説明

非常電源用バッテリーの寿命判定システム

【課題】エレベータの個々の条件の相違に応じた最適なバッテリー寿命予測判定手法を用いることにより寿命判定精度を向上させる。
【解決手段】操作釦19gの操作により判定開始指令手段19fが寿命判定開始指令を測定データ収集手段19a及びデータ比較判定手段19cに出力する。測定データ収集手段19aは、非常電源用バッテリー16に関する複数種類の測定データを収集する。データ比較判定手段19cは、比較対象データ選択手段19eが選択したデータ種類に係る測定データ収集手段19aからの測定データと、判定基準データ格納部19bから取り出した判定基準データとを比較して寿命判定を行う。判定結果表示手段19dは、この判定結果を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常電源用バッテリーの寿命判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、主電源(主として商用交流電源)からの電力供給により、インバータ等の電力変換装置が巻上機を運転制御し、巻上機の駆動力により乗りかごが昇降路内を昇降動するようになっている。したがって、停電事故が発生すると主電源からの電力供給が遮断されるため、エレベータの運転は停止される。
【0003】
しかし、通常のエレベータシステムではこのような場合、非常電源用バッテリーが働き、停電時自動着床機能により乗りかごを最寄り階まで移動して乗客を救出し、閉じ込め事故が発生するのを回避するようになっている。したがって、非常電源用バッテリーは非常に重要な役割を担っており、いつ停電事故が発生しても救出運転が可能なように、非常電源用バッテリーに対しては常に充分な充電が行われていなければならない。
【0004】
ところで、非常電源用バッテリーは、通常運転時には商用交流電源からの交流電力を変換した直流電力により充電され蓄電されている。しかし、エレベータ稼働後一定以上の期間が経過すると、経年劣化により充分な充電ができなくなり、やがて非常電源用バッテリーの寿命が完全に尽きると救出運転ができなくなる。したがって、非常電源用バッテリーについては、その寿命期間を予測判定し、寿命が尽きる前に新品と交換する必要がある。
【0005】
この寿命期間の予測判定を正確に行うのは困難であるため、以前は、バッテリー取付時点から一定期間(予測寿命期間よりも充分に短い期間)経過後には一律に全て新品に交換するようなメンテナンス処理が一般的に行われていた。しかし、このように一律に全て新品に交換するメンテナンス処理ではメンテナンス費用の増大を招くため、近時は極力正確な寿命予測判定を行うことが試みられている。
【0006】
従来のバッテリー寿命の予測判定手法としては、例えば特許文献1,2に係る技術が開示されている。特許文献1は、救出運転毎のバッテリー放電電流検出値から基準放電容量での放電回数を演算して積算し、この積算放電回数と設定寿命回数とを比較することによりバッテリー寿命到来時点を求めようとするものである。
【0007】
特許文献2は、バッテリーの雰囲気温度を複数段階に区分しておき、バッテリーが晒された各区分毎の累積時間からバッテリーの寿命進行度を求めようとするものである。
【特許文献1】特開平5−139651号公報
【特許文献2】特開2006−312528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、実際にどのようなバッテリー寿命予測手法が適しているかはエレベータの個々の条件によって大きく異なってくる。例えば、エレベータの用途、エレベータの設置地域、バッテリー容量の大きさ、バッテリーの種類等によって最適手法は異なり、更に、ある程度以上の期間にわたる実績値の積み重ねがないと、そのエレベータにとっての最適予測手法は定まらないものと考えられる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの個々の条件の相違に応じた最適なバッテリー寿命予測判定手法を用いるようにし、これにより寿命判定精度を向上させることが可能な非常電源用バッテリーの寿命判定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するための手段として、非常電源用バッテリーについての寿命判定開始指令を出力する判定開始指令手段と、寿命判定開始指令により非常電源用バッテリーに関する複数種類の測定データを収集する測定データ収集手段と、非常電源用バッテリーの寿命判定を行う際に用いる複数種類の判定基準データが格納されている判定基準データ格納部と、非常電源用バッテリーの寿命判定の基礎とするデータ種類を選択する比較対象データ選択手段と、寿命判定開始指令により測定データ収集手段及び判定基準データ格納部から比較対象データ選択手段が選択したデータ種類に係るデータを入力し、これらのデータの比較に基づき非常電源用バッテリーの寿命判定を行うデータ比較判定手段と、データ比較判定手段による判定結果を表示する判定結果表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレベータの個々の条件の相違に応じた最適なバッテリー寿命予測判定手法を用いるようにし、これにより寿命判定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る非常電源用バッテリーの寿命判定システムの構成図である。主電源である3相の商用交流電源1からの交流電力は接点2を介して整流回路3に入力される。整流回路3に入力された交流電力は直流電力に変換され、平滑コンデンサ4により平滑化されてインバータ装置5に出力される。インバータ装置5は、この直流電力を可変電圧可変周波数制御された交流電力に変換し、これを巻上機6に供給するようになっている。
【0013】
巻上機6にはロープ7が巻回されており、ロープ7の一端側及び他端側にはそれぞれ乗りかご8及びカウンタウェイト9が取り付けられている。そして、インバータ装置5からの交流電力の供給により巻上機6が運転制御され、巻上機6の駆動力により乗りかご8及びカウンタウェイト9が昇降路内を互いに反対方向に昇降動するようになっている。
【0014】
また、接点2と整流回路3との間には、制御電源装置10のケーブルの一端側が接続され、商用交流電源1からの電力がこの制御電源装置10に入力される。そして、この制御電源装置10を電源としてエレベータ制御装置11がエレベータの運転制御を行うようになっている。
【0015】
商用交流電源1と接点2との間には、停電時自動着床装置12の入力ケーブルの一端側が接続されている。この停電時自動着床装置12は停電検出回路13を有しており、入力ケーブルの他端側がこの停電検出回路13に接続されている。停電検出回路13は、商用交流電源1の停電事故を検出した場合にエレベータ制御装置11に対して停電検出信号を出力すると共に、停電事故から復電した場合にエレベータ制御装置11に対して復電検出信号を出力するようになっている。
【0016】
入力ケーブルの他端側は、更に、接点14を介して充電回路15に接続されている。そして、充電回路15は商用交流電源1からの電源入力に基づき非常電源用バッテリー16に対する充電を行う。この充電により非常電源用バッテリー16に蓄えられた直流電力は出力回路17により所定電圧の交流電力に変換され、接点18を介して整流回路3に供給されるようになっている。
【0017】
そして、上記の非常電源用バッテリー16の寿命判定に用いる測定データはバッテリー寿命判定装置19により収集され、バッテリー寿命判定装置19はこの収集した測定データに基づき非常電源用バッテリー16の寿命判定を行うようになっている。
【0018】
ここで、バッテリー寿命判定装置19を除く図1の各構成要素の概略動作につき説明しておく。まず、通常運転時は接点2,14がオン、接点18がオフになっている。したがって、商用交流電源1からの交流電力は整流回路3に入力され、この整流回路3により整流された直流電力がインバータ装置5に入力される。インバータ装置5は、この入力した直流電力を可変電圧可変周波数制御された交流電力に変換し、これを巻上機6に供給する。そして、巻上機6の駆動力により乗りかご8及びカウンタウェイト9が昇降路内を昇降動する。
【0019】
また、商用交流電源1からの交流電力は制御電源装置10にも入力され、エレベータ制御装置11はこの制御電源装置10を電源としてエレベータの運転制御動作を行う。更に、充電回路15にも商用交流電源1からの交流電力が入力され、充電回路15はこの入力に基づき非常電源用バッテリー16に対する充電動作を行う。
【0020】
上記のような通常運転が行われている間に停電事故が発生して商用交流電源1からの交流電力が遮断され、乗りかご8が階床間で停止したとする。すると、停電検出回路13は、この停電事故発生についての検出信号をエレベータ制御装置11に出力する。また、停電検出回路13はこれと同時に、それまでオンになっていた接点2,14をオフにすると共に、それまでオフになっていた接点18をオンにする。したがって、商用交流電源1はエレベータシステムから切り離されると共に、これに代わって非常電源用バッテリー16に蓄積されている電力が出力回路17を経由して整流回路3及び制御電源装置10に供給される。
【0021】
これにより、エレベータ制御装置11は、停電検出回路13からの停電検出信号を入力すると直ちに、停電時自動着床制御を実行し、階床間で停止状態にある乗りかご8を最寄り階まで移動させ、乗りかご8内の乗客をかご外へ救出することができる。
【0022】
なお、停電時自動着床制御の実行中に、商用交流電源1が復帰し、停電検出回路13が復電を検出したとしても、エレベータ制御装置11は、非常電源用バッテリー16からの電力供給に基づく停電時自動着床制御をそのまま続行して完了させる。このとき、停電検出回路13は接点2をオフ状態に維持しておく。したがって、商用交流電源1から供給される電力と、出力回路17から供給される電力との混蝕は回避される。
【0023】
図2は、図1におけるバッテリー寿命判定装置19の内部構成を示すブロック図である。この図に示すように、バッテリー寿命判定装置19は、測定データ収集手段19a、判定基準データ格納部19b、データ比較判定手段19c、判定結果表示手段19d、比較対象データ選択手段19e、判定開始指令手段19f、操作釦19g、及び運転要求検出手段19hなどを含んで構成されている。
【0024】
測定データ収集手段19aは、判定開始指令手段19fからの寿命判定開始指令を入力すると、非常電源用バッテリー16に関する複数種類の測定データを収集するようになっている。これら複数種類の測定データとしては、例えば、バッテリー電圧、バッテリー温度、バッテリー内部抵抗、バッテリー電圧降下波形などがある。
【0025】
判定基準データ格納部19bには、非常電源用バッテリー16の寿命判定を行う際に用いる複数種類の判定基準データ、すなわち測定データ収集手段19aが収集する複数種類の測定データの比較対象となるべきデータが格納されている。これらの判定基準データは、所定の演算及び過去の判定実績に基づき採用されたものであり、適宜最適値に更新されるものである。
【0026】
データ比較判定手段19cは、測定データ収集手段19aからの測定データ及び判定基準データ格納部19bからの判定基準データを入力し、これらのデータの比較に基づき非常電源用バッテリー16の寿命判定を行うものである。例えば、データ種類がバッテリー電圧の場合、充電開始してから一定時間経過後の測定電圧値が判定基準電圧値よりも一定割合以下である場合はバッテリー交換時期になっていると判定する。あるいは、データ種類がバッテリー温度の場合、非常電源用バッテリー16の所定個所に取り付けた温度センサからの測定温度が判定基準温度よりも上回った時間を累積し、その累積時間が判定基準時間を超えているか否かでバッテリー交換時期であるか否かを判定する。
【0027】
但し、データ比較判定手段19cは、全てのデータ種類について測定データと判定基準データとの比較を行うとは限らず、比較対象データ選択手段19eが寿命判定の基礎とすべきものとして選択したデータ種類のみについて比較を行うようになっている。この比較対象データ選択手段19eがどのようなデータ種類を選択するかについては、保守作業員等が手動操作によって決定することが可能であるが、後述するように、学習機能に基づき決定がなされるように設定することも可能である。
【0028】
判定結果表示手段19dは、データ比較判定手段19cによる判定結果を表示するものである。この判定結果表示手段19dは、例えば、3種類の異なる表示色のLEDランプを有しており、それぞれのLEDランプに「要交換」、「あと少しで交換」、「交換不要」などのメッセージを対応させておくことができる。あるいは、LEDランプの代わりに小さな液晶表示画面を設け、画面上に上記のメッセージを直接表示させるようにしてもよい。
【0029】
判定開始指令手段19fは、非常電源用バッテリー16についての寿命判定開始指令を測定データ収集手段19a及びデータ比較判定手段19cに対して出力するものである。測定データ収集手段19aは、この寿命判定開始指令を入力すると、非常電源用バッテリー16に関する測定データの収集を開始する。また、データ比較判定手段19cは、この寿命判定開始指令を入力した後、充分なデータ量が収集された段階、あるいは充分な時間が経過した段階で寿命判定を行うことになる。
【0030】
判定開始指令手段19fの寿命判定開始指令の出力は、操作釦19gを保守作業員等が操作することにより行わせることができる。そして、判定開始指令手段19fは、寿命判定開始指令を出力する際には、同時に接点14をオンからオフに切り換え、充電回路15に非常電源用バッテリー16に対する充電動作を停止させるようになっている。
【0031】
また、判定開始指令手段19fには運転要求検出手段19hからの運転要求検出信号が入力されるようになっている。運転要求が検出される場合とは、例えば、乗場呼び釦が押された場合、あるいは、セキュリティシステムに連動するエレベータシステムにおいて玄関入口ドアの開放により乗場呼びが自動的になされたような場合である。このような運転要求検出信号が入力されると、判定開始指令手段19fは、オフになっている接点14をオンに切り換えると共に、測定データ収集手段19a及びデータ比較判定手段19cに寿命判定動作中断指令を出力するようになっている。
【0032】
次に、図2の動作につき説明する。なお、比較対象データ選択手段19eによるデータ種類の選択は予め行われているものとする。いま、メンテナンス作業を行っている保守作業員が操作釦19gを押すと、判定開始指令手段19fは、寿命判定開始指令を測定データ収集手段19a及びデータ比較判定手段19cに出力すると共に、接点14をオフに切り換える。
【0033】
判定開始指令手段19fからの寿命判定開始指令を入力すると、測定データ収集手段19aは測定データの収集を開始し、収集した測定データをデータ比較判定手段19cに出力する。データ比較判定手段19cは、入力した測定データのうち比較対象データ選択手段19eにより選択されているデータ種類に係る測定データと、判定基準データ格納部19bから取り出した判定基準データとを比較して寿命判定を実施する。判定結果表示手段19dは、この判定結果を前述したLEDランプ又は液晶表示画面等により表示する。
【0034】
保守作業員は、判定結果表示手段19dに表示された判定結果により、非常電源用バッテリー16が間もなく寿命を迎えるので交換の必要があること、あるいは、寿命を迎えるまでにはまだ充分な期間があるので交換が不要であることなどの情報を直ちに得ることができる。
【0035】
また、バッテリー寿命判定装置19が上記のような寿命判定動作をエレベータの停止中に行っている途中で、運転要求検出手段19hが運転要求を検出したとする。すると、判定開始指令手段19fは中断指令を測定データ収集手段19a及びデータ比較判定手段19cに出力すると共に、接点14をオフからオンに切り換える。このように接点14をオンに切り換えるのは、エレベータの通常運転中は常に非常電源用バッテリー16を最適の状態に維持しておくのが好ましいからである。
【0036】
データ比較判定手段19cは内部に記憶部を有しており、中断指令を入力するとそれまでの途中データを一時的に記憶する。そして、乗りかご8が目的階床に到着した後、玄関階で戸開待機状態に入り、エレベータの運転が停止したら、判定開始指令手段19fは寿命判定開始指令を再度出力すると共に、接点14を再度オフに切り換える。これにより、測定データ収集手段19aは測定データの収集を再開し、データ比較判定手段19cは記憶していたデータと新たに測定データ収集手段19aから入力した測定データとを用いて判定動作を行う。
【0037】
上述した本実施形態に係る非常電源用バッテリーの寿命判定システムによれば、データ比較判定手段19cは、測定データ収集手段19a及び判定基準データ格納部19bから入力したデータのうち、比較対象データ選択手段19eが選択したデータ種類に係るもののみを用いてバッテリーの寿命判定を行う構成としているので、エレベータの個々の条件の相違に応じた最適なバッテリー寿命予測判定手法を用いることができ、したがって、寿命判定精度を向上させることが可能になる。
【0038】
なお、比較対象データ選択手段19eが選択したデータ種類が例えば電圧降下波形である場合、非常電源用バッテリー16にある程度の負荷を加えた状態で寿命判定を行うのが好ましい。このような場合、図1及び図2では詳しい構成は省略しているが、エレベータ制御装置11内のうちの利用可能な負荷に出力回路17を介して非常電源用バッテリー16を接続する構成とすることが可能である。
【0039】
図3は、本発明の他の実施形態の要部構成を示すブロック図である。図3が図2と異なる点は、判定開始タイマ手段20a及び判定結果送信手段20bを有する遠隔保守装置20と、判定結果学習手段21aを有する中央監視装置21とが付加されており、更に、バッテリー寿命判定装置19内に判定基準データ更新手段19iが付加されると共に、比較対象データ選択手段19eの内部にデータ重要度決定手段19e1が設けられている点などである。遠隔保守装置20はエレベータが設置されている建物内に取り付けられているものであり、中央監視装置21はエレベータ保守会社の監視センターに設けられているものである。そして、判定結果送信手段20bと判定結果学習手段21aとは公衆回線により接続されている。
【0040】
判定開始タイマ手段20aは、タイマ機能又はカレンダ機能に基づき、判定開始指令手段19fが判定開始指令を出力するタイミングについて予め設定できるようにするためのものである。そして、判定開始タイマ手段20aは、この設定タイミングが到来した時点で判定開始指令手段19fに対して判定開始指令を出力すべきことを指示する。したがって、保守作業員が手動により操作釦19gを操作しなくても、自動的に所定タイミングで非常電源用バッテリー16の寿命判定を確実に実施することが可能になる。
【0041】
また、本実施形態におけるデータ比較判定手段19cは、判定結果を判定結果表示手段19dに出力すると共に、判定結果送信手段20bにも出力するようになっている。判定結果送信手段20bは、この入力した判定結果を公衆回線を介して判定結果学習手段21aに送信する。
【0042】
判定結果学習手段21aは、受信した判定結果について、例えばファジー演算手法、遺伝的アルゴリズム手法、自己組織化マップ手法などの学習アルゴリズムを用いて学習する。そして、判定結果学習手段21aは、この学習結果を判定基準データ更新手段19iに送信する。判定基準データ更新手段19iは、受信した学習結果に基づき、判定基準データ格納部19bに格納されている判定基準データを最適な値に更新する。
【0043】
また、本実施形態では、比較対象データ選択手段19eが判定結果学習手段21aからの学習結果を入力し、これにより最適なデータ種類を選択できるようになっている。更に、本実施形態の比較対象データ選択手段19eは内部にデータ重要度決定手段19e1を有しており、選択したデータ種類が複数ある場合には、これらについてデータ重要度を決定するようになっている。
【0044】
そして、データ比較判定手段19cは、複数種類のデータの比較に基づき寿命判定を行った際、用いたデータ種類によって異なる結果の判定が算出されるような場合には、データ重要度決定手段19e1が決定したデータ重要度が上位の方のデータ種類を用いて得られる判定結果を採用し、これを出力するようになっている。
【0045】
このように、図3の実施形態によれば、タイマ機能又はカレンダ機能を有する遠隔保守装置20内の判定開始タイマ手段20aにより、判定開始指令手段19fが判定開始指令を出力するタイミングについて予め設定できるようにしているので、保守作業員が手動により操作釦19gを操作しなくても、自動的に所定タイミングで非常電源用バッテリー16の寿命判定を確実に実施することができる。
【0046】
また、中央監視装置21内の判定結果学習手段21aにより、判定基準データ更新手段19iが判定基準データ格納部19bに格納されている判定基準データを最適な値に更新することができる。
【0047】
更に、比較対象データ選択手段19eにデータ重要度決定手段19e1を設け、複数種類のデータ種類に対してデータ重要度に関する優先順位をつけているので、データ種類によって異なる判定結果が導かれるような場合は、データ重要度が高い方のデータ種類に基づく判定結果を採用するようにしている。したがって、精度及び信頼性がより向上した寿命判定を実施することが可能になっている。
【0048】
なお、図3に示した構成では、判定開始タイマ手段20aは遠隔保守装置20内に設けられ、判定結果学習手段21aは中央監視装置21内に設けられているが、これらのいずれか又は双方をバッテリー寿命判定装置19内に設けた構成とすることも可能である。
【0049】
また、図3では図面が煩雑になるのを避けるため、判定結果学習手段21aからの学習結果のデータが判定基準データ更新手段19i及びデータ重要度決定手段19e1に直接送信されるように図示しているが、実際には遠隔保守装置20を経由して送信されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る非常電源用バッテリーの寿命判定システムの構成図。
【図2】図1におけるバッテリー寿命判定装置19の内部構成を示すブロック図。
【図3】本発明の他の実施形態の要部構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0051】
1:商用交流電源
2:接点
3:整流回路
4:平滑コンデンサ
5:インバータ装置
6:巻上機
7:ロープ
8:乗りかご
9:カウンタウェイト
10:制御電源装置
11:エレベータ制御装置
12:停電時自動着床装置
13:停電検出回路
14:接点
15:充電回路
16:非常電源用バッテリー
17:出力回路
18:接点
19:バッテリー寿命判定装置
19a:測定データ収集手段
19b:判定基準データ格納部
19c:データ比較判定手段
19d:判定結果表示手段
19e:比較対象データ選択手段
19e1:データ重要度決定手段
19f:判定開始指令手段
19g:操作釦
19h:運転要求検出手段
19i:判定基準データ更新手段
20:遠隔保守装置
20a:判定開始タイマ手段
20b:判定結果送信手段
21:中央監視装置
21a:判定結果学習手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常電源用バッテリーについての寿命判定開始指令を出力する判定開始指令手段と、
前記寿命判定開始指令により非常電源用バッテリーに関する複数種類の測定データを収集する測定データ収集手段と、
非常電源用バッテリーの寿命判定を行う際に用いる複数種類の判定基準データが格納されている判定基準データ格納部と、
非常電源用バッテリーの寿命判定の基礎とするデータ種類を選択する比較対象データ選択手段と、
前記寿命判定開始指令により前記測定データ収集手段及び判定基準データ格納部から前記比較対象データ選択手段が選択したデータ種類に係るデータを入力し、これらのデータの比較に基づき非常電源用バッテリーの寿命判定を行うデータ比較判定手段と、
前記データ比較判定手段による判定結果を表示する判定結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする非常電源用バッテリー寿命判定システム。
【請求項2】
前記非常電源用バッテリーの寿命判定の基礎とするデータ種類には、少なくともバッテリー電圧、バッテリー温度、バッテリー内部抵抗、バッテリー電圧降下波形のいずれかが含まれる、
ことを特徴とする請求項1記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項3】
前記非常電源用バッテリーに対する寿命判定処理はエレベータ停止中に実施されるものであり、その実施中はバッテリー充電回路をエレベータ主電源から切り離すようにし、エレベータ運転要求が発生した場合には寿命判定処理を中断してバッテリー充電回路をエレベータ主電源に再接続するようにする、
ことを特徴とする請求項1記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項4】
前記データ比較判定手段による判定結果をエレベータ監視センターの中央監視装置に伝送する遠隔保守装置を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項5】
前記データ比較判定手段の判定結果を学習アルゴリズムに基づき学習する判定結果学習手段と、
前記判定結果学習手段の学習結果に基づき前記判定基準データ格納部に格納されている判定基準データを更新する判定基準データ更新手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項6】
前記比較対象データ選択手段は、前記判定結果学習手段の学習結果に基づき、前記非常電源用バッテリーの寿命判定の基礎とするデータ種類を選択する、
ことを特徴とする請求項5記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項7】
前記比較対象データ選択手段は、選択したデータ種類が複数ある場合に、前記判定結果学習手段の学習結果に基づき、データ重要度を決定するデータ重要度決定手段を有し、
前記データ比較判定手段は、複数種類のデータの比較に基づき寿命判定を行った際、データ種類によって異なる判定が算出される場合には、前記データ重要度決定手段が決定したデータ重要度が上位のデータ種類を用いて得られる判定結果を出力する、
ことを特徴とする請求項5記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。
【請求項8】
前記判定開始指令手段が判定開始指令を出力するタイミングが予め設定されており、この設定タイミングが到来した時点で判定開始指令手段に対して判定開始指令の出力を指示する判定開始タイマ手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載の非常電源用バッテリーの寿命判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−215023(P2009−215023A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62308(P2008−62308)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】