に有する非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704を示している。上記薄層フィルム704では、段階的な屈折率は、変動した後に元の屈折率に戻る。例えば、n1a>n1bであり、反復して繰り返される。薄層フィルム704では、2段階の屈折率を2回繰り返すサイクルが示されている。しかし、薄層フィルム704では、このような特定の反復部分当たりの段階数、または、特定の反復回数に制限されるものではない。
【0075】
図11は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターに係る第4の実施形態を示す部分断面図である。また、薄層フィルム1100には、SiOXNY以外の材料から得られた第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが積層されていてもよい。例えば、薄層フィルム1100は、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeXまたは単結晶Si1−XGeXなどの例を挙げることができる。
【0076】
図12は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム光学フィルターに係る第5の実施形態を示す部分断面図である。第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている第2のフィルム層1200は、フィルムの材料に関わらず、第2の屈折率(n2)を有している。第2の屈折率(n2)は、第1の屈折率(n1)とは異なる値である。ある観点から考えると、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704および第2のフィルム1200の積層体は、全体として第3の屈折率(n3)を有している。
【0077】
図13は、図12に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。第2のフィルム1200は、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第1の領域1202を覆っている。また、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第2の領域1204を覆っていない。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域1202を通過し、第2のフィルム層1200を覆う部分の屈折率は、第3の屈折率である。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704の第2の領域1204を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率である。
【0078】
図14は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第6の実施形態を示す部分断面図である。複数層のフィルム1300aから1300jまでが、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704および積層されたフィルム1300aから1300jまでは、全体として第4の屈折率(n4)を有する。なお、フィルム1300の枚数であるjは、この枚数に限定されるものではない。
【0079】
図15は、図14に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。図15の例ではj=2である。第2のフィルム1400は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704の第1の領域1402を覆っている、また、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704の第2の領域1404を覆っていない。さらに、第3のフィルム1406は、第2のフィルム1400における第1の領域1408を覆っており、第2のフィルムにおける第2の領域1410を覆っていない。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域1402、第2のフィルにおける第1の領域1408および第3のフィルム1406を通る部分の屈折率は、第4の屈折率である。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域1402および第2のフィルム1400の第2の領域1410を通過する部分の屈折率は、第3の屈折率である。
【0080】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域1404を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率である。このように3層構造の例を示したが、フィルター700は3層構造に限定されるものではなく、層数は適宜変更されることができる。
【0081】
図16は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第7の実施形態を示す部分断面図である。回折格子1600は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に積層されている。回折格子1600は、第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム704に入射する入射光1602を制御するための回折特性および反射特性を有している。また、回折格子1600は、蛍光体材料を含んでいる。
【0082】
蛍光体材料は、粒子または光が帯電されることによって、励起した際に発光する材料である。放射光スペクトルは、その材料の組成によって特性が左右される。フィルター700は、入射光の透過、吸収および反射特性を制御する一般的な機能を果たすことができるため、上記フィルターに蛍光体層を組み合わせることによって、フィルター特性を制御する機能を加えることができる。蛍光体材料は、ディスプレイ関連の用途に広く用いられており、当業者に広く知られているものである。ここで使用されるあらゆる光ルミネセンス材料は蛍光体材料である。
【0083】
回折格子1600は、入射光の特性を制御できる構成となっている。そのため、下地となるフィルム704に届く光は、回折格子1600の回折特性に左右される。一般的にフィルター700においては、回折格子1600は、種々の方法および種々の薄層フィルムの材料群から構成されることが可能である。一般的に、回折特性および反射特性によって回折格子が定義される。図16においては、回折格子1600の構成はフィルム704を覆うように示されているが、回折格子1600が、フィルム704および基板702の間に位置するよう配置を変更してもよいし、フィルム704を覆う多層フィルム中に配置させる構成に変更してもよい(図示していない)。
【0084】
また、回折格子は、反射要素および透明な要素を有しており、これらは周期的に調整される。回折格子1600は、材料表面に、非常に平行および均等に配置された溝または線形状が施されることによって、形成されている。光が回折格子に入射すると、回折および相互干渉効果が生じる。そして、回折次数で称されるように、光は様々な方向に反射または透過される。
【0085】
図17は、図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第8の実施形態を示す部分断面図である。ここで、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、可変な屈折率を有している。第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム704は、参照番号1700で示す外部的な環境条件によって屈折率を変更することができる。外部的な環境条件としては、例えば、温度、電界、光または圧力などが挙げられる。
【0086】
図18Aから図18Cまでは、図16に示す光学フィルターを回折格子とした各実施形態の構成を示す部分断面図である。非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター1800は、基板1802および基板1802を覆う多層フィルム構造体1804から構成されている。多層フィルム構造体1804は、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでおり、ここで、X1+Y1<2、かつ、Y1>0である。非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806は、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有している。ここで、上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数である。
【0087】
また、多層フィルム構造体1804は、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有するフィルム1808を含んでいる。フィルム1808は回折格子、蛍光体材料フィルムまたは蛍光体を含んだ回折格子であってもよい。
【0088】
図18Aにおいて、フィルム1808は、多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、さらに、これらのフィルムが非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806上に形成されている。
【0089】
図18Bにおいて、フィルム1808は、多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、さらに、これらのフィルムが非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806の下方(基板側)に形成されている。
【0090】
図18Cにおいて、フィルム1808およびフィルム1806は、共に多層フィルム構造体1804中において、他のフィルム同士の間に包埋されており、フィルム1808は、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム1806上に形成されている。多層フィルム構造体としては、他の組み合わせとすることも可能である。多層フィルム構造体1804における他のフィルムとしては、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、単結晶Si1−XGeX、化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムおよび他の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムを含む構成とすることができる。
【0091】
以上のように、非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが提案される。具体的な材料およびフィルム層のパターンについては本発明について上述した通りである。なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、光学フィルムの製造に利用できる光学フィルターを提供することができる。特に、化学蒸着工程をなす高密プラズマによって、非化学量論比を有する酸化および窒化されたケイ素フィルムを有する光学フィルターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1A】基本的な光学特性を示す図である。
【図1B】基本的な光学特性を示す図である。
【図1C】基本的な光学特性を示す図である。
【図1D】基本的な光学特性を示す図である。
【図1E】基本的な光学特性を示す図である。
【図1F】基本的な光学特性を示す図である。
【図2A】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2B】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2C】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2D】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2E】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2F】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2G】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2H】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図2I】一般的な導波路の構成を示す図である。
【図3A】導光を制御および波長を変換するための単層または多層構造である一般的な導波路の構成を示す図である。
【図3B】導光を制御および波長を変換するための単層または多層構造である一般的な導波路の構成を示す図である。
【図4】誘導結合プラズマ源を備える高密プラズマ(HDP)システムの計画図である。
【図5A】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示す図である。
【図5B】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムの光学分散特性を示す図である。
【図6A】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図6B】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図6C】nc−ケイ素が包埋されたSiOX薄層フィルムのHDP処理後における、可視スペクトル領域に亘るPLスペクトルを示す図である。
【図7】非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターを示す部分断面図である。
【図8】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第1の実施形態を示す部分断面図である。
【図9】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第2の実施形態を示す部分断面図である。
【図10A】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図10B】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図10C】図7における第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層光学フィルターに係る第3の実施形態を示す部分断面図であり、第1の屈折率(n1)を段階的に示している。
【図11】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第4の実施形態を示す部分断面図である。
【図12】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第5の実施形態を示す部分断面図である。
【図13】図12に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図14】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第6の実施形態を示す部分断面図である。
【図15】図14に示す光学フィルターの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図16】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第7の実施形態を示す部分断面図である。
【図17】図7における非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターに係る第8の実施形態を示す部分断面図である。
【図18A】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図18B】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図18C】図16に示す光学フィルターを回折格子とした実施形態の構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0094】
704 第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルム
1000 基板表面
1402・1408 第1の領域
1404・1410 第2の領域
1800 非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター
1802 基板(基材)
1804 多層フィルム構造体
1808 フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとを含んでおり、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおいて、X1+Y1<2、かつ、Y>0であり、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、
上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であることを特徴とする非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項2】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項3】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項4】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、
上記Y1≠Y2であり、
上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項5】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、
上記化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムが、ドープされていない化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム、およびドープされた化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項6】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、段階的な第1の屈折率(n1)を有していることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項7】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが段階的な屈折率を有しており、
上記屈折率は、連続的な屈折率、段階的な屈折率、および周期的な屈折率からなる群から選ばれることを特徴とする請求項6に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項8】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、Y1値を有する段階的な屈折率を有しており、
上記Y1値は、上記基板からフィルムまでの距離に従って変化することを特徴とする請求項6に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項9】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の屈折率(n2)を有する第2のフィルム層によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項10】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムと上記第2のフィルム層との積層体が、全体として、第3の屈折率(n3)を有することを特徴とする請求項9に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項11】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、複数のフィルムによって覆われており、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよび上記複数のフィルムの積層体が、全体として、第4の屈折率(n4)を有することを特徴とする請求項10に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項12】
第2のフィルムが、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を覆っておらず、
第3のフィルムが、上記第2のフィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第2のフィルムにおける第2の領域を覆っておらず、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域、上記第2のフィルムにおける第1の領域および第3のフィルムを通過する部分の屈折率として第4の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域および上記第2のフィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であることを特徴とする請求項11に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項13】
上記第2のフィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第2の領域を覆っておらず、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域および上記第2のフィルムを通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であることを特徴とする請求項10に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項14】
上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムに入射された入射光を制御するための回折特性および反射特性を有する回折格子によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項15】
上記回折格子が蛍光体材料を含んでいることを特徴とする請求項14に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項16】
上記基板が、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料、および半導体材料からなる群から選ばれる材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項17】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、および単結晶Si1−XGeXからなる群から選ばれる材料によって形成されたフィルムによって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項18】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、3族元素、4族元素、5族元素、および希土類元素からなる群から選ばれるドーパントを有する非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項19】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、可変な屈折率を有していることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項20】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、温度、電界、光および圧力からなる群から選ばれる外部的な環境条件に応じて、その屈折率が変化する構成を有していることを特徴とする請求項19に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項21】
基板と、
上記基板を覆う多層フィルム構造体とを含んでいる非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターであって、
上記多層フィルム構造体が、
非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびフィルムを含んでおり、
上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、X1+Y1<2、および、Y1>0であり、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であり、
上記フィルムは、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有しており、回折格子および蛍光体フィルムからなる群から選ばれることを特徴とする非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項1】
基板と、
上記基板を覆う第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムとを含んでおり、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおいて、X1+Y1<2、かつ、Y>0であり、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、
上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であることを特徴とする非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項2】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルム、およびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項3】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、1ナノメータ以上、10ナノメータ以下の大きさのケイ素ナノ粒子を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項4】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の非化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、
上記Y1≠Y2であり、
上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、ドープされていない非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびドープされた非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項5】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムによって覆われており、
上記化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムが、ドープされていない化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルム、およびドープされた化学量論比を有するSiOX2NY2薄層フィルムからなる群から選ばれるフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項6】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、段階的な第1の屈折率(n1)を有していることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項7】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが段階的な屈折率を有しており、
上記屈折率は、連続的な屈折率、段階的な屈折率、および周期的な屈折率からなる群から選ばれることを特徴とする請求項6に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項8】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、Y1値を有する段階的な屈折率を有しており、
上記Y1値は、上記基板からフィルムまでの距離に従って変化することを特徴とする請求項6に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項9】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、第2の屈折率(n2)を有する第2のフィルム層によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項10】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムと上記第2のフィルム層との積層体が、全体として、第3の屈折率(n3)を有することを特徴とする請求項9に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項11】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、複数のフィルムによって覆われており、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよび上記複数のフィルムの積層体が、全体として、第4の屈折率(n4)を有することを特徴とする請求項10に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項12】
第2のフィルムが、第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を覆っておらず、
第3のフィルムが、上記第2のフィルムにおける第1の領域を覆っており、上記第2のフィルムにおける第2の領域を覆っておらず、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域、上記第2のフィルムにおける第1の領域および第3のフィルムを通過する部分の屈折率として第4の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第1の領域および上記第2のフィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であることを特徴とする請求項11に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項13】
上記第2のフィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域を覆っており、上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第2の領域を覆っておらず、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムの第1の領域および上記第2のフィルムを通過する部分の屈折率として第3の屈折率を有し、
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムにおける第2の領域を通過する部分の屈折率は、第1の屈折率であることを特徴とする請求項10に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項14】
上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムが、上記第1の非化学量論比を有するSiOXNY薄層フィルムに入射された入射光を制御するための回折特性および反射特性を有する回折格子によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項15】
上記回折格子が蛍光体材料を含んでいることを特徴とする請求項14に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項16】
上記基板が、プラスチック、ガラス、石英、セラミック、金属、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、Si1−XGeX、InGaAs、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ケイ素含有絶縁体(SOI)、ゲルマニウム含有絶縁体(GOI)、ケイ素含有材料、および半導体材料からなる群から選ばれる材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項17】
第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、誘電体、半導体、有機薄層フィルム、ポリマー、ドープされていないケイ素、ドープされたケイ素、アモルファスケイ素、多結晶性ケイ素、単結晶ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、アモルファスSi1−XGeX、多結晶性Si1−XGeX、および単結晶Si1−XGeXからなる群から選ばれる材料によって形成されたフィルムによって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項18】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、3族元素、4族元素、5族元素、および希土類元素からなる群から選ばれるドーパントを有する非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項19】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムが、可変な屈折率を有していることを特徴とする請求項1に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項20】
上記第1の非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、温度、電界、光および圧力からなる群から選ばれる外部的な環境条件に応じて、その屈折率が変化する構成を有していることを特徴とする請求項19に記載の非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【請求項21】
基板と、
上記基板を覆う多層フィルム構造体とを含んでいる非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルターであって、
上記多層フィルム構造体が、
非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムおよびフィルムを含んでおり、
上記非化学量論比を有するSiOX1NY1薄層フィルムは、X1+Y1<2、および、Y1>0であり、約1.46から3までの範囲における屈折率(n1)と、複素屈折率(N1=n1+ik1)とを有し、上記複素屈折率における上記k1は、0から0.5までの範囲の減衰係数であり、
上記フィルムは、入射光を制御するための回折特性および反射特性を有しており、回折格子および蛍光体フィルムからなる群から選ばれることを特徴とする非化学量論比を有するSiOXNY薄層光学フィルター。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【公開番号】特開2008−276178(P2008−276178A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317727(P2007−317727)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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