説明

非導電性炭素発泡体

電気的用途に有用な炭素発泡体電池として、比較的非導電性で低い密度で高い孔隙率の炭素発泡体を有するものが開示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に使用する炭素発泡体に関する。より詳細には、より優れた酸電池を提供するための、改良されたセルサイズ均一性と、高い細孔容積を有する、非導電性炭素発泡体に関する。本発明はまた、非導電性炭素発泡体を組み込んだ電池のセルコンポーネントを含める。
【背景技術】
【0002】
一般的な鉛酸蓄電池は、最も広く利用されている充電式電池であって、一般的に少なくとも1つの正電極と、少なくとも1つの負電極と、電解液とを有する。鉛酸蓄電池の欠点の1つは、正電極と負電極の両方が鉛でできているため、電池がかなりの重さになることである。しかしこれらの電池は、現在製造されている電池の種類のうちで最も低いエネルギー対重量比の1つであるにもかかわらず、比較的低コストで自動車の始動モーター等に使用するのに十分なパワーを提供することができるので、人気を維持している。
【0003】
すでに述べたように、鉛酸蓄電池のかなりの重さのほとんどは、電池内の正極と負極を構成する鉛電極が原因である。これらの電極は、電池の充放電時に、電極から電極へ電流が移動するように機能する。この動作は、電池内のペースト(サプリメント)、一般的には鉛ペーストによって促進され、ペーストは電流としてのエネルギーを蓄えるか又は消費する化学反応を提供する。
【0004】
自動車用の標準的な鉛酸蓄電池は、12ボルトシステム用に設計されていて、ほとんどの場合、2.1ボルト以下の6つのセルを有している。各セルは正と負の鉛電極を有しており、鉛金属と二酸化鉛の両方を備えている。充電状態の正の鉛電極は、二酸化鉛を含んだペーストを有しており、一方で、負の鉛電極は、スポンジ状の鉛のような材料で構成することができる。電解液は、ほとんどの場合、正負両電極を取り囲む6〜12モル濃度の硫酸である。
【0005】
従来の鉛酸蓄電池に固有の問題は、電池の機能寿命の間に、二酸化鉛がゆっくりと硫酸鉛に変化していくことである。硫酸鉛は、腐食生成物と考えられ、正極への電気エネルギーの移動を妨げる。この腐食作用のさらなる問題は、電池内における腐食物の蓄積による機械的影響である。具体的には、硫酸鉛が正極上に存在する二酸化鉛層を覆い、硫酸鉛腐食物は、電池の他の部材より密度が低いため、連続的に覆うことで、電池内で著しい体積膨張が生じる。
【0006】
この電池内の体積膨張は、再充電特性の低下のみならず、所望の電気的特性を大幅に下回る結果をもたらす。さらに問題なのは、体積増加が正極に著しい機械的ストレスを与えることで、電池内にセル電位の不足をもたらすのみならず、電極の変形ももたらす。従って、電池の性能が大幅に低下して、電池の所望の耐用年数を減少させる。
【0007】
鉛酸蓄電池の腐食問題の結果として、電池の性能を向上するための種々の試みがなされてきた。鉛酸蓄電池の耐久性を向上させるための1つの方法は、正極の耐腐食性を向上させることである。これを達成するために提案された1つの方法は、正極の組成に炭素材料を用いることであり、炭素は同じ動作条件下での鉛と較べて、ほとんど酸化とその結果としての腐食の影響を受けないからである。その一例が、Obushenkoが発明した米国特許No. 5,512,390に記載されている。Obushenko特許は、黒鉛板が正負両極として働き、その結果、従来の鉛酸蓄電池と比較して、大幅に軽量化できるので、この電池が従来の鉛酸蓄電池に較べて有利であると主張している。さらに、Obushenko特許の電池は、従来の鉛酸蓄電池の鉛電極に関係した腐食は起きないと主張している。
【0008】
鉛酸蓄電池の鉛の代わりに炭素を用いることで、従来の鉛酸蓄電池に関係した多くの問題が、多少とも解決する一方で、電池内で用いられる炭素の特定のモードに関係する問題が存在する。Obushenko特許は、黒鉛に関係した固有の問題に悩まされており、黒鉛は比較的平坦で、密度の高い材料であって、所望の電気特性を得るために必要なペーストの量に対して、利用可能な表面積が小さい。本質的に、炭素材料の表面積が増加すれば、より多くのエネルギーを移動でき、従って、より大きな放電と再充電特性が得られる。
【0009】
鉛酸蓄電池の鉛板を置き換えるための代替的な炭素構造は、炭素発泡体である。
【0010】
近年、炭素発泡体は、その低密度と、非常に高い又は低い熱伝導率とによって、かなりの関心を引き付けている。従来、炭素発泡体は2つの一般的ルートによって用意されてきた。高度に黒鉛化した発泡体は、高圧下で中間相ピッチを熱処理することによって製造されてきた。これらの発泡体は、高い熱的伝導率と電気的伝導率を有する傾向にある。例えば、米国特許番号6,033,506のKlett特許において、中間相ピッチは、1000psiの圧力にさらされながら加熱されて、90から200ミクロンの大きさの互いにつながった細孔を含む開放気泡型発泡体を形成する。Klett特許によれば、2800℃の熱処理の後に、発泡体の固形部分は、層間隔が0.366ナノメートルの高度に結晶化した黒鉛構造に成長する。この発泡体は、従来の発泡体より大きな圧縮強度を有すると言われている(密度0.53gm/ccに対して3.4MPa又は500psi)。
【0011】
Hardcastleらの特許(米国特許番号6,776,936)において、密度の範囲が0.678から1.5gm/ccの炭素発泡体が、ピッチを鋳型の中で圧力800psi以下で加熱することによって生成されている。この発泡体は、高度に黒鉛化され、高い熱伝導度(250W/mケルビン)を有するとされている。
【0012】
第43回International SAMPLE Meeting の議事録p756(1998)におけるH. J. Andersonらによる発表によれば、炭素発泡体は900℃での酸化性熱硬化と炭化された中間相ピッチによって生成される。この発泡体は、種々の形状を有し、直径が39から480ミクロンを超える互いにつながった細孔からなる開放気泡構造を有する。
【0013】
第45回SAMPLE Conferenceの議事録p293(2000)において、Rogerらは、石炭ベースの前駆体から、高圧下の熱処理によって、密度0.35〜0.45g/ccで、圧縮強度2000〜3000psi(従って、強度/密度比が約6000 psi/g/cc)の炭素発泡体の作成を記載している。これらの発泡体は、細孔の大きさが1000ミクロン以下の互いにつながった細孔からなる開放気泡構造を有する。前記中間相ピッチによる発泡体とは違って、これらは高度に黒鉛化されていない。最新の出版物において、このタイプの発泡体の特性が記載されている(High Performance Composites September 2004, pg.25)。この発泡体は、密度0.27 g/ccにおいて圧縮強度800 psiを有し、又は、強度対密度比3000 psi/g/ccを有する。
【0014】
Stillerら(米国特許番号5,888,469)は、水素処理した石炭抽出物の加圧熱処理による炭素発泡体の生成を記載している。この材料は、0.2〜0.4 gm/ccの密度に対し600 psiという高い圧縮強度(強度対密度比が1500 〜3000 psi/g/cc)を有している。 この発泡体は、黒鉛化されていないガラス状の発泡体より強固であることが提案されている。
【0015】
炭素発泡体は、ポリマー又はポリマー前駆体を直接炭化することによっても生成可能である。米国特許番号3,302,999においてMitchellは、ポリウレタン・ポリマー発泡体を空気中で200〜250℃に加熱し、続いて不活性雰囲気中で900℃で炭化することによる炭素発泡体の形成を議論している。この発泡体は、0.085〜0.387 g/ccの密度と130〜2040 psiの圧縮強度を有している(強度/密度比1529〜5271 psi/g/cc)。
【0016】
米国特許番号5,945,084において、Droegeは、水酸化ベンゼンとアルデヒド(フェノール樹脂前駆体)に由来した有機ゲルを熱処理することによる開放気泡型炭素発泡体の形成を記載している。この発泡体は、密度が0.3〜0.9 g/ccであって、大きさが2〜50 nmの小さなメソ細孔で構成されている。
【0017】
Mercuriら(第9回Carbon Conference 議事録pg.206 (1969))は、フェノール樹脂の熱分解によって、炭素発泡体を形成した。この発泡体の密度は0.1〜0.4 gm/ccであり、圧縮強度対密度比は、2380〜6611 psi/g/ccである。密度が0.25 gm/ccの炭素発泡体に対して、細孔は楕円形をしており、孔径は25〜75ミクロンである。
【0018】
Stankiewicz(米国特許番号6,103,149)は、制御されたアスペクト比0.6〜1.2の炭素発泡体を形成している。特許権所有者は、ユーザーがしばしば理想的なアスペクト比1.0の上質の特性を得るために完全に等方性の発泡体を要求する点を指摘している。開放気泡型炭素発泡体は、ポリウレタン発泡体を炭化樹脂に含浸させた後に、熱硬化と炭化処理によって生成される。元のポリウレタン発泡体の細孔アスペクト比は、1.3〜1.4から0.6〜1.2に変化する。
【0019】
米国特許番号6,979,513のKelleyらにおいて、炭素発泡体は化学電池の電極内の電極板として用いられている。炭素発泡体は導電体であって、炭化された木材構造からなり、炭化した木材の電流コレクタを形成している。
【0020】
続いて、Kellyらの特許は、化学活性材料が炭化した木材電流コレクタ上に設けられて、電池内の電極板として機能することを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
残念ながら、化学電池、特に鉛酸化学電池の電極として利用されてきた炭素発泡体は、かなり改良の余地があった。一般的に利用可能な炭素発泡体は、モノリシックではなく、この様な用途に要求される均一性や強度や密度を有していない。加えて、この発泡体は十分に高い多孔率や表面積を有しておらず、化学ペーストとして封じ込めるには不適当であった。従って、他の用途のみならず電気化学電池用途に適した発泡体を形成する制御可能なセル構造、強度、密度、そして強度対密度比を有する炭素発泡体材料が望まれている。実際には、炭素発泡体を少なくとも1つの電極板として利用するにおいて、高い強度と、より低い相対的密度と、約1500μオーム・メーター未満の電気伝導度とを備えた特性の組み合わせが、改良された電気化学電池に有用であることが判っている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、電池の性能を独創的に向上することのできる電気化学電池に用いられる炭素発泡体を提供して、新規な電池が自動車産業を含む種々の用途に利用することができるようにするものである。本発明の発泡体は、密度、圧縮強度、及び圧縮強度対密度比において、従来見られなかった相対的に軽量の特性を提供する。さらに、前述の特性に関して、発泡体の均一性と、その低い灰含有量も、電気化学電池において有用である。加えて、発泡体のモノリシックな性質と、相対的に球状の大きな細孔と小さな細孔の組み合わせからなるバイモーダル構造が、所望の大きさと構造で製造可能で、機械加工容易な炭素発泡体を提供する。
【0023】
より詳細には、本発明の炭素発泡体は、密度が約0.05〜0.4 g/ccで、圧縮強度が少なくとも約2000 psiである(例えばASTM C695により測定)。電池用途で用いられる場合に重要な特性は、強度対密度比であって、より低い密度がより多くの量のペーストを塗布できるからである。このような用途に対し、少なくとも約5000 psi/g/cc、より詳細には約7000 psi/g/cc未満の強度対密度比が、密度が約0.4 g/cc未満の場合に可能である。
【0024】
本発明の炭素発泡体は、比較的均一に電気化学ペーストを含むために、細孔が比較的均一に分配されていなければならない。加えて、細孔は比較的等方性でなければならず、即ち、細孔は相対的に球状で、平均して約1.0(これは完全な球状構造を表わす)から約1.5の間のアスペクト比、より好ましくは約1.25以下のアスペクト比を有する。アスペクト比は、細孔の長手方向寸法を短手方向寸法で割ることで求められる。
【0025】
この発泡体は、約65%〜約95%の全孔隙率、好ましくは約70%〜約95%の全孔隙率を有していなければならない。この高い全孔隙率を有することが、炭素発泡体電極としてより多くのペーストを含むことができるので、とても有利であることが判っている。好ましくは、バイモーダルな細孔分布実施例において、細孔の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%が、大きなサイズの細孔部分であって、約2%〜約10%が、小さなサイズの細孔部分である。
【0026】
炭素発泡体からなる電極板において、バイモーダルな細孔分布のより大きな細孔部分は、約10〜約150ミクロンの直径、より好ましくは約15〜約95ミクロンの直径、最も好ましくは約25〜約95ミクロンの直径を有するべきである。より小さな細孔部分は、約0.8〜約3.5ミクロン、より好ましくは約1〜約2ミクロンの直径を有する細孔で構成されるべきである。炭素発泡体のバイモーダルな性質は、開放気泡型発泡体と独立気泡型発泡体の中間体構造を提供し、従って、発泡体構造を維持しながら、発泡体の液体浸透性を制限している。
【0027】
有利なことに、電気化学電池、高分子発泡体ブロック、特にフェノール樹脂発泡体ブロックのための炭素発泡体を製造するためには、不活性又は酸素を排除した雰囲気下で、温度が約500℃、より好ましくは少なくとも約800℃から約3200℃の範囲で炭化して、電池用途に有益な炭素発泡体を形成する。
【0028】
加えて、新規の電極板は、相当に非導電性の炭素発泡体を有する。具体的には、利用される炭素発泡体は、約1500μΩ・メーター以下の導電性を有する。好ましくは、この発泡体は少なくとも約100μΩ・メーターの、より好ましくは少なくとも約800μΩ・メーターの導電性を有する。特に、炭素発泡体の比較的低い導電性は、電池のサンプリング結果や性能にほとんど影響を与えない。
【0029】
従って、本発明の目的は、例えば鉛酸蓄電池のような電池用途で利用可能な特性を有する炭素発泡体電極板を提供することである。
【0030】
本発明のもう1つの目的は、電気化学電池用途に十分な密度と、強度と、強度対密度比とを有する炭素発泡体電極板を提供することである。
【0031】
本発明のもう1つの目的は、電池用途において向上した性能を提供するための孔隙率とセル構造と配分を有する炭素発泡体電極板を提供することである。
【0032】
本発明のもう1つの目的は、所望の大きさと構造を有する炭素発泡体電極板を製造可能とし、容易に機械的加工を可能とし、又は結合してより大きな炭素発泡体構造を提供可能とすることである。
【0033】
本発明のもう1つの目的は、比較的非導電性であって、電気伝導度が約1500μΩ・メーター以下の炭素発泡体電極板を提供することである。
【0034】
以下の明細書を検討した当業者には自明の通り、これらの態様は、密度が約0.05 g/cc〜約0.4 g/ccで、圧縮強度が少なくとも約2000 psiで、孔隙率が約55 %〜約95%の炭素発泡体からなる炭素発泡体電極板を提供することによって達成することができる。この炭素発泡体電極板の細孔は、平均して約1.0〜1.5のアスペクト比を有する。また、炭素発泡体電極板は、電気伝導度が約1500μΩ・メーター以下の、比較的非導電性を有しているべきである。
【0035】
好ましくは、細孔の少なくとも約90%が、約10〜約150ミクロンの直径を有する。有利なことに、バイモーダルな炭素発泡体の実施例において、約2%〜約10%の細孔が、約1〜約2ミクロンの直径を有する。
【0036】
電極板として用いる炭素発泡体は、ポリマー発泡体、特にフェノール樹脂発泡体を、不活性又は酸素を排除した雰囲気下で炭化することによって製造可能である。このフェノール樹脂発泡体は、好ましくは少なくとも約100 psiの圧縮強度を有する。その代わりの方法として、発泡体はポリウレタン前駆体からも形成することができる。とにかく、発泡体は好ましい実施例において黒鉛化可能なものではない。
【0037】
前述の概要説明と後述の詳細な説明との両方が、本発明の実施例を提供し、自然に理解するための概説又は骨組みと、クレームされている発明の特徴を提供することを意図したものであることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る電極板に用いられる炭素発泡体は、例えばポリウレタン発泡体又はフェノール樹脂発泡体等の高分子発泡体から形成することができ、ここではフェノール樹脂発泡体を用いる。フェノール樹脂は、ポリマーやオリゴマーの大きなファミリーであって、フェノールとホルムアルデヒドの反応生成物に基づく幅広い構造からできている。フェノール樹脂は、酸性又は塩基性触媒の存在下で、フェノール又は置換フェノールとアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの化学反応によって生成される。フェノール樹脂発泡体は、開放気泡と独立気泡とからなる硬化系である。樹脂は、一般的にホルムアルデヒド対フェノールの比が、可変であるが好ましくは2:1で、水酸化ナトリウムを触媒として生成された水性レゾール樹脂である。尿素がホルムアルデヒドのスカベンジャーとして用いられるものの、未反応のフェノールとホルムアルデヒドの含有量は低くなければならない。
【0039】
電極板のための発泡体は、樹脂の水分含有量を調整して、界面活性剤(例えば、非イオン系エトキシ化物)と、発泡剤(例えば、ペンタン、塩化メチレン、又はクロロフルオロカーボン)と触媒(例えば、トルエンスルホン酸、又はフェノールスルホン酸)を加えることによって作成される。スルホン酸が反応を触媒する間に、発熱が発泡剤を樹脂内で乳化させ、発泡体を蒸発と膨張させる。界面活性剤が、開放気泡と独立気泡ユニットの比及びセルサイズを制御する。一括処理と連続処理の両方が用いられる。連続処理において、連続ポリウレタン発泡体製造に用いられるのと同様の装置が使用される。発泡体の特性は、主に密度とセル構造に依存している。
【0040】
好ましいフェノールは、レソルシノールであるが、しかしアルデヒドとの縮合生成物を形成可能な他の種類のフェノールも利用することができる。この手のフェノールとしては、一価フェノールや多価フェノール、ピロカテコール、ハイドロキノン、アルキル置換フェノール、例えば、クレゾール又はキシレノール酸、多核一価フェノール又は多価フェノール、例えば、ナフトール、p.p'-ジハイドレキシジフェニルジメチルメタン又はハイドロキジアントラセンが含まれる。
【0041】
発泡体出発原料を作成するために用いられるフェノール類は、フェノールと同様にアルデヒドと反応可能な非フェノール系化合物との混合剤としても用いることができる。
【0042】
溶液中で用いるのに好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒドである。他の適切なアルデヒド類には、同様の方法でフェノール類と反応するものが含まれる。例えば、アセトアルデヒドや、ベンズアルデヒドである。
【0043】
概して、本発明のプロセスで使用可能なフェノール類やアリデヒド類は、米国特許番号3,960,761と5,047,225に記載されており、その開示内容は、参照することにより本書に組み込まれる。
【0044】
本発明の炭素発泡体の製造で出発原料として用いられる高分子発泡体は、電極板として用いられる炭素発泡体の所望の最終密度を反映した初期密度を有している必要がある。換言すれば、この高分子発泡体は、約0.1〜約0.6 g/ccの密度、より好ましくは約0.1〜約0.4 g/ccの密度を有している必要がある。高分子発泡体のセル構造は、孔隙率が約65%〜約95%で、比較的高圧縮強度、即ち、少なくとも約100 psi〜約300 psiの強度が必要である。
【0045】
高分子発泡体を炭素発泡体に転換するために、発泡体は、不活性又は酸素を排除した雰囲気、例えば窒素中で、約500℃から、より好ましくは少なくとも約800℃から、約3200℃未満の温度で加熱することによって炭化処理される。高分子発泡体は炭化処理中に約50%以上も縮小するので、加熱速度は、数日かけて所望の温度になるように制御される必要がある。効率的な炭化処理のためには、高分子発泡体を均一に加熱するために相当の注意が必要である。
【0046】
不活性又は酸素排除した雰囲気下で加熱処理した高分子発泡体を用いることによって、非黒鉛化ガラス質炭素発泡体が得られ、その炭素発泡体は、出発材料である高分子発泡体と略同一の密度を有するが、圧縮強度は少なくとも約2000 psiで、特に、強度対密度比は少なくとも約5000 psi/g/cc、より好ましくは少なくとも約7000 psiであり、一方で非導電体である。さらに、炭素発泡体は等方性の細孔の比較的均一な分布を有しており、細孔は平均して約1.0〜約1.5のアスペクト比、より好ましくは約1.0〜約1.25のアスペクト比を有している。
【0047】
電極板用に得られた炭素発泡体は、約65%〜約95%の総孔隙率を有する。1つの実施例において、炭素発泡体は、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%の細孔が、約10〜約150ミクロンの直径を有し、一方で、約2%〜約10%の細孔が、約0.8〜約3.5ミクロンの直径を有するというバイモーダル性を有する。電極用炭素発泡体のこのバイモーダルな性質は、開放気泡発泡体と独立気泡発泡体の間の中間体構造を提供し、発泡体構造を維持しながら、発泡体の液体浸透性を制限する。1つの実施例において、少なくとも約95%の細孔が、約25〜約95ミクロンの直径を有する。
【0048】
電極板として用いられる炭素発泡体は、正電極としても負電極としても機能する。それぞれの電流コネクタは、電流を電池とやりとりする電気的接続点を有し、電池を用いて対象物に電気エネルギーを提供する間に、電池を充放電する。
【0049】
別の実施例において、電気的接続点は金属や導電性樹脂や導電性プラスチックや導電性セラミックやこれらの組み合わせ等の導電性材料によって形成することができる。
【0050】
電極板は、電気化学電池において使用するために種々の形状をとることができる。好ましい実施例において、炭素発泡体は、各電極板に対して、狭い幅の矩形形状である。電池の種類と特定の用途とに依存して、対応する電池に対して形状が多様化する。また、本発明の電極板用炭素発泡体の新規な特徴の1つは、炭素発泡体を所望の構造に容易に機械加工できることである。また、別な実施例において、フェノール樹脂発泡体前駆体を、電極板に要求される所望の大きさと形状の炭素発泡体に対応した寸法に設計することができる。
【0051】
電気化学電池を構築するための追加の要素は、化学的に活性な状態のペーストであって、化学エネルギーから電気エネルギーを創出するための必要な手段を提供する。このペーストは、炭素発泡体の細孔に浸透するように、炭素発泡体電極板の表面に塗布される。有利なことに、フェノール樹脂発泡体由来の炭素発泡体で形成された新規な電極板は、大きな表面積と同様に、非常に高い孔隙率と共に極端に低い密度を有している。従って、活性ペーストを、従来の木材をベースにした炭素発泡体と比較して大量に、炭素発泡体で形成された電極板に塗布することができる。また、フェノール樹脂ベースの炭素発泡体は、低い密度と大きな表面積を有しているのと同時に、耐久性のある電池に必要な機械的及び構造的特性を有しているので、所望の量の反応性ペーストを炭素発泡体に塗布することができる。
【0052】
一般的な反応性ペーストには、種々の材料の酸化物が含まれる。鉛酸蓄電池で従来使われてきた標準的な酸化物は、酸化鉛である。反応性ペーストは、炭素発泡体電極に良く作用する。この反応性ペーストは、電気システムへの充放電エネルギーの両方を含む電池容量に関与している。また、より良好な化学的転移を促進するために、機械的要素と同様に、様々な添加物をペーストに加えて、電池の寿命をさらに長くすることができる。低い密度と高い孔隙率と大きな表面積を有するフェノール樹脂由来の炭素発泡体を使用することのもう1つの長所は、反応性ペーストが炭素発泡体電極板の細孔に深く浸透して、従来の鉛酸蓄電池の鉛電極に使うペーストより、電極板により良好に固着することである。これによって、より効率的な電気的転移が得られ、ペーストが炭素発泡体電極板から容易に除去されないことから、機械的ストレスに晒された時の電池の耐久性を向上させることができる。
【0053】
電池は、特定の電池化学に対応した電解液を有する。一般的に、鉛酸蓄電池と酸化鉛の活性ペーストを用いた電池では、硫酸電解液を利用している。鉛電極を用いた従来の鉛酸蓄電池では、一般的に37%硫酸電解液を用いており、それはざっと約6モル濃度〜約12モル濃度であった。別の実施例において、実質的に硫酸の水溶液より高い粘度を有するジェルからなる電解液を利用することができる。また、本発明は、硫酸電解液や電池の特定の種類に依存した他の酸類に限定されず、そして、前述の反応性ペーストは、新規の炭素発泡体電極板に対して利用できる。
【0054】
フェノール樹脂ベースの非導電性炭素発泡体電極板を備えた電池の1つの実施例は、炭素発泡体電極をハウジング中に挿入して、電極板を電解液で取り囲むことで実施される。電池を構築するに先立って、正電極と少なくとも1つの負電極とが形成されるように、炭素発泡体電極板は変形される。具体的には、正電極と負電極を形成する時に、各プレートは鉛ペーストに含浸される際に異なる扱いを受ける。例えば、正の電極板は、酸化鉛ペーストの一部が硫酸鉛に変化する条件下に置かれる。続いて負の電極板は、しばしば未処理のまま放置されるが、酸化鉛ペーストを含浸したフェノール樹脂ベースの炭素発泡体で構成される。
【0055】
フェノール樹脂ベースの炭素発泡体電極を用いた稼働中の電池において、電池の放電時には、2つの化学反応が生じている。第一の反応は、負電極において、過剰な電子が生成され、第二の反応は、正電極において、電子の欠乏が生じることである。電池の放電時には、電子は電池がパワーを提供している装置に向かって流れ、反応性ペーストを含浸した両電極板は、硫酸が電解液の場合に、硫酸塩を析出する。反応性ペーストとして酸化鉛を用いた場合には、両電極は硫酸鉛を蓄積する。同時に、水が電解液内で生成され、電池は更なる動作のために充電が必要になる。
【0056】
一般的な鉛酸蓄電池と同様に、上記反応は新規の炭素発泡体を用いた電池においても可逆的である。従って、充電プロセスの間、反応は可逆的であって、正電極は硫酸鉛の代わりに酸化物を蓄積する。また、非導電性のフェノール樹脂ベースの炭素発泡体を用いた新規の電極板で形成された電池は、直列にセルを接続することができる。具体的には、各電池の単一ユニットは1つのセルであって、その電圧特性はセル内で生じる電気化学反応によって決定される。またさらに、各セルは多極電極を有することができ、正負両電極は、電気エネルギーを受け取る装置を動作するための所要の電圧を有する。
【0057】
非導電性でもあるフェノール樹脂ベースの炭素発泡体を用いた新規の電極板の有利な点は、複数ある。第一に、フェノール樹脂ベースの炭素発泡体の優れた強度と組み合わされた低い密度と大きな表面積は、従来の鉛酸蓄電池より軽量で、より大きな電気的出力を供給する電池を提供する。また、電極板の細孔に含浸した反応性ペーストは、従来の鉛酸蓄電池や従来の炭素発泡体電池と比較して、ストレス下で容易に除去されないので、新規の電極板は機械的ストレスに関してより耐久性がある。またさらに、電極板の炭素発泡体は、従来の鉛酸蓄電池より化学的腐食に対して耐性があるので、フェノール樹脂ベースの炭素発泡体電極板を有する電池の耐用年数は、著しく長い。
【0058】
従って、本発明を実施することによって、従来認識されていなかった特性を有する非導電性のフェノール樹脂ベースの炭素発泡体を用いた電極板を備えた電池が作成される。この新規の炭素発泡体電極板は、極めて高い強度対密度比を示し、大きな孔隙率と、大きな表面積と、低い密度を有し、電気化学電池として独創的に効率的である。
【0059】
本出願において、引用された特許や文献の開示内容は、参照することにより本書に組み込まれる。
【0060】
上述の記載は、当業者が本発明を実施することが可能となることを意図したものである。本明細書を読むことによって当業者に明らかになるすべての可能な変形例を詳述することを意図したものではない。しかし、このような変形例は、以下の請求項で定義された本発明の範囲に含まれることを意図している。請求項は、内容が具体的に正反対のものを示していない限り、本発明の目的に合致するために有効な構成や手順における明示された要素やステップをカバーするように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1500μオーム・メーター以下の電気伝導度及び少なくとも65%の孔隙率を有する非導電性炭素発泡体と、電気化学的ペーストと、からなる電池用電極板であって、
前記電気化学的ペーストが、前記炭素発泡体の外側に配されていると共に、少なくとも
前記炭素発泡体内の細孔の幾つかに含まれていることを特徴とする電極板。
【請求項2】
前記炭素発泡体が、0.05〜0.4g/ccの密度を有していると共に、少なくとも2000 psiの圧縮強度を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極板。
【請求項3】
前記炭素発泡体が、65〜95%の孔隙率を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極板。
【請求項4】
前記細孔の少なくとも90%が、10〜150ミクロンの直径を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電極板。
【請求項5】
閉じ込め装置と、少なくとも2枚のプレートと、前記閉じ込め装置の中に収容された電解材料と、前記プレートの少なくとも1つに設けられた電気化学的ペーストと、を有する電池において、
前記電気化学的サプリメントが設けられた少なくとも一つの前記プレートが、電気伝導度が1500μオーム・メーター以下の非導電性炭素発泡体を有していることを特徴とする電池。
【請求項6】
前記炭素発泡体が、少なくとも100μオーム・メーターの電気伝導度を有していることを特徴とする請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記炭素発泡体が、0.05〜0.4 g/ccの密度を有していることを特徴とする請求項5又は6に記載の電池。
【請求項8】
前記炭素発泡体が、3.0ダルシー以下の透過率を有していることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の電池。

【公表番号】特表2010−510630(P2010−510630A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537348(P2009−537348)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/084767
【国際公開番号】WO2008/064052
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507393218)グラフテック、インターナショナル、ホールディングス、インコーポレーテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】GrafTech International Holdings Inc.
【Fターム(参考)】