説明

非担持固体メタロセン触媒系を調製する方法及びオレフィン重合時のその使用

以下の工程、すなわち、
a)a1)周期表(IUPAC 2007)の3族〜10族遷移金属の有機金属化合物、又はアクチノイド若しくはランタノイドの有機金属化合物と、a2)周期表(IUPAC 2007)の13族元素要素を含む助触媒と、そしてa3)溶媒(A―1)とを含む溶液(A)を調製する工程、
b)下式(I)
【化1】


(式中、nは10〜100の数であり、mは1〜40の数であり、xは5〜16の数であり、yは11〜33の数であり、但し、m、n、x及びyは、ブロックコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度にブロックコポリマーが溶媒B又は溶液A中に可溶性であるように選択される)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーの存在下で、溶液(A)と実質的に不混和性である溶媒(B)中に前記溶液(A)を分散させることによって液/液エマルジョン系を調製する工程、
b1)溶媒(B)はエマルジョンの連続相を構成する
b2)溶液(A)は液滴の形態で分散相を構成する
b3)有機金属化合物及び助触媒は液滴中に存在する、
c)前記分散相を凝固させて、前記液滴を固体粒子に変える工程
d)前記粒子を任意に回収して前記触媒系を得る工程
を含む、固体粒子の形態で、周期表(IUPAC 2007)の3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物を含む、非担持で不均一なオレフィン重合触媒系を調製する方法と、前記方法によって得られる非担持で不均一なオレフィン重合触媒と、オレフィン重合における前記触媒の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤としてポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを使用するエマルジョン/凝固技術による非担持固体メタロセン触媒系を調製する改良方法と、オレフィン重合における前記触媒の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンポリマーを調製するために、多くの触媒と方法が知られている。チーグラーナッタ(ZN)触媒組成物及び酸化クロム化合物は、例えば、ポリオレフィンを調製する際に有用であることが分かっている。更に、オレフィン重合におけるメタロセン触媒の使用は、長年にわたって公知であり、且つ、ZN触媒の使用では簡単には利用できないポリマー特性を付与することが分かっている。メタロセン化合物/プロ触媒は、従来は、活性メタロセン触媒種を生成させるために、助触媒を使用して、例えば文献から知られるアルミノキサンを使用して活性化させる。開発された最初のシングルサイト触媒は、均一であった。すなわち、それらは、重合反応において溶液で使用された。均一溶液系の多くの欠点の故に、いくつかの異なるアプローチを使用して、溶液触媒系の課題を克服しようとしてきた。今日では、広く使用されている触媒系は、不均一系触媒を含み、そしてその触媒成分は外部担体に担持されている。前記触媒系は、例えば、Severn et al., Chem. Rev. 2005; 105(11); 4073−4147又は Handbook Tailor−Made Polymers: Via Immobilization of Alpha−Olefin Polymerization Catalysts of Severn et alに記載されている。使用される担体は、担体の触媒含浸を容易にするために、多孔質構造を有する。担体材料は、典型的にはポリマー担体又は無機担体であり、最も典型的にはシリカ、アルミナ若しくは二塩化マグネシウム系の材料である。しかしながら、外部担体の使用は、追加のコストを必要とし、担体の品質は慎重に制御されなければならず、且つ、担持触媒を使用して作られたポリマーはいくつかの問題を引き起こす担体残留物を含むことがある。例えば、フィルム用途では、これは、重大な特徴である。なぜならば、そのような担持触媒を用いて作られたポリマーに関しては、担体残留物がフィルム中に視認し得るからである。
【0003】
近年、均一触媒と不均一触媒の両方の利点を提供する固体のメタロセン触媒系は、例えば国際公開第WO 03/051934号又は国際公開第WO 2006/069733号(その全文が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているように、外部担体を使用せずに調製のためにエマルジョン/凝固技術を使用することによって、開発された。エマルジョン/凝固技術を使用することによるこの種の触媒系の調製は、少なくとも2つの相を含む液/液エマルジョン系に基づいている。それにより、触媒粒子は、凝固によってエマルジョンの分散相から分離される。国際公開第WO 03/051934号又は国際公開第WO 2006/069733号で開示されているように、この種の方法は、フルオラス中油エマルジョンの連続相中に分散された、触媒粒子を含む液滴の凝固を含む。この種のエマルジョンを得るために、特に、凝固工程の間、液滴形態を維持するためにも、界面活性剤の使用は、必須である。国際公開第WO 03/051934号又は国際公開第WO 2006/069733号の記載によれば、界面活性剤は、(a)ヘテロ原子(1個又は複数)によって任意に割れこまれている(例えば最高10000の分子量を有するポリマー炭化水素を含む)炭化水素、好ましくは官能基を任意に有するハロゲン化炭化水素、好ましくは当業において公知の半フッ素化、高フッ素化又は過フッ素化炭化水素をベースとしている。残念なことに、この種の界面活性剤は、エマルジョンを安定化させるにはあまり有効ではなく、そして更に、凝固工程用に加熱中に形態を維持させるのにもあまり適当ではない。あるいは、実施例に示されているように、界面活性剤は、界面活性剤前駆体を触媒溶液の化合物と反応させることによって、その場で、好ましく調製される。前記の界面活性剤前駆体は、少なくとも1つの官能基を有するハロゲン化炭化水素、例えば、―OH、―SH、―NH、―COOH、―COONH、アルケンの酸化物、オキソ基及び/又はそれらの基の任意の反応性誘導体から選択される少なくとも1つの官能基を有する高フッ素化C〜C30アルコールであることができ、そしてそれは、アルミノキサンのような助触媒成分と反応する。好ましい例は、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7―ドデカフルオロヘプタノール又は3―ペルフルオロオクチル―1,2―プロペンオキシドである。
【0004】
界面活性剤のその場生成のための前記方法は、制御し難いので、結果として、反応時間、反応温度及び反応濃度のような反応条件に従って生成物の混合物が生じる。異なるタイプの化合物の生成は、エマルジョンを安定させる。それは、触媒における、そしてその結果としてポリマーにおける組成及び濃度を変化させるフルオロ化合物の存在下で起こるという事実は、より更に重要である。更に、この種の非常に反応性のフッ素化化合物の使用は、HS&E(健康、安全及び環境)の観点から問題があると考えられるので、将来これらの化合物の入手可能性は保証されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、現時点の技術水準に従う触媒系の問題を克服する、エマルジョン/凝固技術による非担持固体メタロセン触媒系を調製する改良方法を開発するニーズが存在する。
【0006】
而して、エマルジョン/凝固技術を使用することによって、非担持固体メタロセン触媒系を調製する改良方法を提供することは、本発明の目的であった。前記方法は、その場で界面活性剤を生成させるために、高度に反応性のフッ素化化合物の使用を避け、且つ、良好なポリマー粒子形態を有するポリマーの製造を可能にする優れた触媒活性を有する触媒系を生成させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、エマルジョン/凝固技術を使用する非担持固体メタロセン触媒系を調製する方法において、エマルジョン安定化のための従来の高度に反応性のフッ素化化合物の代わりに、高分子量の両親媒性ブロックコポリマー、すなわちポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを使用することによって、達成された。
【0008】
而して、本発明は、以下の工程、すなわち、
a)
a1)周期表(IUPAC 2007)の3族〜10族遷移金属の有機金属化合物、又はアクチノイド若しくはランタノイドの有機金属化合物、
a2)周期表(IUPAC 2007)の13族元素を含む助触媒、及び
a3)溶媒(A―1)
を含む溶液(A)を調製する工程、
b)下式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーの存在下で、前記溶液(A)と実質的に不混和性である溶媒(B)中に前記溶液(A)を分散させることによって液/液エマルジョン系を調製する工程、
【化1】

(式中、nは10〜100の数であり、mは1〜40の数であり、xは5〜16の数であり、yは11〜33の数であり、但し、m、n、x及びyは、ブロックコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度にブロックコポリマーが溶媒B又は溶液A中で可溶性であるように選択される)
b1)前記溶媒(B)はエマルジョンの連続相を構成する
b2)前記溶液(A)は液滴の形態で分散相を構成する
b3)前記の有機金属化合物及び助触媒は液滴中に存在する、
c)前記分散相を凝固させて、前記液滴を固体粒子に変える工程
d)前記粒子を任意に回収して前記触媒系を得る工程
を含む、固体粒子の形態で、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物を含む非担持で不均一なオレフィン重合触媒系を調製する改良方法に関する。
【0009】
式(I)のコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度に溶媒B又は溶液A中で可溶性とは、充分に可溶性である、とも定義される。
【0010】
式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーは、高い触媒活性を有するこの種のシングルサイト触媒の調製中に、フルオラス中油エマルジョンの安定化のために使用できることが分かった。
【0011】
これまで使用されてきた反応性界面活性剤と比較して、式(I)のこの種のコポリマーは、所定の構造を有し、そして化学的に不活性である。そのことは、高度に反応性のメチルアルミノキサンの存在下でも、不所望の副生成物を生成させないことを意味しており、助触媒として使用できる。
【0012】
式(I)のこの種のコポリマーの更なる利点は、本発明に従って調製される触媒系によって製造されたポリマーからポリマー界面活性剤が外部に移行する傾向又は抽出される傾向が低減される点にある。
【0013】
以下において、本発明の本質的な特徴を更に詳細に説明する:
【0014】
本出願全体を通して、「溶液」という用語は、2種以上の液体物質が均一に混合されていることを示唆している。前記物質のうちの少なくとも1種は、他の物質(溶質)が溶解される溶媒である。本発明では、溶液(A)の溶媒は、以下でより詳細に定義される溶媒(A―1)であり、一方、溶液(A)の溶質は、少なくとも、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物、及び助触媒である。
【0015】
本発明による「エマルジョン」は、エマルジョンを生成させるために使用される条件下で、実質的に又は殆ど完全に不混和性の2種類の物質の混合物である。一方の物質(分散相)は、液滴としてもう一方(連続相)の中に分散される。本出願では、連続相は溶媒(B)であり、分散相(液滴の形態)は触媒成分を含む溶液(A)である。より正確には、本発明の溶媒(A―1)は、触媒系成分を、すなわち周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の少なくとも有機金属化合物を溶解する溶媒である。好ましくは、溶媒(A―1)は有機溶媒(A―1)である。
【0016】
更に好ましくは、有機溶媒(A―1)は、直鎖アルカン、環状アルカン、直鎖アルケン、環状アルケン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン及び/又はキシレン、そしてハロゲン含有炭化水素から成る群より選択される。トルエンは、触媒系の成分と溶液(A)を形成するのに、溶媒(A―1)として特に好ましい。
【0017】
溶媒(B)は、単一溶媒又は異なる溶媒の混合物であってもよく、そして少なくとも分散工程b)中に使用される条件(例えば温度)下で、溶液(A)と実質的に又は殆ど完全に非混和性である。
【0018】
好ましくは、前記溶媒(B)は、製造される触媒系の化合物に関して不活性である。本明細書において、用語「化合物に関して不活性」とは、連続相の溶媒(B)が、化学的に不活性であり、すなわち触媒系形成化合物又は触媒系前駆体形成化合物(例えば周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物及び助触媒)のいずれとも化学反応しないことを意味している。而して、触媒系の固体粒子又はその触媒系のあらゆる前駆体は、分散相由来の化合物から液滴中で形成され、換言すれば、溶媒(B)を形成している連続相中に分散された溶液(A)中エマルジョンに提供される。
【0019】
固体触媒系を形成させるために使用される触媒系化合物(例えば、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物)は、前記連続相形成溶媒(B)中に実質的に不溶性であることが好ましい。
【0020】
而して、溶媒(B)は、好ましくは、ハロゲン化有機溶媒、特にフッ化有機溶媒及び/又はその官能化誘導体を含み、より更に好ましくは、不混和性溶媒(B)は、半フッ素化、高フッ素化又は過フッ素化炭化水及び/又はその官能化誘導体を含む。本明細書で使用される「高フッ素化」というフレーズは、一般的に、フッ素原子が、分子中の炭素原子上において、非炭素置換基のうちの少なくとも1/2を構成していることを意味している。過フッ素化炭化水素とは、炭素上のすべての水素原子がフッ素で置換されたものを意味している。前記溶媒(B)は、ペルフルオロ炭化水素又はその官能化誘導体、好ましくはC〜C30ペルフルオロアルカン、―アルケン又は―シクロアルカン、より好ましくはC〜C10ペルフルオロアルカン、―アルケン又は―シクロアルカン、特に好ましくはペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン又はペルフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)又はそれらの混合物を含む、好ましくはから成ることが特に好ましい。
【0021】
これらの(フッ素化)溶媒(B)は、例えば溶媒(A―1)のような化合物に関して、そして触媒系化合物に関して、化学的に不活性であり且つ非常な貧溶媒である。而して、反応性化合物(例えば、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物、及び助触媒)は、凝固される触媒系粒子の形態を悪化させると考えられる連続相における関連反応が発生しないように、液滴相中に保持できる。
【0022】
溶媒(B)の上記貧溶媒特性に起因して、触媒系化合物の「液滴形態」は、例えば系を加熱することによって凝固の間に溶媒(B)中へと最初に使用される溶媒(A―1)が取り出されるとしても、そのまま維持される。更に、凝固中に典型的に使用される更に高い温度においても、BとA1との混合物中で、触媒系化合物の溶解度は低い必要があることに注目すべきである。そうでない場合は、凝固粒子は直ちに再溶解すると考えられる。
【0023】
本発明では、式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマー(以下で更に詳細に説明する)は、エマルジョンを形成するための界面活性剤として使用する。エマルジョン系の形成後に、前記触媒系は、触媒系化合物から、すなわち、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物と助触媒とから、前記溶液(A)中において、その場で形成される。
【0024】
本発明による方法の第一工程では、触媒成分の溶液が形成される。本発明に従って、触媒成分は、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物と助触媒とを含む。
【0025】
本発明による用語「遷移金属の有機金属化合物」は、少なくとも1つの有機(配位)リガンドを有し、そして単独で又は共触媒と一緒に触媒活性を示す遷移金属のあらゆるメタロセン化合物又は非メタロセン化合物を含む。遷移金属化合物は当業において公知であり、そして本発明は、周期表(IUPAC、2007)3族〜10族、例えば3族〜7族、又は3族〜6族、例えば4族〜6族の金属の化合物を含む。
【0026】
従って、前記有機金属化合物は、下式(II):
【化2】

(式中、Tは上で定義した遷移金属であり、各Aは独立に例えばシグマ―リガンドのような1価のアニオンリガンドであり、各Lは独立にTに配位する有機リガンドであり、Rは2つのリガンドLを連結する架橋基であり、mは1、2又は3であり、nは0、1又は2、好ましくは0又は1であり、qは1、2又は3であり、そしてm+qは金属の原子価と等しい)を有し得る。
【0027】
より好ましい定義では、各Lは、独立に、(a)置換若しくは非置換のシクロペンタジエニル、又は、更なる置換基及び/又は周期表(IUPAC)13族〜16族の1個又は複数の複素環原子を任意に有するシクロペンタジエニルのモノ縮合―、ビ縮合若しくは多縮合誘導体;又は(b)周期表の13族〜16族の原子から構成されている非環式のη―〜η―又はη―リガンド、前記リガンドにおいて、開鎖リガンドは、1つ又は2つ、好ましくは2つの芳香環若しくは非芳香環と縮合し得る、且つ/若しくは別の置換基を有し得る;又は、(c)芳香族若しくは非芳香族若しくは部分飽和した環式から選択される非置換若しくは置換の単環式―、二環式若しくは多環式環構造で構成され、且つ、炭素環原子と、任意に周期表の15族〜16族から選択される1個又は複数のヘテロ原子とを含む、環式のシグマ―、η―〜η―若しくはη―の単座リガンド、二座リガンド若しくは多座リガンドである。
【0028】
用語「シグマ―リガンド」は、シグマ結合により1つ又は複数の位置で金属と結合された基を意味している。
【0029】
好ましい実施態様に従って、前記有機遷移金属化合物Iはメタロセンとして公知の化合物の群である。前記メタロセンは、金属にη―結合されている、少なくとも1つ、一般的には1つ、2つ又は3つ、例えば1つ又は2つの有機リガンド、例えばη―リガンドのようなη2−6―リガンドを含む。好ましくは、メタロセンは、例えば任意に置換されたシクロペンタジエニル、任意に置換されたインデニル、任意に置換されたテトラヒドロインデニル又は任意に置換されたフルオレニルである、少なくとも1つのη―リガンドを含む、4族〜6族の遷移金属、好適にはチタノセン、ジルコノセン又はハフノセンである。
【0030】
メタロセン化合物は、下式(III)を有し得る。
【化3】

【0031】
上記式中:
各Cpは、独立に、非置換若しくは置換且つ/又は縮合したホモ―又はヘテロシクロペンタジエニルリガンド、例えば置換若しくは非置換シクロペンタジエニルリガンド、置換若しくは非置換インデニルリガンド、又は置換若しくは非置換フルオレニルリガンドであり;任意の1つ又は複数の置換基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロカルビル(例えばC〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル、C〜C20―アリール又はC〜C20―アリールアルキル)、環部分に1、2、3又は4個のヘテロ原子を含むC〜C12―シクロアルキル、C〜C20―ヘテロアリール、C〜C20―ハロアルキル、―SiR’’、―OSiR’’、―SR’’、―PR’’又は―NR’’、(前記式中各R’’は、独立に水素又はヒドロカルビル、例えばC〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル若しくはC〜C20―アリールであり;又は、例えば、―NR’’の場合、2つの置換基R’’は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、例えば5員環又は6員環の環を形成できる)から選択される。
【0032】
Rは、1〜7原子の架橋、例えば1〜4個のC原子及び0〜4個のヘテロ原子の架橋であり、そしてその場合、前記ヘテロ原子は、例えばSi、Ge及び/又はO原子であることができ、それによって各架橋原子は、独立に、C〜C20―アルキル、トリ(C〜C20―アルキル)シリル、トリ(C〜C20―アルキル)シロキシ又はC〜C20―アリール等の置換基を有していてもよく;又は、1〜3個、例えば1個又は2個のヘテロ原子の架橋、例えば―SiR12―の架橋を有していてもよく、そして前記式中、各Rは、独立に、C〜C20―アルキル、C〜C20―アリール又はトリ(C〜C20―アルキル)シリル―残基、例えばトリメチルシリル―残基である。
【0033】
Tは、4〜6族の遷移金属、例えば4族、例えばTi、Zr又はHfである。
【0034】
各Aは、独立に、シグマ―リガンド、例えばH、ハロゲン、C〜C20―アルキル、C〜C20―アルコキシ、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル、C〜C20―アリール、C〜C20―アリールオキシ、C〜C20―アリールアルキル、C〜C20―アリールアルケニル、―SR’’、―PR’’、―SiR’’、―OSiR’’又は―NR’’であり;各R’’は、独立に、水素又はヒドロカルビル、例えばC〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル又はC〜C20―アリール;又は、例えば、―NR’’の場合は、2つの置換基R’’は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、環、例えば5員環又は6員環を形成できる。
【0035】
単独又はCp,X,R’’若しくはRのための置換基としての部分の一部として上記環部分のそれぞれは、例えばSi及び/又はO原子を含み得る例えばC〜C20―アルキルで更に置換でき;
nは0、1又は2、例えば0又は1であり、
mは1、2又は3、例えば1又は2であり、
qは1、2又は3、例えば2又は3であり、但しm+qはTの原子価に等しい。
【0036】
前記式(III)のメタロセン及びそれらの調製は、当業において公知である。
【0037】
Cpは、好ましくは、上で定義したように任意に置換されたシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル又はフルオレニルであり、そして更に、環が芳香環であってもよいか又は部分的に飽和されていてもよい、3〜7原子の、例えば4、5又は6原子の縮合環を有していてもよい。式(III)の化合物の適当なサブグループでは、各Cpは、独立に、C〜C20―アルキル、C〜C20―アリール、C〜C20―アリールアルキル(アリール環は単独で又は別の部分の一部として、上記したように更に置換され得る)、―OSiR’’(前記式中R’’は上で示したものである)、好ましくはC〜C20―アルキルから選択される1つ又は複数の置換基を有し;Xは、H、ハロゲン、C〜C20―アルキル、C〜C20―アルコキシ、C〜C20―アリール、C〜C20―アリールアルケニル、又は、上で定義した―NR’’、例えば―N(C〜C20―アルキル)であり;Rは、メチレン、エチレン、又はシリル架橋であり、シリルは上記したように置換することができ、例えばジメチルシリル=、メチルフェニルシリル=、又はトリメチルシリルメチルシリル=架橋であり;nは0又は1であり;mは2であり、qは2である。好ましくは、R’’は水素以外である。
【0038】
特定のサブグループは、1つ又は2つ、例えば2つのη―リガンド(上記したように、例えばシロキシ、アルキル及び/又はアリールで任意に置換された架橋又は未架橋のシクロペンタジエニルリガンドであり得る)を有するZr、Hf及びTiの公知のメタロセン、又は、環部分のいずれかにおいて、例えば2―、3―、4―及び/又は7―位において、上記したように、例えばシロキシ、アルキル及び/又はアリールで任意に置換された2つの未架橋又は架橋のインデニルリガンドを有するZr、Hf及びTiの公知のメタロセンを含む。例えば具体例としては、例えば、ビス(アルキルシクロペンタジエニル)Zr(又はTi又はHf)ジハロゲン化物は、例えばビス(n―ブチルシクロペンタジエニル)ZrCl)及びビス(n―ブチルシクロペンタジエニル)HfClを挙げることができる。例えば欧州特許第EP―A―129 368号を参照されたい。金属原子が―NR’’リガンドを有する化合物の例は、特に、国際公開第WO―A―9856831号及び第WO―A―0034341号で開示されている。上記公報の内容は参照により本明細書に組み込まれる。更なるメタロセンは、例えば欧州特許第EP―A―260130号に開示されている。使用可能なメタロセンの更なる例は、例えば国際公開第WO―A―97/28170、第WO―A―98/46616号、国際公開第WO―A―98/49208号、国際公開第WO―A―99/12981号、第WO―A―99/19335号、国際公開第WO―A―98/56831号、国際公開第WO―A―00/34341号、欧州特許第EP―A―423 101号、及び第EP―A―537 130号、ならびにV.C. Gibson et al., in Angew. Chem. Int. Ed., engl., Vol 38, 1999, pp 428−447 及び V.C. Gibson and S.K. Spitzmesser, in Chem. Rev. 2003; 103(1); pp 283−316においても見出すことができる。又は、メタロセン化合物の更なるサブグループでは、金属は、上で定義したCp基及び追加のη又はηリガンドを有する。前記リガンドは互いに架橋されていてもよいか又は未架橋でもよい。このサブグループは、η又はηリガンドに対して、好ましくはη(例えば、シグマ結合された)リガンドに対して架橋されたηリガンドによって金属が錯化されているいわゆる「スコルピオネート化合物(scorpionate compounds)」(拘束幾何形状を有する)、例えば上で定義したCp基の金属錯体、例えばシクロペンタジエニル基を含む。前記錯体は、架橋メンバーを介して、少なくとも1個のヘテロ原子を含む非環式又は環式の基、例えば上で定義した―NR’’を有する。そのような化合物は、例えば国際公開第WO―A―96/13529号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
上記したアルキル、アルケニル又はアルキニルの残基は、単独又は部分の一部として、直鎖又は分岐鎖であってもよく、そして、好ましくは9個まで、例えば6個までの炭素原子を含む。アリールは、好ましくはフェニル又はナフタレンである。ハロゲンは、F、Cl、Br又はIであり、好ましくはClである。
【0039】
本発明で使用可能な式(II)の有機遷移金属化合物の別のサブグループは、非メタロセンとして公知であり、その場合、遷移金属(好ましくは4族〜6族の遷移金属、好適にはTi、Zr又はHf)はシクロペンタジエニルリガンド以外の他の配位リガンド(coordination ligand)を有する。本明細書における用語「非メタロセン」は、シクロペンタジエニルリガンド又はその縮合誘導体は有していないが、1つ若しくは複数の非シクロペンタジエニルη―又はσ―、単座、二座又は多座のリガンドを有する化合物を意味している。前記リガンドは以下の(a)又は(b)から選択することができる。(a)周期表(IUPAC)の13族〜16族の原子で構成された非環式のη―〜η―又はη―リガンド、例えば非環式ペンタジエニルリガンド、その場合、主鎖は炭素原子と、任意に13族〜16族(IUPAC)の1個又は複数のヘテロ原子とから成っており、そして、開鎖リガンドは、1つ又は2つ、好ましくは2つの芳香環又は非芳香環と縮合されていてもよく且つ/又は別の置換基を有していてもよい(例えば、国際公開第WO 0170395号、第WO 9710248号及び第WO 9941290号参照)、又は、(b)非置換若しくは置換された単環、二環若しくは多環式の環構造から構成されている環式のσ―、η―〜η―若しくはη―、単座、二座若しくは多座のリガンド、例えば、芳香環若しくは非芳香環若しくは部分的に飽和された環構造、前記環構造は、炭素原子と、任意に、周期表(IUPAC)の15族及び16族から選択された1個若しくは複数のヘテロ原子を含んでいる(例えば、国際公開第WO 9910353号参照)。二座又は多座の環構造は、架橋された環構造を含み、そしてその場合、各環は、架橋基によって、例えば周期表15族又は16族の原子によって、例えばN、O又はSによって、遷移金属原子に連結されている(例えば、国際公開第WO 02060963号参照)。前記化合物の例としては、特に、窒素系の環式又は非環式の脂肪族又は芳香族のリガンドを有する遷移金属錯体、例えば、出願人の先願である国際公開第WO―A―99/10353号又はin the Review of V.C. Gibson at al., in Angew. Chem. Int. Ed., engl., Vol 38, 1999, pp 428−447 及び V.C. Gibson and S.K. Spitzmesser, in Chem. Rev. 2003; 103(1); pp 283−316に記載されている化合物又は、酸素系リガンド、例えば、二座の環式又は非環式の脂肪族又は芳香族のアルコキシドリガンド、例えば、任意に置換された架橋ビスフェノールリガンド(特に、Gibson et al.の上記レビューを参照されたい)。非―ηリガンドの更なる具体例は、アミド、アミド―ジフォスファン、アミジネート、アミノピリジネート、ベンズアミジネート、トリアザビシクロアルケニル等のアザシクロアルケニル、アリル、ベータ―ジケチメート及びアリールオキシドである。上記公報の開示は参照により本明細書に組み込まれる。多様性は、本発明方法の適用可能性に影響を与えないことに注目すべきである。
【0040】
本発明における使用に適するメタロセンの具体例としては、ラセミ型ジメチルシリルビス(2―メチル―4―フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ラセミ型ジメチルシリルビス(2―メチル―インデニル)ジルコニウムジクロリド、ラセミ型ジメチルシリルビス(2―メチル―4、5―ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ラセミ型イソプロピリデンビス(2、3ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ラセミ型イソプロピリデンビス(2、4―ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、及び対応するジクロリドが挙げられる。他のメタロセンとしては、エチレンビス(2―メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリルビス(2―メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリルビス(2―メチル,4―フェニル―インデニル))ジルコニウムジクロリド、及びジエチルシリルビス(2―メチル,4―フェニルインデニル))ジルコニウムジクロリドが挙げられる。更なる適当なメタロセン錯体は、ビス(n―ブチルシクロペンタジエニル)Hfジベンジル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)Hfジベンジル、ビス(1,2―ジメチルシクロペンタジエニル)Hfジベンジル、ビス(n―プロピルシクロペンタジエニル)Hfジベンジル、ビス(i―プロピルシクロペンタジエニル)Hfジベンジル、ビス(1,2,4―トリメチルシクロペンタジエニル)Zrジベンジル、ビス(テトラヒドロインデニル)Zrジベンジル、ビス(n―ブチルシクロペンタジエニル)Hf(CHSiMe、ビス(n―プロピルシクロペンタジエニル)Hf(CHSiMe
ビス(i―プロピルシクロペンタジエニル)Hf(CHSiMe、ビス(1,2,4―トリメチル―シクロ―ペンタジエニル)―Zr(CHSiMeである。
前記の適当なメタロセンは、例えば、特に、欧州特許第EP 629631号、欧州特許第EP 629632号、国際公開第WO 00/26266号、国際公開第WO 02/002576号、国際公開第WO 02/002575号、国際公開第WO 99/12943号、国際公開第WO 98/40331号、欧州特許第EP 776913号、第EP 1074557号及び国際公開第WO 99/42497号、ならびに、国際公開第WO―A―95/12622号、国際公開第WO―A―96/32423号、国際公開第WO―A―97/28170号、国際公開第WO―A―98/32776号、国際公開第WO―A―99/61489号、国際公開第WO―A―03/010208号、国際公開第WO―A―03/051934号、国際公開第WO―A―03/051514号、国際公開第WO―A―2004/085499号、欧州特許第EP―A―1752462号及び欧州特許第EP―A―1739103号に記載されている。
【0041】
本発明で使用可能なメタロセン及び非メタロセン、そして、それらの有機リガンドの調製は、従来の技術、例えば国際公開第WO 01/48034号に詳細に記載されており、例えば上記の公報が参照される。前記化合物のうちのいくつかも市販されている。而して、前記遷移金属化合物は、文献に記載された方法に従い又は類似した方法で、例えば、まず有機リガンド部分を調製し、次いで、遷移金属で前記有機リガンド(η―リガンド)をメタレートすることによって、調製できる。あるいは、従来のメタロセンの金属イオンは、金属交換反応によって別の金属イオンに交換できる。
【0042】
いくつかの異なる遷移金属化合物を使用する場合(混合された二重又は多重の触媒系)、それらは、上記した有機金属化合物の任意の組み合わせ又は上記した有機金属化合物と他の触媒化合物との任意の組み合わせ(チーグラ―ナッタ系及び酸化クロム系を含む)、例えば、少なくとも、2種以上のメタロセンの組み合わせ、メタロセンと非メタロセンの組み合わせ、ならびにメタロセン及び/又は非メタロセンとチーグラ―ナッタ触媒系(典型的には遷移金属化合物と、周期表2族金属の化合物、例えばMg化合物を含む)との組み合わせであることができる。
【0043】
更なる要件として、本発明による触媒系は、周期表(IUPAC 2007)13族の元素を含む助触媒を含む。而して、助触媒は、例えばアルミニウム(Al)又はホウ素(B)を含む。好ましくは、助触媒は、Alの化合物を含む。前記助触媒の例は、有機アルミニウム化合物、例えばトリアルキルアルミニウム化合物及び/又はアルミノキサン化合物である。
【0044】
助触媒としては、好ましくはアルミノキサン、特にC〜C10―アルキルアルミノキサン、特に好ましくはメチルアルミノキサン(MAO)である。前記アルミノキサンは、単独の助触媒として、又は、他の助触媒(1種若しくは複数種)と一緒に使用できる。而して、アルミノキサンの他に、又はアルミノキサンに加えて、触媒活性化剤を形成する他のカチオン錯体を使用できる。上記助触媒は、市販されているか、又は、従来技術の文献に従い調製できる。更なるアルミノキサン助触媒は、特に、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO 94/28034号で開示されている。これらは、―(Al(R’’’)O)―の繰り返し単位[式中、R’’’は水素、C〜C10―アルキル(好ましくはメチル)又はC〜C18―アリール又はそれらの混合物]を40まで、好ましくは3〜20有する直鎖又は環状のオリゴマーである。
【0045】
前記助触媒の使用及び量は、当業の範囲内である。例えば、ホウ素活性化剤に関して、遷移金属対ホウ素助触媒の割合は、5:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2、例えば1:1で使用できる。好ましいアルミノキサン、例えばメチルアルミノキサン(MAO)の場合、アルミノキサンにより提供されるAlの量は、例えば1:1〜10000:1、好適には5:1〜8000:1、好ましくは10:1〜7000:1、例えば100:1〜4000:1、例えば1000:1〜3000:1のAl対遷移金属のモル比を提供するように選択できる。典型的には、固体(不均一)触媒の場合には、前記モル比は好ましくは500:1未満である。
【0046】
而して、本発明の触媒で使用される助触媒の量は、変更可能であり、そして、当業者に公知の方法で選択される条件及び特定の遷移金属化合物に左右される。
【0047】
有機遷移化合物を含む溶液中に含有させる任意の追加の成分を、前記溶液に、分散工程の前に又は分散工程後に加えてもよい。
【0048】
既に記載したように、触媒系化合物、すなわち、周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物と助触媒を、溶媒(A―1)中に溶解させる。好ましくは、溶媒(A―1)は有機溶剤(A―1)である。更に好ましくは、有機溶媒(A―1)は、直鎖アルカン、環状アルカン、直鎖アルケン、環状アルケン、芳香族炭化水素、例えばトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン及び/又はキシレン、そしてハロゲン含有炭化水素から成る群より選択される。トルエンは、溶媒(A―1)として特に好ましく、触媒系の成分と溶液(A)を形成する。
【0049】
工程b)において、触媒成分の溶液、すなわち周期表(IUPAC 2007)3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物の溶液(A)と助触媒とを、溶媒(B)に分散させて、エマルジョンを作る。
【0050】
溶媒(B)中で溶液(A)を分散させてエマルジョンを作るための適当な方法は、機械的装置の使用ならびに混合のための超音波の使用、又は国際公開第WO 03/051934号に記載され、そして当業者に公知のいわゆる相変化法である。プロセスパラメータ、例えば混合、混合強度、混合方式、混合に使用されるパワー、例えば混合速度使用される超音波の波長、溶媒相の速度を使用して、触媒系の粒径を調整する。
【0051】
界面活性剤は、エマルジョンを安定させるために使用される。
本発明に従って、下式(I)
【化4】

(式中、nは、10〜100、好ましくは25〜90、更に好ましくは35〜80及び最も好ましくは45〜75の数であり、mは、1〜40、好ましくは3〜30、更に好ましくは数5〜25及び最も好ましくは8〜20の数であり、xは5〜16、好ましくは6〜12、更に好ましくは7〜9及び最も好ましくは8の数であり、yは、11〜33、好ましくは13〜25、更に好ましくは15〜20及び最も好ましくは17の数であり、但し、m、n、x及びyは、安定なエマルジョンがブロックコポリマーを加えることによって形成される程度に、ブロックコポリマーが溶液B又は溶液A中に可溶性であるように、選択する)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを、界面活性剤として使用する。
【0052】
パラメータn、m、x及びyと一緒に、当業者は、他の重要なパラメータ、例えば分子量、ブロック率、Fモル分率及び元素F(%)を容易に算出できる。
【0053】
式(I)のコポリマーを特徴づける更なるパラメータは、多分散性指数(PDI=Mw/Mn)であり、それはGPCによって決定される。
【0054】
好ましくは、本発明による式(I)のコポリマーは、1.1〜2、更に好ましくは1.2〜1.8及び最も好ましくは1.3〜1.6のPDIを有する。
【0055】
このような界面活性剤は、当業者に公知の技術熟練した者に知られているように、リビング/制御重合法によって調製できる。好ましくは、本発明に従って使用される界面活性剤は、ATRP(原子移転ラジカル重合)によって調製する。
【0056】
界面活性剤を、分散相の量を基準として、0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、更に好ましくは0.3〜3重量%、そして最も好ましくは0.4〜2重量%の量で加えて、エマルジョンを作る。
【0057】
分散相の量を基準として、0.1重量%未満の界面活性剤では、形態に悪影響がある。
【0058】
界面活性剤の充分な溶解度がある限りにおいて、分散相の量を基準として5重量%を超える界面活性剤を加えることができる。
【0059】
エマルジョン系の形成後に、前記触媒は、前記溶液の触媒成分からその場で形成される。
【0060】
原則として、分散した液滴から固体触媒系を作るために、任意の凝固法を使用できる。1つの好ましい実施態様によると、凝固は、温度変化処理によって起こる。よって、エマルジョンを、最高10℃/分、好ましくは0.5〜6℃/分、そして更に好ましくは1〜5℃/分の漸進的な温度変化に曝す。より更に好ましくは、エマルジョンを、10秒未満以内での、好ましくは6秒未満以内での、40℃を超える、好ましくは50℃を超える温度変化に曝す。
【0061】
回収された固体触媒系は、好ましくは5〜200μm、更に好ましくは10〜100μmの平均粒径を有する。
【0062】
更に、凝固触媒系の形態は、好ましくは球体形状、所定の粒径分布、及び、好ましくは25m/g未満、なお更に好ましくは20m/g未満、より更に好ましくは15m/g未満、なおより更に好ましくは10m/g未満、そして最も好ましくは5m/gの表面積を有し、そしてその場合、前記粒子は、上記した方法によって得られる。
【0063】
連続相及び分散相システム、エマルジョン形成法及び凝固法の更なる詳細、実施態様及び実施例に関しては、例えば、上記した国際特許出願第WO 03/051934号を参照されたい。
上記触媒成分は、国際公開第WO 01/48034号に記載されている方法によって調製される。
【0064】
反応工程b)及びc)は、バッチ式で行ってもよく、又は、上記触媒調製法の工程(b)〜(c)の少なくとも1工程は、バッチ式ではなく、連続式で行うことができる。
【0065】
工程b)及びc)のための半連続又は連続工程に関する詳細、実施態様及び実施例は、例えば、国際公開第WO 2006/069733号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本発明は、更に、ポリオレフィンを生成させるオレフィン重合のための上で定義した触媒系の使用と、前記触媒系によって製造されるポリオレフィンとに関する。
【0067】
適当なポリオレフィンは、ポリエチレン及びポリプロピレンホモポリマー、及びまた、0〜40重量%のC―オレフィン又はC30〜C30α―オレフィン又はC〜C30―ジエン―誘導単位を含むポリエチレン、ポリプロピレン及びポリプロピレン/エチレンコポリマー、そして更に特に、0〜10重量%のアルケン、例えばエチレン、1―プロペン、1―ブテン、1―ペンテン、4―メチル―ペンタ―1―エン、1―ヘキセン、シクロヘキセン、1―オクテン及びノルボルネン、又はジエン、例えばブタジエン、ヘキサジエン又はオクタジエンを有するエチレン及び/又はプロピレンのコポリマー又はターポリマーを含む。
【0068】
好ましい実施態様では、本発明による触媒を用いることによって製造されるポリオレフィンは、プロピレンポリマーである。
【0069】
製造されるポリプロピレンは、単峰性又は多峰性、更に好ましくは二峰性であることができる。「多峰性」又は「多峰性分配」とは、いくつかの相対的な最大を有する(最大が1つだけを有する単峰性に対して)度数分布を説明している。特に、表現「ポリマーのモダリティ」とは、ポリマーの分子量分布(MWD)曲線の形態、すなわち、ポリマーの分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観を指している。逐次工程プロセスで、すなわち直列に結合された反応器を利用し、そして各反応器において異なる条件を使用することによって、ポリマーを製造する場合、異なる各反応器で製造される異なるポリマー分率は、互いから明確に区別し得るそれら自体の分子量分布を有する。得られた最終ポリマーの分子量分布曲線は、ポリマー分率の分子量分布曲線を重ね合わせたものとして認められ、而して、前記曲線は、個々の分率に関する曲線と比較して、より明確な極大を示すか、又は、少なくとも際立って幅が広い。そのような分子量分布曲線を示すポリマーは、それぞれ二峰性又は多峰性と呼ぶ。
【0070】
ポリプロピレンは、更に、単独重合体又はコポリマーであり得る。ポリプロピレンが単峰性の場合、ポリプロピレンは好ましくはポリプロピレンホモポリマーである。次に、ポリプロピレンが、多峰性、更に好ましくは二峰性である場合、ポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマーならびにポリプロピレンコポリマーであることができる。本発明で使用されるポリプロピレンホモポリマーという表現は、実質的に、すなわち、少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、そして最も好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位から成るポリプロピレンに関する。好ましい実施態様では、ポリプロピレンホモポリマー中のプロピレン単位のみが検出可能である。コモノマー含量は、FT赤外分光法によって定量できる。
【0071】
ポリプロピレンが多峰性又は二峰性ポリプロピレンコポリマーである場合には、コモノマーはエチレンであることが好ましい。しかしながら、当業において公知のC〜C10のようなより高級なオレフィンの他のコモノマーも適する。プロピレンコポリマーにおけるコモノマーの総量、更に好ましくはエチレンの総量は、30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下である。
【0072】
更に、本発明は、ポリオレフィンを製造するための方法に関するものであり、それにより、上で定義した触媒系を使用する。
【0073】
本発明の触媒系と組み合わせてポリオレフィンを生成させるためのオレフィン重合として知られているオレフィン重合の任意の方法、例えば気相重合、スラリー相重合、溶液重合のうちの任意の方法又はそれらの任意の組み合わせを使用できる。
【0074】
重合は、少なくとも1つの重合反応器で実施される、一段階又は二段階若しくは多段階の重合プロセスであることができる。分子量分布(MWD)に関して多峰性のポリマーは、多段工程で製造され、その場合、低分子量及びより高分子量のポリマーは、任意の順序で、異なる重合工程で製造される。多峰性ポリマーを製造するための異なる組合せ、例えば気相・気相、スラリー相・スラリー相、スラリー相・気相プロセスを使用することができ;好ましくは、スラリー相・気相重合である。単峰性ポリマーは、2つ以上の段階が可能であるが、一段重合で製造できる。しかし、ほぼ同じ分子量を有するポリマーは各段階で製造される。しかしながら、上記した重合のあらゆるタイプが可能であり、スラリープロセスは一つの好ましい方法である。
【0075】
実際の重合に加えて、プロセス構成は、任意のプレ又はポスト反応器を含むことができる。
【0076】
使用される重合反応器のタイプに関係なく、本発明による触媒系は、任意適当な手段によって、重合反応器中に導入し得る。一つの実施態様では、触媒系は、実質的に乾燥した状態で反応器に供給される。それは、触媒の単離された固体形態は、反応器に入る前に、希釈剤によって希釈されなかったか又は混合されなかったことを意味している。別の実施態様では、触媒系は、希釈剤と混合され、反応器に供給される;一つの実施態様における希釈剤は、アルカン、例えばC〜C20―アルカンであり、又はフッ素化炭化水素、鉱物、又はシリコン油、又はそれらの組み合わせである(注、USはZNのためである)。一般的に、使用される触媒系の量は、触媒系の性質、反応器のタイプと条件、そしてポリマー生成物に要求される特性に左右される。本明細書で参照した公報に記載されている従来の触媒量を使用してもよい。
【0077】
反応器の構成(reactor setup)は、特に制限されず、当業者に公知のあらゆる反応器の構成であることができる。
【0078】
スラリー反応器、例えばループ型反応器では、反応温度は、一般的に50〜110℃(例えば、60〜100℃、又は70〜110℃)であり、反応器圧は、一般的に20〜80バール(例えば、30〜70バール)であり、そして滞留時間は、一般的に0.3〜5時間(例えば、0.5〜2時間)である。使用される希釈剤は、一般的に、−70〜+100℃の沸点を有する脂肪族炭化水素である。スラリー反応器では、所望により、超臨界条件下で、重合を行ってもよい。
【0079】
気相反応器では、使用する反応温度は一般的に50〜130℃(例えば、60〜115℃、又は60℃〜100℃)であり、反応器圧力は一般的に5〜60バール、好ましくは10〜40バールであり、そして滞留時間は一般的に1〜8時間である。
使用するガスは、通常は、モノマーであるか、又は、モノマーと非反応性ガス、例えば窒素との混合物である。ポリプロピレン重合では、ガスは、主にモノマーである。
【0080】
当業において公知でルーチンであるように、水素を反応器に導入してポリマーの分子量を制御できる。一つの実施態様では、循環ガス流における水素対総オレフィンモノマーのモル比は0.001又は0.002又は0.003:1〜0.014又は0.016又は0.018又は0.024:1であり、その場合、望ましい範囲は、本明細書において記載されている任意のモル比上限と任意のモル比下限とのあらゆる組み合わせを含み得る。別の表現では、いつでも反応器中の水素の量は、一つの実施態様では1000ppm〜20,000ppm、別の実施態様では2000〜10,000、もう一つ別の実施態様では3000〜8,000、そして更にもう一つ別の実施態様では4000〜7000であることができ、そしてその場合、望ましい範囲は、本明細書において記載されている任意の水素濃度の上限と任意の水素濃度の下限とを含み得る。
【0081】
而して、本発明は、少なくとも(i)上で定義したα−オレフィンホモ―又はコポリマー成分を含むポリマー組成物を製造する方法も提供する。前記方法では、α―オレフィンモノマーは、任意には1種又は複数種のコモノマーと一緒に、本発明による特別な触媒系の存在下で、重合される。ポリマー組成物が成分(i)から成る場合、本方法は一段法である。
【0082】
本発明は、更に、上で定義した又は以下でクレームされる少なくとも2つの異なるα―オレフィンホモ―又はコポリマー成分(i)及び(ii)を含むポリマー組成物を製造する方法を提供する。前記方法では、各成分は、1つ又は複数の重合反応器を使用する多段重合法で、本発明による重合触媒系の存在下で、α―オレフィンモノマーを、任意には1種又は複数種のコモノマーと一緒に、重合させることによって製造される。前記反応器は、同じか又は異なっていてもよく、例えば、少なくともループ・ループ、ガス・ガス、又はループとガスの任意の組み合わせであってもよい。各段階は、同じか又は異なる重合法を使用して、並行的に又は逐次的に行うことができる。
逐次工程の場合、各成分、例えば(i)及び(ii)は、前の工程で作られたポリマー成分、好ましくは前の工程で使用された触媒系の存在下で、第一工程を除く各工程で重合を行うことによって、任意の順序で製造し得る。あるいは、同じか又は異なる触媒系を、次の工程(1つ又は複数)で加えることができる。
【0083】
一つの実施態様では、(i)α―オレフィンホモポリマー又はコポリマー成分と、任意に(ii)α―オレフィンホモポリマー又はコポリマー成分とを含む上記ポリマー組成物のいずれかを製造する方法は、以下の工程:すなわち、(a)本発明による触媒系の存在下、スラリー反応器ゾーンにおいて、好ましくはループ型反応器において、任意には1種又は複数種のコモノマーと一緒に、α―オレフィンモノマーを重合させて、ポリマー成分(i)を製造する工程、及び(b)工程(a)の反応生成物を次の気相反応器ゾーンへと選択的に移送し、そして、工程(a)の反応生成物の存在下で、α―オレフィンモノマーを、任意には1種又は複数種のコモノマーと一緒に重合させて、ポリマー組成物を得るためのポリマー成分(ii)を製造する工程、及び
(c)得られた組成物を回収する工程を含む。
【0084】
好ましい多段プロセスは、例えば、欧州特許第EP 0887 379号、国際公開第WO 92/12182号、又は国際公開第WO 2005/002744号のような特許文献に記載されている、デンマークにあるBorealis A/S社によって開発されたような例えば「ループ・気相」プロセス(BORSTAR(登録商標)技術として公知)である。
【0085】
本発明に従って製造されるポリマー組成物は、吹込フィルム、パイプ、押出コーティング、ワイヤ及びケーブル外被、射出成形、ブロー成形、又は回転成形のような非常に様々な用途で使用できる。
【0086】
方法:
GPC:分子量平均、分子量分布、及び多分散性指数(Mn、Mw、MWD、PDI)
分子量平均(Mw、Mn)、分子量分布(MWD)及び多分散性指数PDI=Mw/Mn(式中、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)によって記述される分子量分布の幅を、ISO 16014―4:2003及びASTM D 6474―99に従うゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。示差屈折率検出器とオンライン粘度計を具備しているWaters GPCV2000を、Tosoh Bioscience社から入手した2 x GMHXL−HT及び1x G7000HXL−HT TSK−ゲルカラム、140℃且つ一定の流量1mL/分において、溶媒の1,2,4―トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6―ジtertブチル―4―メチルフェノールで安定化させた)と一緒に使用した。1分析当たり209.5μLの試料溶液を注入した。カラムセットを、1kg/モル〜12000kg/モルの少なくとも15の狭いMWDポリスチレン(PS)標準によって、ISO 16014―2:2003に従う普遍較正を使用して較正した。使用されるPS、PE及びPPに関するマークハウインク定数は、ASTM D 6474―99準拠である。4mL(140℃)の安定化TCB(移動相と同じ)中に0.5〜4.0mgのポリマーを溶かし、そして、GPC機器中でサンプリングする前に、連続して穏やかに振盪しながら、最高160℃で最高3時間保つことによって、すべてのサンプルを調製した。
【0087】
ポリマー粉末の嵩密度は、ASTM D 1895に従って測定した。
【0088】
Al及びZrの測定(ICP法)
触媒の元素分析は、質量Mの固体サンプルを採取し、ドライアイスで冷却することによって、行った。そのサンプルを、硝酸(HNO、65体積%、5体積%)及び新鮮な脱イオン(DI)水(5体積%)中に溶かすことによって、公知の体積Vまで希釈した。次いで、その溶液を、フッ化水素(HF、40体積%、3体積%)に加え、そして最終的な体積Vまで脱イオン水で希釈し、そして2時間そのまま置いて安定化させた。ブランク(脱イオン水中5%HNO、3%のHF溶液)、低い標準(脱イオン水中5%HNO、3%HF溶液中10ppmのAl)、高い標準(脱イオン水中5%HNO、3%HFの溶液中50ppm Al, 20ppm Zr)及び品質管理サンプル(脱イオン水中5%HNO、3%HFの溶液中20ppm Al, 10 ppm Zr)を使用して、分析直前に較正されたThermo Elemental社製IRIS Advantage XUV誘導結合プラズマ・原子励起分光計を使用して、室温で、分析を行った。ジルコニウム含量は、339.198nmラインを使用してモニターし、そして、396.152nmラインによってアルミニウム含量及び766.490nmラインによってカリウム含量をモニターした。0〜100であることが要求される又は更なる希釈が要求される記録値は、同じサンプルから採取した3つの連続アリコートの平均であり、以下の方程式1を使用して元の触媒1へと関連付ける。
【数1】

式中:Cは、ppm単位の濃度であり、%含量の10,000倍であり、
Rは、誘導結合プラズマ原子分光分析より得られた記録値であり、
Vは、総希釈体積であり、
Mは、サンプルの元の質量であり、単位はgである。
希釈が必要とされる場合、その希釈を、濃度Cに希釈係数を掛けることによって考慮に入れることも必要である。
【0089】
触媒活性は、使用した固体触媒成分1g当たり且つ1時間当たりに得られるkg単位のポリマー量(例えばkg PP/g触媒/h)と定義される。
【0090】
PSD
粒径分布PSD:媒体としてn―ヘプタンを使用して室温でCoulter Counter LS 200によって測定した。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例4による触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図2】実施例5による触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
実験:
実施例1:FSFモノマーの合成
2,3,5,6―テトラフルオロ―4―(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10―ヘプタデカフルオロ―デカオキシ)スチレン(FSF)の合成は、以下のようにして行った:1H,1H,2H,2H―ペルフルオロデカノール(16mmol、Fluka)を、32mlの50%水性NaOHと混合した。32mlのジクロロメタン及び1.6mmolの硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAH、Fluka、>99%)を加え、そして得られた懸濁液を激しく撹拌した。ペンタフルオロスチレン(18mmol;FS、Aldrich Chemicals社製、99%、真空蒸留して安定化剤を取り除いた)を添加すると、反応混合物は、わずかに黄色になった。40℃で72時間撹拌した後に、有機質層を分離し、0.1MのHCl及び水で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、生成物を、メタノール中で結晶化させた。収率は30%であった。
1H NMR(200MHz,CDCl) δ ppm:2.6(2H,―OCHCH17),4.45(2H,―OCHCH17),5.7(1H,―CH=CH(1)),6.05(1H,―CH=CH(2)),6.65(1H,―CH=CH).
【0093】
実施例2:高分子開始剤に関する一般的なATRP手順
臭素末端ポリスチレンPS―Br高分子開始剤を、以下のようにして調製した:5mlのキシレン中、14.6gのスチレン(Merck社製、使用前に真空蒸留した)、0.32gのフェニル―2―ブロモプロピオネート[フェノール(Merck社製, 99.5%)と2―ブロモプロピオニルブロミド(Aldrich Chemicals社製、98%)を使用し、Macromulecules, 1999; 32: pp 8732−9 by Haddleton and Watersonに記載されているようにして合成した]、0.20gのCu(I)Br(氷酢酸、AppliChem社製、96%で洗浄した)、及び0.44gのビピリジンの溶液を、丸底フラスコにおいて調製した(モノマー:開始剤:Cu(I)Br:リガンドのモル比100:1:1:2)。その溶液を、5つの結氷融解サイクルによって脱気し、その密封した重合混合物を、110℃のシリコン油浴中に浸漬した。135分の反応時間後に、その混合物を、周囲温度まで冷却し、THFで希釈し、そして二酸化ケイとAlとのカラムに通して濾過した。8.6gの高分子開始剤は、濾過し、メタノール中でポリマーを沈殿させ、そしてそれを真空下で乾燥させた後、得られた。標本の純度は、1H NMR分光法によって確認し、PS標準に対するSECを、モル質量及びモル質量分布の算出において使用した。
分子特性:
Mn:3877g/mol
Mw:5300g/mol,
PDI:1.37
【0094】
実施例3:フッ化モノマーのATRPのための手順;PS4000―b―PFSF2の調製
5mlのキシレン中、3.3gのFSF(実施例1で調製したモノマー)、0.90gの高分子開始剤(臭素末端ポリスチレン;実施例2で調製した)、0.024gのCu(I)Br、及び0.053gのビピリジンの溶液を、丸底フラスコにおいて調製した(モノマー:開始剤:Cu(I)Br:リガンドのモル比30:1:1:2)。その溶液を、5つの結氷融解サイクルによって脱気し、その密封した重合混合物を、110℃のシリコン油浴中に浸漬した。18時間の反応時間後に、その混合物を、周囲温度まで冷却し、THFで希釈し、そしてシリカとAlとのカラムに通して濾過した。濾過した後、メタノール中でポリマーを沈殿させ、そして真空下で乾燥させると、白色粉体の形態で、2.6gのPS4000―b―PFSC8F17が得られた。サンプルの純度は、1H NMR分光法によって確認した。モル質量は、1H NMRスペクトル及びSECから得られた多分散性により定量した。
分子特性:
Mn:9400g/mol
Mw:14500g/mol
PDI:1.54
【0095】
実施例4:触媒の調製:
グローブボックスにおいて、25mgのポリマー界面活性剤を、トルエン中5.0mlの30%メチルアルミノキサン(Albemarle社製)溶液に加えた。室温で12時間撹拌した後、得られた明澄な溶液を、54mgのrac―ジメチルシリルビス―(2―メチル―4―フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(Catalytica Advanced Technologies社製;CAS:153882―67―8)に加えた。次いで、その混合物を、室温で30分間、攪拌した。得られた赤みがかった溶液を、0℃において、バッフル及び塔頂攪拌機を具備している50mL乳化ガラス反応器において、40mLのペルフルオロ―1,3―ジメチルシクロヘキサンに加えた。その反応混合物を、0℃及び570回転/分で20分間撹拌すると、分散相としてトルエン溶液を有するエマルジョンが生成した。
【0096】
一方、100mLのペルフルオロ―1,3―ジメチルシクロヘキサンは、90℃の油浴によって、機械的撹拌機を具備している第二ガラス反応器中で加熱した。混合は、400回転/分に調整した。次いで、冷めたいエマルジョンを、テフロン(登録商標)管(内径2mm)を介して、出来るだけ早く、熱いペルフルオロ―1,3―ジメチルシクロヘキサンに移した。油浴を取り除き、得られた懸濁液の撹拌を300回転/分で15分間続けた。次いで、混合を止め、ペルフルオロ―1,3―ジメチルシクロヘキサン上に固体触媒を浮遊させた。サイホン効果によってペルフルオロ炭化水素を除去した後、残留している固体触媒を、アルゴン流中において50℃で2時間乾燥させると、赤色の易流動性の粉末が0.97g得られた。
モル比Al/Zr=200
分散相中の界面活性剤量:0.5重量%
触媒:
触媒中のZr含量:0.50重量%
粒径:d50=16.2μm
【0097】
図1には、実施例4による触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)像が示してある。これらの画像は、本発明(実施例4)による触媒の良好な触媒形態を示している。
【0098】
実施例5:触媒調製:
分散相中の界面活性剤の量が1.5重量%であったことを除いて、実施例4を繰り返した。
収量:0.95gの触媒
モル比Al/Zr=200
触媒:
触媒中のZr含量:0.49重量%
粒径:d50=13.5μm
【0099】
図2には、実施例5による触媒の走査型電子顕微鏡(SEM)像が示してある。
これらの画像は、本発明(実施例5)による触媒の良好な触媒形態を示している。
【0100】
図2から分かるように、粒子形態は、より高い界面活性剤濃度によって、大幅に向上する。
【0101】
実施例6:重合
液体プロピレン(1400g)、トリイソブチルアルミニウム溶液(5mLペンタン中0.25mLのTIBA)及び水素(20mmol)を、5Lのステンレス鋼反応器に入れた。反応器の温度を30℃に安定化させ、実施例4で調製した固体触媒21.8mgを、PFC(5mL)と窒素過圧で反応器にフラッシュした。撹拌は、250回転/分に設定した。反応器温度を、15分で70℃まで上昇させ、その後、重合反応を30分間続けた。次いで、反応器を脱気し、窒素でフラッシュした。ポリプロピレン収量は241.0gであった。触媒活性は22.1 kg PP/g触媒・hであった。MFR=7.8g/10分。
【0102】
実施例7:重合
実施例6の重合手順を繰り返したが、実施例5で調製した触媒を使用した。ポリプロピレン収量は366.0gであった。触媒活性は33.6 kg PP/g触媒・hであった。MFR=7.4g/10分。
【0103】
実施例8:比較実施例1
触媒調製
ジャケット付き90dmガラスライニングステンレス鋼反応器において、−5℃で、1.26kgの24.5重量%((2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9―ヘプタデカフルオロノニル)オキシラン)/トルエン溶液を、20kgの30重量%メチルアルミノキサン/トルエン溶液に対して、極めてゆっくりと(3.4ml/分)加えることによって、複合溶液を調製した。温度を25℃に上昇させ、溶液を60分間撹拌した。242gの複合rac―ジメチルシランジイルビス(2―メチル―4―フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを加えたのち、その溶液を更に2時間撹拌した。その混合物は、ローターステーター対4Mを有するローターステーターへと5l/hでポンプで注入した。先端速度4m/sを有するローターステーターにおいて、混合物を、PFCの32l/hフローと一緒に混合し、エマルジョンを形成させた。エマルジョン中の液滴は、テフロン(登録商標)ホースにおいて、76℃の温度で、450l/hのPFCの過剰フローによって凝固させた。前記ホースを、らせん状混合部材を具備しているジャケット付き160dmステンレス鋼反応器に接続した。この反応器において、触媒粒子を、密度差によってPFCから分離した。その複合溶液を利用した後、触媒粒子を、70℃の温度及び5kg/hの窒素流で5時間、160dm反応器において乾燥させた。
平均粒径d50:16μm
モル比Al/Zr:230モル/モル
Zr含量:0.49重量%
Al含量:34.4重量%
【0104】
実施例9:比較実施例2
重合
実施例8で調製した触媒33.8mgを使用して、実施例6と同じ方法で重合を実施した。ポリプロピレンの収量は157gであった。触媒活性は9.3 kg PP/g触媒・hであった。MFR=21.6g/10分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、すなわち、
a)
a1)周期表(IUPAC 2007)の3族〜10族遷移金属の有機金属化合物、又はアクチノイド若しくはランタノイドの有機金属化合物と、
a2)周期表(IUPAC 2007)の13族元素要素を含む助触媒と、そして
a3)溶媒(A―1)と
を含む溶液(A)を調製する工程、
b)下式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーの存在下で、溶液(A)と実質的に不混和性である溶媒(B)中に前記溶液(A)を分散させることによって液/液エマルジョン系を調製する工程、
【化1】

(式中、nは10〜100の数であり、mは1〜40の数であり、xは5〜16の数であり、yは11〜33の数であり、但し、m、n、x及びyは、ブロックコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度にブロックコポリマーが溶媒B又は溶液A中に可溶性であるように選択される)
b1)溶媒(B)はエマルジョンの連続相を構成する
b2)溶液(A)は液滴の形態で分散相を構成する
b3)有機金属化合物及び助触媒は液滴中に存在する
c)前記分散相を凝固させて、前記液滴を固体粒子に変える工程
d)前記粒子を任意に回収して前記触媒系を得る工程
を含む、固体粒子の形態で、周期表(IUPAC 2007)の3族〜10族の遷移金属の有機金属化合物を含む、非担持で不均一なオレフィン重合触媒系を調製する方法。
【請求項2】
式(I)(式中、nは25〜90の数であり、mは3〜30の数であり、xは6〜12の数であり、そしてyは13〜25の数であり、但し、m、n、x及びyは、ブロックコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度に、ブロックコポリマーが、溶媒B又は溶液A中に可溶性であるように選択される)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを界面活性剤として使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(I)(式中、nは35〜80の数であり、mは5〜25の数であり、xは7〜9の数であり、そしてyは15〜20の数であり、但し、m、n、x及びyは、ブロックコポリマーを加えることによって安定なエマルジョンが形成される程度に、ブロックコポリマーが、溶媒B又は溶液A中に可溶性であるように選択される)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを界面活性剤として使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーが、1.1〜2のGPCによって決定される多分散性指数を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
エマルジョンを形成させるため加えられる界面活性剤の量が、分散相の量を基準として0.1重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)のポリスチレン―b―フルオロポリスチレンコポリマーを、リビング/制御重合法によって、好ましくはATRP(原子移転ラジカル重合)によって調製することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
遷移金属の前記有機金属化合物が、下式(III)
【化2】

(式中、各Cpは、独立に、非置換若しくは置換且つ/又は縮合したホモ―又はヘテロシクロペンタジエニルリガンドであり;任意の1つ又は複数の置換基は、好ましくは、ハロゲン、C〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル、C〜C20―アリール又はC〜C20―アリールアルキル、環部分に1、2、3又は4個のヘテロ原子を含むC〜C12―シクロアルキル、C〜C20―ヘテロアリール、C〜C20―ハロアルキル、―SiR’’、―OSiR’’、―SR’’、―PR’’又は―NR’’(前記式中各R’’は独立に水素又はC1〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル若しくはC〜C20―アリールであるか;又は、―NR’’の場合は、2つの置換基R’’は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって環を形成できる)から選択され、Rは、1〜7個の原子と0〜4個のヘテロ原子との架橋であり、そしてその場合、前記ヘテロ原子は、Si、Ge及び/又はO原子であることができ、それによって架橋原子のそれぞれは、独立に、C〜C20―アルキル、トリ(C〜C20―アルキル)シリル、トリ(C〜C20―アルキル)シロキシ又はC〜C20―アリール置換基から選択される置換基を有していてもよく;又は、ケイ素、ゲルマニウム及び/又は酸素原子から選択される1〜3個のヘテロ原子の架橋を有していてもよい、
Tは、Ti、Zr又はHfから選択される遷移金属であり、各Aは、独立に、H、ハロゲン、C〜C20―アルキル、C〜C20―アルコキシ、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル、C〜C20―アリール、C〜C20―アリールオキシ、C〜C20―アリールアルキル、C〜C20―アリールアルケニル、―SR’’、―PR’’、―SiR’’、―OSiR’’又は―NR’’であり;前記各R’’は、独立に、水素又はC〜C20―アルキル、C〜C20―アルケニル、C〜C20―アルキニル、C〜C12―シクロアルキル又はC〜C20―アリールであるか;又は、―NR’’の場合は、2つの置換基R’’は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、環、例えば5員環又は6員環を形成でき、
nは0又は1であり、
mは1又は2であり、
qは2又は3であり、そしてその場合、m+qはTの原子価に等しい)のメタロセン化合物である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記助触媒が、トリアルキルアルミニウム化合物、及び/又はC〜C10―アルキルアルミノキサンから選択されるアルミノキサン化合物であって、前記助触媒単独で又は他の助触媒(1種又は複数種)と一緒に使用できる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
溶液Aを形成させるために工程a)で使用される前記溶媒(A―1)を、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、クメンメシチレン又はシメンから成る群より選択する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程a)で使用される溶媒(A―1)が、トルエンである請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程b)において、前記連続相を形成する前記実質的に不混和性の溶媒が、フッ化炭化水素、その官能化誘導体、又はそれらの混合物を含む請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程c)において、前記凝固を、温度変化処理によって生じさせる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
上記請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって得ることができる非担持で不均一なオレフィン重合触媒。
【請求項14】
オレフィン重合における請求項13記載の触媒の使用。
【請求項15】
請求項13記載のオレフィン重合触媒の存在下で、少なくとも1種のオレフィンモノマーを重合させる工程を含むポリオレフィンを調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512323(P2013−512323A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541513(P2012−541513)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068783
【国際公開番号】WO2011/069888
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(511233496)
【Fターム(参考)】