説明

非接触識別タグ、外部装置、及びそれらを用いたセキュリティーシステム

【課題】コンデンサの静電容量を容易に変化させ、通信可能状態と通信不能状態との切換えを可能とし、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる非接触識別タグを提供する。
【解決手段】絶縁基板3に、電磁波を送受信するアンテナコイル4と、アンテナコイル4とともに共振回路7を構成するコンデンサ50と、電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部6と、外部から付与された圧縮力に応じて前記コンデンサの静電容量を変化させる静電容量可変手段60と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの読み取りや書き込みが非接触でおこなわれる非接触識別タグに関し、特に、情報のセキュリティーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、外部装置と非接触で、電磁波の受信または送信によりデータの読み取りや書き込みがおこなわれる非接触識別タグの普及にともない、非接触識別タグに対する情報のセキュリティー意識も高まってきている。非接触識別タグの所有者が非接触識別タグを鞄などに収容し携帯している際に、その鞄にデータの読み取りや書き込みを指示する外部装置が第三者によって近づけられると、所有者が無意識のうちに、非接触識別タグからデータが不正に読み取られたり、非接触識別タグにデータが不正に書き込まれたりしてしまうという不正アクセスの恐れがあった。
そして、従来から、トランスポンディングカードへの不正読み出し防止として、トランスポンディングカードを専用のケースに収納することにより、トランスポンディングカードの電源回路から抵抗を介してグランドへ接続する回路が構成され電磁波を受けても起電力を発生しない技術や(例えば、特許文献1参照)、導電性材料からなる専用ケースに無線式情報記憶媒体を収納することで電磁波を遮蔽し、無線式情報記憶媒体の応答を不能にする技術が(例えば、特許文献2参照)ある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−251074号公報
【特許文献2】特開平9−269985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記いずれの技術も、非接触識別タグの所有者以外の第三者による非接触識別タグへの不正アクセスを防止したい場合、所有者が非接触識別タグを専用のケースに収納する等の処置を意識的に施さなければならない。上記のような場合、非接触識別タグを使用するたびに専用のケースから出し入れしなければならないという煩わしさがある。また、専用のケースを紛失してしまう恐れや、うっかり専用ケースへの収納を忘れてしまう恐れもあり、不正アクセス防止が不十分である。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、不正アクセス防止のための専用装置を付加することなく、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる非接触識別タグ、外部装置、及びそれらを用いたセキュリティーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、絶縁基板に、電磁波を送受信するアンテナコイルと、前記電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部と、を備えた非接触識別タグであって、外部から付与された圧縮力に応じて静電容量を変化させる静電容量可変手段を備え、前記圧縮力により前記静電容量が変化することによって外部装置と通信可能となることを特徴とする非接触識別タグを提供する。
【0007】
ここで、非接触識別タグとは、RFID(Radio Frequncy IDentification)システムにおいて用いられる情報媒体である。RFIDシステムとは、交信媒体に電磁波や光を用いたIDシステムであり、情報媒体である非接触識別タグと、リーダ・ライタと呼ばれる読み取り書き込み装置とで構成され、非接触通信により交信するものである。非接触識別タグは、(1)携帯容易な大きさであること、(2)情報を電子回路に記憶すること、(3)非接触通信により交信することの3つの特徴を備えている。非接触識別タグの形状には、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型等の様々なものがある。これらの形状はアプリケーションと密接な関係があり、例えば、人が持つものには、カード型あるいはラベル型をキーホルダー形状に加工したものがある。半導体のキャリアIDとしてはスティック型が主流となっており、リネン関連の服に縫い込まれるものはコイン型が主流となっている。また、カード型などにおいては、表示部を備えるものもある。
【0008】
また、非接触識別タグは、データ読み取り専用、あるいは、データの読み取り書き込みが自由におこなえる記憶領域を備えており、リーダ・ライタからの非接触電力伝送により電池がなくても動作可能なものもある。
RFIDシステムは、非接触識別タグを持つ人・物・車などと、その情報とを一元化させる目的で使用される。つまり、人・物・車がある場所で随時、必要な情報を取り出すことができ、かつ必要に応じて新たな情報を書き込むことができる。
【0009】
また、RFIDシステムの代表的な種類としては、主に、(1)交流磁界によるコイルの相互誘導を利用して非接触識別タグとの交信をおこなう電磁結合方式、(2)250kHz以下、あるいは、13.56MHz帯の長・中波帯の電磁波を利用して非接触識別タグとの交信をおこなう電磁誘導方式、(3)リーダ・ライタ側のアンテナと非接触識別タグ間で、2.45GHz帯のマイクロ波によりデータ交信をおこなうマイクロ波方式、(4)光の発生源としてLEDを、受光器としてはフォトトランジスタ等を配置し、光の空間伝送を利用して非接触識別タグとの交信をおこなう光方式の4つがある。本発明に係る非接触識別タグは、上記(2)に属し、外部装置から発信される電磁波がアンテナコイルのループ内をくぐると電磁誘導現象により電磁波の周波数に応じた交流の誘導電流が発生し、この誘導電流の周波数が、共振回路の共振現象を誘起できる周波数に一致すると、共振現象をきっかけにデータ処理部がデータの処理を開始するものである。
【0010】
本発明に係る構成によれば、非接触識別タグは、外部から圧縮力が付与されると、静電容量可変手段により静電容量が変化し、この静電容量の変化により、非接触識別タグが外部装置と通信可能となる。つまり、非接触識別タグは、圧縮力が付加されると外部装置と通信可能になることが可能となる。従って、不正アクセス防止のための専用装置を付加することなく、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる。
【0011】
また、前記アンテナコイルとともに共振回路を構成するコンデンサをさらに備えたことが望ましい。
【0012】
このようにすれば、非接触識別タグは、共振回路の共振周波数を所望の通信可能な周波数域内に変化させることが可能なる。これにより、非接触識別タグは、外部装置と通信可能となる。
【0013】
また、前記外部からの圧縮力が付与されている間のみ前記外部装置と通信可能であることが望ましい。
【0014】
このようにすれば、非接触識別タグは、例えば、使用者が非接触識別タグを挟持するなどによる圧縮力を受けている間のみ通信可能状態になるため、使用後に挟持力(圧縮力)が解除されるとただちに通信不能状態とすることが可能となる。これにより、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる。
【0015】
また、前記外部からの圧縮力を付与する圧縮力付与部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
このようにすれば、外部からの圧縮力を確実に静電容量可変手段に付与することが可能となる。即ち、使用者が圧縮力付与部を認識し、間違えることなく確実に圧縮力を付与することが可能となる。
【0017】
また、前記圧縮力付与部は前記非接触識別タグの表面に形成されていることが望ましい。
【0018】
このようにすれば、使用者が非接触識別タグの表面に形成された圧縮力付与部を視認することが可能なため、圧縮力の付与部分を間違えることなく、例えば、挟持するなど確実に圧縮力を付与することが可能となる。
【0019】
また、前記圧縮力付与部は弾性を有する材料で形成されていることが望ましい。
【0020】
このようにすれば、圧縮力付与部は、圧縮力が付与されると弾性変形し、前記圧縮力が除去されると弾性復帰することが可能となる。即ち、外部からの圧縮力に追従して静電容量可変手段により静電容量を変化させることが可能となる。
【0021】
本発明は、絶縁基板に、電磁波を送受信するアンテナコイルと、前記アンテナコイルとともに共振回路を構成するコンデンサと、前記電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部と、を備えた非接触識別タグであって、外部から付与された圧縮力に応じて静電容量を変化させる静電容量可変手段と、前記外部からの圧縮力を付与する圧縮力付与部と、を備え、前記非接触識別タグを前記圧縮力付与部上から挟持して外部装置にかざすことにより、前記静電容量可変手段を介して前記静電容量が変化し、前記外部装置と通信可能となることを特徴とする非接触識別タグを提供する。
【0022】
本発明の非接触識別タグによれば、外部から圧縮力が付与されると、静電容量可変手段により静電容量が変化し、この静電容量の変化により、非接触識別タグが外部装置と通信可能となる。つまり、非接触識別タグは、圧縮力が付加されると外部装置と通信可能となる。上記により、非接触識別タグが外部装置にかざして使用される場合、使用者が非接触識別タグを挟持することによる圧縮力を受けて通信可能状態になることが可能となる。従って、使用者は、不正アクセス防止のための専用装置を非接触識別タグに付加する必要はなく、非接触識別タグを使用するたびに専用ケースなどの専用装置を脱着しなければならない煩わしさが解消されるとともに、使用後に専用装置を装着し忘れることによる不正アクセスの危険性が解消され、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる。
【0023】
本発明は、前述の非接触識別タグと、電磁誘導方式により電磁波を用いて非接触で通信可能に形成された外部装置を提供する。
【0024】
また、前記外部装置はリーダ・ライタであることが望ましい。
【0025】
本発明の外部装置によれば、非接触識別タグから必要な情報を取り出すことができ、あるいは必要に応じて、非接触識別タグに新たな情報を書き込むことができる。
【0026】
本発明は、前述の非接触識別タグと前述の外部装置とを備えたセキュリティーシステムを提供する。
【0027】
本発明のセキュリティーシステムによれば、非接触識別タグに圧縮力が付加されると外部装置と通信可能となる。従って、不正アクセスの危険性を低減することが可能なセキュリティーシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態における非接触識別タグ1を示す外観図であり、図1(a)は、非接触識別タグ1の斜視図であり、図1(b)は、非接触識別タグ1の平面図である。
【0029】
非接触識別タグ1の外観的な特徴は、後述のように静電容量を変化させるきっかけとなる圧縮力の付与部2を、非接触識別タグ1の表面よりわずかに突出させて設けている点である。
非接触識別タグ1内には絶縁基板3が収容されており、絶縁基板3の主要構成を示す平面図である図2(a)に示すように、絶縁基板3上には、電磁波を送受信するアンテナコイル4と、絶縁基板3を挟んで対向する電極導体からなるコンデンサ50と、電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部6と、を備える。コンデンサ50は、絶縁基板3の一方の面上に設けられた第1の電極導体51と、第1の電極導体51とは絶縁されて、絶縁基板3の一方の面上に設けられた第2の電極導体52と、絶縁基板3の底面図である図2(b)に示すように、絶縁基板3を挟んで第1の電極導体51および第2の電極導体52に対向するように絶縁基板3の他方の面上に設けられた第3の電極導体53と、を有している。そして、非接触識別タグ1は、第1の電極導体51と第2の電極導体52との導通を可能にする導通部材60(図2には、図示せず)を備える。
【0030】
コンデンサ50の第1の電極導体51は、ドーナツ状をなし、電極導体51とは絶縁された第2の電極導体52を内側に取り囲んで、アンテナコイル4の一方の端部に導通している。一方、第3の電極導体53は、スルーホールパターン8を介してアンテナコイル4の他方の端部に導通している。そして、アンテナコイル4およびコンデンサ50を含んで共振回路7が構成され、データ処理部6は、一方の端子がアンテナコイル4の一方の端部へ接続され、他方の端子がスルーホールパターン9を介してアンテナコイル4の他方の端部に接続される。
【0031】
絶縁基板3は、ガラス繊維入りエポキシ樹脂などからなる絶縁基板で、絶縁基板3に設けられるアンテナコイル4、第1の電極導体51、第2の電極導体52、第3の電極導体53、スルーホールパターン8、スルーホールパターン9、およびデータ処理部6が電気的に接続される図示せぬランド部は、導体パターンのプリント技術やエッチング技術などにより形成される。スルーホールパターンとは、絶縁基板3に貫通孔を設け、貫通孔の内側面に導体が設けられ、絶縁基板3の表面と裏面との導通を可能にするものである。
【0032】
導通部材60の断面図である図3(a)に示すように、導通部材60は、導電性ゴム等の弾性を有する材料を射出成形技術などにより形成して得られ、全体は略円形で断面が略凹形状である。非接触識別タグ1における図1(b)中の圧縮力の付与部2のA−B線断面図である図3(b)に示すように、導通部材60は凹形状の縁部61が第1の電極導体51を挟んで絶縁基板3に対向して配置され、凹形状の縁部61を介して第1の電極導体51に常に導通しており、凹形状の内側底面に、第2の電極導体52に隙間を有して対向する凸部62が設けられている構成となっている。
【0033】
導通部材60は、コンデンサ50を構成する電極導体同士の対向面積を変化させる静電容量可変手段であり、外部から圧縮力が付与されていない図3(b)の状態では、第2の電極導体52と第1の電極導体51とは絶縁されており、コンデンサ50を構成している電極導体同士の対向面積は第1の電極導体51の面積のみとなっている。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致しない値になるように構成しておく。
【0034】
導通部材60に圧縮力が付与された状態を示す図である図3(c)に示すように、外部から圧縮力が付与されると、導通部材60は、凸部62が第2の電極導体52に接触可能に弾性変形し、第1の電極導体51と第2の電極導体52とは導通し、コンデンサ50を構成している電極導体同士の対向面積は第1の電極導体51の面積と第2の電極導体52の面積との和となる。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値になるように構成しておく。
【0035】
外部から圧縮力が付与されている間は、電極導体同士の対向面積は第1の電極導体51の面積と第2の電極導体52の面積との和に維持される。そして、圧縮力が除去されると、導通部材60は、凸部62が第2の電極導体52から離れるように弾性復帰し、第2の電極導体52と第1の電極導体51とは絶縁され、対向面積が第1の電極導体51の面積のみにもどる。従って、電極導体同士の対向面積を変化させることが可能となる。
【0036】
非接触識別タグ1の外観的な特徴から、使用者は、非接触識別タグの圧縮力を付与する場所がすぐ認識できる効果を有する。
また、上記により、非接触識別タグ1は、例えば、外部装置にかざして使用される場合、使用者が非接触識別タグ1を圧縮力の付与部2上より挟持してかざすという自然な動作の流れの中で通信可能状態になり、使用後に挟持力が解除されるとただちに通信不能状態(通信が完全に不可能な状態または通信可能ではあるが、良好ではない状態)になることが可能となり、使用者は、不正アクセス防止のために専用ケースなどの専用装置を非接触識別タグに付加する必要はなく、非接触識別タグを使用するたびに専用ケースなどの専用装置を脱着しなければならない煩わしさが解消されるとともに、使用後に専用装置を装着し忘れることによる不正アクセスの危険性が解消され、容易で確実な不正アクセス防止が可能となる効果を有する。
【0037】
また、静電容量可変手段と電気的な接点との接触面積を広く構成することができるため、非接触識別タグ1の耐久性を心配する必要はないという効果も有する。
また、静電容量可変手段に、指先へ伝わる感触であるクリック感を、圧縮力の付与部2に圧縮力が付与されて静電容量が変化した時または圧縮力の付与部2から圧縮力が除去されて静電容量が変化した時に発する機能を付加すると、使用者が静電容量の変化を認識できるという効果を有する。
【0038】
なお、導通部材60は、リン青銅およびステンレスなどのバネ用板材からプレス加工技術などにより形成されても同等の効果を有する。
本発明の第2の実施の形態を、図4および図5を用いて説明する。なお、第2の実施の形態の外観は第1の実施の形態と同様なので外観を示す図面は省略する。また、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
図4は、本発明の第2の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図であり、図4(a)は、絶縁基板3の平面図であり、図4(b)は、絶縁基板3の底面図である。
図4(a)および図4(b)に示すように、コンデンサ110は、絶縁基板3の一方の面上に設けられた第1の電極導体111と、絶縁基板3を挟んで第1の電極導体111に対向するように絶縁基板3の他方の面上に配置された第2の電極導体112と、を有している。
【0040】
第2の電極導体112は、アンテナコイル4の一方の端部に導通し、第1の電極導体111は、スルーホールパターン8を介してアンテナコイル4の他方の端部に導通している。
第1の電極導体111は導体パターンのプリント技術やエッチング技術などにより形成される。第2の電極導体112は、全体が略円柱形状であり、導電性ゴム等の弾性を有する材料を射出成形技術などにより形成して得られる。
【0041】
第2の電極導体112は、コンデンサ110を構成する電極導体同士の対向面積を変化させる静電容量可変手段である。非接触識別タグ1における図1(b)中の圧縮力の付与部2のA−B線断面図である図5(a)に示すように、外部から圧縮力が付与されていない状態では、第1の電極導体111に比べて小さい面積を有している。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致しない値になるように構成しておく。
【0042】
第2の電極導体112に圧縮力が付与された状態を示す図である図5(b)に示すように、外部から圧縮力が付与されると、第2の電極導体112は、圧縮力が付与されていないときに比べて、面積が大きくなるように弾性変形し、第1の電極導体111との対向面積が増加する。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値になるように構成しておく。
【0043】
外部から圧縮力が付与されている間は、対向面積が増加している状態が維持され、圧縮力が除去されると、第2の電極導体112は、圧縮力が付与される前の面積にもどるように弾性復帰することにより、電極導体同士の対向面積を変化させることが可能となる。
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を有する。
【0044】
本発明の第3の実施の形態を、図6および図7を用いて説明する。なお、第3の実施の形態の外観は第1の実施の形態と同様なので外観を示す図面は省略する。また、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
図6は、本発明の第3の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図であり、図6(a)は、絶縁基板3の平面図であり、図6(b)は、絶縁基板3の底面図である。
【0045】
図6(a)および図6(b)に示すように、コンデンサ210は、絶縁基板3の一方の面上に設けられた第1の電極導体211と、絶縁基板3を挟んで第1の電極導体211に対向するように絶縁基板3の他方の面上に配置された第2の電極導体212と、を有している。そして、非接触識別タグ1は、第2の電極導体212を支持して、第2の電極導体212とアンテナコイル4との導通を可能にする導通部材220を備える。
【0046】
非接触識別タグ1における図1(b)中の圧縮力の付与部2のA−B線断面図である図7(b)に示すように、第2の電極導体212は、絶縁基板3の面との間に隙間を有するように、導通部材220に支持されている。
導通部材220の断面図である図7(a)に示すように、導通部材220は、導電性ゴム等の弾性を有する材料を射出成形技術などにより形成して得られ、全体は略円形で、断面が略凹形状であり、凹形状の内側底面に、第2の電極導体212を支持する凸部222が設けられている。
【0047】
第2の電極導体212とアンテナコイル4の一方の端部との間は、導通部材220の凹形状の縁部221を介して常に導通し、第1の電極導体211は、スルーホールパターン8を介してアンテナコイル4の他方の端部に導通している。
第1の電極導体211は導体パターンのプリント技術やエッチング技術などにより形成される。第2の電極導体212は、銅板、鋼板、アルミニウム板等の導電性の板材からプレス加工技術などにより形成され、導通部材220に接着、溶着、カシメなどの技術により固着される。
【0048】
導通部材220は、コンデンサ210を構成する電極導体同士の対向間隔を変化させる静電容量可変手段であり、外部から圧縮力が付与されていない図7(b)の状態では、第2の電極導体212と第1の電極導体211とはL1なる対向間隔を有して遠隔状態にある。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致しない値になるように構成しておく。
【0049】
導通部材220に圧縮力が付与された状態を示す図である図7(c)に示すように、外部から圧縮力が付与されると、導通部材220は、第2の電極導体212が絶縁基板3の面に接近するように弾性変形し、第2の電極導体212と第1の電極導体211とはL2なる対向間隔を有して近接状態になる。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値になるように構成しておく。
【0050】
外部から圧縮力が付与されている間は、電極導体同士の対向間隔はL2に維持され、圧縮力が除去されると、導通部材220は、第2の電極導体212が絶縁基板3の面から離れるように弾性復帰し、対向間隔はL1にもどる。従って、電極導体同士の対向間隔を変化させることが可能となる。
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を有する。
【0051】
なお、導通部材220は、リン青銅およびステンレスなどのバネ用板材からプレス加工技術などにより形成されても同等の効果を有する。
本発明の第4の実施の形態を、図8および図9を用いて説明する。なお、第4の実施の形態の外観は第1の実施の形態と同様なので外観を示す図面は省略する。また、第4の実施の形態において、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図8は、本発明の第4の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図であり、図8(a)は、絶縁基板3の平面図であり、図8(b)は、絶縁基板3の底面図である。
図8(a)および図8(b)に示すように、コンデンサ310は、絶縁基板3の一方の面上に設けられた第1の電極導体311と、絶縁基板3を挟んで第1の電極導体311に対向するように絶縁基板3の他方の面上に配置された第2の電極導体320と、を有している。
【0053】
第2の電極導体320の断面図である図9(a)に示すように、第2の電極導体320は、全体が略円形で、断面が略凹形状であり、電極部322と、電極部322を支持する脚部321とで構成される。そして、非接触識別タグ1における図1(b)中の圧縮力の付与部2のA−B線断面図である図9(b)に示すように、電極部322が絶縁基板3を挟んで第1の電極導体311に対向しかつ電極部322と絶縁基板3の面との間に隙間を有するように配置される。
【0054】
第2の電極導体320とアンテナコイル4の一方の端部との間は、第2の電極導体320の脚部321を介して常に導通し、第1の電極導体311は、スルーホールパターン8を介してアンテナコイル4の他方の端部に導通している。
第1の電極導体311は導体パターンのプリント技術やエッチング技術などにより形成される。第2の電極導体320は、導電性ゴム等の弾性を有する材料を射出成形技術などにより形成して得られる。
【0055】
第2の電極導体320は、コンデンサ310を構成する電極導体同士の対向面積を変化させる静電容量可変手段である。外部から圧縮力が付与されていない図9(b)の状態では、第2の電極導体320の電極部322と第1の電極導体311とはL1なる対向間隔を有して遠隔状態にある。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致しない値になるように構成しておく。
【0056】
第2の電極導体320に圧縮力が付与された状態を示す図である図9(c)に示すように、外部から圧縮力が付与されると、第2の電極導体320は、電極部322が絶縁基板3の面に接近するように弾性変形し、電極部322と第1の電極導体311とはL2なる対向間隔を有して近接状態になる。この状態では、静電容量を、共振回路7の共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値になるように構成しておく。
【0057】
外部から圧縮力が付与されている間は、電極導体同士の対向間隔はL2に維持され、圧縮力が除去されると、第2の電極導体320は、電極部322が絶縁基板3の面から離れるように弾性復帰し、対向間隔はL1にもどる。従って、電極導体同士の対向間隔を変化させることが可能となる。
本実施の形態においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を有する。
【0058】
なお、第2の電極導体320は、リン青銅およびステンレスなどのバネ用板材をプレス加工技術などにより形成されても同等の効果を有する。
また、本発明はさらに、本発明の第1乃至第4のいずれか一つの実施の形態における非接触識別タグ1を収納する袋状の収納部を有する本体と、前記収納部内に本発明の第1乃至第4のいずれか一つの実施の形態における非接触識別タグ1を収納した状態で圧縮力の付与部に対向する位置に圧縮力の付与部を押下する凸形状と、を備えた収納ケースを提供する。
【0059】
上記により、本発明の第1乃至第4のいずれか一つの実施の形態における非接触識別タグ1を収納ケースに収納した状態で、静電容量可変手段は、静電容量を、共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値に維持することが可能となる。
上記により、例えば、本発明の第1乃至第4のいずれか一つの実施の形態における非接触識別タグ1を用いるRFIDシステムが、許可されていない人物の進入を制限するセキュリティーシステムとして利用され、建造物の随所にセキュリティーゲートが設けられリーダ・ライタが設置されている場合、使用者は、荷物などを持って両手がふさがれていても、事前に収納ケースに非接触識別タグ1を収納しておくことにより、非接触識別タグ1を挟持しなくてもセキュリティーゲートを通過できるという効果を有する。
【0060】
また、上記第1乃至第4の実施の形態において、外部から圧縮力が付与されている状態では、静電容量を、共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致しない値となるように構成し、圧縮力が付与されていない状態では、静電容量を、共振周波数が所望の通信可能な周波数域内に一致する値となるように構成してもよい。
【0061】
上記により、非接触識別タグ1は、前記収納ケースに収納することで、通信不能状態が維持されるとともに外部からの衝撃が緩衝され非接触識別タグ1を保護する効果を有する。
また、上記第1乃至第4の実施の形態において、外部から圧縮力が付与されていない状態および付与されている状態の一方では、静電容量を、共振周波数が通信可能な周波数域内でかつ非接触識別タグ1とリーダ・ライタとの間の距離が最大となる値になるように構成し、圧縮力が付与されていない状態および付与されている状態の他方では、静電容量を、共振周波数が通信可能な周波数域内でかつ非接触識別タグ1とリーダ・ライタとの間の距離が最小となる値になるように構成してもよい。この場合、外部から圧縮力が付与されると、静電容量は、非接触識別タグ1とリーダ・ライタとの間の通信可能な距離が最大となる値になる場合または最小となる値になる場合の二通りがある。
【0062】
上記により、例えば、非接触識別タグ1は、外部から圧縮力が付与されていない状態では、リーダ・ライタの直近まで近づけられないと通信が困難であり、不正アクセスの危険性が低減される。圧縮力が付与されている状態では、リーダ・ライタからの距離を隔てていても通信が可能であり、例えば、セキュリティーゲートを通過する場合に混雑していても、各自順番を待つ必要がなくなり効率のよいセキュリティーシステムが構築できる効果を有する。また、前記収納ケースに収納することで、さらに効率のよいセキュリティーシステムとすることができる。
【0063】
なお、圧縮力が付与されているときに静電容量を、非接触識別タグ1とリーダ・ライタとの間の通信可能な距離が最大となる値になる構成の方が、非接触識別タグ1を積極的に握るなどの行為をしない限り通信困難な状態であるため、使い勝手がよい。
上記第1乃至第4の実施の形態では、非接触識別タグの静電容量を変化させるきっかけとなる圧縮力の付与部を、非接触識別タグの表面よりわずかに突出させて設けているが、これに限定されるものではない。圧縮力の付与部の高さを非接触識別タグの表面と同一高さとし、圧縮力の付与部の位置を、印刷などによるマーキングにより示したり、非接触識別タグ表面上に、凸状の断面を有する土手や凹状の断面を有する溝を、圧縮力の付与部を取り囲むように設けて示したりしてもよい。
【0064】
上記により、非接触識別タグは、使用されないときに通常のカード入れに収納されて携帯された場合でも、誤動作が少なく、かさばらない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態における非接触識別タグ1を示す外観図。
【図2】本発明の第1の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態における静電容量可変手段の詳細を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図。
【図5】本発明の第2の実施の形態における静電容量可変手段の詳細を示す図。
【図6】本発明の第3の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図。
【図7】本発明の第3の実施の形態における静電容量可変手段の詳細を示す図。
【図8】本発明の第4の実施の形態における絶縁基板3の主要構成を示す図。
【図9】本発明の第4の実施の形態における静電容量可変手段の詳細を示す図。
【符号の説明】
【0066】
1…非接触識別タグ、2…圧縮力付与部、3…絶縁基板、4…アンテナコイル、6、データ処理部、7…共振回路、50…コンデンサ、51…第1の電極導体、52…第2の電極導体、53…第3の電極導体、60…導通部材、110…コンデンサ、111…第1の電極導体、112…第2の電極導体、210…コンデンサ、211…第1の電極導体、212…第2の電極導体、220…導通部材、310…コンデンサ、311…第1の電極導体、320…第2の電極導体、321…脚部、322…電極部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板に、電磁波を送受信するアンテナコイルと、前記電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部と、を備えた非接触識別タグであって、
外部から付与された圧縮力に応じて静電容量を変化させる静電容量可変手段を備え、
前記圧縮力により前記静電容量が変化することによって外部装置と通信可能となることを特徴とする非接触識別タグ。
【請求項2】
前記アンテナコイルとともに共振回路を構成するコンデンサをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の非接触識別タグ。
【請求項3】
前記外部からの圧縮力が付与されている間のみ前記外部装置と通信可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非接触識別タグ。
【請求項4】
前記外部からの圧縮力を付与する圧縮力付与部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の非接触識別タグ。
【請求項5】
前記圧縮力付与部は前記非接触識別タグの表面に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の非接触識別タグ。
【請求項6】
前記圧縮力付与部は弾性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の非接触識別タグ。
【請求項7】
絶縁基板に、電磁波を送受信するアンテナコイルと、前記アンテナコイルとともに共振回路を構成するコンデンサと、前記電磁波を介して送受信されるデータを処理するデータ処理部と、を備えた非接触識別タグであって、
外部から付与された圧縮力に応じて静電容量を変化させる静電容量可変手段と、
前記外部からの圧縮力を付与する圧縮力付与部と、を備え、
前記非接触識別タグを前記圧縮力付与部上から挟持して外部装置にかざすことにより、前記静電容量可変手段を介して前記静電容量が変化し、前記外部装置と通信可能となることを特徴とする非接触識別タグ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の非接触識別タグと、電磁誘導方式により電磁波を用いて非接触で通信可能に形成された外部装置。
【請求項9】
前記外部装置はリーダ・ライタであることを特徴とする請求項8に記載の外部装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1つに記載の非接触識別タグと請求項8または請求項9に記載の外部装置とを備えたセキュリティーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−216083(P2006−216083A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125046(P2006−125046)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【分割の表示】特願2003−98272(P2003−98272)の分割
【原出願日】平成15年4月1日(2003.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】