説明

非接触充電器の取付構造

【課題】非接触充電の送電効率の向上を図ることができる非接触充電器の車輛への取付構造を提供する。
【解決手段】受電コイル11を有する受電ユニット10の電気自動車1への取付構造において、受電ユニット10と電気自動車1のフロアパネル2との間に空間3が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電コイルを有する非接触充電器の車輛への取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車のバッテリを非接触充電するために地上側の給電コイルと電磁的に結合する受電コイルを、電動車の後部トランクの底面に貼り付けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−227007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、受電コイルの背面全体が後部トランクの底面に密着しているので、給電コイルとの送電に伴って加熱した受電コイルを十分に冷却することができず、受電コイルの抵抗値が上昇して送電効率が低下する場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、非接触充電における送電効率の向上を図ることができる非接触充電器の車輛への取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、非接触充電器と車輛のフロアパネルとの間に空間を形成することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非接触充電器とフロアパネルとの間に形成された空間に風が通ることで、非接触充電器が効率的に冷却されるので、非接触充電における送電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、本発明の実施形態における非接触充電のための電気自動車の動作を説明するための図であり、電気自動車が給電ユニットに接近している様子を示す図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施形態における非接触充電のための電気自動車の動作を説明するための図であり、電気自動車が充電駐車位置で停止した状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における電気自動車の後部の断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における電気自動車の後部を下方から見た斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における電気自動車の後部の底面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における取付ユニットを示す図であり、図3のV方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1A及び図1Bは非接触充電のための電気自動車の動作を説明するための図である。
【0011】
本実施形態における電気自動車(EV)1は、図1A及び図1Bに示すように、走行用の電動モータに電力供給するバッテリを充電するために、受電コイル11を有する受電ユニット10を備えている。この受電ユニット10は、電気自動車1の後部に取り付けられている。
【0012】
一方、同図に示すように、地上側には、給電コイル51を有する給電ユニット50が設置されており、電磁誘導や電磁場共鳴等によって受電コイル11と給電コイル51とを電磁的に結合することで、バッテリを非接触で充電する。
【0013】
実際にバッテリを充電する場合には、図1Aに示すように、先ず、給電ユニット50が設置されている充電駐車位置に電気自動車1を後退させて、受電ユニット10を給電ユニット50に接近させる。そして、図1Bに示すように、受電ユニット10が給電ユニット50に対向する位置に達したら、電気自動車1を停止させて充電を開始する。
【0014】
以下に、本実施形態における受電ユニット10の電気自動車1への取付構造について、図2〜図5を参照しながら説明する。
【0015】
図2は本実施形態における電気自動車の後部の断面図、図3は本実施形態における電気自動車の後部の下方から見た斜視図、図4は本実施形態における電気自動車の後部の底面図、及び図5は本実施形態における取付ユニットを示す図である。なお、図3では、取付ユニット20の構造の理解を容易にするために、受電ユニット10を破線で示している。
【0016】
本実施形態では、図2〜図4に示すように、受電ユニット10は、取付ユニット20を介して電気自動車1のフロアパネル2に取り付けられている。この取付ユニット20は、一対の支持部材30と、保護部材40と、から構成されている。
【0017】
それぞれの支持部材30は、平面視において電気自動車1の前後方向に延在する角筒の棒状部材であり、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、又はそれらのうちの少なくとも一つを含む合金等から構成されている。
【0018】
この支持部材30は、第1の固定部31と、第1の支持部32と、第1の屈曲部33と、を有している。この支持部材30は、第1の固定部31でボルト締結等によってフロアパネル2に固定されている。
【0019】
一方、この支持部材30の第1の支持部32には、受電ユニット10がボルト締結等によって固定されている。このように、本実施形態では、支持部材30を介して受電ユニット10をフロアパネル2に取り付けるので、電気自動車1の車高に依存することなく、支持部材30の高さによって、受電コイル21と給電コイル51との間の距離を設定することができる。
【0020】
しかも、本実施形態では、受電ユニット10とフロアパネル2との間に一つの部材を介在させるだけであるので、簡単且つ低コストで送電効率の向上を図ることができる。また、既存の電気自動車に対しても、非接触充電用の受電ユニット10を簡単に後付けすることもできる。
【0021】
この際、本実施形態では、特に図2に示すように、当該受電ユニット10の背面12(同図における上面)が第1の支持部32の下面321と接触するように、受電ユニット10が第1の支持部32に取り付けられている。
【0022】
このため、受電ユニット10の受電面13(受電ユニット10において給電ユニット50と対向することとなる面。図1B参照。)が下方に向かって常に露出しており、受電ユニット10と給電ユニット50との間に支持部材30が介在することがない。そのため、本実施形態では、非接触充電時に受電コイル11と給電コイル51との間に形成される磁束が、支持部材30によって妨げてられてしまうことがない。
【0023】
また、特に図4に示すように、この第1の支持部32は、電気自動車1の一対の後輪4の間に設けられているので、この第1の支持部32に固定された受電ユニット10の受電コイル11も、後輪4の間に位置している。一般的に、後輪4のホイールは、アルミニウム等の透磁率の低く且つ導電率の高い材料から構成されている。本実施形態では、こうした後輪4のホイールに受電コイル11が挟まれているので、非接触充電時に受電コイル11と給電コイル51との間に形成される磁束が側方に漏洩するのを抑制することができる。
【0024】
また、支持部材30が棒状の部材で構成されているので、受電ユニット10の背面12を露出させることができる。このため、受電ユニット10を効率的に冷却することができる。
【0025】
さらに、この第1の支持部32の下面321にはノッチ34が形成されている。このノッチ34は、電気自動車1の車幅方向に平行に延在しており、特に図4に示すように、平面視において受電コイル11の略中央に対応するように形成されている。
【0026】
例えば、電気自動車1の後退時に取付ユニット20に縁石等が接触した場合には、このノッチ34を起点として、受電ユニット10自体が折れ曲がるので、電気自動車1の他の部品(例えば、受電ユニット10に接続されたハーネスやバッテリ等)の損傷を抑制することができる。
【0027】
この際、ノッチ34を支持部材30の下面321に形成しておくことで、受電ユニット10をフロアパネル2側に折り曲げることができ、折れ曲がった受電ユニット10が地面に接触するのを防止することができる。
【0028】
また、支持部材30を棒状部材で構成しているので、板状部材と比較して、受電ユニット10と共に支持部材30も折り曲げやすくなっている。
【0029】
また、受電コイル11が放射状に配置されたフェライトを有している場合であっても、ノッチ34を受電コイル11の略中央に対応するように形成しているので、当該フェライトに邪魔されることなく受電コイル11を折り曲げることが可能となっている。
【0030】
支持部材30において、第1の固定部31と第1の支持部32とは第1の屈曲部33を介して繋がっている。第1の固定部31及び第1の支持部32がフロアパネル2の平面方向に対してほぼ平行に延在しているのに対し、この第1の屈曲部33は、フロアパネル22の法線方向(すなわち鉛直方向)に延在しており、第1の固定部31と第1の支持部32との間に略階段状の段差を形成している。
【0031】
このため、受電ユニット10は支持部材30によってフロアパネル2から離れた状態で保持されており、受電ユニット10の背面12とフロアパネル2の下面との間には空間3が形成されている。
【0032】
本実施形態では、受電ユニット10とフロアパネル2との間に形成されたこの空間3に風が通ることで、受電ユニット10が効率的に冷却される。
【0033】
また、空間3を受電ユニット10とフロアパネル2との間に形成することによって、例えば、電気自動車1の後退時に取付ユニット20に縁石等が接触した場合や脱輪時にフロアパネル2の破損を防止することもできる。
【0034】
一方、取付ユニット20の保護部材40は、平面視において電気自動車1の車幅方向に延在する角筒の棒状部材であり、支持部材30と同様に、例えば、アルミニウム、又はアルミニウムを含む合金等から構成されている。
【0035】
保護部材40をこうした透磁率が低く且つ導電率の高い材料で構成することで、非接触充電時に受電コイル11と給電コイル51との間に形成される磁束が後方に漏洩するのを抑制することができる。
【0036】
この保護部材40は、図3及び図5に示すように、第2の支持部41と、第2の固定部42と、第2の屈曲部43と、を有している。
【0037】
第2の支持部41の上面411には、支持部材30の第1の支持部32の後端がボルト締結等によって固定されており(すなわち、保護部材40は支持部材30の下面321に固定されており)、保護部材40は、支持部材30の後端を支持している。この第2の支持部41の両端には、第2の屈曲部43を介して第2の固定部42が繋がっており、保護部材40は第2の固定部42でフロアパネル2にボルト締結等によって固定されている。
【0038】
本実施形態では、図2〜図4に示すように、保護部材40が受電ユニット10の後方に設けられている。このため、電気自動車1の後退時に保護部材40によって縁石等から受電ユニット10を保護することができる。
【0039】
また、本実施形態では、保護部材40が、受電ユニット10を支持している支持部材30より下方に位置している。このため、電気自動車1の後退時や脱輪時に保護部材40によって縁石等から受電ユニット10を保護することができる。
【0040】
また、図2に示すように、保護部材40の第2の支持部41の下面412は、受電ユニット10の下面13(すなわち受電面13)よりも下方に位置している。このため、電気自動車1の後退時や脱輪時に保護部材40によって縁石等から受電ユニット10を保護することができる。
【0041】
さらに、図5に示すように、第2の支持部41及び第2の固定部42は、フロアパネル2の平面方向にほぼ平行となっているのに対し、第2の屈曲部43は、フロアパネル2の法線方向に対して傾斜している。このように第2の屈曲部43を傾斜させることで保護部材40の剛性が低くなるので、例えば、縁石との接触時や脱輪時に取付ユニット20に加わる荷重を保護部材40によって効率的に吸収することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態では、受電ユニット10とフロアパネル2との間に空間3を形成することによって、当該空間3に風を通すことができ受電ユニット10を効率的に冷却することができるので、非接触充電における送電効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、支持部材30を介して受電ユニット10をフロアパネル2に取り付ける。これにより、電気自動車1の車高に依存することなく、支持部材30の高さによって、受電コイル11と給電コイル51との間の距離を設定することができるので、非接触充電の送電効率の向上を図ることができる。
【0044】
しかも、本実施形態では、受電ユニット10とフロアパネル2との間に一つの部材を介在させるだけであるので、簡単且つ低コストで送電効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、受電ユニット10とフロアパネル2との間に一つの部材を介在させるだけであるので、既存の電気自動車に対しても、非接触充電用の受電ユニット10を簡単に後付けすることもできる。
【0046】
さらに、本実施形態では、受電ユニット10の背面12と支持部材30の下面321とが接触するように、受電ユニット10が支持部材30に固定されているので、受電ユニット10の受電面13は、支持部材30で遮られることなく、下方に向かって露出している。このため、非接触充電時に受電コイル11と給電コイル51との間に形成される磁束が、支持部材30によって妨げられてしまうことがない。
【0047】
本実施形態における電気自動車1が本発明における車輌の一例に相当し、本実施形態における受電ユニット10が本発明における非接触充電器の一例に相当する。
【0048】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0049】
1…電気自動車
2…フロアパネル
3…空間
4…後輪
10…受電ユニット
11…受電コイル
12…背面
13…受電面
20…取付ユニット
30…第1の部材
31…第1の固定部
32…第1の支持部
321…下面
33…第1の屈曲部
34…ノッチ
40…第2の部材
41…第2の支持部
411…上面
412…下面
42…第2の固定部
43…第2の屈曲部
50…給電ユニット
51…給電コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルを有する非接触充電器の車輛への取付構造であって、
前記非接触充電器と前記車輛のフロアパネルとの間に空間が形成されていることを特徴とする非接触充電器の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触充電器の取付構造であって、
前記フロアパネルに固定された支持部材を備え、
前記非接触充電器は、前記支持部材を介して、前記フロアパネルに取り付けられていることを特徴とする非接触充電器の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触充電器の取付構造であって、
前記非接触充電器の受電面が露出するように、前記非接触充電器が前記支持部材に固定されていることを特徴とする非接触充電器の取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触充電器の取付構造であって、
前記非接触充電器の上面が前記支持部材の下面と接触するように、前記非接触充電器が前記支持部材に固定されていることを特徴とする非接触充電器の取付構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254782(P2012−254782A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−64858(P2012−64858)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】