説明

非接触通信媒体およびその製造方法

【課題】ICチップの封止形状および封止厚を高精度に制御でき、ICチップの補強機能の向上を図ることができる非接触通信媒体を提供する。
【解決手段】本発明に係るICカード11あるいはアンテナモジュール14(非接触通信媒体)においては、ICチップ13に対する補強板17A,17Bの接着を熱硬化性接着フィルム16A,16Bを介して行うことで、ICチップ13に対する補強板17A,17Bの接着高さ及び封止形状の均一性を高めて品質の安定化を図るようにしている。また、接着フィルム16A,16Bのフィルム厚で補強板17A,17Bの接着高さの制御が可能となるので、ICチップ13を破損させることなくICチップ13の封止厚を低減することができるとともに、補強板17A,17Bの板厚を増大させてICチップ13の補強機能の向上を図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードに代表される非接触通信媒体およびその製造方法に関し、更に詳しくは、アンテナ回路が形成された絶縁基板と、この絶縁基板の上に実装されたICチップと、ICチップを補強する補強板とを備えた非接触通信媒体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信媒体として、例えば非接触ICカードは、カードをリーダーライタ上におくか、かざすだけで、情報のやり取りを行えるので鉄道の出改札などの交通系の用途を中心に、プリペイドカード、セキュリティシステム、電子決済等の多様な分野で使用されている。
【0003】
図7は従来の非接触ICカード(以下単に「ICカード」という)の概略構成を示している。図示するICカード1は、アンテナ回路(図示略)が形成された絶縁基板2の一方の面にICチップ3が実装されたICモジュール4を、エポキシ等の熱硬化性接着剤からなる接着材料層8を介して一対の外装シート5A,5Bで挟み込んで構成されている。
【0004】
ICモジュール4を構成するICチップ3は、一定のカード信頼性を確保するため、封止樹脂層6Aによって封止されているとともに、この封止樹脂層6Aを介して金属製の補強板7Aが接着されている。また、絶縁基板2の他方の面には、ICチップ3と対向する領域に、封止樹脂層6Aと同一材料の封止樹脂層6Bを介して補強板7Bが接着されている。なお、ICチップ実装領域の強度向上を目的として、封止樹脂層6A,6Bにシリカ粒子やガラス繊維等のフィラーを混入させる場合もある。
【0005】
図8A,Bは下記特許文献1に記載の従来のICチップ封止方法を説明する模式図である。絶縁基板2の上にICチップ3を実装した後、液状の熱硬化性樹脂からなる封止樹脂6をICチップ2の上面に所定量塗布し、補強板7Aを貼り付ける。封止樹脂6は補強板7Aにより押し潰されてICチップ3の周囲を被覆する。補強板7Bは、その接着面に同様な封止樹脂6が塗布された後、絶縁基板2のICチップ3対向領域に貼り付けられる。その後、ICモジュールを加熱炉に装填し、封止樹脂6を加熱硬化させることで封止樹脂層6A,6Bが形成される。以上により、ICチップ3の封止工程および補強板7A,7Bの接着工程が完了する。
【0006】
【特許文献1】特開2000−222549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のICカード1においては、封止樹脂層6A,6Bの形成に当たり、液状の封止樹脂6をICチップ3の上面あるいは絶縁基板2のチップ対向領域にスクリーン印刷等の印刷法や塗布法を用いて供給するようにしているため、封止形状や封止厚のバラツキが大きいという問題がある。ICチップ3の封止形状や封止厚のバラツキが大きいと、ICカード1の品質や歩留まりの制御が困難となる。
【0008】
また、ICチップ3の上面に接着される補強板7A,7Bは、厚さが大きいほどICチップ3の高い補強機能が得られる。しかし、補強板7A,7Bが厚くなるとICチップ3の封止厚が厚くなり、ICモジュール2のチップ実装領域における表面段差が大きくなる。その結果、作製されるICカード1の表面の平坦性が悪化し、特に、可逆性感熱記録層(リライト層)が表面に形成されたICカードにおいては、カード表面の凹凸を原因として印字抜け等の印刷不良を招く。
【0009】
一方、ICチップと補強板との間の封止層の厚さを薄くすることで、ICチップに対する補強板の接着高さを低くし、その分、補強板の厚さを大きくすることが考えられる。しかしながら、図8A,Bに示したように封止樹脂6を押し潰すようにしてICチップ3との相対位置が調整されるので、ICチップ3に対する補強板7Aの接着高さを精度良く制御することが困難である。
【0010】
また、補強板7Aとの接触によるICチップ3の破損を回避するために、両者間に一定以上のクリアランスを設ける必要がある。更に、封止樹脂6にフィラーが含有されている場合、フィラーの押圧作用によるICチップ3の破損が発生する場合もある。従って、従来のICカード1においては、ICチップの補強機能の向上を図ることができない。
【0011】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、ICチップの封止形状および封止厚を高精度に制御でき、ICチップの補強機能の向上を図ることができる非接触通信媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するに当たり、本発明の非接触通信媒体は、アンテナ回路が形成された絶縁基板と、絶縁基板の一方の面に実装されアンテナ回路と電気的に接続されたICチップと、ICチップを補強する補強板とを備え、補強板は、ICチップの上面に熱硬化性接着フィルムを介して接着されている。
【0013】
また、本発明の非接触通信媒体の製造方法は、アンテナ回路が形成された絶縁基板上にICチップを実装する工程と、ICチップの上面に補強板を接着する工程とを有し、ICチップの上面に補強板を接着する工程は、補強板をICチップの上面に熱硬化性接着フィルムを介して貼り付けた後、補強板を加熱して熱硬化性樹脂フィルムを硬化させる。
【0014】
本発明においては、ICチップに対する補強板の接着を熱硬化性接着フィルムを介して行うことで、ICチップに対する補強板の接着高さ及び封止形状の均一性を高めて品質の安定化を図るようにしている。また、接着フィルムのフィルム厚で補強板の接着高さの制御が可能となるので、ICチップを破損させることなくICチップの封止厚を低減することができるとともに、補強板の板厚を増大させてICチップの補強機能の向上を図ることが可能となる。
【0015】
一方、絶縁基板の他方の面であって、ICチップと対向する領域に熱硬化性接着フィルムを介して補強板を接着することにより、一対の補強板でICチップを挟み込んだチップ補強構造の薄厚化を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の非接触通信媒体は、上記絶縁基板をICチップ及び補強板とともに一対の外装シートで挟み込むことでカード化される。このとき、外装シート間に介在する内層材によってICチップの周囲が封止されている。外装シート間に介在する内層材は、カード製造方法によって異なり、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて外装シートを貼り合わせる場合には当該熱硬化性樹脂が該当し、熱プレス方式を用いる場合には外装シート間に介在される熱可塑性プラスチックシートの熱溶融層が該当する。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、ICチップの封止形状および封止厚を高精度に制御することができるので、非接触通信媒体の品質の安定化を図ることができる。また、ICチップの補強機能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る非接触通信媒体として、非接触ICカード用のICモジュールおよび非接触ICカードへの適用例について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0019】
図1は本発明の実施形態による非接触ICカード(以下単に「ICカード」という)の概略構成を示している。図示するICカード11は、アンテナ回路が形成された絶縁基板12の一方の面にICチップ13が実装されたICモジュール14を、エポキシなどの熱硬化性接着剤からなる接着材料層18を介して一対の外装シート15A,15Bで挟み込んで構成されている。
【0020】
図2は、ICモジュール14の要部の断面模式図である。ICチップ13は、絶縁基板12の表面に実装されてアンテナ回路19に電気的に接続されている。ICチップ13の上面には接着フィルム16Aを介して補強板17Aが接着されている。また、絶縁基板12の裏面には、ICチップ13と対向する領域に接着フィルム16Bを介して補強板17Bが接着されている。補強板17A,17Bは、ICチップ13を外的ストレスから保護するチップ補強構造を構成する。なお、補強板17A,17Bは常に一対設けられる必要はなく、少なくとも補強板17Aのみ設けられていればよい。
【0021】
絶縁基板12としては、公知の高分子フィルムを使用することができる。具体的には、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂など従来より用いられている樹脂フィルムの中から適宜選択して利用することが可能であり、絶縁性であれば特に制限されることはない。
【0022】
絶縁基板12に形成されるアンテナ回路は、絶縁基板12の面内にループ状に巻回させたアンテナパターンで構成されている。アンテナ回路は、導電性ペーストを印刷したものや、上記高分子フィルムとアルミ箔や銅箔等の金属箔とのラミネート基材を回路状にエッチングして形成される。
【0023】
ICチップ13とアンテナ回路19との接続方法としては、図2に示したように、ICチップ13の能動面に形成された突起電極(バンプ)21とアンテナ回路19とを異方性導電膜(ACF)20を介して、フリップチップ実装する方式が採用される。異方性導電膜20は、熱硬化性の樹脂材料中に導電性粒子を分散させてなるものであり、加圧方向にのみ導電性を得ることができる機能性材料である。なお、これ以外の方法として、例えばはんだ付けによってICチップ13を実装することも可能である。
【0024】
補強板17A,17Bは、例えばステンレス製の金属板からなり、接着フィルム16A,16Bを介してICチップ13の上面および絶縁基板12裏面のチップ対向領域に接着される。補強板17A,17Bの大きさは特に限定されないが、図2に示したようにICチップ13よりも大きな面積で構成されるのが好ましい。補強板17A,17Bの平面形状は、円形や四角形などの形状が採用可能であるが、チップ形状に対応した四角形、例えば正方形状が好ましい。補強板17の板厚もまた特に限定されないが、板厚が大きいほどICチップ13の補強機能を高めることができる。なお、厚すぎるとカード化したときのカード表面の平坦度が損なわれ易くなる。
【0025】
本発明では、補強板17A,17Bの接着を接着フィルム16A,16Bを用いて行うようにしている。接着フィルム16A,16Bは熱硬化性の接着フィルムで構成されている。接着フィルム16A,16Bは厚さが一様であり、接着前後において厚さの変動はほとんどない。従って、補強板17A,17Bを接着フィルム16A,16Bを介して接着することにより、従来の液状の封止樹脂を用いる構成と比較して、接着フィルム16A,16Bのフィルム厚の調整のみで補強板17A,17Bの接着高さの最適化を精度よく行うことが可能となるとともに、ICチップ13の封止厚、封止形状のバラツキを抑えることができるようになる。封止厚のバラツキは、従来比で、約1/3以下にまで低減できることが確認されている。
【0026】
図3は、ICチップ13に対する補強板17Aの接着工程を簡略的に示す工程断面図である。
【0027】
補強板17Aの接着に先だって、ICチップ13が絶縁基板12上に実装される(図3A)。接着フィルム16Aは、補強板17Aの接着面にあらかじめ仮固定される。樹脂フィルム16Aの大きさは特に限定されないが、本実施形態では、ICチップ13と同等またはそれよりも大きく、補強板17Aよりも小さい大きさとされている。
【0028】
次に、図3Bに示すように、ICチップ13の上面に補強板17Aを樹脂フィルム16Aを介して貼り合わせる。補強板17AをICチップ13よりも大きく構成することで、ICチップ13に対する補強板17Aの貼り合わせを適正に行うことができるとともに、作業性を高めることができる。なお、補強板17Aの貼り合わせは、既存のマウント装置を用いて行うことができる。
【0029】
そして、補強板17Aに対してコテ等の加熱ツールを接触させ接着フィルム16Aを加熱硬化させることにより、ICチップ20に対する補強板17Aの接着工程が完了する。接着フィルム17Aは、従来の液状の封止樹脂に比べて硬化時間が短いので、補強板17Aの接着工程を短時間で行うことができる。また、接着フィルム16Aをスポット的に加熱する方法であるので、絶縁基板12に高い耐熱性を必要とすることなく、例えば、絶縁基板12の耐熱温度よりも高い硬化温度をもつ接着フィルムを用いることも可能である。
【0030】
また、上述した接着フィルム16Aの硬化工程と同時に、異方性導電膜20の加熱硬化を行うことも可能である。この場合、ICモジュール14の作製工程における工程数を削減でき、生産性の向上を図ることができる。
【0031】
なお、他方の補強板17Bもまた上述と同様な工程を経て、絶縁基板12の裏面側に、ICチップ13と対向するように接着フィルム16Bを用いて接着される。補強板17Aおよび補強板17Bの接着工程はそれぞれ別工程で行われるが、同一工程で行うようにしてもよい。
【0032】
接着フィルム16A,16Bは、上述のように、熱硬化性の樹脂フィルムからなる。このような樹脂フィルムとしては、熱硬化性の絶縁性フィルム(NCF)やACFの絶縁性マトリックス樹脂が好適である。
【0033】
具体的に、熱硬化性樹脂としては、従来より用いられているエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂のような縮合型の熱硬化性樹脂のほかに、単官能および多官能のビニル系モノマーを用いるラジカル重合型、あるいはこれらの混合型など、任意の樹脂を使用することができる。また、リン酸アクリレートのようなリン酸含有樹脂を用いてもよい。リン酸アクリレートは、エポキシアクリレートのような官能基含有ビニルモノマーおよび有機過酸化物を用いて、熱圧着によりラジカル重合と縮合(開環反応)による硬化反応を行うように用いられる。また、上記のような熱硬化性樹脂に加えて、フィルム形成性を改善するためにフェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム等の熱可塑性高分子材料、ならびにカップリング剤、老化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。なお、接着フィルム16A,16Bには、強度向上のため、シリカ微粒子やガラス繊維等のフィラーが混入されていてもよい。
【0034】
図4Aは、従来のICカードにおけるICモジュールのICチップ周辺構造を模式的に示している。従来構造のICモジュールは、封止樹脂層6A,6Bの形成に当たり、封止樹脂を印刷法や塗布法で供給していたため、封止樹脂の塗布量の変動等によって補強板7A,7Bの接着後におけるICチップ3の封止形状および封止厚にバラツキが生じ易かった。また、ICチップ3と補強板7Aとの間のクリアランスを確保するためにICチップ3に対する補強板7Aの接着高さS1は例えば40μmまでにしか抑えられず、従って、モジュール高さを小さくするために、補強板7Aの厚さT1は例えば50μmとされていた。
【0035】
一方、図4Bは本実施形態のICカードにおけるICモジュールのICチップ周辺構造を示している。本実施形態によれば、上述のように、補強板17A,17Bの接着工程に接着フィルム16A,16Bを用いているので、従来構造と比較して、接着フィルム16A,16Bのフィルム厚の調整のみで補強板17A,17Bの接着高さS2の最適化を精度よく行うことが可能となり、例えばS2=15μmにまで抑えることができる。また、ICチップ13の封止厚、封止形状のバラツキを抑えることができるようになるので、カード品質の安定化を図ることができる。更に、ICチップ13と補強板17Aとの間隙S2を従来よりも低く抑えることができるので、その分、補強板17Aの板厚T2を従来よりも厚く(例えば75μm)形成することができ、これによりICチップ13の補強機能を向上させることができる。
なお、絶縁基板12の裏面側に接着される接着フィルム16Bおよび補強板17Bについても上述と同様な作用が得られる。
【0036】
図5は、図4Bに示した本実施形態に係るIC実装部の強度特性を、図4Aに示した従来構造と比較して示す一実験結果である。図5において、「カード静加重 表」は、JISX6303に準拠した試験方法で行ったカード表面側(チップ実装面)の静加重強度であり、「カード静加重 裏」は同様の試験をカード裏面側(チップ非実装面)側で行った静加重強度を示す。また、「カード曲げ強度 表」は、JISK7171に準拠した試験方法で行ったカード表面側の曲げ強度であり、「カード曲げ強度 裏」は同様の試験をカード裏面側で行った曲げ荷重強度である。
【0037】
図5において、実線は、□5.5mmの補強板(SUS)と、□5mmで厚さ15μmの接着フィルム(NCF)との組合せからなるサンプル1を示し、一点鎖線は、□5.5mmの補強板と□5mmで厚さ40μの接着フィルムとの組合せからなるサンプル2を示している。また、二点鎖線は従来構造のICカードであって、φ7mmの補強板を封止樹脂層に接着したサンプル3を示している。サンプル1〜3いずれもICチップは□4.4mmである。図5では、サンプル1に対するサンプル2,3の相対比で各特性が表されている。
【0038】
図5の結果から明らかなように、従来構造のサンプル3に比べて、本実施形態に係るサンプル1,2の方が静加重強度が高い。また、曲げ強度に関しては、接着フィルムのフィルム厚は薄いほど高い強度を示し、フィルム厚が15μmであるサンプル1が従来よりも高い曲げ強度特性が得られている。接着フィルムのフィルム厚が薄いほど高い曲げ強度特性が得られる理由としては、接着フィルムが厚いと、曲げ荷重を補強板よりも先に接着フィルムが受けることでICチップに対する曲げ耐性が得られないからと考えられる。以上から、接着フィルムのフィルム厚は、40μm以下、特に15μm以下が好ましい。
【0039】
また、本実施形態によれば、カード化後の静加重強度のバラツキおよび曲げ荷重強度のバラツキが、何れも従来構造よりも小さくなることが確認されている。
静加重強度および曲げ荷重強度のバラツキは、ICチップの封止厚のバラツキおよび封止形状のバラツキに強く関係する。従って、本実施形態によれば、従来に比べて、ICチップの封止厚のバラツキおよび封止形状のバラツキを低減することができるので、カード化後の静加重強度のバラツキおよび曲げ荷重強度のバラツキを何れも従来構造よりも低減することができる。
【0040】
次に、本実施形態において、ICモジュール14は、一対の外装シート15A,15Bで挟み込まれることでカード化され、これら一対の外装シート15A,15B間に介在する内層材によって、ICモジュール14のICチップ13の周囲が封止される。上記内層材としては、図1の例では、外装シート15A,15Bを接着する接着材料層18が対応する。
【0041】
接着材料層18は、熱硬化性樹脂からなり、例えば2液性のエポキシ系接着剤を硬化させて形成される。2液性のエポキシ系接着剤は、一般的に、エポキシ基を含有する化合物(主剤)と、アミン類や酸無水物を含有する硬化剤を混ぜ合わせ、硬化反応によって接着する接着剤をいう。エポキシ基を含有する化合物には、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ノボラック型、ビスフェノールF型、ブロム化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン系樹脂、グリシジルエステル系樹脂などがある。一方、アミン類や酸無水物を含有する硬化剤には、脂肪族第1・第2アミン(トリエチレンテトラミン、ジプロピルトリアミン等)、脂肪族第3アミン(トリエタノールアミン、脂肪族第1・第2アミンとエポキシの反応生成物当)、脂肪族ポリアミン(ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等)、芳香族アミン(メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等)、アミンアダクト(ポリアミンとエポキシ基との反応生成物等)、芳香族酸無水物(無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等)、ジシアンジアミド及びその誘導体、イミダゾール類等が挙げられる。接着材料層18を構成する接着剤の硬化率は、例えば92%以上98%以内に調整される。
【0042】
一方、外装シート15A,15Bは公知のプラスチックシートが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、プロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースジアセテートなどのセルロース類、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エチル、ポリエチルメタクリレート、酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート類などの単体、または混合物などを用いることができる。
【0043】
接着材料層18を介して外装シート15A,15Bを接着するICカードの製造方法としては、各外装シート15A,15Bをロール方式で巻出しながら連続的に積層接着する方式が用いられる。この場合、長尺のシート積層体を短冊状に切断した後、接着材料層18の加熱硬化処理を行い、その後、カードサイズに裁断することでカード化される。
【0044】
以上のように、本実施形態においては、ICモジュール14のICチップ13は、一対の外装シート15A,15Bによって挟み込まれた際、接着材料層18によって周囲が封止される。これにより、従来の樹脂封止剤を用いることなくICチップ13の保護機能が図られる。また、上述したようにICモジュール14におけるIC実装部の封止厚および封止形状の安定化を図ることができるので、カード表面の平坦度を安定に保つことが可能となる。従って、例えば外装シート表面に可逆性感熱記録層が形成されたリライトカードにあっては、カード表面の凹凸を原因とする印字不良の発生を抑えることができる。
【0045】
また、外装シート15A,15B間の内層材は、上述した接着材料層18の構成に限られない。例えば、複数枚の熱可塑性プラスチックシートを熱融着させてICカードを構成した場合には、これらプラスチックシートの熱溶融層でICチップ13の封止を行うことができる。
【0046】
図6A,Bは、加熱プレス方式により作製されるICカード25の概略構成を示している。図の例では、アンテナモジュール14を一対の熱可塑性プラスチックシート23A,23Bで挟み込み、更にその上から一対の外装シート15A,15Bで挟持した例を示している。プラスチックシート23A,23Bには、アンテナモジュール14のIC実装部に対応して貫通孔24A,24Bがそれぞれ形成されている。
【0047】
熱可塑性プラスチックシート23A,23Bとしては、具体的に、ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールとの共重合体(PET−G)、又はその共重合体とポリカーボネートとのアロイ、テレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0048】
以上のような構成のICカード25においては、一対の熱プレス板で、これらアンテナモジュール14、熱可塑性プラスチックシート23A,23Bおよび外装シート15A,15Bの積層体を加熱プレスすることで、シート界面における融着作用で各シートが一体化される。このとき、熱可塑性プラスチックシートの熱溶融で貫通孔24A,24Bが閉塞されるとともにICチップ13の周囲が当該プラスチックシートによって封止される。作製されたシート積層体はその後、カードサイズに裁断されることでカード化される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態によるICカードの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のICカードにおけるICモジュールの要部拡大図である。
【図3】ICモジュールの一製造方法を説明する工程断面図である。
【図4】従来構造のICモジュールと本発明に係るICモジュールの構成を比較して示す概略断面図である。
【図5】ICモジュールを構成する接着フィルムのフィルム厚の相違によるカード強度特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるICカードの概略構成を示す断面図である。
【図7】従来のICカードの概略構成を示す断面図である。
【図8】従来のICカードにおけるICチップ封止工程を説明する工程断面図である。
【符号の説明】
【0050】
11,25…ICカード、12…絶縁基板、13…ICチップ、14…ICモジュール、15A,15B…外装シート、16A,16B…接着フィルム、17A,17B…補強板、18…接着材料層、19…アンテナ回路、20…異方性導電膜(ACF)、21…バンプ、22…加熱ツール、23A,23B…熱可塑性プラスチックシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ回路が形成された絶縁基板と、前記絶縁基板の一方の面に実装され前記アンテナ回路と電気的に接続されたICチップと、前記ICチップを補強する補強板とを備えた非接触通信媒体において、
前記補強板は、前記ICチップの上面に熱硬化性接着フィルムを介して接着されている
ことを特徴とする非接触通信媒体。
【請求項2】
前記熱硬化性接着フィルムは、絶縁材料からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触通信媒体。
【請求項3】
前記絶縁基板の他方の面には、前記ICチップと対向する領域に熱硬化性接着フィルムを介して補強板が接着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触通信媒体。
【請求項4】
前記ICチップが実装された前記絶縁基板は一対の外装シートで挟み込まれており、前記ICチップの周囲は前記外装シート間に介在する内層材によって封止されている
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触通信媒体。
【請求項5】
前記内層材は、熱硬化性接着材料層である
ことを特徴とする請求項4に記載の非接触通信媒体。
【請求項6】
前記内層材は、熱可塑性プラスチックシート層である
ことを特徴とする請求項4に記載の非接触通信媒体。
【請求項7】
アンテナ回路が形成された絶縁基板上にICチップを実装する工程と、
前記ICチップの上面に補強板を接着する工程とを有する非接触通信媒体の製造方法において、
前記ICチップの上面に前記補強板を接着する工程は、
前記補強板を前記ICチップの上面に熱硬化性接着フィルムを介して貼り付けた後、前記補強板を加熱して前記熱硬化性樹脂フィルムを硬化させる
ことを特徴とする非接触通信媒体の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁基板の他方の面であって、前記ICチップと対向する領域に熱硬化性接着フィルムを介して補強板を接着する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の非接触通信媒体の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁基板を前記ICチップ及び前記補強板とともに熱硬化性接着剤を介して一対のプラスチックシートで挟み込み、前記熱硬化性接着剤で前記ICチップの周囲を封止する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の非接触通信媒体の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁基板を前記ICチップ及び前記補強板とともに熱可塑性プラスチックシートを介して一対の外装シートで挟み込み、前記プラスチックシートの熱溶融で前記ICチップの周囲を封止する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項7に記載の非接触通信媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−272748(P2007−272748A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99998(P2006−99998)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】