非接触型インピーダンスモニター
【課題】非接触型電気伝導度検出器は、これまでに応用例が紹介されてきたがその基本的な構造とパフォーマンスとの関係が明らかになっていなかった。そのため有効な測定可能範囲が不明であった。また、測定対象の溶液のインピーダンスが比較的小さい領域では溶液を経由して作用電極からの信号電流が検出電極側に伝わりにくく、受け信号を乱すという問題点もあった。
【解決手段】非接触型電気伝導度検出器の基本構造とパフォーマンスの関係を明らかにして、有効な測定範囲とそれを可能とする基本構造を示し、併せて電磁遮蔽された非接触型インピーダンスモニターとする。
【解決手段】非接触型電気伝導度検出器の基本構造とパフォーマンスの関係を明らかにして、有効な測定範囲とそれを可能とする基本構造を示し、併せて電磁遮蔽された非接触型インピーダンスモニターとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のインピーダンスを検出するモニターに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、液体成分を測定する電気化学的検出器(電気伝導度型、電位型、電気分解型)の中でも電気伝導度型といわれる分類に属する検出器であり、高周波交流電圧を用いて溶液のインピーダンスの変化を測定する非接触型インピーダンスモニターに関するものである。
従来、溶液中のイオン化した溶質を検出するのに、イオンの電気伝導度を測定する方法が広く、用いられてきた。しかし、イオンクロマトグラフィーにおいて溶離液として電解質を含む溶液中の検出イオンを高感度に検出することは困難であった。また超純水中の微量成分の検出は感度の限界を超えて、より高感度の検出モニターの登場が期待されていた。
【0003】
そこで、非接触型電気伝導度検出器が、1988年に報告された「シリコンラッカー又はテフロン(登録商標)コーティングによって、電解質溶液から離された電極を使用したイオンクロマトグラフィーのための振動発生検出器」(非特許技術文献3)の中で登場してきた。
誘電率を用いた非接触型電気伝導度に関しては非特許技術文献4の中で述べられている。
また、いくつかの試みの中にキャピラリー等電点電気泳動のためにつくられた非接触型電気伝導度検出器がある。これはテフロン(登録商標)チューブの外側に4つの電極を置いた構造であり、印加電圧として高周波電圧が用いられている(非特許技術文献5,6)。
さらに、キャピラリー電気泳動等におけるカチオンやアニオンの検出に非接触型電気伝導度検出器を利用したことが報告されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526462号公報
【特許文献2】特開2009−236739号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.J.Zemann,Anal.Chem.,1998,70,p563-567
【非特許文献2】J.A.Fracassi,Anal.Chem.,1998,70,p4339-4343
【非特許文献3】Pal,F.;Pungor,E.;Kovats,E.Anal.Chem.1988,60,2254.
【非特許文献4】Alder,J.F.;Drew,P.k.P.Anal.Chim.Acta1979,110,325.
【非特許文献5】Everaerts,F.M.;Rommers,P.J.J.Chromatogr.1974.91.809.
【非特許文献6】Vacik,J.;Zuska,J.;Muselasova,I.J.Chromatogr.1985,320,233.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触型電気伝導度検出器は、上記で示したいくつかの先行技術文献の中で適応例の報告がなされているが、その基本的な構造とパフォーマンスとの関係が明らかになっていなかった。従って、最も検出需要の多い溶液中のイオン化した溶質を検出対象とする系で、イオンの濃度範囲と基本的な構造,すなわち感度に大きく影響する検出セルの大きさの関係、すなわち検出セルを構成するチューブの口径や電極間の間隔、電極面積との関係が未知数であった。そのため、単に検出データを得たとしても有効な測定可能範囲で測定しているのかわからない状態であった。
【0007】
通常、高絶縁材でつくられた細いチュ−ブに電極が数ミリ程度の間隔をあけて取り付けられており、一方の電極から信号(周波数の幅は目的に応じて低周波域(数Hz)から高周波域(数百MHz)まで)が送られ、チューブ内を流れる溶液に伝わる。この信号は溶液の状態変化に伴い大きさを変化させ、他方の電極に伝わり、他方の電極から信号をとりだす仕組みになっている。
この場合、外来から誘導ノイズ(伝導ノイズ、放射ノイズ、電磁誘導ノイズ、静電誘導ノイズ等)の影響を受けるため、溶液の状態変化が正確に測定できないという問題点があった。
また、溶液のインピーダンスが低い場合、一方の電極からの信号が、溶液を経由して他方の電極に伝わりにくく、溶液の状態変化を正確に測定できないという問題点があった。
一方、電極間の間隔を広めると、溶液のインピーダンスが高い場合、得られる測定値の分解能の低下をまねくこととなり、特に超微量成分の分析用には電極間の間隔を広げることは困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非接触型インピーダンスモニターの基本構造とパフォーマンスの関係を明らかにして、測定対象に応じた有効な測定範囲とそれを可能とする基本構造を示し、併せて電磁遮蔽された非接触型インピーダンスモニターとする。
【発明の効果】
【0009】
溶液成分を測定する有効な範囲とそれを可能とする基本構造が決まり、これを測定対象に応じて基本構造の異なる非接触型インピーダンスモニターを使い分け、誘導ノイズを防ぐことで溶液のインピーダンス変化を高感度に測定することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用したイオン分析システムの概略図
【図2】非接触型インピーダンスモニターの概略図
【図3】チューブ内径の測定値への影響
【図4】チューブ材質の測定値への影響
【図5】電極間隔の測定値への影響
【図6】電極幅の測定値への影響
【図7】印加電圧の影響
【図8】印加電圧の周波数の影響
【図9】電磁遮蔽の効果
【図10】非接触型インピーダンスモニターで測定した臭素イオンの検量線
【図11】非接触型インピーダンスモニターで測定したアニオンクロマトグラム
【図12】5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)で測定したアニオンクロマトグラム
【図13】非接触型インピーダンスモニターで測定したノイズ
【図14】5極法接触型電気伝導度度検出器(CM432)で測定したノイズ
【図15】非接触型インピーダンスモニターで測定したベースライン変化
【図16】5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)で測定したベースライン変化
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、最良の実施形態にもとづいて説明する。
<イオン分析システムにおける検出器>
図1に検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用したイオン分析システムの概略図が示される。
検出器5は、溶液のインピーダンス変化を検出するインピーダンスモニターである。
ここでインピーダンス値は容量リアクタンスと抵抗が直列または並列に接続された回路(等価回路)を流れる位相の遅れた電流の流れやすさであるので、モニターで検出した電流を電圧変換して直流に整流したアナログ値(単位:ボルト)で表示したものである。
チューブの外側に二つの電極を設置することで、溶液と電極とが接していない非接触状態とし、電極を設置したチューブ内を流れる溶液のインピーダンス変化を測定している。
従来、溶液と電極とが接している接触型の検出器が用いられていた。
しかし、溶液が高インピーダンスとなると、外来から誘導ノイズの影響が大きくなり、正確な測定ができなかった。
本発明の非接触型インピーダンスモニターは、電磁波遮蔽により、外来からの誘導ノイズの影響を小さくすることができるため、高インピーダンスの溶液を正確に測定できるようになった。従って、本発明の非接触型インピーダンスモニターは、特に低濃度のイオンを含む溶液を検出対象とする場合に、高い再現性と高感度の検出が可能になるので、イオン分析システム1において有利に使用できるものである。
【0012】
<非接触型インピーダンスモニター>
図2は、検出器5を構成する非接触型インピーダンスモニター5の概略構成を示すものである。非接触型インピーダンスモニター5は、2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)と、これらにそれぞれ電気的に接続する2つの増幅器9a及び9bと、増幅器9aを介して作用電極7aに接続する機能発生器(function generator;FG)10と、増幅器9bを介して検出電極7bに接続する整流器(rectifier)11とを備えている。
また、非接触型インピーダンスモニター5には、検出溶液を通す電気絶縁材でなる管路12が設けられている。2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)は、この管路12の外側に、数ミリ程度の間隔をあけて配置されている。なお、外来からの誘導ノイズの影響を遮蔽するために、グランドに接続された電磁遮蔽(バリアー電極)8が配置されている。管路12を流れる溶出液中の検出溶液は、2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)を通過するときに検出される。このとき、機能発生器10として例えば交流電源のオシレーターからの信号が作用電極7aに印加される。この信号が溶液を通り、もう片方の検出電極7bを通って整流器11へ流れる間に、溶液と電極(作用電極7a及び検出電極7b)が非接触状態において管路12内を流れるキャリアー溶液と検出溶液のインピーダンス差に応じて検出することが可能となる。
【0013】
[有効な濃度測定範囲と基本構造]
本発明の非接触型インピーダンスモニターは、基本構造の違いによってそれぞれの有効測定領域をもっている。イオンクロマトグラフほか高感度な分析機器に使用する検出器として(1)定量分析が可能な超微量イオン濃度測定領域、(2)広範囲な応用領域をもつ検出器として高精度の定量分析性能は充分でないが広範囲のイオン濃度測定領域があり、それらを有効な測定領域とするモニターとしての基本構造がある。
(1)超微量イオン濃度を有効に定量分析する手段として、
(A)超微量イオン濃度範囲(重量濃度)が数10ppt以上から5000ppb以下であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.1mm以上から0.5mm以内の絶縁体チューブ、望ましくはテフロン(登録商標)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅がチューブの外面に幅1mm以上から25mm以下の電極幅であり、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記印加電極に周波数1kHz以上から10kHz以下の周波数領域で、±100V以上から±200V以内の交流電圧で印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
非接触型インピーダンスモニターである。
(2)広い濃度領域範囲を有する電解質溶液の濃度監視モニターとして
(A)イオン濃度範囲(モル濃度)が0.01mM以上から50mM以内であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.5mm以上から2mm以内の絶縁体チューブ、望ましくはテフロン(登録商標)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブであり、
(b2)印加電極および検出電極の電極の幅をチューブの外面に幅25mm以上から100mm以下の電極幅で、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数10kHz以上から100kHz以下の周波数領域で、±0.1V以上から±10V以内の交流電圧で印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
非接触型インピーダンスモニターである。
【0014】
上記の有効測定領域とモニターの基本構造は発明者が検証した多くの実験の中から生まれたものであり、その主要な実験例として本発明の実施例に示される。
実施例1の図3に示すようにチューブ内径の測定値への影響ではチューブ内径が大きくなるにともない溶液のインピーダンスが低くなっているにもかかわらず、信号の大きさは変化しない(信号の応答性が悪い)。
実施例2の図4に示すように誘電率の高い材質が有利である。しかし、無機系の材料は折損しやすく取り扱いに難点がある。その点でPEEKチューブやテフロン(登録商標)チューブが好適に用いられる。
実施例3の図5に示すように電極間の間隔が狭いほど濃度の薄い領域での測定に適している。すなわち、間隔を3.5mm以下であることが好ましい
実施例4の図6に示すように電極幅が大きいほど高インピーダンス領域から低インピーダンス領域にかけて広い領域で測定可能な応答特性を有している。電極幅を大きくするとインピーダンスを下げる方向に働くので有効な手段となる。
実施例5の図7に示すように印加電圧を高くすると、大きな出力値が得られる。
実施例6の図8に示すように周波数が高くなるに従い、高インピーダンス領域から低インピーダンス領域まで幅広く測定できる。周波数を高めることにより、インピーダンスを下げる方向に働くので有効な手段となる。
実施例7の図9に示すように電磁遮蔽による検出電極への外部誘導ノイズを遮断する効果が確認される。
実施例8の図10に示すように非接触型インピーダンスモニターの定量分析可能なイオン濃度領域を示す。
【0015】
なお、上記の細いチューブの外面に設ける電極は、金属テープ、スパッタリング、蒸着法等で金属を被覆したものに通常のボンディング法で金属ワイヤーを取り付けて結線したものでもよい。あるいは電極部分となる金属管をチューブの外側にはめ込み、接着材で固定するのでもよい。また、電極の幅は、出来るだけ大きいほうが測定可能な濃度範囲を広くすることができるので好ましい。
【0016】
電磁遮蔽は図2に示すように電極7a,7bの間隙の中央部より各電極を含む全体を覆っている。この電磁遮蔽材には内面にアルミ箔がコートされたプラスチック成形されたケースが好適に用いられる。アルミ箔に代わり、銅箔、スズ箔、その他金属、合金箔、金属メッシュでもよい。かかるケースは内面に仕切り部(電極の間隙に相当する部分)を設けて一体に成形されたものでもよい。
【0017】
[作用]
本発明のモニターは溶液中に含む検査対象成分を検出セル内に通過させたときにその成分濃度に応じて生ずるインピーダンス変化を検知してその成分濃度を測定するものである。特に高インピーダンス領域において高感度な検出が可能であるという特徴を有する。
図2に示す細いチューブに溶液が流れると作用電極7aより、概ね特定の周波数1kHzから100kHzまでの作用信号電流を印加する。作用信号は絶縁材のチューブを介して溶液に作用して、リアクタンスの存在から位相の若干ずれた応答信号が検出電極7bでキャッチされる。この間、電磁遮蔽の効果により応答信号への外乱を防ぐことが出来る。応答信号はさらに増幅器9bで増幅され、整流器11で整流されて直流信号に変えられ、時間積分された値の平均値としてチャート上に逐次、記録されるか、デジタル処理されてデジタル表記、記憶される。
【0018】
こうしてチャート上に記録された測定値が本測定系のベースライン(測定基準値)を形成する。その後、検出セルに検査目的成分が入ってきて、その成分濃度に応じたインピーダンス変化が高感度に検出され、チャート上に記録される。イオンクロマトグラフィーにおいてはカラムに吸着されてから溶出してくる時間が保持時間として成分ごとに特定されていることからその検出チャートであるイオンクロマトグラムから検査目的成分を特定することができ、しかも数ppbオーダの超微量濃度測定を可能にしている。
かくして応答信号へのわずかな外乱も許されず、電磁遮蔽は長期に安定した機能を維持してなくてはならない。
<5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)との比較>
極性溶媒中の電解質成分を検査目的とする検出手段として広く使用されている5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)は、電圧印加電極が2極で、測定電極が2極あり、ガード電極が1極ある5極法電極を有する検出部を有し、内2極の測定電極間の電圧を一定に制御するため電圧印加電極に印加する電圧をコントロールすることを特徴とする電気伝導度検出器である。
先ず、両検出器のイオン検出感度比較を実施例9の図11および図12に示すように、両検出器ともアニオンクロマトグラムの感度を同程度にあわせてノイズ比較した図13および図14をみると大きさが1/18で非接触型インピーダンスモニターの方が小さい。
さらに、電極反応が原因といわれるベースラインのドリフト変化(溶液中の不純物イオン除去現象)を見てみると、実施例10の図15および図16に示すように、非接触型インピーダンスモニターはドリフト変化もなく安定している。
<応用領域>
【0019】
本モニターの特徴は検出部まわりの環境温度の影響を受けにくく、電気伝導度測定器が必須とする恒温装置を必要としない。従って、装置はコンパクトとなり、携帯仕様が可能となり、その応用分野の広がりが今後、期待される。
また、非接触型モニターなので、電極部が直接、溶液や目的検査成分に触れないため、電極反応が起きず、不要な活性物質の生成やガスの影響によるスパイクノイズもないため、高感度の検出に有利である。
さらに、イオン化した成分の検出だけでなく、高インピーダンスの溶液、すなわち超純水はじめ、非極性溶媒(電解質成分を溶かしにくい)にも検出対象を拡大することができる。
応用分野として、代表的な超純水の洗浄分野がある。この分野はすでに各方面で実際、盛んに超純水が洗浄水として使用されており、超純水の持つ溶解力を利用し汚れを取り除いている。しかし、超純水は、予期せぬ空中の不純物ガスにより容易に汚染され、汚染源となる恐れがあるため、超純水の使用にあたって性状確認が欠かせない。この性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
さらに、原子力発電所で原子炉の冷却水に用いる超純水は中性子を浴びることから不純物の微量混入を監視する必要があり、超純水の性状監視が欠かせない。この性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
あらためて説明するまでもなく、超純水の製造用にその性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
【実施例1】
【0020】
チューブの内径の影響:印加電圧±5、±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅20 mmの条件下で、φ0.5(外径1/16インチ)、0.8(外径1/16インチ)、1.0(外径2mm)、2mm(外径3mm)テフロン(登録商標)チューブを用いて内径の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0021】
図3から解るように、チューブの内径は、測定できる溶液のインピーダンスの範囲に影響することが解る。チューブの内径が大きくなるに従い、高インピーダンス領域で飽和状態(溶液のインピーダンスが低くなっているにもかかわらず、信号の大きさに変化がない状態)となり、さらに、溶液のインピーダンスが低くなると出力値は減少して行くことが解った。これは、溶液のインピーダンスが低くなると、チューブ内のインピーダンスが小さくなり、使用しているチューブのもつインピーダンスよりも小さくなるためであると推察する。
【実施例2】
【0022】
チューブの種類の影響:印加電圧±5、±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅20mmの条件下で、テフロン(登録商標)チューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)、ピークチューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)、アルミナチューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)を用いてチューブの種類の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0023】
図4から解るように、無機系のアルミナチューブと有機系のピークおよびテフロン(登録商標)チューブとでは大きな差が現れ、無機系のアルミナチューブを使用すると飽和点が右側にシフトすることが解った。これは物質が持つ誘電率(誘電率が大きくなると電気容量が大きくなる)の違いが影響していると考えられる。ちなみにアルミナ(5〜9)とピークおよびテフロン(登録商標)(2〜3.5)の誘電率の差は約3〜5倍ある。また、ピークチューブとテフロン(登録商標)チューブとでは、大きな差が現れていないが、若干ピークチューブを用いたほうが低いインピーダンスの溶液まで測定できる結果となった。
【実施例3】
【0024】
電極間幅の影響:印加電圧±180V、周波数100kHz、電極幅20mm、内径20mmテフロン(登録商標)チューブ(外径20mm)の条件下で、電極間幅を変化させ電極間幅の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。
キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0025】
図5から解るように電極間幅が短いと、高インピーダンス領域での測定が可能であり、電極間幅が長いと、低インピーダンス領域での測定が可能であることが解った。
【実施例4】
【0026】
電極幅の影響:印加電圧±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、電極幅を変化させ電極幅の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0027】
図6から解るように電極幅が長くなるに従い、高インピーダンスから低インピーダンスまで幅広く測定できる事が解った。
【実施例5】
【0028】
印加電圧の影響:周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅100mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、印加電圧±5、±180Vの違いを調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンス測定装置(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
図7から解るように、印加電圧を高くすると、大きな出力値を得ることができることが解った。
【実施例6】
【0029】
印加電圧の周波数の影響:印加電圧±5V、電極間幅3.5mm、電極幅20mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、周波数を変化させ周波数の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
図8から解るように周波数が高くなるに従い、高インピーダンスから低インピーダンスまで幅広く測定できることが解った。
【実施例7】
【0030】
電磁シールドの効果:印加電圧±180V、周波数6kHz、電極間幅2mm、電極幅25mmの条件下で、内径0.25(外径1/16インチ)PEEKチューブを用いて電磁シールドの効果を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。なお、図9の符号1と2の区分は、1:図2と同様の構造の非接触型インピーダンスモニターから、電磁シールドの役割をするバリアー電極8を取り外し測定した時の超純水のインピーダンス値、2:図2と同様の構造の非接触型インピーダンスモニターで測定した時の超純水のインピーダンス値である。
【実施例8】
【0031】
<非接触型インピーダンスモニターの定量分析可能な領域>
実験では、イオンクロマトグラフの検出器として、非接触型インピーダンスモニターを接続し、検量線の作成のため8種類の濃度の異なる臭素イオンのピーク高さを測定し、濃度とピーク高さ関係を求めた。
印加電圧±180V、周波数6kHz、電極間幅2mm、電極幅25mmの条件下で、内径0.25(外径1/16インチ)PEEKチューブを用いて調べた。
イオンクロマトグラフはアニオンクロマトグラフ(日理工業製)、検出器は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)、インジェクターはモデル7125(RHEODYNE社製、20μL)を使用した。8種類の臭素イオンの濃度は、1;50ppb、2;100ppb、3イオン;500ppb、4;1000ppb、5;2500ppb、6;5000ppb、7;7500ppb、8;10000ppbであった。その結果を図10に示した。
図10から、検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用した場合、臭素イオン濃度で0から約5000ppbまでの直線の検量線が得られることが解った。この直線は、濃度とピーク高さの関係が0から5000ppbまでは比例関係であることを示し、定量分析が可能であることが解った。
【実施例9】
【0032】
<非接触型インピーダンスモニターの効果1>
図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、検出器にCM432を使用した場合と非接触型インピーダンスモニターを使用した場合の、ノイズの大きさを比較した。
【0033】
実験では、非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、アニオンクロマトグラフの検出器として、非接触型インピーダンスモニターとCM432の2つを同ラインに接続し、同じ濃度のアニオン混合サンプルを測定し、出力値が同じになるように非接触型インピーダンスモニターの感度を調整した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。アニオン混合サンプルの各濃度は、F−イオン;50ppb、Cl−イオン;100ppb、NO2−イオン;150ppb、Br−イオン;100ppb、NO3−イオン;300ppb、SO42−イオン;400ppb、PO43−イオン;300ppbであった。
【0034】
非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度がほぼ同じである事を示すために、図11に非接触型インピーダンスモニターで測定したアニオン混合サンプルのアニオンクロマトグラムを示し、図12にCM432で測定したアニオン混合サンプルのアオンクロマトグラムを示した。そして図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、両検出器の感度を上げ、図13に非接触型インピーダンスモニターで測定したノイズのグラフを示し、図14にCM432で測定したノイズのグラフを示した。
図11、12から、非接触型インピーダンスモニターの出力値とCM432の出力値がほぼ同じである事が解る。従って、非接触型インピーダンスモニターの出力値の単位もCM432の出力値の単位(電気伝導度)に揃えた。そして図13、14から非接触型インピーダンスモニターで測定した方がノイズの大きさが約1/18となり、ベースラインは安定し、ノイズが小さい事が解る。
これは、非接触型インピーダンスモニターの電極(作用電極と検出電極)が液と接していない効果であり、電極(作用電極と検出電極)と液との界面で起こる反応の影響を無くすことができるためである。
【実施例10】
【0035】
<非接触型インピーダンスモニターの効果2>
図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、検出器にCM432を使用した場合と非接触型インピーダンスモニターを使用した場合の、ベースラインのドリフト変化を測定した。
【0036】
実験では、実施例9と同様に非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、実験では、非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、アニオンクロマトグラフの検出器として、インピーダンスモニターとCM432の2つを同ラインに接続し、同じ濃度のアニオン混合サンプルを測定し、出力値が同じになるように非接触型インピーダンスモニターの感度を調整した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。
図15に非接触型インピーダンスモニターでのベースラインのドリフト変化を示し、図16にCM432でベースラインのドリフト変化を示した。
【0037】
図15、16から、非接触型インピーダンスモニターで測定した時は、ベースラインが安定し、一直線となっているが、CM432で測定した時では、ベースラインは右肩下がりに下がり、1時間の測定で約12.5μS/cm変化していることが解る。
これは、実施例9と同様の効果で、非接触型インピーダンスモニターの電極(作用電極と検出電極)が液と接していない効果であり、電極(作用電極と検出電極)と液との界面で起こる反応の影響を無くすことができるためである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
イオンクロマトグラフ用の検出器として、また化学プロセスでの溶液の成分変化を分析する測定器として、あるいはモニターとして広く用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1 イオン分析システム
2 キャリアー
3 ポンプ
5 検出器
6 廃液
7a 作用電極
7b 検出電極
8 電磁遮蔽(バリアー電極)
9a 増幅器
9b 増幅器
10 機能発生器(FG)
11 整流器(Rectifier)
12 管路
13 グランド
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のインピーダンスを検出するモニターに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、液体成分を測定する電気化学的検出器(電気伝導度型、電位型、電気分解型)の中でも電気伝導度型といわれる分類に属する検出器であり、高周波交流電圧を用いて溶液のインピーダンスの変化を測定する非接触型インピーダンスモニターに関するものである。
従来、溶液中のイオン化した溶質を検出するのに、イオンの電気伝導度を測定する方法が広く、用いられてきた。しかし、イオンクロマトグラフィーにおいて溶離液として電解質を含む溶液中の検出イオンを高感度に検出することは困難であった。また超純水中の微量成分の検出は感度の限界を超えて、より高感度の検出モニターの登場が期待されていた。
【0003】
そこで、非接触型電気伝導度検出器が、1988年に報告された「シリコンラッカー又はテフロン(登録商標)コーティングによって、電解質溶液から離された電極を使用したイオンクロマトグラフィーのための振動発生検出器」(非特許技術文献3)の中で登場してきた。
誘電率を用いた非接触型電気伝導度に関しては非特許技術文献4の中で述べられている。
また、いくつかの試みの中にキャピラリー等電点電気泳動のためにつくられた非接触型電気伝導度検出器がある。これはテフロン(登録商標)チューブの外側に4つの電極を置いた構造であり、印加電圧として高周波電圧が用いられている(非特許技術文献5,6)。
さらに、キャピラリー電気泳動等におけるカチオンやアニオンの検出に非接触型電気伝導度検出器を利用したことが報告されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−526462号公報
【特許文献2】特開2009−236739号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.J.Zemann,Anal.Chem.,1998,70,p563-567
【非特許文献2】J.A.Fracassi,Anal.Chem.,1998,70,p4339-4343
【非特許文献3】Pal,F.;Pungor,E.;Kovats,E.Anal.Chem.1988,60,2254.
【非特許文献4】Alder,J.F.;Drew,P.k.P.Anal.Chim.Acta1979,110,325.
【非特許文献5】Everaerts,F.M.;Rommers,P.J.J.Chromatogr.1974.91.809.
【非特許文献6】Vacik,J.;Zuska,J.;Muselasova,I.J.Chromatogr.1985,320,233.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触型電気伝導度検出器は、上記で示したいくつかの先行技術文献の中で適応例の報告がなされているが、その基本的な構造とパフォーマンスとの関係が明らかになっていなかった。従って、最も検出需要の多い溶液中のイオン化した溶質を検出対象とする系で、イオンの濃度範囲と基本的な構造,すなわち感度に大きく影響する検出セルの大きさの関係、すなわち検出セルを構成するチューブの口径や電極間の間隔、電極面積との関係が未知数であった。そのため、単に検出データを得たとしても有効な測定可能範囲で測定しているのかわからない状態であった。
【0007】
通常、高絶縁材でつくられた細いチュ−ブに電極が数ミリ程度の間隔をあけて取り付けられており、一方の電極から信号(周波数の幅は目的に応じて低周波域(数Hz)から高周波域(数百MHz)まで)が送られ、チューブ内を流れる溶液に伝わる。この信号は溶液の状態変化に伴い大きさを変化させ、他方の電極に伝わり、他方の電極から信号をとりだす仕組みになっている。
この場合、外来から誘導ノイズ(伝導ノイズ、放射ノイズ、電磁誘導ノイズ、静電誘導ノイズ等)の影響を受けるため、溶液の状態変化が正確に測定できないという問題点があった。
また、溶液のインピーダンスが低い場合、一方の電極からの信号が、溶液を経由して他方の電極に伝わりにくく、溶液の状態変化を正確に測定できないという問題点があった。
一方、電極間の間隔を広めると、溶液のインピーダンスが高い場合、得られる測定値の分解能の低下をまねくこととなり、特に超微量成分の分析用には電極間の間隔を広げることは困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非接触型インピーダンスモニターの基本構造とパフォーマンスの関係を明らかにして、測定対象に応じた有効な測定範囲とそれを可能とする基本構造を示し、併せて電磁遮蔽された非接触型インピーダンスモニターとする。
【発明の効果】
【0009】
溶液成分を測定する有効な範囲とそれを可能とする基本構造が決まり、これを測定対象に応じて基本構造の異なる非接触型インピーダンスモニターを使い分け、誘導ノイズを防ぐことで溶液のインピーダンス変化を高感度に測定することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用したイオン分析システムの概略図
【図2】非接触型インピーダンスモニターの概略図
【図3】チューブ内径の測定値への影響
【図4】チューブ材質の測定値への影響
【図5】電極間隔の測定値への影響
【図6】電極幅の測定値への影響
【図7】印加電圧の影響
【図8】印加電圧の周波数の影響
【図9】電磁遮蔽の効果
【図10】非接触型インピーダンスモニターで測定した臭素イオンの検量線
【図11】非接触型インピーダンスモニターで測定したアニオンクロマトグラム
【図12】5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)で測定したアニオンクロマトグラム
【図13】非接触型インピーダンスモニターで測定したノイズ
【図14】5極法接触型電気伝導度度検出器(CM432)で測定したノイズ
【図15】非接触型インピーダンスモニターで測定したベースライン変化
【図16】5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)で測定したベースライン変化
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、最良の実施形態にもとづいて説明する。
<イオン分析システムにおける検出器>
図1に検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用したイオン分析システムの概略図が示される。
検出器5は、溶液のインピーダンス変化を検出するインピーダンスモニターである。
ここでインピーダンス値は容量リアクタンスと抵抗が直列または並列に接続された回路(等価回路)を流れる位相の遅れた電流の流れやすさであるので、モニターで検出した電流を電圧変換して直流に整流したアナログ値(単位:ボルト)で表示したものである。
チューブの外側に二つの電極を設置することで、溶液と電極とが接していない非接触状態とし、電極を設置したチューブ内を流れる溶液のインピーダンス変化を測定している。
従来、溶液と電極とが接している接触型の検出器が用いられていた。
しかし、溶液が高インピーダンスとなると、外来から誘導ノイズの影響が大きくなり、正確な測定ができなかった。
本発明の非接触型インピーダンスモニターは、電磁波遮蔽により、外来からの誘導ノイズの影響を小さくすることができるため、高インピーダンスの溶液を正確に測定できるようになった。従って、本発明の非接触型インピーダンスモニターは、特に低濃度のイオンを含む溶液を検出対象とする場合に、高い再現性と高感度の検出が可能になるので、イオン分析システム1において有利に使用できるものである。
【0012】
<非接触型インピーダンスモニター>
図2は、検出器5を構成する非接触型インピーダンスモニター5の概略構成を示すものである。非接触型インピーダンスモニター5は、2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)と、これらにそれぞれ電気的に接続する2つの増幅器9a及び9bと、増幅器9aを介して作用電極7aに接続する機能発生器(function generator;FG)10と、増幅器9bを介して検出電極7bに接続する整流器(rectifier)11とを備えている。
また、非接触型インピーダンスモニター5には、検出溶液を通す電気絶縁材でなる管路12が設けられている。2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)は、この管路12の外側に、数ミリ程度の間隔をあけて配置されている。なお、外来からの誘導ノイズの影響を遮蔽するために、グランドに接続された電磁遮蔽(バリアー電極)8が配置されている。管路12を流れる溶出液中の検出溶液は、2つの電極(作用電極7a及び検出電極7b)を通過するときに検出される。このとき、機能発生器10として例えば交流電源のオシレーターからの信号が作用電極7aに印加される。この信号が溶液を通り、もう片方の検出電極7bを通って整流器11へ流れる間に、溶液と電極(作用電極7a及び検出電極7b)が非接触状態において管路12内を流れるキャリアー溶液と検出溶液のインピーダンス差に応じて検出することが可能となる。
【0013】
[有効な濃度測定範囲と基本構造]
本発明の非接触型インピーダンスモニターは、基本構造の違いによってそれぞれの有効測定領域をもっている。イオンクロマトグラフほか高感度な分析機器に使用する検出器として(1)定量分析が可能な超微量イオン濃度測定領域、(2)広範囲な応用領域をもつ検出器として高精度の定量分析性能は充分でないが広範囲のイオン濃度測定領域があり、それらを有効な測定領域とするモニターとしての基本構造がある。
(1)超微量イオン濃度を有効に定量分析する手段として、
(A)超微量イオン濃度範囲(重量濃度)が数10ppt以上から5000ppb以下であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.1mm以上から0.5mm以内の絶縁体チューブ、望ましくはテフロン(登録商標)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅がチューブの外面に幅1mm以上から25mm以下の電極幅であり、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記印加電極に周波数1kHz以上から10kHz以下の周波数領域で、±100V以上から±200V以内の交流電圧で印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
非接触型インピーダンスモニターである。
(2)広い濃度領域範囲を有する電解質溶液の濃度監視モニターとして
(A)イオン濃度範囲(モル濃度)が0.01mM以上から50mM以内であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.5mm以上から2mm以内の絶縁体チューブ、望ましくはテフロン(登録商標)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブであり、
(b2)印加電極および検出電極の電極の幅をチューブの外面に幅25mm以上から100mm以下の電極幅で、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数10kHz以上から100kHz以下の周波数領域で、±0.1V以上から±10V以内の交流電圧で印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
非接触型インピーダンスモニターである。
【0014】
上記の有効測定領域とモニターの基本構造は発明者が検証した多くの実験の中から生まれたものであり、その主要な実験例として本発明の実施例に示される。
実施例1の図3に示すようにチューブ内径の測定値への影響ではチューブ内径が大きくなるにともない溶液のインピーダンスが低くなっているにもかかわらず、信号の大きさは変化しない(信号の応答性が悪い)。
実施例2の図4に示すように誘電率の高い材質が有利である。しかし、無機系の材料は折損しやすく取り扱いに難点がある。その点でPEEKチューブやテフロン(登録商標)チューブが好適に用いられる。
実施例3の図5に示すように電極間の間隔が狭いほど濃度の薄い領域での測定に適している。すなわち、間隔を3.5mm以下であることが好ましい
実施例4の図6に示すように電極幅が大きいほど高インピーダンス領域から低インピーダンス領域にかけて広い領域で測定可能な応答特性を有している。電極幅を大きくするとインピーダンスを下げる方向に働くので有効な手段となる。
実施例5の図7に示すように印加電圧を高くすると、大きな出力値が得られる。
実施例6の図8に示すように周波数が高くなるに従い、高インピーダンス領域から低インピーダンス領域まで幅広く測定できる。周波数を高めることにより、インピーダンスを下げる方向に働くので有効な手段となる。
実施例7の図9に示すように電磁遮蔽による検出電極への外部誘導ノイズを遮断する効果が確認される。
実施例8の図10に示すように非接触型インピーダンスモニターの定量分析可能なイオン濃度領域を示す。
【0015】
なお、上記の細いチューブの外面に設ける電極は、金属テープ、スパッタリング、蒸着法等で金属を被覆したものに通常のボンディング法で金属ワイヤーを取り付けて結線したものでもよい。あるいは電極部分となる金属管をチューブの外側にはめ込み、接着材で固定するのでもよい。また、電極の幅は、出来るだけ大きいほうが測定可能な濃度範囲を広くすることができるので好ましい。
【0016】
電磁遮蔽は図2に示すように電極7a,7bの間隙の中央部より各電極を含む全体を覆っている。この電磁遮蔽材には内面にアルミ箔がコートされたプラスチック成形されたケースが好適に用いられる。アルミ箔に代わり、銅箔、スズ箔、その他金属、合金箔、金属メッシュでもよい。かかるケースは内面に仕切り部(電極の間隙に相当する部分)を設けて一体に成形されたものでもよい。
【0017】
[作用]
本発明のモニターは溶液中に含む検査対象成分を検出セル内に通過させたときにその成分濃度に応じて生ずるインピーダンス変化を検知してその成分濃度を測定するものである。特に高インピーダンス領域において高感度な検出が可能であるという特徴を有する。
図2に示す細いチューブに溶液が流れると作用電極7aより、概ね特定の周波数1kHzから100kHzまでの作用信号電流を印加する。作用信号は絶縁材のチューブを介して溶液に作用して、リアクタンスの存在から位相の若干ずれた応答信号が検出電極7bでキャッチされる。この間、電磁遮蔽の効果により応答信号への外乱を防ぐことが出来る。応答信号はさらに増幅器9bで増幅され、整流器11で整流されて直流信号に変えられ、時間積分された値の平均値としてチャート上に逐次、記録されるか、デジタル処理されてデジタル表記、記憶される。
【0018】
こうしてチャート上に記録された測定値が本測定系のベースライン(測定基準値)を形成する。その後、検出セルに検査目的成分が入ってきて、その成分濃度に応じたインピーダンス変化が高感度に検出され、チャート上に記録される。イオンクロマトグラフィーにおいてはカラムに吸着されてから溶出してくる時間が保持時間として成分ごとに特定されていることからその検出チャートであるイオンクロマトグラムから検査目的成分を特定することができ、しかも数ppbオーダの超微量濃度測定を可能にしている。
かくして応答信号へのわずかな外乱も許されず、電磁遮蔽は長期に安定した機能を維持してなくてはならない。
<5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)との比較>
極性溶媒中の電解質成分を検査目的とする検出手段として広く使用されている5極法接触型電気伝導度検出器(CM432)は、電圧印加電極が2極で、測定電極が2極あり、ガード電極が1極ある5極法電極を有する検出部を有し、内2極の測定電極間の電圧を一定に制御するため電圧印加電極に印加する電圧をコントロールすることを特徴とする電気伝導度検出器である。
先ず、両検出器のイオン検出感度比較を実施例9の図11および図12に示すように、両検出器ともアニオンクロマトグラムの感度を同程度にあわせてノイズ比較した図13および図14をみると大きさが1/18で非接触型インピーダンスモニターの方が小さい。
さらに、電極反応が原因といわれるベースラインのドリフト変化(溶液中の不純物イオン除去現象)を見てみると、実施例10の図15および図16に示すように、非接触型インピーダンスモニターはドリフト変化もなく安定している。
<応用領域>
【0019】
本モニターの特徴は検出部まわりの環境温度の影響を受けにくく、電気伝導度測定器が必須とする恒温装置を必要としない。従って、装置はコンパクトとなり、携帯仕様が可能となり、その応用分野の広がりが今後、期待される。
また、非接触型モニターなので、電極部が直接、溶液や目的検査成分に触れないため、電極反応が起きず、不要な活性物質の生成やガスの影響によるスパイクノイズもないため、高感度の検出に有利である。
さらに、イオン化した成分の検出だけでなく、高インピーダンスの溶液、すなわち超純水はじめ、非極性溶媒(電解質成分を溶かしにくい)にも検出対象を拡大することができる。
応用分野として、代表的な超純水の洗浄分野がある。この分野はすでに各方面で実際、盛んに超純水が洗浄水として使用されており、超純水の持つ溶解力を利用し汚れを取り除いている。しかし、超純水は、予期せぬ空中の不純物ガスにより容易に汚染され、汚染源となる恐れがあるため、超純水の使用にあたって性状確認が欠かせない。この性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
さらに、原子力発電所で原子炉の冷却水に用いる超純水は中性子を浴びることから不純物の微量混入を監視する必要があり、超純水の性状監視が欠かせない。この性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
あらためて説明するまでもなく、超純水の製造用にその性状確認用に本発明のモニターは好適に使用することが出来る。
【実施例1】
【0020】
チューブの内径の影響:印加電圧±5、±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅20 mmの条件下で、φ0.5(外径1/16インチ)、0.8(外径1/16インチ)、1.0(外径2mm)、2mm(外径3mm)テフロン(登録商標)チューブを用いて内径の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0021】
図3から解るように、チューブの内径は、測定できる溶液のインピーダンスの範囲に影響することが解る。チューブの内径が大きくなるに従い、高インピーダンス領域で飽和状態(溶液のインピーダンスが低くなっているにもかかわらず、信号の大きさに変化がない状態)となり、さらに、溶液のインピーダンスが低くなると出力値は減少して行くことが解った。これは、溶液のインピーダンスが低くなると、チューブ内のインピーダンスが小さくなり、使用しているチューブのもつインピーダンスよりも小さくなるためであると推察する。
【実施例2】
【0022】
チューブの種類の影響:印加電圧±5、±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅20mmの条件下で、テフロン(登録商標)チューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)、ピークチューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)、アルミナチューブ(内径0.5mm、外径1/16インチ)を用いてチューブの種類の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0023】
図4から解るように、無機系のアルミナチューブと有機系のピークおよびテフロン(登録商標)チューブとでは大きな差が現れ、無機系のアルミナチューブを使用すると飽和点が右側にシフトすることが解った。これは物質が持つ誘電率(誘電率が大きくなると電気容量が大きくなる)の違いが影響していると考えられる。ちなみにアルミナ(5〜9)とピークおよびテフロン(登録商標)(2〜3.5)の誘電率の差は約3〜5倍ある。また、ピークチューブとテフロン(登録商標)チューブとでは、大きな差が現れていないが、若干ピークチューブを用いたほうが低いインピーダンスの溶液まで測定できる結果となった。
【実施例3】
【0024】
電極間幅の影響:印加電圧±180V、周波数100kHz、電極幅20mm、内径20mmテフロン(登録商標)チューブ(外径20mm)の条件下で、電極間幅を変化させ電極間幅の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。
キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0025】
図5から解るように電極間幅が短いと、高インピーダンス領域での測定が可能であり、電極間幅が長いと、低インピーダンス領域での測定が可能であることが解った。
【実施例4】
【0026】
電極幅の影響:印加電圧±180V、周波数100kHz、電極間幅3.5mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、電極幅を変化させ電極幅の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
【0027】
図6から解るように電極幅が長くなるに従い、高インピーダンスから低インピーダンスまで幅広く測定できる事が解った。
【実施例5】
【0028】
印加電圧の影響:周波数100kHz、電極間幅3.5mm、電極幅100mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、印加電圧±5、±180Vの違いを調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンス測定装置(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
図7から解るように、印加電圧を高くすると、大きな出力値を得ることができることが解った。
【実施例6】
【0029】
印加電圧の周波数の影響:印加電圧±5V、電極間幅3.5mm、電極幅20mm、内径0.5mmピークチューブ(外径1/16インチ)の条件下で、周波数を変化させ周波数の影響を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として1mM、2mM、5mM、10mMKCl(流速1ml/min)の溶液を使用した。
図8から解るように周波数が高くなるに従い、高インピーダンスから低インピーダンスまで幅広く測定できることが解った。
【実施例7】
【0030】
電磁シールドの効果:印加電圧±180V、周波数6kHz、電極間幅2mm、電極幅25mmの条件下で、内径0.25(外径1/16インチ)PEEKチューブを用いて電磁シールドの効果を調べた。図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、イオン分析を実施した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。なお、図9の符号1と2の区分は、1:図2と同様の構造の非接触型インピーダンスモニターから、電磁シールドの役割をするバリアー電極8を取り外し測定した時の超純水のインピーダンス値、2:図2と同様の構造の非接触型インピーダンスモニターで測定した時の超純水のインピーダンス値である。
【実施例8】
【0031】
<非接触型インピーダンスモニターの定量分析可能な領域>
実験では、イオンクロマトグラフの検出器として、非接触型インピーダンスモニターを接続し、検量線の作成のため8種類の濃度の異なる臭素イオンのピーク高さを測定し、濃度とピーク高さ関係を求めた。
印加電圧±180V、周波数6kHz、電極間幅2mm、電極幅25mmの条件下で、内径0.25(外径1/16インチ)PEEKチューブを用いて調べた。
イオンクロマトグラフはアニオンクロマトグラフ(日理工業製)、検出器は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)、インジェクターはモデル7125(RHEODYNE社製、20μL)を使用した。8種類の臭素イオンの濃度は、1;50ppb、2;100ppb、3イオン;500ppb、4;1000ppb、5;2500ppb、6;5000ppb、7;7500ppb、8;10000ppbであった。その結果を図10に示した。
図10から、検出器に非接触型インピーダンスモニターを使用した場合、臭素イオン濃度で0から約5000ppbまでの直線の検量線が得られることが解った。この直線は、濃度とピーク高さの関係が0から5000ppbまでは比例関係であることを示し、定量分析が可能であることが解った。
【実施例9】
【0032】
<非接触型インピーダンスモニターの効果1>
図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、検出器にCM432を使用した場合と非接触型インピーダンスモニターを使用した場合の、ノイズの大きさを比較した。
【0033】
実験では、非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、アニオンクロマトグラフの検出器として、非接触型インピーダンスモニターとCM432の2つを同ラインに接続し、同じ濃度のアニオン混合サンプルを測定し、出力値が同じになるように非接触型インピーダンスモニターの感度を調整した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。アニオン混合サンプルの各濃度は、F−イオン;50ppb、Cl−イオン;100ppb、NO2−イオン;150ppb、Br−イオン;100ppb、NO3−イオン;300ppb、SO42−イオン;400ppb、PO43−イオン;300ppbであった。
【0034】
非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度がほぼ同じである事を示すために、図11に非接触型インピーダンスモニターで測定したアニオン混合サンプルのアニオンクロマトグラムを示し、図12にCM432で測定したアニオン混合サンプルのアオンクロマトグラムを示した。そして図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、両検出器の感度を上げ、図13に非接触型インピーダンスモニターで測定したノイズのグラフを示し、図14にCM432で測定したノイズのグラフを示した。
図11、12から、非接触型インピーダンスモニターの出力値とCM432の出力値がほぼ同じである事が解る。従って、非接触型インピーダンスモニターの出力値の単位もCM432の出力値の単位(電気伝導度)に揃えた。そして図13、14から非接触型インピーダンスモニターで測定した方がノイズの大きさが約1/18となり、ベースラインは安定し、ノイズが小さい事が解る。
これは、非接触型インピーダンスモニターの電極(作用電極と検出電極)が液と接していない効果であり、電極(作用電極と検出電極)と液との界面で起こる反応の影響を無くすことができるためである。
【実施例10】
【0035】
<非接触型インピーダンスモニターの効果2>
図1と同様の構成のイオン分析システム1を使用し、検出器にCM432を使用した場合と非接触型インピーダンスモニターを使用した場合の、ベースラインのドリフト変化を測定した。
【0036】
実験では、実施例9と同様に非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、実験では、非接触型インピーダンスモニターとCM432の感度を同じにするために、アニオンクロマトグラフの検出器として、インピーダンスモニターとCM432の2つを同ラインに接続し、同じ濃度のアニオン混合サンプルを測定し、出力値が同じになるように非接触型インピーダンスモニターの感度を調整した。脱気装置3は脱気装置(日理工業製)、ポンプ4はDP−8020(東ソー社製)、検出器5は非接触型インピーダンスモニター(日理工業製)を使用した。キャリアー溶液として超純水(0.75ml/min)の溶液を使用した。
図15に非接触型インピーダンスモニターでのベースラインのドリフト変化を示し、図16にCM432でベースラインのドリフト変化を示した。
【0037】
図15、16から、非接触型インピーダンスモニターで測定した時は、ベースラインが安定し、一直線となっているが、CM432で測定した時では、ベースラインは右肩下がりに下がり、1時間の測定で約12.5μS/cm変化していることが解る。
これは、実施例9と同様の効果で、非接触型インピーダンスモニターの電極(作用電極と検出電極)が液と接していない効果であり、電極(作用電極と検出電極)と液との界面で起こる反応の影響を無くすことができるためである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
イオンクロマトグラフ用の検出器として、また化学プロセスでの溶液の成分変化を分析する測定器として、あるいはモニターとして広く用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1 イオン分析システム
2 キャリアー
3 ポンプ
5 検出器
6 廃液
7a 作用電極
7b 検出電極
8 電磁遮蔽(バリアー電極)
9a 増幅器
9b 増幅器
10 機能発生器(FG)
11 整流器(Rectifier)
12 管路
13 グランド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液成分の変化を検出する手段として、
絶縁材でなるチューブの外面に導電性の材料でなる作用電極および検出電極を、間隙をあけて設け、当該間隙部分の中央部より各電極を含む外側全体に電磁遮蔽を設け、作用電極に高周波交流電圧をかけ、チューブの中を通る溶液成分の変化をインピーダンスの変化でとらえる非接触型インピーダンスモニター。
【請求項2】
超微量イオン濃度を有効に定量分析する手段として、
(A)超微量イオン濃度範囲(重量濃度)が数10ppt以上から5000ppm以下であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.1mm以上から0.5mm以内の絶縁体チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅がチューブの外面に幅1mm以上から25mm以下の電極幅であり、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数1kHz以上から10kHz以下の周波数領域で、±100V以上から±200V以内の交流電圧を印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
請求項1記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項3】
広い濃度領域範囲を有する電解質溶液の濃度監視モニターとして
(A)イオン濃度範囲(モル濃度)が0.01mM以上から50mM以内であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.5mm以上から2mm以内の絶縁体チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅をチューブの外面に幅25mm以上から100mm以下の電極幅で、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数10kHz以上から100kHz以下の周波数領域で、±0.1V以上から±10V以内の交流電圧を印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
請求項1記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項4】
半導体ウエハー、液晶画面用配線基板、電子プリント配線ハード基板、電子プリント配線フレキシブル基板、各種電子接点(スイッチ、コネクター)、自動車プラグの洗浄用に使用する超純水の性状測定用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項5】
原子力発電用冷却水に用いる超純水の性状測定用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項6】
超純水製造用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項7】
電解質溶液生成装置、イオンクロマトグラフ、イオン分析用に使用する請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項1】
溶液成分の変化を検出する手段として、
絶縁材でなるチューブの外面に導電性の材料でなる作用電極および検出電極を、間隙をあけて設け、当該間隙部分の中央部より各電極を含む外側全体に電磁遮蔽を設け、作用電極に高周波交流電圧をかけ、チューブの中を通る溶液成分の変化をインピーダンスの変化でとらえる非接触型インピーダンスモニター。
【請求項2】
超微量イオン濃度を有効に定量分析する手段として、
(A)超微量イオン濃度範囲(重量濃度)が数10ppt以上から5000ppm以下であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.1mm以上から0.5mm以内の絶縁体チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅がチューブの外面に幅1mm以上から25mm以下の電極幅であり、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数1kHz以上から10kHz以下の周波数領域で、±100V以上から±200V以内の交流電圧を印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
請求項1記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項3】
広い濃度領域範囲を有する電解質溶液の濃度監視モニターとして
(A)イオン濃度範囲(モル濃度)が0.01mM以上から50mM以内であって
(B)非接触型インピーダンスモニターの基本構造が
(b1)使用可能なチューブは、内径0.5mm以上から2mm以内の絶縁体チューブであり、
(b2)作用電極および検出電極の電極の幅をチューブの外面に幅25mm以上から100mm以下の電極幅で、
(b3)前記両電極間の間隔を0.1mm以上から3.5mm以下で取り付け
であって、
(C)前記作用電極に周波数10kHz以上から100kHz以下の周波数領域で、±0.1V以上から±10V以内の交流電圧を印加し、検出電極でインピーダンス変化を検出する
請求項1記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項4】
半導体ウエハー、液晶画面用配線基板、電子プリント配線ハード基板、電子プリント配線フレキシブル基板、各種電子接点(スイッチ、コネクター)、自動車プラグの洗浄用に使用する超純水の性状測定用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項5】
原子力発電用冷却水に用いる超純水の性状測定用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項6】
超純水製造用に用いる請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【請求項7】
電解質溶液生成装置、イオンクロマトグラフ、イオン分析用に使用する請求項1、2または3記載の非接触型インピーダンスモニター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−103219(P2012−103219A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254343(P2010−254343)
【出願日】平成22年11月13日(2010.11.13)
【出願人】(592157722)日理工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月13日(2010.11.13)
【出願人】(592157722)日理工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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